JP3590007B2 - 電子放出素子およびその製造方法並びに該電子放出素子を用いた画像表示装置 - Google Patents

電子放出素子およびその製造方法並びに該電子放出素子を用いた画像表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界放出の原理に基づき電子を放出し、薄型表示装置を構成するために用いられる電子放出素子およびその製造方法並びに該電子放出素子を用いた画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、強電界を印加することにより電界電子放出する電界放出型電子源に関する研究が盛んに行われている。
【0003】
電界放出型電子源を用いた薄型表示装置は自発光型であるため、液晶表示装置のようにバックライトを設ける必要がない。しかも、原理的にはCRT(ブラウン管)と同等の見やすさ・明るさが得られ、さらには、電界放出型電子源の微細性を生かした非常に高精細の表示装置を実現する可能性がある。
【0004】
従来の電子源としては、C.A.SpindtらがUSP3665241号で開示しているような円錐形状のメタル電子源が知られている。このようなメタル電子源は、例えばモリブデンなどの高融点金属材料からなり、蒸着法により形成される。
【0005】
しかしながら、上記メタル電子源は、金属を蒸着法により形成して製造されることにより、大型の表示装置などに用いるために大面積の電子放出素子を形成する場合、メタル電子源の形状がバラツキが多くなる。従って、電子源としての均一性や信頼性の点で問題があった。
【0006】
また、他の電界放出型電子源として、低電界で電子を放出する、例えば、種々の材料からなる超微粒子状物質や針状の電極部材などといった電子放出材料も研究されている。
【0007】
それらの電子放出材料の中では、炭素系の材料が盛んに検討されており、その中でも特に、遠藤らの解説(固体物理、vol.12、No.1、1977)などに示されている気相成長法を用いて製造されるナノメーターオーダーの炭素繊維や、飯島らにより確認されたアーク放電法により生成されるカーボンナノチューブ(Nature、354、56、1991)などは、グラファイトを丸めた円筒形の物質であり、円筒状に巻いたグラファイト層の入れ子状構造を有している。このカーボンナノチューブは、電子源として優れた特徴を有する材料として非常に期待されている。
【0008】
また、カーボンナノチューブからの電子放出に関しては、R.E.Smalleyら(Science、269、1550(1995))や、W.A.de Heerら(Science、270、1179(1995))の研究グループなどにより報告されている。
【0009】
このようなカーボンナノチューブを用いた電子放出素子としては、例えば、陽極酸化膜の細孔にカーボンナノチューブを挿入することにより、カーボンナノチューブを一定方向に配列させる電子放出素子がある。
【0010】
このような電子放出素子として、例えば、特開2000−86216号公報には、カーボンナノチューブを分散させた溶液中に陽極酸化膜を浸せきさせ、超音波で振動させることによりカーボンナノチューブを細孔に挿入してエミッタアレイ(電子放出素子)を形成する方法などが記載されている。
【0011】
上記方法で電子放出素子を形成することにより、別工程で作製されたカーボンナノチューブを用いて湿式プロセスにより電子放出素子を形成することとなる。従って、カーボンナノチューブを作製する際のCVD装置などの成膜装置を使用することがなく、低コストで電子放出素子を形成することができる。
【0012】
ここで、カーボンナノチューブは直径と長さとのアスペクト比が非常に大きく、即ち、一軸性を有するため、陽極酸化膜にカーボンナノチューブを挿入する際には、カーボンナノチューブを配向させる(ある一定方向に向かせる)必要がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載の方法では、カーボンナノチューブを陽極酸化膜の細孔に挿入するのに超音波振動を行っているため、振動によりカーボンナノチューブの向きがランダムになる。このため、カーボンナノチューブを配向させて細孔に挿入することが困難となる。
【0014】
また、支持基板には常に振動が加わっているため、一旦細孔に挿入したカーボンナノチューブが抜ける虞れがある。従って、高密度のエミッタアレイを形成することができない。
【0015】
また、カーボンナノチューブが細孔内に完全に挿入されなかった場合、即ち、カーボンナノチューブの挿入状態が浅い場合、カーボンナノチューブが細孔内で浮いてしまうこととなり、電子放出素子において、カーボンナノチューブと電極部材(カソード電極)との導通がとれなくなる。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カーボンナノチューブなどの電極部材を確実に細孔内に挿入することができ、かつ、電極部材と確実に導通をとることができる電子放出素子およびその製造方法並びに該電子放出素子を用いた画像表示装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子放出素子は、上記の課題を解決するために、伸長方向が揃った複数の細孔を有する保持部材と、該保持部材における細孔の底部側に配された導電電極部と、一部が細孔から突出するように該細孔に挿入されている電極部材とを有する電子放出素子において、導電性材料からなり、電極部材を固定するための表面膜が、保持部材の表面に接するように配され、導電電極部と電極部材とが、表面膜を介して電気的に接続されていることを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、細孔に挿入された電極部材が表面膜によって(機械的に)固定されており、また、該表面膜を介して、導電電極部と電極部材とが電気的に接続されている。従って、細孔への挿入が不完全な、即ち、細孔への挿入状態が浅い電極部材があったとしても、電極部材は表面膜を介して導電電極部と電気的に接続される。これにより、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができる。
【0019】
上記の電子放出素子は、表面膜が、少なくとも導電電極部の表面から保持部材の表面にわたるように配されていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、表面膜が保持部材の表面に配されていることにより、電極部材を強固に固定することができる。従って、信頼性の高い電子放出素子を提供することができる。
【0021】
また、表面膜が、少なくとも導電電極部の表面から保持部材の表面にわたるように配されていることにより、例えばカーボンナノチューブなどの電極部材における細孔内への挿入状態にかかわらず、即ち、挿入状態が浅くても、電極部材と導電電極部とを電気的に接続する(電極部材は導電電極部と確実に導通をとる)ことができる。これにより、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができる。
【0022】
上記の電子放出素子は、導電電極部上に、導電電極部より電気抵抗率が高い抵抗層がさらに配されており、抵抗層を介して表面膜と導電電極部とが電気的に接続されていることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、導電電極部より電気抵抗率が高い抵抗層が配されていることにより、電極部材からの電子放出時において、抵抗層における電圧降下によって放出電流が緩和され、電子放出特性がより穏やかなものとなる。従って、例えば、大面積の電子放出素子を形成した場合にも電子放出の均一化・安定化を図ることができる。
【0024】
上記の電子放出素子は、抵抗層が、半導体材料または金属酸化物からなることが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、抵抗層が、半導体材料(例えば、シリコン、シリコン炭化物、シリコン窒化物、シリコン酸化物)または金属酸化物(例えば、ITOや酸化錫)からなることにより、例えば、保持部材を形成する際に陽極酸化処理を施す場合、陽極酸化処理時の酸化を止めるストップ層としての機能を兼ねることができる。これにより、信頼性の高い電子放出素子を提供することができる。
【0026】
上記の電子放出素子は、表面膜が、少なくとも保持部材の表面から抵抗層の表面にわたるように配されていることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、表面膜が保持部材の表面に配されていることにより、電極部材を強固に固定することができる。従って、信頼性の高い電子放出素子を提供することができる。
【0028】
また、表面膜が、少なくとも保持部材の表面から抵抗層の表面にわたるように配されていることにより、例えばカーボンナノチューブなどの電極部材における細孔内への挿入状態にかかわらず、即ち、挿入状態が浅くても、表面膜および抵抗層を介して電極部材と導電電極部とを電気的に接続する(電極部材は導電電極部と確実に導通をとる)ことができる。これにより、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができる。
【0029】
上記の電子放出素子は、保持部材が、金属膜を陽極酸化してなる陽極酸化膜であることが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、伸長方向が揃った複数の細孔を容易に形成することができる。また、電圧値、時間などの陽極酸化条件の設定を変更することにより、細孔の直径、深さ、ピッチなどの形状制御を簡単に行うことができる。従って、細孔の均一性・再現性の向上を図ることができる。さらに、例えばこのような細孔に電極部材が挿入され、配列されることにより、良好な電子放出特性を有し、均一性の高い電子放出素子を提供することができる。
【0031】
さらに、細孔の密度を陽極酸化条件の設定の変更により容易に変更することができることにより、電子放出素子の電子放出密度を簡単に調整することができる。
【0032】
上記の電子放出素子は、金属膜が、アルミニウムからなることが好ましい。
【0033】
上記の構成によれば、低コストで、容易かつ均一に細孔を形成することができる。従って、電子放出素子の低コスト化を図ることができる。
【0034】
上記の電子放出素子は、導電性材料が、少なくとも、導電電極部、保持部材、および、電極部材を構成する材料よりも融点の低い金属材料を含んでいることが好ましい。
【0035】
上記の構成によれば、表面膜を構成する導電性材料が低融点な金属材料を含んでいることにより、例えば、導電性材料を融解した後硬化することで、電極部材を表面膜によって固定することができる。これにより、電子放出素子の信頼性の向上を図ることができる。
【0036】
上記の電子放出素子は、電極部材が、カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0037】
上記の構成によれば、電極部材が、低電界で電子を放出することができ、化学的に安定しているカーボンナノチューブからなることにより、優れた電子放出効率を確保することができる。
【0038】
また、通常、良質なカーボンナノチューブを生成する場合、黒鉛化処理は2800℃程度の高温を必要とするが、このカーボンナノチューブを生成する工程は、電子放出素子の製造工程とは別工程で行うことができる。従って、例えば、電子放出素子を構成する基板などを耐熱性の低い安価な材料で構成することができる。また、カーボンナノチューブはその材料により、安価に大量生産することができる。
【0039】
このように、カーボンナノチューブは、別途、安価に大量生産することができる。これにより、良好な電子放出特性を有し、均一性が高く、生産性に優れた電子放出素子を提供することができる。
【0040】
本発明の電子放出素子の製造方法は、上記の課題を解決するために、導電電極部上に、伸長方向が揃った複数の細孔を有する保持部材を形成する工程と、針状の電極部材を上記細孔に挿入する工程と、上記導電電極部の表面から保持部材の表面にわたって導電性材料からなる膜を成膜する工程と、該導電性材料を融解後、硬化することにより上記電極部材を細孔内に固定する工程とをこの順に有することを特徴としている。
【0041】
上記の方法によれば、導電電極部の表面から保持部材の表面にわたって導電性材料からなる膜を成膜し、また、その導電性材料により電極部材を細孔内に固定することにより、導電性材料からなる膜を介して、導電電極部と電極部材とが電気的に接続される。
【0042】
従って、細孔に電極部材を挿入する工程において、細孔への挿入が不完全な、即ち、細孔への挿入状態が浅い電極部材があったとしても、電極部材は表面膜を介して導電電極部と電気的に接続される。これにより、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができる。
【0043】
本発明の電子放出素子の製造方法は、導電電極部上に、伸長方向が揃った複数の細孔を有する保持部材を形成する工程と、上記細孔を覆うように上記導電電極部から保持部材表面にわたって導電性材料を成膜する工程と、針状の電極部材を上記細孔に挿入する工程と、上記導電性材料を融解後、硬化することにより上記電極部材を細孔内に固定する工程とをこの順に有することを特徴としている。
【0044】
上記の方法によれば、細孔を覆うように、導電電極部の表面から保持部材の表面にわたって導電性材料からなる膜を成膜し、また、その導電性材料により電極部材を細孔内に固定することにより、導電性材料からなる膜を介して、導電電極部と電極部材とが電気的に接続される。
【0045】
従って、細孔に電極部材を挿入する工程において、細孔への挿入が不完全な電極部材があったとしても、電極部材は表面膜を介して導電電極部と電気的に接続される。これにより、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができる。
【0046】
上記の電子放出素子の製造方法は、保持部材を形成する工程が、金属膜を陽極酸化してなることが好ましい。
【0047】
上記の方法によれば、金属膜を陽極酸化することにより、伸長方向が揃った複数の細孔を容易に形成することができる。また、電圧値、時間などの陽極酸化条件の設定を変更することにより、細孔の直径、深さ、ピッチなどの形状制御を簡単に行うことができる。従って、細孔の均一性・再現性の向上を図ることができる。さらに、例えばこのような細孔に電極部材が挿入され、配列されることにより、良好な電子放出特性を有し、均一性の高い電子放出素子を提供することができる。
【0048】
上記の電子放出素子の製造方法は、針状の電極部材を上記細孔に挿入する工程が、上記針状の電極部材を分散させて分散液を調製する工程と、該分散液中に少なくとも上記保持部材と導電電極部とを浸せきする工程と、上記保持部材に電界または磁界を印加して、該針状の電極部材を細孔の伸長方向に沿うように配向させ、該細孔内に針状の電極部材を挿入する工程とをこの順に含むことが好ましい。
【0049】
上記の方法によれば、保持部材に電界を印加することにより、例えば、分散液中に分散している針状の電極部材は電気泳動をし、電界方向に対して電極部材の長軸が平行になるように配向する。そして、配向した電極部材は導電電極部に向かって移動する。これにより、電極部材を細孔に挿入することができる。
【0050】
また、保持部材に磁界を印加することにより、例えば、分散液中に分散している針状の電極部材はその長軸が磁力線に平行に(導電電極部に対して略垂直な向きになるように)配向する。そして、配向した電極部材は導電電極部に向かって移動する。これにより、電極部材を細孔に挿入することができる。
【0051】
従って、針状の電極部材を安定して細孔に挿入することができ、これにより、例えば、大型の画像表示装置に用いるための大面積の電子放出素子を形成する場合でも、生産性に優れた電子放出素子を提供することができる。
【0052】
また、保持部材に電界または磁界を印加して細孔内に針状の電極部材を挿入することにより、針状の電極部材を、電子放出素子の製造工程とは別工程で製造することができる。これにより、針状の電極部材として、安価に大量生産することのできる、特性の良好な材料を選択して用いることができる。従って、低コストで生産性に優れた電子放出素子を提供することができる。
【0053】
本発明の画像表示装置は上記記載の電子放出素子と、該電子放出素子から放出された電子により画像を形成する画像形成部とを備えていることを特徴としている。
【0054】
上記の構成によれば、電極部材を確実に細孔内に挿入することができ、かつ、電極部材と確実に導通をとることができる電子放出素子を画像表示装置に用いることができる。従って、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を用いることとなり、画像表示が良好な画像表示装置を提供することができる。
【0055】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1ないし図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0056】
図1は、本実施の形態に係る電界放出型の電子放出素子の要部の構成を示す部分断面図である。同図に示すように、電子放出素子は、支持基板1上に、カソード電極層(導電電極部)2、絶縁保持部(保持部材)3、電極部材4および表面膜5を有している。
【0057】
また、電子放出素子は、画像表示装置に用いられる場合、アノード電極を有するアノード電極基板と対向配置して使用される。
【0058】
支持基板1はガラスからなる。支持基板1上にはカソード電極層2が形成されている。カソード電極層2は、金属材料、あるいは半導体材料などからなる。カソード電極層2上には、絶縁保持部3が形成されている。
【0059】
絶縁保持部3は、伸長方向が同じ向きに揃っている複数の細孔3a…を有する。絶縁保持部3は、例えば非導電性の金属酸化膜などの絶縁性材料からなる。細孔3aは、絶縁保持部3の上面側(表面側)から下面側(カソード電極層2側、底部側)にかけて略垂直に貫通する。細孔3aの大きさは、後述する電極部材4が挿入可能な大きさとなっている。
【0060】
電極部材4は、炭素材料であるカーボンナノチューブからなり、その形状は針状である。電極部材4は、その先端が絶縁保持部3から突出するように、細孔3a内に挿入されている。電極部材4はエミッタ電極として機能し、電子を放出する。また、カソード電極層2および絶縁保持部3上には、略全面に(絶縁保持部3の表面からカソード電極層2の表面までわたって)、電極部材4を固定するための表面膜5が形成されている。即ち、表面膜5は、絶縁保持部3の表面からカソード電極層2の表面までのびている。
【0061】
表面膜5は、例えば、錫やインジウムなどの導電性材料からなる。この導電性材料は、支持基板1やカソード電極層2、絶縁保持部3、電極部材4など、電子放出素子を構成する他の材料よりも融点の低い金属材料を含んでいる。表面膜5は、少なくとも電極部材4の一部と接しており、表面膜5を介して、電極部材4とカソード電極層2とは電気的に接続されている。
【0062】
以上のように、細孔3aの伸長方向が同じ向きに揃っていることにより、細孔3aに挿入されている電極部材4の長手方向も略同じ向きに揃っている。従って、電子放出素子は、同一方向、即ち、電子放出方向に配列(配向)したエミッタ電極を備えることとなる。これにより、電子放出効率の優れた電子放出素子を提供することができる。
【0063】
また、表面膜5は、少なくとも、カソード電極層2の表面から絶縁保持部3の表面にわたるように配されている。従って、電極部材4を、略同一方向の配列を保持した状態で細孔3aに強固に固定することができる。これにより、信頼性の高い電子放出素子を提供することができる。
【0064】
さらに、細孔3a内に挿入されずに絶縁保持部3に付着している電極部材4があったとしても、表面膜5によって完全に電極部材4は固定されているため、電極部材4が絶縁保持部3上から離脱して、例えば図示しないアノード電極とカソード電極層2とが短絡するなどの不具合を誘発することがない。
【0065】
このように、導電性材料からなり、電極部材4を(機械的(構造的)に)固定するための表面膜5が、伸長方向が揃った複数の細孔3a…を有する絶縁保持部3の表面に接するように配されており、また、絶縁保持部3における細孔3aの底部側に配されたカソード電極層2と電極部材4とが、表面膜5を介して電気的に接続されている電子放出素子とすることにより、細孔3aへの挿入が不完全な、即ち、細孔3aへの挿入状態が浅い電極部材4があったとしても、電極部材4は表面膜5を介してカソード電極層2と電気的に接続される。
【0066】
このように、表面膜5を介して、電極部材4とカソード電極層2とが確実に接続されることにより、電子の放出の安定化、および、電子放出特性の均一性の向上を図ることができる。従って、信頼性の高い電子放出素子を提供することができる。
【0067】
ここで、例えば、図1に示す電子放出素子において、真空中でカソード電極層2と対向するように、約1mm離間して配置した図示しないアノード電極との間に1kV程度の電圧を印加する。このとき、平行平板換算で1.0V/μm程度の電界を発生させると、カーボンナノチューブからなる電極部材4の先端から電子放出が開始される。
【0068】
こうして、電極部材4が、1.0V/μm程度の低電界の印加によっても電子を放出することができ、化学的に安定しているカーボンナノチューブからなることにより、電子放出素子は優れた電子放出効率を確保することができる。
【0069】
通常、良質なカーボンナノチューブを生成する場合、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition) 装置を用いるとすると、支持基板1上の温度は600℃、黒鉛化処理は2800℃程度の高温を必要とするが、このカーボンナノチューブを生成する工程は、後述する電子放出素子の製造工程とは別工程で行うことができる。従って、例えば、電子放出素子を構成する基板(支持基板1)などを耐熱性の低い安価な材料で構成することができる。また、カーボンナノチューブはその材料により、安価に大量生産することができる。
【0070】
このように、カーボンナノチューブは、別途、安価に大量生産することができる。これにより、良好な電子放出特性を有し、均一性が高く、生産性に優れた電子放出素子を提供することができる。
【0071】
なお、電極部材4はカーボンナノチューブに限定されるものではなく、エミッタ電極として使用可能なものであればよい。例えば、金属材料や半導体材料からなる針状物質、あるいは、一方向に伸長した電極部材(電子放出部材)などでもかまわない。
【0072】
また、電極部材4の先端形状やその寸法なども特に限定されるものではなく、エミッタ電極として最適な特性を有していればよい。
【0073】
さらに、絶縁保持部3は、絶縁性材料からなるものであれば特に限定されるものではないが、金属膜を陽極酸化してなる陽極酸化膜であることが好ましい。また、特に、アルミニウムを陽極酸化してなるアルミナ膜であることがさらに好ましい。
【0074】
絶縁保持部3が陽極酸化膜からなる場合、細孔3aの直径、深さ、ピッチなどの形状制御は、電圧値、時間などの陽極酸化条件の設定を変更することにより簡単に制御できる。従って、細孔3a…の均一性・再現性が高くなる。これにより、電極部材4が、均一性・再現性の高い細孔3aに挿入され配列されることとなり、良好な電子放出特性を有し、均一性の高い電子放出素子を提供することができる。また、陽極酸化条件を変更することにより細孔3aの密度(絶縁保持部3における細孔3aの割合)を変更することができ、容易に電子放出素子の電子放出密度を調整することができる。
【0075】
また、絶縁保持部3がアルミナ膜からなる場合、上記と同様、伸長方向が揃った複数の細孔3a…を容易に形成することができ、また、細孔3aの径や密度などの均一性・再現性が非常に高い。また、アルミニウムは安価である。従って、絶縁保持部3をアルミナ膜とすることにより、低コストで容易かつ均一に細孔3a…を形成することができる。
【0076】
なお、陽極酸化され、陽極酸化膜となる金属膜には、半導体材料であるシリコンを用いてもかまわない。
【0077】
また、支持基板1の材料としては、ガラスが好ましいが、特に限定されるものではなく、画像表示装置を構成する場合の真空封止方法やその他製造工程上の耐熱条件などを考慮して選定すればよい。
【0078】
以下、電子放出素子の製造工程の一例について、図2・図3に基づいて説明する。
【0079】
まず、支持基板1上に、カソード電極層2および絶縁保持部3を形成するまでの工程について、図2に基づいて説明する。なお、図2(a)(b)は、絶縁保持部3の製造工程の概要を示すものであり、実際に製造する際には、生産性などを考慮して、適切な構造の装置を構築すればよい。
【0080】
支持基板1上に、例えば金属材料をスパッタリング法を用いて均一な厚さに成膜し、所望の形状にパターニングすることにより、カソード電極層2を形成する。
【0081】
そして、カソード電極層2上に、スパッタリング法などの一般的な成膜方法を用いて、例えばアルミニウムを成膜し、所望の形状にパターニングすることにより金属膜10(図2(a)参照)を形成する。
【0082】
その後、陽極酸化用容器8内の化成液6中に、金属膜10およびカソード電極層2が形成された支持基板1と対向電極9とを、ある一定の間隔を保持するように対向配置する。続いて、カソード電極層2が陽極に、対向電極9が陰極になるように、電源7を接続して電圧を印加する(図2(a))。このとき、カソード電極層2上には、図2(b)に示すような細孔11aを有する陽極酸化膜11が形成される。
【0083】
そして、陽極酸化膜11を所望の形状にパターニングして、絶縁保持部3を形成する(導電電極部上に、伸長方向が揃った複数の細孔を有する保持部材を形成する工程)。
【0084】
ここで、形成される陽極酸化膜11の厚さは、電極部材4(後述するカーボンナノチューブ20)の大きさによって(電極部材4の先端が細孔3aから出るように)決定すればよく、例えば、長さが数〜10μmのカーボンナノチューブを用いる場合、陽極酸化膜11の厚さは約2〜5μm程度に設定することが好ましい。これにより、細孔11a(細孔3a)に挿入されたカーボンナノチューブ(電極部材4)の先端を確実に陽極酸化膜11(絶縁保持部3)から突出させることができる。従って、カーボンナノチューブは、エミッタ電極としての機能を十分に発揮することができる。
【0085】
また、化成液6の種類は、陽極酸化される金属膜10の組成や形成する陽極酸化膜11の仕様などに応じて適宜選択すればよい。例えば、金属膜10がアルミニウムからなる場合、化成液6には、一般に10〜20重量%の硫酸を用い、浴温を0〜10℃程度、印加電圧を10〜20V程度として陽極酸化を行う(陽極酸化処理する)。また、その他には、化成液6にしゅう酸、クロム酸などを用いてもよい。
【0086】
上記のように、カソード電極層2と金属膜10とは、各種リソグラフィー法を用いて所望の形状にパターニングすることができる。従って、例えば、電子放出素子を画像表示装置に備える場合、マトリクス状の電極を形成するために、支持基板1上のカソード電極層2や金属膜10を複数のライン状にパターニングするなど、その目的に合わせて電極形状を決定すればよい。これにより、目的に合わせた所望のパターンを有するカソード電極層2や絶縁保持部3を形成することができる。
【0087】
また、カソード電極層2を所望の形状にパターニングしてから、金属膜10を成膜および陽極酸化して、陽極酸化膜11を所望の形状(カソード電極層2と同じ形状にしなくてもよい)にパターニングしてもかまわない。即ち、電子放出素子の構成や目的に応じてプロセスを組めばよい。
【0088】
なお、カソード電極層2を成膜する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、電極材料として適当な材料を、スパッタリング法などの一般的な成膜方法で成膜すればよい。
【0089】
このように、金属膜10を陽極酸化することにより、規則正しい(通常は、6角形で蜂の巣構造となる)陽極酸化膜11(金属膜10がアルミニウムからなる場合は、アルミナのセル)ができ、その中央部には、細孔11a…が形成される。
【0090】
また、カソード電極層2と金属膜10とは、異なる金属材料により形成することができる。そこで、例えば、カソード電極層2に銅などの比較的電気抵抗が低い金属材料を用いても、あるいは、カソード電極層2を複数種の金属材料が積層した構造としてもかまわない。
【0091】
一方、別途生成されるカーボンナノチューブ20(図3参照)の製造工程の一例について説明する。
【0092】
プラズマCVD装置の反応容器内にメタンを20sccm(3.3775×10−3Pa・m・s−1)、水素を80sccm(1.351×10−1Pa・m・s−1)導入し、圧力を2.0Torr(約266Pa)とし、電圧を160V、処理時間30minの条件下で、触媒基板(触媒作用を有する基板)としてニッケルと鉄との合金であるインバーを使用して、触媒基板上に直線性の高いカーボンナノチューブ20を生成する(カーボンナノチューブ生成工程)。
【0093】
なお、カーボンナノチューブ20の製造工程は、上述したものに限定されるものではなく、例えば、アーク放電法や、反応容器内にメタン、アセチレンなどの炭化水素ガスを、水素、アルゴン、窒素などの不活性ガスとともに導入し、ニッケル、コバルト、鉄、またはそれらの合金、あるいは例えばインバーやステンレスのような触媒基板を使用して、熱CVDなどによりカーボンナノチューブ20を生成してもかまわない。
【0094】
また、エミッタ電極として機能する電極部材4の製造方法としては特に限定されるものではなく、従来から用いられているエミッタ電極の製造方法に伴い、例えば、金属材料、半導体材料、炭素材料などを一方向に伸長した針状の電極部材4の形状に形成すればよい。
【0095】
次に、絶縁保持部3の細孔3aにカーボンナノチューブ20を挿入し(針状の電極部材を細孔に挿入する工程)、表面膜5を形成する工程までを、図3を用いて説明する。なお、図3は、電極部材4(図1参照)としてのカーボンナノチューブ20を挿入する工程の概要を示すものであり、実際に製造する際には、生産性などを考慮して、適切な構造の装置を構築すればよい。
【0096】
上記触媒基板上に生成したカーボンナノチューブ20を回収し、そのカーボンナノチューブ20を、電気泳動用容器18内の、IPA(Isopropyl alcohol) やアセトンなどの溶媒中に入れる。
【0097】
そして、超音波などにより溶媒中のカーボンナノチューブ20を分散させ、分散液16を調製する。ここで、カーボンナノチューブ20の分散密度(溶媒に対するカーボンナノチューブ20の割合)は、0.5mg/mlとする。これにより、嵩密度が大きい、即ち、重さが非常に軽く、嵩張りやすいカーボンナノチューブ20の、分散後の凝集を防止することができる。
【0098】
続いて、図3に示すように、分散液16中に、カソード電極層2および絶縁保持部3が形成された支持基板1と対向電極19とを所定の間隔をあけて浸せきさせる。そして、カソード電極層2を陰極とし、対向電極19を陽極として、電源17により電圧を印加する。
【0099】
電圧印加後、分散液16中に分散しているカーボンナノチューブ20は、カーボンナノチューブ20の軸(カーボンナノチューブ20の長手方向)がカソード電極層2に対して垂直な向きになるように配向する(図3)。即ち、電界が印加されることによって、カーボンナノチューブ20は電気泳動をし、電界方向に対してカーボンナノチューブ20の軸が平行になるように配向する。
【0100】
そして、配向したカーボンナノチューブ20は陰極であるカソード電極層2に向かって移動し、絶縁保持部3における図示しない細孔3aに挿入される。
【0101】
その後、スパッタリング法や蒸着法により、錫を絶縁保持部3からカソード電極層2にわたって薄く成膜する(導電電極部の表面から保持部材の表面にわたって導電性材料からなる膜を成膜する工程)。成膜された錫を加熱して一旦融解させ、続いて硬化させることにより表面膜5(図1参照)を形成する(導電性材料を融解後、硬化することにより電極部材を細孔内に固定する工程)。
【0102】
なお、上記のようなカーボンナノチューブ20などの微小物質を分散させる際の超音波の発振周波数は特に限定されるものではなく、微小物質の形状により適宜選択すればよいが、約100kHzの高周波よりも低い周波数、例えば、25〜38kHzであることが好ましい。また、分散の際の発振周波数としては、単一の周波数のみを用いるより、定常波のムラをなくすように数種類の周波数を交互に発振させる方がより好ましい。
【0103】
なお、表面膜5は導電性材料を一旦融解後、硬化することによって形成されることにより、表面膜5となる導電性材料は、少なくとも、導電性材料を融解させる際にすでに形成されている部材(例えば、支持基板1、カソード電極層2、絶縁保持部3、電極部材4など)を構成する材料、即ち、電子放出素子を構成する他の材料よりも融点の低い金属材料を含んでいることが好ましい。
【0104】
これにより、導電性材料からなる膜(表面膜5となる膜)を一旦融解後、硬化する工程の際に、他の材料まで融解させたりすることがなく、電子放出素子を構成する他の部材にダメージを与えることがない。従って、電子放出素子の信頼性の向上を図ることができる。
【0105】
また、カーボンナノチューブ20を細孔3aに挿入する方法(針状の電極部材を細孔に挿入する工程)としては、図4に示すように磁界印加手段であるマグネット(磁石)30を用いてもかまわない。以下、マグネット30を用いてカーボンナノチューブ20を細孔3aに挿入する方法について説明する。
【0106】
図4に示すように、カーボンナノチューブ20を分散させた分散液16中に、カソード電極層2および絶縁保持部3が形成された支持基板1を浸せきさせる。そして、支持基板1において、カソード電極層2が形成された面と対向する面側にマグネット30を配置し、磁界を印加する。
【0107】
磁界印加後、分散液16中に分散しているカーボンナノチューブ20は、カーボンナノチューブ20の軸(カーボンナノチューブ20の長手方向)が磁力線に平行に(カソード電極層2に対して略垂直な向きになるように)配向する(図4)。即ち、磁界が印加されることによって、カーボンナノチューブ20における軸に対する垂直方向と平行方向との磁化率の異方性から、カーボンナノチューブ20の軸が磁力線に沿うように配向する(カーボンナノチューブ20の長手方向が磁力線と平行になる)。
【0108】
そして、カーボンナノチューブ20は、先端に残存している触媒を先頭にカソード電極層2に向かって移動し、図示しない絶縁保持部3の細孔3aに挿入される。即ち、ニッケル、鉄、コバルトまたはそれらの合金、例えば、インバーやステンレスのような触媒を用いて生成されたカーボンナノチューブ20は、その先端に触媒が残存するため、磁界によってマグネット30にカーボンナノチューブ20の先端の触媒が引きつけられる。
【0109】
なお、磁界の印加方法は特に限定されるものではなく、また、カーボンナノチューブ20を細孔3aに挿入するために、電界と磁界とを同時に印加してもかまわない。例えば、図3に示すような構成とし、さらに、支持基板1において、カソード電極層2が形成された面と対向する面側にマグネットを配置することにより、電界と磁界とを同時に印加することができる。即ち、エミッタ電極となる電極部材4の材料などにより、細孔3aへの挿入方法を適宜選択すればよい。
【0110】
ここで、電界または磁界によってカーボンナノチューブ20を細孔3aに挿入した後、表面膜5を形成しない場合を検討する。
【0111】
このような場合、細孔3a内のカーボンナノチューブ20の先端が、絶縁保持部3下のカソード電極層2まで到達していなければ、カソード電極層2とカーボンナノチューブ20との導通が図れない。
【0112】
しかしながら、電界または磁界によってカーボンナノチューブ20を細孔3aに挿入する際、電界または磁界のばらつきにより、カーボンナノチューブ20が細孔3a内に完全に挿入されるとは限らない。即ち、カーボンナノチューブ20の挿入が浅い場合、カーボンナノチューブ20の先端はカソード電極層2まで到達せず、カーボンナノチューブ20とカソード電極層2とを電気的に接続することができない。
【0113】
このように、細孔3aへの挿入が不完全なカーボンナノチューブ20は、電子放出源として機能しない。従って、電界または磁界によってカーボンナノチューブ20を細孔3aに挿入した後表面膜5を形成しない場合、電界または磁界のばらつきによって細孔3aへの挿入が不完全なカーボンナノチューブ20が生じ、これにより、電子放出素子における電子放出特性にばらつきが生じる虞れがある。
【0114】
一方、上述したように、電子放出素子の製造工程において、カソード電極層2の表面から絶縁保持部3の表面にわたって導電性材料からなる膜(表面膜5)を成膜し、一旦融解後、硬化することによって、カーボンナノチューブ20などの電極部材4を細孔3a内に固定することにより、導電性材料からなる膜を介して、カソード電極層2と電極部材4とが電気的に確実に接続される。
【0115】
従って、細孔3aに電極部材4を挿入する工程において、例えば、電界または磁界のばらつき、あるいは、電界または磁界の印加を中止することにより細孔3aへの挿入が不完全な、即ち、細孔3aへの挿入状態が浅い電極部材4があったとしても、電極部材4は表面膜5を介して導電電極部と電気的に接続される。また、電極部材4の配列(配向)が乱れることもない。これにより、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができる。
【0116】
また、絶縁保持部3に電界または磁界を印加して、細孔3a内に電極部材4を挿入することにより、電極部材4を安定して細孔3aに挿入することができる。これにより、例えば、大型の画像表示装置に用いるための大面積の電子放出素子を形成する場合でも、電極部材4が電子放出方向に配列されており、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができる。従って、生産性に優れた電子放出素子を提供することができることとなる。
【0117】
さらに、電界または磁界を印加して細孔3a内に電極部材4を挿入することにより、電子放出素子の製造工程において真空プロセスを用いる必要がなく、生産性に優れている。また、電極部材4としてカーボンナノチューブ20を用いても、電界または磁界を印加して細孔3a内に電極部材4を挿入することにより、カーボンナノチューブ20の製造工程において高温を必要とする工程(例えば、2800℃程度必要とする黒鉛化処理)を別工程で行うことができる。これにより、電子放出素子の製造工程における温度を低温化することができる。従って、電子放出素子を構成する支持基板1などを耐熱性の低い安価な材料で構成することができる。この結果、電子放出素子の製造時に電極部材4の特性を改善する工程をさらに追加する必要がなくなる。
【0118】
また、表面膜5は、例えば、電極部材4としてのカーボンナノチューブ20を細孔3aに挿入する前に、錫などの導電性材料からなる膜を化学メッキ法や蒸着法などの一般的な成膜方法により成膜し、カーボンナノチューブ20を細孔3aに挿入した後にその膜を融解・硬化することにより形成してもかまわない。
【0119】
このようにカーボンナノチューブ20を細孔3aに挿入する前に表面膜5となる膜(導電性材料からなる膜)を成膜することにより製造された電子放出素子の構成を図5に示す。
【0120】
以下、図5に示す電子放出素子の製造工程の一例を説明する。
【0121】
具体的には、まず、上述したように、支持基板1上にカソード電極層2および絶縁保持部3を形成する。
【0122】
そして、例えば化学メッキ法により、錫を絶縁保持部3の表面からカソード電極層2の表面にわたって薄く成膜する。
【0123】
その後、上記図3、あるいは図4に示したように電界または磁界を用いてカーボンナノチューブ20を細孔3aに挿入する。
【0124】
最後に、成膜された錫を加熱して一旦融解させ、続いて硬化させることにより表面膜5を形成する(図5参照)。
【0125】
このように、カーボンナノチューブ20を細孔3aに挿入した後、カーボンナノチューブ20下に形成されている膜(後に表面膜5となる膜)を一旦融解させ、続いて硬化させることにより、その膜、即ち表面膜5によってカーボンナノチューブ20を固定することができる。従って、カーボンナノチューブ20を、配向を保持した状態で固定することができる。
【0126】
なお、電子放出素子の用途は特に限定されるものではなく、FED(Field Emission Display)などの表示用デバイス、光源、各種陰極線管、電子銃などの電界放出型エミッタ素子として使用することができる。
【0127】
〔実施の形態2〕
本発明の第2の実施の形態について図6および図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記してその説明を省略する。
【0128】
図6は、本発明の実施の他の一形態である電子放出素子の要部の構成を示す断面図である。本実施の形態に係る電子放出素子は、図6に示すように、実施の形態1と同様、支持基板1上に、カソード電極層2、細孔3aを有する絶縁保持部3、電極部材4および表面膜5を備えている。また他には、抵抗層60を備えている。
【0129】
抵抗層60は、カソード電極層2と絶縁保持部3との間に配されている。また、抵抗層60は、カソード電極層2より電気抵抗率が高い。
【0130】
また、電極部材4を固定するための表面膜5は、抵抗層60および絶縁保持部3上に略全面に(絶縁保持部3の表面から抵抗層60の表面までわたって)形成されている。即ち、表面膜5は、絶縁保持部3の表面から抵抗層60の表面までのびている。
【0131】
即ち、電極部材4は、支持基板1、カソード電極層2、絶縁保持部3、電極部材4、および、抵抗層60を構成する材料(電子放出素子を構成する材料)よりも少なくとも融点の低い金属材料を含んでいる表面膜5(低融点金属材料)により固定される。また、抵抗層60を介して表面膜5とカソード電極層2とが電気的に接続されている。即ち、表面膜5および抵抗層60を介して電極部材4とカソード電極層2とが電気的に接続されている。
【0132】
なお、抵抗層60は、電子放出素子の使用上必要な所定の導電性を有する限りにおいては、できるだけ電気抵抗率の高い材料からなることが好ましい。例えば、カソード電極層2が良導体の金属材料からなる電極層である場合には、抵抗層60を、各種半導体材料や金属酸化物により抵抗層60を形成すればよい。
【0133】
以上のように、表面膜5が、少なくとも絶縁保持部3の表面から抵抗層60の表面にわたるように配されていることにより、電極部材4を細孔3a内に強固に固定することができる。
【0134】
また、表面膜5が、少なくとも絶縁保持部3の表面から抵抗層60の表面にわたるように配されていることにより、例えば電極部材4における細孔3a内への挿入状態にかかわらず、即ち、挿入状態が浅くても、表面膜5および抵抗層60を介して電極部材4とカソード電極層2とを電気的に接続する(電極部材4はカソード電極層2と確実に導通をとる)ことができる。これにより、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができる。
【0135】
さらに、カソード電極層2上に、カソード電極層2より電気抵抗率が高い抵抗層60が配されており、抵抗層60を介して表面膜5とカソード電極層2とが電気的に接続されていることにより、電極部材4からの電子放出時において、抵抗層60における電圧降下によって放出電流が緩和され、電子放出特性がより穏やかなものとなる。従って、例えば、大面積の電子放出素子を形成した場合にも電子放出の均一化・安定化を図ることができる。
【0136】
なお、例えば、シリコンをスパッタリング法により成膜して抵抗層60を形成する場合、抵抗層60は、電極部材4とカソード電極層2との電気的な抵抗層としての他に、陽極酸化処理時の酸化を止めるストップ層としての機能も兼ねることができる。このような機能を有するには、抵抗層60の材料は、シリコン炭化物、シリコン窒化物、シリコン酸化物やこれらの化合物、あるいは、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムと錫との酸化物)やSnO(酸化錫)などの金属酸化物でもかまわない。
【0137】
ここで、図6に示すような構成の電子放出素子における電子放出の開始条件としては、図1に示す構成の電子放出素子と同様となっている。
【0138】
なお、上記抵抗層60は、金属酸化物の微粒子を用いて形成してもかまわない。以下、金属酸化物の微粒子を用いて形成する抵抗層70の製造方法および構成について説明する。
【0139】
例えば、カソード電極層2上に細孔3a…を有する絶縁保持部3を形成した後、まず、Al(酸化アルミニウム)、ITO、SnOなどの金属酸化物の微粒子を、添加剤を混入した水中、または、アルコールやメタノールなどの溶媒中に分散させる。そして、電着法などの電界析出技術を用いて、金属酸化物をカソード電極層2上に堆積して抵抗層70(図7参照)を形成する。
【0140】
そして、細孔3a内に電極部材4を挿入し、表面膜5を形成(導電性材料からなる膜を融解後、硬化)することによって電極部材4を固定する。
【0141】
上記のようにして抵抗層70を形成したときの電子放出素子の構成を図7に示す。同図に示すように、このような場合、カソード電極層2上において、絶縁保持部3が形成されていない領域、即ち、細孔3a内およびカソード電極層2上面端部に抵抗層70が配されることとなる。
【0142】
〔実施の形態3〕
本発明の第3の実施の形態について図6、図8および図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態2における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記してその説明を省略する。
【0143】
ここで、図8に示す画像表示装置は、カソード電極層2がライン状に形成されており、かつ、図6に示す電子放出素子と同様の抵抗層60を有する電子放出素子を備えた画像表示装置の構成を示す部分斜視図であり、図9は、図8のA−A′線矢視断面図である。
【0144】
以下、カソード電極層2がライン状となっている電子放出素子を用いた画像表示装置の構成の一例について説明する。
【0145】
図8に示すように、画像表示装置は、電子放出側基板80と発光側基板(画像形成部)83とが、図示しないスペーサを介して対向して配されている。
【0146】
電子放出側基板80は、支持基板1上に、カソード電極層2、抵抗層60、絶縁保持部3、電極部材4、表面膜5、絶縁層81、および、ゲート電極82を備えている。なお、支持基板1、カソード電極層2、抵抗層60、絶縁保持部3、電極部材4、および、表面膜5により電子放出素子を構成する。
【0147】
支持基板1上には、ライン状のカソード電極層2が配されており、そのライン間、および、個々の電子放出素子を区切るようにカソード電極層2上には絶縁層81が配されている。即ち、絶縁層81は開口部81a…を有し、該開口部81a内には、図6に示す電子放出素子が構成されている。
【0148】
ゲート電極82は絶縁層81上にライン状に配されている。ゲート電極82は、開口部81…に対応する開口部82a…を有している。ゲート電極82とカソード電極層2とは直交するように配されており、ライン状電極をもってマトリクスが形成されている。
【0149】
このカソード電極層2とゲート電極82とが形成するマトリクスによって電子放出箇所、即ち発光箇所(発光画素)を選択・非選択するこにより、画像表示を行うことができる。
【0150】
発光側基板83は、透明基板84上に、アノード電極85、蛍光体86、および、ブラックマトリクス87を備えている。
【0151】
透明基板84は、透明であり、ガラスなどからなる。透明基板84上には、略全面にアノード電極85が配されている。
【0152】
アノード電極85は、ITOなどからなる透明電極である。アノード電極85上には、蛍光体86…が開口部81a・82aと対向するように配されている。画像表示装置において、カラー表示を行う場合、蛍光体86はR(レッド)・G(グリーン)・B(ブルー)の3種類で構成される。また、それぞれの蛍光体86の領域を分割するように、蛍光体86・86間にはブラックマトリクス87が配されている。
【0153】
なお、発光側基板83において、アノード電極85および蛍光体86が形成されている側の面上に、アルミニウムなどによりメタルバックを形成してもかまわない。この場合、発光側基板83と電子放出側基板80とを図示しないスペーサを介して対向配置し、スペーサを介して挟まれた空間を真空排気して、真空状態で封止して画像表示装置を製造することにより、蛍光体86からの放出ガスを抑制することができる。
【0154】
また、例えば、エミッタ電極(電極部材4)として、1.0V/μmの低電界で図9中矢印方向に電子放出を開始するカーボンナノチューブを用いる場合、電子放出の際、即ち、電極部材4から電子を引き出すときには、アノード電極85に印加する電圧により電極部材4にかかる電界、あるいは、ゲート電極82に印加する電圧により電極部材4にかかる電界のどちらから電子をひきだしてもかまわない。
【0155】
さらに、図8・9に示す電子放出側基板80においては、1画素(1つの蛍光体86)に対して1つの開口部81a(82a)を有する構成であるが、1画素に対して複数の開口部81a…(82a…)を有する構成であってもかまわない。このとき、絶縁層81が、絶縁保持部3上に形成されることもある。また、このような場合、画像表示装置における電子放出特性のさらなる均一化・安定化を図ることができる。
【0156】
また、開口部81aの形状として、その断面は四角形に限定されるものではなく、丸などの形状であってもかまわない。また、開口部82aの大きさも特に限定されるものではなく、開口部81aより小さくても同等でもかまわない。アノード電極85のパターン形状も特に限定されるものではなく、一体電極(ベタ電極)であってもライン状電極であってもかまわない。
【0157】
画像表示装置に用いられる電子放出素子は、上述した実施の形態1・2に記載の電子放出素子であってもよく、また、カソード電極層2が一体電極であってもかまわない。ただし、カソード電極層2が一体電極である場合、カソード電極層2とゲート電極82とでマトリクスを形成することはできない。しかしながら、ゲート電極82上に、さらに、図示しない絶縁層およびゲート電極を形成すれば、複数のゲート電極でのマトリクスにより、電子放出箇所を選択・非選択することができる。
【0158】
以上のように、電極部材4を図示しない細孔3a内に挿入することができ、かつ、電極部材4と確実に導通をとることができる電子放出素子を画像表示装置に用いることができる。従って、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を用いることとなり、画像表示が良好な画像表示装置を提供することができる。
【0159】
【発明の効果】
以上のように、本発明の電子放出素子は、導電性材料からなり、電極部材を固定するための表面膜が、保持部材の表面に接するように配され、導電電極部と電極部材とが、表面膜を介して電気的に接続されている構成である。
【0160】
これにより、細孔に挿入された電極部材が表面膜によって(機械的に)固定されており、また、該表面膜を介して、導電電極部と電極部材とが電気的に接続されている。従って、細孔への挿入が不完全な、即ち、細孔への挿入状態が浅い電極部材があったとしても、電極部材は表面膜を介して導電電極部と電気的に接続される。この結果、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができるといった効果を奏する。
【0161】
本発明の電子放出素子は、表面膜が、少なくとも導電電極部の表面から保持部材の表面にわたるように配されている構成である。
【0162】
これにより、電極部材を強固に固定することができる。また、電極部材における細孔内への挿入状態にかかわらず、電極部材と導電電極部とを電気的に接続することができる。従って、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができるといった効果を奏する。
【0163】
本発明の電子放出素子は、導電電極部上に、導電電極部より電気抵抗率が高い抵抗層がさらに配されており、抵抗層を介して表面膜と導電電極部とが電気的に接続されている構成である。
【0164】
これにより、電極部材からの電子放出時において、抵抗層における電圧降下によって放出電流が緩和され、電子放出特性がより穏やかなものとなる。従って、例えば、大面積の電子放出素子を形成した場合にも電子放出の均一化・安定化を図ることができるといった効果を奏する。
【0165】
本発明の電子放出素子は、抵抗層が、半導体材料または金属酸化物からなる構成である。
【0166】
これにより、例えば、保持部材を形成する際に陽極酸化処理を施す場合、陽極酸化処理時の酸化を止めるストップ層としての機能を兼ねることができ、信頼性の高い電子放出素子を提供することができるといった効果を奏する。
【0167】
本発明の電子放出素子は、表面膜が、少なくとも保持部材の表面から抵抗層の表面にわたるように配されている構成である。
【0168】
これにより、電極部材を強固に固定することができる。また、電極部材における細孔内への挿入状態にかかわらず、表面膜および抵抗層を介して電極部材と導電電極部とを電気的に接続することができる。従って、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができるといった効果を奏する。
【0169】
本発明の電子放出素子は、保持部材が、金属膜を陽極酸化してなる陽極酸化膜である構成である。
【0170】
これにより、伸長方向が揃った複数の細孔を容易に形成することができる。また、電圧値、時間などの陽極酸化条件の設定を変更することにより、細孔の直径、深さ、ピッチなどの形状制御を簡単に行うことができる。従って、細孔の均一性・再現性の向上を図ることができる。さらに、例えばこのような細孔に電極部材が挿入され、配列されることにより、良好な電子放出特性を有し、均一性の高い電子放出素子を提供することができる。
【0171】
また、細孔の密度を陽極酸化条件の設定の変更により容易に変更することができることにより、電子放出素子の電子放出密度を簡単に調整することができるといった効果を奏する。
【0172】
本発明の電子放出素子は、金属膜がアルミニウムからなる構成である。これにより、電子放出素子の低コスト化を図ることができるといった効果を奏する。
【0173】
本発明の電子放出素子は、導電性材料が、少なくとも、導電電極部、保持部材、および、電極部材を構成する材料よりも融点の低い金属材料を含んでいる構成である。
【0174】
これにより、例えば、導電性材料を融解した後硬化することで、電極部材を表面膜によって固定することができる。従って、電子放出素子の信頼性の向上を図ることができるといった効果を奏する。
【0175】
本発明の電子放出素子は、電極部材が、カーボンナノチューブである構成である。
【0176】
これにより、電極部材が、低電界で電子を放出することができ、化学的に安定しているカーボンナノチューブからなることとなり、優れた電子放出効率を確保することができる。
【0177】
また、カーボンナノチューブを生成する工程を、電子放出素子の製造工程とは別工程で行うことができる。従って、例えば、電子放出素子を構成する基板などを耐熱性の低い安価な材料で構成することができる。また、カーボンナノチューブはその材料により、安価に大量生産することができる。この結果、良好な電子放出特性を有し、均一性が高く、生産性に優れた電子放出素子を提供することができるといった効果を奏する。
【0178】
本発明の電子放出素子の製造方法は、導電電極部上に、伸長方向が揃った複数の細孔を有する保持部材を形成する工程と、針状の電極部材を細孔に挿入する工程と、導電電極部の表面から保持部材の表面にわたって導電性材料からなる膜を成膜する工程と、該導電性材料を融解後、硬化することにより電極部材を細孔内に固定する工程とをこの順に有する構成である。
【0179】
これにより、導電性材料からなる膜を介して、導電電極部と電極部材とが電気的に接続される。従って、細孔に電極部材を挿入する工程において、細孔への挿入が不完全な電極部材があったとしても、電極部材は表面膜を介して導電電極部と電気的に接続される。この結果、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができるといった効果を奏する。
【0180】
本発明の電子放出素子の製造方法は、導電電極部上に、伸長方向が揃った複数の細孔を有する保持部材を形成する工程と、細孔を覆うように導電電極部から保持部材表面にわたって導電性材料を成膜する工程と、針状の電極部材を細孔に挿入する工程と、導電性材料を融解後、硬化することにより電極部材を細孔内に固定する工程とをこの順に有する構成である。
【0181】
これにより、導電性材料からなる膜を介して、導電電極部と電極部材とが電気的に接続される。従って、細孔に電極部材を挿入する工程において、細孔への挿入が不完全な電極部材があったとしても、電極部材は表面膜を介して導電電極部と電気的に接続される。この結果、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を提供することができるといった効果を奏する。
【0182】
本発明の電子放出素子の製造方法は、保持部材を形成する工程が、金属膜を陽極酸化してなる構成である。
【0183】
これにより、金属膜に、伸長方向が揃った複数の細孔を容易に形成することができる。また、電圧値、時間などの陽極酸化条件の設定を変更することにより、細孔の直径、深さ、ピッチなどの形状制御を簡単に行うことができる。従って、細孔の均一性・再現性の向上を図ることができる。さらに、例えばこのような細孔に電極部材が挿入され、配列されることにより、良好な電子放出特性を有し、均一性の高い電子放出素子を提供することができるといった効果を奏する。
【0184】
本発明の電子放出素子の製造方法は、針状の電極部材を細孔に挿入する工程が、針状の電極部材を分散させて分散液を調製する工程と、該分散液中に少なくとも保持部材と導電電極部とを浸せきする工程と、保持部材に電界または磁界を印加して、該針状の電極部材を細孔の伸長方向に沿うように配向させ、該細孔内に針状の電極部材を挿入する工程とをこの順に含む構成である。
【0185】
これにより、保持部材に電界を印加することにより、分散液中に分散している針状の電極部材は電気泳動をし、電界方向に対して電極部材の長軸が平行になるように配向する。そして、配向した電極部材は導電電極部に向かって移動する。こうして、電極部材を細孔に挿入することができる。
【0186】
また、保持部材に磁界を印加することにより、分散液中に分散している針状の電極部材はその長軸が磁力線に平行に配向する。そして、配向した電極部材は導電電極部に向かって移動する。こうして、電極部材を細孔に挿入することができる。
【0187】
従って、針状の電極部材を安定して細孔に挿入することができ、大型の画像表示装置に用いるための大面積の電子放出素子を形成する場合でも、生産性に優れた電子放出素子を提供することができる。また、針状の電極部材を、電子放出素子の製造工程とは別工程で製造することができる。これにより、針状の電極部材として、安価に大量生産することのできる、特性の良好な材料を選択して用いることができる。この結果、低コストで生産性に優れた電子放出素子を提供することができるといった効果を奏する。
【0188】
本発明の画像表示装置は上記記載の電子放出素子と、該電子放出素子から放出された電子により画像を形成する画像形成部とを備えている構成である。
【0189】
これにより、電極部材を確実に細孔内に挿入することができ、かつ、電極部材と確実に導通をとることができる電子放出素子を画像表示装置に用いることができる。従って、信頼性が高く、また、電子放出特性の均一性が高い電子放出素子を用いることとなり、画像表示が良好な画像表示装置を提供することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る電子放出素子の要部の構成を示す部分断面図である。
【図2】(a)は、陽極酸化膜の製造工程の一例を示す説明図であり、(b)は、支持基板上の陽極酸化膜の構成を示す詳細図である。
【図3】電界を印加して電極部材を細孔に挿入する工程を示す説明図である。
【図4】磁界を印加して電極部材を細孔に挿入する工程を示す説明図である。
【図5】図1に示す電子放出素子において、導電性材料からなる膜を成膜してからカーボンナノチューブを挿入するようにして製造された場合の要部の構成を示す部分断面図である。
【図6】本発明の他の実施の一形態に係る電子放出素子の要部の構成を示す部分断面図である。
【図7】図6に示す電子放出素子の抵抗層が金属酸化物の微粒子を用いて形成された場合の要部の構成を示す部分断面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施の一形態に係る画像表示装置の要部の構成を示す部分斜視図である。
【図9】図8のA−A′線矢視断面図である。
【符号の説明】
1 支持基板
2 カソード電極層(導電電極部)
3 絶縁保持部(保持部材)
3a 細孔
4 電極部材
5 表面膜
6 化成液
7 電源
9 対向電極
10 金属膜
11 陽極酸化膜
16 分散液
17 電源
19 対向電極
20 カーボンナノチューブ
30 マグネット
60 抵抗層
70 抵抗層
83 発光側基板(画像形成部)

Claims (13)

  1. 伸長方向が揃った複数の細孔を有する保持部材と、該保持部材における細孔の底部側に配された導電電極部と、一部が細孔から突出するように該細孔に挿入されている電極部材とを有する電子放出素子において、
    導電性材料からなり、上記電極部材を固定するための表面膜が、上記保持部材の表面に接するように配され、
    上記導電電極部と電極部材とが、上記表面膜を介して電気的に接続されており、
    上記導電性材料は、少なくとも、上記導電電極部、保持部材、および、電極部材を構成する材料よりも融点の低い金属材料を含んでいることを特徴とする電子放出素子。
  2. 上記表面膜は、少なくとも上記導電電極部の表面から保持部材の表面にわたるように配されていることを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
  3. 上記導電電極部上には、該導電電極部より電気抵抗率が高い抵抗層がさらに配されており、該抵抗層を介して上記表面膜と導電電極部とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
  4. 上記抵抗層は、半導体材料または金属酸化物からなることを特徴とする請求項3に記載の電子放出素子。
  5. 上記表面膜は、少なくとも上記保持部材の表面から抵抗層の表面にわたるように配されていることを特徴とする請求項3または4に記載の電子放出素子。
  6. 上記保持部材は、金属膜を陽極酸化してなる陽極酸化膜であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電子放出素子。
  7. 上記金属膜は、アルミニウムからなることを特徴とする請求項6に記載の電子放出素子。
  8. 上記電極部材は、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電子放出素子。
  9. 導電電極部上に、伸長方向が揃った複数の細孔を有する保持部材を形成する工程と、
    針状の電極部材を上記細孔に挿入する工程と、
    上記導電電極部の表面から保持部材の表面にわたって導電性材料からなる膜を成膜する工程と、
    該導電性材料を融解後、硬化することにより上記電極部材を細孔内に固定する工程とをこの順に有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  10. 導電電極部上に、伸長方向が揃った複数の細孔を有する保持部材を形成する工程と、
    上記細孔を覆うように上記導電電極部の表面から保持部材の表面にわたって導電性材料を成膜する工程と、
    針状の電極部材を上記細孔に挿入する工程と、
    上記導電性材料を融解後、硬化することにより上記電極部材を細孔内に固定する工程とをこの順に有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  11. 上記保持部材を形成する工程は、金属膜を陽極酸化してなることを特徴とする請求項9または10に記載の電子放出素子の製造方法。
  12. 上記針状の電極部材を上記細孔に挿入する工程は、針状の電極部材を分散させて分散液を調製する工程と、
    該分散液中に少なくとも上記保持部材と上記導電電極部とを浸せきする工程と、
    上記保持部材に電界または磁界を印加して、上記針状の電極部材を細孔の伸長方向に沿うように配向させ、該細孔内に上記針状の電極部材を挿入する工程とをこの順に含むことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1項に記載の電子放出素子。
  13. 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電子放出素子と、
    該電子放出素子から放出された電子により画像を形成する画像形成部とを備えていることを特徴とする画像表示装置。
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