JP3591551B2 - ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネートの製造法に関する。詳しくは、例えば、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料とし、エステル交換反応によってポリカーボネートを製造するにあたり、重合触媒として、上記一般式(I)で表される4級ホスホニウム化合物を用いることにより、反応速度を向上させうるとともに、反応最終段階で該触媒の熱分解による除去が可能であって、品質に優れたポリカーボネートを効率よく製造しうる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート(以下、「PC」と略することがある。)は、透明性,耐熱性あるいは耐衝撃性に優れたエンジニアリングプラスチックであって、現在、電気・電子分野,自動車分野,光学部品分野,その他の工業分野で広く使用されている。
上記のような特徴を有するポリカーボネートの製造方法としては、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを直接反応させる方法(界面重縮法)、あるいは芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジフェニルとを溶融状態でエステル交換させる方法(溶融重合法)、その反応後段を固相状態で行う方法(固相重合法:特願平5−18257、膨張固相重合法:特願平7−17230)等が知られている。
このようなPCの製造方法において、界面重縮法は、(1)有毒なホスゲンを用いなければならないこと、(2)副生する塩化水素や塩化ナトリウムなどの含塩素化合物によって製造装置が腐食すること、(3)樹脂中に混入する水酸化ナトリウムなどポリマーの物性に悪影響を及ぼす不純物の分離が困難なことなどの諸問題があり、従来よりその製造法の改良が望まれていた。
この問題を解消するために、最近、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応を利用した、溶融重合法の開発が盛んに行われている。
【0003】
上記溶融重合法においては、重合触媒として通常アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物,炭酸塩,酢酸塩などの塩基性触媒が使用される。また、近年、例えば特開平2−124934号公報において記載されている含窒素塩基性化合物とアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属触媒として用いる方法、または特開平5−1145号公報に記載されている電子供与性アミンと周期律表第IIb,Ib,Vb族の元素を含む化合物とからなる触媒を用いる方法が開示されており、新しい触媒系の研究も極めて活発に行われている。
しかしながら、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属などの触媒が、最終製品であるポリカーボネートに残存すると、耐熱性あるいは耐加水分解性などの物性低下を招く問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、例えば、特開平4−175368号公報には、重合終了時に反応系に酸性物質を添加し、重合触媒を中和する方法が開示されている。しかし、ここに開示されている方法では、中和に用いた過剰の酸性物質を更に無害化する必要があるなど問題点が挙げられ、十分満足の行く方法とはいえない。
また、特開平4−296325号公報には、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属などを使用せずに、電子供与性アミン化合物を触媒として用いる方法が記載されている。しかしながら、280〜310℃という高温下で、1mmHgという減圧下では、電子供与性アミン化合物は反応系から留去してしまい、満足な活性が得られない、あるいは触媒量を多量に用いなければならない等の問題点があり、十分な方法とは言い難い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来のエステル交換反応によるポリカーボネートの製造方法がもつ欠点を改良し、反応速度を向上させることができ、耐熱性及び耐加水分解性に優れた高品質のポリカーボネートを効率よく製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために、エステル交換法において、反応速度を向上させると共に、耐熱性及び耐加水分解性に優れたポリカーボネートを効率よく製造できる方法を開発すべく鋭意研究を重ねた。
その結果、触媒として、上記一般式(I)で表される4級ホスホニウム化合物を用いることにより、エステル交換反応で安定した活性を示し、かつ反応最終段階で熱分解が可能で、ポリマーの品質低下をもたらすことがなく、前記の課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、エステル交換反応によってポリカーボネートを製造するにあたり、重合触媒として、一般式(I)
((R1−Ph)n−PPh(4-n))+(X1)-・・・(I)
〔式中、R1は有機基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい、X1はハロゲン原子,水酸基,アルキルオキシ基,アリールオキシ基,アルキルカルボキシル基,アリールカルボキシル基又はBR4(Rは水素原子又は炭化水素基を示し、4つのRは互いに同一でも異なっていてもよい)を示し、Phはフェニル基を示し、nは1〜4の整数を示す。〕
で表される4級ホスホニウム化合物を用いる(但し、含窒素有機塩基性化合物と組合わせて用いる場合を除く)ことを特徴とするポリカーボネートの製造方法を提供するものである。ここで、エステル交換反応の原料は、(A)ジヒドロキシ化合物及び(B)炭酸ジエステルであることが好ましく、エステル交換反応終了後、触媒の分解温度以上で反応生成物を熱処理することが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明においては、エステル交換反応によりポリカーボネートが製造される。このエステル交換法において用いられる原料については、特に制限はなく、通常のエステル交換法による製造に供される各種のものが用いられる。
例えば、エステル交換反応において、(1)(A)成分としてジヒドロキシ化合物及び(B)成分として炭酸ジエステル、(2)(A)成分としてジヒドロキシ化合物のジエステル及び(B)成分として炭酸ジエステル、(3)(A)成分としてジヒドロキシ化合物のジ炭酸エステル及び(B)成分として炭酸ジエステル、(4)ジヒドロキシ化合物のジ炭酸エステル(自己縮合)、(5)ジヒドロキシ化合物のモノ炭酸エステル(自己エステル交換)などが挙げられる。
これらの中では、(1)の(A)成分としてジヒドロキシ化合物及び(B)成分として炭酸ジエステルとが好ましく用いられる。
【0008】
ここで、エステル交換反応に好ましく用いられる(A)成分のジヒドロキシ化合物は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物,脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、これらから選択される少なくとも一種の化合物である。
この(A)成分の一つとして用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物は、一般式(II)
【0009】
【化1】
【0010】
で表される化合物を挙げることができる。上記一般式(II)において、R3及びR4は、それぞれフッ素,塩素,臭素,ヨウ素のハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基、例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,t−ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,シクロヘキシル基,ヘブチル基,オクチル基などを示す。R3及びR4はたがいに同一であっても異なっていてもよい。またR3が複数ある場合は複数のR3は同一でも異なっていてもよく、R4が複数ある場合は複数のR4は同一でも異なっていてもよい。m及びnは、それぞれ0〜4の整数である。そして、Zは単結合,炭素数1〜8のアルキレン基,炭素数2〜8のアルキリデン基,炭素数5〜15のシクロアルキレン基,炭素数5〜15のシクロアルキリデン基,又は−S−,−SO−,−SO2−,−O−,−CO−結合若しくは式(III),(III')
【0011】
【化2】
【0012】
で示される結合を示す。炭素数1〜8のアルキレン基,炭素数2〜8のアルキリデン基としては、例えばメチレン基,エチレン基,プロピレン基,ブチレン基,ペンチレン基,ヘキシレン基,エチリデン基,イソプロピリデン基などが挙げられ、炭素数5〜15のシクロアルキレン基,炭素数5〜15のシクロアルキリデン基としては、例えばシクロペンチレン基,シクロヘキシレン基,シクロペンチリデン基,シクロヘキシリデン基などが挙げられる。
【0013】
上記一般式(II)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン;1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA);2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン;1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)イソブタン;1,1−ビス(2−t−アミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン;2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン;4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン;1,1−ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン;1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル;ビス(4,−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類;ビス(4ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビス(ヒドロキシアリール)スルホン類、4,4'−ジヒドロキシビフェニル;4,4'−ジヒドロキシ−2,2'−ジメチルビフェニル;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルビフェニル;4,4'−ジヒドロキシ−3、3'−ジシクロヘキシルビフェニル;3,3'−ジフルオロ−4,4'−ジヒドロキシビフェニルなどのジヒドロキシビフェニル類などが挙げられる。
【0014】
上記一般式(II)以外の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、ジヒドロキシベンゼン類、ハロゲン及びアルキル置換ジヒドロキシベンゼン類などがある。例えば、レゾルシン,3−メチルレゾルシン,3−エチルレゾルシン,3−プロピルレゾルシン,3−ブチルレゾルシン,3−t−ブチルレゾルシン,3−フェニルレゾルシン,3−クミルレゾルシン;2,3,4,6−テトラフルオロレゾルシン;2,3,4,6−テトラブロモレゾルシン;カテコール,ハイドロキノン,3−メチルハイドロキノン,3−エチルハイドロキノン,3−プロピルハイドロキノン,3−ブチルハイドロキノン,3−t−ブチルハイドロキノン,3−フェニルハイドロキノン,3−クミルハイドロキノン;2,5−ジクロロハイドロキノン;2,3,5,6−テトラメチルハイドロキノン;2,3,4,6−テトラ−t−ブチルハイドロキノン;2,3,5,6−テトラフルオロハイドロキノン;2,3,5,6−テトラブロモハイドロキノンなどが挙げられる。
【0015】
また、(A)成分の一つとして用いられる脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、各種のものがある。例えば、ブタン−1,4−ジオール;2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール;ヘキサン−1,6−ジオール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;テトラエチレングリコール;オクタエチレングリコール;ジプロピレングリコ−ル;N,N−メチルジエタノールアミン;シクロヘキサン−1,3−ジオール;シクロヘキサン−1,4−ジオール;1,4−ジメチロールシクロヘキサン;p−キシリレングリコール;2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン及び二価アルコール又はフェノールのエトキシ化またはプロポキシ化生成物、例えばビス−オキシエチル−ビスフェノールA;ビス−オキシエチル−テトラクロロビスフェノールA又はビス−オキシエチル−テトラクロロヒドロキノンなどが挙げられる。
【0016】
本発明の好ましい製造方法において、(A)成分のジヒドロキシ化合物としては、上記の化合物一種又は二種以上を適宜選択して用いるが、これらの中では、芳香族ジヒドロキシ化合物であるビスフェノールAを用いるのが好ましい。
一方、本発明において、(B)成分として用いられる炭酸ジエステルは、各種のものがある。例えば、炭酸ジアリール化合物,炭酸ジアルキル化合物又は炭酸アルキルアリール化合物から選択される少なくとも一種の化合物である。
この(B)成分の一つとして用いられる炭酸ジアリール化合物は、一般式(IV)
【0017】
【化3】
(式中、Ar1及びAr2はそれぞれアリール基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物、又は一般式(V)
【0018】
【化4】
【0019】
(式中、Ar3及びAr4はそれぞれアリール基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、D1は前記芳香族ジヒドロキシ化合物から水酸基2個を除いた残基を示す。)
で表される化合物である。
また、炭酸ジアルキル化合物は、一般式(VI)
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、R5及びR6はそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数4〜7のシクロアルキル基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物、又は一般式(VII)
【0022】
【化6】
【0023】
(式中、R7及びR8はそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数4〜7のシクロアルキル基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、D2は前記芳香族ジヒドロキシ化合物から水酸基2個を除いた残基を示す。)
で表される化合物である。
そして、炭酸アルキルアリール化合物は、一般式(VIII)
【0024】
【化7】
【0025】
(式中、Ar5はアリール基、R9は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数4〜7のシクロアルキル基を示す。)
で表される化合物、又は一般式(IX)
【0026】
【化8】
【0027】
(式中、Ar6はアリール基,R10は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数4〜7のシクロアルキル基、D3は前記芳香族ジヒドロキシ化合物から水酸基2個を除いた残基を示す。)
で表される化合物である。
ここで、炭酸ジアリール化合物としては、例えば、ジフェニルカーボネート,ジトリルカーボネート,ビス(クロロフェニル)カーボネート,m−クレジルカーボネート,ジナフチルカーボネート,ビス(ジフェニル)カーボネート,ビスフェノールAビスフェニルカーボネートなどが挙げられる。
また、炭酸ジアルキル化合物としては、例えば、ジエチルカーボネート,ジメチルカーボネート,ジブチルカーボネート,ジシクロヘキシルカーボネート,ビスフェノールAビスメチルカーボネートなどが挙げられる。
【0028】
そして、炭酸アルキルアリール化合物としては、例えば、メチルフェニルカーボネート,エチルフェニルカーボネート,ブチルフェニルカーボネート,シクロヘキシルフェニルカーボネート,ビスフェノールAメチルフェニルカーボネートなどが挙げられる。
本発明において、(B)成分の炭酸ジエステルとしては、上記の化合物一種又は二種以上を適宜選択して用いるが、これらの中では、ジフェニルカーボネートを用いるのが好ましい。
【0029】
次に、本発明に用いられる前記ジヒドロキシ化合物及び前記炭酸ジエステル以外の原料としては、次のものが挙げられる。
すなわち、ジヒドロキシ化合物のジエステル類としては、例えば、ビスフェノールAのジ酢酸エステル,ビスフェノールAのジプロピオン酸エステル,ビスフェノールAのジブチル酸エステル,ビスフェノールAのジ安息香酸エステルなどを挙げることができる。
また、ジヒドロキシ化合物のジ炭酸エステル類としては、例えば、ビスフェノールAのビスメチル炭酸エステル,ビスフェノールAのビスエチル炭酸エステル,ビスフェノールAのビスフェニル炭酸エステルなどを挙げることができる。
そして、ジヒドロキシ化合物のモノ炭酸エステル類としては、例えば、ビスフェノールAモノメチル炭酸エステル,ビスフェノールAモノエチル炭酸エステル,ビスフェノールAモノプロピル炭酸エステル,ビスフェノールAモノフェニル炭酸エステルなどを挙げることができる。
【0030】
そして、本発明の製造方法においては、必要に応じて末端停止剤を用いることができる。この末端停止剤としては、例えばo−n−ブチルフェノール;m−n−ブチルフェノール;p−n−ブチルフェノール;o−イソブチルフェノール;m−イソブチルフェノール;p−イソブチルフェノール;o−t−ブチルフェノール;m−t−ブチルフェノール;p−t−ブチルフェノール;o−n−ペンチルフェノール;m−n−ペンチルフェノール;p−n−ペンチルフェノール;o−n−ヘキシルフェノール;m−n−ヘキシルフェノール;p−n−ヘキシルフェノール;o−シクロヘキシルフェノール;m−シクロヘキシルフェノール;p−シクロヘキシルフェノール;o−フェニルフェノール;m−フェニルフェノール;p−フェニルフェノール;o−n−ノニルフェノール;m−n−ノニルフェノール;p−n−ノニルフェノール;o−クミルフェノール;m−クミルフェノール;p−クミルフェノール;o−ナフチルフェノール;m−ナフチルフェノール;p−ナフチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,4−ジ−t−ブチルフェノール;3,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジクミルフェノール;3,5−ジクミルフェノール;式
【0031】
【化9】
で表される化合物や、式
【0032】
【化10】
【0033】
で表されるクロマン誘導体などの一価フェノールが挙げられる。
このようなフェノール類のうち、本発明では特に限定されないが、p−t−ブチルフェノール,p−クミルフェノール,p−フェニルフェノールなどが好ましい。
また、式
【0034】
【化11】
【0035】
で表される化合物なども用いることができる。
さらに、本発明では、必要に応じて、フロログルシン;トリメリット酸;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1−〔α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α',α'−ビス(4"−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン;α,α',α"−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;イサチンビス(o−クレゾール)などを分岐剤として用いることもできる。
【0036】
本発明の製造方法では、エステル交換反応の際に、重合触媒として、一般式(I)で表される4級ホスホニウム化合物を用いることが必要である。
ここで、一般式(I)は、
((R1−Ph)n−PPh(4-n))+(X1)-・・・(I)
〔式中、R1は有機基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい、X1はハロゲン原子,水酸基,アルキルオキシ基,アリールオキシ基,アルキルカルボキシル基,アリールカルボキシル基又はBR4(Rは水素原子又は炭化水素基を示し、4つのRは互いに同一でも異なっていてもよい)を示し、Phはフェニル基を示し、nは1〜4の整数を示す。〕
で表される。
このような4級ホスホニウム化合物としては、例えばビフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,ビフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ビフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキド,メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシドなどが挙げられる。好ましくは、ビフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ビフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド,メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシドが重合活性の向上、重合安定性の向上、品質の向上の点から望ましい。
【0037】
4級ホスホニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、4級ホスホニウム化合物は、金属不純物の含有量ができるだけ少ないものが好ましく、特にアルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物の含有量が50ppm以下のものが好適である。
本発明においては、重合触媒として、4級ホスホニウム塩を10-3〜10-8モル、好ましくは10-4〜10-7モル用いるのが望ましい。4級ホスホニウム塩の使用量が10-8モル未満では反応後期での触媒活性が不充分となり、また10-3モルを超えるとコストアップに繋がり好ましくない。
【0038】
本発明の製造方法では、通常のエステル交換法によるポリカーボネートの製造に供される原料が用いられるが、好ましくは、(A)成分のジヒドロキシ化合物及び(B)成分の炭酸ジエステルと、必要に応じ末端停止剤あるいは分岐剤等を用いてエステル交換反応を行い、品質の優れたポリカーボネートを得ることができる。具体的には、公知のエステル交換法に準じて反応を進行させればよい。
以下に、本発明の好ましい製造方法の手順及び条件を具体的に示す。
まず、(A)成分のジヒドロキシ化合物と(B)成分の炭酸ジエステルとを、ジヒドロキシ化合物に対して炭酸ジエステルが0.9〜1.5倍モルになるような比率でエステル交換反応する。なお、状況に応じて、0.98〜1.20倍モルが好ましい。
【0039】
上記のエステル交換反応に当たって、前記の一価フェノールなどからなる末端停止剤の存在量が、(A)成分であるジヒドロキシ化合物に対して、0.05〜10モル%の範囲にあると、得られるポリカーボネートの水酸基末端が封止されるため、耐熱性及び耐水性に充分優れたポリカーボネートが得られる。
このような前記の一価フェノールなどからなる末端停止剤は、予め反応系に全量添加しておいてもよい。また、予め反応系に一部添加しておき、反応の進行に伴って残部を添加してもよい。さらに、場合によっては、前記(A)成分のジヒドロキシ化合物と(B)成分の炭酸ジエステルとのエステル交換反応が一部進行した後に、反応系に全量添加してもよい。
【0040】
本発明の製造方法に従ってエステル交換反応を行うに当たっては、反応温度は、特に制限はなく、通常100〜330℃の範囲、好ましくは180〜300℃の範囲で選ばれるが、より好ましくは、反応の進行に合わせて次第に180〜300℃まで温度を上げていく方法がよい。このエステル交換反応の温度が100℃未満では反応速度が遅くなり、一方330℃を超えると副反応が生じたり、あるいは生成するポリカーボネートが着色するなどの問題が生じ、好ましくない。
また、反応圧力は、使用するモノマーの蒸気圧や反応温度に応じて設定される。これは、反応が効率良く行われるように設定されればよく、限定されるものではない。通常、反応初期においては、1〜50atm(760〜38,000torr)までの大気圧(常圧)ないし加圧状態にしておき、反応後期においては、減圧状態、好ましくは最終的には0.01〜100torrにする場合が多い。
さらに、反応時間は、目標の分子量となるまで行えばよく、通常、0.2〜10時間程度である。
【0041】
そして、上記のエステル交換反応は、通常不活性溶剤の不存在下で行われるが、必要に応じて、得られるポリカーボネートの1〜150重量%の不活性溶剤の存在下において行ってもよい。ここで、不活性溶剤としては、例えば、ジフェニルエーテル,ハロゲン化ジフェニルエーテル,ベンゾフェノン,ポリフェニルエーテル,ジクロロベンゼン,メチルナフタレンなどの芳香族化合物、トリシクロ(5,2,10)デカン,シクロオクタン,シクロデカンなどのシクロアルカンなどが挙げられる。また、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、ここで、不活性ガスとしては、例えばアルゴン,二酸化炭素,一酸化二窒素,窒素などのガス、クロロフルオロ炭化水素,エタンやプロパンなどのアルカン、エチレンやプロピレンなどのアルケンなど、各種のものが挙げられる。
【0042】
また、本発明においては、必要に応じ、酸化防止剤を反応系に添加してもよい。
この酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤が好ましく、例えばトリメチルホスファイト,トリエチルホスファイト,トリブチルホスファイト,トリオクチルホスファイト,トリノニルホスファイト,トリデシルホスファイト,トリオクタデシルホスファイト,ジステアリルペンタエリスチルジホスファイト,トリス(2−クロロエチル)ホスファイト,トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイトなどのトリアルキルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイトなどのトリシクロアルキルホスファイト、トリフェニルホスファイト,トリクレジルホスファイト,トリス(エチルフェニル)ホスファイト,トリス(ブチルフェニル)ホスファイト,トリス(ノニルフェニル)ホスファイト,トリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイトなどのトリアリールホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイトなどのモノアルキルジアリールホスファイト、トリメチルホスフェート,トリエチルホスフェート,トリブチルホスフェート,トリオクチルホスフェート,トリデシルホスフェート,トリオクタデシルホスフェート,ジステアリルペンタエリスリチルジホスフェート,トリス(2−クロロエチル)ホスフェート,トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェートなどのトリシクロアルキルホスフェート、トリフェニルホスフェート,トリクレジルホスフェート,トリス(ノニルフェニル)ホスフェート,2−エチルフェニルジフェニルホスフェートなどのトリアリールホスフェートなどが挙げられる。
【0043】
本発明においては、反応が進行するとともに、使用した炭酸ジエステルに対応するフェノール類,アルコール類,又はそれらのエステル類及び不活性溶剤が反応器より脱離してゆく。これら脱離物は、分離、精製しリサイクル使用も可能であり、これらを除去する設備があれば好ましい。
そして、本発明は、バッチ式又は連続式に行うことができ、かつ任意の装置を使用することができる。なお、連続式で製造する場合には、少なくとも二基以上の反応器を使用し、上記の反応条件を設定するのが好ましい。
本発明で用いられる反応器は、その材質や構造は、特に制限はされないが、通常の攪拌機能を有していればよい。ただし、反応後段においては粘度が上昇するので高粘度型の攪拌機能を有するものが好ましい。さらに、反応器の形状は槽型のみならず、押出機型のリアクターなどでもよい。
【0044】
本発明においては、エステル交換反応終了後、得られるポリカーボネートの品質(着色)を良好なものとするために、触媒の分解温度以上、好ましくは300℃前後に反応物を熱処理して、触媒を熱分解除去するのが好ましい。
以上のようにして得られたポリカーボネートは、そのまま造粒してもよく、また、押出機などを用いて成形することもできる。
また、本発明によって得られるポリカーボネートは、可塑剤,顔料,潤滑剤,離型剤,安定剤,無機充填剤などのような周知の添加剤を配合して使用することができる。
さらに、このポリカーボネートは、ポリオレフィン,ポリスチレン,ポリエステル,ポリスルホネート,ポリアミド,ポリフェニレンエーテルなどの重合体とブレンドすることが可能である。特に、OH基,COOH基,NH2基などを末端に有するポリフェニレンエーテル,ポリエーテルニトリル,末端変性ポリシロキサン化合物,変性ポリプロピレン,変性ポリスチレンなどと併用すると効果的である。
【0045】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1〜4、比較例1〜4
内容積100ミリリットルのニッケル鋼製のオートクレーブ(攪拌機付き)に、ビスフェノールA(BPA)22.8g(0.1モル)とジフェニルカーボネート23.5g(1.1モル)を投入した。ここに触媒として、第1表に示す種類と量の触媒を添加し、窒素置換を5回行った。混合物を180℃まで加熱しアルゴン雰囲気下で30分間反応させた。次いで、温度を210℃に昇温して、次第に真空度を100mmHgまで上げて30分間反応させ、さらに、240℃に昇温し、除々に10mmHgまで上げて30分間反応させた。更に温度を270℃、真空度を2mmHgに上げて30分間反応させたのち、温度290℃、真空度0.3mmHgで30分間反応させ、反応を終了させた。
次に、オートクレーブ内に、粘調で無色透明な縮合物の粘度平均分子量を求め。また、該縮合物をプレス成形し、厚さ1mm、直径10mnのプレートを作成し、これを121℃のスチームに48時間曝露し、外観及び粘度平均分子量の低下を求め、耐スチーム性を評価した。結果を第1表に示す。
なお、上記の粘度平均分子量は、下記の式を用いて算出した。
〔η〕=1.23×10-4Mv0.83
【0046】
【表1】
〔注〕
BPTB :ビフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート (Na,Ca,K<1ppm)
BPPO :ビフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド (Na,Ca,K<1ppm)
POPTB:フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(N a,Ca,K<1ppm)
MOPTB:メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(Na ,Ca,K<1ppm)
TPTB :テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート (Na,Ca,K<1ppm)
MTPTB:メチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート (Na<7ppm,Mg<1ppm)
POPPO:フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド (Na,Ca,K<1ppm)
MOPPO:メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド (Na,Ca,K<1ppm)
【0047】
【発明の効果】
本発明によると、エステル交換反応によるポリカーボネートの製造において、重合触媒として、前記一般式(I)で表される4級ホスホニウム塩を用いることにより、触媒活性が充分に高く、反応速度を向上させうるとともに、反応最終段階で該触媒の熱分解による除去が可能であって、品質に優れたポリカーボネートを効率よく製造することができる。
Claims (6)
- エステル交換反応によってポリカーボネートを製造するにあたり、重合触媒として、一般式(I)
((R1−Ph)n−PPh(4-n))+(X1)-・・・(I)
〔式中、R1は有機基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい、X1はハロゲン原子,水酸基,アルキルオキシ基,アリールオキシ基,アルキルカルボキシル基,アリールカルボキシル基又はBR4(Rは水素原子又は炭化水素基を示し、4つのRは互いに同一でも異なっていてもよい)を示し、Phはフェニル基を示し、nは1〜4の整数を示す。〕
で表される4級ホスホニウム化合物を用いる(但し、含窒素有機塩基性化合物と組合わせて用いる場合を除く)ことを特徴とするポリカーボネートの製造方法。 - エステル交換反応によってポリカーボネートを製造するにあたり、重合触媒として、ビフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ビフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド,メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート及びメトキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種の4級ホスホニウム化合物を使用してなる(但し、含窒素有機塩基性化合物と組合わせて用いる場合を除く)ポリカーボネートの製造方法。
- エステル交換反応の原料が、(A)ジヒドロキシ化合物及び(B)炭酸ジエステルである請求項1又は2記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記(A)成分のジヒドロキシ化合物が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである請求項3記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記(B)成分の炭酸ジエステルが、ジフェニルカーボネートである請求項3記載のポリカーボネートの製造方法。
- エステル交換反応終了後、触媒の分解温度以上で反応生成物を熱処理する請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
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