JP3590061B2 - 再帰反射性コーナキューブ物品とその製作方法 - Google Patents

再帰反射性コーナキューブ物品とその製作方法 Download PDF

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Description

関連出願との前後参照
本出願は1993年10月20日出願の「複合構造コーナキューブ物品と製作方法」の名称になる米国特許第08/140,638号の一部継続出願である。
発明の分野
本発明は、プリズム式の再帰反射性素子を有する再帰反射性物品及びその製作方法に関する。
背 景
多数のタイプの再帰反射性物品が知られているが、その中で、コーナキューブとして一般に知られている1以上の構造体部分を組込んだプリズム式デザインを有するものがある。コーナキューブ型反射性素子を採用した再帰反射性シーティング(板体)は周知である。コーナキューブ型反射性素子は、1つのコーナにおいて互いに略直角に会合する3つの側面を有する三面体構造である。光線は通常、キューブ面において全反射又は反射性被覆により反射される。再帰反射性コーナキューブ素子群を備えた直接工作型アレイ(列体)物品の製作は、多くの非効率性及び制約を有している。全光再帰性及び有効開口度(%)は、これらの制約によって悪影響を受け、性能に対する全体の製作コストは、後述する新規な物品及び製作方法に比べて高くなる傾向がある。本発明の複合構造型アレイ物品は、特定の要求に応じて高度に調整可能なコーナキューブ素子デザインの、優れた製造上の自由度を有する製作を可能にする。
発明の要旨
本発明は、基面と該基面の反対側の構造体表面とを有する基体を含んで成る再帰反射性シーティングであって、該構造体表面が、少なくとも2本の平行な溝を有する第1の溝セットと、少なくとも2本の平行な溝を有し、複数の交差点で前記第1の溝セットに交差している第2の溝セットと、少なくとも2本の平行な溝を有し、それら溝のうちの少なくとも1本の前記交差点から離れた点で前記第1の溝セットと前記第2の溝セットとに交差して、複数のコーナキューブ素子のアレイを構成している第3の溝セットとを具備し、前記アレイの各コーナキューブ素子が単一のコーナキューブ素子であること、を特徴とする再帰反射性シーティングを提供する。
本発明はまた、コーナキューブ物品を製作する方法であって、工作可能な基体を準備するステップと、少なくとも2本の平行な溝を有する第1の溝セットを前記基体に工作するステップと、少なくとも2本の平行な溝を有し、複数の交差点で前記第1の溝セットに交差する第2の溝セットを、前記基体に工作するステップと、少なくとも2本の平行な溝を有し、それら溝のうちの少なくとも1本が前記交差点から離れた点で前記第1の溝セットと前記第2の溝セットとに交差して、複数のコーナキューブ素子のアレイを構成する第3の溝セットを、前記基体に工作するステップとを具備し、それにより、前記アレイにおける各コーナキューブ素子が単一のコーナキューブ素子となるようにしたこと、を特徴とするコーナキューブ物品の製作方法を提供する。
本発明はまた、基面と該基面の反対側の構造体表面とを有し、該構造体表面が、平行な溝群の複数のセットから得た側面群によって規定される複数の幾何学的構造体を有し、少なくとも幾つかの該幾何学的構造体が前記基面の上方に最上部を有し、互いに略直交する3つの面が該最上部で終端し、該3つの面がコーナキューブ素子を構成する再帰反射性コーナキューブ物品であって、前記少なくとも幾つかの幾何学的構造体が、非合同形状を有する第1及び第2のコーナキューブ素子を備え、前記第1及び第2のコーナキューブ素子の少なくとも一方の、前記互いに略直交する3つの面の少なくとも1つが、3つ以上の辺を有すること、を特徴とする再帰反射性コーナキューブ物品を提供する。
本発明はまた、基面と該基面の反対側の構造体表面とを有し、該構造体表面が、平行な溝群の複数のセットから得た側面群によって規定される複数の幾何学的構造体を有し、少なくとも幾つかの該幾何学的構造体が前記基面の上方に最上部を有し、互いに略直交する3つの面が該最上部で終端し、該3つの面がコーナキューブ素子を構成する再帰反射性コーナキューブ物品であって、前記少なくとも幾つかの幾何学的構造体が、平面視で非合同形状の基面を有する第1及び第2のコーナキューブ素子を備えること、を特徴とする再帰反射性コーナキューブ物品を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は、部分的キューブ形状を形成する2種類の溝セットを工作により設けた直接工作可能な基体の平面図である。
図2は、図1の線2−2に沿った基体の断面図である。
図3は、図1の線3−3に沿った基体の断面図である。
図4は、図1に示す溝を形成するために使用される工作工具の正面図である。
図5は、図1の線5−5に沿った基体の断面図である。
図6は、再帰反射性素子の適合ペアを有する直接工作型の3種類の溝セットを備えたアレイの平面図である。
図7は、図6の線7−7に沿ったアレイの断面図で、基平面に直交する個々の非傾斜型コーナキューブ素子の対称軸を示す。
図8は、複数の傾斜コーナキューブ素子を有する直接工作型の3種類の溝セットを備えたアレイの一部分の平面図である。
図9は、図8の線9−9に沿ったアレイの断面図で、各キューブの対称軸を示す。
図10は、図6及び図7に示すアレイにおけるゼロ入射角での有効開口の平面図である。
図11は、極度に後方に傾いて形成された個別のコーナキューブ素子群を有するアレイの一部分の断面図である。
図12は、図11のアレイの一部分の平面図である。
図13は、図11及び図12に示すアレイに類似したアレイであって、各コーナキューブ素子の長さを短くして一方のキューブ垂直光学面を排除した変形形態によるアレイの一部分の断面図である。
図14は、図13のアレイの一部分の平面図である。
図15は、直接工作型の基体の一部分の平面図である。
図16は、図15に示す基体の工作に使用される半角工具の正面図である。
図17は、図15の線18−18に沿った基体の断面図である。
図18は、図15の線18−18に沿った基体の断面図である。
図19は、図15の線19−19に沿った基体の断面図である。
図20は、非平行で非相互交差型の3種類の溝セットを有する直接工作型アレイの平面図である。
図21は、図20の線21−21に沿ったアレイの断面図である。
図22は、図20に示す複合構造型の再帰反射性コーナキューブ素子アレイの一部分における有効開口の平面図である。
図23は、傾いた対称軸、種々の溝中心及び種々のキューブタイプを備えたコーナキューブ素子群を有する直接工作された複合型の幾何学的構造体アレイの一部分の平面図である。
図24は、本発明のアレイにおける様々な形状の有効開口の斜視図である。
図25は、82゜、82゜及び16゜の挟角で交差する一次溝及び二次溝から形成される複合構造型コーナキューブ素子アレイの平面図である。
図26は、図25に示すアレイにおける60゜の入射角での有効開口を説明する図である。
図27は、74゜、74゜及び32゜の挟角で交差する一次溝及び二次溝から形成される複数のコーナキューブ素子を有する直接工作型の複合構造アレイの平面図である。
図28は、図27に示すアレイにおける60゜の入射角での有効開口を説明する図である。
図29は、傾いた対称軸及び種々の溝中心を備えたコーナキューブ素子群を有する直接工作された3種類の溝セットを有する複合構造コーナキューブ素子アレイの一部分の平面図である。
図30は、図29に示すアレイにおける0゜の入射角での有効開口を説明する図である。
図31は、図29に示すアレイにおける30゜の入射角での有効開口を説明する図である。
図32は、図29に示す複合構造アレイにおける入射角の関数としての有効開口度を示すグラフである。
図33は、種々の溝間隔を有する直接工作された複合構造型コーナキューブ素子アレイの一部分の平面図である。
図34は、種々の溝間隔を有する直接工作された複合構造型コーナキューブ素子アレイの一部分の平面図であって、コーナキューブ素子の少なくとも1つが適合ペアの一方ではないものを示す。
図35は、複合構造アレイの幾つかの領域を有する合成アレイの一部分の断面図である。
図36は、面取り面を有する複合構造アレイの一実施形態の断面図である。
図37は、分離面を有する複合構造アレイの一実施形態の断面図である。
実施形態の詳細な説明
再帰反射性コーナキューブ素子アレイ(列体)物品の製作は、ピン束ね(pin bundling)法及び直接工作(direct machining)法を含む種々の工作によって作られたモールド(型)を用いて実施される。ピン束ね法を用いて作られるモールドは、再帰反射性コーナキューブ素子の特徴的形態に形成された端部を各々に有する別個のピンを、一体的に組合せることによって作られる。米国特許第3,926,402号(Heenan他)及び米国特許第3,632,695号(Howell)は、ピン束ね法の事例である。
直接工作法は、より一般的なものとして知られており、基体の所要箇所を切削して、相互交差によりコーナキューブ素子を構成する溝群のパターンを作製するステップを有する。この溝付き基体はマスターと称され、このマスターから、一連の刻印複製物すなわちレプリカを作製できる。場合によっては、マスターは再帰反射性物品として有用であるが、より一般的には、作製される多数のレプリカを再帰反射性物品として使用する。直接工作法は、小寸のマイクロキューブアレイ物品用のマスターモールドを製作するための優れた方法である。小寸のマイクロキューブアレイ物品は、シーティング用の連続ロール品のような、向上した可撓性を備えた薄いレプリカアレイ物品を作るのに特に有益である。マイクロキューブアレイ物品は、連続プロセスによる製造を一層容易にする。大寸のアレイ物品を製作するプロセスも、直接工作法を用いることにより、他の方法を用いるよりは容易になる。直接工作法の一例は、米国特許第4,588,258号(Hoopman)に示されている。
図1は、従来のキューブアレイの直接工作型マスターを作る方法を示す。直接工作可能な基体20は、2種類の非平行セットに配置された複数の平行な溝23を備える。直接工作基体20の溝群は、キューブコーナ光学面を切削するための2つの切削面を備えた工作工具によって形成される。直接工作型の溝を形成するのに適した賦形、線引き及び切削方法の例は、米国特許第3,712,706号(Stamm)で論じられている。2種類の溝セット23は、図2及び図3に断面で示す部分キューブ形状39を形成する。図4に示すような工作工具26は、通常はポスト35に装着されていて、工具中心軸線32の各側に光学面切削面29を有している。
図1〜図4においては、部分キューブ形状39は、基体20に形成された菱形構造として示されている。2種類の非平行溝セットにおける少なくとも2本の溝が、部分キューブ形状39を形成している。図5に破線で断面図示する少なくとも1本の第3の溝41は、従来のコーナキューブ素子を形成するのに必要なものである。3種類の溝セットによって完成された従来のキューブアレイ物品42の一部分が、図6及び図7に示されている。全ての溝23、41の両側面は、アレイ物品42のコーナキューブ素子光学面を形成する。各コーナキューブ反射性素子44、45の基部は、正三角形を成す。コーナキューブ素子形状はいずれも、平面視で3面を有している。溝23、41は、特定の個所43で相互に交差する。この溝切り方法の別の事例は、米国特許第3,712,706号(Stamm)に示されている。米国特許第4,202,600号(Burke他)及び第4,243,618号(Van Arnam)は、スタム(Stamm)に示す三角形基部のコーナー反射性素子(すなわちプリズム)を、参考例として開示している。バーク(Burke)他の特許は、少なくとも予期される最小視距離から高入射角で視たときに、均一な輝度の外観を眼に与えるように、これらのプリズムを多様な異方領域で傾けることを開示している。
従来の再帰反射性コーナキューブ素子アレイは、単一タイプの適合ペア、すなわち幾何学的に合同であって互いに180゜回転したコーナキューブ再帰反射性素子を基礎として構成される。これらコーナキューブ素子は通常、共通基準面の上方で同一の高さを有するとともに、同じ基部周縁を共有している。このような適合ペアの一例として、図6に、溝41に沿った共通の基部周縁を有するコーナキューブ再帰反射性素子44、45の適合ペアを、陰影を付けて示す。従来のキューブアレイ物品に関するこの基本的な適合ペアのコンセプトを開示する他の事例は、米国特許第3,712,706(Stamm)、米国特許第4,588,258号(Hoopman)、米国特許第1,591,572号(Stimson)及び米国特許第2,310,790号(Jungersen)に示されている。米国特許第5,122,902号(Benson)は、共通基部周縁を有するコーナキューブ再帰反射性素子の適合ペアのもう1つの例を示しているが、これら素子は、分離面に沿って互いに隣接且つ対向して配置されている。
ドイツ特許DE4242264号(Gubela)は、コーナキューブ素子のさらに他の形式の適合ペアを示す。この形式では、菱形の本体内に微小な二重三つ組(triad)と2個の単一三つ組とを有する構造が形成されている。この構造は、60度の旋回角度で、互いに1点で交差しない方向に切削して、共通の交差点を有する2方向になるように、工作物に形成される。
上記した再帰反射性コーナキューブ素子アレイ物品の各種事例は、図7に示すように、基平面48に直交する対称軸46、47を個々に有する複数の非傾斜キューブを備えている。対称軸は、コーナキューブ素子の複数の面によって規定される挟角すなわち二面角の三等分線となる中心軸すなわち光学軸である。しかし、特定の用途では、再帰反射性コーナキューブ素子の適合ペアの対称軸を、基平面に直角ではない方向に傾けることが有利である。それにより傾いた複数のコーナキューブ素子を組合せると、広範囲に亘る入射角を再帰反射するアレイ物品が作製される。このことは、米国特許第4,588,258号(Hoopman)に教示されており、その構成を図8及び図9に示す。フープマン(Hoopman)の構造は、3種類の平行V溝セット49、50、51を有するように作製されており、それら溝セットが交差することにより、単一タイプの幾何学的に合同な傾斜コーナキューブ素子53、54の適合ペアが、アレイ物品55に形成されている。全てのコーナキューブ素子形状は、平面視で3面を有している。全ての溝49、50、51の両側面が、アレイ物品55にコーナキューブ素子光学面を形成している。
図9は、コーナキューブ素子53の対称軸57と、コーナキューブ素子54の対称軸58とを示している。両対称軸はそれぞれ、素子の基平面63(すなわち前面)の法線60に対し、角度φで傾いている。基平面は通常、コーナキューブ素子アレイを含むシーティングの前面に対し、平行又は共面の関係にある。コーナキューブ素子53、54は、幾何学的に合同であって、基体の平面内にある軸線に関して回転したときに入射角に関して対称的な光学再帰反射性能を発揮し、且つ互いに平行ではない対称軸を有している。入射角は慣用的に、前面に入射する光線と法線60との間の角度として規定される。
傾きは、前方向でも後方向でもよい。フープマン特許は、1.5の屈折率に対し13゜までの傾き量を有する構造体を開示する。フープマンはさらに、9.736゜の傾きのあるキューブを開示している。このような幾何学的要件は、溝切り工具がキューブ光学面を損傷するに至らない範囲での、従来のアレイ物品におけるキューブの最大前傾を表現している。この損傷は通常、工具が隣り合う素子のエッジ部分を切除して第3の溝を形成する間に発生する。例えば図8に示すように、9.736゜を超える前傾構成では、キューブエッジ65は、最初の2本の溝49、50によって形成された後に、一次溝51を形成することによって部分的に除去される。米国特許第2,310,790号(Jungersen)は、フープマン特許に示されるものとは反対の方向に傾いた構造体を開示している。
これらの従来型のアレイ物品では、光学性能は便宜的に、有効領域すなわち有効開口(active aperture)を構成する実際に再帰反射性のある表面領域の割合によって規定される。有効開口の割合は、傾き量、屈折率及び入射角の関数として変化する。例えば、図10に陰影で示す領域68は、アレイ物品42における個々のコーナキューブ再帰反射性素子の有効開口を表している。図示の等辺等角(60゜、60゜、60゜)の基部形状を有する素子アレイの、ゼロ入射角における六角形の有効開口度は約67%であり、これは従来の3溝式アレイで可能な最大値である。全ての六角形有効開口は、図示の例では同一の寸法及び形状を有している。
入射角がゼロでないときは、従来のアレイ物品は多くとも、大略類似寸法の異なる2つの開口形状を表す。これは、従来のコーナキューブ素子における幾何学的合同の適合ペアが単一タイプであることによる。従来の傾斜型のコーナキューブアレイ物品は、開口形状が傾度によって左右されるとはいえ、類似の傾向を示す。
米国特許第5,171,624号(Walter)で論じられているように、従来の略鉛直型のコーナキューブアレイ物品における有効開口からの回折は、再帰反射光のエネルギーパターンすなわち発散プロファイルに望ましくないバラツキを生み出す傾向がある。これは、従来のアレイ物品では、全ての有効開口が略同一寸法であって、そのため再帰反射の際に略同一程度の回折を示すことに起因する。
従来のアレイ物品における有効開口は、キューブ素子の基部周縁によって決められる。例えば、図10の六角形開口68の6辺は、3つの基部周縁とキューブピークを通って反射したこれらのエッジの光像とによって決められる。3つの基部周縁とそれらの像とは、従来の傾斜アレイ及び非傾斜アレイの、任意の入射角における開口形状を決める。
従来のコーナキューブアレイ物品は、傾きや他のデザイン上の特徴に起因するさらなる光学的制約の下で製作されて、ある種の環境下での非常に特異な性能を付与される場合がある。この一例は、米国特許第4,349,598号(White)に開示される構造である。図11及び図12はそれぞれ、従来のキューブ構造体における1つの幾何学的制約を伴うホワイト(White)記載の構成の極端な後方傾斜を、側面図及び断面図で示す。この構成では、キューブ構造体73は、対称軸77、78を有するコーナキューブ素子74、75の適合ペアを基準として構成されている。コーナキューブ素子74、75はそれぞれ、基部三角形の各々が消滅する点まで後方に傾いており、それにより2個の垂直光学面79、80が形成されている。この状況は、キューブピーク81、82が基部周縁83、84の真上にあり、且つ基部三角形が合体して四角形を形成することにより生じる。このキューブ構造体は、互いに反対側の切削面を備えた工具を用いて、2種類の溝セットを形成するだけで、基体に作製できる。一方の溝セットは90゜のVカット85を有し、他方の溝セットは、側溝86として形成された矩形カットを有している。全ての溝85、86の両側面が、アレイ物品73にコーナキューブ素子光学面を形成している。ホワイトの構成では、コーナキューブ反射性素子の適合ペアは、大きな入射角において高度の有効開口を与えるような特定の配置を有する。ホワイトの構成における開口形状は、基部によって境界付けされる。さらに、ホワイトの構造体は、平面視で4面を有している。
従来のコーナキューブアレイ及びホワイトの構成に関する別の変形例は、米国特許第4,895,428号(Nelson他)に開示されている。ネルソン他によって開示されたキューブ構造体87は、図13の側面図及び図14の平面図に示したものであって、ホワイトのキューブ素子構造体73の長さを減じ、且つキューブ垂直光学面79、80の一方を排除することによって得られる。ホワイトの構成のように、ネルソン他の構造体の製作も、2種類の溝セット88、89のみを必要とする。全ての溝88の両側面は、アレイ物品87にコーナキューブ素子光学面を形成している。ネルソン(Nelson)他の構成も、少なくとも1つの鉛直な再帰反射面を有していなければならない。これは、ホワイトの矩形側溝を切削する工具をオフセット工具に置換することによって達成される。ネルソン他の構成に関連する工具は、工具逃げ面を用いて非再帰反射性の表面90を形成するとともに、工具垂直側面を用いて鉛直な再帰反射面92を形成する。ネルソンの構成における開口形状は、基部によって境界付けされる。また、ネルソンに開示される構造体は、平面視で4面を有している。米国特許第4,938,563号(Nelson他)はさらに、傾斜二等分線素子の追加によるホワイトの構成のさらなる変形を教示する。
従来の再帰反射性コーナキューブ素子の構成が有していた構造上及び光学上の制約は、後述する複合構造体としての再帰反射性コーナキューブ素子構造体及びその製作方法を用いることによって回避される。この新規な複合構造型の再帰反射性コーナキューブ素子構造体及びその製作方法の使用は、コーナキューブ素子の形状の多様化を許容する。例えば、1つのアレイ物品におけるキューブ群を、異なる高さ又は異なる形状を有する隆起した不連続な幾何学構造体として、容易に製作できる。上記した複合構造体に係る方法及び構造を用いることにより、高度に調整可能な光学性能を有するキューブアレイ物品の製作も可能になる。例えば、ゼロ入射角を含む多くの入射角において、複合構造体を有するアレイ物品は、高い有効開口率を呈すること、若しくは向上した発散プロファイルを提供すること、又はその両方によって、従来のアレイ物品よりも性能の優れたものになる。また複合構造体の製作は、異なる形状及び寸法の有効開口を備えて近接且つ離間して混ざり合ったキューブ群によって得られる向上した光学性能を生み出す。これにより、日中及び夜間の両方の観察条件下で、複合構造体を有するアレイ物品の外観が、広範囲の視距離に亘ってさらに均一化する。また、複合構造型アレイ物品は、1形式以上のコーナキューブ素子の適合ペアを基準として作製できる。適合ペアは、共通でない基部周縁を有するか、又は共通の単一交点のみを有する基部周縁を備えることができる。複合構造体のコーナキューブ素子群の上記した利点は、これら素子群を有する物品の有用性を高める。このような物品は例えば、交通制御部材、再帰反射性自動車マーキング、光電センサ、方向反射器、及び人間又は動物用の反射性衣類を包含する。
複合構造型のコーナキューブ素子アレイ物品は、一体物でも合成物(すなわちタイル張り構成物)でもよく、片面又は両面が再帰反射性光学面を切削する形状になっている工具を用いて形成できる。複合構造型のコーナキューブ素子マスターアレイ及び多数製造されるレプリカの製作は、多様で且つ優れた適合性を有する光学性能及びコスト効率をもたらす。これら及び他の利点は、以下でさらに詳述する。
本発明に係る再帰反射面を形成するのに適した基体は、直接工作された溝ないし溝セットを形成するのに適したあらゆる材料から作製できる。適当な材料は、バリを作ることなくクリーンな状態に工作でき、低延性及び低粒状性を示し、溝の形成後に寸法精度を維持できるものである。工作可能なプラスチックや金属等の多様な材料を利用することができる。適当なプラスチックは、アクリル等の熱可塑性又は熱硬化性の材料である。適当な金属は、アルミニウム、黄銅、ニッケル、銅等である。好ましい金属は非鉄金属である。好ましい工作材料は、溝の形状時に切削工具の摩耗を最小限度に抑えるものであるべきである。
図15は、複合構造型のコーナキューブ素子アレイの直接工作型マスターを製作する方法を示している。直接工作型の基体100は、種々の溝間隔を有し得る2種類の非平行セットに配置された複数の平行な溝を備える。それら溝は、基体100に対し、工作工具の1回又は複数回のパスによって形成できる。各溝は好ましくは、片面のみに再帰反射性非鉛直光学面を切削するための形状を有する工作工具を、各溝の形成時に基体に対し略一定の方向性に維持することにより形成される。各溝は、個別のコーナキューブ光学素子又は非光学素子を含み得る幾何学的構造体の側面を形成する。
詳述すると、複合構造型コーナキューブ素子アレイ物品の製作方法は、平行溝群106を有する第1の溝セット104を、直接工作により第1経路に沿って基体に切削することを含む。次に、平行溝群108を有する第2の溝セット107を、第2経路に沿って基体100に直接工作する。これら第1及び第2の溝セット(2種類の二次溝又は二次溝セットとも称する)を工作することにより、複数の菱形ないしダイヤモンド形状の部分サブキューブ素子109(容易に認識できるように1個を代表的に陰影付けて図示する)が形成される。各部分サブキューブ素子は、図15及び図17〜図19に示すように、2つの直交光学面110を有する。好ましくは、溝106、108の一側面のみが部分サブキューブ素子109の直交面110を形成する。これら二次溝は、位置114で交差する。この段階で、複合構造型のアレイは、図1と図15、図2と図19、図3と図17及び図5と図18の、それぞれに類似した図を比較参照することにより、従来型のアレイと対比することができる。二次溝の形成後、最小限1本の溝を有する第3の溝セット(一次溝又は一次溝セットとも称する)を、第3経路に沿って基体100に切削する。図18には、この例で二次溝106、108に対して交差する代表的な一次溝116が破線で示されている。このような一次溝は、図20に示すアレイ物品の実施形態における溝セット128及び溝130に関連して、さらに詳細に後述する。
二次溝106、108の各々は、好ましくは図16に一実施形態として示す新規な半角工具118を用いて形成される。逃げ角Xは、如何なる角度でもよいが、その好ましい角度範囲は0゜と30゜の間である。図15及び図17〜図23の構成では、逃げ角Xは0゜である。図16に示す工具側面角Yはゼロではなく、好ましくは直交又は略直交するキューブ光学面を作るように特定される。二次溝の形成後に、少なくとも1つの溝130を有する第3の(又は一次)溝セット128は、基体100に第3経路に沿った工具パスを用いて切削されるのが好ましい。図20及び図21には、追加の複数の平行な一次溝130が示されている。第3の溝セット128を部分サブキューブ素子に切削することにより、キューブピーク137、138、139を有する個別の非傾斜コーナキューブ素子134、135、136が、一次溝と部分サブキューブ素子の直交面との交差によって形成される。コーナキューブ134、135、136は、アレイ物品141において平面視で三辺又は六辺を有する複合型の幾何学的構造体を構成する。
本発明はさらに、コーナキューブ素子群を含む複数の幾何学的構造体が基体に形成されている直接工作型の基体のレプリカとしての、再帰反射性コーナキューブ物品を製作する方法を提供する。本発明のこの実施形態では、各コーナキューブ素子は、基体上の3種類の平行溝セットの各々における少なくとも1本の溝によって境界付けされている。本発明に係るコーナキューブ素子の形成方法では、溝又は溝セットは、公知の物品においてコーナキューブ素子を形成する(すなわち境界付けする)溝又は溝セットとは、異なる範囲と意味を有することができる。例えば、公知の物品では、工作工具の多数回のパスによって1つの溝が形成される。
上記方法の他の実施形態では、再帰反射光パターンの形状をさらに変形させる物品又は物品のレプリカが作製される。そのような実施形態は、少なくとも1種類の溝セットにおける少なくとも1つの溝側面の角度が、溝側面によって規定されるコーナキューブ素子の他面に対し直交するのに必要な角度とは相違したものである。同様に、少なくとも1種類の溝セットを、互いに異なる少なくとも2つの溝側面角度の繰返しパターンから構成できる。溝切り工具の形状やその他の技術は、少なくとも幾つかのキューブにおいて少なくとも1つのコーナキューブ素子光学面の少なくとも機能上重要な部分が円弧になっているコーナキューブ素子を作製できるように選択される。この円弧面は凹状でも凸状でもよい。円弧面はm、1つの溝セットにおける1本の溝によって初期に形成されたものであって、当該溝に実質的平行な方向に見て平坦である。或いは円弧面は、この溝に平行な円筒軸線を有する円筒形でもよいし、この溝に直角な方向に変化する曲率半径を有していてもよい。
図20はさらに、二次溝106、108の相互交差点114において一次溝130がそれら二次溝106、108を通らないような、複合構造型のキューブアレイ物品144を示している。一次溝群130は、等間隔に配置されるとともに、複数の二次溝交差点114に対し中心に配置される。アレイ物品141は、複合構造型のコーナキューブ技術におけるもう1つの新規な特徴を呈示する。具体的には、3種類の非平行で相互交差しない溝セットを直接工作することにより、コーナキューブ物品を製作する方法を示す。これらの溝セットは、90゜未満の挟角で交差することが好ましい。工作の不正確さにより、交差点において溝同士の意図しない僅かな離隔が生じ得る。しかし本発明は、意図的に実質的離隔を生じさせるものである。例えば、2種類の溝セットの溝同士の交差点と第3の溝セットの少なくとも1本の溝との間の離隔距離を約0.01mmよりも大きくすることにより、この特徴による利点が生じるようになる。しかし、正確な最小離隔距離は、具体的な工具、基体、プロセス制御及び要求される光学性能に依存する。
非相互交差型の溝セットは、有効開口の寸法及び形状が異なるコーナキューブ素子群を含む複合型の幾何学的構造体を生み出す。アレイ物品は、相互交差した溝セットと相互交差しない溝セットとの組合せによって生み出されるコーナキューブ群を有するように形成できる。溝セットの位置は、所望範囲の入射角に亘って最大の全光再帰を生じるように調整される。また、少なくとも1つの溝セットにおける溝間距離は、少なくとも他の1つの溝セットにおける溝間距離に等しくなくてもよい。また、少なくとも1つの平行溝セットを繰返して基体に工作し、個々の工作毎に当該溝セットの溝間距離を任意に変えるようにすることもできる。さらに、いずれの溝もその一部分を、少なくとも1つの他の溝の深さとは異なる深さまで工作することができる。
図21は、基体100に溝を直接工作する間に形成される複合コーナキューブ面を示している。また図21は、複数の光学面とキューブピーク137、138、139とが共通基準面154の上方の異なる高さに形成されことを示している。
図22は、キューブ素子134、135、136に対応して密接配置で混成された3種類の異なる有効開口を表す陰影付き領域155、156、157を有する、複合構造型の再帰反射性コーナキューブ素子アレイ141の一部分を示す平面図である。基部が正三角形の従来型の非傾斜コーナキューブ素子アレイは、0゜の入射角において、最大で約67%の有効開口度しか与えない。しかし、図23に示すものに類似する複合構造型のコーナキューブ素子アレイは、0゜の入射角において、約70%を超える有効開口度、可能性としては約92%に達する程の有効開口度を達成できる。
図23及び図24は、21.78゜だけ傾いた対称軸を有する複合構造型アレイ165を示している。一次溝167の各々は4゜の逃げ角を有し、二次溝169、170の各々は20゜の逃げ角を有している。二次溝の複数の交差点171は、離間距離D1を有するように設計される。一次溝167は、同様に距離D1で等間隔配置され、隣接する各交差点171から0.155D1の距離に配置される。このパターンは、他の部分サブキューブ素子においても繰返される。図23のアレイは、3種類の異なる形式のキューブ172、173、174を含む複数の異なる(すなわち合同ではない)形状の幾何学的構造体を備える。図23の異なる幾何学的構造体は、平面視で三辺又は五辺の基部を有している。
図24は、入射角60゜及び屈折率1.59の場合の、3種類のキューブ172、173、174に対応して密接配置で混成された異なる寸法及び形状を有する複合有効開口184、185、186を、陰影付きで示している。アレイ165の全有効開口度は、これらの条件下で略59%である。開口186は、基部に属さないコーナキューブの外縁によって部分的に決められる有効開口の一例である。この構成は、例えば舗道マーカー、道路分離帯、障壁及びこれらの類似用途のように、高入射角度での高い輝度が要求される用途において特に有用である。
本発明は、再帰反射性コーナキューブ素子の構成及び製作の技術範囲、特に直接工作型の再帰反射性コーナキューブ素子の構成及び製作の技術範囲において、既知でもないし可能でもない構造の多くの組合せを可能にする。図25は、82゜、82゜及び16゜の挟角を成して交差する一次溝及び二次溝から形成された複合構造型コーナキューブ素子アレイ物品191を、平面図で示している。一次溝は、アレイ物品191の全体に等間隔に配置され、幾つかの一次溝が二次溝と点194で交差している。この実施形態では、一次溝195は30゜の逃げ角を有し、二次溝196、197は3゜の逃げ角を有している。図25のアレイは、異なる7タイプのキューブ198、199、200、201、202、203、204を含む複数の異なる幾何学的構造体を備える。図25の異なる幾何学的構造体は、平面視で三辺又は四辺を有する。多くの異なる再帰反射性コーナキューブ素子が作られるが、これらは既存の製作技法を用いては不可能であったものである。
光線が屈折率1.59のアレイ物品191に60゜の入射角で入るときには、図26に模式的に示されるように、アレイ物品は例外的な63%の有効開口度を表す。この有効開口度は、異なるタイプの再帰反射性コーナキューブ素子198、199、200、201、202、203、204に対応して密接配置で混成された異なる寸法及び形状を有する複合開口212、213、214、215、216、217、218の、総体としての光学性能を示している。アレイ物品191は、舗道や側溝のマーカー、道路分離帯、障壁及びこれらの類似用途のように、高入射角度での高い輝度が要求される用途において特に有用である。
図27及び図28は、74゜、74゜及び32゜の挟角を成して交差する一次溝及び二次溝から各々が形成される複数のコーナキューブ素子を含む複合構造型アレイ物品305を示している。一次溝308の各々は30゜の逃げ角度を有し、二次溝309、310の各々は3゜の逃げ角を有している。二次溝の複数の交差点313は、離間距離D2を有して設計される。3本の一次溝は、二次溝交差点313から0.20D2、0.55D2及び0.83D2の種々の離間距離を有して、部分サブキューブ素子上に位置決めされる。このパターンは、他の部分サブキューブ素子においても繰返される。
図27のアレイ物品は、異なる6タイプのキューブ316、317、318、319、320、321を備える。三面体325、326は、3面が直交していないために再帰反射性を有しない構造の事例である。図28は、入射角60゜で屈折率1.59の条件での、6タイプのキューブ316〜321にそれぞれ関連している密接配置で混成された6個の有効開口329、330、331、332、333、334を示している。このアレイ物品の有効開口度は、図28に示すように約63%である。この構成の有効開口形状は、60゜の入射角においても、一次溝に対し平行及び直角の両方向において略等しい寸法を有している。このような略円形の開口形状は、比較的丸く、且つ回折によって著しくは歪められない光再帰パターンを作る。これとは対照的に、高入射角及び高輝度の用途のために特別に設計されている従来のアレイ物品は、光再帰パターンを著しく歪める高度に長尺化された開口形状を呈する。複合構造アレイ305は、舗道や側溝のマーカー、道路分離帯、障壁及びこれらの類似用途のように、高入射角度での高い輝度が要求される用途において特に有用である。
上述したように、従来のコーナキューブ素子の構成における多くの制約事項は、複合構造体の製作方法を採用することによって解消される。適当な複合構造体の構成においては、従来型のキューブ構造を有するキューブ面は、1つのアレイ物品における複数のキューブ形式の一部として存在してもよい。しかし、従来のキューブの形状及び性能の一般的限界は、複合構造体及びその製作法を用いても同様には抑制されない。
図29は、複合構造型コーナキューブ素子アレイ物品の直接工作型のマスターを製作するもう1つの別の方法を示している。前方に9.74゜だけ傾いた対称軸を有する複合構造アレイ400は、直接工作された基体に3種類の平行溝セットを用いて形成される。各溝は好ましくは、両面に再帰反射性光学面を切削する形状を有するとともに、各溝の形成時に基体に対し略一定の方向性に維持される全角工作工具によって形成される。このような複合構造アレイを切削するのに用いられる全角工具は、フープマン(Hoopman)に開示されるような従来型の傾斜キューブアレイ(図8)を切削するのに用いる工具に類似している。しかし、この複合構造アレイに溝群を適正に相対配置すると、高度の適応性がある向上した光学性能と向上した物理特性と費用効果とが得られる。これら及び他の利点は、以下でさらに詳述する。
二次溝405、406は、離間距離D3で設計された複数の点407の各々で交差する。複数の一次溝410は、点407で二次溝とは交差せずに距離D3で等間隔配置されるとともに、それぞれの隣接する交差点407から0.25D3の位置に配置されている。この実施形態では、このパターンは、他の部分サブキューブ素子においても繰返される。図29のアレイ物品は、コーナキューブ素子の2種類の異なるタイプの適合ペアを含む複数の異なる幾何学的構造体を備える。キューブ素子415、416の組合せは、いずれの基部周縁も合致せずに基部の共通頂点のみを共有している第1タイプの適合ペアを表している。また、キューブ素子420、421の組合せは、基部の共通周縁を共有する第2タイプの異形キューブ適合ペアを表している。
図29の異なる幾何学的構造体は、平面視で三辺又は五辺を有している。コーナキューブ素子を含む複数の構造体は、共通基準面の上方に異なる高さを有している。二次溝405、406の交差点407は、この実施形態では一次溝410のどの部分とも一致していないので、3種類の溝セットは相互に交差しない。
図30は、密接配置で混成された、0゜の入射角における異なる寸法の2種類の有効開口440、441を示している。有効開口440はキューブ415、416に対応しており、有効開口441はキューブ420、421に対応している。コーナキューブ素子の各適合ペアにおける両キューブの有効開口は、0゜の入射角では同一である。この複合構造アレイにおける全有効開口度は、0゜の入射角で約62.5%であり、これは、図8に示すような同一程度に傾いた従来型のアレイで可能であった50%の有効開口度を実質的に超えている。
入射角がゼロでないときは、2個の適合ペアにおける4個のコーナキューブ素子は、寸法及び形状の異なる4種類の有効開口を生み出す。図31は、入射角30゜で屈折率1.59の場合の例を示しており、有効開口450、451、452、453がそれぞれ、複合構造コーナキューブ素子415、416、420、421に対応している。開口452の形状は、基部に合致しないコーナキューブ構造の外縁455によって部分的に決まる。この複合構造アレイの全有効開口度は、30゜の入射角において約48%であり、これは、図8に示すような同一程度に傾いた従来型のアレイで可能であった約45%の有効開口度を超えている。
図32は、図29に示す複合構造アレイ物品400における有効開口度を、入射角の関数として曲線460で表すとともに、従来のフープマンのアレイ物品における有効開口度を曲線461で表している。なお、いずれのアレイ物品も、9.74゜の傾きを素子に有している。これらのアレイ物品は、シーティングの平面上の軸線に関して回転したときに対称な入射角特性を呈する。複合構造アレイ物品は、屈折率1.59では約35゜までの入射角において、相対的に高い有効開口度を呈する。入射角が大きくなると、フープマンのアレイ物品が相対的に高い有効開口度を呈する。しかし、複合構造アレイ物品400は、非常に大きな入射角であっても、入射光の大部分を継続して再帰反射する。このような、入射角35゜までの比較的高い光再帰性能と、非常に大きな入射角での充分な光再帰性能との組合せは、従来の傾斜及び非傾斜コーナキューブアレイ物品の性能をしのぐ優れた能力である。また、複合構造アレイ物品は、相互交差溝と非交差溝との両方を組合せて作製できることも理解される。
いずれの溝セットにおいても溝間隔を多様にすることは、追加の有利な特徴を備えた複合構造コーナキューブアレイを作るために使用できる。この種のアレイ物品480は、図33に示されており、そこでは二次溝の複数の交点407が、図29の構成と同様に離間距離D3を有して設計されている。しかし、二次溝交点407に対する一次溝470の離間距離は、アレイ物品480の全体に亘って繰返しパターンで変化している。9.74゜だけ前方に傾いた対称軸を有するこの複合構造アレイは、直接工作基体に全角工具を用いて3種類の平行溝セットを有するように形成されている。コーナキューブ素子の異なる6タイプの適合ペアがアレイ480に形成されており、その幾つかのペアが図33に陰影線で示されている。各適合ペアは、異なる幾何学的構造体を有している。素子415、416、素子420、421、素子488、489、素子490、491、素子492、493及び素子493、495を含む6種類の適合ペアは、共通の基部周縁を共有していなくても、基部頂点を共有していてもよい。例えば、素子488、489、素子490、491及び素子494、495の適合ペアは、アレイ480内で完全に分離されている。広範囲に亘る開口の寸法及び形状により、このアレイ物品において、回折による再帰反射光の発散プロファイル又は再帰エネルギーパターンの均一性が向上する。溝群の適正配置は、設計に際し、所与の用途に対する最適な製品性能を与えるために有利に利用される。複合適合ペアの使用により、アレイ物品は、シーティングの平面上の軸線に関して回転したときに非対称な入射角特性を呈するようになる。
図34は、少なくとも1種類の溝セットにおいて多様な溝間隔を有している別のアレイ物品500を示す。しかし、図34に示す溝間隔によれば、コーナキューブ素子の少なくとも1個が適合ペアの一部ではないアレイ物品が生成される。例えば、コーナキューブ素子415、416及びコーナキューブ素子420、421は、アレイ物品500における適合ペアを形成する一方で、それぞれ陰影線で示すコーナキューブ素子488、490、492及び494は、図34における適合ペアの一部ではない。適合ペアの素子であった図33に示す素子489、491、493及び495は、アレイ物品500では存在しない。このアレイ物品は、シーティングの平面上の軸線に関して回転したときにも、対称な入射角特性を呈しない。図33及び図34はさらに、直接工作基体のレプリカとして作製できる再帰反射性コーナキューブ物品の事例を示している。これらのアレイ物品は、光学面を形成する複数の溝セットを有しており、溝の少なくとも1本が、選定した溝の少なくとも一側面の一部分のみに幾何学的構造体の側面を備えたコーナキューブ素子光学面を形成する。
従来型のフープマンのアレイ物品は、隣り合うキューブ素子上に二次溝によって形成された外縁を削除する相互交差一次溝用の切削工具を用いずには、9.74゜の限界を越えて傾けることはできない。図29、図33及び図34のアレイ物品のような複合構造アレイは、必ずしも相互交差していない3種類の平行溝セットを用いて形成される。したがって複合構造アレイでは、従来の限界を越えた傾きが、隣接するコーナキューブ素子を損傷したり光学性能を阻害したりすることなく、有利に使用される。
複合構造体の構成は、交通制御部材、再帰反射性自動車又は進入路マーキング、光電センサ、標識、内部照明式再帰反射性物品、反射性衣服及び再帰反射性マーキング等の、実質的全光を再帰させる再帰反射性シーティングを必要とする用途において、特に有益である。複合構造の技術及び概念から得られる光学的性能及び設計自由度の改善により、製品性能、コスト効率及び市場利益が向上する。
再帰反射性シーティングにおける全光再帰性は、有効開口度(%)と再帰反射光線強度との関係によって左右される。キューブ形状、入射角及び屈折率の組合せによっては、有効開口度(%)が比較的高い場合にも、光強度の著しい低減により全光再帰性が低下することがある。一例として、再帰反射光線の全反射に依存している再帰反射コーナキューブ素子アレイ物品が挙げられる。光強度は、全反射のための臨界角を1つのキューブ面で越えた場合に、実質的に低減する。このような状況に対しては、金属被覆や他の反射性被覆物をアレイ物品の一部分に施すことを有利に利用できる。このような部分は、アレイ物品の全体又は一部であることができる。
合成タイル張り法は、異なる方向性を有するコーナキューブ素子領域群を組合せる技術である。これは例えば、方向性に関係無く大きな入射角で均一な外観を呈するシーティングを提供する目的で、従来型のアレイ物品で使用されている。また、合成タイル張り法は、非対称な入射角特性をそれぞれに呈するアレイ物品を用いて、入射角の変化に対して対称な光学性能を与えるため、及び非三角形の基部を有するコーナキューブプリズムを備えたアレイ物品の光学性能を改良するために、導入できる。
図35において、合成アレイ552は、非対称アレイ165の幾つかの領域を備えている。合成アレイは、複合構造アレイ群を有する少なくとも1つの領域を含む異なるアレイ物品の幾つかの領域を備えることができる。それら領域の寸法は、具体的用途の要件に従って選定される。例えば交通制御用途では、予期される最短視距離で、狙いを定めていない人間の眼によって視覚的に解像されない程に充分に小さい領域群が要求される。それにより、均一な外観を呈する合成アレイが作製される。或いは、側溝マーキングや方向反射器の用途では、必要とされる最大視距離で、狙いを定めていない眼によって容易に解像され得る程に充分に大きい領域群が要求される。
図36は、本発明の一実施形態の側面断面図である。この図は、図21に示すアレイ物品141に類似した複合構造アレイ物品564の一部を示しているが、この実施形態は、他のアレイ形態と共に使用することもできる。図36はさらに、共通基準面の上方に異なる高さを有する幾何学的構造体を提供すること及び工作中に溝深さの違いを利用することに関して、複合構造製作法の利点を表している。例えば、溝576の少なくとも一部分が、溝575の深さとは異なる深さまで基体に工作される。アレイ物品564における複合構造体は、個々の再帰反射性コーナキューブ素子568、569、非再帰反射性の角錐部分、台形部分、柱状部分又は共通基準面574の上方に位置する他の構造体によって形成できる。
キューブピーク571、572や原型基体から工作された他の特徴部分は、特定の効用や用途のために面取りすることができる。この面取りは例えば、溝の切込み深さの制御や、一次溝及び二次溝の形成後に適当な量の材料をさらに除去すること等の、種々の技法によって達成できる。
直接工作型の再帰反射性コーナキューブ素子物品は、大抵の場合、再帰反射性素子に隣接して性能向上のための空気等の低屈折率材料を維持する目的で、再帰反射性物品に添付されるシール用フィルムを支持するように設計される。従来のアレイ物品においては、この種のシール媒体は一般に、コーナキューブ素子群に直接に接触して配置されるが、この方法は全光再帰性を劣化させる惧れがある。しかし、複合構造体の構成を用いれば、シール媒体580は、低位の再帰反射性コーナキューブ素子群に接触することなく、したがってそれら低位の素子群の光学的物性を劣化させることなく、アレイ物品の最も高い面583上に配置される。この最高位面は、コーナキューブ素子群だけでなく、非再帰反射性の角錐部分、台形部分、柱状部分又は他の構造体によっても形成できる。図36では、最高位面583は面取りされている。工作公差や非直交性の意図的誘因に起因した溝の位置やコーナキューブ素子の挟角の僅かな非均一性から、高さの微少なバラツキが生じる場合があるが、このようなバラツキは、本発明で教示した高さの差とは関連性が無いものである。シール媒体を使用するアレイ物品において、上記した面取り面は、コーナキューブ素子の上方での媒体保持とシーティングの光透過性の増大との両目的で使用できる。シーティングの光透過性は、透明又は部分的透明のシール媒体の使用によって増大され得る。
図37は、本発明の他の実施形態を示す断面図である。この図は、図36のアレイ物品564の一部分に類似する一方で分離面588を使用している複合構造アレイ物品585を、部分的に示している。幾何学的構造体595、596の側面592、593は、分離面に対する境界縁部599、600を形成する。それら側面は、コーナキューブ及び他の幾何学的構造体におけるコーナキューブ素子光学面及び非光学面を包含し得る。分離面588は、断面視で平坦部分又は湾曲部分を有してもよい。
分離面は、複合構造型の再帰反射性コーナキューブ素子アレイを利用した可撓性シーティングを含むシーティングにおいて、光透過性すなわち透明性を増大させるために有利に用いることができる。これは例えば、通常は射出成形法を用いて作製される標識や自動車の信号光反射器等の、内部照明型の再帰反射性物品に特に有用である。図37に示す実施形態では、分離面が最高位面583の面取り面との組合せで示されているが、これらを個別に利用することもできる。分離面588は、平坦又は湾曲チップを有する工作工具を用いて、或いは複合構造コーナキューブ素子アレイマスターのレプリカからさらに材料を除去することによって、形成できる。
本発明の再帰反射性の物品ないしシーティングに適した材料は、寸法安定性、耐久性及び耐候性があり、且つ所望形態に容易に複製できる透明材料であることが好ましい。適当な材料の例は、ガラス、アクリル(Rohm and Hass Companyによって製造されたPlexiglasブランドの樹脂のような約1.5の屈折率を有するもの)、ポリカーボネート(約1.57の屈折率を有するもの)、反応性材料(米国特許第4,576,850号、同第4,582,885号及び同第4,668,558号に教示されているようなもの)、ポリエチレン基イオノマー(SURLINのブランド名でE.I.Dupont de Nemours and Co,Inc.によって市販されているもの等)、ポリエステル、ポリウレタン、及びセルローズアセテートブチレートを包含する。ポリカーボネートは、一般に広範囲の入射角に亘って再帰反射性能を向上させるのに役立つ頑丈さ及び比較的高い屈折率を有するので、特に適している。これらの材料はさらに、染料、着色剤、顔料、UV安定剤、又は他の添加剤を含有することができる。材料が透明性を有することにより、物品ないしシーティングの分離面又は面取り面がそれを通し確実に光を透過させるようになる。
面取り面や分離面を採用することにより、物品の再帰反射性を消滅させることなく、物品全体に亘って局部的な透明部分が形成される。部分的に透明な材料が要求される用途では、物品の低い屈折率が、物品を透過する光の範囲を向上させる。このような用途では、光透過範囲に優れたアクリル(屈折率約1.5)が望ましい。
完全再帰反射性が必要な物品では、高屈折率を有する材料が好ましい。このような用途では、約1.5の屈折率を有するポリカーボネート等の材料が、材料の屈折率と空気の屈折率の差を高めて再帰反射性を増大させるために使用される。また、ポリカーボネートは一般に、温度安定性と衝撃抵抗性を有するので好ましい材料となる。
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、種々の修正及び変形をなし得ることは、当業者にとって明らかであろう。

Claims (7)

  1. 基面と該基面の反対側の構造体表面とを有する基体(100)を含んで成る再帰反射性シーティングであって、該構造体表面が、
    少なくとも2本の平行な溝を有する第1の溝セット(106)と、
    少なくとも2本の平行な溝を有し、複数の交差点(114)で前記第1の溝セット(106)に交差している第2の溝セット(108)と、
    少なくとも2本の平行な溝を有し、それら溝のうちの少なくとも1本が前記交差点(114)から離れた点で前記第1の溝セット(106)と前記第2の溝セット(108)とに交差して、複数のコーナキューブ素子(134,135,136)のアレイを構成している第3の溝セット(130)とを具備し、
    前記アレイの各コーナキューブ素子が単一のコーナキューブ素子であること、を特徴とする再帰反射性シーティング。
  2. 前記第3の溝セット(130)の前記少なくとも1本の溝が、前記第1の溝セット(106)と前記第2の溝セット(108)との前記交差点(114)から少なくとも0.01mmの位置で、該第1及び第2の溝セット(106;108)に交差している、請求項1に記載の再帰反射性シーティング。
  3. 前記アレイが複数の幾何学的に非合同なコーナキューブ素子(134,135,136)を含んで成る、請求項1又は2に記載の再帰反射性シーティング。
  4. 前記シーティングの一部分が光透過性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の再帰反射性シーティング。
  5. コーナキューブ物品を製作する方法であって、
    工作可能な基体を準備するステップと、
    少なくとも2本の平行な溝を有する第1の溝セット(106)を前記基体に工作するステップと、
    少なくとも2本の平行な溝を有し、複数の交差点(114)で前記第1の溝セット(106)に交差する第2の溝セット(108)を、前記基体に工作するステップと、
    少なくとも2本の平行な溝を有し、それら溝のうちの少なくとも1本が前記交差点(114)から離れた点で前記第1の溝セット(106)と前記第2の溝セット(108)とに交差して、複数のコーナキューブ素子(134,135,136)のアレイを構成する第3の溝セット(130)を、前記基体に工作するステップとを具備し、
    それにより、前記アレイにおける各コーナキューブ素子が単一のコーナキューブ素子となるようにしたこと、
    を特徴とするコーナキューブ物品の製作方法。
  6. 基面(154)と該基面の反対側の構造体表面とを有し、該構造体表面が、平行な溝群の複数のセット(106,108,130)から得た側面群によって規定される複数の幾何学的構造体を有し、少なくとも幾つかの該幾何学的構造体が前記基面(154)の上方に最上部(137,138,139)を有し、互いに略直交する3つの面が該最上部で終端し、該3つの面がコーナキューブ素子を構成する再帰反射性コーナキューブ物品であって、
    前記少なくとも幾つかの幾何学的構造体が、非合同形状を有する第1及び第2のコーナキューブ素子(134,135,136)を備え、
    前記第1及び第2のコーナキューブ素子の少なくとも一方の、前記互いに略直交する3つの面の少なくとも1つが、3つ以上の辺を有すること、
    を特徴とする再帰反射性コーナキューブ物品。
  7. 基面(154)と該基面の反対側の構造体表面とを有し、該構造体表面が、平行な溝群の複数のセット(106,108,130)から得た側面群によって規定される複数の幾何学的構造体を有し、少なくとも幾つかの該幾何学的構造体が前記基面(154)の上方に最上部(137,138,139)を有し、互いに略直交する3つの面が該最上部で終端し、該3つの面がコーナキューブ素子を構成する再帰反射性コーナキューブ物品であって、
    前記少なくとも幾つかの幾何学的構造体が、平面視で非合同形状の基面を有する第1及び第2のコーナキューブ素子(134,135)を備えること、
    を特徴とする再帰反射性コーナキューブ物品。
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