JP3592523B2 - ステアリング装置 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本願発明は、たとえば軽トラックなどのキャブオーバ型自動車において、ステアリングシャフトを直立に近い状態に支持し、いわゆる二次衝突の際にはステアリングホイールを前方に変移させることによって運転者の身体に大きな衝撃が加わらないようにすることが可能なステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
キャブオーバ型の自動車は操舵輪である前輪の上方に運転席が存在するため、ステアリングシャフトやこのステアリングシャフトを支持するステアリングコラムは、一般の乗用車のものよりも直立に近い起立状態に設けられる。このような自動車では、二次衝突(自動車が他の物体に衝突する一次衝突に引き続いて生じる衝突であって、自動車の一部に対する運転者の衝突)の際に、ステアリングホイールを前方に退避させ、このステアリングホイールから運転者の身体に大きな衝撃力が加わらないようにすることが望まれる。
【0003】
そこで、従来では、たとえば実公平5−16062号公報や特公昭55−31026号公報などに所載のステアリング装置がある。これらの公報に所載のステアリング装置は、いずれもステアリングシャフトを支持するステアリングコラムの上部にステー(ブラケット)を連結し、このステーを介して上記ステアリングコラムの上部をステアリングコラムの車両前方の固定部分に支持させた構造である。このような構成のステアリング装置では、二次衝突が生じてステアリングコラムの上部に車両前方への荷重が入力すると、上記ステアリングコラムは上記ステーを押圧して圧縮変形させながら車両前方へ変移することとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のステアリング装置では、次のような不具合を生じていた。
【0005】
第1に、従来のステアリング装置では、二次衝突の際のステアリングコラムへの荷重入力によってステーが適切に圧縮変形するように、上記ステーの機械的強度を適度な値に設定しなければならない。ところが、実際には、二次衝突の際にステアリングコラムに入力する荷重の大きさは様々であり、ステアリングホイールを車両前方へ真に移動させる必要がある場合にのみ上記ステーを確実に変形させることができるように上記ステーの強度を設定することは、実際にはかなり難しいものとなっていた。すなわち、従来では、ステーの強度が大きすぎる場合には、二次衝突時にステーが変形せず、ステアリングコラムが前方へ移動しない虞れがある。その反面、ステーの強度が小さすぎる場合には、たとえば車両が極めて低速で走行しているときの軽微な衝突時などにおいてもステーが簡単に変形してステアリングコラムが車両前方へ不必要に移動する虞れがある。結局、この種のステアリング装置では、ある程度の規模の一次衝突が生じ、これに引き続いて運転者を保護する必要のある二次衝突が生じた場合にはステアリングコラムが前方へ移動する反面、それ以外の場合にはステアリングコラムがむやみに車両前方へ移動しないように配慮する必要があるが、従来では、そのような条件を簡単にかつ充分に満足させることは難しいという不具合があった。
【0006】
第2に、従来のステアリング装置では、ステアリングコラムを支持するステーの車両前後方向のサイズを、二次衝突の際にステアリングコラムを車両前方へ移動させようとするストローク長よりも大きなサイズに形成する必要がある。このため、従来では、ステーが大型化し、またその重量も大きくなり、ステアリング装置の小型軽量化を図る上でも不利を生じていた。
【0007】
本願発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、ステアリングホイールを車両前方に移動させる必要がある場合にはその動作を的確に行わせることができる一方、それ以外の場合にはステアリングホイールが車両前方へ安易に移動しないようにすることが簡単に行え、しかも全体の小型化および軽量化をも図ることが可能なステアリング装置を提供することをその課題としている。
【0008】
【発明の開示】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
すなわち、本願発明に係るステアリング装置は、ステアリングシャフトを支持して所定の角度で起立するステアリングコラムと、このステアリングコラムの下方に位置して上記ステアリングシャフトの下端部と機械的に連結されているギヤボックスと、上記ステアリングコラムの上部または長手方向中間部を支持できるように車体の固定部材に取付けられたブラケットと、を有するステアリング装置であって、上記ステアリングコラムの外面には、車両後方部分が開口した切欠孔を有する突起部が設けられているとともに、上記突起部と上記ブラケットとは、上記ステアリングコラムにこのステアリングコラムを車両前方に移動させる方向の所定値以上の荷重が入力したときにこれら突起部とブラケットとの連結が解除可能に、上記切欠孔に挿通して上記ブラケットに支持されたボルトによって互いに連結されており、かつ、上記切欠孔の周縁部には、上記ボルトの軸部の上方からこの軸部の上面よりも車両後方斜め下方に延びており、かつ上記ボルトの軸部のうち車両後方斜め上側部分と係合する突縁部が設けられており、上記ステアリングコラムが上記所定の角度で起立しているときには、上記突縁部のうち上記軸部寄りの側縁が車両前後方向に対して車両後方斜め下方に傾斜していることにより、上記突起部と上記ブラケットとの車両前後方向における相対平行移動が規制されて連結解除が阻止される一方、上記ステアリングコラムが回動されて上記側縁が車両前後方向と平行となるときには、上記突起部と上記ブラケットとの車両前後方向における相対平行移動が許容されて連結解除が可能とされており、上記突起部には、上記ボルトの軸部を抱き込んだエネルギ吸収部材の一端部が取り付けられており、上記突起部と上記ブラケットとの連結が解除されて上記ステアリングコラムが車両前方に移動するときには、上記エネルギ吸収部材が上記ボルトの軸部によりしごかれて曲げ変形を生じるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
本願発明においては、まずステアリングコラムが所定の本来の角度で起立している通常時の状態では、ステアリングコラムに設けられている突起部の突縁部がブラケットに支持されているボルトの軸部に係合している。したがって、上記ステアリングコラムに対して車両前方を向く大きな荷重が入力しても、上記ステアリングコラムの突起部とブラケットとの連結状態が直ちに解除されることが上記突起部とボルトとの係合作用によって阻止され、ステアリングコラムがブラケットから離脱して車両前方へ安易に移動しないようにできる。その一方、本願発明では、ステアリングシャフトの下端部がギヤボックスと機械的に連結されているために、車両が一次衝突を起こしてギヤボックスが車両後方へ移動したときには、上記ステアリングシャフトの下端部をギヤボックスの移動に伴わせて車両後方へ強制的に移動させることが可能であり、またこれによってステアリングコラムをその上部がその下部に対して車両前方へ相対的に移動するように回動させることができる。また、このステアリングコラムの回動動作時またはその回動動作の初期段階のときにも、ステアリングコラムの突起部とブラケットとの連結状態を上記突起部とボルトとの係合作用によって保持させておくことができるために、上記一次衝突時においては上記ブラケットを強制的に変形させるなどして、上記ステアリングコラムを回動させることができる。そして、このようにしてステアリングコラムが回動し、その起立角度が変化すると、ステアリングコラムの突起部の姿勢が変化し、この突起部が上記ボルトの軸部とは係合しない状態、あるいはその係合が浅い状態にすることができる。このため、本願発明では、このような姿勢において二次衝突が生じ、ステアリングコラムに対してこのステアリングコラムを車両前方に移動させる方向の所定値以上の荷重が入力すると、これによって初めてステアリングコラムの突起部とブラケットとの連結状態が解除され、ステアリングコラムやステアリングシャフトに取付けられたステアリングホイールを車両前方に適切に退避させることができることとなるのである。
【0011】
このように、結局、本願発明では、一次衝突が生じてステアリングコラムの姿勢が変化し、ステアリングコラムの突起部に設けられている突縁部とブラケットに支持されたボルトとの係合状態が解除され、または解除状態に近い状態になった場合にのみ、ステアリングコラムとブラケットとの連結状態を解除させて、ステアリングコラムを車両前方へ大きく移動させることができるとともに、それ以外の場合には上記突縁部とボルトとの係合作用によってステアリングコラムが不用意に車両前方へ移動することを防止することができる。したがって、本願発明では、真にステアリングホイールを車両前方へ退避させる必要がある場合にのみその動作を適切に行わせるとともに、それ以外のときにはステアリングホイールが不用意に移動しないようにすることを、適切かつ簡単に達成することができるという格別な効果が得られる。
【0012】
また、本願発明では、ステアリングコラムの突起部をブラケットに対してボルト止めする構造を採用しているが、従来とは異なり、上記ブラケットを車内において大きく嵩張った状態に設ける必要はない。このため、本願発明では、従来のステアリング装置と比較して、全体のサイズを小さくでき、また軽量化が図れるという利点も得られる。
【0013】
本願発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0015】
図1は、本願発明に係るステアリング装置の概略構成の一例を示す一部断面側面図である。図2は、図1の要部拡大断面側面図である。図3は、図2のIII −III 断面図である。図4は、図1に示すステアリング装置を構成する主要部品の一部断面分解斜視図である。図5は、図1に示すステアリング装置の通常時の状態を示す要部断面側面図である。なお、図1以降の図において、矢印Frは車両前方を示し、矢印Upは車両高さ方向上方を示し、矢印wは車幅方向を示している。
【0016】
図1において、このステアリング装置Aは、たとえばキャブオーバ型の軽トラックなどの車両に設けられており、ステアリングシャフト1、このステアリングシャフト1をその軸心周りに回転可能に支持する略円筒状のステアリングコラム2、上部ブラケット3、下部ブラケット4、エネルギ吸収板6、およびその他後述する各部材を具備して構成されている。上記ステアリングシャフト1やステアリングコラム2は、直立に近い傾斜角度θ1(この傾斜角度は鉛直線に対する交差角度であり、以下同様である)で起立している。本実施形態のステアリング装置Aは、上記ステアリングコラム2と上部ブラケット3との連結部分の構造に最大の特徴があるが、これに加え、エネルギ吸収板6を取付けた構造にも特徴がある。
【0017】
上記ステアリングシャフト1は、その上部にステアリングホイール10が取付けられるものであり、上記ステアリングコラム2に貫通している。このステアリングシャフト1の下端部1aは、その下方に配置されているギヤボックス12とジョイント機構部11を介して機械的に連結されている。上記ジョイント機構部11は、上記ステアリングシャフト1の回転動作をギヤボックス12に伝達するものである。上記ギヤボックス12は、その回転動作を前輪操舵の動作に必要な車幅方向の直進往復動作に変換するものである。
【0018】
上記下部ブラケット4は、上記ステアリングコラム2の下部に溶接されるなどして固定して取付けられたものであり、ボルト8aを用いて下部支持メンバ5bに取付けられている。上記下部支持メンバ5bは、たとえばダッシュパネル、またはダッシュパネルとは別に設けられている車体の適当な固定部材に取付けられている。これは、後述する上部支持メンバ5aについても同様であり、これら下部支持メンバ5bと上部支持メンバ5aとを同一部材によって構成することも可能である。上記下部ブラケット4または下部支持メンバ5bの全体または一部は、比較的変形し易いように構成されており、車両の一次衝突によって車両前部に対して車両前方から非常に大きな衝撃荷重F1が入力し、この荷重入力に起因してギヤボックス12が車両後方へ移動したときには、上記下部ブラケット4または下部支持メンバ5bの全体または一部が変形することにより、ステアリングシャフト1の下端部1aが上記ギヤボックス12から受ける引張力によって車両後方へ移動することを許容できるようになっている。
【0019】
上記上部ブラケット3は、図3によく表れているように、断面略L字状の一対のブラケット板30,30を組み合わせて構成されており、上部支持メンバ5aに対してボルト8b,8bを用いて固定して取付けられている。上部支持メンバ5aは、ステアリングコラム2の車両前方への移動を許容する形状に構成されている。上部ブラケット3の一対のブラケット板30,30には、上記ステアリングコラム2をこの上部ブラケット3に取付けるためのボルト8が車幅方向に貫通している。
【0020】
上記ステアリングコラム2の長手方向中間部または上部の外周面には、突起部7が設けられている。この突起部7は車幅方向に間隔を隔てた2枚の板体70,70を上記ステアリングコラム2に溶接し、上記2枚の板体70,70を上記ステアリングコラム2の外周面の後面部分から車両後方へ突出させた部分である。上記板体70,70のそれぞれには、相互に対向する一対の切欠孔71,71が設けられており、またそれら板体70,70の間には、第1補助部材73や第2補助部材74が溶接されるなどして固定して取付けられている。
【0021】
上記突起部7は、上部ブラケット3の一対のブラケット板30,30間に配されており、上記一対の切欠孔71,71には、上記ボルト8が一連に挿通している。上記ステアリングコラム2は、上記ボルト8とこれに螺合するナット80との締付力により上記突起部7が上記一対のブラケット板30,30間に挟み付けられることによって、上記上部ブラケット3に連結されている。上記一対の切欠孔71,71のそれぞれは、車両後方を向いて開口している。したがって、上記突起部7と上部ブラケット3とのボルト止め構造では、ステアリングコラム2に対して車両前方を向く一定値以上の大荷重が入力したときに、上記ボルト8とナット8aとの締結力に抗してそれらのボルト止め構造を強制的に解除させることが可能である。
【0022】
ただし、図5によく表れているように、上記各切欠孔71の周縁部には、突縁部72が設けられている。この突縁部72は、ステアリングコラム2が本来の傾斜角度θ1に取付けられている状態において、ボルト8の軸部の上方からこの軸部の車両後方斜め下方へ適当な寸法Lだけ立下がって延びた部分であり、上記ボルト8の軸部に係合している。後述するように、この突縁部72は、ステアリングコラム2が上部ブラケット3から安易に離脱することを防止するための部位である。
【0023】
図2および図4によく表れているように、上記第1補助部材73は、上記各切欠孔71の周縁部の輪郭と略同様な断面形状に形成されており、上記2つの板体70,70を互いに繋ぐスペーサとしての役割と、上記一対の切欠孔71,71のそれぞれの周縁部を補強する役割とを果たす。さらに、この第1補助部材73は、エネルギ吸収板6の長手方向一端部6aを支持する役割をも果たすものである。上記第2補助部材74は、後述するようにエネルギ吸収板6の変形を補助する役割を果たすものであり、たとえば断面略L字状に形成されている。上記第1補助部材73と第2補助部材74とは、いずれも金属板をプレス加工するなどして構成されている。
【0024】
上記エネルギ吸収板6は、たとえば鉄などの曲げ変形が可能な金属板であり、適当な長さを有する帯状である。ただし、本願発明では、このエネルギ吸収板6に代えて、たとえば複数本の金属線材、あるいは金属以外の材質の板材や線材などのエネルギ吸収部材を用いてもよい。上記エネルギ吸収板6の一端部6aは、上記第1補助部材73に溶接されるなどして接合されており、またこの一端部6aの接合箇所の近傍部分は、上記ボルト8の軸部に対してこの軸部の前方側からその後方側に廻り込むように屈曲し、上記ボルト8の軸部を抱き込んでいる。そして、このエネルギ吸収板6の上記屈曲部分に繋がった部分は、上記第1補助部材73と第2補助部材74との間を隙間を通過してから、第2補助部材74とステアリングコラム2の外周面後面部との間の隙間を通過するように配されている。このエネルギ吸収板6の上記以外の部分は上記ステアリングコラム2の外周面に沿って下方へ延びている。上記エネルギ吸収板6は硬質の金属板であるため、このエネルギ吸収板6の下端に位置する他端部6bに特別な支持手段を設けなくても、このエネルギ吸収板6の略全長をステアリングコラム2の長手方向に沿わせることが可能である。ただし、上記エネルギ吸収板6の他端部6aまたはその近傍部分をたとえばベルトを用いるなどしてステアリングコラム2の外周面に接触保持させるようにしてもよい。このようにすれば、車両の振動に起因して上記エネルギ吸収板6の他端部6aとステアリングコラム2との接触音が発生するといったことを適切に防止することができるので好ましい。
【0025】
次に、上記ステアリング装置Aの作用について説明する。
【0026】
まず、上記ステアリング装置Aでは、ステアリングコラム2が所定の傾斜角度θ1に設定されているが、この通常状態では、図5を参照して説明したとおり、ステアリングコラム2に設けられた突起部7の突縁部72がボルト8の軸部の車両後方側においてこの軸部の上面よりも下方に延びており、上記突縁部72がボルト8に係合している。したがって、このような状態において、仮にステアリングコラム2に対して車両前方を向く荷重が作用しても、上記突縁部72とボルト8との係合作用によって、突起部7と上部ブラケット3との連結状態が解除されることはない。
【0027】
その結果、このステアリング装置Aにおいては、ステアリングコラム2やステアリングホイール10を車両前方へ移動させる必要のない比較的小さな荷重が入力したとき、すなわちたとえば低速走行での軽微な車両衝突時などにおいて、ステアリングコラム2と上部ブラケット3との連結が安易に解除されてしまうといったことを適切に防止することができる。むろん、ステアリングコラム2に対する入力荷重が小さいときには、ボルト8とナット80との締付力によってステアリングコラム2の突起部7と上部ブラケット3との連結状態を保持しておくことができるが、このステアリング装置Aでは、仮にこれらボルト8とナット80との締付けが弛んでいるような場合であっても、入力荷重が小さいときには上記突起部7と上部ブラケット3との連結状態を確実に維持しておくことができるのである。
【0028】
次いで、車両の一次衝突が生じ、車両前方から車両前部に対して非常に大きな衝撃荷重F1が入力すると、車両前部がクラッシュし、ギヤボックス12が車両後方へ移動することとなる。すると、このギヤボックス12と機械的に連結されているステアリングシャフト1の下端部1aが上記ギヤボックス12によって車両後方へ引っ張られる結果、上記ステアリングシャフト1やステアリングコラム2は下部ブラケット4またはその近傍位置を中心としてそれらの上部が車両前方へ移動するように回動し、たとえば図1の仮想線に示すように、それらの傾斜角度がθ2となる。この回動動作時においては、既述したとおり、上記ボルト8と突縁部72との係合作用によって上記ステアリングコラム2が上部ブラケット3から離脱することが阻止されている結果、上記ステアリングコラム2は上部ブラケット3または上部支持メンバ5aを強制的に変形させながら回動することとなる。
【0029】
図6に示すように、上記ステアリングコラム2が傾斜角度θ2になると、突起部7の突縁部72の側縁72aが水平または水平に近い角度となり、この突縁部72とボルト8の軸部との係合状態が解消され、またはそれらの係合寸法がかなり小さいものとなる。このため、上記突縁部72はもはや上部ブラケット3に対する抜止め効果を発揮しないものとなる。したがって、上記車両の一次衝突に引き続いて二次衝突が生じ、ステアリングコラム2の上部に車両前方を向く一定値以上の衝撃荷重F2の入力があると、上記突起部7と上部ブラケット3とのボルト8を用いた連結状態が直ちに解除される。その結果、ステアリングコラム2は、上部ブラケット3から離脱し、図1の仮想線に示すようにその傾斜角度がθ3となるように車両前方へさらに移動することとなる。その結果、二次衝突の際にステアリングホイール10を車両前方へ適切に退避させることができる。
【0030】
なお、上記ステアリングコラム2の車両前方への移動時においては、図7および図8に示すように、上記ボルト8を抱き込んだエネルギ吸収板6が強制的に変形される。より具体的には、ステアリングコラム2が車両前方へ移動するにつれて上記エネルギ吸収板6の一端部6aがボルト8から遠ざかることとなるために、上記エネルギ吸収板6は上記ステアリングコラム2によってボルト8の軸部や第2補助部材74と接触する箇所に無理やりに引っ張られることとなり、このエネルギ吸収板6の各部は上記ボルト8の軸部と第2補助部材74とのそれぞれによってしごかれて、その長手方向に連続して曲げ変形(塑性変形)を生じてゆく。この変形は、上記エネルギ吸収板6の他端部6bが第2補助部材74を通過し終わるまで連続して行わせることが可能である。したがって、上記ステアリングコラム2が傾斜角度θ2からθ3に変化するように回動するときには、上記エネルギ吸収板6の変形によって二次衝突時の衝撃力を吸収し、緩和することができる。とくに、上記エネルギ吸収板6は、ボルト8の軸部をその前方から抱き込むようにした格好で上記軸部によってその長手方向に順次しごかれてゆくようになっているために、たとえば図8の矢印N1に示すように、ステアリングコラム2が車両前方真正面方向に移動す場合のみならず、矢印N2,N3に示すように、車両斜め方向に移動する場合であっても、上記エネルギ吸収板6の変形を確実に行わせ、しかもその変形はいずれも同様な態様となって適度な抵抗力を発揮させることができ、衝撃力の吸収緩和をより適切に図ることができる。
【0031】
もちろん、本願発明に係るステアリング装置の各部の具体的な構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々に設計変形自在である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るステアリング装置の概略構成の一例を示す一部断面側面図である。
【図2】図1の要部拡大断面側面図である。
【図3】図2のIII −III 断面図である。
【図4】図1に示すステアリング装置を構成する主要部品の一部断面分解斜視図である。
【図5】図1に示すステアリング装置の通常時の状態を示す要部断面側面図である。
【図6】図1に示すステアリング装置の動作初期の状態を示す要部断面側面図である。
【図7】図1に示すステアリング装置の衝撃吸収が生じる状態の要部断面側面図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面図である。
【符号の説明】
A ステアリング装置
1 ステアリングシャフト
2 ステアリングコラム
3 上部ブラケット(ブラケット)
5a 上部支持メンバ
6 エネルギ吸収板(エネルギ吸収部材)
7 突起部
8 ボルト
10 ステアリングホイール
11 ジョイント機構部
12 ギヤボックス
71 切欠孔
72 突縁部
Claims (1)
- ステアリングシャフトを支持して所定の角度で起立するステアリングコラムと、このステアリングコラムの下方に位置して上記ステアリングシャフトの下端部と機械的に連結されているギヤボックスと、上記ステアリングコラムの上部または長手方向中間部を支持できるように車体の固定部材に取付けられたブラケットと、を有するステアリング装置であって、
上記ステアリングコラムの外面には、車両後方部分が開口した切欠孔を有する突起部が設けられているとともに、
上記突起部と上記ブラケットとは、上記ステアリングコラムにこのステアリングコラムを車両前方に移動させる方向の所定値以上の荷重が入力したときにこれら突起部とブラケットとの連結が解除可能に、上記切欠孔に挿通して上記ブラケットに支持されたボルトによって互いに連結されており、かつ、
上記切欠孔の周縁部には、上記ボルトの軸部の上方からこの軸部の上面よりも車両後方斜め下方に延びており、かつ上記ボルトの軸部のうち車両後方斜め上側部分と係合する突縁部が設けられており、上記ステアリングコラムが上記所定の角度で起立しているときには、上記突縁部のうち上記軸部寄りの側縁が車両前後方向に対して車両後方斜め下方に傾斜していることにより、上記突起部と上記ブラケットとの車両前後方向における相対平行移動が規制されて連結解除が阻止される一方、上記ステアリングコラムが回動されて上記側縁が車両前後方向と平行となるときには、上記突起部と上記ブラケットとの車両前後方向における相対平行移動が許容されて連結解除が可能とされており、
上記突起部には、上記ボルトの軸部を抱き込んだエネルギ吸収部材の一端部が取り付けられており、上記突起部と上記ブラケットとの連結が解除されて上記ステアリングコラムが車両前方に移動するときには、上記エネルギ吸収部材が上記ボルトの軸部によりしごかれて曲げ変形を生じるように構成されていることを特徴とする、ステアリング装置。
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