JP3596439B2 - 産業車両の走行制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リーチ型フォークリフト等の産業車両の走行制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
加速あるいは減速時等に駆動輪の過大なスリップを抑えることは、車両の操縦性を確保するためや、エネルギーロスを抑制する上で有効である。そこで、加速時に駆動輪のスリップ量が大きくなった場合、運転者によるアクセル操作量とは関係なく、強制的に駆動輪への駆動力の供給を低下させるように制御する所謂トラクション制御を行うようにした車両が知られている。
【0003】
しかし、スリップの発生のし易さは路面の状態によって異なり、路面の状態に関係なく加速時に駆動輪のスリップ量が所定量を超えた場合に駆動輪への駆動力の供給を低下させると不都合が生じる。なぜならば、乾燥状態におけるコンクリート路面のような摩擦係数の高い路面での発進時の急加速では、車両の操縦性が損なわれる等の状態となることは殆どないのに、スリップと判断して駆動力の供給を低下させると、運転者が急加速を望んでいるにも拘わらず、加速性が低下してしまう。即ち、加速状態が運転者の意に反することとなり、運転フィーリングが悪くなる。
【0004】
この不具合を解消する車両の出力制御装置として、特開平6−81685号公報には、従動輪車速から車速の変化率(前後加速度)を求め、前後加速度の変化率が高ければ、急加速状態即ち路面の摩擦抵抗が大きいと判断してトラクション制御を行わないようにしたものが開示されている。
【0005】
また、実開平5−2505号公報には、電気自動車の回生ブレーキ装置として、駆動輪と非駆動輪との間の回転差に応じて電動機による回生ブレーキ力を制御するものが開示されている。そして、出願明細書に、ブレーキペダルが操作された状態で、駆動輪と非駆動輪との間の回転差に応じて回生ブレーキ力を制御すること、具体的には回転数差が大きいほど回生ブレーキ力を弱めるように制御することが記載されている。
【0006】
また、左右のリーチレグに沿ってマスト装置が往復動されるリーチ型フォークリフトにおいては、路面の状態だけでなく、車両の状態即ちフォークに荷物が積載されているか否か及びマスト装置がリーチレグの前端まで移動されているか基準位置に配置されているかによっても、スリップの発生し易さが大きく異なる。図6はリーチ型フォークリフトでスイッチバックにより走行中から一旦停止し、さらに発進した場合の走行データである。路面は乾燥路面で、荷物がなくマスト装置が基準位置(引き込み位置)に配置されている状態、即ち車体重量が最小で駆動輪荷重が最大という一番スリップが発生し難い状況であるにも拘らず、発進時のすべり速度はスリップ判断用閾値αを超えてしまっている。
【0007】
また、図11は、定格荷重を積みマスト装置がリーチレグの前端まで移動されている状態、即ち車体重量が最大で駆動輪荷重が最小というスリップが一番発生し易い車両状態において、乾燥路面でスイッチバックを行った場合の走行データである。スリップが発生し難い乾燥路面であるにも拘らずスリップが発生してしまい、トラクション制御を実施した場合の走行データである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
スイッチバックにおける発進の際に見掛け上すべり速度が大きくなる原因の一つとして、前輪(従動輪)車速を検出するセンサの分解能が後輪(駆動輪)車速を検出するセンサの分解能に比べて低く、検出車速の立ち上がりが遅いことが挙げられる。この場合、加速度の変化が検出される前にスリップ状態であると判断されてしまう。従って、特開平6−81685号公報に開示された方法のように、加速度変化率が高い場合にトラクション制御を行わないようにする方法では、摩擦係数が大きくトラクション制御が不要な路面であっても、その判断が適切になされる前にトラクション制御が行われて駆動力が低下してしまうという問題がある。
【0009】
また、加速度変化率がある程度小さくても加速度自体が大きければ、フォークリフトではすべり速度が閾値を超える場合がある。従って、この場合も、摩擦係数が大きくトラクション制御が不要な路面でもあるにも拘わらず、トラクション制御が行われて駆動力が低下してしまうという問題がある。
【0010】
一方、実開平5−2505号公報及びその出願明細書に記載の装置では、ブレーキを軽く踏んだ場合に大きな回生制動力が発生する状態となり、運転者の意図しない急制動状態となるという問題がある。また、駆動輪車速と従動輪車速とが異なる状態になると直ちにスリップと判断するため、走行路面の状態を考慮して無駄なトラクション制御をしないようにすることに関しては何ら配慮がなされていない。
【0011】
また、駆動輪に制動力を加えて減速する際にも、加速の場合と同様に、路面の状態を考慮せずにスリップ状態を判断すると、摩擦係数の大きな路面での減速時において、車両の操縦性が損なわれる状態となることは殆どないのに、減速中に制動力を弱くすることで却って制動距離が長くなるという問題もある。
【0012】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的はスリップし難い摩擦係数の大きな路面状態での加速時あるいは減速時のスリップ抑制制御において、良好な操縦性を確保した状態で駆動輪への加速力又は減速力の供給の無駄な中断を抑制して、運転者(オペレータ)の違和感をなくすことができる産業車両の走行制御装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、従動輪の速度を検出する従動輪速度検出手段と、駆動輪の速度を検出する駆動輪速度検出手段と、前記従動輪速度検出手段の検出信号及び前記駆動輪速度検出手段の検出信号に基づいて駆動輪のすべり速度又はスリップ率を求め、該すべり速度又はスリップ率をスリップ判断用閾値と比較してスリップが発生しているか否かを判断するスリップ状態判断手段と、前記スリップ状態判断手段がスリップ状態と判断したことを条件の一つとして、前記駆動輪に対する駆動トルク又は制動トルクを低減するように駆動輪の駆動源又は制動部を制御するトルク低減制御手段と、前記トルク低減制御手段にトルク低減制御を許可するトルク低減制御許可状態と、トルク低減制御を許可しないトルク低減制御不許可状態とを設定するトルク低減制御許可設定手段と、車両の走行状態がトルク低減制御許可状態にあるか否かを判断するトルク低減制御許可判断手段とを備えた。
【0014】
なお、前記従動輪とは、車両の移動にともなって従動的(消極的)にのみ転動する構成のものに限らず、通常は車両の移動にともなって従動的(消極的)に転動し、必要に応じてモータなどにより駆動される構成の車輪をも含む概念である。
【0015】
この発明では、従動輪速度及び駆動輪速度に基づいて求められた駆動輪のすべり速度又はスリップ率と、スリップ判断用閾値とが比較されてスリップが発生しているか否かがスリップ状態判断手段により判断される。トルク低減制御許可状態において、スリップ状態判断手段がスリップ状態と判断すると、トルク低減制御手段により駆動輪に対する駆動トルク又は制動トルクを低減するように駆動輪の駆動源又は制動部が制御される。トルク低減制御許可設定手段は乾燥路面のようにスリップし難い路面状態においては、スリップ状態判断手段手段が一度スリップ状態と判断しただけではトルク低減制御が実施されないようにトルク低減制御許可状態を設定する。従って、路面及び車両状態が駆動輪の路面に対するグリップ力が大きく、多少スリップが発生してもトルク低減制御を行う必要のない状態において、不要なトルク低減制御が実施されるのが抑制される。その結果、オペレータの違和感をなくすことができる。
【0016】
また、前記トルク低減制御許可設定手段は、トルク低減制御不許可状態において、前記すべり速度又はスリップ率が前記スリップ判断用閾値より絶対値の大きな所定のトルク低減制御許可閾値より大きくなった状態でトルク低減制御許可状態とし、その後、車両の速度が停止速度付近の所定速度まで低下すると、トルク低減制御不許可状態とする。
【0017】
この発明では、すべり速度又はスリップ率が前記スリップ判断用閾値より絶対値の大きな所定のトルク低減制御許可閾値より大きくなった状態で、トルク低減制御許可設定手段によりトルク低減制御許可状態に設定される。その後、車両の速度が停止速度付近の所定速度まで低下すると、トルク低減制御許可状態が解除されてトルク低減制御不許可状態となる。従って、従動輪速度検出手段の分解能が低いことに起因した検出速度の立ち上がりの遅れにより、スリップし難い路面・車両状態ですべり速度又はスリップ率の絶対値がスリップ判断用閾値の絶対値より大きくなっても、最初の段階ではトルク低減制御がなされない。その結果、無駄なトルク低減制御が抑制されて、スリップの発生し難い路面・車両状態での加速あるいは減速が円滑に行われる。
【0018】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記トルク低減制御許可設定手段は少なくとも加速時にトルク低減制御不許可状態を設定する。従って、この発明では、従動輪車速を検出するセンサの分解能が低く検出車速の立ち上がりが遅いことにより、見掛け上すべり速度又はスリップ率が大きくなり易い加速時に必ず前記作用及び効果が得られる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、車両の加速度を検出する加速度検出手段と、前記車両の加速度の絶対値が予め設定された所定の値を超えた高加速度状態か否かを判断する加速度状態判断手段と、車両の高加速度状態においては前記トルク低減制御手段による不要なトルク低減制御を抑制するトルク低減制御抑制手段とをさらに備えた。なお、加速度は加速状態では正で、減速状態では負となる。
【0020】
従って、この発明では、車両加速度の絶対値が予め設定された所定の値を超えた高加速度状態か否かが、加速度状態判断手段によって判断される。そして、車両の高加速度状態においては、トルク低減制御抑制手段によりトルク低減制御手段による不要なトルク低減制御が抑制される。その結果、スリップし難い路面・車両状態における急加速や急減速時にオペレータの違和感をなくすことができる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記トルク低減制御抑制手段は、車両の高加速度状態においては、前記すべり速度又はスリップ率の大きさに拘わらず前記トルク低減制御を抑制する。従って、この発明では、トルク低減制御抑制手段がトルク低減制御を抑制するか否かの判断が簡単になる。
【0022】
請求項5に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記トルク低減制御抑制手段は、車両の高加速度状態においては、前記スリップ状態判断手段によるスリップ判断用閾値として高加速時用閾値を設定し、高加速度状態でなければスリップ判断用閾値として低加速時用閾値を設定する。
【0023】
この発明では、トルク低減制御抑制手段は、車両の高加速度状態において完全にトルク低減制御を抑制するのではなく、高加速度状態においてはスリップ判断用閾値として通常のスリップ判断用閾値より大きな値の高加速時用閾値を使用してスリップ状態と判断し難くする。そして、トルク低減制御抑制手段は、高加速度状態でなければスリップ判断用閾値として通常のスリップ判断用閾値(低加速時用閾値)を使用する。従って、請求項5に記載の発明に比較して、スリップ抑制制御がよりきめ細かく行われる。
【0025】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記産業車両は車両後部に1個の駆動輪が、車両前部に左右一対の従動輪がそれぞれ設けられ、前記駆動輪はモータにより駆動される。
【0026】
従って、この発明では、車両後部に1個設けられた駆動輪がモータで駆動され、加速時にはモータの駆動トルクが大きくなるように制御され、減速時には回生制動で制動力が駆動輪に加わる。
【0027】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の発明において、前記産業車両はマスト装置が前後に移動可能なリーチ型フォークリフトである。従って、この発明では、路面・車両状態が駆動輪のスリップし易い状態からスリップし難い状態まで大きく変化するリーチ型フォークリフトにおいて、スリップし難い路面・車両状態での加速時あるいは減速時に、良好な操縦性を確保した状態で駆動輪への加速力又は減速力の供給の無駄な中断を抑制できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明をリーチ型フォークリフトに具体化した第1の実施の形態を図1〜図6に従って説明する。
【0029】
図2,3に示すように、産業車両としてのリーチ型フォークリフト10(以下、フォークリフトという)は、車体11の前部に左右一対のリーチレグ12が前方へ延設されている。左右のリーチレグ12の先端部に従動輪としての左前輪13L及び右前輪13Rがそれぞれ取付けられている。各前輪13L,13Rには前輪ブレーキ装置14が装備されている。前輪ブレーキ装置14には油圧で操作されるドラムブレーキが採用されている。
【0030】
車体11の後部には後輪としての駆動輪15が装備され、駆動輪15は車幅方向左寄りにオフセットされて配置され、駆動輪15から所定距離離れた右側にキャスタ16が設けられている。駆動輪15は操舵輪を兼ねている。キャスタ16は図示しないリンク機構により駆動輪支持部と連結され、後記するマスト装置の位置によって駆動輪15の接地圧が大幅に変動するのを抑制する機能を備えている。
【0031】
車体11の後部右側には立席タイプの運転席(運転室)17が設けられている。運転席17の前側にあるインストルメントパネル11Aには荷役操作等のための操作レバー18と、アクセル操作手段としてのアクセルレバー19とが設けられている。運転席17の左隣に立設された収容ボックス11Bの上面にはハンドル(ステアリングホイール)20が設けられている。収容ボックス11B内には駆動輪15を駆動及び操舵するドライブユニット21が設けられている。ドライブユニット21はハンドル20の操作により、水平面内で回動可能なギヤボックスと、ギヤボックスの上方に配置されたドライブモータ22(図1及び図2に図示)とを備えており、駆動輪15はギヤボックスから延出された出力軸に支持されている。この実施の形態ではドライブモータ22に交流モータが使用されている。
【0032】
なお、運転席17の床には図示しないブレーキペダルが設けられ、ブレーキペダルはリンク機構を介して後輪ブレーキ装置(いずれも図示せず)に連結されている。後輪ブレーキ装置はブレーキペダルが踏まれている状態では解放状態(非制動状態)に保持され、ブレーキペダルが踏まれていない状態では制動状態に保持されるようになっている。
【0033】
車体11にはフォーク23aを備えたマスト装置23が左右一対のリーチレグ12に沿って前後方向に移動可能に装備されている。マスト装置23には車体11の底部に配設されたリーチ用駆動装置としてのリーチシリンダ(油圧シリンダ)24のピストンロッド24aが連結されている。操作レバー18のうちリーチレバーを操作することでオイルコントロールバルブ25(図1にのみ図示)からリーチシリンダ24に作動油が供給されてピストンロッド24aが伸縮駆動されることにより、マスト装置23は所定ストローク範囲内で前後に移動する。
【0034】
次に前記ドライブモータ22及び前輪ブレーキ装置14を駆動制御するための電気的構成及び油圧回路の構成を図1に従って説明する。
コントローラ31は、CPU32及びメモリ33を備えている。メモリ33には力行時の力行制御プログラム、減速時の回生制御プログラム、加速時及び減速時にトラクション制御を行うためプログラム、加速時及び減速時にトラクション制御を許可するか否かの判断を行うためのトラクション許可判断プログラム等の所定の制御プログラムや制御プログラムを実行する際に必要な各種データ等が記憶されている。また、メモリ33にはCPU32の演算結果等が一時記憶される。CPU32はメモリ33に記憶された制御プログラムに基づいて作動する。
【0035】
左前輪13Lの近傍及び右前輪13Rの近傍においてそれぞれリーチレグ12に設けられた従動輪速度検出手段としての左前輪車速センサ34L及び右前輪車速センサ34Rは、コントローラ31に接続されている。各車速センサ34L,34Rはそれぞれ各前輪13L,13Rの回転数に対応した検出信号を出力する。CPU32は各車速センサ34L,34Rの出力信号と各前輪13L,13Rの径に基づいて前輪13L,13Rの車速を演算する。
【0036】
ドライブユニット21の近傍に設けられた駆動輪速度検出手段としての後輪車速センサ35a,35b及び操舵角センサ36もコントローラ31に接続されている。両後輪車速センサ35a,35bは検出ギヤのピッチに対する位相を90°ずらして配置され、駆動輪15の回転数に対応したパルスを出力する。CPU32は両後輪車速センサ35a,35bの出力信号と駆動輪15の径に基づいて駆動輪15の車速を演算する。また、CPU32は両後輪車速センサ35a,35bの出力パルスの位相差に基づいて駆動輪15の回転方向が前進側か後進側かを判断(検出)する。
【0037】
アクセルレバー19が中立位置(基準位置)から操作されたか否かを検出するアクセル操作検出手段としてのアクセルセンサ37はA/D変換器(図示せず)を介してコントローラ31に接続されている。アクセルセンサ37はアクセルレバー19の操作量に比例した検出信号を出力する。CPU32はアクセルセンサ37の検出信号に基づいてオペレータが前進を意図しているのか後進を意図しているのかを判断する。即ち、アクセルレバー19がディレクションレバーの役割も果たす。CPU32はアクセルセンサ37の検出信号に基づいて、ドライブモータ22にアクセルレバー19の操作量に対応した所定の電流を供給する指令信号を図示しないインバータに出力する。
【0038】
前輪ブレーキ装置14への油圧の供給を制御するブレーキ制御バルブ38は電磁弁で構成され、コントローラ31からの指令により開閉される。ブレーキ制御バルブ38には、荷役モータ39によって駆動されるオイルポンプ40によりオイルタンク41から汲み上げられてオイルコントロールバルブ25へ供給される作動油の一部が供給される。ブレーキ制御バルブ38への作動油はアキュムレータ42を介して供給される。ブレーキ制御バルブ38にはアキュムレータ42の圧力を検出する圧力センサ43が取付けられており、アキュムレータ42の圧力が所定の圧力以下では、オイルポンプ40から吐出された作動油が優先的にアキュムレータ42に供給されるようになっている。
【0039】
CPU32はスリップ状態判断手段、トルク低減制御手段、トルク低減制御許可設定手段及びトルク低減制御許可判断手段を構成する。
CPU32は両車速センサ34L,34R、後輪車速センサ35a,35b及び操舵角センサ36の検出信号に基づいて、加速時あるいは減速時にスリップが発生しているか否かを判断する。スリップが発生しているか否かはすべり速度が所定の値(スリップ判断用閾値α)を超えているか否かで判断し、すべり速度の絶対値がスリップ判断用閾値αを超えると、スリップが発生している判断する。すべり速度は(1)式で表され、前進時であれば加速時は正、減速時は負となる。
【0040】
すべり速度=後輪車速−前輪車速・・・(1)
この実施の形態ではスリップ判断用閾値αは、例えば、前進時は0.2m/s、後進時は−0.2m/sにそれぞれ設定されている。この値は駆動輪15の摩擦係数最大の状態と対応する値を基準に設定されている。
【0041】
すべり速度を単純に(1)式で求め、前輪車速として両前輪車速センサ34L,34Rの検出信号から求めた値の平均を使用すると、旋回時に大きな誤差が生じる場合がある。なぜならば、フォークリフト10では、駆動輪15が一方にオフセットされた状態で装備されているため、図4に示すように、右旋回時と左旋回時とで前輪13L,13Rの旋回半径が大きく異なる。しかも、直進状態から旋回中心が前輪中心となるその場旋回まで操舵角が大きく変化し、旋回時の内輪は旋回中心に近く、操舵角が大きくなると旋回中心と一致して停止してしまうことがある。従って、旋回時のスリップの判断には旋回時の外輪の速度を用いてすべり速度を求める必要がある。
【0042】
そして、駆動輪15のスリップは駆動輪15のある位置で、駆動輪15の車速と、駆動輪15の進行方向の車体速度と比較すべきであるため、前輪車速を後輪位置での車速に変換する必要がある。従って、CPU32はすべり速度を(2)式から求める。
【0043】
すべり速度=後輪車速−旋回時外輪前輪車速×後輪位置変換係数・・・(2)
ここで、図4に示すように、ホイールベース長をLW 、トレッドの半分の長さをLT 、駆動輪15のオフセット量をLD 、旋回角(操舵角)をθとし、かつ左旋回時の外輪即ち右前輪13Rの旋回半径をRR 、右旋回時の外輪即ち左前輪13Lの旋回半径をRL 、駆動輪15の旋回半径をRD とすると、左旋回時の後輪位置変換係数KL 及び右旋回時の後輪位置変換係数KR は次式となる。
【0044】
KL =LW /{LW cosθ+(LT −LD )sinθ}・・・(3)
KR =LW /{LW cosθ+(LD +LT )sinθ}・・・(4)
直進状態、即ち操舵角θが0°であれば、(3),(4)式においてKL 及びKR はいずれも1になる。従って、直進時であっても(3),(4)式は使用できる。従って、CPU32は(2),(3),(4)式を使用してすべり速度を演算し、すべり速度の絶対値がスリップ判断用閾値αを超えると、スリップが発生していると判断する。
【0045】
CPU32は、加速時あるいは減速時にスリップが発生していると判断すると、駆動輪15の駆動力あるいは回生制動力を低減するトルク低減制御(以下トラクション制御と称す。)を行う。即ち、加速時にスリップが発生している(スリップ状態)と判断すると、駆動輪15(後輪)の速度が小さくなるように、即ちドライブモータ22の出力トルクが小さくなるように制御する。また、回生制動で減速する際、スリップ状態と判断すると、回生トルクを制御するとともに必要に応じて前輪ブレーキ装置14も作動させる。
【0046】
CPU32はトラクション制御を実行する前に、トラクション許可状態か否かを判断し、トラクション許可状態においてスリップ状態と判断した場合にトラクション制御を実施する。従って、トラクション許可状態にない場合、即ちトラクション不許可状態においてはスリップ状態と判断してもトラクション制御を行わない。
【0047】
CPU32はトラクション許可状態か否かの判断を、トラクション許可フラグが立っているか否かで判断する。CPU32は発進後、すべり速度が前記スリップ判断に使用するスリップ判断用閾値αの値より大きなトルク低減制御許可閾値(以下、トラクション許可速度と称す)を超えるとトラクション許可フラグを立て、その後、車速が停止速度付近の所定速度(トラクション不許可速度)より低下したときにトラクション許可フラグを降ろす。前記トラクション許可速度はスリップし難い路面、即ち乾燥路面のような摩擦係数が大きな路面において、予め実験によりトラクション制御を行わなくても駆動輪15が路面に対して大きなグリップ力が維持できる状態を超える値に設定されている。この実施の形態ではトラクション許可速度は例えば0.5m/sに設定されている。
【0048】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
フォークリフト10を運転する場合、オペレータはブレーキペダルを踏んだ状態でアクセルレバー19を操作する。CPU32はアクセルセンサ37の出力信号を入力し、アクセルレバー19が基準位置より前側に操作されているか、後側に操作されているかを判断する。また、CPU32は後輪車速センサ35a,35bの出力信号に基づいて駆動輪15の回転方向が前進側か後進側かを判断する。
【0049】
そして、CPU32はアクセルレバー19の操作方向と駆動輪15の回転方向とが一致している場合は力行と判断し、逆の場合は制動(スイッチバック)と判断する。そして、力行と判断した場合はアクセルレバー19の操作量に対応した目標トルクをメモリ33に記憶されたマップから演算し、その目標トルクになるようにドライブモータ22を制御する。また、制動と判断した場合は、回生制動を行うための目標トルクを駆動輪15の回転速度とそのときのアクセルレバー19の操作量に基づいてメモリ33に記憶された回生制動用のマップから演算し、目標トルクとなるようにドライブモータ22を制御する。
【0050】
CPU32は所定周期で図5のフローチャートに従ってトラクション許可判断処理を実行する。先ずステップS1でトラクション許可状態か否かを判断する。具体的にはトラクション許可フラグが立っているか否かを判断する。そして、ノー即ちトラクション許可状態でなければステップS2に進み、すべり速度がトラクション許可速度より大きいか否かを判断する。CPU32はステップS2でイエス即ちすべり速度がトラクション許可速度より大きければ、ステップS3に進んでトラクション許可処理を行った後、即ちトラクション許可フラグを立てた後、メインルーチンに戻り、ノーであればそのままメインルーチンに戻る。また、CPU32はステップS1でトラクション許可フラグが立っていればステップS4に進み、ステップS4で車体速度(即ち、前輪速度)がトラクション不許可速度より低いか否かを判断する。そして、イエスであればステップS5に進んでトラクション不許可処理を行った後、即ちトラクション許可フラグを降ろした後、メインルーチンに戻り、ノーであればそのままメインルーチンに戻る。
【0051】
CPU32は加速時及び減速時(制動時)に、大きなスリップが発生しないように、すべり速度が駆動輪15の摩擦係数最大となる範囲になるように、駆動輪15に対する駆動トルク又は回生トルクを制御するようにドライブモータ22の出力を制御するトラクション制御を行う。
【0052】
CPU32は所定周期ですべり速度を前記(2),(3),(4)式を使用して演算し、すべり速度の絶対値がスリップ判断用閾値αの絶対値を超えているか否かの判断により、スリップが発生しているか否かを判断する。そして、スリップが発生していると判断すると、トラクション許可状態か否かの判断を行い、トラクション許可状態であればトラクション制御を実行する。トラクション許可状態でなければスリップが発生していると判断した場合でもトラクション制御を実施せずに、力行制御あるいは回生制動を継続する。
【0053】
なお、回生制動の際、回生トルクを大きくするように制御しなければならない場合は、後輪制動力が足らないと判断できるので、CPU32は前輪ブレーキ装置14を作動させて両前輪13L,13Rの制動も実施する。
【0054】
以上の制御を例えば乾燥路面で荷物がなく、かつマスト装置23が基準位置まで引き込まれた状態、即ち車体重量が最小で駆動輪重が最大という一番スリップが発生し難い状態において、スイッチバック時の一時停止後の再加速時に行った場合を、従来技術と比較する。
【0055】
従来技術ではすべり速度がスリップ判断用閾値αを超えるとトラクション制御を実施する。従って、図6に示すようにすべり速度が変化する場合は、t1 ,t2 ,t3 の各時点でトラクション制御が行われ、特にt1 におけるトラクション制御の際は駆動トルクの減少率が大きくなり、オペレータに違和感を与える。
【0056】
しかし、この実施の形態の制御装置では、すべり速度がトラクション許可速度を一度超えるまではトラクション許可状態とならない。そして、一番スリップが発生し難いこの路面・車両状態では、すべり速度がトラクション許可速度を超えるほど大きくならず、トラクション制御は行われない。従って、オペレータの意図に沿った急加速が行われる。
【0057】
一方、スリップが発生し難い乾燥路面であるにも拘らずスリップが発生する状態、例えば定格荷重を積みマスト装置23がリーチレグ12の前端まで移動されている状態、即ち車体重量が最大で駆動輪重が最小というスリップが一番発生し易い車両状態においては、図11に示すように、すべり速度は再加速を開始してすぐにトラクション許可速度を超える。従って、その後はトラクション制御が許可された状態となり、従来と同様にトラクション制御が行われる。即ち、スリップが発生し易い状態ではトラクション制御が従来とほぼ同様に行われる。
【0058】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) トラクション制御を実施する条件として、スリップ状態であるとの判断に加えて、トラクション許可状態であることを加え、スリップが発生し難い路面・車両状態においては見掛け上スリップ状態でもトラクション不許可状態となるようにした。従って、産業車両がスリップし難い摩擦係数の大きな路面状態での加速時あるいは減速時のスリップ抑制制御において、良好な操縦性を確保した状態で駆動輪15への加速力又は減速力の供給の無駄な中断を抑制して、運転者(オペレータ)の違和感をなくすことができる。
【0059】
(2) すべり速度がスリップ判断用閾値αより絶対値の大きな所定トルク低減制御許可閾値を一度超えるとトラクション許可状態とし、その後、車両速度が停止速度付近の所定速度まで低下したときに、トラクション不許可状態とするようにした。従って、トラクション許可状態及びトラクション不許可状態の設定が簡単でしかも適切になされる。
【0060】
(3) トラクション制御を実施する条件として、スリップ状態であるとの判断に加えて、トラクション許可状態であることを、加速状態及び減速状態の両方において加えた。従って、加速時及び減速時の両方において、良好な操縦性を確保した状態で駆動輪15への加速力又は減速力の供給の無駄な中断を抑制して、運転者(オペレータ)の違和感をなくすことができる。
【0061】
(4) スリップ判断をすべり速度に基づいて行うため、発進時のように低速状態においてはスリップ率に基づいて行う場合に比較して、判断精度が良くなる。
【0062】
(5) 路面・車両状態が駆動輪のスリップし易い状態からスリップし難い状態まで大きく変化するリーチ型フォークリフトにおいて、前記の各制御が行われるため、スリップし難い路面・車両状態での加速時あるいは減速時に、良好な操縦性を確保した状態で駆動輪15への加速力又は減速力の供給の無駄な中断を抑制できる。
【0063】
(6) 駆動輪15がドライブモータ22によって駆動され、制動が回生制動によって行われるため、駆動輪15の制動をブレーキ装置によって行う場合に比較してバッテリの電力消費が少なくなる。
【0064】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態を図7〜図10に従って説明する。この実施の形態では前記実施の形態のトラクション制御の条件に加えて、高加速度状態または減速度が大きな状態では、スリップ判断基準の閾値の絶対値を大きな値に変更するようにした点が前記実施の形態と異なっている。その他の構成は基本的に同じであり、同一部分は同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
急加速あるいは急な減速が得られるということは、スリップし難い摩擦係数の大きな路面・車両状態であることを示している。従って、このような状態では、スリップ判断用閾値を大きくして、トラクション制御を実施するすべり速度を大きくしても、車両の操縦性を低下させることがない。
【0066】
この実施の形態ではスリップ判断基準の閾値として、高加速度状態でない場合即ち低加速度状態では前記実施の形態と同じ値のスリップ判断用閾値αを使用し、高加速度状態ではスリップ判断用閾値αより絶対値の大きな高加速状態用のスリップ判断用閾値βを使用する。
【0067】
CPU32は前輪13L,13Rの速度から加速度を演算する。加速度は、今回の制御周期における前輪13L,13Rの平均速度と、前回の制御周期における前輪13L,13Rの平均速度との差(ΔVF )を制御周期(ΔT)で割ること(ΔVF /ΔT)で求められる。即ち、CPU32は加速度検出手段を構成する。
【0068】
CPU32は車両加速度(車体加速度)が高加速度状態にあるか否(即ち低加速度状態にある)かを所定周期で判断し、高加速度状態であれば高加速度状態フラグを立て、低加速度状態であれば高加速度状態フラグを降ろす。高加速度状態か否かの判断は、車体加速度が所定の加速度より高いか否かで判断する。この実施の形態ではヒステリシスを考慮して、低加速度状態から高加速度状態への移行時と、高加速度状態から低加速度状態への移行時とで異なる閾値を使用する。そして、図7のマップに示すように、低加速度状態から高加速度状態への移行時の閾値(高加速度閾値)が加速側で1.0m/s2 、減速側で−1.0m/s2 にそれぞれ設定され、高加速度状態から低加速度状態への移行時の閾値(低加速度閾値)が加速側で0.2m/s2 、減速側で−0.2m/s2 にそれぞれ設定されている。高加速度閾値はフォークリフトにとっての高加速度の値が使用される。
【0069】
CPU32は図8のフローチャートに従って加速時に車体加速度が高加速度状態にあるか否かの判断を行う。先ず、ステップS11でトラクション許可状態か否かを判断し、ノーであればメインルーチンに戻り、イエスであればステップS12に進んで低加速度状態か否かを判断する。ステップS12でイエス即ち低加速度状態であればステップS13に進み、ノーであればステップS14に進む。そして、ステップS13で車体加速度が高加速度閾値(1.0m/s2 )より大きいか否かを判断し、イエス即ち車体加速度が高加速度閾値より大きければステップS15に進んで高加速度状態フラグを立て、ノーであればメインルーチンに戻る。また、CPU32はステップS14で車体加速度が低加速度閾値(0.2m/s2 )より小さいか否かを判断し、イエス即ち車体加速度が低加速度閾値より小さければステップS16に進んで高加速度状態フラグを降ろし、ノーであればメインルーチンに戻る。
【0070】
また、CPU32は図9のフローチャートに従って減速時に車体加速度が高加速度状態にあるか否かの判断を行う。先ず、ステップS21でトラクション許可状態か否かを判断し、ノーであればメインルーチンに戻り、イエスであればステップS22に進んで低加速度(低減速)状態か否かを判断する。ステップS22でイエス即ち低加速度状態であればステップS23に進み、ノーであればステップS24に進む。そして、ステップS23で車体加速度が高加速度閾値(−1.0m/s2 )より小さいか否かを判断し、イエス即ち車体加速度が高加速度閾値より小さければステップS25に進んで高加速度状態フラグを立て、ノーであればメインルーチンに戻る。また、CPU32はステップS24で車体加速度が低加速度閾値(−0.2m/s2 )より大きいか否かを判断し、イエス即ち車体加速度が低加速度閾値より大きければステップS26に進んで高加速度状態フラグを降ろし、ノーであればメインルーチンに戻る。なお、減速時には加速度としては負となり、高加速度状態とは加速度の絶対値が大きいことを意味する。
【0071】
CPU32は前記実施の形態と同様にすべり速度を演算し、トラクション許可状態であれば、高加速度状態か低加速度状態かを判断する。そして、高加速度状態であれば高加速状態用のスリップ判断用閾値βを使用してスリップ状態か否かを判断し、スリップ状態であればトラクション制御を行う。また、高加速度状態でなければ、スリップ判断用閾値αを使用してスリップ状態か否かを判断し、スリップ状態であればトラクション制御を行う。
【0072】
この実施の形態では高加速状態用のスリップ判断用閾値βは、例えば、前進時には0.3m/s、後進時には−0.3m/sにそれぞれ設定され、低加速度状態用のスリップ判断用閾値αは、例えば、前進時には0.2m/s、後進時には−0.2m/sにそれぞれ設定されている。
【0073】
図10に発進後、スイッチバックにより一旦停止し、さらに発進した場合で、高加速度状態と低加速度状態とでスリップ判断用の閾値を変更した場合の前輪速度、後輪速度、加速度及びすべり速度の変化を示す。路面は乾燥路面で、車両状態は荷物がなくマスト装置23が基準位置に配置されている状態、即ち車体重量が最小で駆動輪荷重が最大という一番スリップが発生し難い状態である。また、トラクション制御を実施する条件として、加速時にはスリップ状態であるとの判断に加えてトラクション許可状態であることを加え、減速時にはスリップ状態であることだけとした。
【0074】
加速側では時間T1 〜T2 間及び時間T5 〜T6 間では高加速度状態と判断され、スリップ判断に高加速状態用のスリップ判断用閾値β(0.3m/s)が使用され、それ以外のときはスリップ判断にスリップ判断用閾値α(0.2m/s)が使用される。減速側では時間T3 〜T4 間では高加速度状態と判断され、スリップ判断に高加速状態用のスリップ判断用閾値β(−0.3m/s)が使用され、それ以外のときはスリップ判断にスリップ判断用閾値α(−0.2m/s)が使用される。
【0075】
図10において加速側を見ると、発進後、スイッチバックを開始するまで、すべり速度はトラクション許可速度を超えないため、すべり速度が時間T1 付近でスリップ判断用閾値αを超えているが、トラクション制御は行われない。また、スイッチバックによる停止後の発進時には、すべり速度は一度トラクション許可速度を超えた後、時間T5 付近でスリップ判断用閾値αを超えている。しかし、このときは高加速度状態のためスリップ判断に高加速状態用のスリップ判断用閾値βが使用される状態のため、トラクション制御は行われない。
【0076】
一方、減速側を見ると、トラクション制御を実施する条件がスリップ状態であることだけであるため、スイッチバックによる減速が高加速度状態となる時間T3 に至る前に、すべり速度がスリップ判断用閾値αを超える(絶対値が大きくなる)状態に2度なり、そのたびにトラクション制御が実施される。時間T3 を過ぎてすぐにすべり速度がスリップ判断用閾値αを超えるが、この時点では閾値が高加速状態用のスリップ判断用閾値βに変更されているため、トラクション制御は実施されない。
【0077】
なお、減速時にも加速時と同様に、トラクション制御を実施する条件に、スリップ状態であるとの判断に加えてトラクション許可状態であることを加えれば、図10に破線で示すように、減速中にすべり速度は減速側のトラクション許可速度(−0.5m/s)を超えない。従って、時間T3 に至る前にすべり速度がスリップ判断用閾値α(−0.2m/s)を超える(絶対値が大きくなる)状態になるがトラクション制御が行われず、減速中に一度もトラクション制御が行われない。
【0078】
従って、この実施の形態では、前記実施の形態の(1)〜(7)の効果の他に次の効果を有する。
(8) 車両が高加速度状態においては、スリップ判断用閾値として高加速時用閾値βを設定し、高加速度状態でなければスリップ判断用閾値として低加速時用閾値即ちスリップ判断用閾値αを設定する。従って、スリップし難い路面・車両状態における急加速や急減速時に不要なトラクション制御が抑制され、オペレータの違和感をなくすことができる。
【0079】
(9) ヒステリシスを考慮して、低加速度状態から高加速度状態への移行時と、高加速度状態から低加速度状態への移行時とで、車両が高加速度状態か否かの判断に異なる閾値を使用する。従って、高加速度状態か否かの判断がより適切に行われる。
【0080】
なお、実施の形態は前記に限定されるものでなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 高加速度状態において不要なトラクション制御を抑制する方法として、高加速度状態と低加速度状態においてスリップ状態判断手段によるスリップ判断用閾値として異なる値を使用する代わりに、高加速度状態においてはすべり速度の大きさに拘わらずトラクション制御を抑制するようにしてもよい。この場合、CPU32がトラクション制御を抑制するか否かの判断が簡単になる。
【0081】
○ 高加速度状態において不要なトラクション制御を抑制する方法として、トラクション許可状態にあるか否かの判断を行わずに、高加速度状態においてスリップ判断用閾値として高加速時用閾値を使用し、低加速度状態においては低加速時用閾値を使用する構成としたり、高加速度状態においてはすべり速度の大きさに拘らずトラクション制御を抑制する構成としてもよい。この場合も、スリップし難い摩擦係数の大きな路面状態での加速時あるいは減速時のスリップ抑制制御において、良好な操縦性を確保した状態で駆動輪15への加速力又は減速力の供給の無駄な中断を抑制して、オペレータの違和感をなくすことができる。
【0082】
○ 高加速度状態において使用する高加速時用閾値を車両状態に対応して複数設けてもよい。例えば、荷物ありでマスト装置23が基準位置に配置されている状態と、荷物なしでマスト装置23が基準位置に配置されている状態とで高加速時用閾値を変更する。この場合、よりきめ細かく加速力又は減速力の供給の無駄な中断を抑制できる。
【0083】
○ 低加速度状態から高加速度状態への移行時と、高加速度状態から低加速度状態への移行時とで、ヒステリシスを考慮せずに車両が高加速度状態か否かの判断に使用する閾値を同じにしてもよい。
【0084】
○ スリップ判断用閾値の値あるいは高加速度状態か否かの判断に使用する閾値の値をそれぞれ加速側と減速側とで同じにせずに別の値としてもよい。例えば、減速側のスリップ判断用閾値あるいは高加速度状態か否かの判断に使用する閾値の絶対値を加速側の値に比較して大きく設定してもよい。
【0085】
○ 加速度を従動輪の速度に基づいて演算する代わりに、加速度検出手段として加速度センサを設け、その検出信号に基づいて高加速度状態か否かの判断を行う構成としてもよい。
【0086】
○ スリップの発生をすべり速度で検出する代わりに、スリップ率で検出するようにしてもよい。加速スリップ率及び減速スリップ率は次式で表される。
加速スリップ率=|(駆動輪車速−車体速)/駆動輪車速|
減速スリップ率=|(車体速−駆動輪車速)/車体速|
○ ドライブモータ22に直流モータを使用してもよい。
【0087】
○ 前輪13L,13Rを完全な従動輪ではなく、モータで駆動可能とし、通常は車両の移動にともなって従動的(消極的)に転動し、例えばすべりが生じた際等に、必要に応じてモータにより駆動される構成としてもよい。
【0088】
○ リーチ型フォークリフトに限らず、マスト装置が前後に移動しないタイプで両前輪が従動輪、後輪に1個の駆動輪を備えたフォークリフト、例えばオーダピッキングフォークリフトや、後輪が2個、又は前輪が駆動輪、後輪が従動輪のフォークリフト等の他の産業車両に適用してもよい。また、前記産業車両で駆動輪をエンジンで駆動する構成にしてもよい。
【0089】
前記実施の形態から把握できる請求項記載以外の発明(技術思想)について、以下にその効果とともに記載する。
(1) 前記加速度状態判断手段は、高加速度状態か否かを判断する際に使用する所定の値(閾値)に、ヒステリシスを考慮して、低加速度状態から高加速度状態への移行時と、高加速度状態から低加速度状態への移行時とで異なる閾値を使用する。この場合、高加速度状態か否かの判断をより適切に行うことができる。
【0090】
(2) 前記スリップ状態判断手段はすべり速度をスリップ判断用閾値と比較する。この場合、スリップ率に基づいて行う場合に比較して、判断精度が良くなる。
【0091】
(3) 前記高加速時用閾値を車両状態に対応して複数設ける。この場合、よりきめ細かく加速力又は減速力の供給の無駄な中断を抑制できる。
【0092】
(4) 産業車両の走行制御装置を備えたリーチ型フォークリフト。
【0093】
【発明の効果】
以上詳述したように各請求項に記載の発明によれば、スリップし難い摩擦係数の大きな路面状態での加速時あるいは減速時のスリップ抑制制御において、良好な操縦性を確保した状態で駆動輪への加速力又は減速力の供給の無駄な中断を抑制して、運転者(オペレータ)の違和感をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の概略構成図。
【図2】リーチ型フォークリフトの側面図。
【図3】同じく平面図。
【図4】旋回時の前輪及び後輪の旋回半径の関係を示す模式図。
【図5】トラクション許可判断処理を示すフローチャート。
【図6】前輪車速、後輪車速、すべり速度の時間変化を示すグラフ。
【図7】第2の実施の形態の高加速度閾値を求めるマップ。
【図8】同じく加速側の高加速度状態判断処理を示すフローチャート。
【図9】同じく減速側の高加速度状態判断処理を示すフローチャート。
【図10】加速度、すべり速度等の時間変化を示すグラフ。
【図11】スリップし易い状態でのすべり速度等の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
10…産業車両としてのフォークリフト、13L…従動輪としての左前輪、13R…従動輪としての右前輪、15…駆動輪、34L…従動輪速度検出手段としての左前輪車速センサ、34R…同じく右前輪車速センサ、35a,35b…駆動輪速度検出手段としての後輪車速センサ、32…スリップ状態判断手段、トルク低減制御手段、トルク低減制御許可設定手段、トルク低減制御許可判断手段、加速度検出手段、加速度状態判断手段及びトルク低減制御抑制手段としてのCPU。
Claims (7)
- 従動輪の速度を検出する従動輪速度検出手段と、
駆動輪の速度を検出する駆動輪速度検出手段と、
前記従動輪速度検出手段の検出信号及び前記駆動輪速度検出手段の検出信号に基づいて駆動輪のすべり速度又はスリップ率を求め、該すべり速度又はスリップ率をスリップ判断用閾値と比較してスリップが発生しているか否かを判断するスリップ状態判断手段と、
前記スリップ状態判断手段がスリップ状態と判断したことを条件の一つとして、前記駆動輪に対する駆動トルク又は制動トルクを低減するように駆動輪の駆動源又は制動部を制御するトルク低減制御手段と、
前記トルク低減制御手段にトルク低減制御を許可するトルク低減制御許可状態と、トルク低減制御を許可しないトルク低減制御不許可状態とを設定するトルク低減制御許可設定手段と、
車両の走行状態がトルク低減制御許可状態にあるか否かを判断するトルク低減制御許可判断手段とを備え、
前記トルク低減制御許可設定手段は、トルク低減制御不許可状態において、前記すべり速度又はスリップ率が前記スリップ判断用閾値より絶対値の大きな所定のトルク低減制御許可閾値より大きくなった状態でトルク低減制御許可状態とし、その後、車両の速度が停止速度付近の所定速度まで低下すると、トルク低減制御不許可状態とする産業車両の走行制御装置。 - 前記トルク低減制御許可設定手段は少なくとも加速時にトルク低減制御不許可状態を設定する請求項1に記載の産業車両の走行制御装置。
- 車両の加速度を検出する加速度検出手段と、
前記車両の加速度の絶対値が予め設定された所定の値を超えた高加速度状態か否かを判断する加速度状態判断手段と、
車両の高加速度状態においては前記トルク低減制御手段による不要なトルク低減制御を抑制するトルク低減制御抑制手段と
をさらに備えた請求項1又は請求項2に記載の産業車両の走行制御装置。 - 前記トルク低減制御抑制手段は、車両の高加速度状態においては、前記すべり速度又はスリップ率の大きさに拘わらず前記トルク低減制御を抑制する請求項3に記載の産業車両の走行制御装置。
- 前記トルク低減制御抑制手段は、車両の高加速度状態においては、前記スリップ状態判断手段によるスリップ判断用閾値として高加速時用閾値を設定し、高加速度状態でなければスリップ判断用閾値として低加速時用閾値を設定する請求項3に記載の産業車両の走行制御装置。
- 前記産業車両は車両後部に1個の駆動輪が、車両前部に左右一対の従動輪がそれぞれ設けられ、前記駆動輪はモータにより駆動される請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の産業車両の走行制御装置。
- 前記産業車両はマスト装置が前後に移動可能なリーチ型フォークリフトである請求項6に記載の産業車両の走行制御装置。
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