JP3593981B2 - 溶接電極間移動量検出方法および装置 - Google Patents

溶接電極間移動量検出方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接時におけるナゲットの膨張・収縮により一対の電極が相互に離間・近接する方向に移動させられる量を検出する溶接電極間移動量検出方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、スポット溶接に代表される抵抗溶接の分野では、溶接品質の良否をリアルタイム(溶接中)で判断するための方法として、被溶接部材に形成されるナゲットの膨張量を、溶接中の溶接電極間移動量として検出することが知られている。これは、溶接中の被溶接物の熱膨張と溶接品質との間に、深い因果関係があることを利用したものである。
【0003】
そして、被溶接部材の熱膨張という物理現象を、溶接中の溶接電極間移動量としてとらえ、この溶接電極間移動量をどのように検出するか、あるいはその検出結果を加工して溶接品質の代用特性とするかについて、種々の方法が提案されている。
【0004】
一般的には、溶接ガンの溶接電極間移動量を検出する検出器としては、リニアスケール(直線方向の位置を検出可能なスケール)や、レーザ測距センサ等が用いられる。また、サーボモータを駆動手段とした溶接ガンでは、モータに内蔵ないし付設される位置検出器を用いることも可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したいずれの溶接電極間移動量の検出器も、直接的に溶接中の被溶接部材の物理現象を計測することはできない。
【0006】
すなわち、溶接打点の周辺は、溶接治具や被溶接部材との干渉が起こり易くなるため、溶接電極間移動量の検出器は、電極から離れた部位、例えばエアシリンダやサーボモータといった駆動手段における、電極に連結されて(回転ないし直線)移動させられる回転軸やピストンロツドなどの駆動部等の近傍に取り付けざるを得ないものであった。
【0007】
このため、ナゲットの熱膨張により溶接ガンの電極を押し戻す力が、溶接ガンの撓み、およびエアシリンダやサーボモータの摩擦等の機械的なロスに吸収されてしまい、正確な溶接電極間移動量を検出することができず、結果的に、溶接品質の良否判定の精度を低下させている、という問題があった。
【0008】
つまり、厳密には電極間寸法の変化量である溶接電極間移動量を検出しているのではなく、電極を移動させる駆動装置における駆動部の移動量を代用的に検出しているに過ぎず、これによる不都合は、特に溶接ガンの撓みが大きくなる大型の溶接ガンの場合に、顕著に現れることになる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、溶接中の溶接電極間移動量を正確に検出することにより、溶接品質の良否判定の精度を向上させることができる溶接電極間移動量検出方法および装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記する手段により達成される。
(1)溶接ガンに取り付けられた一対の電極を、当該一対の電極の少なくとも一方に連結された駆動部を有する電極駆動手段の当該駆動部を移動させることによって、相互に近接する方向に移動させ、前記一対の電極により被溶接部材を加圧し通電して溶接を行う際に、ナゲットの膨張・収縮により前記一対の電極が相互に離間・近接する方向に移動させられる溶接電極間移動量を検出する溶接電極間移動量検出方法であって、
溶接中のナゲットの膨張・収縮による前記駆動部の電極移動方向についての移動量と、前記電極から被溶接部材に付加される加圧力による前記溶接ガンの撓み量と、を加算することによって、前記溶接電極間移動量を導出することを特徴とする溶接電極間移動量検出方法。
(2)前記撓み量は、予め求めた前記溶接ガンの加圧力に関する剛性係数と、前記加圧力とを乗じて得られることを特徴とする請求項1に記載の溶接電極間移動量検出方法。
(3)前記加圧力は、前記溶接ガンに設けられた加圧力検出手段により検出されることを特徴とする請求項2に記載の溶接電極間移動量検出方法。
(4)前記溶接ガンの加圧力に関する剛性係数は、前記一対の電極を相互に近接させて少なくとも2種類以上の加圧力を生じさせたときの、当該加圧力と前記駆動部の電極移動方向の移動量との関係に基づいて算出されることを特徴とする請求項2または3に記載の溶接電極間移動量検出方法。
(5)前記撓み量は、予め求めた前記溶接ガンの歪み量に関する剛性係数と、前記溶接ガンの歪み量とを乗じて得られることを特徴とする請求項1に記載の溶接電極間移動量検出方法。
(6)前記歪み量は、前記溶接ガンに設けられた歪み量検出手段により検出されることを特徴とする請求項5に記載の溶接電極間移動量検出方法。
(7)前記溶接ガンの歪み量に関する剛性係数は、前記一対の電極を相互に近接させて少なくとも2種類以上の加圧力を生じさせたときの歪み量と、前記駆動部の電極移動方向の移動量との関係に基づいて算出されることを特徴とする請求項5または6に記載の溶接電極間移動量検出方法。
(8)溶接ガンに取り付けられた一対の電極を、当該一対の電極の少なくとも一方に連結された駆動部を有する電極駆動手段の当該駆動部を移動させることによって、相互に近接する方向に移動させ、前記一対の電極により被溶接部材を加圧し通電して溶接を行う際に、ナゲットの膨張・収縮により前記一対の電極が相互に離間・近接する方向に移動させられる溶接電極間移動量を検出する溶接電極間移動量検出装置であって、
溶接中のナゲットの膨張・収縮による前記駆動部の電極移動方向についての移動量を検出する駆動部移動量検出手段と、
前記駆動部移動量検出手段により検出される移動量と前記電極から被溶接部材に付加される加圧力による前記溶接ガンの撓み量とを加算することによって、前記溶接電極間移動量を導出する制御手段と、
を有することを特徴とする溶接電極間移動量検出装置。
(9)前記電極から被溶接部材に付加される加圧力を検出する加圧力検出手段を有し、前記撓み量は、予め求めた前記溶接ガンの加圧力に関する剛性係数と前記加圧力検出手段により検出される加圧力とを乗じて得られることを特徴とする請求項8に記載の溶接電極間移動量検出装置。
(10)前記電極から被溶接部材に加圧力が付加されたときの溶接ガンの歪み量を検出する歪み量検出手段を有し、前記撓み量は、予め求めた前記溶接ガンの歪み量に関する剛性係数と前記歪み量検出手段により検出される歪み量とを乗じて得られることを特徴とする請求項8に記載の溶接電極間移動量検出装置。
【0011】
【発明の効果】
本発明は、請求項ごとに以下のような効果を奏する。
【0012】
請求項1,2,8,9に記載の発明によれば、溶接中の溶接電極間移動量を正確に検出することにより、ナゲットの形成具合を適確に把握して、溶接品質の良否判定の精度を向上させることができる。
【0013】
また、請求項5,10に記載の発明によれば、溶接中の溶接電極間移動量を正確に検出することにより、ナゲットの形成具合を適確に把握して、溶接品質の良否判定の精度を向上させることができる上、溶接ガンの歪み量を直接検出するものであるため、歪み量の検出位置の自由度は高く、装置も簡素なものとなる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、発生した加圧力の伝達経路に存在する機械的なロスによる影響を受けないので、電極から被溶接部材に付加される加圧力をより正確に検出することができ、より高精度に溶接ガンの加圧力に関する剛性係数を算出することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項2または3に記載の発明の効果に加え、特に新たな構成を付加することなく、容易に溶接ガンの加圧力に関する剛性係数を求めることができる利点が大きい。しかも、各種の溶接ガンに対して共通して適用することができ、また、適宜、剛性係数のチェックおよび修正を行うことも容易となる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明の効果に加え、発生した加圧力の伝達経路に存在する機械的なロスによる影響を受けないので、電極から被溶接部材に付加される加圧力による溶接ガンの歪み量をより正確に検出することができ、より高精度に溶接ガンの歪み量に関する剛性係数を算出することができる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明によれば、請求項5または6に記載の発明の効果に加え、特に新たな構成を付加することなく、容易に溶接ガンの歪み量に関する剛性係数を求めることができる利点が大きい。しかも、各種の溶接ガンに対して共通して適用することができ、また、適宜、剛性係数のチェックおよび修正を行うことも容易となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付した図面の図1〜図7及び図14を参照して、本発明の第一の実施形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る溶接装置の概略を示すブロック構成図である。
【0020】
この溶接装置は、溶接ガン10と制御装置20よりなる。
【0021】
溶接ガン10は、ガンアーム11、可動側電極12および固定側電極14、電極駆動手段としてのサーボモータ18(以下、単にモータと記す)、および駆動部移動量検出手段としてのエンコーダ19を有している。この溶接ガン10は、通常、ロボットアームの先端などに取り付けられる。
【0022】
一方、制御装置20は、中央処理演算装置(CPU)22、補助演算装置24、および記憶装置26よりなる。
【0023】
モータ18の駆動部としての図示しない回転軸は、送り捩子15に連結されている。この送り捩子15は、可動側電極12を支持している支持部材16に螺合している。溶接動作時においては、モータ18の回転軸の回転が送り捩子15に伝達される。そして、送り捩子15が回転することにより、支持部材16が下方に移動して、可動側電極12が被溶接部材1を所定の加圧力で加圧する。
【0024】
エンコーダ19は、モータ18の回転軸に取り付けられており、モータ18の駆動部の移動量(回転軸の回転量)を計測する。エンコーダ19からの信号は、CPU22に伝達され、溶接中の溶接電極間移動量の算出に利用される。
【0025】
また、CPU22は、予め記憶装置26に記憶されている溶接プログラムに従つて、モータ18に可動側電極12の加圧ないし開放指令を出力し、溶接に必要なモータのトルクの制御を行う。さらに、CPU22は、電極に印加する電流の制御なども行っている。
【0026】
記憶装置26は、溶接プログラムや溶接条件(溶接加圧力、溶接電流、通電時間、通電間隔)などを記憶している。
【0027】
なお、サーボモータを電極駆動手段とした溶接ガンの多くは、ロボットのアプリケーションとして位置付けられているため、制御装置20は、一般に、ロボット制御装置に内蔵される場合が多い。したがって、溶接ガン10のモータ18もロボットの1軸として動作され位置制御されるので、モータ18には、通常、サーボモータ位置検出器であるエンコーダ19が組み込まれている。
【0028】
本実施形態では特に、電極12,14から被溶接部材1に付加される加圧力を検出する加圧力検出手段としての加圧力検出器17が、電極が取り付けられた溶接ガン10のガンアーム11に設けられている。具体的には、図1に示すように、加圧力検出器17は、可動側電極12を支持している支持部材16に設けられている。但し、加圧力検出器17は、電極間に発生する加圧力と同等の加圧力を検出できる部位であれば、ガンアーム11の任意の部位に設けることが可能である。また、加圧力検出器17としては、例えば圧力センサが使用されるが、具体的にはストレインゲージの入力部にダイヤフラムを介在して得られた圧力値を電気信号として出力する方式や、圧電素子を用いて直接圧力値を電気信号として出力する方式等があるが、これら圧力センサ自体は公知の技術でもあるので、詳細説明を省略する。そして、加圧力検出器17からの信号は、CPU22に伝達される。CPU22においては、被溶接部材1に付加される加圧力は、溶接中の電極間移動量の算出に利用される。
【0029】
溶接装置による溶接作業は、概略以下のように行われる。まず、被溶接部材1に、その上下方向から電極12,14が所定の溶接加圧力で圧接する。被溶接部材1が圧接された状態で、両電極12,14に、CPU22の制御により図示しない電源から溶接電流が供給されて、溶接が開殆される。溶接が開始されると被溶接部材1における溶接点では、ナゲットの形成が始まり、部材が溶融して熱膨張する。このときナゲットの膨張による力が溶接加圧力より強ければ電極12を押し戻し、モータ18が逆回転することになる。その後電極12、14への通電を止めるとナゲットは収縮する。この膨張・収縮が一定時間(溶接時間)の間行われ、適宜なナゲットの形成が行われて、溶接終了となる。この溶接時におけるナゲットの膨張や収縮による電極12の移動量は、モータ18の回転軸の回転量としてエンコーダ19により計測されている。
【0030】
ところで、溶接ガン10のガンアーム11は、電極12が被溶接部材1に圧接し、モータ18のトルクが強くなると、その剛性に応じて撓みが生じるが、電極12の加圧中はその加圧力と撓みとの釣り合いがとれた状態で静止する。この状態で溶接を開始すると、被溶接部材1に形成されるナゲットの熱膨張により一瞬、ガンアーム11の撓み量が増加する。このとき、その加圧力と撓みとの釣り合いが不均衡となり、この釣り合いが平衡するまで電極12が押し戻され、電極12の変位量がエンコーダ19によって計測される。
【0031】
したがって、エンコーダ19によって計測される値は、ナゲットの膨張・収縮量それ自体ではなく、あくまで電極12の移動量のみをモータの回転軸の回転量として計測したものである。したがって、これだけでは、ナゲットの膨張および/または収縮により一対の電極12,14が相互に離間および/または近接する方向に移動させられる量である溶接電極間移動量を、正確に検出することはできない。本発明は、かかる課題を解決する手段を提供するものである。
【0032】
図2は溶接電極間移動量を検出する方法を説明するための模式図、図3は溶接電極間移動量を検出する方法を示す制御ブロック図、図4は加圧力に基づき溶接ガンの剛性係数を求める方法を説明するための模式図、図5は加圧力と溶接ガンの撓み量との関係を示す図である。
【0033】
図2,3に示すように、本実施形態では、モータ18の駆動部の電極移動方向についての移動量h(回転軸の回転量に対応する軸方向の送り量)と、電極12,14から被溶接部材1に付加される加圧力pにガンアーム11の剛性に対応した係数(以下、加圧力に関する剛性係数k1と称する)を乗じて得られる撓み量pk1と、を加算することにより溶接電極間移動量Hを導出する(H=h+pk1)。ここで、加圧力に関する剛性係数k1は単位加圧力を加えたときのガンアームの電極移動方向の撓み量であって、この剛性が低いほど係数は大きくなり、剛性が高いほど係数は小さくなる。
【0034】
すなわち、モータ18に内蔵されたサーボモータ位置検出器であるエンコーダ19を用いて、溶接中のナゲット2の熱膨張・収縮によるモータ18の駆動部の電極移動方向についての移動量hを検出すると共に、エンコーダ19では出力されないナゲット2の熱膨張・収縮によるガンアーム11の撓み量pk1を求め、両者を加算することにより真の溶接電極間移動量、すなわちナゲットの膨張・収縮により一対の電極12,14が相互に離間・近接する方向に移動させられる量を導き出すようにしている。
【0035】
ガンアーム11の撓み量pk1は、加圧力検出器17の出力に、加圧力に関する剛性係数k1を乗じて求めることができる。ここで、加圧力検出器17は電極12,14が締結されるガンアーム11に設けられているため、例えば電極12,14の駆動手段としてのモータ18の出力値を利用するのに比べ、発生加圧力の伝達経路に存在する機械的なロスによる影響を受けない。したがって、電極12,14から被溶接部材1に付加される加圧力pをより正確に検出することができ、より高精度にガンアーム11の加圧力に関する剛性係数k1を算出することができる。
【0036】
図3,4に示すように、ガンアーム11の加圧力に関する剛性係数k1は、一対の電極12,14を相互に近接させて少なくとも2種類以上の加圧力を生じさせたときの、当該加圧力とモータ18の回転軸の回転量との関係、に基づいて算出される。
【0037】
すなわち、加圧力に関する剛性係数k1を算出する場合、まず予め、溶接ガン10のモータ18により任意のモータ発生力Fを加え、このときのガンアーム11に組み込んだ加圧力検出器17の出力値である加圧力pと、エンコーダ19を用いて検出したモータ18の駆動部の電極移動方向についての位置h(回転軸の回転位置に対応した軸方向送り位置、以下モータ位置と称する)と、を記憶装置26に記憶する。なお、測定時に、電極12,14の間に被溶接部材1等の介在物を挟むか否かは任意である。次いで、上記とは異なる適当なモータ発生力F′を加えたときの加圧力検出器17の出力値である加圧力p′と、エンコーダ19を用いて検出したモータ位置h′と、をさらに記憶装置26に記憶する。こうして加圧力とモータ位置との組のデータを少なくとも2点以上取得する。
【0038】
ここで、加圧力を付加することによるガンアーム11の撓みは、モータ位置の変化となって現れることになる。したがって、取得した組のデータのそれぞれの点でのモータ位置の変化量すなわちガンアーム11の撓み量を、加圧力の変化量で除算することにより、ガンアーム11の加圧力に関する剛性係数k1を求めることができる。
【0039】
このようにすれば、特に新たな構成を付加することなく、容易に加圧力に関する剛性係数k1を求めることができる利点が大きい。しかも、各種の溶接ガンに対して共通して適用することができ、また、適宜、加圧力に関する剛性係数k1のチェックおよび修正を行うことも容易となる。
【0040】
例えば加圧力とモータ位置との組のデータが、(p,h)、(p′,h′)の2点の場合は、k1=(h′−h)/(p′−p)となる。
【0041】
図5に示すように、多数の点のデータを取得する場合には、回帰直線Aを求めてその傾きを係数k1とすることができる。なお、溶接ガンの剛性が低い場合は、図5において傾きの大きい回帰直線Bとなり、剛性が高い場合は、傾きの小さい回帰直線Cとなる。
【0042】
次に、溶接装置における電極間移動量の具体的な検出方法について、図6,7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0043】
本実施形態では、溶接作業を行う前に、予め、ガンアーム11の加圧力に関する剛性係数k1を求める。
【0044】
図6に示すように、CPU22は、モータ18を動作させ、可動電極12を加圧方向、つまり電極14に近接する方向に低速移動させる(Sll)。電極12が被溶接部材1を加圧する位置に到達すると(S12)、溶接ガンの許容最大加圧力の範囲内で任意に決定された、一の加圧力を設定する(S13)。なお、ここで設定される加圧力は、実際には、例えばモータ18のトルク値によって管理されるものである。
【0045】
CPU22は、設定された加圧力を目標に、モータ18を動作させて加圧を行う(S14)。設定された加圧力に到達した時点で(S15)、CPU22は、エンコーダ19を用いて検出した可動電極12の軸方向の位置データを記憶装置26に記憶し(S16)、また、ガンアーム11に組み込まれた加圧力検出器17の出力データ(実発生加圧力)を記憶装置26に記憶する(S17)。
【0046】
S13〜S17の動作が少なくとも2回以上繰り返され、加圧力およびモー夕位置、すなわち加圧力および溶接ガンの撓み量の組のデータの計測がすべて完了すると(S18)、図5に示したような、加圧力と溶接ガンの撓み量の回帰直線の算出が行われる(S19)。そして、回帰直線の傾きから、ガンアーム11の加圧力に関する剛性係数k1を算出する(S20)。
【0047】
次いで、溶接作業に入る。図示しないロボットアームを動かして溶接ガン10を被溶接部材1の溶接箇所に移動させた後、CPU22は、モータ18を動作させ、可動電極12を加圧方向、つまり電極14に近接する方向に低速移動させる(S31)。電極12が被溶接部材1を加圧する位置に到達すると(S32)、CPU22は、溶接条件として予め設定された溶接加圧力を目標に、モータ18を動作させて加圧を行う。溶接加圧力に到達した時点で(S34)、CPU22は、エンコーダ19を用いて検出した可動電極12の軸方向の位置データh0、およびガンアーム11に組み込まれた加圧力検出器17の出力データ(実発生加圧力)p0を記憶装置26に記憶する(S35)。
【0048】
そして、初回測定としてn=1を入力した後(S36)、溶接条件として設定された溶接電流にて通電を開始する(S37)。CPU22は、エンコーダ19を用いて検出した可動電極12の軸方向の位置データhnを記憶装置26に記憶し(S38)、通電開始前からの可動電極12の移動量Hnhを、Hnh=hn−h0の式により算出する。また、ガンアーム11に組み込まれた加圧力検出器17の出力データpnを記憶装置26に記憶する(S40)。
【0049】
次いで、図6により求められたガンアーム11の加圧力に関する剛性係数k1を用いて、通電開始前からの溶接ガンの撓み量Hnpを、Hnp=(pn−P0)×k1の式により算出する(S41)。真の溶接電極間移動量Hnは、Hn=Hnh+Hnpにより算出される(S42)。上記したS38〜S42の動作が繰り返され、電極間移動量Hnの値は、n=1、2、…と所定時間間隔で得られる(S45)。そして、予め設定された通電時間が完了したと判断されると(S43)、通電が停止される(S44)。
【0050】
図14は、図7の検出方法で得られた溶接電極間移動量の時間的変化の一例を示す図である。
【0051】
図14に示すように、モータ位置hだけでは真の溶接電極間移動量は得られず、加圧力pに溶接ガンの加圧力に関する剛性係数k1を乗じて得られる撓み量pk1をモータ位置hに加算することによって初めて、真の溶接電極間移動量Hを得ることができることがわかる。そして、真の溶接電極間移動量Hのグラフの例えば最大値や傾き、あるいは収縮による変化量などから、ナゲットの形成具合を把達し、結果として、溶接品質の良否判定を行うことができる。
【0052】
このように本実施形態によれば、溶接中の溶接電極間移動量を正確に検出することにより、ナゲットの形成具合を適確に把握して、溶接品質の良否判定の精度を向上させることができる。
【0053】
次に、添付した図面の図8〜図14を参照して、本発明の第二の実施形態を説明する。
【0054】
図8は、図1に示す溶接装置の加圧力検出器17に代えて、歪み量検出器7を設けた場合の概略を示すブロック構成図で、図1と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
溶接ガン10は、ガンアーム11、可動側電極12および固定側電極14、電極駆動手段としてのサーボモータ18(以下、単にモータと記す)、および駆動部移動量検出手段としてのエンコーダ19を有しており、この溶接ガン10は、ロボットアームの先端などに取り付けられる。また、この溶接ガン10は制御装置20に接続され、予め記憶装置26に記憶されている溶接プログラムに従って、CPU22にてモータ18に可動側電極12の加圧ないし開放指令を出力し、溶接に必要なモータのトルクの制御を行う等は図1と同様であるので、図示及び詳細説明を省略する。
【0056】
モータ18の駆動部としての図示しない回転軸は、送り捩子15に連結されている。この送り捩子15は、可動側電極12を支持している支持部材16に螺合している。溶接動作時においては、モータ18の回転軸の回転が送り捩子15に伝達される。そして、送り捩子15が回転することにより、支持部材16が下方に移動して、可動側電極12が被溶接部材1を所定の加圧力で加圧する。
【0057】
そして、電極12,14から被溶接部材1に加圧力が付加される際に、溶接ガン10の歪み量を検出する歪み量検出手段としての歪み量検出器7が、電極が取り付けられたガンアーム11に設けられている。具体的には、図8に示すように、歪み量検出器7は、可動側電極12を支持している支持部材16に設けられている。
【0058】
但し、歪み量検出器7は、電極間に発生する加圧力により生じる歪み量を検出できる部位であれば、ガンアーム11の任意の部位に設けることが可能であり、例えば点線で示すようにガンアーム11に設けてもよい。また、歪み量検出器7としては、例えば歪みセンサが使用されるが、具体的にはストレインゲージより得られる歪み量を直接電気信号として出力する方式や、圧電素子を積層する等により歪み量を電気信号として出力する方式等があり、これら歪みセンサ自体は公知の技術でもあるので、詳細説明を省略する。特に、第二の実施の形態の歪み量検出器7では、ガンアーム11等に貼り付けて歪み量を直接検出するものであるので、加圧力検出器17に比して装着性が良好で構造も簡素である。
【0059】
そして、歪み量検出器7からの信号は、CPU22に伝達される。CPU22においては、被溶接部材1に付加される加圧力は、溶接中の電極間移動量の算出に利用される。
【0060】
溶接装置による溶接作業は、概略以下のように行われる。まず、被溶接部材1に、その上下方向から電極12,14が所定の溶接加圧力で圧接する。被溶接部材1が圧接された状態で、両電極12,14に、CPU22の制御により図示しない電源から溶接電流が供給されて、溶接が開殆される。溶接が開始されると被溶接部材1における溶接点では、ナゲットの形成が始まり、部材が溶融して熱膨張する。このときナゲットの膨張による力が溶接加圧力より強ければ電極12を押し戻し、モータ18が逆回転することになる。その後電極12、14への通電を止めるとナゲットは収縮する。この膨張・収縮が一定時間(溶接時間)の間行われ、適宜なナゲットの形成が行われて、溶接終了となる。この溶接時におけるナゲットの膨張や収縮による電極12の移動量は、モータ18の回転軸の回転量としてエンコーダ19により計測されている。
【0061】
ところで、ガンアーム11は、電極12が被溶接部材1に圧接し、モータ18のトルクが強くなると、その剛性に応じて撓みが生じるが、電極12の加圧中はその加圧力と撓みとの釣り合いがとれた状態で静止する。この状態で溶接を開始すると、被溶接部材1に形成されるナゲットの熱膨張により一瞬、ガンアーム11の撓み量が増加する。このとき、その加圧力と撓みとの釣り合いが不均衡となり、この釣り合いが平衡するまで電極12が押し戻され、電極12の変位量がエンコーダ19によって計測される。
【0062】
したがって、エンコーダ19によって計測される値は、ナゲットの膨張・収縮量それ自体ではなく、あくまで電極12の移動量のみをモータの回転軸の回転量として計測したものである。したがって、これだけでは、ナゲットの膨張および/または収縮により一対の電極12,14が相互に離間および/または近接する方向に移動させられる量である溶接電極間移動量を、正確に検出することはできない。本発明は、かかる課題を解決する手段を提供するものである。
【0063】
図9は、溶接電極間移動量を検出する方法を説明するための模式図、図10は、溶接電極間移動量を検出する方法を示す制御ブロック図、図11は溶接ガンの歪み量に関する剛性係数を求める方法を説明するための模式図である。
【0064】
図9,10に示すように、本実施形態では、モータ18の駆動部の電極移動方向についての移動量h(回転軸の回転量に対応する軸方向の送り量)と、電極12,14から被溶接部材1に付加される加圧力により生じるガンアーム11の歪み量Δxに関する剛性に対応した係数(以下、歪み量に関する剛性係数k2と称する)を乗じて得られる撓み量Δxk2と、を加算することにより溶接電極間移動量Hを導出する(H=h+Δxk2)。ここで、歪み量に関する剛性係数k2は所定の加圧力により生じる単位歪み量に対する溶接ガンの電極移動方向の撓み量であって、この剛性が低いほど係数は大きくなり、剛性が高いほど係数は小さくなる。
【0065】
すなわち、モータ18に内蔵されたサーボモータ位置検出器であるエンコーダ19を用いて、溶接中のナゲット2の熱膨張・収縮によるモータ18の駆動部の電極移動方向についての移動量Δhを検出すると共に、エンコーダ19では出力されないナゲット2の熱膨張・収縮によるガンアーム11の撓み量Δxk2を求め、両者を加算することにより真の溶接電極間移動量、すなわちナゲットの膨張・収縮により一対の電極12,14が相互に離間・近接する方向に移動させられる量を導き出すようにしている。
【0066】
ガンアーム11の撓み量Δxk2は、歪み量検出器7の出力に、歪み量に関する剛性係数k2を乗じて求めることができる。ここで、歪み量検出器7は電極12,14が締結されるガンアーム11に設けられているため、例えば電極12,14の駆動手段としてのモータ18の出力値を利用するのに比べ、発生加圧力の伝達経路に存在する機械的なロスによる影響を受けない。したがって、電極12,14から被溶接部材1に付加される加圧力により生じる歪み量をより正確に検出することができ、より高精度にガンアーム11の歪み量に関する剛性係数k2を算出することができる。
【0067】
図10,11に示すように、歪み量に基づき求めた溶接ガンの歪み量に関する剛性係数k2は、一対の電極12,14を相互に近接させて少なくとも2種類以上の加圧力を生じさせたときの歪み量と、当該歪み量とモータ18の回転軸の回転量との関係、に基づいて算出される。
【0068】
すなわち、歪み量に関する剛性係数k2を算出する場合、まず予め、溶接ガン10のモータ18により任意のモータ発生力Fを加え(このとき電極12,14に加わる加圧力はP0)、ガンアーム11に組み込んだ歪み量検出器7より歪み量Δx0が出力され、この出力値Δx0と、エンコーダ19を用いて検出したモータ18の駆動部の電極移動方向についての位置h(回転軸の回転位置に対応した軸方向送り位置、以下モータ位置と称する)と、を記憶装置26に記憶する。
【0069】
なお、測定時に、電極12,14の間に被溶接部材1等の介在物を挟むか否かは任意である。次いで、上記とは異なる適当なモータ発生力F′を加え(このとき電極12,14に加わる加圧力はpn)、前記歪み量検出器7より出力される歪み量Δxnと、エンコーダ19を用いて検出したモータ位置h′と、をさらに記憶装置26に記憶する。こうして加圧力とモータ位置との組のデータを少なくとも2点以上取得する。
【0070】
ここで、加圧力を付加することによるガンアーム11の撓みは、モータ位置の変化となって現れることになる。したがって、取得した組のデータのそれぞれの点でのモータ位置の変化量すなわちガンアーム11の撓み量を、歪み量の変化量で除算することにより、ガンアーム11の剛性係数k2を求めることができる。
【0071】
このようにすれば、特に新たな構成を付加することなく、容易に歪み量に関する剛性係数k2を求めることができる利点が大きい。しかも、各種の溶接ガンに対して共通して適用することができ、また、適宜、歪み量に関する剛性係数k2のチェックおよび修正を行うことも容易となる。
【0072】
例えば歪み量とモータ位置との組のデータが、(Δx0,h)、(Δxn,h′)の2点の場合は、k2=(h′−h)/(Δxn−Δx0)となる。
【0073】
このとき、多数の点のデータを取得する場合には、最小二乗法により回帰直線を求めてその傾きを係数k2とすることができる。この回帰式の導出方法としては、まず溶接ガン10のモータ18により任意の加圧力を加え、そのときの歪み量検出器7の出力値Δx0とモータ18の位置h0を記憶装置に記憶する。次に前回とは異なる任意の加圧力を加え、そのときの歪み量検出器7の出力値Δx1とモータ18の位置h1を記憶装置26に記憶する。同様にして、このモータ位置と歪み量を最低2点以上(Δx0〜Δxn、h0〜hn)を取得し、次にそれぞれの点の歪み量の変化量と電極移動方向変化量から最小二乗法を用いて回帰式を導出することができるが、最小二乗法等は公知であるので、詳述は省略する。
【0074】
次に、溶接装置における電極間移動量の具体的な検出方法について、図12,13に示すフローチャートを参照して説明する。
【0075】
本実施形態では、溶接作業を行う前に、予め、ガンアーム11の歪み量に関する剛性係数k2を求める。
【0076】
図12に示すように、CPU22は、モータ18を動作させ、可動電極12を加圧方向、つまり電極14に近接する方向に低速移動させる(Sll)。電極12が被溶接部材1を加圧する位置に到達すると(S12)、溶接ガンの許容最大加圧力の範囲内で任意に決定された、一の加圧力を設定する(S13)。なお、ここで設定される加圧力は、実際には、例えばモータ18のトルク値によって管理されるものである。
【0077】
CPU22は、設定された加圧力を目標に、モータ18を動作させて加圧を行う(S14)。設定された加圧力に到達した時点で(S15)、CPU22は、エンコーダ19を用いて検出した可動電極12の軸方向の位置データを記憶装置26に記憶し(S16)、また、ガンアーム11に組み込まれた歪み量検出器7の出力データ(実発生歪み量)を記憶装置26に記憶する(S17)。
【0078】
S13〜S17の動作が少なくとも2回以上繰り返され、歪み量およびモー夕位置、すなわち歪み量および溶接ガンの撓み量の組のデータの計測がすべて完了すると(S18)、回帰直線の算出が行われる(S19)。そして、回帰直線の傾きから、ガンアーム11の歪み量に関する剛性係数k2を算出する(S20)。
【0079】
次いで、溶接作業に入る。図示しないロボットアームを動かして溶接ガン10を被溶接部材1の溶接箇所に移動させた後、CPU22は、モータ18を動作させ、可動電極12を加圧方向、つまり電極14に近接する方向に低速移動させる(S31)。電極12が被溶接部材1を加圧する位置に到達すると(S32)、CPU22は、溶接条件として予め設定された溶接加圧力を目標に、モータ18を動作させて加圧を行う。溶接加圧力に到達した時点で(S34)、CPU22は、エンコーダ19を用いて検出した可動電極12の軸方向の位置データh0、およびガンアーム11に組み込まれた歪み量検出器7の出力データ(実発生歪み量)x0を記憶装置26に記憶する(S35)。
【0080】
そして、初回測定としてn=1を入力した後(S36)、溶接条件として設定された溶接電流にて通電を開始する(S37)。CPU22は、エンコーダ19を用いて検出した可動電極12の軸方向の位置データhnを記憶装置26に記憶し(S38)、通電開始前からの可動電極12の移動量Hnhを、Hnh=hn−h0の式により算出する。また、ガンアーム11に組み込まれた歪み量検出器7の出力データXnを記憶装置26に記憶する(S40)。
【0081】
次いで、図12により求められたガンアーム11の剛性係数k2を用いて、通電開始前からの溶接ガンの撓み量Hnxを、Hnx=(xn−x0)×k2の式により算出する(S41)。真の溶接電極間移動量Hnは、Hn=Hnh+Hnxにより算出される(S42)。上記したS38〜S42の動作が繰り返され、電極間移動量Hnの値は、n=1、2、…と所定時間間隔で得られる(S45)。そして、予め設定された通電時間が完了したと判断されると(S43)、通電が停止される(S44)。
【0082】
ここで図13の検出方法で得られた溶接電極間移動量の時間的変化の例としては、図14に示す通りである。
【0083】
図14に示すように、モータ位置hだけでは真の溶接電極間移動量は得られず、歪み量Δxに溶接ガンの歪み量に関する剛性係数k2を乗じて得られる撓み量Δxk2をモータ位置hに加算することによって初めて、真の溶接電極間移動量Hを得ることができることがわかる。そして、真の溶接電極間移動量Hのグラフの例えば最大値や傾き、あるいは収縮による変化量などから、ナゲットの形成具合を把達し、結果として、溶接品質の良否判定を行うことができる。
【0084】
なお、図8に示すように、歪み量検出器7を溶接ガン10の可動側電極12側にある支持部材16に設けた例を示したが、例えば点線で示すように、固定側電極14側のガンアーム11に設けてもよく、このようにガンアーム11に設けた場合には、加圧力によりガンアーム11が歪む量は大きくなることから、より大きな出力値が得られ、正確な歪み量が検出できる。すなわち、前記の溶接ガン10はCガンタイプと称し、固定電極は被溶接部材との干渉を避ける為大きくまわりこむようなガンアーム11の構造を有する。この為、固定電極側にある大きく湾曲したガンアーム11では小さな加圧力で大きな歪み量が得られる。
【0085】
このように本実施形態によれば、溶接中の溶接電極間移動量を正確に検出することにより、ナゲットの形成具合を適確に把握して、溶接品質の良否判定の精度を向上させることができる。
【0086】
図15,16は更に他の実施形態を示すブロック図であるが、第一の実施の形態及び第2の実施の形態では、溶接ガン10の形態としてCガンタイプについて説明したが、その他のロボット溶接ガンの形態として加圧力検出器17と歪み量検出器7のいずれを選択するのが好適かを示したものである。
【0087】
ここで、図15は一つの電極で被溶接部材1の片面から押し付けるスタッドガンタイプで、図16は1対の電極でワークを挟み込むXガンタイプを示す。
【0088】
図15に示すスタッドガンタイプの溶接ガン30は、アーム35a〜35d及び関節31a〜31fを備える6自由度ロボットの関節31fに設けた支持部33に取り付けられている(なお、関節31fにアームを設け、このアーム先端に支持部33を取り付けてもよい)。そして、支持部33には、電極ホルダ36を介して可動側電極12が設けられ、電極駆動手段としてのサーボモータ18(以下、単にモータと記す)、および駆動部移動量検出手段としてのエンコーダ19を有している。一方、可動側電極12と対向する位置には、固定部34に固定側電極14が設けてある。
【0089】
なお、溶接ガン30は図外の制御装置20に接続されるのであるが、前述の実施形態と同様なので、説明は省略する。
【0090】
モータ18の駆動部としての図示しない回転軸は、同じく図示しない送り捩子に連結され、この送り捩子が回転することにより、電極ホルダ36が下方に移動して、可動側電極12が被溶接部材1を所定の加圧力Wで加圧する。
【0091】
エンコーダ19は、モータ18の回転軸に取り付けられており、モータ18の駆動部の移動量(回転軸の回転量)を計測する。エンコーダ19からの信号は、図外のCPU22に伝達され、溶接中の溶接電極間移動量の算出に利用され、また、CPU22は、予め記憶装置26に記憶されている溶接プログラムに従つて、モータ18に可動側電極12の加圧ないし開放指令を出力し、溶接に必要なモータのトルクの制御を行う。さらに、CPU22は、電極に印加する電流の制御なども行っているのであるが、前述したと同様なので説明は省略する。
【0092】
本実施形態では特に、電極12,14から被溶接部材1に付加される加圧力を検出する加圧力検出器17が、前記電極ホルダ36に設けられている。
なお、加圧力検出器17は図1において説明したものと同様の圧力センサで構成される。
【0093】
この例で示すスタッドガンタイプでは、加圧力が発生する力点と電極の力点が同軸、あるいは近傍に位置し、長尺なガンアームを持たないため、発生する歪量は微少なものとなる。一方センサの装着性の面では、スタッドガンタイプはガン構造が電極ホルダ36を介して電極と結合するので、加圧力検出器17は容易に取り付けできる。そのため、このスタッドガンタイプでは加圧力検出器17を用いるのが好適である。
【0094】
図16に示すXガンタイプの溶接ガン40は、アーム45a〜45d及び関節41a〜41fを備える6自由度ロボットの関節41fに図外の支持部を介して取り付けられている(なお、関節41fにアームを設け、このアーム先端に支持部を取り付けてもよい)。そして、図外の支持部には、電極駆動手段としてのサーボモータ48(以下、単にモータと記す)、および駆動部移動量検出手段としての図外のエンコーダを有している。また、モータ48の出力部には、一対のガンアーム41,41が設けてあり、図外の駆動伝達機構により一対のガンアーム41,41が開閉駆動されるようになっているが、公知の技術であるので図示及び説明は省略する。また、溶接ガン40の一対のガンアーム41,41の先端部には、それぞれ可動側電極12,12が設けてあり、一対のガンアーム41が閉動作することにより、可動側電極12,12が被溶接部材1を狭持して所定の加圧力Wで加圧する。
【0095】
なお、溶接ガン30は図外の制御装置20に接続されるのであるが、前述の実施形態と同様なので、説明は省略する。
【0096】
本実施形態では特に、可動側電極12,12を設けた一対のガンアーム41,41のそれぞれに、被溶接部材1に所定の加圧力が付与されたとき生じる歪み量を検出する歪み量検出器7,7が設けられている。
【0097】
なお、歪み量検出器7は図8に示す第二の実施の形態として説明したものと同様の歪みセンサで構成される。
【0098】
この例で示すXガンタイプは、可動電極側双方にガンアーム41,41を持ち、加圧力が発生する力点と電極の力点の軸が長いため、両ガンアーム41,41に発生する歪量は大きくなる。一方、センサの装着性の面では、加圧力検出器ではガンアーム41,41の一部として組み込み、直接的に加圧力を受けなければならず、溶接電流の電路となるガンアーム41,41への取付けは構造を複雑にせざるを得ない。これに対し、歪み量検出器7の場合はガンアーム41,41の側面に貼り付けるだけでよいので、貼り付けは容易である。そのため、このタイプでは歪み量検出器7を用いるのが好適である。
【0099】
なお、図1、図8に示すCガンタイプでは、前述したように可動電極側に圧力センサを設けると取付けが容易であるが歪量は微少となるため、可動側電極にセンサを設ける場合には、加圧力検出器が好適である。
【0100】
一方、固定側電極では長尺で大きく湾曲したガンアーム11があるので、小さな加圧力で大きな歪み量が得られるので、固定側電極にセンサを設ける場合には、歪み量検出器を設けるのが好適である。また歪み量検出器は、直接ガンアーム11に貼り付けて歪み量を検出するものであるので、貼り付け位置の自由度が高く、装着も容易で装置も簡素である。
【0101】
以上本発明を適用した実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、電極駆動手段としてサーボモータを利用した溶接装置を示したが、これに代えてオイルシリンダやエアシリンダを用いたものであってもよく、このような場合、電極駆動手段の駆動部の移動量を検出する手段としては、例えばピストンの出、戻り量を計測するゲージが用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶接装置の概略を示すブロック構成図である。
【図2】溶接電極間移動量を検出する方法を説明するための模式図である。
【図3】溶接電極間移動量を検出する方法を示す制御ブロック図である。
【図4】溶接ガンの剛性係数を求める方法を説明するための模式図である。
【図5】加圧力と溶接ガンの撓み量との関係を示す図である。
【図6】溶接ガンの剛性係数を求める方法を示すフローチャートである。
【図7】溶接電極間移動量の具体的な検出方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る溶接装置の他の実施形態の概略を示すブロック構成図である。
【図9】溶接電極間移動量を検出する方法を説明するための模式図である。
【図10】溶接電極間移動量を検出する方法を示す制御ブロック図である。
【図11】溶接ガンの剛性係数を求める方法を説明するための模式図である。
【図12】溶接ガンの剛性係数を求める方法を示すフローチャートである。
【図13】溶接電極間移動量の具体的な検出方法を示すフローチャートである。
【図14】図7または図13の検出方法で得られた溶接電極間移動量の時間的変化の一例を示すである。
【図15】本発明に係る溶接装置の他の実施形態の概略を示すブロック構成図である。
【図16】本発明に係る溶接装置の他の実施形態の概略を示すブロック構成図である。
【符号の説明】
1・・・被溶接部材、
2・・・ナゲット、
7・・・歪み量検出器(歪み量検出手段)、
10・・・溶接ガン、
11・・・ガンアーム、
12、14・・・電極、
17・・・加圧力検出器(加圧力検出手段)、
18・・・サーボモータ(電極駆動手段)、
19・・・エンコーダ(駆動部移動量検出手段)、
20・・・制御装置、
41・・・ガンアーム、
k1・・・加圧力に関する剛性係数、
k2・・・歪み量に関する剛性係数。

Claims (10)

  1. 溶接ガンに取り付けられた一対の電極を、当該一対の電極の少なくとも一方に連結された駆動部を有する電極駆動手段の当該駆動部を移動させることによって、相互に近接する方向に移動させ、前記一対の電極により被溶接部材を加圧し通電して溶接を行う際に、ナゲットの膨張・収縮により前記一対の電極が相互に離間・近接する方向に移動させられる溶接電極間移動量を検出する溶接電極間移動量検出方法であって、
    溶接中のナゲットの膨張・収縮による前記駆動部の電極移動方向についての移動量と、前記電極から被溶接部材に付加される加圧力による前記溶接ガンの撓み量と、を加算することによって、前記溶接電極間移動量を導出することを特徴とする溶接電極間移動量検出方法。
  2. 前記撓み量は、予め求めた前記溶接ガンの加圧力に関する剛性係数と、前記加圧力とを乗じて得られることを特徴とする請求項1に記載の溶接電極間移動量検出方法。
  3. 前記加圧力は、前記溶接ガンに設けられた加圧力検出手段により検出されることを特徴とする請求項2に記載の溶接電極間移動量検出方法。
  4. 前記溶接ガンの加圧力に関する剛性係数は、前記一対の電極を相互に近接させて少なくとも2種類以上の加圧力を生じさせたときの、当該加圧力と前記駆動部の電極移動方向の移動量との関係に基づいて算出されることを特徴とする請求項2または3に記載の溶接電極間移動量検出方法。
  5. 前記撓み量は、予め求めた前記溶接ガンの歪み量に関する剛性係数と、前記溶接ガンの歪み量とを乗じて得られることを特徴とする請求項1に記載の溶接電極間移動量検出方法。
  6. 前記歪み量は、前記溶接ガンに設けられた歪み量検出手段により検出されることを特徴とする請求項5に記載の溶接電極間移動量検出方法。
  7. 前記溶接ガンの歪み量に関する剛性係数は、前記一対の電極を相互に近接させて少なくとも2種類以上の加圧力を生じさせたときの歪み量と、前記駆動部の電極移動方向の移動量との関係に基づいて算出されることを特徴とする請求項5または6に記載の溶接電極間移動量検出方法。
  8. 溶接ガンに取り付けられた一対の電極を、当該一対の電極の少なくとも一方に連結された駆動部を有する電極駆動手段の当該駆動部を移動させることによって、相互に近接する方向に移動させ、前記一対の電極により被溶接部材を加圧し通電して溶接を行う際に、ナゲットの膨張・収縮により前記一対の電極が相互に離間・近接する方向に移動させられる溶接電極間移動量を検出する溶接電極間移動量検出装置であって、
    溶接中のナゲットの膨張・収縮による前記駆動部の電極移動方向についての移動量を検出する駆動部移動量検出手段と、
    前記駆動部移動量検出手段により検出される移動量と前記電極から被溶接部材に付加される加圧力による前記溶接ガンの撓み量とを加算することによって、前記溶接電極間移動量を導出する制御手段と、
    を有することを特徴とする溶接電極間移動量検出装置。
  9. 前記電極から被溶接部材に付加される加圧力を検出する加圧力検出手段を有し、前記撓み量は、予め求めた前記溶接ガンの加圧力に関する剛性係数と前記加圧力検出手段により検出される加圧力とを乗じて得られることを特徴とする請求項8に記載の溶接電極間移動量検出装置。
  10. 前記電極から被溶接部材に加圧力が付加されたときの溶接ガンの歪み量を検出する歪み量検出手段を有し、前記撓み量は、予め求めた前記溶接ガンの歪み量に関する剛性係数と前記歪み量検出手段により検出される歪み量とを乗じて得られることを特徴とする請求項8に記載の溶接電極間移動量検出装置。
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