JP3595913B2 - 被冷却体の温度制御方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、被冷却体の温度制御方法及び装置に関し、特に宇宙環境試験を行う際の各種被試験体を所定温度に保持する際や、宇宙環境試験装置を構成する真空容器内を所定温度に保持するためのシュラウドの温度制御に適した温度制御方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、各種物品(被冷却体)を冷却して所定温度に保持する方法として、フロンを冷媒とした二元式冷凍機とヒーターとによる温度調整法や、液体窒素とヒーターとによる温度調整法が広く採用されている。
【0003】
しかし、フロンを冷媒として用いる方法は、近年のフロンの規制問題だけでなく、冷凍機が大掛かりになる点、さらに、制御温度範囲が最低−60℃程度であるなどの欠点を有している。一方、液体窒素を用いる方法では、液体窒素の温度が極めて低いため、比較的温度の高い点を制御する場合には制御性が悪く、被冷却体の温度分布が大きくなりやすいという欠点があった。
【0004】
また、液体窒素を用いる場合は、外気からの熱侵入を防止するために配管等を保冷材により覆う必要があるが、大量の保冷材が必要で配管スペースも大きくなるだけでなく、配管接続部等からの熱侵入を完全に防ぐことは困難で、液体窒素供給系統が暖まることにより液体窒素の流れが阻害され、温度制御に影響を与えることもあった。特に、宇宙環境試験装置では、シュラウドや被試験体を所定温度に制御する必要があるが、従来の温度制御では、精密な温度コントロールは困難であった。
【0005】
そこで本発明は、液体窒素温度から常温以上の温度範囲における温度制御を確実に行うことができ、特に、宇宙環境試験装置における真空容器(チェンバー)内のシュラウドや被試験体の温度制御を精密にかつ効率よく行うことができる被冷却体の温度制御方法及び装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の被冷却体の温度制御方法は、液体窒素とガス窒素とを所定割合で混合した冷媒ガス窒素を被冷却体に供給し、該被冷却体を所定温度に制御する方法であって、前記液体窒素とガス窒素とを混合した冷媒ガス窒素の温度を測定して前記液体窒素の供給量を調節するとともに、前記被冷却体の温度を測定して前記ガス窒素の供給量及び被冷却体に設けた加熱手段の加熱量のいずれか一方又は双方を調節することを特徴としている。
【0007】
また、本発明の被冷却体の温度制御装置は、液体窒素供給弁を有する液体窒素供給系統と、ガス窒素供給弁を有するガス窒素供給系統と、両系統からそれぞれ供給される液体窒素とガス窒素とを混合する混合器と、該混合器で液体窒素とガス窒素とが混合して生成した冷媒ガス窒素の温度を測定する冷媒温度測定手段と、該生成した冷媒ガス窒素を被冷却体に供給する冷媒ガス窒素供給系統と、前記被冷却体に設けられた加熱手段と、該被冷却体の温度を測定する被冷却体温度測定手段と、前記冷媒温度測定手段で測定した冷媒ガス窒素の温度に基づいて前記液体窒素供給弁の開度を調節する液体窒素供給量調節手段とを備えるとともに、前記被冷却体温度測定手段で測定した被冷却体の温度に基づいて、前記ガス窒素供給弁の開度を調節するガス窒素供給量調節手段及び前記加熱手段の加熱量を調節する加熱量調節手段のいずれか一方又は双方の調節手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の温度制御装置は、真空容器内に配置された被冷却体を所定温度に制御する温度制御装置において、前記真空容器内に、液体窒素供給系統から供給される液体窒素とガス窒素供給系統から供給されるガス窒素とを混合する混合器と、該混合器で混合して生成した冷媒ガス窒素を前記被冷却体に供給する冷媒ガス窒素供給系統とを収納したこと、特に、前記真空容器内に、液体窒素供給系統から供給される液体窒素とガス窒素供給系統から供給されるガス窒素とを混合する混合器と、該混合器で液体窒素とガス窒素とが混合して生成した冷媒ガス窒素を前記被冷却体に供給する冷媒ガス窒素供給系統とを収納するとともに、前記混合器で液体窒素とガス窒素とが混合して生成した冷媒ガス窒素の温度を測定する冷媒温度測定手段と、前記被冷却体を加熱する加熱手段と、前記被冷却体の温度を測定する温度測定手段と、前記冷媒温度測定手段で測定した冷媒ガス窒素の温度に基づいて前記液体窒素供給系統に設けた液体窒素供給弁の開度を調節する液体窒素供給量調節手段と、前記温度測定手段で測定した被冷却体の温度に基づいて、前記ガス窒素供給系統に設けたガス窒素供給弁の開度を調節するガス窒素供給量調節手段及び前記加熱手段の加熱量を調節する加熱量調節手段のいずれか一方又は双方の調節手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】
また、上記構成において、前記真空容器が宇宙環境試験装置のチェンバーであり、前記被冷却体が該チェンバー内に設置された被試験体、あるいは、シュラウドであることを特徴としている。
【0010】
【作 用】
本発明の温度制御方法及び装置によれば、被冷却体に供給する冷媒ガス窒素の温度を確実にコントロールすることができ、液体窒素の供給量、ガス窒素の供給量及び被冷却体に設けた加熱手段の加熱量を調節することにより、被冷却体の温度を、液体窒素温度から常温以上の温度範囲まで、即ち約80K乃至400Kの幅広い温度範囲を確実に制御することができる。
【0011】
また、真空容器内に配置された被冷却体を所定温度に制御する際に混合器等を真空容器内に収納することにより、これらへの熱侵入量を抑えることができ、温度制御性を向上させることができるとともに、精密な温度管理を行うことができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を、図面に示す実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
図1は、本発明方法を実施するための装置構成の一実施例を示す系統図であって、宇宙環境試験装置におけるチェンバー内に設置された被試験体の温度制御を行う際の装置構成を示している。
【0013】
本実施例に示す温度制御装置は、液体窒素供給弁1を有する液体窒素供給系統2と、ガス窒素供給弁3を有するガス窒素供給系統4と、両系統2,4からそれぞれ供給される液体窒素とガス窒素とを混合する混合器5と、混合器5で液体窒素とガス窒素とが混合して生成した冷媒ガス窒素の温度を測定する冷媒温度測定手段である第1温度指示調節計(TIC)6と、生成した冷媒ガス窒素を被冷却体(被試験体)7に供給する冷媒ガス窒素供給系統8と、被冷却体に設けられた加熱手段である電気ヒーター9と、被冷却体7の温度を測定する被冷却体温度測定手段である第2温度指示調節計(TIC)10とを備えており、混合器5から下流側の系統は、真空容器である宇宙環境試験装置のチェンバー11内に収納されている。
【0014】
上記第1温度指示調節計6は、混合器5で混合して生成した冷媒ガス窒素が流れる冷媒ガス窒素供給系統8に設けられた測温筒8a内の冷媒ガス窒素の温度を測定するとともに、測定した冷媒ガス窒素の温度に基づいて液体窒素供給弁1の開度を調節する液体窒素供給量調節手段としても機能し、また、第2温度指示調節計10は、測定した被冷却体7の温度に基づいてガス窒素供給弁3の開度を調節するガス窒素供給量調節手段とともに、電気ヒーター9の加熱量を調節する加熱量調節手段の両方の機能を有している。
【0015】
上記第2温度指示調節計10によるガス窒素の供給量調節と電気ヒーター9の加熱量調節とは、あらかじめ設定されたスプリット制御により行われるもので、被冷却体7の設定温度に応じて両方を適宜に調節する。また、第1温度指示調節計6の温度設定値は、被冷却体7の設定温度に対応する第2温度指示調節計10の温度設定値と指示値との偏差により自動的に計算され、変化するように形成されている。
【0016】
例えば、被冷却体7の設定温度が150Kの場合、第2温度指示調節計10には、これに対応して150Kの温度設定値が与えられるが、第1温度指示調節計6には、被冷却体7の現在温度、即ち第2温度指示調節計10の指示値に応じて適当な温度設定値が与えられる。例えば、冷却運転の初期で被冷却体7の温度が高い場合には設定温度の150Kより低い温度設定値が与えられ、被冷却体7の温度が150Kに近付くに従って所定の計算式に基づいて温度設定値が変化する。
【0017】
なお、被冷却体7の設定温度が常温以上の場合には、液体窒素の供給は不要であり、ガス窒素供給系統4から供給するガス窒素の温度制御も行わないので、第1温度指示調節計6の機能は実質的に停止し、第2温度指示調節計10による電気ヒーター9及びガス窒素供給量の調節だけが行われる。
【0018】
このように、被冷却体7を所望の温度に制御するにあたり、あらかじめ液体窒素とガス窒素とを混合して適当な温度の冷媒ガス窒素を生成し、この冷媒ガス窒素を用いて被冷却体7を冷却し、また、必要に応じて電気ヒーター9を作動させて温度調節を行うので、図2に示すように、液体窒素だけを用いた従来法に比べて本発明方法では被冷却体7を速やかに所望の温度にすることができるだけでなく、温度変動幅も小さくなり、被冷却体7の温度分布も小さくすることができる。
【0019】
また、混合器5から下流側の系統を、真空容器であるチェンバー11内に収納したことにより、これらの系統を真空断熱状態にすることができるので、熱侵入量を抑えることができ、ハンチングが少なくなり、温度制御性を大幅に向上できる。さらに、これらの系統に断熱構造を施す必要がなくなるので、チェンバー11内にコンパクトに収納することができ、また、チェンバー11外においても、混合器等が専有していた分の面積を小さくすることができる。
【0020】
なお、上記実施例では、宇宙環境試験装置におけるチェンバー内に設置された被試験体の温度制御を行う場合を例示して説明したが、宇宙環境試験装置におけるチェンバー内に設けられ、該チェンバー内を所定温度に保持するためのシュラウドの温度制御にも同様に用いることができる。このとき、シュラウドと被試験体との両方の温度制御を行う場合には、シュラウド用及び被試験体用に、それぞれ別系統の温度制御装置を設置すべきである。また、真空容器内に設置されていない他の各種の被冷却体の温度制御も同様に行うことができる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、被冷却体の温度制御性を大幅に向上させることができ、二元式冷凍機を用いた場合に比べて設置面積を小さくすることができるとともに幅広い温度範囲で使用できる。さらに、液体窒素だけを用いた場合に比べて温度のハンチングが少なくなり、被冷却体を所望の温度に速やかに調節することができ、被冷却体の温度分布も小さくなり精密な温度制御を行うことができる。
【0022】
特に、真空容器内に設けられた被冷却体の温度制御を行う際に、液体窒素とガス窒素とを混合する混合器から下流側の系統を真空容器に収納することにより、該系統を真空断熱した状態にすることができるので、真空容器内にコンパクトに収納することができ、設置面積の低減が図れる。また、熱侵入(ヒートロス)を抑えることができるので、温度制御性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す系統図である。
【図2】本発明方法と従来法とにおける温度制御性能を比較した時間と温度との関係を示す図である。
【符号の説明】
1…液体窒素供給弁、2…液体窒素供給系統、3…ガス窒素供給弁、4…ガス窒素供給系統、5…混合器、6…第1温度指示調節計、7…被冷却体、8…冷媒ガス窒素供給系統、8a…測温筒、9…電気ヒーター、10…第2温度指示調節計、11…チェンバー

Claims (6)

  1. 液体窒素とガス窒素とを所定割合で混合した冷媒ガス窒素を被冷却体に供給し、該被冷却体を所定温度に制御する方法であって、前記液体窒素とガス窒素とを混合した冷媒ガス窒素の温度を測定して前記液体窒素の供給量を調節するとともに、前記被冷却体の温度を測定して前記ガス窒素の供給量及び被冷却体に設けた加熱手段の加熱量のいずれか一方又は双方を調節することを特徴とする被冷却体の温度制御方法。
  2. 液体窒素供給弁を有する液体窒素供給系統と、ガス窒素供給弁を有するガス窒素供給系統と、両系統からそれぞれ供給される液体窒素とガス窒素とを混合する混合器と、該混合器で液体窒素とガス窒素とが混合して生成した冷媒ガス窒素の温度を測定する冷媒温度測定手段と、該生成した冷媒ガス窒素を被冷却体に供給する冷媒ガス窒素供給系統と、前記被冷却体に設けられた加熱手段と、該被冷却体の温度を測定する被冷却体温度測定手段と、前記冷媒温度測定手段で測定した冷媒ガス窒素の温度に基づいて前記液体窒素供給弁の開度を調節する液体窒素供給量調節手段とを備えるとともに、前記被冷却体温度測定手段で測定した被冷却体の温度に基づいて、前記ガス窒素供給弁の開度を調節するガス窒素供給量調節手段及び前記加熱手段の加熱量を調節する加熱量調節手段のいずれか一方又は双方の調節手段を備えたことを特徴とする被冷却体の温度制御装置。
  3. 真空容器内に配置された被冷却体を所定温度に制御する温度制御装置において、前記真空容器内に、液体窒素供給系統から供給される液体窒素とガス窒素供給系統から供給されるガス窒素とを混合する混合器と、該混合器で混合して生成した冷媒ガス窒素を前記被冷却体に供給する冷媒ガス窒素供給系統とを収納したことを特徴とする温度制御装置。
  4. 真空容器内に配置された被冷却体を所定温度に制御する温度制御装置において、前記真空容器内に、液体窒素供給系統から供給される液体窒素とガス窒素供給系統から供給されるガス窒素とを混合する混合器と、該混合器で液体窒素とガス窒素とが混合して生成した冷媒ガス窒素を前記被冷却体に供給する冷媒ガス窒素供給系統とを収納するとともに、前記混合器で液体窒素とガス窒素とが混合して生成した冷媒ガス窒素の温度を測定する冷媒温度測定手段と、前記被冷却体を加熱する加熱手段と、前記被冷却体の温度を測定する温度測定手段と、前記冷媒温度測定手段で測定した冷媒ガス窒素の温度に基づいて前記液体窒素供給系統に設けた液体窒素供給弁の開度を調節する液体窒素供給量調節手段と、前記温度測定手段で測定した被冷却体の温度に基づいて、前記ガス窒素供給系統に設けたガス窒素供給弁の開度を調節するガス窒素供給量調節手段及び前記加熱手段の加熱量を調節する加熱量調節手段のいずれか一方又は双方の調節手段とを備えたことを特徴とする温度制御装置。
  5. 前記真空容器が宇宙環境試験装置のチェンバーであり、前記被冷却体が該チェンバー内に設置された被試験体であることを特徴とする請求項3又は4記載の温度制御装置。
  6. 前記真空容器が宇宙環境試験装置のチェンバーであり、前記被冷却体が該チェンバー内に設けられたシュラウドであることを特徴とする請求項3又は4記載の温度制御装置。
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