JP3591495B2 - 傾斜係止突起部付き耐震、耐風雨瓦 - Google Patents

傾斜係止突起部付き耐震、耐風雨瓦 Download PDF

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、傾斜係止突起部付き耐震、耐風雨瓦に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の如く、瓦は、台風・集中豪雨時の暴風雨等による捲れ上がり、飛散、雨水の浸入等の問題と、又は地震時の転位、滑落等の問題が指摘されており、これらの対策に、当該瓦自体の形状を工夫する構成と、瓦緊締の金具を利用する方法等が知られている。殊に、平板瓦は、製造の容易化、葺き上げ(葺設)の容易性、迅速化が図れること、又は市場の要望が強いこと等の特徴があって、重宝されている。しかし、平板瓦は、従来の和形瓦に対して、前記の台風・地震時の問題が指摘されている。また最近では、台風・集中豪雨等の災害数の増加に伴う瓦の飛散、雨水の浸入等の回数が増加している。
【0003】
上記の問題点の解決策として、文献を参考として説明する。文献としては、下記の文献(1)〜(3)が挙げられるので、以下に説明する。
【0004】
文献(1)は、特開2001−40821の防災瓦の係合構造である。内容は、瓦本体の無垢形状の尻側水返し上面の中央付近に差込空間を有する鉤状の係合凸部を設け、また瓦本体の差込部の水返しの外側に係合差込部を設け、千鳥葺設時に、係合凸部の差込空間に係合差込部が係止される防災瓦の係合構造であり、防災瓦として要求される耐風性能、防水性能、働き長さ調節機能の三要素を達成する。
【0005】
文献(2)は、特開平8−93141号の係止耐風厚平形瓦である。内容は、差込受部の頭部寄り先端に係止受部を設け、また肉厚形状の尻部側に、この尻部側より外方に突設した係止突起を設け、葺設時に差込受部が係止突起と当接係止される構造であり、この差込受部の頭部側を尻部側が係止・抑止して、千鳥葺き厚平形系瓦において、暴風雨時のめくり上がり、雨水侵入防止と、葺上げ(葺設)の容易化かつ迅速化が図れる。
また文献(3)は、特開平8−158542号の耐風係合平形瓦がある。内容は、棧覆部の頭部寄りに設けた頭係合突起を、差込受部側寄り頭部側に設けた頭係合覆部に係合抑止し、また肉厚形状の尻部側の表面に突設した尻係合覆部を、差込受部の頭部寄りに設けた差込係合受部と係合抑止した厚平形系瓦構造であり、文献(2)と同じ効果を達成することを意図する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記文献(1)は、鉤状の係合凸部と係合差込部との組合せ構造であって、この係合凸部の立上部と水平部に、係合差込部を差込む構成である。従って、衝撃時に、水平部と係合差込部とに荷重がかかり、欠損し易いこと、又は係合の際は、係合差込部を、鉤状の係合凸部に潜り込ませる作業が必要であり、作業性が悪いこと、等の課題が考えられる。そして、係合凸部の水平部を利用して、外力を支えることから、当該水平部は脆弱で欠損し易い問題を残す。また葺き替え工事の際に、部分的な葺き替えに難渋することも課題である。
【0007】
また文献(2)は、尻側の係止突起を、差込受部の係止受部に係合する構造である。しかし、この係止突起は、尻側より突出する構成である。従って、瓦の破損問題と、取扱いに注意を要すること、又は結束の困難性、等の課題が考えられる。また瓦の製造に注意を要すること、又は金型構造の複雑化を招来すること、等の実用面で課題がある。
【0008】
文献(3)は、頭側の頭係合突起を、差込受部の差込係合受部に係合し、また棧覆部の頭係合突起を、差込受部の頭係合覆部に係合した構成である。従って、瓦の構造が複雑となり、同様に金型の構造の複雑化を招来すること、コストの上昇があること、等の実用面で課題がある。また二重係合の構造であるので、葺き上げが複雑となること、また時間と経験を要すること、又は葺き替え時に問題を残すこと、等の課題が考えられる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
請求項1の発明は、台風時、暴風雨時の災害等による捲れ上がり、飛散の防止、防水効
果等を図ること、また地震時の災害等による瓦の転位、滑落等の防止等を達成すること、又は頭側係止部と尻側傾斜係止突起部の係止による確実な葺設と、葺設の容易化、精度の向上と、スピーディな作業を達成すること、等を意図する。また本発明は、尻側傾斜係止突起部に、アンダーラップ頭側係止部を添接する構成であるので、係止・係脱をワンタッチで行うこと、尻側傾斜係止突起部との馴染みをよくすること、又は葺き上げ・葺き替え等の容易化、迅速化を図ること、又は瓦の製造等の容易化、迅速化を図ること、等を意図する。
【0014】
請求項1は、瓦本体の一端側にアンダーラップを、このアンダーラップの頭側寄りの側端部に傾斜面を有するアンダーラップ頭側係止部を、また瓦本体の他端側にオーバーラップを、更に瓦本体の尻側に前記アンダーラップ頭側係止部に係り合う尻側傾斜係止突起部と、瓦本体の裏面尻側に重ね合わせ凹部とを、それぞれ有する耐震、耐風雨瓦であって、 前記尻側傾斜係止突起部は、瓦素地素材で形成された尻側係止突起を押倒して形成することを特徴とする傾斜係止突起部付き耐震、耐風雨瓦である。
【0015】
請求項2の発明は、尻側傾斜係止突起部を、尻側水返し突条の幅の略1/2に形成する構成として、廃材がでないこと、簡単であること、作業が迅速であること、等を意図する。また重ね合わせ凹部を形成し、これによって余分となる粘土を、尻側傾斜係止突起部の成形に役立てることが可能となり、材料の流れを確保すること、不良品発生の軽減等に役立つこと、等を意図する。
【0016】
請求項2は、請求項1の尻側傾斜係止突起部は、水返し突条の幅の略1/2に形成することを特徴とする傾斜係止突起部付き耐震、耐風雨瓦である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の葺設の一例を説明する。
【0018】
図1〜図8の一例では、瓦本体が適宜の形状を備えた平板瓦であって千鳥葺きの形態について説明する。図5又は図6の如く、下に葺設される平板瓦(下の平板瓦)の尻側傾斜係止突起部に、斜め上に葺設される平板瓦(上の平板瓦)のアンダーラップの頭側寄りで、かつその側端部に設けたアンダーラップ頭側係止部を添接(当接係止)する。この際、上の平板瓦のアンダーラップ頭側係止部は、下の平板瓦の尻側傾斜係止突起部で押えられることで、この上の平板瓦に対する風雨、又は他の平板瓦による浮き上がり等に起因し、当該上の平板瓦の頭側の浮き上がりが抑制できる。またアンダーラップ頭側係止部と尻側傾斜係止突起部とによる係止関係は、流れ方向に自在性を保持する構成となっており、利き足(利き丈)調整の機能を有する。本発明は、尻側傾斜係止突起部に、アンダーラップ頭側係止部を添接する構成であるので、係止・係脱がワンタッチで行えること、又は葺き上げ・葺き替え等の容易化、迅速化が図れること、又は瓦の製造等の容易化、迅速化が図れること、等の特徴がある。
また瓦本体の全体形状、表面形状等により、雨水のスムーズな流れ、雨仕舞の向上、飛散防止等が図れること、又は尻側傾斜係止突起部を、尻側水返し突条の一部に設ける構成とすることで、当該尻側傾斜係止突起部の形成の容易化、粘土の移動の容易化、成形の安定性等の確保と、雨水を塞ぎ止め尻側端面からの雨漏りを防止できること等の利点がある。
尚、屋根地に設置された瓦棧に平板瓦の尻端側に設けられた引掛けと釘穴を利用して緊結することは従来と同様である。また平板瓦を積層結束する(運搬、保管時)際は、下の平板瓦の尻側傾斜係止突起部が、上の平板瓦の重ね合わせ凹部に挿入されることで、それぞれの平板瓦は干渉せず積層できる。従って、結束の安定化、また結束、パレット・野積み等における積層高さのコンパクト化、又は搬送時の破損の減少化、等が図れること、等の実益がある。
【0019】
図10、図11の一例では、瓦本体が適宜の形状を備えた平板瓦であって筋葺きの形態について説明する。図11の如く、下の平板瓦の尻側傾斜係止突起部に、真上に葺設される平板瓦(真上の平板瓦)の頭側寄りで、かつその側端部に設けた頭側係止部を添接(当接係止)する。この際、真上の平板瓦の頭側係止部は、下の平板瓦の尻側傾斜係止突起部で押えられることで、この真上の平板瓦に対する風雨、又は他の平板瓦による浮き上がり等に起因し、当該真上の平板瓦の頭側の浮き上がりが抑制できる。また頭側係止部と尻側傾斜係止突起部とによる係止関係は、流れ方向に自在性を保持する構成となっており、利き足(利き丈)調整の機能を有する。本発明は、尻側傾斜係止突起部に、頭側係止部を添接する構成であるので、係止・係脱がワンタッチで行えること、又は葺き上げ・葺き替え等の容易化、迅速化が図れること、又は瓦の製造等の容易化、迅速化が図れること、等の特徴がある。他の特徴は、前述の千鳥葺きの場合に準ずる。
【0020】
以上の各例では、平板瓦を説明したが、和形、S型等の他の形状の瓦でも可能である。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を説明する。
本発明の平板瓦(瓦)の製造方法は、図12のフローチャートに示す方法が好適な一例である。以下説明する。図示しない上下金型を利用して、粘土瓦の原料を加圧成形し(ST−1)、アンダーラップと、このアンダーラップの頭側寄りの側端部にアンダーラップ頭側係止部と、オーバーラップと、尻側にアンダーラップ頭側係止部に係り合う尻側係止突起と、裏面尻側に重ね合わせ凹部を、それぞれ形成して瓦素地素材を形成し(ST−2)、この瓦素地素材で形成された尻側係止突起を、シリンダー、手動等の手段を利用して押倒し(ST−3)、尻側傾斜係止突起部(ST−4)を形成して瓦素地ができる(ST−5)。この工程で押倒された尻側傾斜係止突起部を有する瓦素地を、乾燥して、乾燥瓦素地を生成する(ST−6)。この乾燥瓦素地を燻化焼成する(ST−7)。また施釉及び焼成する(ST−70)。以上の作業及び手順を利用して平板瓦が完成する。
【0022】
尚、粘土瓦の原料を加圧成形し(ST−1)、瓦本体と、この瓦本体の頭側寄りの側端部に頭側係止部と、前記瓦本体の尻側に頭側係止部に係り合う尻側係止突起と、裏面尻側に重ね合わせ凹部を、それぞれ形成して瓦素地素材を形成(ST−20)する方法も、前記の例に準ずる。
【0023】
以下、平板瓦の一例を説明する。
【0024】
図1〜図8の一例は、千鳥葺き用の平板瓦1で、この平板瓦1は、瓦本体2と、瓦本体2の一端側に設けたアンダーラップ3と、このアンダーラップ3の頭側寄り3aの側端部にアンダーラップ頭側係止部4と、また瓦本体2の他端側にオーバーラップ5を、更に瓦本体2の尻側2aにアンダーラップ頭側係止部4に係り合う尻側傾斜係止突起部6と、瓦本体2の裏面2Y尻側2aに重ね合わせ凹部7と、で形成されている。尚、アンダーラップ頭側係止部4は、アンダーラップ3に設けた水返し突条3bを内側に迂回し、当該アンダーラップ3の端片側をテーパー条に押し潰した形状とする。このアンダーラップ頭側係止部4を、傾斜面4aとすることで、前記尻側傾斜係止突起部6との馴染み、又は当接係止等に役立てる。
【0025】
図中8は瓦本体2の表面2X尻側2aに設けた水返し突条で、この水返し突条8には、前記尻側傾斜係止突起部6が形成されている。この尻側傾斜係止突起部6は、水返し突条8の幅の略1/2となっている。尚、この尻側傾斜係止突起部6は、瓦素地素材で形成された尻側係止突起06を、シリンダー、手動等の手段を利用して押倒して形成する。従って、廃材がでないこと、簡単であること、作業が迅速であること、等の特徴がある。また重ね合わせ凹部7を形成し、これによって余分となる粘土を、この尻側傾斜係止突起部6の成形に役立てることが可能となり、材料の流れの確保、不良品発生の軽減等に役立つ特徴がある。
【0026】
図中10は引掛け、11は頭側2bの垂れ、12は釘孔、13は切込みを示す。
【0027】
図10、図11の一例は、筋葺き用の平板瓦100で、この平板瓦100は、前記平板瓦1と共通するので、相違点を述べる。この例では、尻側傾斜係止突起部60を、瓦本体2の表面2X尻側2aに設けて、頭側係止部40に当接係止する。図中101は棧山を示す。
【0028】
尚、(1−1)は下の平板瓦、(1−2)は斜め上の平板瓦、(100−1)は下の平板瓦、(100−2)は直上の平板瓦を示す。
【0029】
【発明の効果】
【0030】
【0031】
請求項1の発明は、瓦本体の一端側にアンダーラップを、このアンダーラップの頭側寄りの側端部に傾斜面を有するアンダーラップ頭側係止部を、また瓦本体の他端側にオーバーラップを、更に瓦本体の尻側にアンダーラップ頭側係止部に係り合う尻側傾斜係止突起部と、瓦本体の裏面尻側に重ね合わせ凹部とを、それぞれ有する耐震、耐風雨瓦であって、尻側傾斜係止突起部は、瓦素地素材で形成された尻側係止突起を押倒して形成することを特徴とする傾斜係止突起部付き耐震、耐風雨瓦である。
従って、請求項1は、台風時、暴風雨時の災害等による捲れ上がり、飛散の防止、防水効果等が図れること、また地震時の災害等による瓦の転位、滑落等の防止等を達成できること、又は頭側係止部と尻側傾斜係止突起部の係止による確実な葺設と、葺設の容易化、精度の向上と、スピーディな作業が達成できること、等の特徴がある。また本発明は、尻側傾斜係止突起部に、アンダーラップ頭側係止部を添接する構成であるので、係止・係脱がワンタッチで行えること、尻側傾斜係止突起部との馴染みがよくなること、又は葺き上げ・葺き替え等の容易化、迅速化が図れること、又は瓦の製造等の容易化、迅速化が図れること、等の特徴がある。
【0032】
請求項2の発明は、請求項1の尻側傾斜係止突起部は、水返し突条の幅の略1/2に形成することを特徴とする傾斜係止突起部付き耐震、耐風雨瓦である。
従って、請求項2は、尻側傾斜係止突起部を、尻側水返し突条の幅の略1/2に形成する構成として、廃材がでないこと、簡単であること、作業が迅速であること、等の特徴がある。また重ね合わせ凹部を形成し、これによって余分となる粘土を、尻側傾斜係止突起部の成形に役立てることが可能となり、材料の流れを確保できること、不良品発生の軽減等に役立て得ること、等の特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示す平面図である。
【図2】図1の例の裏面図である。
【図3】図1の例の尻側傾斜係止突起部を示す拡大斜視図である。
【図4】図1の例のアンダーラップ頭側係止部を示す拡大斜視図である。
【図5】図1の例の尻側傾斜係止突起部とアンダーラップ頭側係止部との関係を示す拡大斜
視図である。
【図6】図1の千鳥葺きの一例を示す縮尺平面図である。
【図7】図5の要部の拡大断面図である。
【図8】図1の例の積層状態を示す縮尺正面図である。
【図9】図1の例の尻側係止突起と、尻側傾斜係止突起部とを示す正面図で、(イ)は尻側
係止突起、(ロ)は尻側傾斜係止突起部を示す。
【図10】本発明の他の一例を示す平面図である。
【図11】図10の筋葺きの一例を示す縮尺平面図である。
【図12】本発明の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 平板瓦
2 瓦本体
2a 尻側
2b 頭側
2X 表面
2Y 裏面
3 アンダーラップ
3a 頭側寄り
3b 水返し突条
4 アンダーラップ頭側係止部
4a 傾斜面
5 オーバーラップ
6 尻側傾斜係止突起部
06 尻側係止突起
7 重ね合わせ凹部
8 水返し突条
10 引掛け
11 垂れ
12 釘孔
13 切込み
100 平板瓦
101 棧山
40 頭側係止部
60 尻側傾斜係止突起部

Claims (2)

  1. 瓦本体の一端側にアンダーラップを、このアンダーラップの頭側寄りの側端部に傾斜面を有するアンダーラップ頭側係止部を、また瓦本体の他端側にオーバーラップを、更に瓦本体の尻側に前記アンダーラップ頭側係止部に係り合う尻側傾斜係止突起部と、瓦本体の裏面尻側に重ね合わせ凹部とを、それぞれ有する耐震、耐風雨瓦であって、
    前記尻側傾斜係止突起部は、瓦素地素材で形成された尻側係止突起を押倒して形成することを特徴とする傾斜係止突起部付き耐震、耐風雨瓦。
  2. 請求項1の尻側傾斜係止突起部は、水返し突条の幅の略1/2に形成することを特徴とする傾斜係止突起部付き耐震、耐風雨瓦。
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