JP3596198B2 - 運転者監視装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は運転者の疲労度・覚醒度などの心身状態を監視する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両内での運転者の監視は、居眠りや疲労による集中力低下で起こる交通事故を未然に防ぐという意味で大変重要な技術である。運転者の監視方法としてとして、これまでに様々な生体情報の検出技術が考案されてきた。生体信号を直接利用する場合の検出対象としては、心電情報や脈拍といった循環器系の情報に関連するもの(特開平4−183439号公報等)、瞬きや瞼の開閉など目の動きに関するもの(実開平1−12503号公報等)などがある。ここで心電情報などの循環器系情報は、自律神経の働きを反映した指標として運転者の心身状態をより正確に推定する場合に有効である。
【0003】
例えば特開平4−183439号公報ではステアリングホイールから心電図を検出する技術が開示されている。図7において、ステアリングホイール101には、一対の電極102(102aと102b)が互いに分離した状態で配設されている。電極102の信号は増幅器103で増幅され、A/D変換器104によりデジタルに変換された後、CPU105に送られるよう構成されている。また、CPU105はROM106、RAM107、出力装置108の為のインタフェース109とバスを介して接続されている。
【0004】
上記構成において、運転者がステアリングホイール101を操作するとき、電極102aおよび102bと接触することになるので心電信号が検出される。心電信号は増幅器103により適当なレベルに増幅される。続いてA/D変換器104でA/D変換されてCPU105に送られる。送られたデータは、RAM107上にいった保持される。CPU105はROM106に格納されているプログラムに従い処理を行う。すなわち、心電信号より最も高いピークを持つ波であるR波の間隔を求め、さらにその移動平均とばらつきを算出する。覚醒度がこれらの値と相関を持つことから判断基準を設け、この基準に基づいて居眠りを検出する。居眠りを検出すると、出力装置より運転者に警告が与えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の運転者監視装置では次のような課題があった。
【0006】
すなわち、心電情報や脈拍といった指標を用いる監視の方式は、運転者の居眠りに至る前の覚醒状態も含んだいわゆる心身状態を推定するのに適した方式であるが、心拍数の分散などで心拍の傾向を疲れているか否かをその解析した結果だけで判断するには心身状態の特徴が出にくいという課題があった。
【0007】
さらに、運転者に負担をかけずに心拍の計測を常に行うのは難しく、信号計測の中断があり、その結果生体情報が入らなくなり、心身状態を把握できないという課題があった。
【0008】
同様に、ハンドルに心拍計測のセンサを設けて心拍を計測しても、ハンドルは常に握っているものではなく手を瞬間的に離してしまうことなどがあり、常に心拍を捉えることができるものではなかった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、自動車の座席に設けた運転者の生体信号を検出する生体信号検出手段と、前記生体信号検出手段より得られる生体信号から信号解析指標を演算する演算手段と、ハンドルに設けられ前記運転手の手が接触しているか否かを検出する検出手段と、前記信号解析指標と前記検出手段の情報とから前記運転者の心身状態を判定するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、自動車の運転時か非運転時かを識別する識別手段と、前記識別手段の情報と運転者の生体信号により得られる信号解析指標とから前記運転者の心身状態を判定する判定手段とを有するものである。
【0011】
そして、運転者の生体信号の信号処理を行い、信号処理した値である信号解析指標と運転時か否かの情報により運転者の心身状態が居眠り状態にあるか等を判定して、運転者を監視するものである。
【0012】
さらに前記識別手段はハンドルに設け、手が接触しているか否かを検出する検出手段により運転時か非運転時かを識別するようにしてある。
【0013】
そしてハンドルに設けた検出手段により手がハンドルに触れていない時間が一定以上あれば非運転時であると判断し、手がハンドルに触れていることを検出手段で検出した場合は運転中であると識別するようにしてある。
【0014】
また、自動車の運転者の生体信号により得られる信号解析指標と運転者の生体信号の検出が中断している時間である時間情報とから運転者の心身状態を判定する判定手段とを有するものである。
【0015】
そして運転者の生体信号により信号処理し、その信号処理した解析指標とその信号解析指標を演算できなかった中断時間から解析指標が示す値が運転者の休息による指標なのか居眠り状態に入ったための指標なのかを識別するものである。
【0016】
また、運転者の連続した生体信号により得られる信号解析指標と、運転者の生体信号検出の中断中の信号解析指標を推定する推定手段と、推定手段で推定された信号解析指標と生体信号検出の中断時間から運転者の心身状態を判定する判定手段とを有するものである。
【0017】
そして運転者の生体信号により信号処理し、その信号処理した解析指標とその信号解析指標を演算できなかった中断時間の解析指標を推定し、その推定した解析指標及び中断時間から運転者の状態を判定するものである。
【0018】
さらに、運転者の心身状態に関する情報を運転者に報知する報知手段を設けることにより居眠り等の不安全行為を事前に監視するようにいてある。
【0019】
また、運転者の心身状態に関する情報に基づいて運転対象物の動作を規定するパラメータを変更する制御手段を有したものである。
【0020】
また、運転者の心身状態に関する情報に基づいて運転対象物の機器の動作状態を変更する制御手段を有したものである。
【0021】
以下本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0022】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の運転者監視装置の構成を示す構成図である。運転者1は運転座席2に座っており、運転座席2の内部には生体信号検出手段3が配設されている。生体信号検出手段3の出力は、演算手段4に接続してある。この生体信号検出手段3及び演算手段4にて生体信号より得られるカオス指標を演算するようにしてある。そして、演算手段4から運転者1の心身状態を判定する判定手段5に接続してある。判定手段5で判定した結果に基づいて自動車の制御手段6を制御し、制御手段6の出力により駆動手段7を駆動するようにしてある。8はハンドル、9はブレーキで共に制御手段6を介して駆動手段7を駆動するようにしてある。なお、制御手段6は運転者の心身状態に関する情報に基づいて運転対象物の動作を規定するパラメータを変更したり、運転対象物の機器の動作状態を変更する。
【0023】
次に動作について説明する。生体信号検出手段3は運転者1の臀部から運転者1の心機図を検出する。心機図とは心臓の拍動に伴う体表面の振動で、薄膜加工されたポリフッ化ビニリデンなどの高感度の圧力センサを用いれば容易にセンシングできる。得られた心機図から、ピーク間間隔を求めることにより、ほぼ心拍に対応した系列データを得ることが出来る。
【0024】
このデータをスプライン曲線などで補完して時系列データとして扱い周波数解析をすると、1/f様のゆらぎが認められることが知られている。これは、心拍間隔データに非線形成分が含まれていることを示唆している。演算手段4は、生体信号検出手段3が検出したデータについてカオス理論に基づく指標を求め、このデータが持つゆらぎを数値化する。カオス指標としては、相関次元(フラクタル次元)やリアプノフ指数などがあるが、ここではリアプノフ指数を例として説明する。
【0025】
演算手段4において、心拍間隔データは5分ごとの単位に切り分けられる。切り分けられた5分単位の心拍間隔系列に対して、リアプノフ指数が求められる。ここでの5分という時間は絶対的なものではない。
【0026】
リアプノフ指数を求める手順を以下に示す。リアプノフ指数とは、時間の経過に伴ってアトラクタ上の近接する点がどの程度離れるかを表す指標で、もととなるデータの将来の予測しにくさを表している。これはカオスの特徴の一つである初期値依存性と深く関わっている。アトラクタとは、n次元空間における系の軌道を表すものもである。心拍間隔など一次元のデータ系列に対しては、
X(t1),X(t2),・・・・,X(ti),・・・・に対して、これをn次元相空間に対してNポイントのデータを埋め込むために以下のようなデータセットを用意する。
【0027】
{X(t1),X(t1+τ),・・・・,X(t1+(n-1)τ)}
{X(t2),X(t2+τ),・・・・,X(t2+(n-1)τ)}
・・・・・
{X(ti),X(ti+τ),・・・・,X(ti+(n-1)τ)}
・・・・・
{X(tN),X(tN+τ),・・・・,X(tN+(n-1)τ)}ここでi番目の点を
Xin={X(ti),X(ti+τ),・・・・,X(ti+(n-1)τ)}と表わすことができる。
【0028】
この様にして得られたアトラクタ上のある点X(0)を基準としたとき、その軌道上の次の点X(1)についてベクトルX(0)X(1)に直交し、単位距離だけ離れた点をY0(0)とする。X(0)、Y0(0)についてτ時間経過したときの点を、X(τ)、Y0(τ)とする。そしてX(0)とY0(0)の距離をd0(0)、X(τ)とY0(τ)の距離をd0(τ)とする。このときの2点間の距離のτ時間経過後の拡大(縮小)率は、d0(τ)をd0(0)で割ることにより求められる。
【0029】
次に、X(τ)とY0(τ)と同一方向で単位距離だけ離れた点をY1(0)とする。X(τ)、Y1(0)についてτ時間経過したときの点を、X(2τ)、Y1(τ)とする。そしてX(τ)とY1(0)の距離をd1(0)、X(2τ)とY1(τ)の距離をd1(τ)とする。このときの2点間の距離のτ時間経過後の拡大(縮小)率は、d1(τ)をd1(0)で割ることにより求められる。
このステップを繰り返し、各ステップで求められる距離の拡大(縮小)率の平均がリアプノフ指数である。これを一般化すると次のように表すことができる。
【0030】
【数1】
【0031】
なお、埋め込み次元が例えば3次元であれば、各次元ごとに計三つのリアプノフ指数が得られるが、そのうち最大のものを特に最大リアプノフ指数という。
【0032】
図2は、健康な男性の運転時の心拍間隔について15分を単位として最大リアプノフ指数の変化を示したものである。横軸は経過時間で単位は分である。運転開始と共にリアプノフ指数は低下し、休憩をとることによって再び上昇するというリズムが繰り返されていることがわかる。運転開始直後と、最初に渋滞に巻き込まれた時間帯ではその低下が著しい。心拍数についても、同様にプロットしている。リアプノフ指数と心拍数には負の相関がある。しかし、二つの指標の間には変化率に関してその解像度に大きな隔たりがあることがわかる。例えば、二度目の休憩の後の運転再開時には、最大リアプノフ数の方は大きく減少しているのに、心拍数の方は僅かな上昇しか見られない(二つの指数の間では単位は異なっているが、おのおのの軸の目盛りは等しい割合でとっているので、このまま視覚的な形で比較しても問題はない)。以上のことから、従来技術に対するカオス指標を用いた本発明の優位性は明らかである。
【0033】
次に、判定手段5は演算手段4が求めたカオス指標を用いて運転者1の心身状態を判定する。ここでいう心身状態の判定とは、長時間の運転による疲労や休憩による疲労の回復、居眠りなどの心身状態を意味する。心拍のゆらぎは自律神経系に支配されており、これは交感神経系と副交感神経系の二重支配を受けている。交感神経系が活性化すると、心拍数は上昇し生体にとって活動に適した状態になる。副交感神経系が活性化すると、心拍数は下降する。生体においてはそれぞれの神経系が独立に作用してるのではなく、相互に求心性を持ちながら活動している。このフィードバック機能を有する拮抗支配が、心拍がカオス的ふるまいをする原因である。従って、どちらか一方の神経系が突出した場合には、カオス指標は小さくなる。この様な事態は、運転によるストレス負荷によって生じる。
【0034】
判定手段5は、カオス指標の変化の微分値を求めこれを判定の基準とする。すなわち、一定時間以上リアプノフ指数が減少(微分値が負)した場合に、運転者には休憩が必要な程度にストレス負荷が生じていると判断する。このときの時間は、例えば15分程度とすればよいが運転者に応じて任意の時間に設定してもよい。
【0035】
なお、判定基準としては負の微分値が続く時間以外にも様々な基準を利用することが出来る。例えば、運転開始時のカオス指標との比較や、微分値の絶対値などが基準として考えられよう。本発明ではこれら判定基準に対して何ら拘束するものではない。
【0036】
そして、運転者の心身状態に関する情報に基づいて運転対象物の動作を規定するパラメータを変更したり、運転対象物の機器の動作状態を変更することにより安全な走行を得ることができる。
【0037】
(実施例2)
次に本発明の実施例2について説明する。図3は実施例2の構成を示すブロック図である。実施例2は実施例1に運転をしているか、していないかの識別をする識別手段10を設け、この識別手段10の情報と演算手段4で演算した結果から判定手段5で心身状態を判定するようにしてある。
【0038】
なお、識別手段10における運転をしているか、運転をしていないかの状態識別はハンドル8部分に設置した検出手段11の出力信号により行うことにしてある。12は報知手段である。
【0039】
次に動作について説明する。カオス指標を求める方法は実施例1で説明した通りであり、運転しているか否かの識別を識別手段10で識別し、演算手段4での演算結果と識別手段10の識別結果から運転者1の心身状態を判定するものである。
【0040】
ここでの識別手段10の出力結果を判定手段5に入力する利点を詳述する。運転者1の心身状態は前述した通り疲労してくるとリアプノフ指数が低下するが、リアプノフ指数が上昇する場合は2種類ある。一つは休憩した後体力が回復したことによるリアプノフ指数の上昇、もう一つは運転中に居眠り状態に入ったときに副交換神経活動が優位になりリアプノフ指数が上昇する場合がある。そこで識別手段10により運転中か非運転時かによって体力が回復してきているのか、居眠り状態に入っているのかが判別することができる。すなわち、識別手段10で非運転時を経過した後のデータであれば体力回復である。一方、識別手段10で運転が継続していることが識別できていて、なおかつ演算手段4で演算した結果リアプノフ指数が上昇した場合には居眠り状態に入ってきたことを意味し、そのことを判定手段5で判定し、制御手段6を介して駆動手段7により徐々にブレーキをかける様にすることで居眠り運転時には車が停車するように仕向けることができる。あるいは運転者1に目を覚ますような信号を制御手段6から報知手段12に送り、警報を発するようにしてもよい。以上から明らかなように本実施例では居眠り運転を防止するために居眠り状態かどうかの心身状態を監視することができる。
【0041】
ところで、本実施例ではカオス指標を演算手段4で求めて心身状態を見極めるようにしてあるが、居眠り状態の判別のために運転時か否かの識別手段を用いているためカオス指標でなくともFFTのような線形信号処理により演算してそれぞれの周波数帯域の動きにより心身状態を推定し、検出手段11からの情報と合わせて判定手段5で判定するようにしても良い。
【0042】
(実施例3)
次に本発明の実施例3について説明する。図4は実施例3の構成を示すブロック図である。実施例3は実施例1に生体信号検出手段3から生体信号が得られる時間を計測する計時手段13を設けたものである。
【0043】
この計時手段13の情報と演算手段4で演算した結果から判定手段5で心身状態を判定するようにしてある。
【0044】
次に動作について説明する。カオス指標を求める方法は実施例1で説明した通りであり、計時手段13は現在の時刻を出力する。時刻情報は判定手段5に伝わるようになっている。従って、運転中の時間を計測し、その時間が長くなり、演算手段4で演算したリアプノフ指数の値が低下してくれば運転者1に疲労が蓄積していっていることがわかり、さらに継続してリアプノフ指数が上昇してくれば居眠り状態に入ったことがわかる。一方、運転時間が中断している場合には生体信号の出力が中断されることになり、その中断時間が一定以上あり、その後、演算手段4での演算結果であるリアプノフ指数が上昇したならば運転者1の体力が休息によって回復したことが判別できる。このようにしてリアプノフ指数の演算が中断したばあいの情報は心身状態の判別に役に立つ情報として判定手段5で用いることができる。
【0045】
なお、本実施例もカオス指標以外に線形信号処理による指標や他の非線型信号処理を用いても同様の効果を有する。
【0046】
(実施例4)
次に本発明の実施例4について説明する。図5は実施例4の構成を示すブロック図である。実施例4は実施例3に演算手段4と計時手段13の情報から生体信号測定中断中の演算手段4の演算結果を推定する推定手段14を設けたものである。そして、推定手段14の情報からあるいは演算手段4の結果から判定手段5で心身状態を判定するようにしてある。
【0047】
なお、計時手段13は生体信号検出手段3から生体信号が得られる時間を計測するようにしてあり、その計測時間を推定手段14に入力するようにしてある。
【0048】
次に動作について説明する。カオス指標を求める方法は実施例3で説明した通りであり、計時手段13は現在の時刻を出力する。時刻情報は推定手段14に伝わるようになっている。従って、運転中の時間を計測し、その時間が長くなり、演算手段4で演算したリアプノフ指数の値が低下してくれば運転者1に疲労が蓄積していっていることがわかり、さらに継続してリアプノフ指数が上昇してくれば居眠り状態に入ったことがわかる。一方、運転時間が中断している場合には計時手段13での継続時間が中断されることになり、その中断時間中は演算手段4での演算結果であるリアプノフ指数の演算ができないため、運転再開後のリアプノフ指数の演算に対して運転中断時間に応じて中断直前のデータから補正した値を用いてリアプノフ指数を演算することにより運転再開後すぐにリアプノフ指数を推定手段で推定して運転者1の心身状態を判定手段5で判定することができる。
【0049】
この生体計測の中断には長時間の中断と短時間の中断とがある。長時間の中断では運転を行っていない場合が主たる場合である。一方短時間の中断は生体信号の検出をハンドルで行う場合にはハンドルを常に持っているのではなく回転させたり、瞬間的に離したりすることによって、あるいは運転座席に設けた圧力センサなどの場合には運転者が体を動かした場合などに相当する。特にこのような短期の計測中断は日常的であり、その時に演算が中断ばかりしていると役に立たない事になる。従って推定手段14でこの中断を推定することにより信号処理がなされ、その信号処理により運転者1の心身状態を判定手段5で判定することができる。
【0050】
以上の実施例1から4において判定手段5は演算手段4が出力するカオス指標に生体の日内変動という生体リズムを加味して判定しても構わない。すなわち、演算手段4で求めた生体信号解析指標をカレンダー15又は計時手段13によって補正を行い、判定手段5で判定するようにする。
【0051】
以下詳述する。図3は最大リアプノフ指数と心拍数の一日の変化を示したものである。横軸は時刻を表している。このときの被験者は午前7時20分頃に起床しているが、その前後の時間帯はリアプノフ指数が大きく減少している。また午前中と午後に二つの山が認められる。午後にみられる山については加齢によって消失することがあるといわれている。なお、ここでも心拍数はリアプノフ指数と負の相関を持っているがその変動幅の割合はリアプノフ指数と比較してかなり小さいことがわかるであろう。
【0052】
このように一日の間でカオス指標のベースラインが大きく変動することを考慮することにより、より正確な判定が出来るようになる。すなわち、起床直後の時間帯では、元々ベースラインが急激に下がる傾向にあるため休憩が必要であるという判断の基準(負の微分値が続く時間)をやや緩くしたり、夕方の比較的安定した時間帯では判断の基準を厳しくしたりする必要がある。
【0053】
以上のように、これらの実施例によれば時刻情報に基づいて運転者の心身状態を判定するので、生体リズムを考慮した判定が出来るという効果がある。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の運転者監視装置は次のような効果を持つ。
【0055】
運転時か非運転時かを識別する識別手段と、識別手段の情報と運転者の生体信号より得られる信号解析指標とから運転者の心身状態を判定する判定手段とを備えてあるので
(1)信号解析指標から求めた心身状態が休憩を取った後の体力の回復なのか連続して運転しているために眠くなってきたのかの判別ができる。
また、識別手段はハンドルに設けた手を検出する検出手段により運転時か非運転時かを識別するようにしてあるので
(2)ハンドルに手が接触しているか否かを検出することで自動的に運転中であることがわかる。
【0056】
そして、運転者の生体信号より得られる信号解析指標と運転者の生体信号検出の中断による時間情報とから運転者の心身状態を判定する判定手段とを備えてあるので
(3)中断中の時間が短ければ運転が継続していることがわかり、長時間のハンドル操作がなければ運転をしていないことがわかるため心身状態の解析と合わせて、心身状態がどういう状態になっているかを確実に決めることができる。
【0057】
運転者の連続した生体信号より得られる信号解析指標と、運転者の生体信号検出の中断中の信号解析指標を信号解析指標から推定する推定手段と、推定手段で推定した信号解析指標と生体信号検出の中断時間から運転者の心身状態を判定する判定手段とを備えてあるので
(4)通常、連続した時系列データの解析から信号解析指標の出力を求めるため、データの中断は信号解析指標の出力を極めて遅らせるものであるが、中断前のデータを元に中断時間と合わせて推定手段で推定しているため連続した時系列データ解析と同程度の速さで出力を得ることができる。
【0058】
そして、運転者の心身状態に関する情報を運転者に報知する報知手段を備えてあるので
(5)居眠り運転などに危険行為を防止することができる。
また、運転者の心身状態に関する情報に基づいて運転対象物の動作を規定するパラメータを変更する制御手段を備えてあるので
(6)運転者の習熟度に応じて運転対象物のレベル設定ができる。
【0059】
さらに、運転者の心身状態に関する情報に基づいて運転対象物の機器の動作状態を変更する制御手段を備えてあるので
(7)運転者の注意低下に伴う事故の発生を未然に防ぎ運転者を保護することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の運転者監視装置の構成図
【図2】運転時のカオス指標の変化を示すグラフ
【図3】本発明の実施例2の運転者監視装置のブロック図
【図4】本発明の実施例3の運転者監視装置のブロック図
【図5】本発明の実施例4の運転者監視装置のブロック図
【図6】カオス指標の日内変動を示すグラフ
【図7】従来の運転者監視装置の構成図
【符号の説明】
4 演算手段
5 判定手段
6 制御手段
12 報知手段
13 計時手段
14 推定手段
Claims (6)
- 自動車の座席に設けた運転者の生体信号を検出する生体信号検出手段と、前記生体信号検出手段より得られる生体信号から信号解析指標を演算する演算手段と、ハンドルに設けられ前記運転手の手が接触しているか否かを検出する検出手段と、前記信号解析指標と前記検出手段の情報とから前記運転者の心身状態を判定する判定手段を設けた運転者監視装置。
- 自動車の運転者の生体信号より得られる信号解析指標と運転者の生体信号の検出が中断している時間である時間情報とから前記運転者の心身状態を判定する判定手段とを備えた請求項1記載の運転者監視装置。
- 運転者の連続した生体信号より得られる信号解析指標と、前記運転者の生体信号検出の中断中の信号解析指標を推定する推定手段と、前記推定手段で推定された信号解析指標と前記生体信号検出の中断時間から前記運転者の心身状態を判定する判定手段とを備えた請求項1または2記載の運転者監視装置。
- 運転者の心身状態に関する情報を運転者に報知する報知手段を備えた請求項1ないし3のいずれか1項記載の運転者監視装置。
- 運転者の心身状態に関する情報に基づいて運転対象物の動作を規定するパラメータを変更する制御手段を備えた請求項1ないし4のいずれか1項記載の運転者監視装置。
- 運転者の心身状態に関する情報に基づいて運転対象物の機器の動作状態を変更する制御手段を備えた請求項1ないし5のいずれか1項記載の運転者監視装置。
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