JP3595578B2 - パンチ組立体および同パンチ組立体の製作方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はパンチプレスのパンチ組立体(雄型)および同パンチ組立体(雄型)の製作方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のパンチプレスのパンチ組立体(雄型)には、よく知られている様に次の2種類の方式がある。一つは、謂ゆる「たたき式」と呼ばれるもので、『加圧工程は、金型ホルダ(例えばタレットパンチプレスの上部タレット)に支承されたパンチ組立体のパンチヘッドをパンチプレスの打撃子またはラムで打撃して加圧し、ストリッピング(パンチを被加工材から引抜く動作)工程は、パンチ組立体自体に設けられたストリッピング・スプリングで行う方式。』である。もう一つは、謂ゆる「ラム引上げ式」と呼ばれるもので、『加圧工程とストリッピング工程ともパンチプレスの打撃子またはラムで行う方式。』である。
【0003】
「たたき式」のパンチ組立体においては、パンチボディ(パンチ)がパンチガイドの内部を軸方向に移動自在に案内される構造となっている。このパンチ組立体のパンチボディとパンチガイドとが軸方向に移動するためには、各部品間の摺動面に適宜なクリアランスが必要であり、この摺動面は、金型ホルダの穴とパンチガイドの外径との間、およびパンチガイドの内径とパンチボディの外径との間の2箇所に存在する。
【0004】
さらに、パンチボディ切刃部(刃先部)の打ち抜き形状に方向性のある場合には、パンチボディ切刃部とダイ(雌型)の切刃部の方向性を合せるため、金型ホルダ(例えばタレットパンチプレスの上部タレット)に設けられたパンチキ−と、パンチガイドに設けられたキー溝とを係合させると共に、パンチボディに植設されたガイドキ−と前記パンチガイドに設けられた前記キー溝とを係合させ、パンチボディとパンチガイドとが相互に回転しない様にしてある。なおダイにも前記パンチボディ切刃部の形状に合せてキー溝が設けられており、ダイホルダに設けたキ−により前記パンチボディ切刃部と係合する様にセットされている。
【0005】
上述のように、「たたき式」のパンチ組立体の場合、パンチボディとパンチガイドとの間のクリアランスと、パンチガイドと金型ホルダの穴との間のクリアランスとが存在し、さらにパンチボディ切刃部の打ち抜き形状の方向性を規制するための2箇所のキ−係合部におけるクリアランスが存在する。すなわち、合計4箇所にクリアランスが存在している。従って、例えば単純に1箇所のクリアランスが±0.03mmと仮定しても、全体では±0.12mmとなる。この様なパンチ組立体では、パンチとダイとの組合わせにおいて、クリアランスを0.10mm以下にして使用すると、パンチとダイとの「芯ずれ」により、「かじり」を生ずる可能性が大きい。
【0006】
さて次に、「ラム引上げ式」の構成について図4を用いて説明する。図4には「ラム引上げ式」のパンチ組立体1が上部タレットディスク3に装着されたところが示されている。上部金型ガイド穴5にパンチホルダ7が軸方向に摺動自在に装着されている。該パンチホルダ7の上部には、図示省略したパンチプレスのラム下面のT溝部に係合自在のT字状のヘッド係合部9が設けられており、下端部にはパンチスリ−ブ11を取付けるパンチスリ−ブ取付け穴13が設けられている。
【0007】
前記パンチスリ−ブ11には、皿ねじ状の頭部を有するパンチ15を装着するためのパンチ装着穴17が貫通して設けられており、このパンチ装着穴17の上部のパンチ挿入口には、前記パンチ15の皿ねじ状の頭部の形状に一致する面取りがなされている。
【0008】
前記パンチ15を装着したパンチスリ−ブ11が前記パンチスリ−ブ取付け穴13に装着され、止めねじ19によって固定されている。なお前記パンチ15の頭部とパンチスリ−ブ取付け穴13との間には硬度の高い材質の背面支持部材21が介在させて設けられている。
【0009】
前記パンチスリ−ブ11は、前記パンチホルダ7の下端部からその一部分が突出して装着されており、この突出した部分に、ウレタンゴム製の板押え部材23が取付けられている。その取付け方法は前記板押え部材23の挿入穴25を前記突出部分に嵌め込むことでなされている。また、この板押え部材23の下面には前記パンチ15の刃先部分を通過自在に支持する穴が設けられている。なお前記上部タレットディスク3の下面位置には固定ストリッパプレ−ト27が図示しない支持機構により設けられている。
【0010】
「ラム引上げ式」のパンチ組立体1の構成は上述のようになっており、上下摺動部のクリアランスの存在箇所は、上部金型ガイド穴5とパンチホルダ7の間、パンチスリ−ブ取付け穴13とパンチスリ−ブ11との間、およびパンチ装着穴17とパンチ15との間の合計3箇所に存在している。またパンチ15の刃先形状に方向性がある場合には、図示されてはいないが、パンチの方向性を規制するために少なくとも前記上部金型ガイド穴5と前記パンチホルダ7との間と、該パンチホルダ7と前記パンチスリ−ブ11との間との2箇所にキー溝係合が必要となる。(例えばパンチスリ−ブ11とパンチ15とを一体的に構成しても。)
従って、全体では5箇所にクリアランスを必要とする係合部があり、「たたき式」のパンチ組立体の場合と同様に計算すれば、全体では±0.15mmのクリアランスとなり、やはりパンチとダイとのクリアランスを0.10mm以下にして使用するとパンチとダイとの「芯ずれ」により、「かじり」を生ずる可能性が大きい。
【0011】
さらに、この従来の「ラム引上げ式」のパンチ組立体の場合、前記パンチ15の刃先部分がパンチング加工時の加圧力により圧縮変形しやすいウレタンゴム製の板押え部材23で支持されているので、パンチ先端部を軸心に高精度に維持する効果はあまり期待できない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、従来の「たたき式」または「ラム引上げ式」のパンチ組立体においては、パンチとダイとの組合わせにおいて、クリアランスを0.10mm以下にして使用すると、パンチとダイとの「芯ずれ」により、「かじり」を生ずる可能性が大きく、0.10mm以下のクリアランスまたはクリアランスがほぼ0mmを必要とする薄板(0.5mm〜1.0mm程度の板厚)での高精度、高品質の打ち抜きでの使用には問題が在った。
【0013】
本発明は、従来のパンチ組立体における上述の如き問題点に鑑みてなされたものであり、パンチとダイとのクリアランスが0.10mm以下またはクリアランスがほぼ0mmを必要とする薄板または極小径のパンチング加工に使用できるパンチ組立体を提供すると共に、同パンチ組立体の新規な製作方法を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のパンチ組立体は、パンチボディの一側にパンチヘッド部を設け、他側に該パンチボディより小径のパンチ部を一体的に形成してなるパンチボディと、前記パンチボディと同径同心の摺動部を備えると共に、前記パンチ部に摺動自在に係合するガイド穴を有する板押さえ部材と、該板押さえ部材と前記パンチボディとの間の前記パンチ部にストリッピング・スプリングを装着して成る構成とした。
【0015】
また本発明の同パンチ組立体の製作方法は、パンチボディの一側にパンチヘッド部を設け、他側に該パンチボディより小径のパンチ部を一体的に形成してなるパンチボディと、前記パンチ部に摺動自在に係合するイド穴を有する板押さえ部材と、該板押さえ部材と前記パンチボディとの間のパンチ部に治具部材を装着して仮のパンチ組立体を構成し、前記パンチボディと前記板押さえ部材との外径を同時研削し、パンチボディと板押さえ部材との摺動部を同時に形成の後、前記治具部材とストリッピング・スプリングとを交換してパンチ組立体を製作完成するようにした。
【0016】
【作用】
本発明は上述の通りの構成としたので、上下摺動部のためのクリアランスの存在部分は、前記パンチボディおよび前記板押さえ部材とが前記上部金型ガイド穴との間を上下摺動する部分の1箇所である。またパンチの方向性を規制する必要がある場合には、上記パンチボディの上下摺動部に前記パンチキ−に係合する前記キ−溝を1箇所設ければよい。従って、パンチ組立体の上下摺動部および回転方向のクリアランスは、両者を合わせも約±0.05mm程度にすることが可能となった。また、パンチの方向性を規制する必要がない円形の場合は、±0.03mm程度にすることも可能となった。
【0017】
また本発明のパンチ組立体の製作方法は、前記の通りの工程としたので該パンチ組立体の上下摺動部分の全域における外径寸法を完全均等にすることが可能となった。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお図1には、通常のタレットパンチプレス本体(図示省略)の上部タレットディスク103に、本発明の一実施例であるパンチ組立体100を装着したところが示されている。前記上部タレットディスク103には、パンチ組立体100を上部タレットディスク103上の一定の高さに弾性的に維持するための金型(パンチ)支持機構105がパンチ組立体100の周囲に複数個設けられている。(図1ではその中の1個のみを示してある。)
パンチボディ107Fの一側にはパンチヘッド部109が設けられている。このパンチヘッド部109は前記パンチボディ107Fと一体的に形成してもよいし、別の部品を該パンチボディ107Fに適宜な手段により取付けてもよい。また前記パンチボディ107Fの他側にはパンチ部111が該パンチボディ107Fの中心軸113と同軸に一体的に形成されている。(必ずしも中心軸113と同軸である必要はないが、加工精度上は同軸とするのが普通である。)
このパンチ部111の先端部は刃先部115となっており、実施例では、この刃先部115が前記パンチ部111より小径に形成されている例が示されている。しかし、必要とされるパンチサイズに合わせて、この刃先部115のサイズは決められるのであって、場合によりパンチ部111と同径になることもある。
【0019】
前記パンチ部111および刃先部115は、板押さえ部材117Fに設けられたガイド穴(119A,119B)に摺動自在に係合している。また、この板押さえ部材117Fと前記パンチボディ107Fの間の前記パンチ部111には、中空円筒状のウレタンゴム製のストリッピング・スプリング121が装着されている。もしこのストリッピング・スプリング121の取付けスペ−スが広ければ、ストリッピング・スプリング121に圧縮コイルスプリングを使用することも可能である。
【0020】
前記ストリッピング・スプリング121には複数の軸方向の取付け穴123が適宜な間隔で貫通して設けられており、また前記板押さえ部材117Fの板押さえ面125には前記取付け穴123に対応した位置に複数の座ぐり穴127が設けられている。また同様にパンチボディ107Fのパンチ部側の端面にも取付け穴123に対応した位置に同数のねじ穴129が設けられている。
【0021】
前記ストリッピング・スプリング121は前記板押さえ部材117Fの前記座ぐり穴127と前記取付け穴123を介して前記パンチボディ107Fのねじ穴129に螺合するボルト131により前記パンチボディ107Fのパンチ部側の端面と前記板押さえ部材117Fとの間に決められた取付長で固定されている。
【0022】
さらに前記パンチボディ107Fの上下摺動部には上部タレットディスク103に設けられたパンチキ−133と上下方向に摺動自在に係合するキ−溝135が設けられている。また前記ストリッピング・スプリング121と前記板押さえ部材117Fには、前記パンチキ−133が通過自在の逃げ溝137が設けられている。
【0023】
上記構成のパンチ組立体100は、前記上部タレットディスク103の上部金型ガイド穴139に装着され、前記パンチヘッド部109の鍔部が前記金型(パンチ)支持機構105に係合して、前記上部タレットディスク103上の一定の位置に支持される。
【0024】
この状態において、図示省略したタレットパンチプレスの打撃子またはラムでこのパンチ組立体100の前記パンチヘッド部109を押圧すれば、該パンチ組立体100は前記金型(パンチ)支持機構105を押下げながら下降し、これまた図示省略したダイ(下型)上に載置された被加工材(主として板金材料)に前記板押さえ部材117Fが接触するところまで下降する。
【0025】
この時点から前記ストリッピング・スプリング121が加圧圧縮されながら、前記パンチボディ107Fがさらに下降を続け、前記パンチ部111の刃先部115が前記を被加工材を貫通して前記ダイまで侵入して、前記被加工材に打抜き穴が形成される。
【0026】
前記パンチボディ107Fが最も下降した位置になった後は、前記ストリッピング・スプリング121の弾発力により、前記パンチ部111の刃先部115が前記被加工材の中から抜取られて打抜き加工は完了する。
【0027】
さて本発明のパンチ組立体の製作方法の実施例について、図3を用いて説明する。なお図3において、既に説明した構成要素と同一構成要素には同一の参照番号を付してある。
【0028】
既に説明した本発明の一実施例であるパンチ組立体100の構成要素において、前記パンチボディ107Fの軸方向摺動部の直径に研削取代を残した直径Aの半完成のパンチボディ107Mと、前記板押さえ部材117Fの軸方向摺動部の直径に研削取代を残した直径Bの半完成の板押さえ部材117Mと、前記ストリッピング・スプリング121とほぼ同寸法の円筒形の治具部材139と、前記ボルト131とで、仮のパンチ組立体200を構成し、前記パンチボデ107Mと前記板押さえ部材117Mとの軸方向摺動部の外径の同時研削を行う。
【0029】
上記の同時加工により、前記パンチボディ107Mと前記板押さえ部材117Mの外径部の加工寸法は、目的の寸法に同一精度に仕上げることができる。なお前記パンチ部111は、前記パンチボディ107Mの外径を基準にして研削加工されており前記中心軸113とは同心になっている。またこの同時加工は必要とする加工精度が得られるならば研削加工に限定されるものではない。
【0030】
上記の加工が完了した後、前記治具部材139と前記ストリッピング・スプリング121とを交換して組立し直せばパンチ組立体100となる。
【0031】
【発明の効果】
本発明のパンチ組立体100は前記の通りの構成としたので、パンチとダイとのクリアランスを0.10mm以下にして使用しても、パンチとダイとの「芯ずれ」により「かじり」を生ずる可能性がなくなり、0.10mm以下のクリアランスまたはクリアランスがほぼ0mmを必要とする薄板(0.5mm〜1.0mm程度の板厚)での高精度、高品質の打抜き加工が可能となった。
【0032】
また前記の通りの新規なパンチ組立体の製作方法を用いたので、前記パンチ組立体100を容易に製作することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるパンチ組立体の実施例をタレットパンチプレスに装着した状態で示した断面図。
【図2】図1におけるA矢視図。
【図3】本発明に係わるパンチ組立体を製作する場合の加工方法を説明する図面。
【図4】従来のラム引上げ式のパンチ組立体を上部タレットに装着した図。
【符号の説明】
100 パンチ組立体
107F,107M パンチボディ
109 パンチヘッド部
111 パンチ部
119A,119B ガイド穴
117F,117M 板押さえ部材
121 ストリッッピング・スプリング
139 治具部材
200 仮のパンチ組立体
Claims (4)
- パンチボディ107Fの一側にパンチヘッド部109を設け、他側に該パンチボディ107Fより小径のパンチ部111を一体的に形成してなるパンチボディ107Fと、前記パンチボディ107Fと同径同心の摺動部を備えると共に、前記パンチ部111に摺動自在に係合するガイド穴(119A,119B)を有する板押さえ部材117Fと、該板押さえ部材117Fと前記パンチボディ107Fとの間の前記パンチ部111にストリッピング・スプリング121を装着して成ることを特徴とするパンチ組立体。
- パンチキ−133と係合し、前記パンチボディ107Fの回転を規制するキ−溝135を該パンチボディ107Fに設けると共に、前記板押さえ部材117Fおよびストリッピング・スプリング121とに前記パンチキ−が通過自在の逃げ溝137を設けたことを特徴とする請求項1に記載のパンチ組立体。
- 前記ストリッピング・スプリング121にウレタンゴムを用いたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパンチ組立体。
- パンチボディ107Mの一側にパンチヘッド部109を設け、他側に該パンチボディ107Mより小径のパンチ部111を一体的に形成してなるパンチボディ107Mと、前記パンチ部111に摺動自在に係合するイド穴(119A,119B)を有する板押さえ部材117Mと、該板押さえ部材117Mと前記パンチボディ107Mとの間のパンチ部111に治具部材139を装着して仮のパンチ組立体200を構成し、前記パンチボディ部107Mと前記板押さえ部材117Mとの外径を同時研削して前記パンチボディ107Mと前記板押さえ部材117Mとの摺動部を同時に形成の後、前記治具部材139とストリッピング・スプリング121とを交換してパンチ組立体100を製作することを特徴とするパンチ組立体の製作方法。
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