JP3597425B2 - 積層セラミック電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミック電子部品に関し、詳しくは、セラミック素子中に、複数の内部電極を、セラミック層を介して互いに対向するように配設してなる積層セラミック電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
例えば、代表的な積層セラミック電子部品の一つであるチップ型の積層セラミックコンデンサは、例えば、図6,図7(a),(b),(c)に示すように、複数の内部電極52がセラミック(セラミック層)51を介して互いに対向するように配設され、かつ、その一端側が交互に異なる側の端面に引き出されたセラミック素子54の両端面に、内部電極52と導通するように一対の外部電極53,53を配設することにより形成されている。
【0003】
しかし、図6,図7に示すような構造を有する積層セラミックコンデンサの場合、中高圧領域で使用される製品においては、十分な耐電圧性能を確保することが必ずしも容易ではなく、破壊電圧値が大きく、耐電圧性能に優れた信頼性の高い積層セラミックコンデンサの開発が望まれている。
【0004】
そして、このことは、積層セラミックコンデンサに限らず、バリスタ、インダクタなどの積層セラミック電子部品にも共通するものである。
【0005】
ところで、上述のような積層セラミック電子部品の破壊電圧値を向上させようとすると、通常は、
( 1 )素子厚(セラミック層を介して対向する電極間の距離(厚み方向の距離))を大きくする方法、
( 2 )内部電極を、複数の直列接続容量が形成されるような電極構造とする方法などが考えられる。
【0006】
しかし、破壊電圧値は、内部電極52のエッジ部(図7(a)の52a)への電界集中の程度(電界強度)に支配される傾向があり、上記( 1 )及び( 2 )の方法では、内部電極52のエッジ部(周辺部や角部)52aに電界が集中するため、十分に破壊電圧値の向上を図ることが困難な場合が多いのが実情である。
【0007】
したがって、内部電極52のエッジ部52aへの電界集中を緩和するために、さらに、内部電極52の形状や積み重ね態様に工夫を加えることが必要になり、セラミック素子の内部構造が複雑になって製造コストが増大するという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、複雑な構造を必要とすることなく、大型製品の場合にも、優れた耐電圧性能を有する積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、発明者等は、積層セラミック電子部品の内部構造について、調査、検討を行い、
( 1 )従来の積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品においては、通常、内部電極52(図7(c))の厚みtは1μm程度であること、
( 2 )内部電極の重なり部分62(図7(a))の面積、すなわち、平面有効面積(重なり部分の長さL×幅W(=内部電極の幅W))が、内部電極の、引き出し方向に直交する方向に切断した場合における内部電極52(図7(c))の断面積(内部電極52の厚みt×幅W)の5000倍以下であることを知り、さらに、
( 3 )内部電極の平面有効面積の内部電極断面積に対する比率が、耐電圧性能に影響を与えることを
認識するに至った。
発明者等は、かかる知見に基づいて、さらに実験、検討を行い、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明(請求項1)の積層セラミック電子部品は、
複数の内部電極が、セラミック層を介して互いに対向し、かつ、一端側が交互に異なる側の端面に引き出されるような態様でセラミック素子中に配設された構造を有し、定格電圧250V以上の中高圧領域で使用される積層セラミック電子部品であって、
前記セラミック素子の、内部電極の引き出し方向に平行な方向の寸法が10 mm 以上で、
平面的にみた場合における内部電極の重なり部分の面積が、内部電極の引き出し方向に直交する方向に切断した場合における内部電極1層あたりの断面積の10000倍以上であること
を特徴としている。
【0011】
上述のように、平面的にみた場合における内部電極の重なり部分の面積(平面有効面積)を、内部電極の引き出し方向に直交する方向に切断した場合の内部電極1層あたりの断面積の10000倍以上とすることにより、内部電極のエッジ部への電界集中を緩和して、耐電圧性能を向上させることが可能になる。
【0012】
なお、本発明は、複数個のセラミック素子を積み重ねることにより形成される、いわゆるスタックタイプの積層セラミック電子部品にも適用することが可能である。
【0013】
なお、定格電圧250V以上の中高圧領域で使用される積層セラミック電子部品は耐電圧性能が問題になりやすいが、本発明を適用した場合、耐電圧性能を、素子厚を大きくすることなく、実用上問題のない程度にまで、確実に向上させることが可能になり、有意義である。
【0014】
また、セラミック素子の、内部電極の引き出し方向に平行な方向の寸法が10mm以上である積層セラミック電子部品においては、特に耐電圧性能が問題になりやすいが、そのような大型の積層セラミック電子部品に本発明を適用することにより、その耐電圧性能を、実用上問題のない程度にまで、確実に向上させることが可能になり、特に有意義である。
【0015】
また、請求項2の積層セラミック電子部品は、前記積層セラミック電子部品が積層セラミックコンデンサであることを特徴としている。
【0016】
積層セラミックコンデンサにおいては、特に大型製品の場合に、耐電圧性能が問題になりやすいが、本発明を適用することにより、優れた耐電圧性能を有する積層セラミックコンデンサを得ることが可能になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示してその特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態にかかる積層セラミック電子部品(この実施形態では積層セラミックコンデンサ)を示す斜視図、図2(a)はその平面断面図、図2(b)は正面断面図、図2(c)は側面断面図である。
【0019】
この実施形態1の積層セラミック電子部品(積層セラミックコンデンサ)は、図1及び図2に示すように、複数の内部電極2がセラミック(セラミック層)1を介して互いに対向するように配設され、かつ、その一端側が交互に異なる側の端面に引き出された構造を有するセラミック素子4の両端面に、内部電極2と導通するように一対の外部電極3,3を配設することにより形成されている。また、内部電極2,2は、積み重ねずれなどを考慮して、容量が一定となるように、幅の大きいものと幅の小さいものとが交互に積み重ねられている。なお、幅の大きいものと幅の小さいものを積み重ねる順序は任意である。
【0020】
そして、この積層セラミック電子部品においては、平面的にみた場合における内部電極2の重なり部分12の面積(平面有効面積)S1が、内部電極2の引き出し方向に直交する方向に切断した場合における内部電極2の1層あたりの断面積(内部電極断面積)S2の10000倍以上になるように構成されている。なお、平面有効面積S1は、図2(a)における重なり部分12の長さL×幅Wで表される値であり、1層あたりの内部電極断面積S2は、図2(c)における、内部電極2の厚みt×内部電極の幅Wで表される値である。
【0021】
なお、この実施形態では、上述の内部電極2の重なり部分の長さL,幅W,内部電極の厚みtは、以下に述べるような方法により測定した。
【0022】
[内部電極の重なり部分の長さLの測定]
積層セラミックコンデンサを、内部電極の引き出し方向に平行な方向で、かつ、内部電極の積層方向に平行に切断し、図3に示すように、厚み方向略中央の内部電極2(2a)が、セラミック層1を介して隣接する上下の内部電極2(2b,2c)と重なり合う部分の長さLn1,Ln2を、光学顕微鏡を用いて測定し、その平均値をLとした。
【0023】
なお、無作為に抽出した10個以上(n≧10)の試料のそれぞれについて、上記の場合と同様に、厚み方向略中央の内部電極2(2a)について、セラミック層1を介して隣接する上下の内部電極2(2b,2c)と重なり合う部分の長さLn1,Ln2を測定し、その平均値Laを求め、各試料の平均値Laを合計して試料数nで除した値をLとすることも可能である。この場合、各試料のばらつきの影響を軽減することができて望ましい。
【0024】
[内部電極の重なり部分の幅Wの測定]
積層セラミックコンデンサを、内部電極の引き出し方向に直交する方向で、かつ、内部電極の積層方向に平行に切断し、図4に示すように、厚み方向略中央の内部電極2(2a)と、その上下側の各1層(2b,2c)をとばした次の内部電極2(2d,2e)の合計3層の幅の狭い方の内部電極2(2a,2d,2e)の幅Wn1,Wn2,Wn3を、光学顕微鏡を用いて測定し、その平均値をWとした。
【0025】
また、無作為に抽出した10個以上(n≧10)の試料のそれぞれについて、上記の場合と同様に、厚み方向略中央の、一層おきの3層の内部電極2(2a,2d,2e)の幅Wn1,Wn2,Wn3を、光学顕微鏡を用いて測定して、その平均値Waを求め、各試料の平均値Waを合計して試料数nで除した値をWとすることも可能である。この場合、各試料のばらつきの影響を軽減することができて望ましい。
【0026】
[内部電極の厚みtの測定]
積層セラミックコンデンサを、内部電極2の積層方向に平行に切断し、図5に示すように、セラミック素子4の略中央部分に一本の垂線Xを立て、上下最外層を除く全ての内部電極2について、上記垂線上の厚みtn1,tn2,tn3……を光学顕微鏡を用いて測定し、その平均値を内部電極2の厚みtとした。
【0027】
また、無作為に抽出した10個以上(n≧10)の試料のそれぞれについて、上記の場合と同様に、上下最外層を除く全ての内部電極2の厚みを測定して、その平均値taを求め、各試料の平均値taを合計して試料数nで除した値をtとすることも可能である。この場合、各試料のばらつきの影響を軽減することができて望ましい。
【0028】
なお、上述の内部電極の重なり部分の長さL,幅W,及び内部電極の厚みtの測定方法は、あくまで例示であり、上述の方法に限定されるものではない、
例えば、上述のように、内部電極として、幅の大きいものと幅の小さいものとを交互に積層する構成をとっていない場合において、内部電極の幅Wを測定するときには、特定の内部電極(例えば、積層方向の略中央に配置された内部電極)を基準とし、その上下の内部電極の左右の両端部の位置と両端部間の距離(幅)を検出、測定するとともに、特定の内部電極の左右の両端部の位置及び両端部間の距離(幅)を検出、測定することにより、各内部電極の左右の両端部の位置及び両端部間の距離(幅)から、内部電極の実際の重なり部分の幅Wを求めることができる。
【0029】
ところで、積層セラミック電子部品の破壊電圧値は、一般に下記の式(1)で表される。
破壊電圧値(BDV)=A×Br ……(1)
A:セラミック素子の構成材料や構造により決定される定数
B:素子厚
r:内部電極のエッジ部の電界強度への寄与率により決定される定数
【0030】
そして、rの値と破壊電圧値には、以下に述べるような関係がある。
( 1 )r<0.5の場合
内部電極のエッジ部の集中電界強度にセラミックの欠陥や構造の欠陥の影響が加わり、素子厚を変えても破壊電圧値がほとんど変化しない。
( 2 )r=0.5の場合
一般的な積層セラミック電子部品であって、破壊電圧値が内部電極のエッジ部の集中電界強度に支配されている。
( 3 )r>0.5の場合
内部電極のエッジ部の集中電界強度が緩和されて破壊電圧値が高い積層セラミック電子部品を得ることができる。
【0031】
そして、内部電極2の重なり部分12の面積(平面有効面積)S1が、内部電極2の断面積(内部電極断面積)S2の5000倍以下の積層セラミック電子部品においては、通常、rの値が0.45〜0.55の範囲となり、形状やセラミックの組成などの変動により、耐電圧性能が不十分になりやすいが、内部電極2の平面有効面積S1を、1層あたりの内部電極断面積S2の10000倍以上にした場合、図2に示すように、同一形状の内部電極2をセラミック層1を介して交互に積層しただけの単純な構造の場合においても、rの値が大きくなって0.7〜0.8にまで達し、耐電圧性能を大幅に改善することが可能になる。
【0032】
なお、上記実施形態では、内部電極2として、平面形状が長方形のパターンの内部電極である場合を例にとって説明したが、内部電極2のパターンは、これに限られるものではなく、その他の種々の形状とすることが可能であり、例えば、内部電極の形状を、角部に丸みを付けた形状とすることにより、さらに電界の集中を抑制して、耐電圧性能をより向上させることが可能になる。
【0033】
また、上述の実施形態においては、積層セラミックコンデンサを例にとって説明したが、本発明は、積層セラミックコンデンサに限らず、バリスタ、インダクタなど種々の積層セラミック電子部品に適用することが可能である。
【0034】
また、本発明は、セラミック素子を複数個積み重ねたスタックタイプの積層セラミック電子部品にも適用することが可能であり、その場合にも上記実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0035】
なお、本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、積層セラミック電子部品素子を構成するセラミックの種類やセラミック素子の具体的な形状、内部電極及び外部電極のパターンや構成材料などに関し、発明の要旨の範囲内において種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0036】
【発明の効果】
上述のように、本発明の積層セラミック電子部品は、平面的にみた場合における内部電極の重なり部分の面積(平面有効面積)を、内部電極の引き出し方向に直交する方向に切断した場合の内部電極1層あたりの断面積の10000倍以上とすることにより、内部電極のエッジ部への電界集中を緩和して、耐電圧性能を向上させることができる。
【0037】
また、耐電圧性能が問題になりやすい定格電圧250V以上の中高圧領域で使用される積層セラミック電子部品に本発明を適用した場合、耐電圧性能を、実用上問題のない程度にまで、確実に向上させることが可能になり、有意義である。
【0038】
また、セラミック素子の、内部電極の引き出し方向に平行な方向の寸法が10mm以上である大型の積層セラミック電子部品においては、特に耐電圧性能が問題になりやすいが、かかる大型の積層セラミック電子部品に本発明を適用することにより、その耐電圧性能を、実用上問題のない程度にまで、確実に向上させることが可能になり、特に有意義である。
【0039】
また、積層セラミックコンデンサにおいては、特に大型製品の場合に、耐電圧性能が問題になりやすいが、請求項2のように、本発明を積層セラミックコンデンサに適用することにより、優れた耐電圧性能を有する積層セラミックコンデンサを得ることが可能になり有意義である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる積層セラミック電子部品を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる積層セラミック電子部品を示す図であり、(a)は平面断面図、(b)は正面断面図、(c)は側面断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる積層セラミック電子部品の内部電極の重なり部分の長さを測定する方法を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる積層セラミック電子部品の内部電極の重なり部分の幅を測定する方法を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる積層セラミック電子部品の内部電極の厚みを測定する方法を示す図である。
【図6】従来の積層セラミック電子部品を示す斜視図である。
【図7】従来の積層セラミック電子部品を示す図であり、(a)は平面断面図、(b)は正面断面図、(c)は側面断面図である。
【符号の説明】
1 セラミック(セラミック層)
2,2a,2b,2c,2d,2e 内部電極
3 外部電極
4 セラミック素子
12 内部電極の重なり部分
t 内部電極の厚み
tn1,tn2,tn3 各内部電極の厚み
L 内部電極の重なり部分の長さ
Ln1,Ln2 特定の内部電極の重なり部分の長さ
W 内部電極の重なり部分の幅(=内部電極の幅)
Wn1,Wn2 特定の内部電極の重なり部分の幅
Claims (2)
- 複数の内部電極が、セラミック層を介して互いに対向し、かつ、一端側が交互に異なる側の端面に引き出されるような態様でセラミック素子中に配設された構造を有し、定格電圧250V以上の中高圧領域で使用される積層セラミック電子部品であって、
前記セラミック素子の、内部電極の引き出し方向に平行な方向の寸法が10 mm 以上で、
平面的にみた場合における内部電極の重なり部分の面積が、内部電極の引き出し方向に直交する方向に切断した場合における内部電極1層あたりの断面積の10000倍以上であること
を特徴とする積層セラミック電子部品。 - 前記積層セラミック電子部品が積層セラミックコンデンサであることを特徴とする請求項1記載の積層セラミック電子部品。
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