JP3595458B2 - 錫亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

錫亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラックスを用いて、錫亜鉛合金(以下、「Sn−Zn」とする)を鋼板の表面に溶融めっきして製造する錫亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、このような錫亜鉛めっき鋼板の製造方法において、Sn−Znめっきを鋼板の表面に溶融めっきするに際しては、特開平8−269662号公報に記載しているように、鋼板の表面を活性化させ、Sn−Znめっきとの密着性、即ち、濡れ性を向上するため、前処理として鋼板の表面にフラックスを塗布している。この錫亜鉛めっき鋼板の製造方法を、図2及び図3を参照して説明すると、以下のようになる。
即ち、冷延・焼鈍工程10、脱脂工程11、酸洗工程12を経た鋼板13の表面にNiめっき工程14においてNi又はNi−Feめっきを行なう。次に、塗布ロール15を具備するフラックス塗布装置18でフラックス液19を塗布した後に、めっきポット16のSn−Znメタル17の中に浸漬させてめっきする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した錫亜鉛めっき鋼板の製造方法は、未だ、以下の解決すべき課題を有していた。
即ち、図2及び図3に示すように、例えば、Sn−Znメタル17の操業浴温度を250℃〜290℃にしてめっきを行なう際、めっきポット16の上流側に配置したフラックス塗布装置18のフラックス液19として100%ZnCl 溶液を用いた場合、鋼板13に塗布された余剰のフラックス20が浴面に浮遊し、浴面に浮遊したフラックス20はめっきポット16に侵入する鋼板13によって浴中に巻き込まれる。そして、巻き込まれたフラックス20は、フラックス20の融点が280℃前後と、操業浴温度(250℃〜290℃)と同レベルであるため、鋼板13からフラックス20が離脱しづらく、ポットロール21やガイドロール22、23に付着したり、鋼板13に残存して、めっき鋼板24のめっき外観を悪くしていた。
【0004】
そこで、本発明者は、浴温度とフラックスとの関係について実験を行なったところ、フラックス塗布装置18によって塗布するフラックス20の融点を、操業浴温度より20℃以上下げると、浴中に鋼板13によって巻き込まれたフラックス20が浴中で容易に溶解し、フラックス20の粘度が下がり、鋼板13によって巻き込まれにくくなり、かつ、鋼板13から離脱しやすく、外観の良好なめっき鋼板を得られることを知見した。
【0005】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、めっき外観のきわめて良好なSn−Znめっき鋼板を製造することができる錫亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明に係る錫亜鉛めっき鋼板の製造方法は、鋼板の表面にフラックスを塗布した後に、前記鋼板の表面を錫亜鉛めっき浴中に浸漬して錫亜鉛めっき鋼板を製造する錫亜鉛めっき鋼板の製造方法において、フラックスとして、少なくとも20質量%のZnCl 2 と、少なくとも10質量%のNH 4 Clを有し、融点が錫亜鉛めっき浴の浴温度より20℃以上低いフラックスを用いるようにしている。
【0007】
ここで、融点がSn−Znめっき浴の浴温度より20℃以上低いフラックスを用いることにしたのは、後述する実施例における実験より、20℃以上低くすることによって、フラックスの粘度が著しく下がり、鋼板によって浴中に巻き込まれるフラックスの鋼板からの離脱が容易になり、フラックス付着のない外観良好なSn−Zn鋼板の製造が可能になることが判明したからである。
【0008】
また、上記した錫亜鉛めっき鋼板の製造方法において、フラックスの組成は、更に60質量%までのSnCl 2 を有することができる。このような組成のフラックスは鋼板の表面の活性化に効果的であり、かつ、比較的安価に入手できるからである。
【0009】
【実施例】
表1及び表2に示すように、Sn−Znの合金メタル中のZn濃度を5%〜80%の範囲で変えると共に、それぞれのZn濃度における操業浴温度条件を変えて、組成及び融点の異なるフラックスを用いてめっきを施す実験を行うと共に、その時のめっき外観をそれぞれ評価し、その評価結果を同様に表1及び表2に示す。
この実験において、フラックスを塗布する前の鋼板は、焼鈍済みで、また、表面に片面1g/m のNiがプレめっきされ、また、板温は約80℃に設定した。このプレめっき鋼板の表面に上記した融点を異にする各種フラックスを塗布し、ラインスピード60m/minで錫亜鉛めっき浴に浸漬した後、めっきポットから引き上げ、ワイピングノズルで目付量を片面40g/m に制御した後のめっき外観を評価した。なお、この実験においては、フラックスとして、ZnSO 、Na SO は用いなかった。
【0010】
【表1】
Figure 0003595458
【0011】
【表2】
Figure 0003595458
【0012】
表1及び表2から明らかなように、操業浴温度とフラックスの融点の関係がめっき外観に影響を及ぼしていることが判明した。即ち、試料No.3、5、6、8、11、12、14〜19に示すように、フラックスの融点をSn−Znめっき浴の浴温度より低くし、かつ、フラックスの融点とSn−Znめっき浴の浴温度との温度差ΔTを20℃以上とした場合は、フラックス付着のない外観良好な(○印で示す)Sn−Zn鋼板を製造できることが判明した。一方、試料No.1、2、4、7、9、10、13に示すように、フラックスの融点がSn−Znめっき浴の浴温度より高い、又は、フラックスの融点がSn−Znめっき浴の浴温度より低いが、フラックスの融点とSn−Znめっき浴の浴温度との温度差ΔTを20℃未満とした場合は、フラックスが付着した外観不良な(△、×で示す。)Sn−Zn鋼板が製造される可能性があることが判明した。
【0013】
また、フラックスの融点と操業浴温度(Zn濃度が10%のSn−Znめっき浴の浴温度を250℃としている)における粘度を測定した実験を行なったので、その結果を図1に示す。なお、操業浴温度より低い融点のフラックスの粘度は、浴温度と同じ融点の粘度を1として相対比較した。
図1から明らかなように、フラックスの融点を操業浴温度より20℃以上低くした場合には、フラックス粘度が急激に下がることが判明した。即ち、フラックスの融点が操業浴温度よりも20℃以上下がると、フラックス粘度が急激に下がり、鋼板によって浴中に巻き込まれるフラックスの鋼板からの離脱が容易になり、フラックス付着のない外観良好なSn−Zn鋼板の製造が可能になることが判明した
【0014】
以上、本発明を、一実施例を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施例に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。
【0015】
【発明の効果】
請求項1及び2記載の錫亜鉛めっき鋼板の製造方法においては、フラックスとして、融点がSn−Znめっき浴の浴温度より20℃以上低いフラックスを用いることによって、鋼板によって浴中に巻き込まれるフラックスの鋼板からの離脱が容易になり、フラックス付着のない外観良好なSn−Zn鋼板を製造することができる。
【0016】
特に、請求項2記載の錫亜鉛めっき鋼板の製造方法においては、フラックスの組成をZnCl2 、SnCl2 、NH4 Clすることによって、鋼板の表面の活性化を効果的に行なうことができるフラックスを比較的安価に入手できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る錫亜鉛めっき鋼板の製造方法に関連して、フラックス融点とフラックスの浴温度における相対粘度との関係を示すグラフである。
【図2】従来の錫亜鉛めっき鋼板の製造方法の主要工程の説明図である。
【図3】従来の錫亜鉛めっき鋼板の製造方法における鋼板のめっきポット内の鋼板の挙動を示す説明図である。
【符号の説明】
10:冷延・焼鈍工程、11:脱脂工程、12:酸洗工程、13:鋼板、14:Niめっき工程、15:塗布ロール 16:めっきポット、17:Sn−Znメタル、18:フラックス塗布装置、19:フラックス液、20:フラックス、21:ポットロール、22:ガイドロール、23:ガイドロール、24:めっき鋼板

Claims (2)

  1. 鋼板の表面にフラックスを塗布した後に前記鋼板の表面を錫亜鉛めっき浴中に浸漬して錫亜鉛めっき鋼板を製造する錫亜鉛めっき鋼板の製造方法において、
    前記フラックスとして、少なくとも20質量%のZnCl 2 と、少なくとも10質量%のNH 4 Clを有し、融点が前記錫亜鉛めっき浴の浴温度より20℃以上低いフラックスを用いるようにしたことを特徴とする錫亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  2. 請求項1記載の錫亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記フラックスの組成は、更に60質量%までのSnCl 2 を有することを特徴とする錫亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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