JP3592482B2 - 孔版原紙の製版方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔版原紙を手書き等で加圧して製版する製版方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の鉄筆による孔版の製版方法は、高品位の製版画像が得られるが、熟練を必要とすることから、主流が熟練のいらないボールペン原紙に移行し、ボールペン原紙もコピー機の出現などから、減少の一途を辿り、特殊分野以外では今日見かけることもなくなって来ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、手書きによる製版は、このワープロ、パソコンの時代にあって、逆に個性を発揮できることから見直されつつあり、手軽な手書き製版手段が求められている。
さらに、従来の手書き製版は、階調を持たせるなどの技巧を行うには高度な熟練を要するといった手軽さに欠ける問題点があった。
【0004】
本発明は、手軽で安価で、且つ書き手の意思に沿って手書きの文字と同様に力加減によって濃淡が表現できる孔版原紙の製版方法及び装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の孔版原紙の製版装置は、請求項1記載のように、硬質の微細粒子が密に配設保持されることにより表面に微細凹凸が形成されたシートと薄状樹脂フィルムを重ね合わせ、薄状樹脂フィルムに対し所定の圧力を加えることにより上記薄状樹脂フィルムにその圧力に対応した形状で微細な切れ目が形成される孔版原紙の製版装置であって、
前記薄状樹脂フィルムに対して所定の圧力を加えることにより、該圧力に対応して薄状樹脂フィルムに形成される前記微細な切れ目の数と大きさが変化し、これにより印刷濃度が変化するように、前記シート表面に、650メッシュパスの粒径を有する微細粒子(10c)と450メッシュパスの粒径を有する微細粒子(10d)と350メッシュパスの粒径を有する微細粒子(10e)と280メッシュパスの粒径を有する微細粒子(10f)を略均等に分散保持させることにより、前記シート表面に、4種の異なる高さを有する微細凹凸が形成されていることを特徴としている。
【0006】
また、請求項2記載のように、前記薄状フィルムと前記シートを重合した状態で前記薄状フィルム上から圧力を加える筆記機構を備えた構成とすることができる。
【0007】
本発明の孔版原紙の製版方法は、請求項3記載のように、請求項1又は2に記載の孔版原紙の製版装置を用い、前記薄状樹脂フィルムと前記シート間に圧力を加えることにより、前記薄状樹脂フィルムにその圧力に対応した形状で微細な切れ目を形成させることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、微細凹凸面には異なる粒径の微細粒子が設けられており、この微細凹凸面と樹脂フィルムとを重ねた状態で樹脂フィルムに対し所定の圧力を加えると、この圧力に対応して樹脂フィルムに開く切れ目の数が変化し濃度の差を表現することができるようになる。圧力が小さいと樹脂フィルムには大きな粒径の微細粒子に接した箇所が切れ目状態で開孔する。また、大きな圧力をかけると樹脂フィルムには全ての微細粒子に接した箇所が開孔する。中間の圧力であれば、大きな粒径及びこの圧力に対応した径の微細粒子によって樹脂フィルムが開孔される。また、切れ目の大きさも変化する。
このように筆記圧力を変えることで、切れ目の大きさと開く切れ目の数を変えることができ、これが濃度の差となって表現できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の製版装置の第1の実施の形態を図1を用いて説明する。図1に示すように、孔版印刷用原紙の組み立て体1は、所定の厚さと剛性を有する略矩形の枠体2を基体としている。枠体2の一方の面には、孔版印刷用原紙3が貼り付けられている。孔版印刷用原紙3は、インク通過性支持体4と、感熱性の樹脂フィルム5を貼り合わせたものである。孔版印刷用原紙3は、樹脂フィルム5の側を外側とし、インク通過性支持体4を枠体2に貼り合わせてある。
【0010】
インク通過性支持体4としては、多孔質の合成繊維や天然繊維、又はこれら繊維の混紡の抄造紙、各種織布、不織布等が用いられるが、これらのうちでは和紙等の薄葉紙が好ましい。薄葉紙は、あまり密度が大きいか、又は坪量が大きくなると、印刷時にインクの通過が悪く、鮮明な印刷が不可能となる。逆に密度が小さいか、又は坪量が小さくなると、印刷時の耐刷性が小さくなる。このため、坪量としては5g/m2 〜25g/m2 が望ましい。
【0011】
樹脂フィルム5としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)が好ましい。その厚さは1.5μm〜7μmの範囲が好ましく、更に好ましくは2μm〜3μmの範囲で、本例では最適値の2μmである。上記支持体4もしくは樹脂フィルム5には、必要に応じて感圧発色剤が塗布されている。
【0012】
枠体2の他方の面には、インク不通過性のバックシート6が固定されている。バックシート6の外形は枠体2と略同一である。バックシート6は、その一短縁辺が、対応する枠体2の一短縁辺に一体とされている。製版後、印刷のためにバックシート6を開いて枠体2内部にインクを入れる。バックシート6を閉じればインクが外に漏れることはない。
【0013】
図1に示すように、本例の製版装置7は、矩形の基体8を有している。基体8の上面の外縁部には、保持枠9が設けられている。保持枠9の厚さ、即ち基体8の上面から保持枠9の上面までの高さは、前記組み立て体1の枠体2の厚さに略相当する。保持枠9の一短辺の略中央には切り欠き9aが設けられている。保持枠9の他短辺の上面には、前記組み立て体1のバックシート6を一時的に保持する粘着保持部9bが設けられている。又、基体8の上面には前記組み立て体1を保持する粘着部を設けてもよい。
【0014】
図1に示すように、製版装置7において、前記保持枠9の内部の前記基体8の上面には、微細凹凸面10が形成されている。
微細凹凸面10は、この実施の形態では硬質の微細粒子が矩形の領域の内部の全面に密に配された部分である。微細凹凸面10の形状及び寸法は、前記組み立て体1における枠体2の内部の孔版印刷用原紙3の形状及び寸法に略相当する。
【0015】
図2は微細凹凸面10を示す拡大側断面図である。基体10a上には糊、ホットメルト樹脂、溶剤系の接着剤等の粘着性物質からなる粘着層10bがスクリーン印刷法等によって塗布され、この上に複数の異なる粒径の微細粒子10c〜10fを振りかけ、微細粒子10c〜10fを粘着層10bの粘着性で基体10a上に保持させる。
各微細粒子10c〜10fはメッシュパスが#200〜#2000の範囲の粒径のものが好ましい。本例では、最適値としてメッシュパスが#500〜#1000の範囲の各異なる粒径のものを微細凹凸面10上に略均等に分散させてなる。
【0016】
本例では、それぞれの粒径が4段階で異なる微細粒子が用いられる。もっとも小さな微細粒子10cは粒径が20〜25μm(メッシュパスでは#650)、その上の大きさの微細粒子10dは粒径が30〜35μm(メッシュパスでは#450)、その上の大きさの微細粒子10eは粒径が40〜45μm(メッシュパスでは#350)、最も大きい微細粒子10fは粒径が50〜55μm(メッシュパスでは#280)のものが用いられる。
微細粒子としては、ケイ素、酸化アルミニウム、シリコンカーバイド、ダイヤモンド等を利用できる。
これら微細粒子10c〜10f順次段階的に小さなメッシュのふるいにかけることにより、4段階の粒径の微細粒子10c〜10fを得ることができる。
【0017】
基体10aは、硬質の微細粒子10c〜10fを支えるため、ある程度の硬さがあり、後述する加圧によっても容易には変形しないものが好ましく、ここでは厚さ2mmの硬質ボール紙が用いられている。また、上記微細凹凸面10は、上述したような微細粒子を硬質の紙上に接着した構成以外のものでもよい。
【0018】
製版においては、図3に示すように、前記微細凹凸面10に、組み立て体1の孔版印刷用原紙3の樹脂フィルム5の側を重ねる。そして図4に示すように、前記保持枠9と前記微細凹凸面10の間に組み立て体1の枠体2を固定保持させ、バックシート6を開いてその上面の一縁辺側を粘着保持部9bに保持させる。
【0019】
次に、図5に示すように、セラミックボールチップを有するボールペン11等の圧力負荷手段により、製版装置7の微細粒子面10上に重ねた孔版印刷用原紙3のインク通過性支持体4の上に、製版しようとする所望の文字・画像等を描く。製版しようとしている文字・画像はインク通過性支持体4の上に描かれるので、直接視認することができる。孔版印刷用原紙3の樹脂フィルム5は、インク通過性支持体4の上に描かれたパターンに対応したパターンで微細凹凸面10に向けた圧力を受け、硬質の微細粒子の間に押し込まれる。これによって、孔版印刷用原紙3の樹脂フィルム5には、セラミックボールチップを有するボールペン11でインク通過性支持体4に描いた文字・画像に対応したパターンで多数の微細な切れ目が形成される。
上記微細な切れ目は上記微細凹凸面10の微細粒子の形状と配置に対応し、それぞれ独立した切れ目形状となり、かつランダムな配置となるため、印刷した際に、独立した切れ目により裏移りが少なく、ランダムな配置の切れ目によりモアレの影響の少ない画像が得られることになる。
【0020】
ここで、図6に示すのは、この製版時における圧力による印刷濃度の変化状態を示す図である。図中横軸は圧力、縦軸は印刷濃度である。尚、鉛筆硬度は2Hのものを用いた。
図示のように、一般的にボールペン11等の圧力負荷手段の圧力を高めるに従い印刷濃度が濃くなっていくことが判る。
【0021】
そして、本発明では、微細凹凸面10の微細粒子はそれぞれの粒径が4段階で異なる微細粒子10c〜10fが用いられているため、加えられる圧力が一定であっても、この圧力が強ければ樹脂フィルム5には、微細粒子10c〜10f全てに接する箇所に切れ目が形成されることになる。
また、弱い力であれば、樹脂フィルム5には、粒径の大きな微細粒子10fに接する箇所に切れ目が形成されることになる。
また、中間の力であれば、樹脂フィルム5には、粒径の大きな微細粒子10fとそれより小さな微細粒子10e(さらに10dの場合もある)に接する箇所に切れ目が形成されることになる。
このように、製版時の圧力によって、開く切れ目の数が変化し、これが濃度の差となって表現することができるようになる。
【0022】
製版が終了したら、組み立て体1を製版装置7から取り外す。組み立て体1の枠体2内に所望の色彩のインクを所望の位置に配置し、バックシート6を閉める。この組み立て体1の樹脂フィルム5と印刷用紙を密着させ、インクに圧力を加える。インクはインク通過性支持体4と樹脂フィルム5の製版部を通過して印刷用紙に転移し、製版のパターンに対応した印刷画像が印刷用紙に形成される。
【0023】
前記印刷工程においては、エマルジョンインクを使用するのが好ましい。また、使用するエマルジョンインクの硬さは、スプレッドメータの1分値で20〜50の範囲が好ましく、本例では最適値である30のエマルジョンインクを使用した。
【0024】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図7に示すように、本例の製版装置12は、矩形の基体13を有している。基体13の上面には、微細凹凸面14が形成されている。微細凹凸面14は、前記第1実施形態同様にそれぞれ異なる粒径を有する複数の微細粒子10c〜10fで構成されている。この微細粒子10c〜10fは、印刷しようとする所望のパターンを構成するように密に配されている。図7に示すように、本例では硬質の微細粒子10〜10fが密集した微細凹凸面14が文字「ABC」の形状に形成されている。微細凹凸面14を構成する微細粒子の材質及び粒径の条件は第1の例と同一である。
【0025】
所望のパターンの微細凹凸面14を形成する方法を説明する。スクリーン印刷法等によって板・厚紙等の基体13上に糊等の粘着性物質で所望の画像を印刷する。その上に硬質の微細粒子を振りかけ、微細粒子を粘着性物質の粘着性で基体13上に保持させる。次に、粘着性物質で印刷された画像以外の部分に載った微細粒子を基体13上から除去する。そして、粘着性物質を乾燥させて硬化させれば、微細粒子の画像が形成される。
【0026】
製版においては、図8に示すように、前記微細凹凸面14に、孔版印刷用原紙3の樹脂フィルム5の側を重ねる。そして図9に示すように、孔版印刷用原紙3を重ねた製版装置12を一対のローラ15,15で挟んで搬送し、孔版印刷用原紙3を製版装置12に押し付ける。孔版印刷用原紙3の樹脂フィルム5は、所望の形状に形成された微細凹凸面14の微細粒子の間に押し込まれる。これによって、孔版印刷用原紙3の樹脂フィルム5には、製版装置12に微細粒子で形成された文字・画像に対応したパターンで多数の微細な孔が形成される。このとき原紙3に感圧発色剤が塗布されていると孔の形成部分が圧力で発色し孔に対応した画像を視認することができる。
【0027】
製版が終了したら、孔版印刷用原紙3を製版装置12から取り外し、製版済みの孔版印刷用原紙3とエマルジョンインクを用いて孔版印刷を行う。印刷の手順、エマルジョンインクの条件等は第1の例と同一である。
【0028】
本実施の形態においては、孔版印刷用原紙3を製版装置12に押し付けて製版するために、一対のローラ15,15を用いた。この他、孔版印刷用原紙3を製版装置12に押し付けるために、製版装置12に重ねた孔版印刷用原紙3をバレンや一本のローラで擦ってもよい。また、第1の例のように、孔版印刷用原紙3の微細凹凸面14に対応する部分乃至その近傍のみをボールペン等で擦ってもよい。
以上説明した各例においては、インク通過性支持体4と樹脂フィルム5を貼り合わせた孔版印刷用原紙3を用いたが、樹脂フィルム5のみを用いてもよい。
【0029】
次に、本発明の第3の実施の形態を図10及び図11を参照して説明する。図10及び図11に示す孔版印刷用原紙の組み立て体1は、第1の例で説明したものと同一であり、第1の例と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0030】
この製版印刷装置60は、印刷装置としても機能する。第1の例と機能上共通の部分には第1の例と同一の符号を付す。矩形の押圧板40は、第1の例における基体8と共通の構成を有している。本例の押圧板40の中央には、前述した微細凹凸面を構成するヤスリシート41が、ヤスリ保持用粘着シート42によって着脱可能に取り付けてある。本例の押圧板40の下面中央には、印刷時に版を取り付ける押圧用弾性体として、矩形のスポンジ(原紙スポンジ43と呼ぶ)が設けられている。原紙スポンジ43の下面には、製版された孔版印刷用原紙の組み立て体1を保持する保持手段として原紙保持用粘着シート44が取り付けられている。
【0031】
作業台上等に設置される基板50に対して押圧板40は開閉可能に取り付けられている。まず、押圧板40の下面には、その一長辺に沿って角棒状のスペーサ部材45が取り付けられている。そして押圧板40のスペーサ部材45は、押圧板40と同形である基板50の一長辺に、ヒンジ51を介して揺動可能に取り付けられている。基板50の上面中央には、印刷時に印刷用紙を保持する保持手段として、前記原紙スポンジ43と同形の他のスポンジ(用紙スポンジ52と呼ぶ)が設けられている。用紙スポンジ52の上面には、印刷用紙を保持する保持手段として用紙保持用粘着シート53が取り付けられている。
【0032】
この製版印刷装置60の使用方法を説明する。作業台上等に、基板50を下にして本装置を設置する。孔版印刷用原紙の組み立て体1を押圧板40の保持枠9内に取り付ける。その際、第1の例の場合と同様に、組み立て体1の孔版印刷用原紙3の樹脂フィルム5の側をヤスリシート41に重ねる。第1の例と同様に、バックシート6を開いてその上面の一縁辺側を粘着保持部9bに保持させる。
【0033】
第1の例の場合と同様に、セラミックボールペン11等の圧力負荷手段により、ヤスリシート42上に重ねた孔版印刷用原紙3のインク通過性支持体4の上に、製版しようとする所望の文字・画像等を描く。孔版印刷用原紙3の樹脂フィルム5には、セラミックボールペン11でインク通過性支持体4に描いた文字・画像に対応したパターンで多数の微細な孔が形成される。
【0034】
製版が終了したら、組み立て体1を製版印刷装置60から取り外す。組み立て体1の枠体2内に所望の色彩のインクを所望の位置に配置し、バックシート6を閉める。組み立て体1のバックシート6側を、押圧板40の原紙保持用粘着シート44に保持させる。用紙保持用粘着シート53には印刷用紙を保持させる。押圧板40を基板50の方向に揺動させ、組み立て体1の孔版印刷用原紙3を印刷用紙に押圧する。組み立て体1内のインクが印刷用紙に転移し、印刷用紙に孔版印刷が施される。
押圧板40を基板50から離れる方向に回動させ、組み立て体1を印刷用紙から引き剥がす。印刷用紙は、用紙保持用粘着シート53に保持され、組み立て体1は原紙保持用粘着シート44に保持されているので、両者は容易に剥がれる。枠体2に張られた孔版印刷用原紙3とバックシート6は、インクの粘性によって保持されているので、押圧板40の開放時にこの両者が開いてしまうことはない。製版のパターンに対応した印刷画像が印刷された印刷用紙が、用紙保持用粘着シート53上に残される。
【0035】
使用する印刷用紙として、保持枠9の内形に合致した形状のカードを使用する。押圧板40のヤスリシート保持用粘着シート42からヤスリシート41を取り外し、印刷したカード等を保持枠9の内部に取り付ければ、本装置を額のように使用することができる。押圧板40と基板50の角度を適当に調整すれば、カードを保持させた本装置を机上等に飾ることができる。
【0036】
以上説明した各例においては、樹脂フィルム5の厚さ、微細凹凸面10,14を構成する微細粒子の粒径、インクの硬さの各条件について、それぞれ適用できる範囲と、その中の最適値を記載した。本発明者等の実験によれば、各条件をこのような数値範囲に設定して各例のように本発明を実施すれば、鮮明で高品質の孔版印刷画像が得られる。
【0037】
一般的には樹脂フィルムが厚い場合には微細粒子の粒径を大きくする必要がある。その場合には樹脂フィルムの製版領域を構成する孔は比較的大きいので、硬めのインクを使用して印刷するとよい。また、樹脂フィルムが薄い場合には微細粒子の粒径を小さくする必要がある。その場合には樹脂フィルムの製版領域を構成する孔は比較的小さいので、柔らかめのインクを使用して印刷するとよい。また、樹脂フィルムの製版領域を構成する孔が比較的小さい場合には、製版領域の孔から印刷用紙に転移するインクの量が少ないので、印刷直後に印刷用紙を重ねても裏移りしにくい。
【0038】
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。図12に示すように、この実施形態では、前述した圧力負荷手段は、製版時に任意の一定圧力を負荷する筆記機構30で構成されている。
筆記機構30は、シリンダ31内に鉛筆芯32が挿通され、ピストン33に対し外部から空気圧等で所定圧力が加えられる構成である。この印加圧力は空気源の制御で任意の一定な圧力とすることができる。
シリンダ31は、昇降機構35によって昇降自在である。昇降機構35は、シリンダ31に固定して設けられた吸引板35aと、吸引板35aに対面する固定の電磁ソレノイド35bで構成されている。製版前後の時期においては、電磁ソレノイド35bを非通電状態とすることにより、復帰バネ35cによって上昇し、製版時には、電磁ソレノイドを通電させることにより、電磁ソレノイド35bに吸引板35aが吸着され、鉛筆芯32を前記樹脂フィルム5上で所定圧力を加える。
【0039】
シリンダ31を保持する昇降機構35は、図示しないスライド機構によって水平面内のX,Y方向(互いに直角な二方向)にスライド自在な構成とされており、このスライド機構の動作で所望する所定の製版を行えるようになっている。
そして、シリンダ31に加える圧力を前述したように複数段階設定しておくことにより、樹脂フィルム5に開く切れ目の数を変化させることができる。
【0040】
例えば、前記第1実施形態で説明したように微細凹凸面10に異なる粒径の微細粒子10c〜10fを設けた構成においては、一番大きな微細粒子10fで樹脂フィルム5に孔を開ける第1の圧力と、1,2番目の大きさの微細粒子10f,10eで樹脂フィルム5に孔を開ける第2の圧力と、1〜3番目の大きさの微細粒子10f,10e,10dで樹脂フィルム5に孔を開ける第3の圧力と、全ての微細粒子10c〜10fで樹脂フィルム5に孔を開ける第4の圧力、の4段階の圧力が設定されている。
操作者は、これら微細粒子10c〜10fの粒径に対応して予め設定された4段階の圧力を選択することにより、この選択に対応して樹脂フィルム5に開く切れ目の数が変化し濃度の差を表現することができるようになる。
【0041】
また、この筆記機構30を用いて、製版を行う際に、外部から加えられる空気圧を変化させれば、この圧力の変化に応じて樹脂フィルム5に異なる径の切れ目状の孔を開孔させることができるようになる。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、微細凹凸面に重ねたフィルムに圧力を加えて押し付けることによりフィルムを製版でき、特に微細凹凸面は異なる粒径の微細粒子で構成されており、加える圧力を変えるだけでフィルムに開く孔の数が変化し濃度の差を表現することができるようになる。この製版は簡単で熟練を要せず、美しい印刷画質が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製版装置の第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】同第1実施形態の微細凹凸面を示す拡大断面図。
【図3】製版時の状態を示す断面図。
【図4】製版時の状態を示す斜視図。
【図5】製版時の状態を示す側面図。
【図6】製版時の圧力と印刷後の印刷濃度の関係を示す図。
【図7】本発明の製版装置の第2の実施形態を示す斜視図。
【図8】製版時の状態を示す側断面図。
【図9】製版時の状態を示す側面図。
【図10】本発明の製版装置の第3の実施形態を示す斜視図。
【図11】印刷時の状態を示す斜視図。
【図12】本発明の第4の実施形態で用いる筆記機構を示す側断面図。
【符号の説明】
3 孔版印刷用原紙
4 インク通過性支持体
5 樹脂フィルム
7,12,60 製版装置
10,14,20,63,73 微細凹凸面
10c〜10f 微細粒子
30 筆記機構
Claims (3)
- 硬質の微細粒子が密に配設保持されることにより表面に微細凹凸が形成されたシートと薄状樹脂フィルムを重ね合わせ、薄状樹脂フィルムに対し所定の圧力を加えることにより上記薄状樹脂フィルムにその圧力に対応した形状で微細な切れ目が形成される孔版原紙の製版装置であって、
前記薄状樹脂フィルムに対して所定の圧力を加えることにより、該圧力に対応して薄状樹脂フィルムに形成される前記微細な切れ目の数と大きさが変化し、これにより印刷濃度が変化するように、前記シート表面に、650メッシュパスの粒径を有する微細粒子(10c)と450メッシュパスの粒径を有する微細粒子(10d)と350メッシュパスの粒径を有する微細粒子(10e)と280メッシュパスの粒径を有する微細粒子(10f)を略均等に分散保持させることにより、前記シート表面に、4種の異なる高さを有する微細凹凸が形成されていることを特徴とする孔版原紙の製版装置。 - 前記薄状フィルムと前記シートを重合した状態で前記薄状フィルム上から圧力を加える筆記機構を備えた請求項1に記載の孔版原紙の製版装置。
- 請求項1又は2に記載の孔版原紙の製版装置を用い、前記薄状樹脂フィルムと前記シート間に圧力を加えることにより、前記薄状樹脂フィルムにその圧力に対応した形状で微細な切れ目を形成させることを特徴とする孔版原紙の製版方法。
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