JP3596100B2 - 熱可塑性耐熱樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、高剛性にして高耐熱性であり、成形時に発生するバリが著しく減少し、成形加工性、耐衝撃性、さらには特定用途で必要な摺動性に優れた熱可塑性耐熱樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、耐熱性、耐薬品性、電気的特性、機械的特性、寸法安定性などに優れた熱可塑性樹脂であるため、精密部品用材料や電気・電子部品の封止材料として用いられている。しかしながら、この樹脂は、高結晶性ポリマーであるため、融点を超える温度域において著しく高い流動性を示す。このため、射出成形時に流動性の制御が困難となり、成形品にバリが発生し、精密成形品の歩留まりを著しく低下させるという問題がある。
従来、ポリアリーレンスルフィド樹脂に、他の熱可塑性樹脂を配合して成形加工性を改良する試みが知られているが(特公昭53−13469号公報、特開平2−180945号公報、特開平3−281564号公報、特開平6−306287号公報)、成形時のバリの発生が実用上問題にならない程度まで抑えることができない。
【0003】
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、耐熱性に優れたエンジニアリングプラスチックであることから、ギア、軸受け、カムといった機構部品に使用されている。しかしながら、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、それ自体、自己潤滑性に乏しく、摺動部品として用いるには、潤滑性を付与しなければならない。
ポリアリーレンスルフィド樹脂に潤滑性を付与する方法としては、4フッ化エチレン樹脂を添加する方法(特公平5−72936号公報)、超高分子量ポリエチルと鉱油を併用する方法(特開昭61−285256号公報)、4フッ化エチレン樹脂と無機ウィスカーを併用する方法(特公平5−45626号公報、特開平4−7360号公報、特開平5−140452号公報、特開平5−306371号公報)などが知られている。
しかしながら、これらの潤滑性を付与する方法では、成形時に発生するバリのため、成形後、バリ取りなどの後加工が必要となり、さらには摺動性を保持するために、精密な面出しなどが加わり、著しく生産性を低下させるという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたものであり、ポリアリーレンスルフィド樹脂の物性(高剛性、高耐熱性)を維持しながら、成形時のバリを著しく減少させ、成形加工性、耐衝撃性、さらには摺動性に優れた熱可塑性耐熱樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂40〜99重量%および(b)エステル基を有するノルボルネン系樹脂60〜1重量%〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕の合計量100重量部に対し、(c)オレフィン単位と、カルボキシル基、酸無水物基、オキサゾリン基およびエポキシ基の群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する不飽和化合物単位を主体とする直鎖型の官能基含有共重合体0.1〜30重量部を配合してなる、熱可塑性耐熱樹脂組成物を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、上記(a)〜(b)成分100重量部に対し、上記(c)成分0.1〜30重量部および(d)下記(1)〜(8)の群から選ばれた少なくとも1種の添加剤0.01〜400重量部を配合してなる、熱可塑性耐熱樹脂組成物を提供するものである。
(1)無機繊維
(2)有機繊維
(3)無機ウィスカー
(4)フルオロカーボン重合体
(5)ポリマー粉末
(6)無機粉末
(7)VIA族金属の硫化物
(8)潤滑油
【0007】
(a)成分;
(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂は、主とする構成単位が一般式;−Ar−S−(式中、Arは2価の芳香族基を示し、Sはイオウ原子である)で表される重合体である。このポリアリーレン基を構成する2価の芳香族基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、2,6−ナフタレン基、4,4′−ビフェニレン基、p,p′−ビベンジル基、およびこれらの各置換基などが代表例として挙げられる。これらのうちでは、核無置換基のp−フェニレン基を有するポリ−p−フェニレンスルフィド(PPS)が、成形加工性の点で好ましい。
【0008】
本発明において、(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂は、上記構成単位を1分子中に少なくとも70モル%以上含有していることが必要である。この構成単位が70モル%未満では、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の結晶性が低下したり、ガラス転移温度が低かったり、成形品の物性が悪いなど、好ましくない結果を生じる。また、本発明において、(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂は、1分子中に30モル%未満であれば、3価以上の結合手を有する芳香族基、例えば1,2,4−結合フェニレン核や、脂肪族基、ヘテロ原子含有基などを含んでいても差し支えない。さらに、(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂の末端基は特に限定されるものではないが、好ましくはチオール基(SH基)が80モル%以上含有されていることが望ましい。さらに、(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、直鎖型のもの、未架橋型のもの、および架橋型のものを、それぞれ単独に、あるいは目的に応じて混合して用いることも可能である。
【0009】
さらに、(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂として、変性ポリアリーレンスルフィド樹脂、または変性ポリアリーレンスルフィド樹脂とポリアリーレンスルフィド樹脂の混合物を用いることもできる。この変性ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、オキサゾリン基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアナート基、メルカプト基などの官能基で変性された樹脂を使用することができるが、特にエポキシ基変性ポリアリーレンスルフィド樹脂およびアミノ基変性ポリアリーレンスルフィド樹脂が好ましい。これらの官能基は、(b)ノルボルネン系樹脂中のエステルと反応してポリアリーレンスルフィド樹脂とノルボルネン系樹脂のブロック共重合体を形成することにより、両者の相溶性が高まり、得られる樹脂組成物の物性を向上させるとともに、ポリアリーレンスルフィド樹脂の欠点である物性、成形加工性の異方性を小さくすることができる。
【0010】
上記(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する方法としては、ジハロゲン化芳香族化合物とジオール芳香族化合物との縮合反応、またはモノハロゲン化芳香族チオールの縮合反応、あるいはジハロゲン化合物と硫化アルカリあるいは水硫化アルカリとアルカリまたは硫化水素とアルカリ化合物とからの脱塩縮合反応を利用する方法などが例示されるが、これに限定されるものではない。
なお、本発明において、(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂の粘度は、通常、温度300℃、歪速度1,000sec−1において、100〜4,000poiseである。
【0011】
(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂の使用量は、(a)成分および(b)成分の合計中に40〜99重量%、好ましくは50〜90重量%である。40重量%未満では、樹脂組成物の耐熱性が低下し、一方99重量%を超えると、バリの発生が著しく、好ましくない。
【0012】
(b)成分;
本発明の(b)エステル基を有するノルボルネン系樹脂としては、下記一般式(I)で表される特定単量体から誘導される重合体であって、具体的には下記(1)〜(4)が含まれる。
(1)特定単量体の開環重合体
(2)特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体
(3)前記開環(共)重合体の水素添加重合体
(4)特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体
【0013】
【化1】
【0014】
〔一般式(I)中、R1 〜R4 は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一または異なっていてもよい。また、R 1 〜R 4 の少なくとも1つはエステル基を有する。さらに、R1 とR2 またはR3 とR4 は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R1 またはR2 とR3 またはR4 とは互いに結合して、単環または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。〕
【0015】
上記一般式(I)で表される特定単量体の具体例としては、
5−カルボキシメチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−カルボキシメチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン、
【0016】
8−カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−カルボキシエチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−カルボキシn−プロピルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、8−カルボキシイソプロピルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−カルボキシn−ブチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
【0017】
8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−メチル−8−カルボキシエチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−メチル−8−カルボキシn−プロピルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−メチル−8−カルボキシイソプロピルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−メチル−8−カルボキシn−ブチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17 ,10 〕−3−ドデセン、
などを挙げることができる。
【0018】
これらのうち、得られる重合体の耐熱性の面および(a)成分との相溶性の面から、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセンが最も好ましい。
上記の特定単量体は、必ずしも単独で用いる必要はなく、2種以上を用いて開環共重合反応を行うこともできる。
【0019】
(b)ノルボルネン系樹脂は、上記の特定単量体を単独で開環重合させたものであっても良いが、該特定単量体と共重合性単量体とを開環共重合させた共重合体であっても良い。
この場合に使用される共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン、トリシクロ〔5.2.1.02,6 〕−3−デセン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。さらに、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖に炭素−炭素間二重結合を含む不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に特定単量体を開環重合させてもよい。そして、この場合に得られる開環共重合体の水素添加物は、耐衝撃性の大きいノルボルネン系樹脂の原料として有用である。
【0020】
さらに、飽和共重合体よりなる(b)ノルボルネン系樹脂を得るために、前記特定単量体と共に使用される不飽和二重結合含有化合物としては、例えばエチレン、プロピレン、ブテンなどを挙げることができる。
【0021】
本発明において、▲1▼特定単量体の開環重合体、▲2▼特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体、および▲3▼開環(共)重合体の水素添加重合体を得るための開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行われる。
【0022】
開環重合反応において用いられる溶媒(分子量調節剤溶液を構成する溶媒、特定単量体および/またはメタセシス触媒の溶媒)としては、アルカン類、シクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素、ハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリールなどの化合物、飽和カルボン酸エステル類、エーテル類などを挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。溶媒の使用量としては、「溶媒:特定単量体(重量比)」が、通常、1:1〜10:1となる量とされ、好ましくは1:1〜5:1となる量とされる。
【0023】
(b)ノルボルネン系樹脂の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節する。
ここに、好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。分子量調節剤の使用量としては、開環重合反応に供される特定単量体1モルに対して0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルとされる。
本発明で用いられる(b)ノルボルネン系樹脂の分子量は、固有粘度ηinh で0.2〜5.0の範囲のものが好適である。
【0024】
以上のようにして得られる開環重合体は、水素添加触媒を用いて水素添加することができる。
水素添加反応は、通常の方法、すなわち開環重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が挙げられる。
【0025】
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は、粉末でも粒状でもよい。
【0026】
これらの水素添加触媒は、開環重合体:水素添加触媒(重量比)が、1:1×10−6〜1:2となる割合で使用される。
このように、水素添加することにより得られる水素添加重合体は、優れた熱安定性を有するものとなり、成形加工時や製品としての使用時の加熱によっても、その特性が劣化することはない。ここに、水素添加率は、通常、50%以上、好ましく70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
また、本発明において、熱可塑性樹脂として使用される水素添加重合体は、成形品の外観を良くするという面から、該水素添加重合体中に含まれるゲル含有量が5重量%以下であることが好ましく、さらに1重量%以下であることが特に好ましい。
【0027】
(b)ノルボルネン系樹脂の使用量は、(a)〜(b)成分中に60〜1重量%、好ましくは50〜10重量%である。60重量%を超えると、耐熱性が低下し、一方1重量%未満では、バリの発生が著しく、好ましくない。
【0028】
(c)成分;
(c)官能基含有共重合体は、オレフィン単位と、カルボキシル基、酸無水物基、オキサゾリン基およびエポキシ基の群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する不飽和化合物単位を主体とする直鎖型の官能基含有共重合体であって、特開平6−306287号公報第5頁第7欄第29行〜第5頁8欄第44行で開示されているような多相構造(グラフト構造)を有する重合体は、相溶性が低下するため好ましくない。
この(c)成分は、ブロック共重合体またはランダム共重合体である。
【0029】
ここで、(c)官能基含有共重合体としては、例えばオレフィンと上記官能基を有する不飽和化合物および必要に応じて他の不飽和化合物との、二元、三元または多元の共重合体である。
(c)官能基含有共重合体中のオレフィンとしては、エチレン、プロピレンが好ましく、特に好ましくはエチレンである。
また、カルボキシル基含有不飽和化合物としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸など、酸無水物基含有不飽和化合物としては無水マレイン酸、無水イタコン酸など、オキサゾリン基含有不飽和化合物としてはビニルオキサゾリンなど、エポキシ基含有不飽和化合物としてはグリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。好ましい官能基は、エポキシ基、酸無水物基である。
【0030】
(c)官能基含有共重合体中、オレフィン量は、通常、60〜99.5重量%、官能基含有不飽和化合物量は、通常、40〜0.5重量%、他の不飽和化合物量は、通常、0〜39.5重量%である。
(c)成分を製造する方法としては、一般に良く知られている連鎖移動法、電0性放射線照射法など、いずれの方法によってもよいが、最も好ましい方法は、特開昭64−48856号公報第9頁左下欄第1行〜第10頁左上欄第9行に記載の方法である。
【0031】
(c)成分の使用量は、(a)〜(b)成分の合計量100重量部に対し、0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、特に好ましくは3〜10重量部である。0.1重量部未満では、耐衝撃性が低下し、バリの面積も大きくなり、一方30重量部を超えると、耐熱性が低下する。
【0032】
(d)添加剤;
(d)添加剤は、本発明の組成物において、摺動性を与え、また機械的強度や耐熱性、流動性などを向上させるために、必要に応じて配合される。
(d)添加剤について、以下上記▲1▼〜▲8▼の順で説明する。
【0033】
▲1▼無機繊維
本発明で使用される▲1▼無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、セラミックス繊維、アスベスト繊維、セッコウ繊維、金属繊維、炭素繊維などが挙げられる。
ここで、得られる樹脂組成物の剛性を高くするためには、無機繊維のアスペクト比(平均長L/平均径D)を20〜500とすることが好ましい。アスペクト比が20未満では、異方性は小さくなるが、剛性は高くならず、一方500を超えると、剛性は高くなるが、異方性が大きくなって実用的ではない。なお、異方性を改良するためには、繊維状充填剤のアスペクト比は、20未満、好ましくは10以下である。
また、無機繊維の平均径は、好ましくは0.1〜250μmであり、0.1μm未満では剛性は高くならず、一方250μmを超えると、耐衝撃性と外観が悪化する。
【0034】
無機繊維の使用量は、(a)〜(b)成分100重量部に対し、0.01〜400重量部、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは40〜70重量部である。この範囲の使用量であれば、補強効果が大きく、充分な摺動特性や機械的強度が得られる。この無機繊維は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0035】
▲2▼有機繊維
本発明で使用される有機繊維としては、ポリアミド繊維、全芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリエステル繊維、セルロース繊維などが挙げられる。この有機繊維のうち、耐熱性が良好な全芳香族ポリアミド繊維が好ましく、特に母材の補強効果が大きいポリフェニレンテレフタルアミド繊維が好ましい。
有機繊維の繊維長は、好ましくは0.1〜30mm、さらに好ましくは3〜15mmである。
【0036】
有機繊維の使用量は、(a)〜(b)成分100重量部に対し、0.01〜400重量部、好ましくは10〜50重量部、さらに好ましくは20〜40重量部である。この範囲の使用量であれば、補強効果が大きく、充分な摺動特性や機械的強度が得られる。特に、相手材がアルミニウム合金やポリアセタールなどの比較的軟質な材料の場合、相手材摩耗量を著しく低減させることができる。有機繊維は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0037】
▲3▼無機ウィスカー
本発明で使用される無機ウィスカーとしては、チタン酸カリウムウィスカー、シリコーンカーバイトウィスカー、カーボングラファイトウィスカー、シリコンナイトライドウィスカー、α−アルミナウィスカー、酸化亜鉛ウィスカーなどが挙げられる。
この無機ウィスカーには、針状、テトラポッド状などが存在するが、寸法精度の向上効果や相手材摩耗量の低減が著しいテトラポッド状の酸化亜鉛ウィスカーが好ましい。
【0038】
無機ウィスカーの使用量は、(a)〜(b)成分100重量部に対し、0.01〜400重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは20〜50重量部である。この範囲の使用量であれば、寸法精度、表面平滑性に優れ、充分な摺動特性や機械的強度が得られる。特に、高速、高荷重で使用される用途に必要な耐荷重性を著しく向上させることができる。無機ウィスカーは、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0039】
▲4▼フルオロカーボン重合体
本発明で使用されるフルオロカーボン重合体としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」ともいう)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン/エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライドなどが挙げられる。
このフルオロカーボン重合体は、粒子状、針状などが存在するが、樹脂組成物中の分散が良好な粒子状のものが好ましい。
【0040】
フルオロカーボン重合体の分子量は、好ましくは100万以下、さらに好ましくは30万以下である。
粒子状のフルオロカーボン重合体の平均粒径は、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。また、繊維状のフルオロカーボン重合体の繊維径は、好ましくは2〜800μm、さらに好ましくは10〜300μm、繊維長は、0.01〜100μm、さらに好ましくは1〜20μmである
フルオロカーボン重合体の使用量は、(a)〜(b)成分100重量部に対し、0.01〜400重量部、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部である。この範囲の使用量であれば、摩擦係数の低下および耐荷重性の向上に寄与し、しかも耐摩耗性および機械的強度が良好である。
フルオロカーボン重合体は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0041】
▲5▼ポリマー粉末
本発明で使用されるポリマー粉末としては、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン粒子、ポリアリーレンチオエーテルケトン粒子、芳香族ポリエステル粒子などが挙げられる。
ポリマー粉末の平均粒径は、好ましくは300μm以下、さらに好ましくは100〜200μmである。
ポリマー粉末の使用量は、(a)〜(b)成分100重量部に対し、0.01〜400重量部、好ましくは5〜25重量部、さらに好ましくは5〜20重量部である。この範囲の使用量であれば、摩擦係数および摩耗量の低減、ならびに耐荷重性の向上に寄与し、しかも耐熱性や機械的強度が良好である。
ポリマー粉末は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0042】
▲6▼無機粉末
本発明で使用される無機粉末としては、アスペクト比が1である粒子状のものと、アスペクト比が1を超えるリン片状のものが挙げられる。
粒子状の無機粉末としては、ガラス粒子、セラミックス粒子、カーボン粒子などが挙げられる。これらの粒子状の無機粉末の平均粒径は、好ましくは300μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
また、リン片状の無機粉末としては、マイカ、ガラスリン片などが挙げられる。これらのリン片状の無機粉末の平均粒径は、好ましくは300μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0043】
無機粉末の使用量は、(a)〜(b)成分100重量部に対し、0.01〜400重量部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは10〜15重量部である。この範囲の使用量であれば、摩擦係数の低下、ならびに耐荷重性の向上に寄与し、しかも耐熱性や機械的強度が良好である。
また、導電性の付与を目的とし、この無機粉末に無電解メッキ法または真空蒸着法などにより、メッキされたものも使用することができる。
無機粉末は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0044】
▲7▼VIA族金属の硫化物
本発明で使用されるVIA族金属の硫化物としては、クロム、モリブデン、タングステンの硫化物が挙げられ、好ましくはモリブデンの硫化物であり、特に好ましくは2硫化モリブデンである。
VIA族金属の硫化物は、粒子状のものが好ましく、その平均粒径は、好ましくは0.1〜40μm、さらに好ましくは0.5〜20μmである。
VIA金属の硫化物の使用量は、(a)〜(b)成分100重量部に対し、0.01〜400重量部、好ましくは3〜50重量部、さらに好ましくは5〜40重量部である。この範囲の使用量であれば、良好な滑り性能が発現でき、特に摩擦係数を著しく低下させることができる。
VIA族金属の硫化物は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0045】
▲8▼潤滑油
本発明で使用される潤滑油としては、常温で、液状である潤滑油と、固体であるワックスとが挙げられる。
常温で液状である潤滑油としては、シリコン油、芳香族オイル、フッ素油、硬油などが挙げられる。
また、常温で固体である潤滑油としては、ポリエチレンワックス、エチレンビスステアロアマイド、脂肪族の金属塩などが挙げられる。
潤滑油の使用量は、(a)〜(b)成分100重量部に対し、0.01〜400重量部、好ましくは0.01〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部である。この範囲の使用量であれば、摩擦係数、相手材摩耗量、摩耗量の低減に寄与し、しかも機械的強度が良好である。
潤滑油は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0046】
以上の(d)成分は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
(d)成分の使用量は、(a)〜(b)成分の合計量100重量部に対し、0.01〜400重量部、好ましくは0.05〜300重量部である。0.01重量部未満では、充分な潤滑性が得られず、一方400重量部を超えると、成形加工性、耐衝撃性が低下する。
【0047】
本発明の樹脂組成物には、そのほか必要に応じて他の熱可塑性樹脂またはエラストマーを、本発明の樹脂組成物100重量部に対し、50重量部以下程度加えることができる。
この他の熱可塑性樹脂またはエラストマーとしては、具体的にはスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン−ブタジエン(ブロック、ランダム)共重合体の水素添加物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水素添加物、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴムなどを挙げることができる。
【0048】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて難燃剤が配合される。この難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、金属酸化物や無機系難燃剤などが挙げられる。
このうち、ハロゲン系難燃剤としては、臭化アンモニウム、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(ブロモエチルエーテル)テトラブロモビスフェノールA、臭化ポリカーボネート、臭素化ポリスチレンなどの臭素系難燃剤や、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、有機塩素系難燃剤(ヘット酸、デクロランプラス、四塩化無水フタル酸)などが挙げられる。これらのハロゲン系難燃剤には、Sb2 O3 を併用すると難燃効果が上がる。
【0049】
リン系難燃剤としては、非ハロゲンリン酸エステル(トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート)、含ハロゲンリン酸エステル〔トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート〕などが挙げられる。
金属酸化物および無機系難燃剤としては、酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、フレームカットA−1、ファイヤーDT、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0050】
以上の難燃剤は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。難燃剤の使用割合は、(a)〜(b)成分の合計100重量部に対し、好ましくは1〜40重量部、さらに好ましくは2〜30重量部、特に好ましくは2〜20重量部であり、1重量部未満では、難燃性を良くすることができない場合があり、一方40重量部を超えると、耐熱性、剛性が低下する場合がある。
【0051】
さらに、本発明の樹脂組成物には、酸化防止剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,2−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス(ジ−ノニルフェニルホスファイト);紫外線吸収剤、例えばp−ブチルフェニルサリシレート、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−(2′−ジヒドロキシ−4′−m−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、「TINUVIN320」(チガガイギー社製)、「TINUVIN329」(チバガイギー社製)、「TINUVIN622LD」(チバガイギー社製)、「CHIMASSORB119FL」(チバガイギー社製);滑剤、例えばパラフィンワックス、ステアリン酸、硬化油、ステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、m−ブチルステアレート、ケトンワックス、オクチルアルコール、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリドなどを必要量添加してもよい。
【0052】
さらに、本発明の樹脂組成物には、結晶核剤を添加してもよい。この結晶核剤としては、無機物、有機物いずれも使用することができる。
無機物としては、亜鉛粉末、アルミニウム粉末、グラファイト、カーボンブラックなどの単体や、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化チタン、二酸化マンガン、二酸化ケイ素、四三酸化鉄などの金属酸化物、ボロンナイトライドなどの窒化物、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウムなどの無機塩、タルク、カオリン、クレー、白土などの粘土類を使用することができる。
【0053】
また、有機物としては、シュウ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの有機塩類、耐熱性の高分子、耐熱性高分子の架橋物などを使用することができる。
これらの結晶核剤のうち、好ましくはボロンナイトライド;タルク、カオリン、クレー、白土などの粘土類;架橋または分岐構造を有する耐熱性高分子などである。
【0054】
なお、上記結晶核剤中には、上記(d)添加剤と重複するものもあるが、これらの物質は、両機能を果たすことができる。
結晶核剤の使用量は、(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対し、好ましくは0.002〜5重量部、さらに好ましくは0.02〜2重量部であり、0.002重量部未満では結晶化速度の増大効果が充分でない場合があり、一方5重量部を超えるとビカット軟化温度や曲げ弾性率を下げる場合があり好ましくない。
上記結晶核剤は、(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂の結晶化速度を制御できるので、射出成形で金型内に樹脂組成物が入った時点で結晶化を終了させることにより、バリの形成を少なくすることができる。また、結晶核剤は、低分子化合物であるため、可塑剤としての効果もあり、溶融状態における本発明の樹脂組成物の流動性や成形加工性を改良することができる。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの混合機を用い、(a)〜(c)成分、必要に応じてさらに(d)成分や、難燃剤、その他の添加剤を混合することによって得られる。
本発明の樹脂組成物の製造方法の例を示すと、ミキサーで各成分を混合したのち、押出機を用い、240〜360℃で溶融混練りして造粒物を得る方法、さらに簡便な方法としては、各成分を直接、成形機内で溶融混練りしてペレットを得る方法などが挙げられる。また、二軸押出機を用いて樹脂成分を混練りしたのち、充填剤を後添加してペレットを作製する方法がある。
【0056】
かくして得られる本発明の樹脂組成物は、特に耐熱性に優れ、ビカット軟化温度が180〜330℃、好ましくは210〜300℃である。ビカット軟化温度が180℃未満では、耐熱性、剛性が低く、一方330℃を超える場合は、成形加工性、特に流動性が悪くなる。ここで、本発明の樹脂組成物のビカット軟化温度を調整するには、(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂と(b)ノルボルネン系樹脂の比率を変えたり、相溶化剤である(c)成分、(d)添加剤、または他の熱可塑性樹脂もしくはエラストマーなどの配合量を変量すればよい。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、種々の公知の成形加工法、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法などの公知の成形手段を適用して成形品とされる。
本発明の樹脂組成物は、OA機器、自動車部品などの耐熱性と摺動性が併せて要求される部品に使用することができる。
例えば、軸受けブッシュ、ピストンリング、スラストワッシャー、滑り板、ベアリング、カム、ローラ、転がり軸受けのリテイナー、あるいは歯車、ギャップ保持コロ、テープガイドなどが挙げられる。
【0058】
本発明の好ましい実施態様は、次のとおりである。
▲1▼(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂がポリ−p−フェニレンスルフィドである、熱可塑性耐熱樹脂組成物。
▲2▼(b)ノルボルネン系樹脂を構成する特定単量体が8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセンである、熱可塑性耐熱樹脂組成物。
▲3▼(c)官能基含有共重合体がエチレン−エポキシ基含有不飽和化合物および/または酸無水物基含有不飽和化合物共重合体、さらに好ましくはエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体である、熱可塑性耐熱樹脂組成物。
▲4▼(d)添加剤が、摺動性の付与を目的とする無機および/または有機化合物である、熱可塑性耐熱樹脂組成物。
【0059】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中、部および%は、特に断らないかぎり重量基準である。また、実施例中の各種の測定は、次のとおりである。
【0060】
固有粘度(η inh )
溶媒にクロロホルムを使用し、0.5g/dlの重合体濃度で30℃の条件下、ウベローデ粘度計にて測定した。
水素添加率
水素添加単独重合体の場合には、60MHz、 1H−NMRで測定した。
耐熱性(ビカット軟化温度)
JIS K7206に準じ、1/8″の厚みの試験片を用いて、荷重1kgf、昇温速度50℃/時間で測定した。
成形加工性(MFR)
JIS K7210に準じて、316℃×5kgfの条件下でメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0061】
バリの面積
長さ5″×幅1/2″×厚さ1/32″の矩形状金型を用いて、下記の条件で成形した試験片のゲートと反対側にある樹脂溜まりに試料がほぼ充填される圧力を試行錯誤で求め、その圧力下で成形した試験片のバリ(金型の成形品からはみ出した部分)の面積を測定した。
なお、バリの面積が0.03cm2 以下のとき、実用上、問題のないレベルになる。
【0062】
成形条件;
射出成形機=ARBURG社製、オールラウンダーハイドロニカD
シリンダー温度=315℃
金型温度=150℃
保圧時間=5秒
冷却時間=8〜22秒
クッション量=3〜5mm
サイクル時間=約19秒
射出圧力=試料により異なる。
【0063】
耐衝撃性(アイゾット衝撃強度)
試験片(1/4″×1/2″×5/2″、ノッチなし)を用いて、ASTMD790に準じて、アイゾットインパクト(Izod Imp)を測定した。
【0064】
摩擦摩耗試験
摩擦摩耗試験は、通常の摩擦摩耗試験機を用い、相手材には円筒状の硬鋼(S45C)を用い、無潤滑の状態で試験を行った。この場合、摩擦速度(V)を20m/分に固定して、面圧(P)を10分ごとに変化させて試験を行った。
動摩擦係数は、各PV値での摩擦力をトルクレバーに直結したロードセルで検出、測定し求めた。
限界PV値は、面圧の制御が不可能となったときをもって判定した。
摩耗量の速度は、PV値が1,200kg/cm2 ・m/分まで運転し、試験前後の重量差(mg)を求め、その重量差を累計のPV値×時間で除した値、すなわち定常摩耗量(mg/kg/cm2 ・m/分・hr)を求めた。
【0065】
参考例
樹脂組成物を製造するに際し、各成分を調製した。
(a)成分
直鎖型ポリフェニレンスルフィド(PPS);(株)トープレン製、LN−1を使用した。
(b)成分
チッ素ガスで置換した反応容器内に、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセンを400g、トルエン1,200g、分子量調節剤である1−ヘキセン65g、触媒としてジクロロフェニルホスホン酸とメタノールで変性した六塩化タングステンの濃度0.05モル/リットルのトルエン溶液1.5g、トリエチルアルミニウムの濃度1.15モル/リットルのトルエン溶液0.4gとを加え、80℃で3時間反応させることにより、固有粘度ηinh が0.43dl/g(クロロホルム中、30℃、濃度0.5g/dl)の開環重合体溶液(濃度=25%)を得た。
【0066】
この開環重合体溶液1,600gに、水素添加触媒としてクロロヒドロカルボニルトリストリフェニルホスフィンルテニウム0.3gを添加し、オートクレーブ内において、水素ガス圧100kg/cm2 、温度165℃の条件下で4時間加熱することにより、水素添加反応を行った。得られた反応液を冷却したのち、水素ガスを放出し、水素添加重合体溶液を得た。
得られた水素添加重合体溶液1,600gとトルエン400gとを、反応容器内に仕込み、乳酸2.84gと水4.6gとを添加して、60℃で30分間攪拌し、次いでメタノール1,040gを添加して、60℃でさらに1時間攪拌した。
【0067】
その後、反応容器を室温まで冷却し、貧溶媒相(メタノール相)と良溶媒相(重合体含有相)とを分離させ、貧溶媒のみを抜き出した。次いで、抜き出された貧溶媒の45%に相当するメタノールと、55%に相当するトルエンとを、反応容器内に添加して60℃で1時間攪拌した。再び、室温まで冷却して貧溶媒相と良溶媒相とを分離させ、貧溶媒のみを抜き出した。このメタノールによる抽出操作をもう一度繰り返したのち、良溶媒相を分離し、この良溶媒相から水添ノルボルネン系樹脂(b)(水素添加率=100%)を得た。
【0068】
(c)成分
(c−1);日本石油化学(株)製、レクスパールRA3150(エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体)
(c−2);日本油脂(株)製、モディパーA4101(エポキシ基含有ポリスチレングラフト構造体)
【0069】
(d)成分
(d−1);ガラス繊維〔アスペクト比=230、旭ファイバーグラス(株)製、CS03MA486A〕
(d−2);炭素繊維〔ドナカーボ S−231、大日本インキ化学社製〕
(d−3);全芳香族ポリアミド繊維〔ケブラー49、繊維長=3mm、東レデュポン社製〕
(d−4);チタン酸カリウムウィスカー〔ティスモD−102、大塚化学社製〕
(d−5);酸化亜鉛ウィスカー〔パナテトラ、松下アムテック社製〕
【0070】
(d−6);ポリテトラフルオロエチレン重合体〔ルブロンL−2、ダイキン工業社製〕
(d−7);高分子量ポリエチレン粉末〔Hostalen GUR−415、ヘキスト社製〕
(d−8);黒鉛〔ACP−1000、日本黒鉛工業社製〕
(d−9);二硫化モリブデン〔モリパウダーB、日本黒鉛工業社製〕
(d−10);ジフェニルエーテル系オイル〔モレスコハイループ LB−100、松村石油研究所製〕
【0071】
実施例1〜17、比較例1〜5
表1〜4に示す配合処方で、40mmφ2軸押出機を用いて310℃で溶融混練りしてペレット化した。得られたペレットを用いて、上記射出条件に従い、射出成形して評価用の試験片を得た。評価結果を表1〜4に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性耐熱樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂とエステル基を有するノルボルネン系樹脂を必須成分とし、これに特定の官能基含有共重合体と、さらに必要に応じて特定の添加剤を配合した組成物であるため、高剛性にして高耐熱性であり、成形時に発生するバリが著しく減少し、成形加工性、耐衝撃性、さらには摺動性に優れる。
Claims (2)
- (a)ポリアリーレンスルフィド樹脂40〜99重量%および(b)エステル基を有するノルボルネン系樹脂60〜1重量%〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕の合計量100重量部に対し、(c)オレフィン単位と、カルボキシル基、酸無水物基、オキサゾリン基およびエポキシ基の群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する不飽和化合物単位を主体とする直鎖型の官能基含有共重合体0.1〜30重量部を配合してなる、熱可塑性耐熱樹脂組成物。
- (a)ポリアリーレンスルフィド樹脂40〜99重量%および(b)エステル基を有するノルボルネン系樹脂60〜1重量%〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕の合計量100重量部に対し、(c)オレフィン単位と、カルボキシル基、酸無水物基、オキサゾリン基およびエポキシ基の群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する不飽和化合物単位を主体とする直鎖型の官能基含有共重合体0.1〜30重量部、ならびに(d)下記(1)〜(8)の群から選ばれた少なくとも1種の添加剤0.01〜400重量部を配合してなる、熱可塑性耐熱樹脂組成物。
(1)無機繊維
(2)有機繊維
(3)無機ウィスカー
(4)フルオロカーボン重合体
(5)ポリマー粉末
(6)無機粉末
(7)VIA族金属の硫化物
(8)潤滑油
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