JP3594308B2 - コンタクトレンズ洗浄のための酵素組成物および方法 - Google Patents

コンタクトレンズ洗浄のための酵素組成物および方法 Download PDF

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Description

発明の背景
本発明は、コンタクトレンズを洗浄するための酵素含有組成物および該酵素含有組成物の使用方法に関する。本発明はとりわけ、そのような酵素含有組成物、および酵素含有組成物を使用するコンタクトレンズ洗浄方法であって、コンタクトレンズを有効に酵素洗浄した後に酵素の不活性化を提供するものに関する。
コンタクトレンズ産業の成長に伴い、コンタクトレンズケア系の数が非常に増加している。レンズケア産業の一目的は、レンズケア系を単純化することにあったが、有効で質の高いケアを提供し、処理したコンタクトレンズの装用を安全で快適なものとすることも目的となっている。
コンタクトレンズの正常な装用の間に、汚れ、例えば涙液フィルム、およびタンパク質系、油性、皮脂などの有機物が、レンズ表面に沈積および蓄積する傾向がある。コンタクトレンズの日常的ケアの一部として、コンタクトレンズの洗浄によって、前記にような汚れを除去しなければならない。この汚れを除去しなければ、レンズ装用が快適でなくなり得、眼を害することもあり得る。
コンタクトレンズから汚れを除去するための一方法においては、汚れの付いたレンズを酵素の作用に付す。例えば、カラゲオジアン(Karageozian)の米国特許第3910296号には、コンタクトレンズの洗浄にプロテアーゼを使用することが開示されている。
オガタ(Ogata)の米国特許第4285738号には、尿素および/またはグアニジンの酸塩、還元剤、およびタンパク質分解酵素を含有する組成物を用い、更に加熱を行うか、または行わずに、コンタクトレンズを洗浄する方法が開示されている。開示されたタンパク質分解酵素は、パパイン、トリプシン、α−キモトリプシン、ストレプトミセス・グリセウス(S.griseus)由来のプロナーゼp、およびバシラス・サチリス(B.subtilis)由来のプロテイナーゼを包含する。
アンダーソン(Anderson)の米国特許第4521254号には、エンドペプチダーゼ、例えばブロメラインおよびカルボキシペプチダーゼ酵素を用いる、コンタクトレンズを洗浄するための方法および組成物が開示されている。
シェーファー(Schaefer)の米国特許第4609493号には、タンパク質分解酵素、アニオン性界面活性剤、カルシウムキレート剤および尿素を含有するコンタクトレンズ洗浄組成物が開示されている。カルシウムキレート剤は、主なレンズ洗浄成分であり、酵素活性を顕著に低下しないと記載されている。好ましい酵素は、パンクレアチンおよびパパインである。
オグンビー(Ogunbiyi)の米国特許第4614549号には、コンタクトレンズを洗浄および加熱消毒し、使用した酵素を、60〜100℃の高温に加熱した水溶液中でタンパク質分解酵素を使用することによって不活性化する方法が開示されている。
オグンビーの米国特許第4614549号には、活性剤無しに微生物由来のタンパク質分解酵素を使用し、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩のようなキレート剤も使用して、溶液中の金属イオン(例えばカルシウム;結合しなければ、レンズのタンパク質と反応し、レンズ表面に蓄積し得る)を結合することが開示されている。
オグンビーの米国特許第4690773号には、バシラス、ストレプトミセスまたはアスペルギルス属の微生物から誘導したプロテアーゼを含有する水溶液から成る、活性剤不含有酵素溶液を用いて、コンタクトレンズを洗浄する方法が開示されている。開示された微生物プロテアーゼは、活性剤または安定剤を必要とせず、キレート剤存在化にも阻害されない。該特許には、キレート剤によって阻害される酵素は通例、コンタクトレンズ用に使用するには不充分であると記載されている。また、該特許には、プロテアーゼはpH5〜8.5で活性でなければならないとも記載されている。
ハス(Huth)らの米国再発行特許第32672号には、消毒量の過酸化物および過酸化物活性酵素を用いて、コンタクトレンズの洗浄および消毒を同時に行う方法が開示されている。中性、酸性またはアルカリ性酵素、および金属プロテアーゼを使用し得る。
モーリー−マッキー(Mowrey−McKee)の米国特許第5096607号には、重合した第四級アンモニウム塩またはビグアニド、タンパク質分解酵素、および水性系(浸透圧は、抗菌剤の活性を実質的に損なわないレベルに調節されている)を用いて、コンタクトレンズの洗浄および消毒を同時に行う方法が開示されている。該特許によると、更なる成分、例えばキレート剤および/または金属イオン封鎖剤を酵素に加えるか、または組み合わせてよく、それにより酵素活性を実質的に低下しない。
上記特許のいずれにも、熱を加えることなくイオン性調節剤によって洗浄酵素を不活性化する方法または組成物は、開示されていない。
現在用いられている酵素洗浄系に関する重要な関心事は、洗浄したレンズを眼に装用する前に、レンズから酵素を除去する必要があるということである。洗浄酵素で汚染されたレンズを眼に入れると、眼を害する可能性がある。この起こり得る問題を防止するために、現在は、洗浄したコンタクトレンズを眼に装用する前に、濯ぎによって洗浄酵素を除去している。しかし、使用者はこの濯ぎを不要と見なして、活性酵素を眼に入れることになりかねず、コンプライアンスに不都合であり得る。更に、場合によっては、コンタクトレンズに結合した活性酵素がコンタクトレンズから眼に脱着または溶離し得るので、コンタクトレンズから洗浄酵素を濯ぎ落としても、不快感、刺激および眼に対する有害効果を解消するには不充分であり得る。
現在用いられている酵素洗浄系に関するもう一つの関心事は、コンタクトレンズに残留している緩く付着した汚れを除去するために、レンズをしばしば、親指と人差指との間、または掌の上で擦るということである。レンズを擦っていると、しばしばレンズが破れ、レンズの損失となる。レンズに残留する汚れの量は、酵素組成物の洗浄力に相関し、すなわち、使用する酵素の濃度に相関する。一方、現在の酵素組成物は、眼に入っても、起こり得る眼表面損傷を回避しようとすれば、より低い酵素濃度で使用しなければならない。レンズを擦らなくても有効に洗浄することのできる系を提供することが望まれる。
発明の概要
新規コンタクトレンズ処理系を見出した。本発明の系は、レンズを擦ることおよび活性洗浄酵素を眼に入れることの危険性を軽減または解消しながらコンタクトレンズを洗浄するための、酵素(好ましくは速度および/または効果のより高い酵素)および酵素含有製剤の使用を伴う。更に、本発明の系では、洗浄したコンタクトレンズを眼に装用する前に擦ることおよび/または濯ぐことが必要でない。換言すると、一態様においては、酵素洗浄を行った酵素含有液体媒体から取り出したままの洗浄剤コンタクトレンズは、レンズを破損するか、または有害量の活性洗浄酵素を眼に入れるという危険性を伴わずに、安全かつ快適に装用するのに適当である。本発明は、種々のコンタクトレンズ洗浄酵素の活性レベルを調節する活性調節成分を利用する。すなわち、酵素に作用する活性調節成分を調節することによって、コンタクトレンズの有効な酵素洗浄を達成することができ、その後は、酵素を有効に不活性化して、例えば眼内の環境中で不活性、好ましくは実質的に無害とすることができる。本発明の系は、調製が比較的容易で、しばしば従来の市販成分を含有し、使用が非常に簡単なので、使用者のコンプライアンスが良好となる。更に、本発明の系は、例えばコンタクトレンズを酵素洗浄する間に消毒するのに有効な成分をも含有し得る。そのようなコンタクトレンズの洗浄および消毒のための「一工程」系は、有効であるばかりでなく、非常に便利で使用が容易なので、使用者のコンプライアンスも更に向上する。
本発明は広義の一態様において、酵素成分および活性調節成分を含有する、コンタクトレンズ洗浄に有用な組成物を提供する。酵素成分は、液体媒体に放出されると、該液体媒体中のコンタクトレンズから汚れを除去するのに有効な量で存在する。活性調節成分、好ましくはイオン性および/または無機活性調節成分、および/または金属キレート化活性調節成分は、液体媒体中に放出されると、該液体媒体中の酵素成分を不活性化するのに有効な量で存在する。一態様においては、そのような組成物は、酵素成分を液体媒体に放出してから、ある時間の経過後に活性調節成分を液体媒体に放出するように設計し得、そのようにすることが好ましい。ある時間、とは、酵素成分を液体媒体に放出する前、またはそれと同時に液体媒体に入れたコンタクトレンズから、酵素成分が汚れを有効に除去する(好ましくは、少なくとも1種の汚れを充分除去する)のに充分な時間である。あるいは、酵素成分と、活性調節成分とを、ほぼ同時に液体媒体に放出し得る。この態様においては、活性調節成分と酵素成分との間の相互作用/反応が、酵素成分がコンタクトレンズから汚れを除去する間に起こり得るが、その速度は充分小さく、酵素成分の不活性化の前またはそれと同時に、充分なレンズ洗浄、汚れ除去が行われる。
本明細書中に説明する組成物を用いると、活性調節成分が酵素成分を不活性化した後、洗浄済コンタクトレンズを液体媒体から取り出し、擦りおよび/または濯ぎを行うか、または行わずに、安全に眼に装用することができる。本発明によると、コンタクトレンズの洗浄に従来用いられたよりも高活性および/または多量の酵素成分を、充分かつ安全に使用することができ、それ故、コンタクトレンズを擦るという別工程が不要となる。従来の酵素成分使用量の少なくとも約200%、または少なくとも約400%またはそれ以上(酵素活性として)に相当する量の酵素成分を使用し得る。
本発明のコンタクトレンズ洗浄方法においては、本明細書中に説明する組成物を使用し得る。例えば、一態様においては、本発明の方法は、コンタクトレンズを液体媒体に入れ、前記組成物を液体媒体に入れる工程を含んで成る。組成物を液体媒体に入れるのと実質的に同時に、コンタクトレンズを液体媒体に入れることが好ましい。本発明の方法を行うと、コンタクトレンズは有効に洗浄され、液体媒体から取り出して、そのまま安全かつ快適に装用し得る。
非常に有用な一態様においては、液体媒体は、該液体媒体中のコンタクトレンズを消毒するのに有効な量の消毒成分を含有する。この態様においては、コンタクトレンズの洗浄および消毒の両方を行う。そのような「一工程」洗浄および消毒系は、コンタクトレンズ装用者にとって有効および簡便である。
発明の詳細な説明
本発明は、従来のハード、ソフト、硬質ガス透過性、およびシリコーンレンズのような、いずれのコンタクトレンズにも適用し得る。本発明は、ソフトレンズ、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドン、グリセリルメタクリレート、メタクリル酸または酸エステルのようなモノマーから製造するヒドロゲルレンズと通例称されるレンズに適用することが好ましい。ヒドロゲルレンズは通例、多量(例えば約38〜80重量%またはそれ以上)の水を吸収している。
本発明においては、コンタクトレンズから汚れを除去するのに有効な量の酵素成分を使用する。正常な使用中にコンタクトレンズに蓄積する汚れの種類には、タンパク質含有汚れ、ムチン含有汚れ、脂質含有汚れ、および炭水化物含有汚れがある。1種またはそれ以上の種類の汚れが、1個のコンタクトレンズ上に存在し得る。
酵素成分の使用量は、例えば、酵素の種類、酵素の活性、酵素の純度、レンズに沈積した汚れの量と種類、所望の浸漬時間、消毒剤を使用する場合は、その種類と濃度、レンズの種類、および他のよく知られた因子を包含する複数の因子に応じて変化し得る。
液体媒体は、1〜10ml中、レンズ1枚の処理につき、約0.0001〜0.5アンソン(Anson)単位、好ましくは0.0010〜0.05アンソン単位、より好ましくは0.0020〜0.020アンソン単位の活性を示すのに充分な酵素を含有することが好ましい。液体媒体の単位体積当たりの正確な酵素重量は、例えば、酵素の純度によって変化し、最終的にはロット毎に決定する必要があり得る。
活性調節成分は、酵素成分を含有する液体媒体に放出されると、該酵素成分を不活性化するのに有効な量で存在する。活性調節成分は当然、使用する特定の酵素成分を不活性化するように選択すべきである。ある活性調節成分は、1種またはそれ以上の特定の酵素には有効であるが、他の酵素には有効でない、ということがあり得る。従って、適当な酵素成分/活性調節成分組み合わせを選択することが重要である。更に、活性調節成分は、処理するレンズ、または処理後のコンタクトレンズの装用者の眼に対して、実質的に悪影響を及ぼさないように選択すべきである。
酵素成分/活性調節成分組み合わせの種々の例について、以下詳細に説明する。しかし、本発明の範囲は、コンタクトレンズの洗浄中および/または洗浄後に、コンタクトレンズの入った液体媒体中で、コンタクトレンズ洗浄酵素成分の不活性化を提供するということにある。それにより、洗浄済コンタクトレンズは、不活性化した酵素を含有する液体媒体から取り出し、そのままコンタクトレンズ装用者の眼に、安全かつ快適に装用することができる。レンズを擦って破損するか、活性酵素成分の存在によって眼表面を損傷するという恐れは、殆ど、または全く無い。本発明の範囲は、眼に存在する活性調節成分によって不活性化され得る酵素成分をも包含する。例えば、約6より小さいpHでしか活性でない酸活性プロテアーゼを、消毒剤と共に弱酸緩衝溶液中で使用して、コンタクトレンズの洗浄および消毒を同時に行うことができる。このような洗浄および消毒の後、酸活性プロテアーゼをレンズから濯ぎ落とすことなく、レンズをそのまま眼に装用し得る。この態様においては、眼に自然に存在するpH緩衝物質が、pHを短時間で約6よりも高めて酸性を弱めることによって、酸活性プロテアーゼを不活性化する。
一態様においては、活性調節成分が、酵素成分を不活性化するのに有効な量のイオン性および/または無機成分、および/または金属キレート化成分から成るように、酵素成分/活性調節成分組み合わせを選択する。
一態様において、酵素成分/イオン性および/または無機活性調節成分(IIARC)組み合わせを選択し、この場合の酵素成分は酸活性酵素から成り、IIARC(好ましくはヒドロキシルイオンを含む)は、酸活性酵素を含有する液体媒体の酸度を変化(例えば低下)して、酸活性酵素を実質的に不活性化するレベルとするのに有効である。この酸度の「不活性」レベルは、好ましくはpH約6.0〜8.5で、これは人間の生理的pH範囲にほぼ相当する。従って、酸活性酵素成分を不活性化した後、生理学的に許容し得るpHとなった液体媒体から洗浄済コンタクトレンズを取り出し、そのまま安全かつ快適に眼に装用することができる。また、液体が弱酸緩衝されている場合、酸活性酵素成分の残留している液体媒体を含んだ洗浄済コンタクトレンズも、そのまま眼に装用し得る。この場合は、眼に自然に存在するpH緩衝物質が、pHを約6.0を越えるレベルに短時間で再調節し、それにより酸活性酵素を実質的に不活性化する。
種々の酸活性酵素を使用し得る。そのような酵素成分は、好ましくはpH約2〜5、より好ましくはpH約3〜5で有効である。本発明において使用し得る酸活性酵素の例は、以下のものを包含する:ペプシン、ガストリクシン、キモシン(レンニン)、カテプシンD、遺伝子工学による酸pH活性を有する酵素(例えばズブチリシン)、リゾプス・キネンシス(rhizopus chinensis)酸性プロテアーゼ、シタリジウム・リグニコルム(Scytalidium lignicolum)(ATCC24568)およびレンチヌス・エドデス(Lentinus edodes)TMI−563から分離したプロテアーゼB、ガノデルナ・ルシドゥム(Ganoderna lucidum)IFO4912、プロイロツス・コルヌコピア(Pleurotus cornucopia)、プロイロツス・アストレアツス(Pleurotus astreatus)IFO7051、フラムリナ・ベルチペス(Flammulina velutipes)IFO7096およびリンチヌス・エドデス(Lintinus edodes)IFO4902から分離した酸性プロテアーゼ、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)(サーモプシン(thermopsin))、スルホロブス・ソラタリクス(Sulfolobus solataricus)およびテルモプラスマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)の細胞および培地から分離した酸性プロテアーゼ、ペニシリウム・ロケフォルティ(penicillium roqueforti)酸性プロテアーゼ、真菌酸性プロテアーゼ、例えばペニシリウム・ヤンチネルム(Penicillium janthinellum)由来のペニシロペプシン、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)由来のアスペルギロペプチダーゼA、エンドチア・パラシチン(Endothia parasitin)由来のエンドチア酸性プロテアーゼ、ムコール・ミケイ(Mucor michei)由来のムコールレンニンなど、並びにそれらの混合物。
酵素成分が酸活性である場合、活性調節成分(例えばヒドロキシルイオン)を提供するよう、酸度調節成分を選択する。酸度調節成分は、例えば、塩基(塩基性成分)、塩基性塩、塩基性緩衝剤、およびそれらの混合物から、好ましくは塩基性緩衝剤およびその混合物から選択し得る。有用な酸度調節成分の例は、生理学的適合性のpHにおいて眼科学的に許容し得るものを包含する。眼に顕著な悪影響を及ぼすことなく眼に入れることのできる物質は、眼科学的に許容し得る。有用な酸度調節成分の例は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、ボレート、リン酸ナトリウムおよびカリウム、アミノ酸緩衝剤など、並びにそれらの混合物を包含する。本発明における酸度調節成分の使用量は、酸活性酵素成分を実質的に不活性化するよう、液体媒体の酸度を充分低下するのに充分な活性調節成分を提供するような量である。
有用な一態様においては、酸活性酵素成分/IIARC組み合わせと併せて、液体媒体に放出されると該液体媒体の酸度を、酸活性酵素が活性となるレベルまで高めるのに有効な量の酸度上昇成分を使用する。上記組み合わせと、酸度上昇成分とは、酸活性酵素を液体媒体に放出する前、またはそれとほぼ同時に、酸度上昇成分を放出するよう設計した組成物中に存在することが好ましい。この態様においては、pHが約6.5〜8であり得る液体媒体に、液体媒体の酸度を好ましくはpH約2または3〜5に高める酸度上昇成分が作用する。そこで、酸活性酵素成分が、コンタクトレンズを有効に洗浄する。この洗浄が行われた後、酸度調節成分を液体媒体に放出して、液体媒体の酸度を好ましくはpH約6〜8.5に低下する活性調節成分を提供する。このようにして、コンタクトレンズを有効に洗浄し、次いで酸活性酵素成分を有効に不活性化するように、液体媒体の酸度を調節する。
有用な酸度上昇成分は、酸(酸性成分)、酸塩、酸性緩衝剤およびそれらの混合物、好ましくは酸性緩衝剤およびその混合物を包含する。有用な酸度上昇成分の例は、塩酸、ホウ酸、酒石酸、クエン酸およびそれらの混合物を包含する。
本発明において使用する酸度上昇成分の量は、使用する液体媒体の酸度を、酵素成分が活性となるレベルに高めるような量である。酸度上昇成分の量は、使用する酸度上昇成分の種類、使用する液体媒体の量および組成などの因子に応じて変化する。
他の態様においては、酵素成分が、金属成分による不活性化に感受性であり、活性調節成分は該金属成分から成るように、酵素成分/活性調節成分組み合わせを選択する。この態様においては、金属成分はしばしば、酵素成分を永久的または一時的に不活性化するのに有効である。不活性化が可逆的(または一時的)であるか否かは、使用する酵素の種類などの因子によって異なる。イオン性金属成分によって不活性化された酵素の場合、酵素からイオン性金属成分を除去した後に酵素活性を測定することによって、不活性化が永久的なものかどうかを簡単に調べることができる。すなわち、不活性化された酵素成分を、イオン性金属成分含有液体媒体から取り出し、充分量の金属キレート化剤または成分[例えば、エチレンジアミン四酢酸または眼科学的に許容し得るその塩(集合的にEDTAと称する)]を含有する媒体に入れると、酵素成分が再び活性となり得る。当然、金属キレート化剤を不充分に使用すると、酵素成分は不活性のままである。
コンタクトレンズの洗浄または他の処理のために使用する液体媒体の多くは、金属キレート化剤をある程度含有するので、そのような液体媒体中で酵素成分を充分に不活性化するためには、金属成分を多く使用し、および/または長い時間を費やすことが重要であり得る。更に、酵素成分、金属成分および金属キレート化剤の種類および量を適当に選択することにより、遅延放出成分を併用するか、または併用せずに、有効なコンタクトレンズ洗浄と、有効な酵素成分不活性化との両方を達成することができる。
特に有用な態様においては、例えばイオン性金属成分による不活性化に対し感受性とするための従来の遺伝子工学的方法(例えば組換DNA法)を用いて、金属成分感受性酵素成分を遺伝子工学的に調製する。多くの酵素を遺伝子的に変化して、金属成分による不活性化に対し感受性とすることができる。そのような酵素の例は、トリプシン、ズブチリシン、キモトリプシンなど、およびそれらの混合物を包含する。
金属成分は、使用する酵素成分を有効に不活性化し得る広範な物質から選択し得る。特に有用な金属成分の例は、アルカリ土類金属成分、遷移金属成分、例えば銅成分、鉄(例えばFe3+)成分、亜鉛成分、マグネシウム成分など、およびそれらの混合物を包含する。亜鉛成分が特に有用である。
金属成分の使用量は、酵素含有溶液が眼を損傷しないよう、酵素成分を充分に不活性化するような量とすべきである。金属成分は、液体媒体に放出されると溶解する形態で存在することが好ましい。金属成分感受性酵素成分の不活性化を促進するために、金属成分を幾分過剰に使用することが有用であり得る。しかし、金属成分を大過剰に使用することは避けるべきである。なぜなら、無駄であり、また、処理するコンタクトレンズ、または処理済コンタクトレンズの装用者に有害であり得るからである。金属成分は、本発明の系に適合するものを選択すべきである。好ましくは、金属成分は、本発明において使用する濃度で、眼科学的に許容し得る。
別の態様においては、金属の存在によって酵素成分を活性化する。すなわち、液体媒体に放出されると該液体媒体中のコンタクトレンズから汚れを除去するのに有効な量で、金属で活性化される酵素成分(金属活性化酵素成分)が存在する。活性調節成分(例えば、金属活性化酵素成分に伴う金属をキレート化または無効にするのに有効な金属キレート化剤)が、液体媒体中の金属活性化酵素成分をある時間にわたって不活性化(好ましくは実質的に完全に不活性化)するのに有効な量で存在する。この不活性化する時間は、液体媒体に金属活性化酵素を放出する前、またはそれと同時に液体媒体に入れたコンタクトレンズから、金属活性化酵素成分が有効に汚れを除去するのに充分な時間である。
金属活性化酵素成分を不活性化し得るいずれの適当な活性調節成分を使用してもよいが、活性調節成分は、金属イオン、例えば金属活性化酵素成分に伴う金属(例えば、金属活性化酵素成分の活性化に必要な金属)を前記時間にわたってキレート化(例えば、錯化および/または他の相互作用)し、それにより永久的または一時的に無効にするのに有効な金属キレート化成分から成ることが好ましい。特に有用な金属活性化酵素成分の例は、アルカリ土類金属活性化プロテアーゼ、好ましくはカルシウム活性化プロテアーゼから選択するものである。
活性調節成分として本発明において有用な金属キレート化剤または成分の例は、EDTAを包含する。本明細書中に説明する活性調節成分と同様に機能する、他の眼科学的に許容し得る金属キレート化成分または金属イオン封鎖成分(例えば、ある種のポリビニルアルコール)を、本発明において使用してもよい。金属キレート化成分は、液体媒体への放出を遅延または好ましくは調節するようにも使用し得る。
金属キレート化活性調節成分は、金属活性化酵素成分と同時に液体媒体に放出し得る。この場合、ある時間にわたって酵素成分が活性を保ち、コンタクトレンズからの汚れ除去に有効であるように、金属活性化酵素成分の不活性化(無効化)は、充分低速である。最終的には、金属活性化酵素成分に伴う金属の充分量を不活性化、好ましくは実質的に完全に不活性化する。
他の態様においては、洗浄するコンタクトレンズを入れる液体媒体中に、金属活性化酵素が存在し得る。コンタクトレンズを液体媒体に入れるのと同時、またはその後に、活性調節成分を液体媒体に導入し得る。活性調節成分は、ある時間にわたって、金属活性化酵素成分に伴う金属と相互作用または他の作用を起こし、酵素成分を不活性化、好ましくは実質的に完全に不活性化する。
本発明に従って金属活性化酵素成分の不活性化に使用する活性調節成分の量は、例えば、使用する金属活性化酵素成分の種類および量、使用する活性調節成分の種類、活性調節成分の放出後、金属活性化酵素成分不活性化までの時間の長さなどの因子に応じて、広範に変化する。活性調節成分を大過剰使用することは、不必要で無駄であり、例えば洗浄済コンタクトレンズの装用者に悪影響を及ぼし得るので、避けるべきである。活性調節成分の使用量は、液体媒体中に存在する金属活性化酵素成分を完全に不活性化するのに必要な量の約200%または約300%以下であることが好ましい。
酵素成分は、液体または固体の形態で使用し得る。酵素成分は、錠剤、丸薬、顆粒などのような固体の形態で提供し、液体媒体に導入し得る。
酵素成分を含有する固体および/または液体媒体に、他の成分を加えるか、または組み合わせてよい。例えば、発泡剤、安定剤、緩衝剤、キレート化剤および/または金属イオン封鎖剤、着色剤または指示薬、浸透圧調節剤、界面活性剤などの成分を使用し得る。更に、酵素成分含有錠剤を用いる場合は、結合剤、滑沢剤、担体、および錠剤製造に通例用いられる他の助剤を使用し得る。
発泡剤は通例、酵素成分を固体の形態で提供する場合に使用する。適当な発泡剤の例には、炭酸ナトリウムのような適当なアルカリ金属塩と組み合わせて使用する酒石酸またはクエン酸がある。
酵素成分含有錠剤または液体媒体に組み合わせ得る緩衝剤の例は、アルカリ金属塩、例えばカリウムまたはナトリウムの炭酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、水酸化物、並びに弱酸、例えば酢酸およびホウ酸を包含する。好ましい緩衝剤は、アルカリ金属ホウ酸塩、例えばホウ酸ナトリウムおよびカリウムである。更に、無機酸のような他のpH調節剤も使用し得る。例えば塩化水素を、眼科用に適当な濃度で使用してよい。通例、緩衝剤は、液体媒体に対して約0.01〜2.5%(w/v)、好ましくは約0.2〜1.5%(w/v)の量で存在する。
好ましい金属キレート化成分の例は、EDTAを包含し、それは通例、約0.010〜2.0%(w/v)の量で使用する。ある種のポリビニルアルコールのような他の金属キレート化成分(または金属イオン封鎖成分)を使用してもよい。金属(金属イオン)キレート化成分は、存在し得る金属成分(例えば金属イオン;酵素成分を活性化または不活性化し得る)を考慮して使用すべきである。
例えば酸化消毒剤(例えば過酸化水素)の存在および/または不存在を示すために、適当な呈色剤成分および/または指示薬成分を、本発明の組成物に含め得る。特に有用な指示薬成分は、シアノコバラミンである。他の従来の呈色剤成分/指示薬成分も当然使用し得る。
液体媒体の浸透圧を調節するために、浸透圧調節剤を使用する。浸透圧調節剤は、液体媒体の成分であり得、場合によっては酵素成分含有錠剤に組み合わせ得る。
適当な界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、ノニオン性または両性のいずれであってもよい。好ましい界面活性剤は、中性またはノニオン性の界面活性剤であって、5%(w/v)までの量で存在し得る。適当な界面活性剤の例は、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、C12−C18アルカンのポリオキシプロピレンエーテル、およびエチレンジアミンのポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックコポリマー[すなわちポロキサミン(poloxamine)]を包含する。
酵素を錠剤化するための結合剤および滑沢剤、並びに粉末、錠剤などを製造するために通例使用する他の助剤を、酵素成分含有錠剤製剤中に組み合わせ得る。
非常に有用な一態様においては、活性調節成分は遅延放出形態で存在する。すなわち、活性調節成分を、酵素成分と同時に(酵素成分含有物品の一部として)液体媒体に導入し得る。しかし、酵素を液体媒体に放出するよりも後に、活性調節成分を液体媒体に放出する。放出された酵素成分が、液体媒体中のコンタクトレンズから少なくとも1種の汚れを除去(好ましくは完全に除去)するのに充分な時間、活性調節成分の放出を遅延することが好ましい。そのような充分な時間とは、好ましくは約6時間以内、例えば約1分間ないし6時間、より好ましくは約4時間以内、例えば約2分間ないし4時間である。
遅延放出形態の本発明の組成物は、複数の層(コアおよびコーティング層を包含する)を有する錠剤または丸薬であることが好ましいが、他の適当な物品、例えば粉末、顆粒などとして存在してよい。遅延放出方法は当分野でよく知られており、例えば、コントロールド・ドラッグ・デリバリー(Controlled Drug Delivery)、第2版、ジョーゼフ・アール・ロビンソン(Joseph R.Robinson)およびビンセント・エイチ・エル・リー(Vincent H.L.Lee)編、マーセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク、1987に記載されている。
成分を順次遅延放出する物品はよく知られており、従来の方法で製造し得る。従って、そのような物品および製法の詳細な説明は、本明細書中では行わない。
有用な一態様においては、従来の製錠装置を用いて、コア錠製剤を直接圧縮する。従来のコーティング装置(例えばフィルムコーティングパンまたは流動床)を用いて、遅延放出成分を含有する溶液をコア錠に適用(例えば噴霧)する。コーティングパン装置は、ドイツのドリアム(Driam)、アメリカのトーマス・エンジニアリング(Thomas Engineering)、ベクター・コーポレイション(Vector Corporation)およびキー・インダストリーズ(Key Industries)から入手し得る。流動床装置は、グラット・エア・テクニークス(Glatt Air Techniques)、ベクター・コーポレイション、エアロマティック(Aeromatic)および他の会社から入手し得る。例えば、遅延放出成分含有溶液の組成、使用する装置、およびコア錠の大きさに応じた適当なコーティングパラメータを用いて、所望の遅延放出時間を達成するよう、適当量の遅延放出成分をコア錠に適用する。
本明細書中に記載のように機能し、レンズ処理に使用する成分、処理するレンズ、および処理後のレンズ装用者に実質的に悪影響を及ぼさないものであれば、いずれの適当な遅延放出成分またはその組み合わせを使用してもよい。遅延放出成分は、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは完全に水溶性である。遅延放出成分は好ましくは、大部分が少なくとも1種のポリマー材料から成る。有用な遅延放出成分の例は、以下のものを包含するが、それらに限定されない:可溶性セルロースエーテル、例えばメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびナトリウムカルボキシメチルセルロース;セルロースエステル、例えばセルロースアセテートフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルの少なくとも1種から誘導するポリマー、例えばメタクリル酸−メチルメタクリレートコポリマー[例えば、ローム・ファーマ(Rohm Pharma)からユードラジット(Eudragit、商標)L100の名称で市販のもの]、およびメタクリル酸−エチルアクリレートコポリマー(例えば、ローム・ファーマからユードラジットL30Dの名称で市販のもの);メチルビニルエーテルおよび無水マレイン酸から誘導するポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコールなど、並びにそれらの混合物。
本発明の実施に有用な液体媒体は、好ましくは水性である。液体媒体は、消毒剤成分を含有し得る。そのような消毒剤成分は、消毒量、とりわけコンタクトレンズの消毒に有効な量で存在する。
消毒剤成分の消毒量とは、適当な浸漬時間内、例えば4時間またはそれ以内に、微生物量を許容し得るレベルに低下する量を意味する。
消毒剤成分は、酸化性または非酸化性であり得る。特に有用な酸化消毒剤成分は、過酸化水素、または1種もしくはそれ以上の他のパーオキシ含有化合物、例えば1種もしくはそれ以上の他の過酸化物である。
過酸化水素の場合、例えば、水性液体媒体中0.5%(w/v)の濃度が、消毒剤成分としてしばしば有効である。少なくとも約1.0%または約2.0%(w/v)の過酸化水素を使用することが好ましい。そのような濃度では、0.5%(w/v)の過酸化物濃度の場合よりも、消毒時間が短縮する。消毒剤成分が、処理するコンタクトレンズまたは処理後のコンタクトレンズ装用者の眼に実質的に悪影響を及ぼさない限り、本発明において使用し得る過酸化水素の量に上限は無い。過酸化水素を約3%(w/v)含有する水溶液が、非常に有用である。
他の過酸化物については、有効消毒濃度で使用すべきである。
酸化消毒剤を本発明において使用する場合、存在する酸化消毒剤(例えば過酸化水素)を実質的に全部化学的に還元または中和するのに充分な量の、還元または中和成分を使用する。
そのような還元または中和成分は、酵素成分含有錠剤中に組み合わせることが好ましい。還元剤は通例、無毒性還元剤である。還元剤成分は、次のものを包含する:SH(基)−含有水溶性低級アルコール、有機アミンおよびその塩、アミノ酸およびジ−またはトリペプチド、例えばシステインヒドロクロリドエチルエーテル、グルタチオン、ホモシステイン、カルバモイルシステイン、システイニルグリシン、2−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオニルグリシン、2−メルカプトエチルアミンヒドロクロリド、システイン、N−アセチルシステイン、β−メルカプトエタノール、システインヒドロクロリド、ジチオスレイトール、ジチオエリスリトール、硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、チオウレア、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩および亜ジチオン酸塩、例えば亜硫酸、ピロ亜硫酸および亜ジチオン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩(例えばリチウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩)、並びにそれらの混合物。チオールが好ましく、N−アセチルシステインが特に有用である。
通例、還元剤成分は、液体媒体の0.5〜10%(w/v)の量で使用する。
一態様においては、還元成分の一部または全部を、酸化消毒剤成分(例えば過酸化水素)の中和または分解を触媒するペルオキシダーゼ酵素成分(とりわけ、カタラーゼ)で置き替える。そのようなペルオキシダーゼ酵素成分は、例えば、液体媒体中に存在する酸化消毒剤成分全部を、還元成分がある場合はそれと共に分解するのに有効な量で、酵素成分含有コア錠に含める。酸化消毒剤成分の分解速度を高めるために、ペルオキシダーゼ酵素成分を幾分過剰に使用することが有利であり得る。
非酸化消毒剤成分は、微生物との化学的または生理化学的相互作用によって抗菌活性を示す非酸化性の有機化合物である。適当な非酸化消毒剤成分は、眼科的適用に通常用いられるもので、下記成分を包含するが、それらに限定されない:眼科的適用に用いられる第四級アンモニウム塩、例えばポリ[(ジメチルイミノ)−2−ブテン−1,4−ジイルクロリド、α−[4−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム−2−ブテニル−ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]−ジクロリド[化学登録番号75345−27−6、オニキス・コーポレイション(ONYX Corporation)からポリクォーターニウム1(polyquaternium 1、商標)の名称で市販されている]、ベンザルコニウムハライド、およびビグアニド、例えばアレキシジン塩、アレキシジン遊離塩基、クロルヘキシジン塩、ヘキサメチレンビグアニドおよびそのポリマー、抗菌性ポリペプチドなど、並びにそれらの混合物。
アレキシジンおよびクロルヘキシジンの塩は、有機塩または無機塩であり得、通例、消毒性グルコン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物などである。通例、ヘキサメチレンビグアニドポリマー[ポリアミノプロピルビグアニド(PAPB)とも称する]の分子量は、約100000までである。そのような化合物は既知であり、米国特許第4758595号に開示されている。
無毒化すると前記条件を満足する他の消毒剤成分は、下記式で示される化合物である:
Figure 0003594308
[式中、Rは炭素原子数12〜20のアルキルまたはアルケニル基、好ましくはミリスチルまたは獣脂基、すなわち−C14H28および−C14H29の混合物から成る基(ミリスチル基)、または−C17H34および−C17H35の混合物から成る基(獣脂基)であり;R1、R2およびR3はそれぞれ、炭素原子数1〜3のアルキル基である。]。この消毒剤成分は、無毒化量の無毒性成分、好ましくは、水溶性ポリヒドロキシエチルメタクリレート、カルボキシメチルセルロース、ノニオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど、およびそれらの混合物から選択する無毒性成分と共に使用すべきである。
式Aで示される消毒剤成分と共に使用する無毒化成分の量は、例えば液体媒体の約0.0001〜2.0%、好ましくは約0.04〜0.4%(w/v)の範囲で、広範に変化する。
他の消毒剤成分は、第四級アンモニウム置換ポリペプチド、例えば比較的低分子量のコラーゲン加水分解物から誘導するものである。特に有用な第四級アンモニウム置換基は、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド基である。第四級アンモニウム置換ポリペプチドの分子量は、好ましくは約500〜5000である。クローダ社(Croda,Inc.)から市販のクロクォート(Croquat、商標)Lが、その一例である。
更に別の消毒剤成分は、2個の炭素原子に共有結合した酸素原子を有するイオネン(ionene)ポリマーおよびその混合物から選択する、眼科学的に許容し得る第四級アンモニウムポリマーである。そのようなポリマーは、ジアボ(Dziabo)らの米国特許第5145643号に記載されている。該特許を引用により本発明の一部とする。
その例は、バックマン・ラボラトリーズ社(Buckman Laboratories,Inc.)からWSCP(商標)の名称で市販されているポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン−(ジメチルイミニオ)エチレンジクロリド]である。
他の消毒剤には、ドデシル−ジメチル−(2−フェノキシエチル)−アンモニウムブロミドがある。
本発明において有用なイオン性消毒剤成分の一部を成し得る眼科学的に許容し得るアニオンの例は、クロリド(C1)、ブロミド、ヨーダイド、ビスルフェート、ホスフェート、酸ホスフェート、ニトレート、アセテート、マレエート、フマレート、オキサレート、ラクテート、タートレート、シトレート、グルコネート、サッカレート、p−トルエンスルホネートなどを包含する。
本発明において有用な非酸化消毒剤成分は、約0.00001〜0.01%(w/v)の濃度で液体媒体中に存在することが好ましい。より好ましい濃度は、ポリクォード(例えばポリ−クォーターニウム−1)およびビグアニドの場合は、0.00005〜0.0015%(w/v)であり、第四級アンモニウム置換ペプチド(例えばクロクォートL)およびポリマー(例えばWSCP)の場合は、約0.003〜0.015%(w/v)である。
より好ましくは、そのような剤は、作用溶液中に、使用者がレンズを該溶液で濯いでから直接眼に装用できるように、眼科学的に安全な濃度で存在する。
本発明の目的のためには、非酸化消毒剤成分を約0.00001〜0.005%(w/v)含有する水溶液を、多目的溶液として使用し得る。すなわち、そのような溶液(液体媒体)を、消毒、洗浄(酵素成分を使用)、貯蔵および濯ぎに使用し得る。すなわち、本発明の方法を用いることにより、使用者に必要なものは、酵素成分/不活性化剤成分組み合わせ(例えば、遅延放出錠剤の形態)、および一種類の溶液、前記の多目的溶液、または眼の涙液または体液で中和される酸活性プロテアーゼを含有する単一の多目的溶液のみとなる。洗浄済レンズを擦り、濯ぎ、または別の塩類溶液を使用する必要はない。
本発明の実施において、酵素成分/不活性化剤成分製剤を、通例約1〜10mlの液体媒体に入れる。液体媒体は、等張、低張または高張であり得、有効量の消毒剤成分を含有し得る。酵素が既に液体媒体中に存在するのでない場合、処理するコンタクトレンズを、上記製剤と同時に液体媒体に入れることが好ましい。所望の有効なコンタクトレンズケア結果(例えばコンタクトレンズの洗浄、またはコンタクトレンズの洗浄および消毒)を得るのに有効な条件下に、コンタクトレンズ/液体媒体の接触を起こす。液体媒体は水性であることが好ましいが、その場合、接触温度は好ましくは約0〜100℃、より好ましくは約10〜60℃、より一層好ましくは約15〜40℃である。コンタクトレンズ/液体媒体接触を周囲温度で行うことが、非常に便利であり、有用である。通例、洗浄のための接触は、約8時間以内で行い、好ましくは約1〜6時間行う。
好ましくは、レンズを液体媒体から取り出した後、更に擦り、濯ぐ工程を必要とせず、そのまま眼に装用する。また、緩衝塩類溶液、または前記のように使用したものと同様の組成の液体媒体(酵素不含有)でレンズを濯いでから、眼に装用してもよい。
本明細書中に記載するように、酵素成分、不活性化剤成分および他の乾燥成分を、成分を遅延放出または順次放出する粉末または錠剤として調製することが最も好都合である。酵素成分/不活性化剤成分を導入する時点で、コンタクトレンズが既に液体媒体中に入っていてよい。
以下の実施例により、本発明を制限することなく説明する。
実施例1
従来の方法により、下記組成を有する多層錠を調製する:
コア
結晶カタラーゼ 520活性単位
シアノコバラミン 0.085mg
ポリエチレングリコール3350 1.05mg
塩化ナトリウム 89.4mg
二塩基性リン酸ナトリウム(無水物) 12.5mg
一塩基性リン酸ナトリウム一水和物 1.0mg
硫酸亜鉛 5.0mg
コアコーティング
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 5.0mg
外層
ズブチリシンA 0.0075アンソン単位
過酸化水素3%(w/v)を含有する従来の水溶液10mlに、上記錠剤を入れる。汚れの付いたコンタクトレンズも、同時に溶液に入れる。非常に短時間でズブチリシンA酵素が溶液に放出され、コンタクトレンズから有効に汚れを除去する。溶液中の過酸化水素も、コンタクトレンズを有効に消毒する。約40分後、コアが溶液に放出される。コア中のカタラーゼが、溶液中の過酸化水素を全部有効に分解する。コア中に存在する硫酸亜鉛から生成する亜鉛イオンが、ズブチリシンAを実質的に完全に不活性化する。
洗浄および消毒したレンズを溶液から取り出し、そのまま安全かつ快適に眼に装用することができる。洗浄および消毒したレンズを、従来の緩衝塩類溶液で濯いでから、安全かつ快適に眼に装用することもできる。
実施例2
従来の方法により、下記組成を有する多層錠を調製する:
コア
従来の糖含有賦形剤[ダイ−パック(Di−Pac)]40mg
ポリビニルピロリドン 4mg
ポリエチレングリコール3350 4mg
硫酸亜鉛 1.8mg
コアコーティング
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2mg
外層
ズブチリシンA 0.0017アンソン単位
下記溶液を調製する:
ポリアミノプロピルビグアニド(w/v%) 0.0001
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)(w/v%) 0.05
塩化ナトリウム(w/v%) 0.37
トリス(1)(w/v%) 1.2
ノニオン性界面活性剤(2)(w/v%) 0.025
精製水(USP) QS
(1)トロメタミン;2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールとしても知られる。
(2)ルガー(Ruger)からチロキサポール(Tyloxapol、商標)の名称で市販されている、オキシエチル化第三級オクチルフェノールホルムアルデヒドポリマーを含有するノニオン性界面活性剤。
溶液に塩酸を加えて、pH約7.5とする。
上記溶液1.8mlに、上記錠剤および汚れの付いたコンタクトレンズ(レンズホルダー内)を同時に入れる。溶液への導入後、ズブチリシンAが溶液に短時間で放出され、コンタクトレンズから有効に汚れを除去する。更に、溶液により、コンタクトレンズの有効な消毒が起こる。約1時間後、コアが溶液に放出される。最終的な溶液は、硫酸亜鉛を充分過剰に、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムのモル濃度の約4倍のオーダーのモル濃度で含有するということに注目すべきである。このように過剰に硫酸亜鉛を使用することにより、硫酸亜鉛を放出した溶液の遊離(未キレート化)亜鉛イオン含量が、ズブチリシンA酵素の実質的不活性化のために確実に充分なものとなる。コア中に存在する硫酸亜鉛から生成する亜鉛イオンは、ズブチリシンAを実質的に不活性化するのに有効である。コンタクトレンズを溶液中に更に3時間放置して、レンズを充分消毒する。
洗浄および消毒したコンタクトレンズを、組成物から取り出し、そのまま安全かつ快適に眼に装用することができる。洗浄および消毒したコンタクトレンズを、従来の緩衝塩類溶液、または前記ポリアミノプロピルビグアニド含有溶液で濯いでから、安全かつ快適に眼に装用することもできる。
実施例3
従来の方法で、下記組成の錠剤を調製する:
従来の糖含有賦形剤(ダイ−パック) 40.0mg
ポリビニルピロリドン[コリドン(Kollidon)30]4.0mg
ポリエチレングリコール3350 4.0mg
ズブチリシンA MG1.5 1.3mg*
*錠剤1個当たり0.0017アンソン単位の酵素活性に相当
上記錠剤各1個、および実施例2に記載のポリアミノプロピルビグアニド含有溶液各1.8mlを用いて、4種のズブチリシンA酵素含有溶液を調製する。3種の溶液に種々の量のZnSO4を酵素錠と同時に加える。
4種の溶液は、下記成分を含有する:
Figure 0003594308
市販のソフト(55%含水)コンタクトレンズ32個を、ハスらの米国再発行特許第32672号の方法に従って、コンタクトレンズ洗浄試験用の熱変性リゾチームでコーティングする。該特許の開示を引用により本発明の一部とする。
次いで、レンズを試験溶液に入れる。試験溶液1種類当たり、8個のレンズを使用する。レンズを、2、4、8および20時間浸漬する。各時間後に、各試験溶液から2個のレンズを取り、タンパク質除去の程度を顕微鏡で調べる。洗浄%は、倍率100倍で調べた、タンパク質フィルムで覆われていない表面の割合である。試験溶液の酵素活性を、アゾコール(Azocoll)法[トマレリ、アール・エム(Tomarelli,R.M.)ら、ジャーナル・オブ・ラボラトリー・アンド・クリニカル・メディシン(J.Lab.Clin.Med.)、34、428(1949)]に従って測定する。
洗浄および酵素不活性化結果を、第1表に示す。
Figure 0003594308
この結果により、次のことがわかる:
(1)実質的な洗浄および酵素不活性化を、同時に達成することができる。溶液2は、4時間後に75%不活性であるが、硫酸亜鉛不含有の溶液1と比較して、許容し得る洗浄結果を示す。
(2)硫酸亜鉛の濃度が高いほど、短時間でズブチリシンAの不活性化が促進される。
(3)硫酸亜鉛は、EDTA存在下にズブチリシンAを不活性化し得る。0.25w/v%の量の硫酸亜鉛は、約0.05w/v%のEDTAを含有する溶液中で洗浄性を完全に無くすのに充分である(溶液4)。
実施例4
従来の方法により、下記組成を有する多層錠を調製する:
コア
結晶カタラーゼ 520活性単位
シアノコバラミン 0.085mg
ポリエチレングリコール(分子量3350) 1.05mg
塩化ナトリウム 89.4mg
二塩基性リン酸ナトリウム(無水物) 12.5mg
一塩基性リン酸ナトリウム一水和物 1.0mg
コアコーティング
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 5.0mg
外層
アスペルギロペプチダーゼA(1) 0.0075アンソン単位
(1)アスペルギルス・サイトイ由来の酸性プロテアーゼ。他の酸性プロテアーゼ、例えば他の真菌酸性プロテアーゼを代わりに使用してもよい。また、アスペルギロペプチダーゼAと同様の活性および活性/pH性を有する遺伝子工学的に調製した酸活性酵素を代わりに使用してもよい。酸活性酵素の効果は、一定の実験によって調べることができる。例えば、種々のpHレベルで酵素活性をモニターして、この態様における酵素の有用性を調べることができる。
過酸化水素3%(w/v)を含有する従来の水溶液10mlに、上記錠剤を入れる。汚れの付いたコンタクトレンズも、同時に溶液に入れる。非常に短時間でアスペルギロペプチダーゼA酵素が溶液(pH3.5)に放出され、コンタクトレンズから有効に汚れを除去する。溶液中の過酸化水素も、コンタクトレンズを有効に消毒する。約40分後、コアが溶液に放出される。溶液のpHが、7.0に上昇する。このpH変化により、アスペルギロペプチダーゼA酵素が不活性化される。アスペルギロペプチダーゼA酵素がコンタクトレンズを有効に洗浄した後に、ホスフェート緩衝剤がコア錠から放出される。コア中のカタラーゼが、溶液中の過酸化水素を全部有効に分解する。
洗浄および消毒したコンタクトレンズを溶液から取り出し、そのまま安全かつ快適に眼に装用することができる。洗浄および消毒したコンタクトレンズを、従来の緩衝塩類溶液で濯いでから、安全かつ快適に眼に装用することもできる。
実施例5
下記溶液を調製する:
Figure 0003594308
(1)緩衝剤および/または緩衝剤量は、溶液をpH4に緩衝し、それを維持するように選択すべきである。そのような緩衝は、該溶液が少量(残留量)他の液体媒体(例えばヒトの眼の涙液)に入っても、実質的に影響の無いようにすべきである。有用な緩衝剤の例は、クエン酸−リン酸水素二ナトリウム、酢酸−酢酸ナトリウム、コハク酸−水酸化ナトリウムなどを包含する。
(2)実施例2に記載のノニオン性界面活性剤と同じ。
上記溶液1.8mlに、汚れの付いたソフト(ヒドロゲル)コンタクトレンズ(レンズホルダー内)を入れる。酸性プロテアーゼ(ペニシロペプシン)が、コンタクトレンズから汚れを有効に除去する。更に、コンタクトレンズは、溶液によって有効に消毒される。この接触中、コンタクトレンズの形状(サイズ)は保たれる。すなわち、低pHの溶液はヒドロゲルコンタクトレンズを解膨潤する傾向を示すが、溶液の低張性はレンズを膨潤する傾向を示す。溶液の低pHと低張性とのバランスにより、ヒドロゲルコンタクトレンズの含水量を、実質的に該溶液との接触前の量に保つ。
少なくとも4時間(または一晩)後、洗浄および消毒したコンタクトレンズを溶液から取り出し、そのまま安全かつ快適に装用する。コンタクトレンズを酸溶液から直接眼に入れると、レンズは非常に短時間(例えば約1〜2分間)で、生理的pH約7〜7.5で安定となる。このpHでは、酸性プロテアーゼのペニシロペプシンは不活性化され、眼を損傷しない。本発明のこの態様は、コンタクトレンズを洗浄および消毒するための非常に有効な一工程一溶液法である。
特にソフトヒドロゲルコンタクトレンズを処理する場合、本発明において重要なのは、接触中にコンタクトレンズの初期形状(サイズ)を実質的に維持するように、すなわち、コンタクトレンズの含水量を実質的に維持するように、系のバランスを取るということである。上記実施例5に示したように、低張溶液と酸性pHとを組み合わせることによって、解膨潤/膨潤バランスを達成し得る。1種またはそれ以上の他の溶質、例えばレンズを膨潤する傾向を示す浸透圧調節剤を、酸性pHと組み合わせることによって、低pHのレンズ解膨潤効果を中和してもよい。
実施例6
従来の方法で、カルシウム活性化中性プロテアーゼ(例えばサーモリシン)を0.0017アンソン単位含有する錠剤を調製する。
実施例2に記載の溶液1.8mlに、上記錠剤と汚れの付いたコンタクトレンズ(レンズホルダー内)とを入れる。溶液に導入後、非常に短時間でカルシウム活性化中性プロテアーゼが溶液に放出され、コンタクトレンズから有効に汚れを除去する。更に溶液により、コンタクトレンズが有効に消毒される。溶液中のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムが、酵素に伴うカルシウムを徐々にキレート化する。このキレート化(または錯化)は、酵素の不活性化に有効である。約4〜8時間でコンタクトレンズは有効に洗浄および消毒され、酵素は実質的に不活性化される。
洗浄および消毒したレンズを組成物から取り出し、そのまま安全かつ快適に眼に装用することができる。洗浄および消毒したレンズを、従来の緩衝塩類溶液、または実施例2に記載のような溶液で濯いでから、安全かつ快適に眼に装用することもできる。
実施例7
従来の方法により、下記組成を有する多層錠を調製する:
コア
従来の糖含有賦形剤(ダイ−パック) 40mg
ポリビニルピロリドン 4mg
ポリエチレングリコール3350 4mg
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 2mg
コアコーティング
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2mg
外層
カルシウム活性化中性プロテアーゼ0.0017アンソン単位
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを含有しないこと以外は実施例2に記載のものと同様の溶液を調製する。
上記溶液1.8mlに、上記錠剤および汚れの付いたコンタクトレンズ(レンズホルダー内)を同時に入れる。溶液への導入後、カルシウム活性化中性プロテアーゼが溶液に短時間で放出され、コンタクトレンズから有効に汚れを除去する。更に、溶液により、コンタクトレンズの有効な消毒が起こる。約1時間後、コアが溶液に放出される。コア中に存在するエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムは、カルシウム活性化中性プロテアーゼに伴うカルシウムをキレート化し、酵素を実質的に不活性化するのに有効である。コンタクトレンズを溶液中に更に3時間放置して、レンズを充分消毒する。
洗浄および消毒したコンタクトレンズを、組成物から取り出し、そのまま安全かつ快適に眼に装用することができる。洗浄および消毒したコンタクトレンズを、従来の緩衝塩類溶液、または実施例2に記載のような溶液で濯いでから、安全かつ快適に眼に装用することもできる。
本発明を種々の例および態様に関して説明したが、本発明はそれらに制限されず、請求の範囲内で変更を加えて実施し得ると理解すべきである。

Claims (24)

  1. コンタクトレンズの洗浄に有用な組成物であって、
    液体媒体に放出すると、液体媒体中に存在するコンタクトレンズから汚れを除去するのに有効な量の酵素成分;および
    液体媒体に放出すると、液体媒体中に存在する前記酵素成分を不活性化するのに有効な量の、イオン性および無機成分、および金属キレート化成分から成る群から選択する活性調節成分
    を含有する組成物。
  2. 酵素成分を液体媒体に放出後、ある時間の間、活性調節成分の液体媒体への放出を遅延するのに有効な量の遅延放出成分を更に含有し;酵素成分を液体媒体に放出後、ある時間の経過後に活性調節成分を液体媒体に放出するよう設計したものであり;ある時間とは、酵素成分を液体媒体に放出する前またはそれと同時に液体媒体に入れたコンタクトレンズから、酵素成分が汚れを有効に除去するのに充分な時間である請求項1記載の組成物。
  3. 酵素成分は酸活性酵素成分から成り、活性調節成分は、液体媒体に放出すると、前記酸活性酵素成分が不活性となるレベルまで液体媒体の酸度を変化するのに有効である請求項1記載の組成物。
  4. 液体媒体に放出すると、酸活性酵素が活性となるレベルまで液体媒体の酸度を高めるのに有効な量の酸度上昇成分を更に含有し;酸活性酵素成分を液体媒体に放出する前またはそれとほぼ同時に酸度上昇成分を放出するよう設計したものである請求項3記載の組成物。
  5. 酵素成分は金属成分による不活性化に感受性であり、活性調節成分は金属成分から成る請求項1記載の組成物。
  6. 金属成分は、アルカリ土類金属成分、遷移金属成分およびそれらの混合物から成る群から選択する請求項5記載の組成物。
  7. 活性調節成分は、液体媒体に放出すると、液体媒体中に存在する酵素成分と、ある時間にわたって相互作用するのに有効な量で存在し、それによって、液体媒体中に存在するコンタクトレンズからの汚れの除去と、酵素成分の不活性化とを同時に行う請求項5記載の組成物。
  8. 液体媒体中に存在するコンタクトレンズを消毒するのに有効な量の消毒剤成分を含有する液体媒体を更に含んで成る請求項1記載の組成物。
  9. コンタクトレンズの洗浄に有用な組成物であって、
    液体媒体に放出すると、液体媒体中に存在するコンタクトレンズから汚れを除去するのに有効な量の、金属活性化酵素成分、および金属成分による不活性化に感受性の酵素成分から成る群から選択する酵素成分;および
    液体媒体に導入すると、ある時間後に、液体媒体中に存在する前記酵素成分を不活性化するのに有効な量の活性調節成分
    を含有し;
    ある時間とは、酵素成分を液体媒体に放出する前またはそれと同時に液体媒体に入れたコンタクトレンズから、酵素成分が汚れを有効に除去するのに充分な時間である組成物。
  10. 活性調節成分を液体媒体に導入後、活性調節成分の液体媒体への放出を遅延するのに有効な量の遅延放出成分を更に含有する請求項9記載の組成物。
  11. 酵素成分は金属活性化酵素成分であり、活性調節成分は、前記金属活性化酵素成分に伴う金属をキレート化するのに有効な金属キレート化成分である請求項9記載の組成物。
  12. 液体媒体、および液体媒体中に存在するコンタクトレンズを消毒するのに有効な量の消毒剤成分を更に含んで成る請求項9記載の組成物。
  13. コンタクトレンズの洗浄方法であって、
    有効なコンタクトレンズ洗浄条件下、コンタクトレンズから汚れを除去するのに有効な量の酵素成分の存在下に、コンタクトレンズを液体媒体と接触させ;および
    コンタクトレンズの入った液体媒体中の前記酵素成分を、液体媒体中に存在する該酵素成分を不活性化するのに有効な量の、イオン性および無機成分、および金属キレート化成分から成る群から選択する活性調節成分と接触させる
    ことを含んで成る方法。
  14. 液体媒体は、液体媒体中に存在するコンタクトレンズを消毒するのに有効な量の消毒剤成分を含有する請求項13記載の方法。
  15. 酵素成分は酸活性酵素成分から成り、活性調節成分は、前記酸活性酵素成分が不活性となるレベルまで液体媒体の酸度を変化するのに有効である請求項13記載の方法。
  16. 酵素成分は金属成分による不活性化に感受性であり、活性調節成分は金属成分から成る請求項13記載の方法。
  17. 二接触工程を少なくとも部分的に同時に行う請求項16記載の方法。
  18. 液体媒体は、液体媒体中に存在する金属成分の一部をキレート化するのに有効な量の金属キレート化剤を含有する請求項16記載の方法。
  19. コンタクトレンズの洗浄方法であって、
    有効なコンタクトレンズ洗浄条件下、コンタクトレンズから汚れを除去するのに有効な量の、金属活性化酵素成分、および金属成分による不活性化に感受性の酵素成分から成る群から選択する酵素成分の存在下に、コンタクトレンズを液体媒体と接触させ;および
    コンタクトレンズの入った液体媒体中の前記酵素成分を、液体媒体中に存在する該酵素成分を不活性化するのに有効な量の活性調節成分と接触させる
    ことを含んで成る方法。
  20. 液体媒体は、液体媒体中に存在するコンタクトレンズを消毒するのに有効な量の消毒剤成分を含有する請求項19記載の方法。
  21. 酵素成分は金属活性化酵素成分であり、活性調節成分は、前記金属活性化酵素成分に伴う金属をキレート化するのに有効な金属キレート化成分である請求項19記載の方法。
  22. 液体媒体中に存在するコンタクトレンズからの汚れの除去と、液体媒体中に存在する酵素成分の不活性化とが同時に起こるように二接触工程を行う請求項19記載の方法。
  23. コンタクトレンズの洗浄方法であって、
    液体媒体中に存在するコンタクトレンズから汚れを除去するのに有効な量の酸活性酵素成分を含有し、該酸活性酵素成分が活性となるpHに弱酸緩衝した液体媒体に、コンタクトレンズを接触させ;
    コンタクトレンズを液体媒体から取り出し;および
    コンタクトレンズをそのまま眼に装用する
    ことを含んで成る方法。
  24. コンタクトレンズはヒドロゲルから成り、液体媒体中の条件は、前記コンタクトレンズの含水量を実質的に維持するのに有効である請求項23記載の方法。
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