JP3593482B2 - WWドメインを有するヒト核蛋白質とそれをコ−ドするcDNA - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、ヒト細胞の核に存在し、WWドメインを有する新規蛋白質と、この蛋白質をコードしているcDNAおよびこの蛋白質に対する抗体に関するものである。この発明の蛋白質および抗体は、各種疾患の診断および治療に有用であり、この発明のヒトcDNAは、遺伝子診断用プローブや遺伝子治療用遺伝子源として有用である。また、cDNAはこの発明の蛋白質を大量生産するための遺伝子源として用いることが出来る。
【0002】
【従来技術】
核蛋白質とは、細胞核の中で機能している蛋白質の総称である。核内には生物の設計図であるゲノムDNAが存在しており、核蛋白質はこれらのゲノムDNAの複製、転写調節などに関与している。核蛋白質の中で機能が明らかになっている代表的なものは、転写因子、スプライシング因子、核内レセプター、細胞周期調節因子、癌抑制因子などがある。これらの因子は、発生・分化などの生命現象のみならず、癌等の疾患とも密接に関係している(村松正寛編、NEW メディカルサイエンス、「転写のしくみと疾患」)。したがって、これらの核蛋白質は、特定遺伝子の転写・翻訳を調節する低分子医薬品を開発するためのタ−ゲット蛋白質としての可能性を秘めており、できるだけ多くの核蛋白質を得ることが望まれている。
【0003】
WWドメインとはSH2、SH3、PH、PTBドメインと類似した蛋白質−蛋白質相互作用モチーフの新しいファミリーである。このドメインは、2個の保存されたトリプトファンを持つ約40アミノ酸残基からなり、SH3ドメインと同様にプロリンリッチなアミノ酸配列に結合することが知られている(H. I. Chen and M. Sudol. (1995) Proc. Natl. Sci. 92, 7819−7823)。WWドメインとそのリガンドが結合したもののX線結晶解析の結果、立体構造はSH3と異なることが判明している(M. J. Macias et al. (1996) Nature, 382, 646−649)。他のプロテインモチーフと同様に細胞骨格系(P. Bork and M. Sudol (1994) TIBS, 19, 531−533)、情報伝達系に関与する蛋白質(H. I. Chen and M. Sudol. (1995) Proc. Natl.Sci.92, 7819−7823)、蛋白分解系のユビキチン−プロテインリガーゼ(O. Staub et al. (1996) EMBO J. 15, 2371−2380)、転写活性化因子(P. Bork and M. Sudol (1994) TIBS,19, 531−533)などに含まれており、細胞内情報伝達系において重要な役割を果たしていると考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この出願は、ヒト細胞の核に存在する新規蛋白質、この蛋白質をコードするcDNAおよびこのヒト核蛋白質に対する抗体を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願は、前記の課題を解決するものとして、以下(1)〜(7)の発明を提供する。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列を含むヒト核蛋白質。
(2) 発明(1)の蛋白質をコードするDNA断片。
(3) 発明(1)の蛋白質をコードするヒトcDNAであって、配列番号2の塩基配列を含むDNA断片。
(4) 配列番号2の塩基配列からなる、発明(3)のDNA断片。
(5) 発明(2)から(4)のいずれかのDNA断片をインビトロ翻訳あるいは宿主細胞内で発現しうる発現ベクター。
(6) 発明(5)の発現ベクターによる形質転換体であって、発明(1)のヒト核蛋白質を生産しうる形質転換細胞。
(7) 発明(1)のヒト核蛋白質に対する抗体。
【0006】
【発明の実施の形態】
この出願の前記発明(1)の蛋白質は、ヒトの臓器、細胞株などから単離する方法、配列番号1のアミノ酸配列に基づき化学合成によってペプチドを調製する方法、あるいは配列番号1のアミノ酸配列ををコードするDNAを用いて組換えDNA技術で生産する方法などにより取得することができるが、組換えDNA技術で取得する方法が好ましく用いられる。例えば、発明(3)または(4)のcDNAを有するベクターからインビトロ転写によってRNAを調製し、これを鋳型としてインビトロ翻訳を行なうことによりインビトロで蛋白質を発現できる。また翻訳領域を公知の方法により適当な発現ベクターに組換えれば、大腸菌、枯草菌等の原核細胞や、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞で、cDNAがコードしている蛋白質を大量に発現させることができる。
【0007】
発明(1)の蛋白質をインビトロ翻訳でDNAを発現させて生産させる場合には、このcDNAの翻訳領域を、RNAポリメラーゼプロモーターを有するベクターに組換え(発明(5))、プロモーターに対応するRNAポリメラーゼを含む、ウサギ網状赤血球溶解物や小麦胚芽抽出物などのインビトロ翻訳系に添加すれば、発明(1)の蛋白質をインビトロで生産することができる。RNAポリメラーゼプロモーターとしては、T7、T3、SP6などが例示できる。これらのRNAポリメラーゼプロモーターを含むベクターとしては、pKA1、pCDM8、pT3/T7 18、pT7/3 19、pBluescript IIなどが例示できる。
【0008】
発明(1)の蛋白質を、大腸菌などの微生物でDNAを発現させて生産させる場合には、微生物中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、cDNAクローニング部位、ターミネーター等を有する発現ベクターに、発明(3)のcDNAの翻訳領域を組換えた発現ベクター(発明(5))を作成し、この発現ベクターで宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体(発明(6))を培養すれば、このcDNAがコードしている蛋白質を微生物内で大量生産することができる。この際、任意の翻訳領域の前後に開始コドンと停止コドンを付加して発現させれば、任意の領域を含む蛋白質断片を得ることができる。あるいは、他の蛋白質との融合蛋白質として発現させることもできる。この融合蛋白質を適当なプロテアーゼで切断することによってこのcDNAがコードする蛋白質部分のみを取得することもできる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescript II、pET発現システム、pGEX発現システムなどが例示できる。
【0009】
発明(1)の蛋白質を、真核細胞でDNAを発現させて生産させる場合には、発明(3)のcDNAの翻訳領域を、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターに組換え(発明(5))、真核細胞内に導入すれば(発明(6))、発明(1)の蛋白質を真核細胞内で生産することができる。発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK−CMV、pBK−RSV、EBVベクター、pRS、pYES2などが例示できる。また、pIND/V5−His、pFLAG−CMV−2、pEGFP−N1、pEGFP−C1などを発現ベクタ−として用いれば、Hisタグ、FLAGタグ、GFPなど各種タグを付加した融合蛋白質として発現させることもできる。真核細胞としては、サル腎臓細胞COS7、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHOなどの哺乳動物培養細胞、出芽酵母、分裂酵母、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞などが一般に用いられるが、発明(1)の蛋白質を発現できるものであれば、いかなる真核細胞でもよい。発現ベクターを真核細胞に導入するには、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法など公知の方法を用いることができる。
【0010】
発明(1)の蛋白質を原核細胞や真核細胞で発現させたのち、培養物から目的蛋白質を単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば、尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒沈殿法、透析、遠心分離、限外濾過、ゲル濾過、SDS−PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0011】
発明(1)の蛋白質には、配列番号1で表されるアミノ酸配列のいかなる部分アミノ酸配列を含むペプチド断片(5アミノ酸残基以上)も含まれる。これらのペプチド断片は抗体を作製するための抗原として用いることができる。また、発明(1)の蛋白質には、他の任意の蛋白質との融合蛋白質も含まれる。例えば、実施例に挙げたグルタチン−S−トランスフェラ−ゼ(GST)や緑色蛍光蛋白質(GFP)との融合蛋白質などが例示できる。
【0012】
発明(2)のDNA断片には、上記蛋白質をコードするすべてのDNAが含まれる。このDNAは、化学合成による方法、cDNAクローニングによる方法などを用いて取得することができる。
【0013】
発明(3)および(4)のDNA断片(cDNA)は、例えばヒト細胞由来cDNAライブラリーからクローン化することができる。cDNAはヒト細胞から抽出した ポリ(A)+RNAを鋳型として合成する。ヒト細胞としては、人体から手術などによって摘出されたものでも培養細胞でも良い。cDNAは、岡山−Berg法(Okayama, H. and Berg, P., (1982) Mol. Cell Biol. 2, 161−170)、Gubler−Hoffman法(Gubler, U. and Hoffman, (1983) J. Gene 25, 263−269)などいかなる方法を用いて合成してもよいが、完全長クローンを効率的に得るためには、実施例にあげたようなキャッピング法(Kato, S. et al.(1994) Gene, 150, 243−250)を用いることが望ましい。
【0014】
発明(3)のcDNAは、配列番号2で表される塩基配列を含むことを特徴とするものであり、例えば、配列番号3で表されるものは、2669bpからなる塩基配列を有し、2115bpのオープンリーディングフレーム(ORF)を有していた。このORFは、704アミノ酸残基からなる蛋白質をコードしていた。発明(3)または(4)のcDNAを大腸菌や動物培養細胞内で発現させると、約80kDaの蛋白質が得られた。この蛋白質はRNAポリメラ−ゼIIのC末端ドメインと結合することから、転写制御に関与していると考えられる。
【0015】
発明(1)の蛋白質は、どの組織でも発現しているので、配列番号2あるいは配列番号3に記載のcDNAの塩基配列に基づいて合成したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、ヒト細胞から作製したヒトcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、発明(3)または(4)のcDNAと同一のクローンを容易に得ることができる。あるいは、これらのオリゴヌクレオチドをプライマ−として、ポリメラ−ゼ連鎖反応(PCR)法を用いて、目的cDNAを合成することもできる。
【0016】
一般にヒト遺伝子は個体差による多型が頻繁に認められる。従って配列番号2あるいは配列番号3において、1または複数個のヌクレオチドの付加、欠失および/または他のヌクレオチドによる置換がなされているcDNAも発明(3)および(4)の範疇にはいる。
【0017】
同様に、これらの変更によって生じる、1または複数個のアミノ酸の付加、欠失および/または他のアミノ酸による置換がなされている蛋白質も、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質の活性を有する限り、発明(1)の範疇に入る。
【0018】
発明(3)または(4)のcDNAには、配列番号2あるいは3で表される塩基配列のいかなる部分塩基配列を含むcDNA断片(10bp以上)も含まれる。また、センス鎖およびアンチセンス鎖からなるDNA断片もこの範疇にはいる。これらのDNA断片は遺伝子診断用のプローブとして用いることができる。
【0019】
発明(7)の抗体は、発明(1)の蛋白質を抗原として用いて動物を免役した後、血清から得ることが出きる。抗原としては配列番号1のアミノ酸配列に基づき化学合成したペプチドや、真核細胞や原核細胞で発現させた蛋白質を用いることが出きる。あるいは、上記の真核細胞用発現ベクターを注射や遺伝子銃によって、動物の筋肉や皮膚に導入した後、血清を採取することによって作製することができる(例えば、特開平7−313187号公報の発明)。動物としては、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ニワトリなどが用いられる。免疫した動物の脾臓から採取したB細胞をミエロ−マと融合させてハイブリド−マを作製すれば、発明(1)の蛋白質に対するモノクロ−ナル抗体を産生することができる。
【0020】
【実施例】
次に実施例を示してこの出願の発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、DNAの組換えに関する基本的な操作および酵素反応は、文献(”Molecular Cloning. A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)に従った。制限酵素および各種修飾酵素は特に記載の無い場合宝酒造社製のものを用いた。各酵素反応の緩衝液組成、並びに反応条件は付属の説明書に従った。cDNA合成は文献(Kato, S. et al.(1994) Gene, 150, 243−250)に従った。
(1)cDNAクロ−ニング
ヒト完全長cDNAライブラリ−(WO97/03190記載)から選択したcDNAクロ−ンの大規模塩基配列決定の結果、クロ−ンHP03494を得た。このクロ−ンは、291bpの5’非翻訳領域、2115bpのORF、263bpの3’非翻訳領域からなる構造を有していた(配列番号3)。ORFは704アミノ酸残基からなる蛋白質をコードしていた。
【0021】
この蛋白質のアミノ酸配列(配列番号1)を用いてプロテインデータベースを検索したが、類似性を有する既知蛋白質はなかった。また、このcDNAの塩基配列を用いてGenBankを検索したところ、ESTの中に90%以上の相同性を有するもの(例えば、アクセション番号A1758365)が存在したが、部分配列なのでこの発明の蛋白質と同じ蛋白質をコ−ドしているかどうかは判定できない。
【0022】
モチ−フ配列検索を行ったところ、表1に示したように、43番目から78番目までの領域が、WWドメインと類似性を有していた。49番目と72番目のトリプトファン、75番目のプロリンが、これまで知られている全てのWWドメインに保存されているアミノ酸残基である。
【0023】
【表1】
【0024】
(2)ノ−ザンブロット
ヒト各組織ポリ(A)+RNAがブロットしてあるMulti tissue Northern Blot(Clontech社製)をmRNAソ−スとして用いた。プローブとして、完全長HP03494 cDNAのEcoRI−NotI断片を、ランダムプライマーラベリングキット(Pharmacia社製)により放射能ラベルして用いた。ノ−ザンブロットハイブリダイゼ−ションの条件はすべて、キットに付属のプロトコールに従った。心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、すい臓、脾臓、胸腺、前立腺、睾丸、卵巣、小腸、大腸、末梢血すべてに約3kbのハイブリダイゼ−ションバンドが得られ、この蛋白質はハウスキーピングなものであることが示唆された。
(3)インビトロ翻訳による蛋白質合成
この発明のcDNAを有するプラスミドベクターを用いて、TNTウサギ網状赤血球溶解物キット(プロメガ社製)によるインビトロ転写/翻訳を行なった。この際[35S]メチオニンを添加し、発現産物をラジオアイソトープでラベルした。いずれの反応もキットに付属のプロトコールに従って行なった。プラスミド2μgを、TNTウサギ網状赤血球溶解物12.5μl、緩衝液(キットに付属)0.5μl、アミノ酸混合液(メチオニンを含まない)2μl、[35S]メチオニン(アマーシャム社)2μl(0.35MBq/μl)、T7RNAポリメラーゼ0.5μl、RNasin 20Uを含む総量25μlの反応液中で30℃で90分間反応させた。反応液3μlにSDSサンプリングバッファー(125mMトリス塩酸緩衝液、pH 6.8、120mM 2−メルカプトエタノール、2%SDS溶液、0.025%ブロモフェノールブルー、20%グリセロール)2μlを加え、95℃3分間加熱処理した後、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた。オートラジオグラフィーを行ない、翻訳産物の分子量を求めた。その結果、このクロ−ンは、ORFから予想される分子量80,618とほぼ同じ80kDaの翻訳産物を生成した。
(4)大腸菌によるGST融合蛋白質の発現
EcoRI認識部位を付加した翻訳開始コドンから始まる26 merのセンスプライマー(配列番号4)とSalI認識部位を付加した停止コドンまでを含む26 merのアンチセンスプライマー(配列番号5)を用い、pHP03494を鋳型としてPCRにより翻訳領域を増幅した。PCR産物をEcoRIで消化し、pGEX−5X−1(Pharmacia社製)のEcoRI部位に挿入した。塩基配列を確認した後、宿主大腸菌BL21の形質転換を行った。LB培地中で37℃で5時間培養し、IPTGを最終濃度が0.4 mMになるように加え、さらに37℃で2.5時間培養した。菌体を遠心により分離し、溶解溶液(50 mM Tris−HCl (pH7.5), 1mM EDTA−1% Triton X−100 , 0.2% SDS, 0.2 mM PMSF)に溶かし、一度−80℃で凍結させ融解させた後、超音波破砕を行った。1000 x g で30分遠心し、上清にグルタチオンセファロース4Bを加え、4℃で1時間インキュベートした。ビーズを十分洗浄した後、溶出溶液(10 mM Tris−50 mM グルタチオン)で融合蛋白質を溶出した。その結果、分子量約110 kDaのGST−HP03494融合蛋白質を得た。
(5)抗体作製
上記の融合蛋白質を抗原として家兔に常法により免疫を行い抗血清を得た。抗血清はまず、40%飽和硫安沈殿画分をGSTアフィニティーカラムによりGST抗体を除いた。素通り画分をさらにGST−HP03494の抗原カラムにより精製した。
(6)ウェスタンブロット
ヒトフィブロサルコ−マ細胞株HT−1080の溶解物をSDS−PAGEにより分離し、PVDF膜ブロットした後、5%スキムミルクを含む0.05% Tween20−PBS(TPBS)で1時間室温でブロッキングし、抗体をTPBSで10000倍希釈したものと1時間インキュベートした。TPBSで3回洗浄し、さらにTPBSで10000 倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgGと1時間インキュベートした。TPBSで4回洗浄し、ECL試薬(Amersham 社製)により発光させて検出したところ、分子量80kDaのシグナルが得られた。この分子量はウサギ無細胞翻訳系による本蛋白質のインビトロ翻訳産物の分子量と一致していた。
(7)GFP融合蛋白質の発現
EcoRI認識部位を付加した翻訳開始コドンから始まる26 merのセンスプライマー(配列番号4)とSal I認識部位をを付加した停止コドンまでを含む26 merのアンチセンスプライマー(配列番号5)を用い、pHP03494を鋳型としてPCRにより翻訳領域を増幅した。PCR産物を EcoRI、Sal Iで消化し、GFP融合蛋白質発現用ベクタ−pEGFP−C2(Clontech社製)のEcoRI部位に挿入した。塩基配列を確認した後、得られたpEGFP−C2−HP03494をリポフェクション法によりHeLa細胞にトランスフェクトした。蛍光顕微鏡により観察したところpEGFP−C2をトランスフェクトした細胞では、細胞全体に蛍光が見られるのに対し、pEGFP−C2−HP03494では核のみに蛍光が見られた。この結果からHP03494は核に存在する蛋白質であることが示された。
(8)RNAポリメラ−ゼII C末端ドメイン(CTD)との結合
BamHI認識部位を付加した翻訳開始コドン から始まる33 merのセンスプライマー(配列番号6)とEcoRI認識部位を付加した停止コドンまでを含む33 merのアンチセンスプライマー(配列番号7)を用い、pHP03494を鋳型としてPCRによりWWドメインをコ−ドする翻訳領域を増幅した。PCR産物を BamHI、EcoRIで消化し、pGEX−5X−1(Pharmacia社製)のBamHI−EcoRI部位に挿入した。これを(4)と同様にして大腸菌内で発現させ、GSTとHP03494のWWドメインの融合蛋白質GST−HP03494WWを得、これをSDS−PAGEで分離した後、PVDF膜に転写し、32PラベルしたGST−CTDまたは、核抽出物によりリン酸化した32P−GST−pCTD(リン酸化体)(Hirose, Y and Manley, J. L. (1998) Nature, 395, 93−96)とインキュベートし、ファーウエスタン法(Kaelin, Jr.et al., (1992) Cell, 70, 351−364)により検出した。HP03494のWWドメインはリン酸化されたCTDとより強く結合することが示された。このことから、この発明の蛋白質は転写調節に関与していることが示唆された。
【0025】
【発明の効果】
この出願は、ヒト細胞の核に存在する新規蛋白質、この蛋白質をコードするDNA、この蛋白質をコードするヒトcDNA、およびこのヒト核蛋白質に対する抗体を提供する。この発明の蛋白質および抗体は、癌などの病態の診断および治療などに有用である。このDNAを用いることにより、この蛋白質を大量に発現することができる。この蛋白質と結合する低分子化合物をスクリ−ニングすることによる、新しい型の抗腫瘍剤等の医薬を探索することができる。
【0026】
【配列表】
Claims (7)
- WWドメインを有する配列番号1のアミノ酸配列を含み、リン酸化蛋白質と結合するヒト核蛋白質。
- 請求項1の蛋白質をコードするDNA断片。
- 請求項1の蛋白質をコードするヒトcDNAであって、配列番号2の塩基配列を含むDNA断片。
- 配列番号2の塩基配列からなる、請求項3のDNA断片。
- 請求項2から4のいずれかのDNA断片を保有し、請求項1のヒト核蛋白質をインビトロ翻訳あるいは宿主細胞内で発現しうる発現ベクター。
- 請求項5の発現ベクターを保有する形質転換体であって、請求項1のヒト核蛋白質を生産しうる形質転換細胞。
- 請求項1のヒト核蛋白質に対する抗体。
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