JP3597907B2 - 塩化第二鉄液の再生方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば塩化第二鉄エッチング廃液等のニッケルを含む塩化第二鉄廃液から塩化第二鉄液を再生させる塩化第二鉄の再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来塩化第二鉄(FeCl3 )液は水処理の凝集剤やエッチング液として利用されている。このうち水処理の凝集剤として用いられる塩化第二鉄液の製造方法としては、例えば鉄材を塩酸でピックリングした塩化第一鉄原料を塩素化する方法が知られているが、この際環境上の問題から、例えば銅、クロム、ニッケル等の不純物の濃度が例えば50ppm以下の不純物濃度が非常に低い塩化第二鉄液が要求されている。
【0003】
一方塩化第二鉄エッチング液は、42合金を使用したIC、LSI等のリードフレームや、インバー材等のシャドーマスクのエッチングに用いられており、このエッチング液としての不純物の許容濃度は100ppm以下である。このエッチングでは、エッチングの進行に伴い塩化第二鉄成分が減少し、塩化第一鉄成分と溶出したニッケルイオンの量が増大するので、最終的にエッチング廃液中にはニッケルイオンが0.5〜2.5%含有されるが、このニッケルは、銅材、合金成分等として用途が広い有価物であるため、ニッケルを回収しながらエッチング廃液を再生する方法が検討されている。
【0004】
このような方法としては、例えば特公昭61−44814号公報では、エッチング廃液に釘等の塊状の金属鉄を混入し、加温することにより析出した重金属を除去して不純物を減少させると共に、廃液に塩素ガスを吹き込むことにより塩化第二鉄エッチング液のエッチング寿命を延長させる方法が提案されている。また特開昭62−191428号公報では、塩化第二鉄を塩化第一鉄に還元した後、鉄粉を添加することによりニッケルを析出させて除去し、この後脱ニッケルされた溶液を酸化して塩化第二鉄溶液を再生する方法が提案されており、さらにこの方法の改善策として特開平1−167235号公報では、ニッケルで被覆された鉄粉に粉砕処理を施すことにより、鉄の表面を活性化させてニッケルとの置換反応を促進させる方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとしている課題】
しかしながら上述の特公昭61−44814号公報の方法では、ニッケルの除去効率は84〜98%であって、処理後の溶液中のニッケル濃度は326〜2930ppmであるため、ニッケルの回収効率が低く、エッチング液中の不純物濃度も高い。また特開昭62−191428号公報の方法では、鉄粉の表面に強固なニッケル皮膜が形成されて、この皮膜により反応が阻害されてしまうので、再生した塩化第二鉄溶液中のニッケル濃度が高くなってしまう。さらに特開平1−167235号公報の方法においても、ニッケルで被覆された鉄粉に粉砕処理を施す工程が追加されるため、新たな設備を要し、操作が複雑すると共に、再生された塩化第二鉄液中のニッケル濃度は約250ppmであって、依然として不純物濃度が高い。
【0006】
従って従来の塩化第二鉄エッチング廃液の再生方法では、ニッケルの除去率が低いため、回収されたニッケルの品位が低く、有価金属といえども使用範囲が狭められて商品価値が低くなってしまうという問題や、ニッケルの除去率が低いことに起因して再生した塩化第二鉄溶液中の不純物濃度が高いため、不純物の許容濃度が低い水処理の凝集剤として利用できないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、ニッケルを含む塩化第二鉄廃液から塩化第二鉄液を再生するにあたり、ニッケルを高い効率で回収すると共に、不純物濃度の極めて低い塩化第二鉄液を再生する塩化第二鉄液の再生方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
図1は、本発明の方法を示す工程図である。即ち本発明では、還元工程91においてニッケルを含む塩化第二鉄廃液に鉄を添加して廃液中に残存する塩化第二鉄を塩化第一鉄に還元し、第一ニッケル析出工程92において還元工程91にて得られた液に、第二脱ニッケル工程にて得られた第二のニッケルを含む鉄を、ニッケル析出用の鉄として添加して第一のニッケルを含む鉄を析出させ、第一分離工程93において塩化第一鉄液から分離し、濾過工程93a、洗浄工程93bを経て回収する。
【0009】
一方第二ニッケル析出工程94において、前記第一脱ニッケル工程にて得られた微量にニッケルを含む塩化第一鉄液に鉄を添加して第二のニッケルを含む鉄を析出させ、第二分離工程95において塩化第一鉄液から分離し、塩素化工程96において、前記第二脱ニッケル工程94にて得られた塩化第一鉄液を塩素化して塩化第二鉄液を再生する。ここで第一ニッケル析出工程92と第一分離工程93とにより第一脱ニッケル工程が構成され、第二ニッケル析出工程94と第二分離工程95とにより第二脱ニッケル工程が構成される。
【0011】
【作用】
本発明は、還元工程において、先ずニッケルを含む塩化第二鉄廃液に鉄を添加して塩化第一鉄液を得た後、2段階の脱ニッケル工程において、この塩化第一鉄液に鉄を入れてニッケルを析出させ、これを分離して塩化第一鉄液を得る。ここで脱ニッケル工程を1段階で行った場合には、反応効率を高めるために多量の鉄を添加することが必要となるが、このようにすると、鉄の表面にニッケルの被膜が形成され、鉄が不動態化して反応性が低下してしまう上、ニッケルに対する鉄の量が多くなるので、析出する鉄含有ニッケル粉のニッケル含有量が少なくなって有価性が乏しくなる。
【0012】
これに対して本発明では、第一脱ニッケル工程で、適切な量の鉄を添加して塩化第一鉄液に含有するニッケルの大部分を析出させて、有価なニッケルを多く含む鉄含有ニッケル粉を回収すると共に、第二脱ニッケル工程で、適切な量の鉄粉を添加して、塩化第一鉄液に含有する微量なニッケルを析出させて分離することにより、ニッケル含有量の極めて低い塩化第一鉄液を得ることができ、この塩化第一鉄液を塩素化工程において塩素化すると、ニッケル等の不純物濃度の極めて低い塩化第二鉄液を再生することができる。さらに、第二脱ニッケル工程で得られたニッケルを含む鉄を第一脱ニッケル工程でニッケル析出用の鉄として用いると、この工程において得られるニッケルを含む鉄中のニッケル含有量が増加する。
【0013】
【実施例】
以下に本発明の一実施例を図を用いて説明する。図2は本発明方法を実施するための塩化第二鉄液の再生装置の構成図である。図2中1はニッケルを含む塩化第二鉄廃液の貯槽であり、この貯槽1は供給管11、ポンプ12を介して還元槽2へ接続され、還元槽2は供給管21、ポンプ22を介して第1反応槽31に接続されている。還元槽2は還元工程を実施する槽であり、この槽内において廃液中の塩化第二鉄が塩化第一鉄に還元される。
【0014】
第1反応槽31と第2反応槽32は、第一脱ニッケル工程のニッケル析出工程を実施する槽であり、これらの槽は供給管33により接続されていて、第1反応槽31からオーバーフローした液が第2反応槽32へ通流するように構成されている。第2反応槽32は供給管34を介して第1の磁選機51に接続され、さらに供給管35、バルブ36を介して第3反応槽41に接続されている。
【0015】
磁選機51は第一分離工程を実施するものであり、第1反応槽31及び第2反応槽32内において析出した第一のニッケルを含む鉄(以下「鉄を含有するニッケル」という)を分離するものである。この磁選機51は、例えば箱状の本体の底部に磁石を配設して構成されると共に、希塩酸貯槽54と供給管55を介して接続されている。また磁選機51は供給管52、バルブ53を介して例えばフィルタープレス等からなる、濾過工程を実施する濾過機56に接続されている。
【0016】
一方第3反応槽41と第4反応槽42は、第二脱ニッケル工程のニッケル析出工程を実施する槽であり、これらの槽は供給管43により接続されていて、第3反応槽41からオーバーフローした液が第4反応槽42へ通流するように構成されている。第4反応槽42は供給管44を介して第2の磁選機61に接続され、さらに供給管62、バルブ63を介して塩化第一液貯槽7に接続されている。第2の磁選機61は第二分離工程を実施するものであり、第1の磁選機51と同様に構成されている。この磁選機61は、希塩酸貯槽64に供給管65を介して接続されると共に、2本に分岐する供給管45、バルブ46を介して、第1反応槽31に接続されている。また塩化第一鉄液貯槽7は、供給管71、ポンプ72を介して塩素化工程を実施する再生槽8へ接続されている。
【0017】
次に上述の装置において実施される本発明方法の一実施例について説明する。廃液貯槽1には、ニッケルを含有する塩化第二鉄廃液例えば塩化第二鉄エッチング液にてニッケル基板のエッチング処理を行った際のエッチング廃液が貯留されており、この廃液には例えば塩化第二鉄が45〜46%、塩化第一鉄が1.5〜2%、ニッケルが0.5〜2%含有されている。
【0018】
還元槽2では、廃液貯槽1から供給管11、ポンプ12を介して送液された廃液に、鉄材例えば厚さ2〜5mmの鉄板を投入し、廃液中に含有される塩化第二鉄の還元処理が行なわれる。即ちこの槽2内においては以下の反応が進行し、主反応である(1)式の反応により、廃液中の塩化第二鉄が塩化第一鉄に還元される。
2FeCl3 +Fe→3FeCl2 (主反応)…(1)
Fe+2HCl→FeCl2 +H2 (副反応)…(2)
FeCl3 +3H2 O Fe(OH)3 +3HCl (副反応)…(3)
ここでこの還元処理においては、反応温度を70℃以上90℃以下に設定することが好ましい。70℃以下に設定すると反応が遅滞し、90℃以上に設定すると還元槽2の材質が損われるおそれがあるからである。また廃液のpHは、生成した塩化第一鉄の結晶化や水酸化鉄の生成による反応速度の低下を防ぐために、水や塩酸の添加によりpH1以下、液比重を1.45〜1.49g/cm3 程度に維持することが好ましく、さらに廃液の酸化還元電位を+350〜450mVとなるように制御することにより、廃液中に1.5〜2.5%程度の塩化第二鉄を残存させ、これによって廃液中にニッケルが析出することを抑えてニッケルの回収ロスを抑えることが好ましい。また上述のように廃液に投入する鉄材は鉄板を用いたが、この際例えば厚さ1.5mm以下の薄い鉄板や鉄粉を用いた場合には、反応が急激に進行して上述の反応温度や酸化還元電位の制御が困難となる。このような場合には還元槽2に冷却器等を設けて反応温度を制御することも考えられるが、薄い鉄板や鉄粉は高価であるため、製造コストが高額になってしまうので好ましくない。
【0019】
このようにして還元槽2内における還元処理により得られた還元液即ち塩化第一鉄液には、塩化第二鉄が1.5〜2.5%、ニッケルが0.5〜2%含有されている。次にこの塩化第一鉄液は、供給管21、ポンプ22を介して第1反応槽31へ送液され、第1反応槽31及び第2反応槽32において第一ニッケル析出工程が実施される。
【0020】
第1反応槽31内では、後述する第二脱ニッケル工程にて得られた前記第一のニッケルを含む鉄よりもニッケル含有量が少ない第二のニッケルを含む鉄(以下「ニッケルを含む鉄」という)である鉄スラリーが供給管45を介して所定量例えば含有ニッケルに対し2.5〜3倍量と副反応に相当する量投入され、塩化第一鉄液中に含有されるニッケルの析出処理が行なわれる。即ちこの槽31内においては、以下の反応が進行し、主反応である(4)式の反応により、塩化第一鉄液中に塩化ニッケル(NiCl2 )として存在するニッケルが、鉄と共に析出する。
NiCl2 +nFe→(n−1)Fe・Ni+FeCl2 (主反応)…(4)
FeCl3 +Fe→3FeCl2 (副反応) …(5)
Fe+2HCl→FeCl2 +H2 (副反応) …(6)
FeCl2 +2H2 O Fe(OH)2 +2HCl(副反応) …(7)
このとき上述のように第1反応槽31と第2反応槽32とは供給管33により接続されており、第1反応槽31からオーバーフローした塩化第一鉄スラリ−液は第2反応槽32へ送液されるので、更にニッケルの析出処理が行なわれる。ここでニッケル析出処理が進行していくと、供給されたスラリーの表面はニッケル皮膜に覆われたり、または水酸化鉄が生成したりして、不動態化され活性が低下するが、塩化第一鉄液中に残存する遊離塩酸や塩化第二鉄により、スラリーの表面が活性されるので、ニッケル析出反応を速やかに進行させることができる。
【0021】
このようにして第1反応槽31、第2反応槽32においてニッケルの析出処理を行うと、処理後の反応液(塩化第一鉄液)中には鉄と共に析出したニッケルと、未反応のニッケルが200〜900ppm含まれる。
【0022】
次いでこの塩化第一鉄液は、供給管34を介して第1の磁選機51へ送液される。磁選機51では、バルブ36を開くと共に、バルブ53を閉じ、磁石をONにした状態で、磁選機本体中に塩化第一鉄液を通過させると、図3の磁選機を模式的に表す図に示すように、鉄を含むニッケルは、磁石に引きつけられ、磁石上に堆積する。一方塩化第一鉄液は供給管35、バルブ36を介して第3反応槽41へ送液されるので、鉄を含むニッケルと塩化第一鉄液とが分離されることになる。ここで鉄を含むニッケルとは、ニッケルの含有量が鉄の含有量よりも多い場合と少ない場合の両方を含むものとする。なおこのように鉄を含むニッケルと塩化第一鉄液とを分離する固液分離機としては、サイクロンや遠心分離等を使用してもよいが、前者は液体分を濃縮して鉄粉を回収するものであるため、液ロスが多いと共に磨耗するおそれがあり、後者は装置が高価であると共に、鉄粉をリパルプすることが必要であるため装置が複雑化するというおそれがある。
【0023】
続いてバルブ36を閉じると共にバルブ53を開き、磁石の電源をOFFにした状態で、磁選機51に希塩酸貯槽54から供給管55を介して0.4%程度の希塩酸を供給して鉄を含むニッケルを洗い流すようにしながら、これらを供給管52を介して濾過機56へ送り、濾過機56にてニッケルを含む鉄を回収する。この濾過の際には、水酸化鉄が生成すると濾過が極めて困難になるので、pHを2以下に保つことが好ましい。このようにして回収された鉄を含むニッケルは、続いて洗浄工程において洗浄され、ニッケルを30%以上含む鉄含有ニッケル粉として回収される。
【0024】
一方供給管35を介して第3反応槽41へ送液された塩化第一鉄液は、第3反応槽41及び第4反応槽42において、第二ニッケル析出工程が実施される。この工程においても上述の第1工程と同様に、第3反応槽41と第4反応槽42とは供給管43により接続されていて、第3反応槽41からオーバーフローした塩化第一鉄液は、供給管43を介して第4反応槽42に送液されるので、第3反応槽41、第4反応槽42の2槽によりこの工程が実施される。
【0025】
この工程では、第3反応槽41及び第4反応槽42内に、例えばロータリーバルブにより、例えば80Meshアンダーの還元鉄粉からなる鉄粉が投入され、塩化第一鉄液中に残存するニッケルの析出処理が行なわれる。即ちこの工程においても、上述の第1工程と反応式(5)を除いて同様の反応(反応式(4)、(6)、(7)式)が進行し、塩化第一鉄液中に塩化ニッケルとして残存するニッケルが鉄と共に析出する。
【0026】
ここで投入される鉄粉としては、酸化鉄をカーボン等で還元した実効表面積の大きい還元鉄粉を用いることが好ましい。例えばアトマイズ鉄粉を使用すると接触面積が少ないため反応効率が低くなるおそれがあるからである。また第3反応槽41と第4反応槽42に投入される鉄粉の合計量は、還元液中の塩化第二鉄濃度に対して当量と還元液中のニッケル濃度に対して2.5〜3.0倍当量の合計量、即ち第3反応槽41に給液された第1工程終了後の反応液中のニッケル濃度の20〜100倍当量であり、この量の鉄粉を投入して処理を行うと、酸化還元電位が近い鉄−ニッケルの分離、非常に困難な塩化鉄中に存在する微量ニッケルの鉄粉による除去をほぼ完全に行うことができる。さらに反応温度は80〜90℃が好ましく、反応時間は第3反応槽41、第4反応槽42内の反応液の滞留時間が2槽合わせて2〜4時間となるように設定することが好ましい。反応温度が高過ぎると、反応槽や配管等の材質を損なうおそれがあると共に、水酸化鉄の生成を助長するおそれがあり、また反応時間が長過ぎると、水酸化鉄の生成量が多くなるおそれがあるからである。
【0027】
このようにして第3反応槽41と第4反応槽42において第二ニッケル析出工程を行うと、塩化第一鉄液中に残存するニッケルは鉄と共に析出するので、次第に塩化第一鉄液中のニッケル濃度が、より低くなってくる。次いでこの工程の処理後の反応液を供給管44を介して第2の磁選機61へ送液すると、磁選機61では上述の第1工程と同様に、析出したニッケルを含む鉄(鉄スラリ−)と液体分(塩化第一鉄液)とが分離され、鉄スラリ−は、希塩酸貯槽64から供給管65を介して供給される希塩酸により洗い流される状態で、供給管45を介して第1反応槽31へ供給され、塩化第一鉄液は供給管62を介して塩化第一鉄液貯槽7へ送液される。このとき分離された鉄のニッケル含有量は5%程度であり、塩化第一鉄液中のニッケル濃度は10ppm程度である。
【0028】
続いて塩化第一鉄液貯槽7へ一旦貯留された塩化第一鉄液は、供給管71、ポンプ72を介して再生槽8へ送液され、この再生槽8内において塩素化工程が実施される。即ち槽8内の塩化第一鉄液に例えばエジェクターにより塩素ガスが供給され、下記の(8)式に示す反応により塩化第二鉄液が再生される。このようにして再生された塩化第二鉄液中のニッケル濃度は10ppm程度となる。
2FeCl2 +Cl2 →2FeCl3 …(8)
以上の実施例では、脱ニッケル工程を第1工程と第2工程との2つの工程に分けて行っているので、有価なニッケルを高効率で回収できると共に、ニッケル濃度の極めて低い塩化第二鉄液を再生することができる。即ちこの脱ニッケル工程を1つの工程で行うとすると、反応効率を高めてニッケルの析出量を多くするためには、多量の鉄を添加することが必要となるが、ニッケル濃度が1.5〜2%と比較的高い還元処理後の還元液(塩化第一鉄液)に多量の鉄を添加すると、鉄の表面にニッケルの被膜が形成され、鉄が不動態化して反応性が低下してしまうため、結果としてニッケルを十分に析出できなくなるため塩化第一鉄液中のニッケル濃度が高くなると共に、ニッケルに対する鉄の量が多くなるので、析出するニッケル含有鉄のニッケルの比率が低くなって、回収されるニッケル含有鉄粉の有価性が低下してしまうからである。
【0029】
これに対して上述の実施例では、先ず第一脱ニッケル工程においては、ニッケル濃度が1.5〜2%と比較的高い還元処理後の塩化第一鉄液に、第2工程で回収された所定量の鉄スラリーを添加して、塩化第一鉄液中に含まれるニッケルの90〜97%を析出させているが、この際既述のように鉄スラリ−は不動態化が抑えられており、また鉄スラリ−の量も所定量に設定されているため、ニッケル含有量が30%以上の鉄粉を回収することができる。
【0030】
またこの工程ではニッケル析出用の鉄として第二脱ニッケル工程で得られた鉄スラリ−を用いているが、これによって第一脱ニッケル工程で回収されずに第二脱ニッケル工程にて回収されたニッケルが再び第一脱ニッケル工程に供給されることになり、結果として高効率で有価なニッケルを回収することができる。
【0031】
一方第二脱ニッケル工程においては、既に第1工程においてニッケルの含有量の90〜97%が除去された、ニッケル濃度が200〜900ppmと低い塩化第一鉄液に反応性に富む鉄粉を添加して反応を行うため、既述したように、微量ニッケルの析出処理を速やかに進行させることができ、処理後の塩化第一鉄液中のニッケル濃度を10ppm程度とより低くすることができる。従って、このような塩化第一鉄液を塩素化して生成される塩化第二鉄液中のニッケル濃度も10ppm程度と極めて低くなり、このため本発明方法によればエッチング液のみならず、水処理の凝集剤として用いることができる極めて不純物濃度の低い塩化第二鉄液の再生を行なうことができる。
【0032】
またこのとき添加される鉄粉は高価であるが、第1工程で既に大部分のニッケルが除去されており、残存するニッケル量は少なくなっているので、塩化第一鉄の精製が完結化され、さらにこの工程で使用された鉄粉は、ニッケルと共に析出した後第1工程で再び用いられ、第1工程終了後に回収されるため、第2工程で添加された鉄粉を無駄にすることなく利用でき、経済的にも効率よく塩化第二鉄液の再生が行なわれる。
【0033】
本実施例では、第一脱ニッケル工程、第二脱ニッケル工程とを共に2つの反応槽を用いて行っているが、各工程を夫々1つの反応槽を用いて行ってもよいし、2つ以上の反応槽を用いて行ってもよい。但しこのように各工程を複数槽で行なうと、添加する鉄の量を少なくしてコストを低減できると共に、スループットを向上させることができる。即ち仮に1つの反応槽で処理を行うとすると、反応効率を高めるために鉄を多量に添加する必要があり、コストアップにつながると共に、既述のように鉄表面にニッケルの皮膜が形成されて鉄の反応性が低下してしまうからである。このために1つの反応槽において、鉄を分割して投与することも考えられるが、仮にこのようにすると、処理を連続して行うことができないため、スループットが低くなってしまう。
【0034】
次に本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
実験例1
(還元工程)
試験装置として図1に示す装置を用い、反応容量20M3 の還元槽に塩化第二鉄45.8%、塩化第一鉄1.6%、ニッケル1.2%を含むインバー材エッチングニッケル廃液を、2.1M3 /Hの流量で連続的に給液し、鉄として2〜5mmの厚さの厚物鉄屑を投入すると共に、20%塩酸及び水を添加して還元処理を行った。この時の反応条件は、pH0〜1、反応温度85℃、酸化還元電位400〜420mV、出口液比重1.48g/cm3 に設定した。反応後に得られた還元液の組成は、液比重1.485cm3 、塩化第二鉄2.3%、ニッケル0.89%であった。
【0035】
(第一脱ニッケル工程)
第1反応槽、第2反応槽の容量を夫々2M3 、5M3 とし、還元工程で得られた還元液を第1反応槽に2.5M3 /Hの流量で給液すると共に、第1反応槽に第2工程により回収された鉄粉を95kg/Hの割合で添加し、反応温度を86℃に設定して液面を制御しながらニッケルの析出処理を行った。このとき第1反応槽から反応液をオーバーフローさせて第2反応槽に給液し、第1反応槽、第2反応槽の2槽でニッケルの析出処理を行った。この処理後、磁選機、濾過機を介してニッケル含有鉄を回収したが、得られた鉄含有ニッケル粉はニッケル含有量が35.7%の高品位のものであった。一方鉄含有ニッケルを除去した後の塩化第一鉄液中のニッケル濃度は350ppmであった。
【0036】
(第二脱ニッケル工程)
第3反応槽、第4反応槽の容量を夫々3M3 、1.5M3 とし、第1工程後の塩化第一鉄液を2.5M3 /Hの流量で第3反応槽に送液すると共に、還元鉄粉を63.5kg/Hの割合で添加し、反応温度を80℃に設定してニッケル析出処理を行った。次いで第4反応槽では第3反応槽からオーバーフローした反応液に還元鉄粉を31.5kg/Hの割合で添加し、反応温度を80℃に設定して反応を行った。この処理後、磁選機により析出したニッケル含有鉄を分離し、塩化第一鉄液を得たが、得られた塩化第一鉄液中のニッケル濃度は10ppm以下であった。
【0037】
(塩素化工程)
第2工程で得られた塩化第一鉄液に、ソーダ電解により発生した塩素ガスをエジェクターにより吸収させ、40度ボーメ塩化第二鉄液を製造した。製品中のニッケル濃度は10ppm以下であった。
【0038】
比較例1
試験装置として、上述の実験例で使用した4槽の反応槽を連続して接続したものを用い、実験例の還元工程で得られた還元液を、第1反応槽から第4反応槽までオーバーフローさせながら給液し、各槽に還元鉄粉を31.25kg/H(合計125kg/H)で添加して、反応温度を85℃に設定しながら反応を行った。第4反応槽の出口から得られた反応液を磁選機に送液して、析出した鉄含有ニッケルと塩化第一鉄液とを分離したところ、得られた鉄含有ニッケル中のニッケル含有量は16.4%、塩化第一鉄液中のニッケル濃度は480ppmであった。また得られた塩化第一鉄液に実験例と同様の方法で塩素化処理を行ったところ、製品(塩化第二鉄液)中のニッケル濃度は450ppmであった。
【0039】
比較例2
還元鉄粉の代わりに、溶融鉄を噴霧して得られたアトマイズ鉄粉を使用して比較例1と同様に行った。得られた鉄含有ニッケル粉のニッケル含有量は15.9%であり、塩化第一鉄液中のニッケル濃度は940ppm、製品である塩化第二鉄液中のニッケル濃度は870ppmであった。
【0040】
以上の実験例、比較例1、2の結果から、実験例では添加した鉄量の合計量は95kg/Hと比較例1、2に比べて少量であるのに、鉄含有ニッケル粉中のニッケル含有量は2倍以上高く、また製品である塩化第二鉄液中のニッケル濃度は極めて低いことが明らかであり、本発明の効果が確認された。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、ニッケルを含む塩化第二鉄廃液から塩化第二鉄液を再生するに際し、ニッケルを高効率で回収できると共に、塩化第二鉄液中の不純物濃度を極めて低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の工程図である。
【図2】本発明方法の一実施例を実施する塩化第二鉄液再生装置の構成図である。
【図3】磁選機の作用を模式的に説明する説明図である。
【符号の説明】
1 廃液貯槽
2 還元槽
31 第1反応槽
32 第2反応槽
41 第3反応槽
42 第4反応槽
51、61 磁選機
54 濾過機
7 塩化第一鉄液貯槽
8 再生槽
91 還元工程
92 第一ニッケル析出工程
93 第一分離工程
94 第二ニッケル析出工程
95 第二分離工程
96 塩素化工程
Claims (2)
- ニッケルを0.5%〜2%含む塩化第二鉄廃液に鉄を添加して、廃液中に残存する塩化第二鉄を、廃液中に1.5%〜2.5%の塩化第二鉄を残存させるように塩化第一鉄に還元する還元工程と、
前記還元工程にて得られた液にニッケル析出用の鉄を添加してニッケルを30%以上含む第一のニッケルを含む鉄を析出させ、塩化第一鉄液から分離して回収する第一脱ニッケル工程と、
前記第一脱ニッケル工程にて得られた、ニッケルを200ppm〜900ppm含む塩化第一鉄液に鉄粉を添加して第一のニッケルを含む鉄よりもニッケル含有量が少ない第二のニッケルを含む鉄を析出させ、塩化第一鉄液から分離する第二脱ニッケル工程と、
前記第二脱ニッケル工程にて得られた塩化第一鉄液を塩素化して塩化第二鉄液を得る塩素化工程と、を含み、
前記第二脱ニッケル工程にて得られた、第二のニッケルを含む鉄を前記第一脱ニッケル工程に戻し、当該第一脱ニッケル工程におけるニッケル析出用の鉄として用いることを特徴とする塩化第二鉄液の再生方法。 - 第一脱ニッケル工程及び第二脱ニッケル工程は、鉄を含むニッケルを磁石に吸着させることにより液から分離する工程であることを特徴とする請求項1記載の塩化第二鉄液の再生方法。
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