JP3590552B2 - 内視鏡用生検鉗子カップの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内視鏡の鉗子チャンネルに挿通されて体腔内から生検組織標本を採取するために用いられる内視鏡用生検鉗子の鉗子カップの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内視鏡用生検鉗子は一般に、内視鏡の鉗子チャンネルに挿脱されるシースの先端部分に一対のスプーン状の鉗子カップが配置され、シース内に挿通配置された操作ワイヤを軸線方向に進退操作することにより鉗子カップが嘴状に開閉駆動され、鉗子カップの縁部に形成された刃部分で粘膜組織をくいちぎるように切り取ることができる。
【0003】
そのような鉗子カップは、以前は金属棒材から切削加工によって形成されていたが、それでは部品コストが著しく高いものになるので、板材からプレス加工によって形成されるようになってきている(特開平9−276285号、特開平10−24045号)。
【0004】
そのような従来の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法では、まず金属板素材から、鉗子カップになる素材部分をその外縁に沿って打ち抜いた後、打ち抜かれた部分(鉗子カップブランク)をプレスによる絞り加工によって所定の形状に形成していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
平らな金属板素材を略スプーン状の所定形状にするためにプレスによる絞り加工を行うと、素材板全体が絞り部分に向かって引き込まれるが、方向により抵抗の大きさに相違があるとそれによって引き込み量の大きさも相違してくる。
【0006】
そのため、予め外縁に沿って打ち抜かれている鉗子カップ素材板に絞り加工を行うと、方向により引き込み量に偏りが生じて鉗子カップを精度よく製造することができず、その結果として良好な切れ味が得られなかった。
【0007】
そこで本発明は、鉗子カップを金属板素材からプレス加工によって精度よく製造することができる内視鏡用生検鉗子カップの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法は、金属板素材からプレスによる絞り加工によって略スプーン状の鉗子カップを製造する内視鏡用生検鉗子カップの製造方法において、絞り加工を行う前に素材板に、鉗子カップになる部分の外縁を囲む第1の切り込みを、複数箇所に残される第1切り込み連結部を除いて形成すると共に、第1の切り込みを囲む第2の切り込みを、複数箇所に残される第2切り込み連結部を除いて形成し、各連結部が連結された状態で絞り加工を行うようにしたものである。
【0009】
なお、複数の第1切り込み連結部が、互いに均等に近い間隔で第1の切り込みの途中の複数箇所に形成され、複数の第2切り込み連結部が、互いに均等に近い間隔で、且つ各第1切り込み連結部に対して均等に近い間隔をあけて形成されているとよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図2は内視鏡用生検鉗子の先端部分を示しており、ステンレス鋼線を密着巻きして形成された可撓性のシース1内に、操作ワイヤ2が軸線方向に進退自在に全長にわたって挿通配置されている。
【0011】
シース1の先端に取り付けられた先端本体3の先端部分には、一対の鉗子カップ4が支軸5を中心に回動自在に支持されており、操作ワイヤ2を手元側から遠隔的に進退操作することによって、リンク板6を介して鉗子カップ4が嘴状に開閉する。8は、操作ワイヤ2とリンク板6との間に介在する繋ぎロッドであり、リベット9によりリンク板6の後端部分に連結されている。
【0012】
図3に単独で示される鉗子カップ4は、ステンレス鋼板素材からプレスによる絞り加工によって製造されており、嘴に相当する先側の半部がカップ部になっていて、その背面部には孔4aが形成されている。
【0013】
鉗子カップ4の後半部分はリンク部4bになっており、支軸5が通される嵌合孔4cと、リンク板6と連結するためのリベット7が通される嵌合孔4dが穿設されている。
【0014】
図4は、上述のような鉗子カップ4を一枚のステンレス鋼板素材から製造する際の最初の工程を示している。素材板11は平らなステンレス鋼板材であり、12は、素材板11の位置決め固定をするためのピンが通される位置決め用孔である。
【0015】
図4においては、素材板11上の鉗子カップ4になる部分(鉗子カップブランク40)には斜線を施して示してあり、その外縁から一定の間隔をあけて、鉗子カップブランク40を囲む第1の切り込み13が形成されている。第1の切り込み13は、例えばプレスによる剪断加工やレーザー加工等によって形成される。
【0016】
第1の切り込み13の途中には、切り込みが形成されていない部分(即ち、第1切り込み連結部)13a,13b,13cが残されていて、第1の切り込み13の外側の素材板11部分と鉗子カップブランク40とを連結している。
【0017】
第1切り込み連結部13a,13b,13cは、鉗子カップブランク40の長手方向の部分に一箇所(13a)と、それに対して直交する側方部分に二箇所(13b,13c)の合計三箇所に設けられていて、互いに均等に近い間隔になる位置に形成されている。
【0018】
第1の切り込み13から一定の間隔をあけて、第1の切り込み13を囲むように第2の切り込み14が形成されている。第2の切り込み14の途中にも、切り込みが形成されていない部分(即ち、第2切り込み連結部14a,14b,14c)が三箇所に残されている。
【0019】
第2切り込み連結部14a,14b,14cは、互いに均等に近い間隔になる位置であって、各第1切り込み連結部13a,13b,13cに対しても均等に近い間隔になる位置に形成されている。したがって、長手方向にある第2切り込み連結部14aは、長手方向にある第1切り込み連結部13aとは反対側に位置している。
【0020】
このようにして、平らな素材板11に第1の切り込み13と第2の切り込み14を形成した後で、鉗子カップブランク40部分にプレスによる絞り加工を行って鉗子カップ4を成形する。
【0021】
図1は、プレスによる絞り加工により鉗子カップ4が成形された後の状態を示しており、図5はそのA−A断面を示し、図6はB−B、C−C及びD−D断面を複合して示している。
【0022】
図1に示されるように、絞り部分に向かって素材板11が引き込まれるので、第1の切り込み13と第2の切り込み14が各々口を広げた状態に変形し、両切り込み13,14の間の帯状部15は、第2切り込み連結部14a,14b,14c以外の部分が内側に引っ張られた状態に変形している。
【0023】
このように、均等に近い間隔で配置された第1切り込み連結部13a,13b,13cと第2切り込み連結部14a,14b,14cの合計六箇所の連結部により鉗子カップブランク40が素材板11に連結された状態で絞り加工を行うことにより、鉗子カップブランク40の位置が正確に定まった状態で絞り加工を行うことができると共に、絞り加工時の引き込みが均等に行われ、鉗子カップ4を高精度に成形することができる。
【0024】
絞り加工が済んだら、必要に応じて穴あけ加工等を行った後、素材板11から鉗子カップ4を切り落とす工程に移る。図7はその時のA−A断面を示し、図8はB−B、C−C及びD−D断面を複合して示している。
【0025】
図7及び図8に示されるように、鉗子カップ4の切断線に沿う形状に形成された雌型21に素材板11を載せて、雌型21の輪郭形状に内接する輪郭形状の雄型22をプレス機で押圧して、鉗子カップ4を素材板11から切り落とす。
【0026】
このようにすることにより、鉗子カップ4の切断縁に刃を形成することができ、鉗子カップ4の切り落としと刃付けとを、一回の工程で同時に行うことができる。
【0027】
図9及び図10は、本発明の第2の実施の形態の、第1の切り込み13と第2の切り込み14が形成された状態の素材板11を示している。この実施の形態においては、図9に示されるように、三つずつ形成された第1切り込み連結部13a,13b,13cと第2切り込み連結部14a,14b,14cが、上述の第1の実施の形態と比べて長手方向に180°反転した位置に形成されており、図10は絞り加工後の状態を示している。
【0028】
図11及び図12は、本発明の第3の実施の形態の、第1の切り込み13と第2の切り込み14が形成された状態の素材板11を示している。この実施の形態においては、図11に示されるように、第1の切り込み13には長手方向に二箇所に第1切り込み連結部13a,13bが形成され、第2の切り込み14にはそれと直交する方向に二箇所に第2切り込み連結部14a,14bが形成されている。図12は絞り加工後の状態を示している。
【0029】
図13及び図14は、本発明の第4の実施の形態の、第1の切り込み13と第2の切り込み14が形成された状態の素材板11を示している。この実施の形態においては、図13に示されるように、第2の切り込み14に長手方向に二箇所に第2切り込み連結部14a,14bが形成され、第1の切り込み13にそれと直交する方向に二箇所に第1切り込み連結部13a,13bが形成されている。図14は絞り加工後の状態を示している。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、絞り加工を行う前に素材板に、鉗子カップになる部分の外縁を囲む第1の切り込みを、複数箇所に残される第1切り込み連結部を除いて形成すると共に、第1の切り込みを囲む第2の切り込みを、複数箇所に残される第2切り込み連結部を除いて形成し、各連結部が連結された状態で絞り加工を行うので、鉗子カップブランクの位置が正確に定まった状態で絞り加工を行うことができ、鉗子カップをプレス加工によって高精度に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工後の状態を示す平面図である。
【図2】本発明によって製造される内視鏡用生検鉗子の一例の先端部分の側面断面図である。
【図3】本発明によって製造される内視鏡用生検鉗子の鉗子カップの一例の斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工前の状態を示す平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工後の状態を示す図1におけるA−A断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工後の状態を示す図1におけるB−B、C−C、D−D複合断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工後の切り落とし工程のA−A断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工後の切り落とし工程のB−B、C−C、D−D複合断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工前の状態を示す平面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工後の状態を示す平面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工前の状態を示す平面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工後の状態を示す平面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工前の状態を示す平面図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法の絞り加工後の状態を示す平面図である。
【符号の説明】
4 鉗子カップ
11 素材板
13 第1の切り込み
13a,13b,13c 第1切り込み連結部
14 第2の切り込み
14a,14b,14c 第2切り込み連結部
15 帯状部
40 鉗子カップブランク
Claims (2)
- 金属板素材からプレスによる絞り加工によって略スプーン状の鉗子カップを製造する内視鏡用生検鉗子カップの製造方法において、
上記絞り加工を行う前に上記素材板に、上記鉗子カップになる部分の外縁を囲む第1の切り込みを、複数箇所に残される第1切り込み連結部を除いて形成すると共に、上記第1の切り込みを囲む第2の切り込みを、複数箇所に残される第2切り込み連結部を除いて形成し、上記各連結部が連結された状態で上記絞り加工を行うことを特徴とする内視鏡用生検鉗子カップの製造方法。 - 上記複数の第1切り込み連結部が、互いに均等に近い間隔で上記第1の切り込みの途中の複数箇所に形成され、上記複数の第2切り込み連結部が、互いに均等に近い間隔で、且つ上記各第1切り込み連結部に対して均等に近い間隔をあけて形成されている請求項1記載の内視鏡用生検鉗子カップの製造方法。
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