JP3595736B2 - 非接触形状測定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被測定物の形状、特に深い縦穴の3次元形状や大きな不連続段差の3次元形状を被接触により測定する非接触形状測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、被測定物に格子状のパターンを投影し、被測定物各部の高さ分布に応じて変形した格子像から3次元形状を測定するモアレ法やヘテロダイン法が知られている。モアレ法では変形格子像に基準格子を重ねることにより被測定物の高さ分布の等高線を与えるモアレ縞を発生させて高さ分布を求めている。ヘテロダイン法では基準格子を無変調の空間的キャリア周波数信号と考え、変形格子像を空間的位相変調されたキャリア信号とみなして変形量を位相として検出することにより被測定物の高さ分布を求めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした従来のモアレ法や光切断法やフーリエ変換立体計測法などのパターン投影による被接触3次元形状測定法は、見かけ上の原理は異なっていても、その原理の本質は三角測量法である。従って、図10に示すように、異なる二方向からの投影・観測を必要とし、三角測量の基線長に相当する投影光学系と観測光学系との瞳の間の水平距離を零にすることができない。即ち、零とすると感度が零となってしまう。
【0004】
その為、例えば、深い縦孔の形状計測をしようとすると投影光学系または観測光学系の視野の一部が被測定物自身により遮られ、深い底の形状を測定できないという問題が生じた。また、このような大きな不連続段差をもつ物体に対しては、モアレ法では縞次数を一意に決定することができず、ヘテロダイン法では位相値に2πの整数倍の不確定が生じるという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、深い縦穴であっても、視野が遮られることなく、また、大きな不連続段差を持つ物体にあっても計測値に不確定値を含まずに被接触で形状を測定できる非接触形状測定方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
被測定物に格子パターンを投影し、この格子像から前記被測定物を測定する非接触形状測定方法において、
前記被測定物の測定対象領域に視野の遮りがない方向から前記格子パターンを投影レンズを介して投影する投影光学系と、この格子パターン像をハーフミラーを介して結像レンズにより画像センサの受光面に結像させる結像光学系とが共通の光軸を持つ共焦点光学系を形成し、前記被測定物を光軸方向に所定間隔で移動しながら移動間隔毎に格子パターン像を撮像し、該移動間隔毎の前記格子パターン像のコントラストに基づいて、該コントラストが最大となる前記被測定物の前記光軸方向の移動量を求め、更に、該移動量の前後の前記移動間隔での前記コントラストから関数で近似した最大の前記コントラストとなる位置を求め、前記被測定物の不連続段差の測定値を得ることを特長とする非接触形状測定方法がそれである。
【0007】
また、前記コントラストは前記格子パターン像の振幅最大値に基づいて判断するとよい。更に、前記投影光学系と前記結像光学系との共通の前記光軸が前記被測定物を置く基準面に垂直であるようにするとよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、基準平面1上に被測定物2を載せ、基準平面1に垂直な光軸を有するプロジェクタ4から縞パターンをハーフミラー6を通して被測定物2に投影する。被測定物2上に形成される縞パターンをハーフミラー6を介してCCDカメラ8により撮像する構成とする。このような同軸光学系を用いると、被測定物2に深い縦孔があっても、視野を遮られることなく、縦孔の深さを測定できる。
【0009】
しかし、単なるこのような構成だけでは計測感度を得られない。次に、計測感度をもたせることができる方法について説明する。図2に示すように、10は光源で、光源10は共役像面18に垂直な光軸上に配置する。この光軸上に光源10側から順に格子パターン12、投影レンズ14、ハーフミラー16を配置し、光源10から発せられた光による格子パターン12の像が、共役像面18上に結像するように配置する。格子パターン12は、例えば、縦方向の条線の周期的繰り返しによる一次元格子パターンで十分であるが、直交する条線を有する2次元格子パターンでもよい。
【0010】
また、共役像面18上の像が、ハーフミラー16により反射され、結像レンズ20を通って画像センサとしてのCCDの受光面22上に形成される。この像の焦点がCCD受光面22上で合うように配置されている。投影系と結像系とが同一の光学系からなり、投影レンズ14による投影格子パターンの共役像と、結像レンズ20によるCCD受光面22の共役像がZ=Z0 の平面上で合致する共焦点光学系を構成する。
【0011】
被測定物上の計測点が共役像面Z=Z0 上にあるときは、投影系と結像系が共に合焦点状態になり、CCDで検出される格子パターンは最大縞コントラストを示す。しかし、例えば、計測点を図左方向に△zだけずらすと、図に一点鎖線で示すように、投影系と結像系が共に焦点外れの状態になり、縞コントラストは急激に低下する。また、計測点を図右方向に△zだけずらすと、図に破線で示すように、同様に投影系と結像系が共に焦点外れの状態になり、縞コントラストは急激に低下する。従って、この共役像面をずらすことによって縞コントラストは急激に低下する。
【0012】
幾何光学的モデルによる点像は、図3に示すようになる。この幾何光学的モデルの投影系又は結像系の実効FナンバーをFとすると、実効FナンバーFは下記式で表される。ここで、△rは錯乱円半径、△zは焦点ずれ量、fは焦点距離、Dは焦点距離の錯乱円直径である。
【0013】
F=f/D=△z/2△r
点像(インパルス応答)の広がりは半径△r=△z/2Fの錯乱円となり、焦点ずれ量△zに応じて変化し、下記(1)式で表される。
【0014】
【数1】
Figure 0003595736
このときの光学的空間周波数伝達関数(以下、OTFという。)は、円開口のフーリエ変換として、下記(2)式で表される。
【0015】
【数2】
Figure 0003595736
図4は被測定物上に空間周波数が下記(3)式の格子パターンを実効FナンバーF=1.4、F=3、F=4の光学系で投影又は結像したときのOTF値を焦点ずれ量△zを−3mmから3mmまで変化させて計算したものである。図のように、明るい光学系を用いることにより、焦点ずれに対してOTFが敏感に変化することが分かる。
【0016】
【数3】
Figure 0003595736
共焦点光学系を構成することにより投影系と観察系がカスケードに接続される系となりOTFが2度掛け合わされて、下記(4)式となる。
【0017】
【数4】
Figure 0003595736
この式をグラフにすると、図5のようになり、図4のグラフに比べて、関数の傾きが急になる。OTFを2度かけあわせることにより、焦点外れ△zに対するOTFの変化による縞コントラストの低下を更に敏感にすることができ、分解能を高めることができる。
【0018】
本実施形態では、図6に示すように、投影レンズ30(焦点距離f=100mm)の絞りの像をリレーレンズ32(焦点距離f=250mm)により、無限遠方に結像してテレセントリック投影光学系を形成することにより、投影時に影が生じないようにした。
【0019】
空間周波数8lines/mmの格子パターン34を投影レンズ30とリレーレンズ32を介して被測定物36を置くステージ38上の基準平面40に結像するようにした。ステージ38は、移動機構39により光軸方向に直線的に移動できるように構成されている。
【0020】
格子パターン34の共役像は、基準平面40上に生じ、その格子像をハーフミラー42を介して観測レンズ44(焦点距離f=50mm)によりCCDイメージセンサ46上に結像して、基準平面40が共焦点平面となるようにした。焦点深度を浅くするために、スライドプロジェクタ48とCCDカメラ50の絞りを共に目一杯開けた。CCDカメラ50の実効Fナンバーは3.2とした。
【0021】
ステージ38の移動をサーボモータコントローラ52を介してパーソナルコンピュータ56によって制御し、CCDイメージセンサ46からの画像をフレームグラバー54を介してパーソナルコンピュータ56に取り込み、被測定物36の形状の複雑さに応じて移動する間隔を決めて、一方向にずらしながら画像を順次取り込むようにした。このようにして得られた格子パターン像のデータをワークステーション58に転送し、ワークステーション58上で信号処理を行うようにした。
【0022】
次に、被測定物36として中央に貫通した孔36aの開いた円柱状の積木を用いた場合を例に説明する。尚、被測定物36の高さは、ノギスでの測定では、20.5mmである。基準平面40が共焦平面となるように光学系を設定し、その上に被測定物36を置く。
【0023】
およその基準平面40の位置を決めて、まずはじめにステージ38を基準平面40より6mm手前に移動すると、どこにもピントは合わない。前方に6mmステージ38を移動して基準平面40と共焦平面とが一致すると、被測定物36の底面である基準平面40にピントが合う。更に、前方10mmにステージ38を移動すると、どこにもピントが合っていない状態となり、前方に20mmステージ38を移動すると被測定物36の上面にピントが合う。これらの各位置で得られる位相変調された格子像パターンg(x,y)は下記(5)式で表される。
【0024】
【数5】
Figure 0003595736
この格子パターン像をフーリエ変換すると、図7(イ)〜(ニ)に示すように、スペクトルが分離される。ピントが合っている位置ではスペクトルは鋭く立つ。得られたそれぞれの空間周波数スペクトルを同じフィルタリング幅でフィルタリングを行い、逆フーリエ変換により縞の振幅b(x,y)を求めた。
【0025】
図7(イ)と図7(ハ)とは、どこにもピントが合っていない状態であるので特にスペクトルのピークの高い部分はない。図7(ロ)を見ると、基準平面40である被測定物36の底面にピントが合っていて、その部分からの寄与によりスペクトルのピークが高くなっていることがわかる。
【0026】
また、同様に図7(ニ)を見るとピントの合っている被測定物36の上面のスペクトルのピークが高くなっているのがわかる。これらの2次元空間周波数平面上に生じるスペクトルの一つをフィルタで取り出し、逆フーリエ変換すれば、各画素における縞の振幅値b(x,y)が求まる。従って、取り込んだ画像のある画素における振幅値をステージ38の移動量の順に調べ、振幅値が最大となる位置を見つければそのときのステージ38の移動量からその画素における被測定物36の高さを決定することができる。
【0027】
図8は、得られた各々の画像上の任意に選んだ3画素(x,y)=(256,128),(256,256),(256,384)をとり、その振幅値の変化の様子を、横軸をステージ38の位置、縦軸を振幅値としてグラフにしたものである。グラフを見ると、振幅値の最大となっているステージ38の位置がその物体の高さと対応していることがわかる。
【0028】
しかし、必ずしも振幅が最大となる点がステージ38による1mm毎の移動点上に存在するとは限らない。ステージ38の移動間隔以上の精度で計測するために、図9に示すように、最少二乗法を用いて振幅が最大となる前後2点ずつの合計5つの振幅データを利用して、二次関数で近似し振幅最大値の生じる位置を求める。この最大振幅値の位置を各画素に対して求めることにより被測定物36の縦穴36aの深さの3次元分布が得られる。
【0029】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【0030】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の非接触形状測定方法によると、同軸の光学系の採用により被測定物により視野が遮られることなく、深い縦穴や大きな不連続段差を有する3次元形状を測定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の同軸光学系となる配置とした概略構成図である。
【図2】本実施形態の共焦点光学系を構成する配置の説明図である。
【図3】本実施形態の幾何光学的モデルによる点像の説明図である。
【図4】本実施形態の投影系又は結像系の単独のOTF値とずれ量との関係を示すグラフである。
【図5】本実施形態の投影系と結像系を直列接続した共焦点光学系のOTF値とずれ量との関係を示すグラフである。
【図6】本実施形態の非接触形状測定装置の配置を示す説明図である。
【図7】本実施形態の被測定物の空間周波数スペクトルの強度分布を示す斜視図である。
【図8】本実施形態の移動ステージの位置と振幅との関係を示すグラフである。
【図9】本実施形態の最小二乗法による振幅の最大値の検出法の説明図である。
【図10】従来の非接触形状測定装置の配置を示す説明図である。
【符号の説明】
1…基準平面 2,36…被測定物
4…プロジェクタ 6,16,42…ハーフミラー
8,50…CCDカメラ 10…光源
12,34…格子パターン
14…投影レンズ 18…共役像面
20…結像レンズ 22…CCD受光面
30…投影レンズ 32…リレーレンズ
38…ステージ 39…移動機構
40…基準平面 44…観測レンズ
46…CCDイメージセンサ
48…スライドプロジェクタ
52…サーボモータコントローラ
54…フレームグラバー 56…パーソナルコンピュータ
58…ワークステーション

Claims (3)

  1. 被測定物に格子パターンを投影し、この格子像から前記被測定物を測定する非接触形状測定方法において、
    前記被測定物の測定対象領域に視野の遮りがない方向から前記格子パターンを投影レンズを介して投影する投影光学系と、この格子パターン像をハーフミラーを介して結像レンズにより画像センサの受光面に結像させる結像光学系とが共通の光軸を持つ共焦点光学系を形成し、前記被測定物を光軸方向に所定間隔で移動しながら移動間隔毎に格子パターン像を撮像し、該移動間隔毎の前記格子パターン像のコントラストに基づいて、該コントラストが最大となる前記被測定物の前記光軸方向の移動量を求め、更に、該移動量の前後の前記移動間隔での前記コントラストから関数で近似した最大の前記コントラストとなる位置を求め、前記被測定物の不連続段差の測定値を得ることを特長とする非接触形状測定方法。
  2. 前記コントラストは前記格子パターン像の振幅最大値に基づいて判断することを特長とする請求項1記載の非接触形状測定方法。
  3. 前記投影光学系と前記結像光学系との共通の前記光軸が前記被測定物を置く基準面に垂直であることを特長とする請求項1又は請求項2記載の非接触形状測定方法。
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