JP3593356B2 - 都市ガスの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、都市ガスの製造方法に関し、さらに詳しくは膜分離装置を用いて高カロリーの都市ガスを製造する方法に関する。
【0002】
都市ガスは、その原料を従来の石油系より、クリーンエネルギーであり、且つ長期に安定した価格で輸入できる液化天然ガス(LNG)に転換中である。すでに大都市では、大半で液化天然ガスに転換を終えており、今後は地方の中小都市でも転換が計画されている。
【0003】
一部の中小都市においては、近接のLNG基地よりLNGをローリーで輸送し保冷タンクに受け入れて、都市ガスの原料ガスとしている。液化天然ガスを都市ガスとして供給する方法は、大都市でも中小都市でも基本的には同じであり、空温式又は海水加熱式等の気化器でガス化したのちに、LPG(プロパン)で発熱量11,000Kcal/Nm3 に増熱調整して高カロリーガスとして供給している。
【0004】
一方上記のように、ローリーによるLNGの輸送が困難な地域では、代替天然ガス(略して、SNGと呼ばれる)を製造して供給する方法が計画されている。この方法はLPG等の石油系炭化水素を原料にして低温水蒸気改質して得られるメタン,水素,炭酸ガス等からなる、いわゆる改質ガスを得たのち、炭酸ガスを除去し、都市ガス事業法で定められている天然ガス相当のハイカロリーの規格ガス(以下、13Aガスという)を製造し、供給するものである。
【0005】
大都市の都市ガス会社においては、すでに緊急用もしくはピークロード対策用として、代替天然ガスの製造装置は設置されている。しかしながら、この大都市向けの大容量装置にあっては、改質ガス中の炭酸ガスを除去するのに、ベンフィールド法のような熱炭酸カリ水溶液を吸収液として用いる溶液循環法を採用しており、このため炭酸ガスを1%以下まで除去して比重の軽いガスを得ることができる反面、設備構成が複雑であり、設備費が高く、運転管理に多くの労力を要し、地方の中小都市の都市ガス工場用としては適していないという問題がある。
【0006】
本出願人は、代替天然ガスの製造方法に関して、先に特開平5−25482号で、中小都市の都市ガス工場向けに好適な方法を提案した。この方法の特徴は、低温水蒸気改質ガスから炭酸ガスを除去する手段として、最近技術進歩の著しい有機系高分子中空糸膜よりなる膜分離装置を利用した点にある。
【0007】
膜分離装置は設備構成が簡単であるとともに運転管理も容易であり、中小都市の都市ガス工場でも充分に運転管理ができる装置である。そしてこの膜分離装置により、低温改質ガスを処理して炭酸ガスを選択的に透過ガス側に透過し、非透過ガス側にメタン濃度が90%前後のガスを得て、これにLPGを添加して熱量調整して13A規格ガスを製造する。
【0008】
一方透過ガス側には、炭酸ガスとともに改質ガス中の水素の大半が透過するので、透過ガス中の水素濃度は30%近くに達する。従ってこの特性を生かして、原料炭化水素の水添脱硫用のリサイクルガスとして活用している。
【0009】
しかるに、その後、特開平5−25482号で提案した方法を検討した結果、次のような問題があることが分かった。すなわち第一には、非透過ガス側のガスの性状を13A規格に合致させるには、残存炭酸ガス濃度を必要濃度(例えば5%前後)まで少なくする必要があり、これを少ない膜面積の膜分離装置で分離するため、透過差圧の関係から透過ガス側を大気圧近くまで下げて処理している。このため、透過ガスを水添脱硫用のリサイクルガスとして用いるには、圧縮機で昇圧する(例えば10気圧以上)必要があるが、吐出圧/吸込圧の圧力比が高くなり、圧縮機の段数が多くなるとともに、その動力費が嵩むという問題がある。
【0010】
第二には、透過ガスの量は、前記の非透過ガス側の残存炭酸ガス濃度と、透過膜の炭酸ガスに対する選択能によって左右されるが、さらには透過ガス側には炭酸ガスと水素以外にも1次側のメタン分圧が高いため相当のメタン分が透過し、これによっても影響を受ける。そして透過ガスの量は、通常は必要なリサイクルガスの量を上回るため、残りの余剰分は水蒸気改質工程の燃料ガスとして利用される。
【0011】
このように、透過ガスは水添脱硫用のリサイクルガス及び燃料ガスとして有効に利用されるが、前者の目的にはできるだけ圧力が高く、且つ水素濃度が高いことが望ましく、後者の目的には発熱量の関係から、できるだけメタン濃度が高いことが望ましいという問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の従来技術の問題点を背景にしてなされたものであって、本出願人が先に特開平5−25482号で提案した方法をさらに改良して、水添脱硫用リサイクルガスとして好適な、圧力を有し、しかも水素濃度の高いガスと、燃料ガスとして望ましい比較的メタン濃度の高いガスをそれぞれ透過ガスとして得ることができる高カロリーの13A規格の都市ガスの製造方法を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための請求項1の要旨とするところは、水添脱硫した石油系炭化水素を低温水蒸気改質して得られるメタン、炭酸ガス、水素等からなる改質ガスを膜分離装置で処理して、非透過側にメタンを主成分とする混合ガスを得て、この混合ガスにLPGを添加し熱量調整して都市ガスを製造する方法において、膜分離装置を第1段装置と第2段装置に直列に分割するとともに、第1段装置の透過側圧力を第2段装置の透過側圧力より高くして、第1段装置の透過側に得られる比較的水素に富んだガスを前記水添脱硫工程用のリサイクルガスとして用い、第2段装置の透過側に得られる比較的メタンに富んだガスを前記低温水蒸気改質工程用の燃料ガスとして用いることを特徴とする都市ガスの製造方法にある。
【0014】
【作用】
特開平5−25482号で提案した方法では、膜分離装置は一段の膜装置からなっているが、本発明ではこれを直列に第1段と第2段に分割して、低温改質ガスを最初に第1段装置で処理する。この際、第1段装置の透過側の圧力を大気圧より高い圧力、例えば3〜5気圧程度に慣用の圧力制御手段で制御する。こうすることにより透過差圧が少なくなるため、透過性の高い水素と炭酸ガスは比較的多く透過側に移動するが、メタン分の透過は抑制される。この結果、比較的水素に富んだしかも圧力を有するリサイクルガスを得ることができる。
【0015】
次いで、第1段装置の非透過側のガスは、第2段装置に導入され膜分離される。この際、透過ガス側の圧力は大気圧程度まで下げられているので透過差圧は充分あり、非透過ガス側の残存炭酸ガス濃度は容易に所要濃度迄下げられる。しかし一次側のメタンの分圧が高いため、透過側のメタン濃度は第1段装置より高くなるが、透過ガスは燃料ガスとして用いられるため発熱量が高くなり、むしろ好ましいことである。
【0016】
第2段装置を出る非透過側の炭酸ガス濃度が少なく、メタン濃度が高いガスはLPGで熱量調整後、高位発熱量カロリー;11,000或いは12,000Kcal/Nm3 の高カロリー13A規格ガスとして供給される。
【0017】
本発明は、以上のように膜分離装置を直列2段に分割し、しかも第1段の透過側圧力を大気圧より若干高くすることにより、圧力を有ししかも水素濃度の高い水添脱硫用リサイクルガスとして好適なガスを得ることができるとともに、第2段の透過側には比較的メタン含有濃度の高い透過ガスを得ることができるので、水蒸気改質工程の燃料ガスとして有効に利用することができる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例の構成を示す系統図である。図において、原料のLPGは後記するリサイクルガスとともに図示はされない熱交換器で水添脱硫に好適な温度350℃前後に予熱されて、原料中の有機硫黄化合物は脱硫塔内のコバルト−モリブデン系の水添触媒上でリサイクルガス中の水素と反応して硫化水素になり、後段の酸化亜鉛触媒により吸着,除去される。
【0019】
次いで脱硫された原料LPGは、ボイラから発生するスチームとともに加熱炉において低温水蒸気改質反応に好適な温度350〜400℃に加熱されてニッケル触媒充填の低温改質器に入り、ここで低温水蒸気改質反応により、メタン:73%前後,水素:10%前後,炭酸ガス:17%前後,一酸化炭素:1%以下の改質ガスになる。
【0020】
低温改質器を出る改質ガスは、図示はされない熱回収の熱交換器を通って冷却され、常温近くの温度になって第1段膜装置に入る。ここで透過ガス側の圧力は、図示はされない圧力調節弁によって3気圧前後に調節される。透過速度の速い炭酸ガス,水素は、有機系高分子の中空糸膜を透過して透過ガス側に移動し、比較的水素濃度の高い透過ガスが得られる。この透過ガスは圧縮機によって所要圧力迄昇圧されて、前記のリサイクルガスとして水添脱硫工程に供給される。
【0021】
第1段膜装置の非透過側を出るガスは、次いで第2段膜装置に入る。ここで透過ガス側の圧力は、大気圧近く迄下げられているので、非透過側の炭酸ガスは13Aガスを製造するに必要な濃度(5〜6%)迄容易に低下する。但し、1次側のメタン分圧も高いので、相当程度透過側に移動する。比較的メタン濃度が高い透過ガスは、低温水蒸気改質工程のプロセススチーム発生用ボイラ及び加熱炉の燃料ガスとして利用される。
【0022】
水素及び炭酸ガスが分離,除去されメタン濃度が90%以上に高くなった非透過ガスは、高カロリー都市ガスの原料ガスとされるが、ガス中の水分も相当量透過しているので、通常は露点降下のための脱湿器の設置は不要である。最後に熱量増加のため慣用のガス/ガス熱調または液/ガス熱調方式でLPGが添加され、製品の代替天然ガスになり13A規格ガスとして需要家に供給される。
【0023】
(実施例)LPG(C3)を原料にして、本発明の方法である低温改質器及び直列2段の気体膜分離装置で高カロリー都市ガスを製造した例について、ガス組成などの諸元を示す。
【0024】
【発明の効果】
以上の構成と作用を有する本発明によれば、第1段膜装置では、比較的水素濃度が高くてしかも圧力を有する水素脱硫用リサイクルガスを得ることができるので、リサイクルガス昇圧用圧縮機の動力費を節減できるとともにその設備費を節減でき、第2段階装置では、比較的メタン濃度が高い燃料ガスを得ることができるので、低温水蒸気改質工程の燃料ガスとして有効活用できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の構成を示す系統図。
Claims (1)
- 水添脱硫した石油系炭化水素を低温水蒸気改質して得られるメタン、炭酸ガス、水素等からなる改質ガスを膜分離装置で処理して、非透過側にメタンを主成分とする混合ガスを得て、この混合ガスにLPGを添加し熱量調整して都市ガスを製造する方法において、膜分離装置を第1段装置と第2段装置に直列に分割するとともに、第1段装置の透過側圧力を第2段装置の透過側圧力より高くして、第1段装置の透過側に得られる比較的水素に富んだガスを前記水添脱硫工程用のリサイクルガスとして用い、第2段装置の透過側に得られる比較的メタンに富んだガスを前記低温水蒸気改質工程用の燃料ガスとして用いることを特徴とする都市ガスの製造方法。
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