JP3591803B2 - 発光装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光材等にカラー画像を記録するのに用いられる発光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、感光材にカラー画像を記録するための発光装置として、例えばLEDアレイを用いたものが知られている。
【0003】
前記LEDアレイは複数個の発光ダイオード素子を直線状に配列させて成るもので、例えば、シリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)から成る半導体基板の表面にn型半導体の単結晶とp型半導体の単結晶とをpn接合させてガリウム−砒素−リン(GaAsP)の化合物半導体層を形成することにより個々の発光ダイオード素子を構成している。尚、前記化合物半導体層は従来周知のMOCVD法やメサエッチング等によって発光ダイオード素子毎に半導体基板の上面に島状に形成される。
【0004】
そして前記LEDアレイをカラー画像の記録に用いる場合、感光材の搬送路上に青色光、緑色光及び赤色光を発光する3種類のLEDアレイを順番に配置させて発光装置を構成し、各LEDアレイからの光を各カラー画像信号に基づいて感光材に順次、照射させるとともに、感光材の表面に3色の画像を形成することによってカラー画像の記録を行うようにしている。尚、LEDアレイの発光波長は半導体基板等の材料によって決定されることから、発光波長の異なる3種類のLEDアレイは別々の半導体基板上に形成されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の発光装置は別々の半導体基板上に形成されている3種類のLEDアレイを組み合わせることによって構成されており、そのため、LEDアレイ同士を十分に近づけて配置させることが難しく、発光装置の使用に伴って各LEDアレイ間に大きな位置ずれが生じたり、或いは、発光装置の小型化に適さないという欠点を有している。
【0006】
また上述した従来の発光装置においては、LEDアレイを構成するガリウム−砒素−リンの単結晶が発光ダイオード素子毎に独立して形成されており、これらを前述のMOCVD法等によって形成すると、その内部に多数の格子欠陥がランダムに形成されたり、或いは不純物が混入される等して各単結晶の特性が異なってしまうことが多く、そのため、発光ダイオード素子間で発光ばらつきが生じ易く、濃度むらの原因となっていた。
【0007】
更に上述した従来の発光装置においては、LEDアレイを構成する半導体基板や化合物半導体層が砒素を含んで構成されており、その製造時にアルシン(AsH3 )等のガスが大量に使用されることから、有害な砒素の分離,回収処理のために多額のコストと手間が発生し、また有害ガスの使用は環境上、望ましくなかった。
【0008】
しかも、ガリウム砒素等の単結晶から成る発光ダイオード素子は、その使用時等に熱や電界による転位の影響を受けやすく、そのため、発光特性が比較的短時間のうちに変化し、使用に供しなくなる欠点も有していた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、本発明の発光装置は、上面に帯状の多孔質シリコン層が平行に3列形成されているシリコン基板と、該シリコン基板の各多孔質シリコン層上に形成されている複数個の透明電極と、前記シリコン基板の下面で、かつ各多孔質シリコン層の直下に形成されている3個の帯状共通電極とから成り、各透明電極と各共通電極との間に電力を印加し、両電極間に位置する多孔質シリコン層より光を発光させるようになした発光装置であって、前記3列の多孔質シリコン層は、多孔度が50〜65%であり、その各々の平均気孔径が0.1〜15nmと15〜30nmと30〜45nmとに異なっており、前記多孔質シリコン層の各上面に断面V字型の溝部が形成されており、前記多孔質シリコン層が前記シリコン基板の厚み方向に縦長に半楕円状をなすように形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明の発光装置は、上面に複数個の多孔質シリコン層が直線状に配列されて成る多孔質シリコン層列を上面に3列平行に配置させて成るシリコン基板と、該シリコン基板の各多孔質シリコン層上に形成されている透明電極と、前記シリコン基板の下面で、かつ前記各多孔質シリコン層列の直下に形成されている3個の帯状共通電極とから成り、各透明電極と各共通電極との間に電力を印加し、両電極間に位置する多孔質シリコン層より光を発光させるようになした発光装置であって、前記複数個の多孔質シリコン層は、多孔度が50〜65%であり、その平均気孔径が各多孔質シリコン層列毎に0.1〜15nmと15〜30nmと30〜45nmとに異なっており、前記多孔質シリコン層の各上面に断面V字型の溝部が形成されており、前記多孔質シリコン層が前記シリコン基板の厚み方向に縦長に半楕円状をなすように形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の発光装置の一形態を示す平面図、図2は図1のX−X線断面図であり、1はシリコン基板、1b,1g,1rは多孔質シリコン層、4は透明電極、5b,5g,5rは共通電極である。
【0013】
前記シリコン基板1は、厚み方向に(100)方位を配した単結晶シリコンから成り、従来周知のCZ法等によって製作される単結晶シリコンを250〜350μmの厚みでスライスして板状に加工することにより形成される。
【0014】
また前記シリコン基板1の上面には帯状の3個の多孔質シリコン層1b,1g,1rが略平行に3列に並んで設けられている。前記多孔質シリコン層1b,1g,1rは例えばシリコン基板1の上部領域に上面より9μmの深さのところまで形成されており、その多孔度は全て50〜65%に設定され、平均気孔径は、例えば、多孔質シリコン層1bが0.1〜15nm、多孔質シリコン層1gが15〜30nm、多孔質シリコン層1rが30〜45nmとなっている。
【0015】
前記多孔質シリコン層1b,1g,1rは、後述する透明電極4及び共通電極5b,5g,5r間に所定の電流(例えば数mA〜数100mA)が流れると、多孔質シリコン特有の量子効果によって、多孔質シリコン層1bが波長380〜480nmの青色光を、多孔質シリコン層1gが波長480〜580nmの緑色光を、また多孔質シリコン層1rが波長580〜680nmの赤色光をそれぞれ発光するようになっている。
【0016】
このような多孔質シリコン層1b,1g,1rは従来周知の陽極化成処理によってシリコン基板1の上面に形成される。具体的には、まず単結晶シリコンから成るシリコン基板1の上面に3つの窓部2b,2g,2rを有した絶縁膜2を従来周知のスパッタリング法及びフォトリソグラフィー技術によって被着させ、次に前記シリコン基板1を絶縁膜2が被着された状態のままフッ酸溶液中に浸漬する。次にフッ酸溶液中に配置させた処理用の電極とシリコン基板下面の後述する共通電極5b,5g,5rとの間に所定の電力を印加し、シリコン基板1の厚み方向に所定時間、通電することによって陽極化成処理が行われる。ここで各窓部2b,2g,2r内のシリコン基板1に印加する電力の電流密度は、窓部2b内で10mA・cm、窓部2g内で30mA・cm、窓部2r内で50mA・cmとなるように調整されており、これによって所定の平均気孔径を有した3つの多孔質シリコン層1b,1g,1rが形成されることとなる。尚、前記絶縁膜2は各多孔質シリコン層1b,1g,1rの形成領域を規定するマスクとして機能させるためのものであり、例えば窒化シリコン(Six Ny )等の絶縁材料によって0.1〜0.3μmの厚みに形成される。
【0017】
また、このようなシリコン基板1の上面には各多孔質シリコン層1b,1g,1rの長さ方向に沿って複数個の透明電極3が、また下面には各多孔質シリコン層1b,1g,1rに対応する3個の共通電極5b,5g,5rがそれぞれ形成されており、この両電極間に位置する多孔質シリコン層1b,1g,1rによって複数個の発光部B,G,Rから成る3つの発光部列を構成している。
【0018】
前記複数の透明電極4は、例えば、ITO等の透明な導電材料により0.05〜0.2μmの厚みをもって形成されており、少なくとも一部を各窓部2b,2g,2r内の多孔質シリコン層1b,1g,1r上まで延在させて各多孔質シリコン層1b,1g,1rと電気的に接続させておくことにより発光部B,G,Rに電流を流すための一方の電極として機能する。
【0019】
また前記共通電極5b,5g,5rは、例えば、金や銀,銅等の導電材料により0.05〜0.2μmの厚みに形成されており、前記発光部B,G,Rに電流を流すための他方の電極として機能する。
【0020】
尚、前述した絶縁膜2や透明電極4,共通電極5b,5g,5rは、従来周知の薄膜手法、例えば、スパッタリング及びフォトリソグラフィー技術を採用することによって所定厚み、所定パターンに被着・形成される。
【0021】
かくして上述した発光装置は、3つの多孔質シリコン層1b,1g,1rの各透明電極4及び共通電極5b,5g,5r間に外部からのカラー画像信号に基づいて所定の電力を印加し、両電極間の多孔質シリコン層1b,1g,1rに形成した各発光部B,G,Rを個々に選択的に発光させるとともに、該発光した光を感光材に順次、照射させ、感光材の表面に3色の画像を形成することによってカラー画像の記録が行われる。
【0022】
以上のような本形態の発光装置は、共通のシリコン基板1上に平均気孔径の異なる3つの多孔質シリコン層1b,1g,1rを形成したもので、各多孔質シリコン層1b,1g,1rに沿って設けられる発光部列同士を相互に近づけて配置させることができるため、発光装置の使用に伴って発生する各発光部列間の位置ずれを極力小さくすることができ、また発光装置の小型化にも供した構造をとることができる。
【0023】
また上述した本形態の発光装置においては、発光部B,G,Rを構成する多孔質シリコン層1b,1g,1rやシリコン基板1に格子欠陥が形成されたり、或いは製造工程中に不都合な不純物が混入したりすることが一切無く、従来例として示したLEDアレイのように、各発光部間で発光ばらつきを生じることもない。よって濃度むらの無い良好な印画が得ることができ、カラー画像記録用の露光源として良好に機能させることができる。
【0024】
更に本形態の発光装置においては、前述の多孔質シリコン層1b,1g,1rの製造時に砒素を含んだ化学物質等を用いることがなく、有害物質の分離,回収処理等が一切不要となる。これにより、発光装置を比較的低コストで製作することができる。
【0025】
また更に本形態の発光装置においては、前記シリコン基板1や多孔質シリコン層1b,1g,1rが単結晶シリコンにより形成されており、化学的に極めて安定であることから、これを発光装置として使用する際に熱や電界による転位の影響を受けにくく、その発光特性を長期間にわたって良好な状態に維持することができる。
【0026】
尚、本発明の発光装置は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良が可能であり、例えば、各多孔質シリコン層の上面に断面V字型の溝部3b,3g,3rを形成しておけば、多孔質シリコン層1b,1g,1rを前述の陽極化成処理によって形成する際に、シリコン基板1の厚み方向にかかる電流の流れを溝部3b,3g,3rの各底部に集中させて多孔質シリコン層1b,1g,1rを縦長に半楕円状をなすように形成することができ、これによって各発光部B,G,Rより発する光をよりシャープになすことができ、しかも多孔質シリコン層1b,1g,1rの形成領域がシリコン基板の面方向に大きく広がることはないため、個々の発光部B,G,Rを小さくしてこれらを高密度に配列させることも可能となる。このような溝部3b,3g,3rは、シリコン基板1の上面に該基板1を形成する単結晶シリコンの(110)方位に沿って例えば幅w1:2〜5μm、深さh1:2〜6μm、角度θ:54〜55°の大きさでもって形成され、具体的な形成方法としては、まず上面に前述の絶縁膜2が被着されたシリコン基板1を所定の水酸化カリウム溶液中に一定時間浸漬し、各窓部2b,2g,2r内のシリコン基板上面をエッチングすることにより得られる。このとき、シリコン基板1を形成する単結晶シリコンの(100)方位はシリコン基板1の厚み方向に、(111)方位は溝部3b,3g,3rの向きと直交する方向にそれぞれ合致させてあり、このため、シリコン基板1の厚み方向のエッチングレートは溝部3b,3g,3rの向きと直交する方向のエッチングレートの約10倍となり、形成される溝の断面形状は略V字形状となる。尚、前記溝部はその形状が必ずしも図2のような鋭いV字型でなくても良く、深さ方向に向かって先細り状に形成されていれば上述の形態と同様の効果を奏する。例えば、溝部の側面に少し丸みをつけたり、或いは溝部を四角錐状になしてこれを各発光部毎に形成するようにしても良く、このように溝部を四角錐状になしておけば、発光部B,G,Rからの光をよりシャープになすことができる。
【0027】
また上述の形態においてはシリコン基板の上面に平均気孔径の異なる3列の帯状多孔質シリコン層を平行に3列形成するようにしたが、これに代えてシリコン基板の上面に複数個の多孔質シリコン層が直線状に配列されて成る多孔質シリコン層列を3列平行に配置させ、多孔質シリコン層の平均気孔径を各多孔質シリコン層列毎に異なるようにしても良い。この場合、透明電極は各多孔質シリコン層上に設けられ、共通電極は各多孔質シリコン層列の直下に形成されることとなる。
【0028】
更に上述の形態においては透明電極4を各多孔質シリコン層毎に独立して設けるようにしたが、これに代えて透明電極を複数の各多孔質シリコン層に共通に設けるようにしても良い。この場合、各多孔質シリコン層1b,1g,1rの発光部B,G,Rには透明電極を介して共通の印画データが与えられ、この印画データにより発光駆動させる多孔質シリコン層を共通電極5b,5g,5rの選択によって決定する。尚、前記発光部B,G,Rは時間順次的に発光・駆動されるように外部の駆動回路によって制御される。
【0029】
【発明の効果】
本発明の発光装置は、共通のシリコン基板上に多孔度が50〜65%であり、平均気孔径が0.1〜15nmと15〜30nmと30〜45nmとに異なる3つの多孔質シリコン層を形成したもので、各多孔質シリコン層に沿って設けられる発光部列同士を相互に近づけて配置させることができるため、発光装置の使用に伴って発生する各発光部列間の位置ずれを極力小さくすることができ、また発光装置の小型化にも供した構造をとることができる。
【0030】
また本発明の発光装置によれば、発光部を構成する多孔質シリコン層やシリコン基板には格子欠陥が形成されたり、或いは製造工程中に不都合な不純物が混入したりすることが一切無く、各発光部間で発光ばらつきを生じることもない。よって濃度むらの無い良好な印画が得ることができ、カラー画像記録用の露光源として良好に機能させることができる。
【0031】
更に本発明の発光装置によれば、前記多孔質シリコン層の製造時に砒素を含んだ化学物質等を用いることがなく、有害物質の分離,回収処理等が一切不要であるため、発光装置を比較的低コストで製作することができる。
【0032】
また更に本発明の発光装置によれば、前記シリコン基板や多孔質シリコン層が単結晶シリコンにより形成されており、化学的に極めて安定していることから、使用時に熱や電界による転位の影響を受けにくく、その発光特性を長期間にわたって良好な状態に維持することができる。
【0033】
更にまた本発明の発光装置によれば、各多孔質シリコン層の上面に断面V字型の溝部を形成し、多孔質シリコン層をシリコン基板の厚み方向に縦長に半楕円状をなすように形成することにより、各発光部の発する光をよりシャープになすことができ、しかも多孔質シリコン層の形成領域がシリコン基板の面方向に大きく広がることはないため、個々の発光部を小さくしてこれらを高密度に配列させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発光装置の一形態を示す平面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】各発光部B,G,Rの発光特性を示す線図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・・シリコン基板
1b,1g,1r・・・多孔質シリコン層
3b,3g,3r・・・溝部
4・・・・・・・・・・透明電極
5b,5g,5r・・・共通電極
Claims (2)
- 上面に帯状の多孔質シリコン層が平行に3列形成されているシリコン基板と、
該シリコン基板の各多孔質シリコン層上に形成されている複数個の透明電極と、
前記シリコン基板の下面で、かつ各多孔質シリコン層の直下に形成されている3個の帯状共通電極とから成り、
各透明電極と各共通電極との間に電力を印加し、両電極間に位置する多孔質シリコン層より光を発光させるようになした発光装置であって、
前記3列の多孔質シリコン層は、多孔度が50〜65%であり、その各々の平均気孔径が0.1〜15nmと15〜30nmと30〜45nmとに異なっており、前記多孔質シリコン層の各上面に断面V字型の溝部が形成されており、前記多孔質シリコン層が前記シリコン基板の厚み方向に縦長に半楕円状をなすように形成されていることを特徴とする発光装置。 - 上面に複数個の多孔質シリコン層が直線状に配列されて成る多孔質シリコン層列を上面に3列平行に配置させて成るシリコン基板と、
該シリコン基板の各多孔質シリコン層上に形成されている透明電極と、
前記シリコン基板の下面で、かつ前記各多孔質シリコン層列の直下に形成されている3個の帯状共通電極とから成り、
各透明電極と各共通電極との間に電力を印加し、両電極間に位置する多孔質シリコン層より光を発光させるようになした発光装置であって、
前記複数個の多孔質シリコン層は、多孔度が50〜65%であり、その平均気孔径が各多孔質シリコン層列毎に0.1〜15nmと15〜30nmと30〜45nmとに異なっており、前記多孔質シリコン層の各上面に断面V字型の溝部が形成されており、前記多孔質シリコン層が前記シリコン基板の厚み方向に縦長に半楕円状をなすように形成されていることを特徴とする発光装置。
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