JP3590448B2 - 7−オクテン酸の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は7−オクテン酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
7−オクテン酸は、末端に反応性に富むビニル基とカルボキシル基を有しており、例えば、8−アミノカプリル酸の原料として、またビニル系重合体の改質剤および各種医薬中間体の出発原料として有用な化合物である。従来、7−オクテン酸の製造方法としては、7−オクテン−1−アールをコバルト塩、マンガン塩、ニッケル塩、銅塩、鉄塩等から選ばれる金属塩の存在下に有機溶媒中で酸素酸化する方法が知られている(特公昭63−24501号公報参照)。この方法は、大量かつ安価に入手可能なブタジエンと水から簡潔な工程を経て収率よく得ることのできる7−オクテン−1−アールを原料として使用するので、工業的に有用な方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の7−オクテン酸の製造方法は、反応溶媒として酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸などの脂肪族モノカルボン酸または脂肪族モノカルボン酸のアルキルエステルを使用することから、反応装置の腐食、反応溶媒と酸素との混合による爆発の危険性などの問題点を有している。
【0004】
また、上記の7−オクテン酸の製造方法にあっては、反応の選択性を向上させるためには、反応混合液中における原料、すなわち7−オクテン−1−アールの濃度が0.50モル/リットル以下に保たれるように7−オクテン−1−アールの供給速度を調節し、かつ反応混合液中における生成物、すなわち7−オクテン酸の濃度を常に約3モル/リットル以下に保つことが必要となる。しかしながら、かかる反応条件を達成するには多量の反応溶媒を必要とするため、かかる製造方法では容積効率が低い。
さらに、上記の方法では、生成物である7−オクテン酸の精製は、酸化反応終了後の反応混合液を希鉱酸水溶液で処理して触媒を水層側に移行せしめた後に有機層を分離し、次いで該有機層から反応溶媒の大半を留去し、得られた残留物から常法により7−オクテン酸を分離取得することにより行われるが、希鉱酸水溶液の使用、反応混合液からの触媒の分離、反応溶媒の留去といった煩雑な工程を必要とする。また、反応溶媒および触媒の回収、リサイクル使用、さらには廃水処理などを行うためには専用の装置や膨大なユーティリティーを必要とするうえ、これらの作業等も煩雑である。
【0005】
しかして本発明の目的は、上記の問題点を解決して、7−オクテン−1−アールから7−オクテン酸を工業的に有利に製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は、7−オクテン−1−アールを水溶媒中で酸素酸化することにより達成される。
【0007】
本発明による7−オクテン−1−アールの酸素酸化は、水溶媒中で7−オクテン−1−アールと酸素ガスまたは酸素含有ガスを接触させることによって行われる。酸素含有ガスとしては、空気、任意の割合からなる窒素と酸素の混合ガスまたはこれらとヘリウムガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどとの混合ガスが用いられる。
【0008】
反応温度としては、酸素の濃度、後述の酸化触媒の有無などにより好適な範囲が変化するのでこれを一義的に定めることはできないが、通常40〜120℃の範囲内の温度が採用される。
【0009】
水は、通常原料である7−オクテン−1−アール1モルに対して1〜200モルの割合で使用されるが、3〜60モルの割合で使用することが好ましい。
【0010】
本発明は酸化触媒の存在下または不存在下に実施することができるが、酸化触媒の存在下に実施するほうが好適である。
【0011】
酸化触媒としては公知の触媒が特に制限なく使用される。かかる酸化触媒の第一の例としては、例えば、ハロゲン化第一銅、ハロゲン化第二銅、カルボン酸第一銅、カルボン酸第二銅、硫酸第一銅、硫酸第二銅などの銅塩、ハロゲン化第一鉄、ハロゲン化第二鉄、カルボン酸第一鉄、カルボン酸第二鉄、硫酸第二鉄などの鉄塩、カルボン酸ニッケル、硫酸ニッケル、ハロゲン化ニッケルなどのニッケル塩、カルボン酸第一コバルト、硫酸第一コバルト、硝酸第一コバルトなどのコバルト塩、およびカルボン酸第一マンガン、硫酸第一マンガンなどのマンガン塩等の金属塩を挙げることができる。反応混合液中へのこれらの金属塩の溶解性、反応装置に対する腐食性および入手の容易さなどを考慮すると、酸化触媒として用いる金属塩は脂肪族モノカルボン酸塩であることが望ましい。金属塩は単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、金属塩は、通常反応混合液1リットル当りの金属換算で0.01〜10ミリグラム原子となる濃度で用いられる。
【0012】
本発明では、上記の金属塩に加え、さらに助触媒として臭化水素、臭化カルシウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム等の臭化物を併用することもできる。
【0013】
上記の酸化触媒の第二の例としては、例えば、白金、パラジウム、ルテニウムなどの金属を担体に担持させた触媒を挙げることができる。これらの金属は単独で担体に担持させても、二種またはそれ以上を組み合わせて担体に担持させてもよい。また、担体としては活性炭、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどを例示することができる。さらに、金属を担体に担持させた触媒として、錫、鉛、ビスマス、セレン、テルル等から選ばれる他の金属成分で部分的に変性されているものを使用することもできる。これらの触媒は商業的に生産されており、容易に入手することができる。
【0014】
本発明は、生産性を高めるという観点から、通常有機溶媒の不存在下に実施されるが、酸化反応に対して不活性な有機溶媒であれば、反応系中に存在していてもかまわない。かかる有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類が挙げられる。
【0015】
本発明による7−オクテン−1−アールの酸素酸化は水を溶媒として酸素ガスまたは酸素含有ガス、および7−オクテン−1−アールを連続的または断続的に供給することによって実施される。
なお、原料である7−オクテン−1−アールは反応の開始に先立って全量を仕込んでおいてもよいし、また所望量を仕込んでおき、残りを連続的または断続的に供給してもよい。
【0016】
反応容器としては、通常の気液接触反応において汎用される撹拌型反応器、気泡塔型反応器、多孔板塔型反応器などが用いられる。反応圧力は酸素含有ガス中の酸素濃度、反応温度、酸化触媒の濃度などによってその最適範囲が変化するので一義的に定めることはできないが、通常1〜30絶対気圧の範囲から選ばれる。
【0017】
本発明は連続方式でもバッチ方式でも実施することができる。
【0018】
いずれの反応方式を採用する場合においても、比較的低温下で7−オクテン−1−アールの転化率が80〜98%程度となるまで反応を追い込んだのち、さらに高温下で反応を追い込み、次いで反応系に微量混在する過酸化物を分解させるのがよい。
【0019】
本発明にあっては、反応終了後の反応混合液から有機層を分液し、該有機層から蒸留等の操作によって目的物である7−オクテン酸を分離取得することができるので、精製操作が簡便である。
【0020】
【実施例】
以下実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0021】
実施例1
温度計、圧力計、電磁撹拌装置、出ガスラインを付帯した還流冷却器、原料フィード口および空気導入口を備えた内容300mlの耐圧反応容器内に、活性炭に1%の白金と1%のビスマスを担持させた触媒〔デグサジャパン(株)社製〕0.4gをバスケットに入れて固定し、次いで水180mlを添加し、空気により5絶対気圧に保ちながら加温した。原料フィード口に連結されたミクロフィーダーには予め窒素置換した50g(0.40モル)の7−オクテン−1−アールを装填した。反応容器内の温度が95℃にて一定となったところで、内容物を1200rpmの回転速度で撹拌し、かつ空気を供給しつつ、出ガスを10リットル/hrの速度で出しながら、原料フィード口より10g/hrのフィード速度で7−オクテン−1−アールを5時間に亘って連続的に供給することによって酸化反応を行った。
7−オクテン−1−アールの供給終了後、95℃にてさらに5時間撹拌を続け、ガスクロマトグラフィーにて分析したところ、7−オクテン−1−アールの転化率は90%、7−オクテン酸への選択率は62%であった。
反応終了後、反応容器内を窒素で十分に置換し、次いで反応容器内の温度が110℃となるまで加温し、さらに2時間撹拌を続けた。かくして得られた反応混合液を静置し、分液により水を除いた後、残留物を減圧下に蒸留したところ34g(0.24モル)の7−オクテン酸が得られた。蒸留精製後の7−オクテン酸の取得率は仕込んだ7−オクテン−1−アールのモル基準で60%であった。
【0022】
実施例2
温度計、圧力計、電磁撹拌装置、空気導入口および出ガスラインを備えた内容1リットルの耐圧反応容器に、水200ml、7−オクテン−1−アール200g(1.59モル)、ヘプタン136g、および酢酸銅66mgを仕込み、空気により5絶対気圧に保ちながら、内容物を1000rpmの回転速度で撹拌し、かつ空気を供給しつつ、出ガスを10リットル/hrの速度で出しながら加温した。反応容器内の温度が65℃にて一定となったところで、さらに10時間撹拌して酸化反応を行った。酸化反応終了時における7−オクテン−1−アールの転化率をガスクロマトグラフィーで測定したところ84%であり、7−オクテン酸への選択率は63%であった。
反応終了後を反応容器内を窒素で十分に置換し、次いで反応容器内の温度が105℃となるまで加温し、さらに1.5時間撹拌を続けた。かくして得られた反応混合液を静置し、分液により水を除いた後に、ロータリーエバポレーターを利用してヘプタンを留去し、残留物を減圧下に蒸留したところ122g(0.80モル)の7−オクテン酸が得られた。蒸留精製後の7−オクテン酸の取得率は仕込んだ7−オクテン−1−アールのモル基準で54%であった。
【0023】
比較例1
温度計、圧力計、電磁撹拌装置、出ガスラインを付帯した還流冷却器、原料フィード口および酸素導入口を備えた内容1リットルの耐圧反応容器に、プロピオン酸296g、酢酸銅28.4mgを仕込み、内容物を撹拌しながら加温して酢酸銅を完全に溶解させた。原料フィード口に連結されたミクロフィーダーには予め窒素置換した7−オクテン−1−アール305g(2.42モル)を装填した。反応容器内の温度が65℃と一定となったところで、内容物を800rpmの回転速度で撹拌し、かつ酸素ガスを47リットル/hrの速度で供給しながら、原料フィード口より約110g/hrのフィード速度で7−オクテン−1−アールを2.8時間に亘って連続的に供給することによって酸化反応を行った。
7−オクテン−1−アールの供給終了後、さらに反応容器内の温度を80℃とし、同温度で9時間撹拌を継続した。酸化反応終了時における7−オクテン−1−アールの転化率をガスクロマトグラフィーで測定したところ81%であり、7−オクテン酸への選択率は52%であった。
反応終了後、反応容器内を窒素で十分に置換した後に、反応容器内の温度が110℃となるまで加温し、さらに5時間撹拌を続けた。かくして得られた反応混合液よりロータリーエバポレーターを利用してプロピオン酸を留去し、残留物を減圧下に蒸留したところ130g(0.92モル)の7−オクテン酸が得られた。蒸留精製後の7−オクテン酸の取得率は仕込んだ7−オクテン−1−アールのモル基準で38%であった。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、7−オクテン酸を工業的に有利に製造することができる。本発明では、反応溶媒として脂肪族モノカルボン酸または脂肪族モノカルボン酸のアルキルエステルを使用しないので、反応装置の腐食、反応溶媒と酸素との混合による爆発の危険性などの問題点が解消される。また、目的物である7−オクテン酸は、反応終了後の反応混合液を静置して有機層を分離した後、該有機層から蒸留等の操作によって分離取得することができるので、精製操作が簡便である。
Claims (1)
- 7−オクテン−1−アールを水溶媒中で酸素酸化することを特徴とする7−オクテン酸の製造方法。
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JP14395095A JP3590448B2 (ja) | 1995-05-18 | 1995-05-18 | 7−オクテン酸の製造方法 |
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JP14395095A JP3590448B2 (ja) | 1995-05-18 | 1995-05-18 | 7−オクテン酸の製造方法 |
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JPH08310990A JPH08310990A (ja) | 1996-11-26 |
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WO2011020878A2 (de) * | 2009-08-21 | 2011-02-24 | Basf Se | Verfahren zur herstellung von 4-pentensäure |
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1995
- 1995-05-18 JP JP14395095A patent/JP3590448B2/ja not_active Expired - Fee Related
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