JP3412245B2 - 熱可塑性樹脂組成物からなる成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物からなる成形品

Info

Publication number
JP3412245B2
JP3412245B2 JP06447394A JP6447394A JP3412245B2 JP 3412245 B2 JP3412245 B2 JP 3412245B2 JP 06447394 A JP06447394 A JP 06447394A JP 6447394 A JP6447394 A JP 6447394A JP 3412245 B2 JP3412245 B2 JP 3412245B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
molded product
weight
resin composition
thermoplastic resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP06447394A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH07242754A (ja
Inventor
弘信 篠原
喜久子 本多
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JSR Corp
Original Assignee
JSR Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JSR Corp filed Critical JSR Corp
Priority to JP06447394A priority Critical patent/JP3412245B2/ja
Publication of JPH07242754A publication Critical patent/JPH07242754A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3412245B2 publication Critical patent/JP3412245B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱可塑性樹脂組成物から
なる成形品に関し、特に耐熱性に優れ、成形時のバリ発
生や異方性が改善され、しかも各種素材との密着性が改
善された熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に関する。
【従来の技術】ポリフェニレンスルフィド樹脂(PP
S)は、耐熱性、剛性、電気絶縁性、耐薬品性、難燃性
に優れた熱可塑性樹脂であるので電気・電子部品や自動
車部品、精密機器用部品など広範な用途に使用されてい
る。ところが、PPSは結晶性ポリマーであるため、融
点を超えると流動性が極端に増し、流動性のコントロー
ルが困難となり、成形時にバリが発生し、仕上げ工程で
バリ除去に極めて多くの労力、コストがかかり、また成
形品として歩留まりが著しく低下する問題があった。ま
た成形収縮率や線膨張係数に異方性があるため、成形品
の寸法精度が狂い、成形品の組立が困難になることもあ
り、寸法通りの成形品を得るためにはPPSの成形収縮
における異方性を考慮した金型設計や成形条件の設定が
必須であり、特殊な技術を必要とするための余計なコス
トがかかってしまう問題があった。また、成形時に金型
から成形品を取り出したときにクラックが発生したりす
る問題もあった。さらに、PPSはその化学構造の持つ
特性から本質的に金属や無機・有機の各種素材との密着
性に劣り、例えば他素材からなる部品を保持する目的の
用途では、その保持能力に劣り、また成形品に印刷や塗
装を施すことも難しかった。こうした事情からPPSの
欠点である成形時のバリ発生がなく、成形収縮率や線膨
張係数の異方性および各種素材との密着性が改善され、
精度が厳しく要求される用途に用いても十分に信頼性の
高い成形品が望まれているが、上記の要望をすべて満た
す成形品は従来知られていなかった。
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題点を
一挙に解決した成形品を提供するものであり、耐熱性に
優れ、成形時のバリ発生や異方性が改善され、しかも各
種素材との接着性が改善された熱可塑性樹脂組成物から
なる成形品を提供することを目的とするものである。
【0002】
【課題を解決するための手段】本発明は、熱可塑性樹脂
組成物からなる成形品であって、前記熱可塑性樹脂組成
物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂:99〜40重量
%と熱可塑性ノルボルネン系樹脂(ただし、エチレン成
分と環状オレフィン成分からなる環状オレフィン系ラン
ダム共重合体を除く):1〜60重量%(但しポリアリ
ーレンスルフィド樹脂と熱可塑性ノルボルネン系樹脂と
の合計を100重量%とする。)の合計量100重量部
に対して無機充填剤を5〜400重量部含有することを
必須とし、かつ熱変形温度が荷重66psiにおいて1
80℃を超えたものであることを特徴とする成形品、ま
た、樹脂の流れ方向の成形収縮率(MD)と樹脂の流れ
方向と直角方向の成形収縮率(TD)が特定された熱可
塑性樹脂組成物からなる成形品、成形バリの長さが特定
された熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を提供するも
のである。本発明に用いられる熱可塑性ノルボルネン樹
脂は、その繰り返し単位中にノルボルナン骨格を有する
ものである。例えば、この熱可塑性樹脂としては、一般
式(I)〜(IV)で表わされるノルボルナン骨格を含
むものである。
【0003】
【化1】
【0004】
【化2】
【0005】
【化3】
【0006】
【化4】
【0007】本発明で使用するノルボルネン系樹脂の具
体例としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を
水素添加した樹脂、ノルボルネン系モノマーを付加型重
合させた樹脂などが挙げられる。ノルボルネン系モノマ
ーは2種以上を用いてもよい。重合、および水素添加の
方法は特に限定されず、常法に従って行なえばよい。
【0008】ノルボルネン系モノマーとして、例えば、
ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアル
キリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネ
ン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2
−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−
エチリデン−2−ノルボルネンなど、これらのハロゲン
などの極性基置換体、ジシクロペンタジエン、2,3−
ジヒドロジシクロペンタジエンなど、ジメタノオクタヒ
ドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリ
デン置換体、およびハロゲン、カルボキシル基、シアノ
基などの極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:
5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8
a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:
5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8
a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,
4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,
8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,
4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,
8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,
4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,
8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,
4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,
8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−
1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,
7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシ
カルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4
a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレンな
ど、シクロペンタジエンとテトラヒドロインデンなどと
の付加物、シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、
4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,
8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデ
ン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,
4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,1
1,11a−ドデカヒドロ−1Hシクロペンタアントラ
セン、5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘ
プト−2−エン、5−メチル−5−カルボキシメチルビ
シクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノビ
シクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−カルボキ
シメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5 .17.10
−3−ドデセン、8−カルボキシエチルテトラシクロ
[4.4.0.12.5 .17.10]−3−ドデセン、8−
カルボキシn−プロピルテトラシクロ[4.4.0.1
2.5 .17.10]−3−ドデセン、8−カルボキシイソプ
ロピルテトラシクロ[4.4.0.12.5 .17.10]−
3−ドデセン、8−カルボキシn−ブチルテトラシクロ
[4.4.0.12.5 .17.10]−3−トデセン、8−
メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.
0.12.5 .17.10]−3−ドデセン、8−メチル−8
−カルボキシエチルテトラシクロ[4.4.0.
2.5 .17.10]−3−ドデセン、8−メチル−8−カ
ルボキシn−プロピルテトラシクロ[4.4.0.1
2.5 .17. 10]−3−ドデセン、8−メチル−8−カル
ボキシイソプロピルテトラシクロ[4.4.0.
2.5 .17.10]−3−ドデセン、8−メチル−8−カ
ルボキシn−ブチルテトラシクロ[4.4.0.
2.5 .17.10]−3−ドデセンなどが挙げられる。
【0009】なお、本発明においてはノルボルネン系モ
ノマーを公知の方法で開環重合させる場合には、本発明
の効果を実質的に妨げない範囲において開環重合可能な
他のシクロオレフィン類を併用することができる。この
ようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シ
クロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシ
クロペンタジエンなどのごとき反応性の二重結合を1個
有する化合物が例示される。本発明において使用するこ
とのできるノルボルナン骨格を有する熱可塑性樹脂とし
ては、例えば特開昭60−168708号公報、特開昭
62−252406号公報、特開昭62−252407
号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−
145324号公報、特開昭63−264626号公
報、特開平1−240517号公報、特公昭57−88
15号公報などに記載されている樹脂などを挙げること
ができる。この熱可塑性樹脂の具体例としては、下記一
般式(V)で表わされる少なくとも1種のテトラシクロ
ドデセン誘導体または該テトラシクロドデセンと共重合
可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られ
る重合体を水素添加して得られる水添重合体を挙げるこ
とができる。
【0010】
【化5】
【0011】(式中A〜Dは、前記に同じ。)前記一般
式(V)で表されるテトラシクロドデセン誘導体におい
て、A、B、CおよびDのうち極性基を含むことが、各
種素材との密着性、耐熱性、およびPPSとの相溶性の
点から好ましい。さらに、この極性基が−(CH
COOR(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素
基、nは0〜10の整数を示す)で表されるカルボン酸
エステル基であることが、得られる水添重合体が高いガ
ラス転移温度を有するものとなるので好ましい。特に、
このカルボン酸エステル基によりなる極性置換基は、一
般式(V)のテトラシクロドデセン誘導体の1分子あた
りに1個含有されることが好ましい。前記一般式におい
て、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であるが、炭素
数が多くなるほど得られる水添重合体の吸湿性が小さく
なる点では好ましいが、得られる水添重合体のガラス転
移温度とのバランスの点から、炭素数1〜4の鎖状アル
キル基または炭素数5以上の(多)環状アルキル基であ
ることが好ましく、特にメチル基、エチル基、シクロヘ
キシル基であることが好ましい。さらに、カルボン酸エ
ステル基が結合した炭素原子に、同時に炭素数1〜10
の炭化水素基が置換基として結合されている一般式
(V)のテトラシクロドデセン誘導体は、吸湿性を低下
させるので好ましい。特に、この置換基がメチル基また
はエチル基である一般式(V)のテトラシクロドデセン
誘導体は、その合成が容易な点で好ましい。具体的に
は、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ
[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−
ンが好ましい。これらのノルボルネン誘導体、あるいは
これと共重合可能な不飽和環状化合物の混合物は、例え
ば(a)W、Mo、ReおよびTaの化合物から選ばれ
た少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表Ia、
IIa、IIb、IIIa、IVaあるいはIVb族元
素の化合物で少なくとも1つの元素−炭素結合あるいは
元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1
種との組み合わせを含むメタセシス触媒によりメタセシ
ス重合される。(a)成分と(b)成分の量的関係は、
金属原子比で(a):(b)が1:1〜1:40、好ま
しくは1:2〜1:20の範囲で用いられる。上記の
(a)〜(b)2成分から調製された触媒は、メタセシ
ス重合反応に対して高い活性を示すが、さらに次に挙げ
るような(c)成分(活性化剤)を添加して、より高活
性の触媒を得ることもできる。また、(a)成分と
(c)成分の量的関係は、添加する(c)成分の種類に
よって極めて多様に変化するため一律に規定できない
が、多くの場合に(c)/(a)(モル比)が0.00
5〜10、好ましくは、0.005〜2.0の範囲で用
いられる。重合溶媒は、モノマー(ノルボルネン誘導体
または該ノルボルネン誘導体と共重合可能な不飽和環状
化合物)と生成する重合体を溶解しメタセシス重合を阻
害しないものであれば特に制限はない。
【0012】本発明の重合体を製造するのに特に好まし
い溶媒は、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシ
レン、1,2−ジメトキシエンタン、酢酸ブチルおよび
これらの混合物が挙げられる。本発明に使用される重合
体は、適当な分子量調節剤を用いて、望まれる分子量の
重合体を合成することができる。分子量調節剤として
は、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、
1−ヘキセン、1−ヘプテンが好適に用いられる。この
ようにして得られる重合体は、適当な水添触媒によって
重合体中の炭素−炭素不飽和結合が水添される。水素添
加の触媒としては、一般に用いられる触媒をそのまま適
用することができる。例えば、不均−触媒系触媒として
は、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウ
ムなどの貴金属触媒を、カーボン、シリカ、アルミナ、
チタニア、シリカマグネシアなどの担体に担持させた固
体触媒などが挙げられる。触媒の形態は、粉末でも粒状
でもよい。また、反応は、固定床でも懸濁床でもよい。
また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリ
エチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/
トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−プ
チルリチウム、チタノセンジクロライド/ジエチルアル
ミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス
(トリフェニルホスフィン)ロジウムなどのロジウム触
媒などが挙げられる。このよな目的に適合した溶媒とし
ては、次のような化合物が挙げられる。すなわち、飽和
炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタ
ン、シクロペンタン、シクロヘキサン、デカリンなどが
使用できる。芳香族系溶媒としては、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン、エチルベンゼンなどが挙げられる。ハロ
ゲン化溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、
1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロ
ロエタン、クロルベンゼンなどが挙げられる。エーテル
系溶媒としはジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエ
タン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコー
ルジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0013】本発明において、熱可塑性樹脂として使用
される前記水添重合体は、クロロホルム中、30℃で測
定さる固有粘度(ηinh )が、0.2〜1.5dl/
g、特に0.3〜0.5dl/gの範囲にあることが好
ましい。また、前記水添重合体の軟化温度は90℃以
上、ガラス転移温度100℃以上、特に130℃以上で
あることが、ポリアリーレンスルフィド樹脂に配合した
際、ポリアリーレンスルフィド樹脂の耐熱性を大きく損
ねない上で好ましい。また、水添重合体の水素添加率
は、60MHz、 1H−NMRで測定した値が50%以
上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは98%以
上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定
性が優れる。本発明に用いられるポリアリーレンスルフ
ィド樹脂は、主とする構成単位が一般式:−Ar−S−
(式中、Arは2価の芳香族基を表わす。)で表わされ
る重合体である。このポリアリーレン基を構成する2価
の芳香族基としては、p−フェニレン基、m−フェニレ
ン基、2,6−ナフタレン基、4,4′−ビフェニレン
基、p,p′−ビベンジル基、およびこれらの核置換基
などが代表例として挙げられる。これらの内では核置換
基のp−フェニレン基を有するポリ−p−フェニレンス
ルフィドが成形加工性の点で好ましい。本発明において
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、上記構成単位を1分
子中に少なくとも70モル%以上含有していることが必
要である。この主成分が70モル%未満であると、得ら
れるポリアリーレンスルフィド樹脂の結晶性が低下した
り、転移温度が低かったり、成形品の物性が悪いなど好
ましくない結果を生じる。さらに、本発明においてポリ
アリーレンスルフィド樹脂は1分子中に30モル%未満
であれば、3価以上の結合手を有する芳香族基、例えば
1,2,4−結合フェニレン核や脂肪族基、ヘテロ原子
含有基などを含んでいてもさしつかえない。上記ポリア
リーレンスルフィド樹脂を製造する方法としては、ジハ
ロゲン化芳香族化合物とジオール芳香族化合物またはモ
ノハロゲン化芳香族チオールの縮合反応あるいはジハロ
ゲン化芳香族化合物と、硫化アルカリあるいは水硫化ア
ルカリとアルカリまたは硫化水素とアルカリ化合物から
の脱塩縮合反応を利用する方法などを例示することがで
きるが、これらに限定されるものではない。熱可塑性ノ
ルボルネン系樹脂とポリアリーレンスルフィド樹脂の混
合には、相溶性を高めるために、相溶化剤を用いること
ができる。その一例としてオレフィン単位とカルボキシ
ル基、酸無水物基、オキサゾリン基およびエポキシ基か
ら選ばれた少なくとも1種の官能基を有する不飽和化合
物単位とを主体とする共重合体と、少なくとも1種のビ
ニル化合物からなるビニル系(共)重合体よりなる多層
構造を有する重合体を相溶化剤として用いると、熱可塑
性ノルボルネン系樹脂とポリアリーレンスルフィド樹脂
は互いに一層相溶するようになる。相溶化剤の使用割合
は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂とポリアリーレンスル
フィド樹脂の合計100重量部に対して、通常0.1〜
20重量部である。ここで、多層構造を有する重合体中
のオレフィン単位とカルボキシル基、酸無水物基、オキ
サゾリン基、エポキシ基から選ばれた少なくとも1種の
官能基を有する不飽和化合物単位とを主体とする共重合
体(以下、「共重合体I」という。)とは、例えばオレ
フィンと上記の官能基を有する不飽和化合物および必要
に応じて他の不飽和化合物との二元、三元または多元の
共重合体である。上記共重合体I中のオレフィンとして
は、エチレン、プロピレンが好ましく、特に好ましいの
はエチレンである。
【0014】カルボキシル基含有不飽和化合物として
は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸など、酸無
水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無
水イタコン酸などが、オキサゾリン基含有不飽和化合物
としては、ビニルオキサゾリンなど、エポキシ基含有不
飽和化合物としては、グリシジルメタクリレート、アリ
ルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。好ま
しい官能基は、エポキシ基、酸無水物基である。上記重
合体Iのオレフィン量は、通常60〜99.5重量%、
官能基を有する不飽和化合物単量体量は、通常0.5〜
40重量%、他の不飽和単量体量は、通常0〜39.5
重量%である。また、多相構造中の少なくとも1種のビ
ニル化合物からなるビニル系共重合体とは、具体的に
は、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エ
チルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルスチレ
ン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレンなどの芳
香族ビニル単量体、(メタ)アクリル酸のメチル、エチ
ル、ドデシル、オクタデシなどのエステル類、ビニルメ
チルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエー
テル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの
ビニルシアン化合物、およびアクリル酸アミド系化合物
などのカルボキシル基、酸無水物基、オキサゾリン基、
およびエポキシ基を有さないビニル化合物を1種または
2種以上重合した数平均重合度が、通常5〜10,00
0、好ましくは10〜10,000の重合体である。多
相構造成分は、共重合体Iまたはビニル系(共)重合体
マトリックス中に、それとは異なる成分であるビニル共
重合体または共重合体Iが球状に均一に分散しているも
のである。分散している重合体の粒子径は0.001〜
10μm、好ましくは0.01〜5μmである。分散重
合体粒子径が0.001μm未満の場合、あるいは10
μmを超える場合、得られた組成物の機械的強度が低下
するので好ましくない。多相構造成分は、共重合体を通
常5〜95重量%、好ましくは20〜90重量%含有す
ることが本発明の目的を達成する上で好ましい。多相構
造成分を製造する方法は、一般によく知られている連鎖
移動法、電離性放射線照射性など、いずれの方法によっ
てもよいが、最も好ましいものは、特開昭64−488
56号公報記載の方法である。
【0015】本発明に用いる無機充填材は成形品の機械
的強度を上げる目的で配合されるものであり、無機充填
材の例としては、例えば、ガラス繊維、チタン酸カリウ
ム繊維、アスベスト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、セラミ
ック繊維、ジルコニア繊維、シリカ繊維、アルミナ繊
維、石コウ繊維などの繊維状充填材、および硫酸バリウ
ム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、カオリン、ク
レー、バイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、
ゼオライト、マイカ、雲母、ネフェリンシナイト、タル
ク、アタルバルジャイト、ワラストナイト、PMF、珪
酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ド
ロマイト、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化チ
タン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、アルミ
ナ、酸化鉄、二硫化モリブデン、石コウ、ガラスビー
ズ、ガラスバルーン、ガラスパウダー、ガラスフレー
ク、シリカパウダー、シリカビーズなどの無機充填材な
どが挙げられる。特に、少なくとも1種以上の繊維状充
填材が含まれている充填材を用いると、本発明の熱可塑
性樹脂組成物で成形された成形品の耐クラック性が向上
するので好ましい。この繊維状充填材の平均径は、剛性
と耐衝撃性とのバランスの面から0.1〜250μmの
範囲内にあることが好ましい。
【0016】本発明に用いる熱可塑性ノルボルネン系樹
脂は非晶性であるので、結晶性であるポリアリーレンス
ルフィド樹脂に較べ溶融時の流動性の極端な増加がな
く、成形収縮率や線膨張係数の異方性が小さい。よって
熱可塑性ノルボルネン系樹脂をポリアリーレンスルフィ
ド樹脂に配合することにより、ポリアリーレンスルフィ
ド樹脂の上記欠点を大幅に改善することができ、成形品
の成形性、寸法精度が向上する。しかも、熱可塑性ノル
ボルネン系樹脂はガラス転移温度が高い樹脂であり、ポ
リアリーレンスルフィド樹脂に配合してもポリアリーレ
ンスルフィド樹脂が元来有する高い耐熱性を大きく損ね
ることがない。しかし、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が
過剰に配合されると、熱変形温度が180℃以下に低下
してしまい、このような樹脂組成物で成形品を成形する
と、高温下で長時間使用するうちに成形品が変形した
り、またハンダ付けが必要な用途ではハンダ付け工程時
に加わる高温の熱により成形品が変形したり、信頼性が
著しく低下することがある。従って、本発明の成形品に
各種用途に使用するのに十分な耐熱性を持たせるために
は、樹脂組成物の熱変形温度は荷重66psiにおいて
180℃を超えていることが好ましく、特に200℃を
超えていることが好ましい。さらに、本発明の成形品が
特に高精度が要求される用途に用いられる場合も考慮し
て、上記熱可塑性樹脂組成物は、金型温度100℃、シ
リンダー温度310℃で射出成形した時の樹脂の流れ方
向の成形収縮率(MD)と樹脂の流れ方向と直角方向の
成形収縮率(TD)の比(TD/MD)が、120×1
20×2mm平板の成形品において、0.5以上2.0
以下の範囲であることが好ましく、特に0.6以上1.
8以下の範囲内にあることが好ましい。ここでMD、T
Dは金型の寸法に対する成形品の寸法の差を測定するこ
とにより、(金型の寸法−成形品の寸法)×100/金
型の寸法(%)で表わされる。上記、熱可塑性樹脂組成
物のTD/MDが上記範囲をはずれると成形収縮率の異
方性が大きくなりすぎるため、寸法どおりの成形品を得
るためにはこれら異方性を考慮して金型設計や成形条件
を設定しなければならないなど成形に多くの労力とコス
トを要することとなる。さらに、上記熱可塑性樹脂組成
物を用いて本発明の成形品を成形するときに金型のパー
ティングラインに沿って樹脂が流出する現象、いわゆる
成形バリが発生すると複雑な形状の成形品の歩留まりが
悪くなり、また成形品の仕上げ工程でのバリ除去作業が
必須となり、さらに高価な金型の寿命も短くなるなど、
成形性、生産性において極めて劣るものとなる。従っ
て、これら成形性、生産性の諸問題を改善するために、
上記熱可塑性樹脂組成物は金型温度100℃、シリンダ
ー温度310℃で射出成形したときの成形バリの長さが
120×120×2mm平板の成形品において70μm
以下であることが好ましく、特に50μm以下であるこ
とが好ましい。本発明において、上記の熱変形温度、成
形収縮における異方性、バリ長さを満たす熱可塑性樹脂
組成物を得るには、熱可塑性ノルボルネン系樹脂とポリ
アリーレンスルフィド樹脂との合計100重量部に対し
て無機充填剤5〜400重量部の範囲で含まれているこ
とが好ましく、熱可塑性ノルボルネン系樹脂とポリアリ
ーレンスルフィド樹脂はそれぞれ1〜60重量%、99
〜40重量%の範囲、好ましくはそれぞれ5〜45重量
%、95〜55重量%の範囲で含まれていることが望ま
しい。熱可塑性ノルボルネン系樹脂が1重量%未満で
は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の結晶性に基づく諸
欠点が改善されず、樹脂組成物の成形収縮率や線膨張係
数の異方性が大きくなり、樹脂溶融時の流動性が大きく
なりすぎてバリが発生しやすくなり、また各種素材との
密着性に劣るものとなるため、このよような組成物で形
成された成形品は信頼性に劣るものとなる。また、熱可
塑性ノルボルネン系樹脂が60重量%を超えると、組成
物の熱変形温度が著しく低下してしまい、このような組
成物で成形された成形品は高温下での長時間使用やハン
ダ付け工程時にかかる高温の熱により変形するおそれが
ある。特に熱可塑性ノルボルネン系樹脂が、ノルボルナ
ン骨格に極性置換基を有しない樹脂である場合は1〜4
5重量%の範囲内であることが望ましい。
【0017】本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物に
は、本発明の効果を損ねない範囲で、他の熱可塑性樹脂
やエラストマーを配合することも可能である。これら熱
可塑性樹脂としては、例えばポリエステル、ポリ塩化ビ
ニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、
ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスル
フォンポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテル
ケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリレート、ポリ四
フッ化エチレン、ポリ二フッ化エチレン、ポリスチレン
などが挙げられ、エラストマーとしては、ポリオレフィ
ン系ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどが挙げられ
る。その他、本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物は、
必要に応じて、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、酸化防止
剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノ
ール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジ
メチルフェノール、2,2−メチレン−ビス−(4−エ
チル−6−t−ブチルフェノール)、トリス(ジ−ノニ
ルフェニルホスファイト)、紫外線吸収剤、例えばp−
t−ブチルフェニルサリシレート、2,2′−ジヒドロ
キシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−(2′ジヒ
ドロキシ−4′−m−オクトキシフェニル)ベンゾトリ
アゾール、「TINUVIN320」[チバガイギー社
製]、「TINUVIN329」[チバガイギー社
製]、「TINUVIN622LD」[チバガイギー社
製]、「CHIMASSORB119FL」[チバガイ
ギー社製]、滑剤、例えばパラフィンワックス、ステア
リン酸、硬化油、ステアロアミド、メチレンビスステア
ロアミド、m−ブチルステアレート、ケトンワックス、
オクチルアルコール、ヒドロキシステアリン酸トリグリ
セリド、などを必要量添加してもよい。
【0018】本発明において、熱可塑性樹脂組成物の溶
融粘度は300℃、剪断速度1000sec-1におい
て、100〜4000ポイズの範囲にあることが好まし
く、特に200〜2000ポイズの範囲にあることが好
ましい。溶融粘度が100ポイズ未満では流動性が大き
くなりすぎ、バリが発生しやすくなるなど成形性、生産
性が悪化する。一方、4000ポイズを超えると粘度が
高くなりすぎ、複雑な形状の成形品を成形することが難
しくなる。本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物は、単
軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダ
ー、ミキシングロールなどの混合機を用い、樹脂組成物
および充填剤、難燃剤、さらに必要に応じて使用される
添加剤を混合することによって得られる。本発明に使用
する熱可塑性樹脂組成物の製造方法の例を示すと、ミキ
サーで各成分を混合した後、押出機を用い、240〜3
60℃で溶融混練りして造粒物を得る方法、さらに簡便
な方法としては、各成分を直接、成形機内で溶融混練り
してペレットを得る方法などが挙げられる。また、二軸
押出機を用いて樹脂成分を混練りしながら、充填剤、難
燃剤を後から添加してベレットを作成する方法がある。
本発明の成形品を成形する方法は特に制限はないが、主
として射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形など
公知の方法を用いて、所望の形状の成形品とすることが
できる。このときの成形温度は260℃〜380℃の範
囲内であることが、得られた成形品の外観に優れ、しか
も寸法安定性や強度にも優れた成形品となるので好まし
い。本発明の成形品は、その表面に着色層が設けられて
いてもよい。これら着色層を形成する塗料は特に限定さ
れず、有機溶剤、水などに、数平均分子量が通常1,0
00〜1,000,000の塗料用合成樹脂、さらに必
要により顔料、染料、金属、金属化合物などを溶解、懸
濁させたものでよい。ここで、使用可能な溶剤として
は、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸
エチル、ペンタン、オクタンなどを挙げることができ
る。塗料の例を挙げると、メラミン樹脂系塗料、塩化ビ
ニル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、ウレタン樹脂系
塗料、ポリエステル系塗料、アクリル樹脂系塗料、AB
S樹脂系塗料、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン塗料、ア
クリル樹脂系エマルジョン塗料、アルキッド樹脂系塗
料、ポリアミド樹脂系塗料、ポリイミド樹脂系塗料、ポ
リフッ化ビニリデン樹脂系塗料、シリコーン樹脂系塗
料、ポリブタジエン系塗料などが挙げられる。上記のよ
うな塗料を本発明の成形品に塗装する方法は特に限定さ
れないが、例えばハケ塗り、吹き付け、ロールコート、
ディッピングなどの塗装手段を挙げることができる。こ
の場合は本発明の成形品には、より強固な着色層を形成
するために、塗装前にあらかじめ溶剤処理や酸化剤処理
などの表面処理が施されていてもよい。また、本発明の
成形品を着色された成形品とするには、上記で挙げた方
法の他に、各種塗料、顔料を、成形前にあらかじめ含ま
せたものを用いて成形する方法も挙げることができる。
本発明の成形品には印刷が施されていてもよい。ここで
本発明の成形品に印刷を施す方法は特に限定されず、グ
ラフィック、フレキソグラフィック、シルクスクリー
ン、ドライオフセット、転写、スタンピングなどの公知
の方法を用いることができる。本発明の成形品に他の成
形品を組み合わせて使用する場合は、接着性を高める目
的で本発明の成形品に接着剤やカップリング剤などの接
着層が施されていてもよい。これら接着剤層を形成する
接着剤は一般に用いらている公知のものを使用すること
ができ、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、シアノ
アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、シリコン系
接着剤、紫外線硬化型接着剤、ホットメルト型接着剤や
熱可塑性ノルボルネン系樹脂を有機溶剤に溶かした溶液
などを用いることができる。これらの中では、熱可塑性
ノルボルネン系樹脂を有機溶剤に溶かしてなる溶液が、
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性ノルボルネン
系樹脂と相溶することにより、密着性が特に高くなるの
で好ましい。ここで接着剤として熱可塑性ノルボルネン
系樹脂を有機溶剤に溶かしてなる溶液を用いる場合は、
その構造が本発明の成形品に用いる熱可塑性樹脂組成物
中の熱可塑性ノルボルネン系樹脂の構造と同一であって
もよく、異なっていてもよいが、同一構造のものが好ま
しい。また、超音波溶着法を用いて本発明の成形品と他
の成形品を接着することもできる。
【0019】本発明の成形品は電子部品として例えば、
タクトスイッチ、スライドスイッチ、マイクロスイッ
チ、ディップスイッチ、マイクロリレー、ICソケッ
ト、バーンインソケット、トリマー、コネクター、磁気
ヘッドケース、電解コンデンサーキャップ、光ケーブル
コネクター、プリント基板、LCフィルタケースなど
が、電気・家電部品として例えば、FDDキャリッジ・
軸受、光ディスク光ピックアップベース、VTR・シリ
ンダーベース、ロータリーコネクター、モーターブラッ
シュホルダー・コンミテータ、電磁調理機コイルベー
ス、電子レンジ部品(スターラシャフト、トレー、ター
ンテーブルリング)、ドライヤーノズル、スチームアイ
ロン弁、光ファイバー用集光レンズケースなどが、自動
車部品として例えば、オルタネータ部品(端子台、ソケ
ット、ブラシュホルダー)、電磁コイルボビン・ケー
ス、ヒューズケース、燃料噴射エアフローメーター、ス
ターターミナル、ハロゲンランプ、ソケット、ワイパー
モーターブッシュ、キャブレータヘッドバルブ、二輪水
冷管ジョイント、キャブレータシートリードバルブ、排
ガスコントロールバルブ、ウォッシャーノズル、ランプ
リフレクター、シリンダーヘッドカバー、アンダーフー
ド部品、クリーンファン、ラジエータータンク、リレー
キャップ、ウィンドスクリーンなどが、機械部品として
例えば、ウォッチ基板、複写機部品(ギヤ、ロールケー
ス、ベアリングホルダー)、ケミカルポンプケース・イ
ンペラ、ギヤポンプ、流量計、汎用エンジンキャブレー
タ・ヒートインシュレータなどの各種用途に使用するこ
とができる。
【0020】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるもの
ではない。なお、実施例中、部および%は、特に断らな
いかぎり重量基準である。また、実施例中の各種の測定
は、次のとおりである。耐熱性 熱変形温度(HDT)を、ASTM D648によっ
て、荷重66psiで測定した。成形収縮率 120×120×2.0mmの平板を、金型温度100
℃、シリンダー温度310℃で射出成形し、金型の寸法
に対する成形品の寸法の差を測定した。流れ方向と直角
方向の収縮率を(金型の寸法−成形品の寸法)×100
/金型の寸法(%)で示した。また流れ方向と直角方向
の収縮率の比も示した。MDは射出成形における流れ方
向、TDはMDに対して直角方向を示す。成形性(流動性) JIS K7210に準じて、310℃×5kgの条件
下でメルトフローレート(MFR)を測定した。ハンダリフローテスト (株)マルコム社製リフローチャッカーRC−8を用
い、予備加熱を180℃で2分行なった後、本加熱を2
60℃で30秒行ない、試験片の最高表面温度、外観変
化、流れ方向の収縮率を測定した。バリ長さ 120×120×2.0mm平板を金型温度100℃、
シリンダー温度310℃で射出成形し、試験片の先端部
分に設けられた20μmの隙間から生じるバリを顕微鏡
を用いて測定した。塗装性 以下の評価基準に従って塗膜の外観を目視評価した。 ○;良好、△;若干劣る、×;悪い塗膜の密着性 塗装した成形板に1mm×1mmのマス目100個をカ
ッターで刻み、セロハンテープ剥離試験を行なって、以
下の評価基準に従って密着性を評価した。 ○;剥離された目の数が0のもの △;剥離された目の数が1〜10個のもの ×;剥離された目の数が10個を超えるもの
【0021】参考例(a)熱可塑性ノルボルネン系樹脂の製造 (a)−1 8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ
[4.4.0.12.5 .17.10]ドデカ−3−エン10
0g、1,2−ジメトキシエタン60g、シクロヘキサ
ン240g、1−ヘキセン9g、およびジエチルアルミ
ニウムクロライド0.96モル/1のトルエン溶液3.
4mlを、内容積1リットルのオートクレーブに加え
た。一方、別のフラスコに、六塩化タングステンの0.
05モル/1の1,2−ジメトキシエタン溶液20ml
とパラアルデヒドの0.1モル/1の1,2−ジメトキ
シエタン溶液10mlを混合した。この混合溶液4.9
mlを、前記オートクレーブ中の混合物に添加した。密
栓後、混合物を80℃に加熱して2時間半撹拌を行なっ
た。得られた重合体溶液に、1,2−ジメトキシエタン
とシクロヘキサンの2/8(重量比)の混合溶媒を加え
て重合体/溶媒が1/10(重量比)にした後、トリエ
タノールアミン20gを加えて10分間撹拌した。この
重合溶液に、メタノール500gを加えて30分間撹拌
して静置した。2層に分離した上層を除き、再びメタノ
ールを加えて撹拌、静置後、上層を除いた。同様の操作
をさらに2回行ない、得られた下層をシクロヘキサン、
1,2−ジメトキシエタンで適宜希釈し、重合体濃度が
10%のシクロヘキサン−1,2−ジメトキシエタン溶
液を得た。この溶液に20gのパラジウム/シリカマグ
ネシア[日揮化学(株)製、パラジウム量=5%]を加
えて、オートクレーブ中で水素圧40kg/cm2 とし
て165℃で4時間反応させた後、水添触媒をろ過によ
って取り除き、水添重合体溶液を得た。また、この水添
重合体溶液に、酸化防止剤であるペンタエリスリチル−
テトラキス[3−(3.5−ジ−t−ブチル−4−ヒド
ロキシフェニル)プロピオネート]を、水添重合体に対
して0.1%加えてから、380℃で減圧化に脱溶媒を
行なった。ついで、溶融した樹脂を、チッ素雰囲気下で
押出機によりペレット化し、固有粘度0.45dl/g
(30℃、クロロホルム中)、重量平均分子量7.0×
104 、水添率99.5%、ガラス転移温度168℃の
熱可塑性樹脂(a)−1を得た。 (a)−2 重合時間を4時間に変更した以外は(a)−1と同様に
メタセシス開環重合した後水添し、ペレット化して固有
粘度0.68dl/g(30℃、クロロホルム中)、水
添率99%、ガラス転移温度166℃の熱可塑性ノルボ
ルネン系樹脂(a)−2を得た。 (a)−3 6−エチリンデン2−テトラシクロドデセンを、参考例
1と同様にメタセシス開環重合した後水添し、ペレット
化して、固有粘度0.45dl/g(30℃、クロロホ
ルム中)、重量平均分子量5.5×104 、水添率99
%、ガラス転移温度140℃の熱可塑性樹脂(a)−3
を得た。 (a)−4 エチレン55モル%と2−メチル−1,4,5,8−ジ
メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタ
ヒドロナフタレン45モル%とを付加重合し、ペレット
化して、固有粘度0.64dl/g(35℃、デカリン
中)、重量平均分子量10.0×104 、ガラス転移温
度140℃の熱可塑性樹脂(a)−4を得た。(b)ポリアリーレンスルフィド (b)−1:ポリフェニレンスルフィドLA−4X(リ
ニアタイプ) (株)トープレン製 (b)−2:ポリフェニレンスルフィドT−4(半架橋
タイプ) (株)トープレン製(c)無機充填材 (c)−1:ガラス繊維 CS03MA497 旭ファ
イバーグラス (株)製 (c)−2:シリカ粉末 クリスターライト5X(平均
粒径7μm、最大粒径10μm) (株)タツモリ製(d)相溶化剤 :モディパーA4101 日本油脂
(株)製
【0022】実施例1〜8、比較例1〜4 参考例の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、ポリアリーレン
スルフィド樹脂、無機充填材、相溶化剤を表1に示す配
合で、二軸押出機を用いて300℃で溶融混合し、ペレ
ット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。これらの樹脂
組成物を用い金型温度100℃、シリンダー温度310
℃で射出成形し、120×120×2.0mmの平板を
得た。これについて耐熱性、成形収縮率、成形性、ハン
ダリフロー耐熱成形バリの長さを評価し、結果を表1に
示した。さらに得られた平板に、アクリル系塗料(日本
油脂(株)製、ニッサンキャンディートーンR4C)と
シンナー(日本油脂(株)製、ニッサンハイプラスN
o.300)とを重量比で75/25の割合で混合した
樹脂塗料を、エヤースプレーガンを用い塗装した。乾燥
は80℃で30分行ない、乾燥膜厚が25μmの塗膜を
得た。この塗装した平板の評価結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】表1から明らかなように、本発明の成形体
に用いた熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜8)は耐熱
性、成形性に優れ、成形収縮における異方性、および成
形時のバリ発生が改善されたものであり、塗装性にも優
れたものである。これに対し、比較例1は熱可塑性ノル
ボルネン系樹脂が配合されていないものであり、このよ
うな組成物は成形バリや成形収縮率の異方性が大きく、
塗装膜との密着性にも劣るものである。また、比較例2
〜4は熱可塑性ノルボルネン系樹脂が過剰に含まれたも
のであり、これらは荷重66psiにおける熱変形温度
が180℃に満たないもので、ハンダリフローテストに
おいて熱変形がみられるなど、成形品としての耐熱性に
劣るものである。 実施例9 実施例1の組成の熱可塑性樹脂組成物を用い、金型温度
95℃、シリンダー温度310℃で射出成形により外観
の良好なコネクター用成形体を得た。この成形体に金メ
ッキが施された黄銅製コンタクトを圧入してコネクター
を成形した、これらのコネクターについて、コンタクト
との密着性を評価するために赤インクで染色した25℃
の水中にコネクターを24時間浸漬し、成形体とコンタ
クトの界面の水の浸透具合を目視で調べた結果、水の浸
入がまったくない、極めて密着性に優れたものであっ
た。
【0025】
【発明の効果】本発明に用いる熱可塑性樹脂組成物は耐
熱性、成形性に優れ、成形バリや成形収縮率などの異方
性が改善されたものであり、各種素材との密着性にも優
れているので、このような樹脂組成物で成形された成形
品は成形バリが極めて少なく外観に優れたものであり、
ハンダ付け工程時や高温環境下での長時間使用による変
形や性能劣化のない、極めて信頼性の高いものとなる。
さらに本発明の成形品は塗装性、印刷性にも優れている
ので様々な色や模様をつけることができ、美観の優れた
成形品とすることもできる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 5/00 C08K 3/00 - 13/08 C08L 1/00 - 101/16

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂組成物からなる成形品であ
    って、前記熱可塑性樹脂組成物が、ポリアリーレンスル
    フィド樹脂:99〜40重量%と熱可塑性ノルボルネン
    系樹脂(ただし、エチレン成分と環状オレフィン成分か
    らなる環状オレフィン系ランダム共重合体を除く):1
    〜60重量%(但しポリアリーレンスルフィド樹脂と熱
    可塑性ノルボルネン系樹脂との合計を100重量%とす
    る。)の合計量100重量部に対して無機充填剤を5〜
    400重量部含有することを必須とし、かつ熱変形温度
    が荷重66psiにおいて180℃を超えたものである
    ことを特徴とする成形品。
  2. 【請求項2】 下記条件で測定された、樹脂の流れ方向
    の成形収縮率(MD)と樹脂のながれ方向と直角方向の
    成形収縮率(TD)の比(TD/MD)が0.5以上2
    以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の熱可
    塑性樹脂組成物からなる成形品。 成形品の形状 :120×120×2mm平板 金型温度 :100℃ シリンダー温度:310℃
  3. 【請求項3】 下記条件で測定された、成形バリの長さ
    が70μm以下である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成
    物からなる成形品。 成形品の形状 :120×120×2mm平板 板金型温度 :100℃ シリンダー温度:310℃
JP06447394A 1994-03-08 1994-03-08 熱可塑性樹脂組成物からなる成形品 Expired - Lifetime JP3412245B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP06447394A JP3412245B2 (ja) 1994-03-08 1994-03-08 熱可塑性樹脂組成物からなる成形品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP06447394A JP3412245B2 (ja) 1994-03-08 1994-03-08 熱可塑性樹脂組成物からなる成形品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH07242754A JPH07242754A (ja) 1995-09-19
JP3412245B2 true JP3412245B2 (ja) 2003-06-03

Family

ID=13259241

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP06447394A Expired - Lifetime JP3412245B2 (ja) 1994-03-08 1994-03-08 熱可塑性樹脂組成物からなる成形品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3412245B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6883938B1 (en) 1998-02-20 2005-04-26 Nippon Zeon Co., Ltd. Lighting equipment

Also Published As

Publication number Publication date
JPH07242754A (ja) 1995-09-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5409996A (en) Thermoplastic resin composition
US4391954A (en) Thermoplastic molding composition
JP2755279B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物およびその成形体
JP2003096317A (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP5510624B2 (ja) ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物および成形体
JPH1171514A (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP3412245B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物からなる成形品
EP0574229A1 (en) Thermoplastic resin composition and molded article
EP1223195B1 (en) Thermoplastic resin composition and shaped articles thereof
JP4729802B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物およびその用途
JP3018378B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP3528208B2 (ja) 樹脂組成物および成形体
JP2003040985A (ja) 環状オレフィン系樹脂溶融押出フィルム
JP2002020464A (ja) 射出成形品
JP3799746B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP2005097495A (ja) 液状樹脂組成物、それを用いた近赤外線吸収成形体の製造方法及び近赤外線吸収成形体
JPH08337720A (ja) 熱可塑性耐熱樹脂組成物
JP3455931B2 (ja) 塗料用樹脂組成物
JPH03273043A (ja) 水素化開環重合体組成物およびその用途
JPH0859993A (ja) 熱可塑性樹脂組成物からなる成形品
JP3203893B2 (ja) Ccdケース
JPH10168290A (ja) 樹脂組成物
JP3899527B2 (ja) 耐熱難燃樹脂組成物
JP3947000B2 (ja) レーザーマーキングされる成形体用熱可塑性樹脂組成物およびその成形体
JPH107908A (ja) 熱可塑性樹脂組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20030225

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090328

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090328

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100328

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100328

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110328

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110328

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120328

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120328

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130328

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130328

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140328

Year of fee payment: 11

EXPY Cancellation because of completion of term