JP3589414B2 - 防汚壁構造およびその防汚壁の構築方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、防汚壁構造およびその防汚壁の構築方法に関し、さらに詳しくは、鋼、コンクリート、プラスチックス、合成ゴム等の基材表面に無公害型シリコーン系防汚塗料を積層塗布してなる海中あるいは淡水中の生物付着防止用の防汚パネルが、防汚塗料層が接水面となるように被防汚構造物表面に着脱自在に固定されている防汚壁構造およびその防汚壁の構築方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
海中には、たとえばフジツボ、セルプラ、ムラサキイガイ、カキ、フサコケムシ、ホヤ、アオノリ、アオサ等の動植物性付着生物が多数生息している。このような海中に設置される、たとえば火力・原子力発電所その他の臨海プラントの冷却水取水路、港湾施設、海底パイプライン、海底油田掘削リグ、航路浮標、船舶係留用ブイ等の接水部表面に海中生物が付着し生長すると種々の被害を生ずる。その例としては、発電所の冷却取水路においては、上記のような海中生物の付着、生長により冷却用海水の流水抵抗が増加する結果、熱交換器の機能が低下し発電効率に悪影響を及ぼす。また、浮標やブイ等においては、上記のような海中生物の付着、生長は、倒壊または沈没の危険をもたらす。さらに、港湾施設、海底パイプライン、油田掘削リグ等においては、上記のような海中生物の付着、生長により、構造基材の腐食が促進され構造基材の耐久寿命が短くなる。
【0003】
これらの被害を防止または抑制するために、各種の防汚塗料を海中構造物の接水面に塗装しておき、塗膜から海中に防汚剤が徐々に溶出することにより生物の付着生長を防止する方法が古くから行なわれている。
【0004】
しかしながら、防汚塗料は、下塗り、中塗り、上塗りなどの合計数回の塗り重ねを行なうため数日間以上の塗装期間が必要であり、工程が切迫しているときには充分な塗装ができないことがある。また、潮汐干満の合間の短時間内に、あるいは構造物が海中に浸水したままの状態にて塗装を必要とする場合もある。
【0005】
防汚壁構築方法としては、特公表昭55−500623号公報(「海洋構造物の汚損防止」)に記載されている方法が既に公知であるが、この方法を冷却水取水路または排水路に適用することは困難である。また、接着剤によるパネル固着方法も考えられるが、この方法では、パネルの着脱化に難点があり、工期の短縮とはなり得ない等の短所がある。
【0006】
したがって、構造物の接水表面に防汚塗装する工期を短縮できるような防汚壁構造およびその防汚壁の構築方法の出現が望まれている。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、構造物の接水表面を防汚塗装するための工期を短縮できるような防汚壁構造およびその防汚壁の構築方法を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明に係る防汚壁構造は、接水表面を有し、該表面の所定位置に複数のボルトが埋設された被防汚構造物に、基材層と基材層表面に形成された防汚塗料層とからなり、かつ、該ボルトに対応する位置に係合用穴が形成されている防汚パネルが、防汚塗料層が接水面となるように着脱自在に固定された防汚壁構造であって、
被防汚構造物が、臨海プラントの冷却水取水路または排水路であり、
上記防汚パネルの係合用穴を通してボルトが防汚パネル表面に突出するようにセットされ、ナットを用いて防汚パネルが着脱自在に固定されるとともに、この防汚パネルの端部から所定の間隔をおいて同様に他の防汚パネルが着脱自在に固定され、かつ、
固定された両防汚パネル間の被防汚構造物の接水表面に予め突出するように埋設されている複数のボルトと、これらのボルトに対応する位置に係合用穴が形成されている目地部用当て板とが、両防汚パネルの端部表面に接触して、ナットを用いて着脱自在に固定されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る防汚壁の構築方法は、
接水表面を有し、該表面の所定位置に複数のボルトが埋設された被防汚構造物に、基材層と基材層表面に形成された防汚塗料層とからなり、かつ、該ボルトに対応する位置に係合用穴が形成されている防汚パネルを、防汚塗料層が接水面となるように着脱自在に固定する防汚壁の構築方法であって、
被防汚構造物が、臨海プラントの冷却水取水路または排水路であり、
上記防汚パネルの係合用穴を通してボルトが防汚パネル表面に突出するようにセットし、ナットを用いて防汚パネルを着脱自在に固定するとともに、この防汚パネルの端部から所定の間隔をおいて同様に他の防汚パネルを着脱自在に固定し、
次いで、固定された両防汚パネル間の被防汚構造物の接水表面に予め突出するように埋
設されている複数のボルトと、これらのボルトに対応する位置に係合用穴が形成されている目地部用当て板とを、両防汚パネルの端部表面に接触して、ナットを用いて着脱自在に固定することを特徴としている。
【0010】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る防汚壁構造およびその防汚壁の構築方法を図面に基づいて具体的に説明する。
【0011】
図1は、火力・原子力発電所の冷却水取水路または排水路の被防汚壁構造物の縦断面図であり、図2は、本発明で用いられる防汚パネルの構成を説明するための断面図であり、図3は、防汚パネルを被防汚壁の接水表面に着脱自在に固定する方法の一例を説明するための図面である。
【0012】
本発明に係る防汚壁構造では、接水表面2を有し、該表面2の所定位置に複数の鋼製ボルト等の被締結具3が埋設された被防汚構造物1に、基材層5と基材層5表面に形成された防汚塗料層6とからなり、かつ、該被締結具3に対応する位置に係合用穴7が形成されている防汚パネル4が、防汚塗料層6が接水面となるように、鋼製ナット等の締結具8を用いて着脱自在に固定されている。
【0013】
また、本発明に係る防汚壁の構築方法では、
接水表面2を有し、該表面2の所定位置に複数の鋼製ボルト等の被締結具3が埋設された被防汚構造物1に、基材層5と基材層5表面に形成された防汚塗料層6とからなり、かつ、該被締結具3に対応する位置に係合用穴7が形成されている防汚パネル4を、防汚塗料層6が接水面となるように取り付け、
次いで、鋼製ナット等の締結具3を用いて該防汚パネル4を該被防汚構造物表面2に着脱自在に固定する。
【0014】
複数の防汚パネル4を被防汚構造物1の接水表面2に着脱自在に固定するには、たとえば図3に示すように、被防汚構造物1の接水表面2の所定の位置に突出するように埋設された鋼製ボルト3が、上記防汚パネル4の係合用穴7を通して防汚パネル4表面に突出するようにセットして鋼製ナット8を用いて防汚パネル4を着脱自在に固定するとともに、この防汚パネル4の端部から所定の間隔をおいてこの防汚パネルと突き合わせるように他の防汚パネル4を先の防汚パネル4の場合と同様にして、他の防汚パネル4を被防汚構造物1の接水表面2に着脱自在に固定し、
次いで、上記のようにして固定された両防汚パネル4間の被防汚構造物の接水表面2に予め突出するように埋設されている複数の鋼製ボルト3と、これらのボルト3に対応する位置に係合用穴(図示せず)が形成されている目地部用当て板9を両防汚パネル4の端部表面に接触させて鋼製ナット8を用いて着脱自在に固定する。目地部用当て板9の表面は、防汚パネル4の場合と同様に防汚塗料層で被覆されていることが望ましい。また、鋼製ボルト等の被締結具3と鋼製ナット等の締結具8の表面も予め防汚塗料で処理しておくことが望ましい。
【0015】
このような作業を繰り返して被防汚構造物1の接水表面2全体を、防汚パネル4と目地部用当て板9とで被覆する。
本発明で対象となる被防汚構造物1としては、火力・原子力発電所その他臨海プラントの冷却水取水路・排水路、港湾施設、海底パイプライン、海底油田掘削リグ、航路浮標、船舶係留用ブイなどのように海中に設置される構造物、さらには淡水中に設置される構造物が挙げられる。
【0016】
本発明で用いられる防汚パネル4は、図2に示すように、基材層5と、この基材層5表面に形成された防汚塗料層6とからなり、所定の位置に係合用穴7が形成されている。
【0017】
上記防汚パネル4を形成する基材層5は、金属、コンクリート、硬質または軟質プラスチックス、硬質または軟質ゴムなどから形成されている。
(a) 上記金属としては、具体的には、炭素鋼、アルミニウム、ステンレス鋼、銅合金などがあるが、コスト的に安価な炭素鋼が最も好ましい。形状については、板・管・半割管などの状態にて使用することができる。板状の金属は構造物の平坦部に適用し、管状または半割管状の金属は円柱または円筒状の構造物に適用する。また、二次元もしくは三次元に湾曲した構造物に対しては、予めその湾曲部分の形状に成形加工した金属板を使用することができる。
(b) 上記コンクリートとしては、たとえばポルトランドセメントと砂・砂利等の細骨材、粗骨材と水とを混練し、必要に応じて補強用鉄筋を装入し、一般の土木建設用に使用されるコンクリートの成形方法と同様の方法で成形されるコンクリート板を使用することができる。セメントは、ポルトランドセメントに替えて高炉セメント、白色セメント、速硬セメント等を使用してもよい。また、骨材として軽量骨材、たとえば軽石、蛭石、真珠岩焼成品等を混合した軽量コンクリートも有用である。形状については、上記の金属の場合と同様に、管状、半管状または構造物の形状に合わせて予め加工した成形物とすることもできる。
(c) 上記プラスチックスとしては、具体的には、塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)、メチルメタクリレート、ポリカーボネート、FRP(ガラス繊維強化プラスチックス)、CRP(炭素繊維強化プラスチックス)等の硬質板、または塩化ビニル、ポリオレフィン、塩化ビニリデン等のフィルムを使用することができる。硬質板については、上記の(a) および(b) の場合と同様に、管状、半管状または予め構造物の形状に相似した形状に加工した成形物とすることもできる。
(d) 上記ゴムとしては、加硫処理により製造された板状あるいはフィルム状の硬質または軟質の天然ゴム、加硫処理により製造された板状あるいはフィルム状の硬質または軟質の合成ゴムを使用することができる。さらには金属の基材表面に未加硫ゴム液を塗布した後、加熱または化学薬品による常温加硫法によって得られた硬質または軟質のゴムライニング施工材もこの範疇に含まれる。
【0018】
上記防汚塗料層6は、通常下塗り塗料組成物、中塗り塗料組成物および上塗り防汚塗料組成物を、上記基材層5表面に積層塗布して形成される。
上記下塗り塗料組成物としては、具体的には、
PEプライマー[商品名、中国塗料(株)製]等のポリオレフィン樹脂系プライマー;
FRPプライマー[商品名、中国塗料(株)製]等のビニル樹脂系プライマー;
ビニルAC−HB[商品名、中国塗料(株)製]等のビニル樹脂系下塗り塗料;
エピコンHB−AL[商品名、中国塗料(株)製]、エピコンC−100[商品名、中国塗料(株)製]、エピコンA−100[商品名、中国塗料(株)製]、エピコンS−100[商品名、中国塗料(株)製]等のエポキシ樹脂系下塗り塗料;
ビスコンAC−HB[商品名、中国塗料(株)製]等のタールエポキシ樹脂系下塗り塗料;
シルバックスSQ−BC[商品名、中国塗料(株)製]等のタールビニル樹脂系下塗り塗料
などが好ましく用いられる。
【0019】
上記のような下塗り塗料組成物を基材層5表面に塗布して塗膜6aを形成することにより、下塗り塗料組成物の塗膜6a表面に形成される中塗り塗料組成物の塗膜6bと基材層5との付着性を保持するとともに、鋼基材においては防食性を、コンクリート基材においてはアルカリ分による塗膜劣化防止性を付与することができる。
【0020】
上記中塗り塗料組成物としては、具体的には、
ビニルAC−HBバインダー[商品名、中国塗料(株)製]等のビニル樹脂系中塗り塗料;
エピコンHB−ALバインダー[商品名、中国塗料(株)製]等のエポキシ樹脂系中塗り塗料
などが好ましく用いられる。
【0021】
上記のような中塗り塗料組成物を、下塗り塗料組成物の塗膜6a表面に塗布して塗膜6bを形成することにより、下塗り塗料組成物の塗膜aと上塗り防汚塗料組成物の塗膜6cとの付着性を付与することができる。
【0022】
上記上塗り防汚塗料組成物としては、具体的には、(a)反応硬化型シリコーンゴム、特にビヒクルとしての室温硬化型(RTV)シリコーンゴムと、(b)この反応硬化型シリコーンゴムと反応せず、かつ、良好な相溶分散性を有する撥水性有機化合物と、必要に応じて(c)加水分解性シリル基含有アクリル共重合体樹脂とからなる無毒性防汚塗料組成物が挙げられる。
【0023】
上記反応硬化型シリコーンゴム(a)は、化学反応によって硬化するシロキサン結合を有するオルガノポリシロキサンを主成分とするものであり、該オルガノポリシロキサンは硬化反応性官能基として水酸基,アルコキシル基など、有機基としてメチル基,フェニル基,ビニル基などがSiに直接結合したものである。またオルガノポリシロキサンに加水分解可能な基(例えばアセトキシ基,メトキシ基,ケトキシム基,エノキシ基,アミド基など)を結合させた多官能性シラン化合物を架橋剤とし、必要に応じて金属有機酸塩(例えば鉛,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛などのナフテン酸塩,オクチル酸塩,過酸化物,有機アミンなど)を硬化触媒とし、これらの中から少なくとも1種を配合することによって、1液型または2液型とすることもできる。これらは室温もしくは加熱することにより加水分解、脱アルコール、脱酢酸、脱オキシム、脱ヒドロキシルアミン反応などによって硬化するが、塗布作業性の容易さから1液型でかつ常温で硬化する形態のシリコーンゴムが好ましく、さらには硬化時に発生する副生物の刺激性の少ないものが最も好ましい。
【0024】
さらに具体的には、該当する商品として、KE40RTV,KE48,KE42S,KE45,KE45TS,KE445,KE348(いずれも信越化学工業株式会社製、商品名)などが利用できる。
【0025】
上記撥水性有機化合物(b)は、シリコーンオイル,鉱物油,石油ワックス,可塑剤,脂肪油,フッ素油などのうち、常温において液状またはグリース状であればいずれでもよいが、とくにシリコーンオイルが最も好ましい。シリコーンオイルは、メチルシリコーンオイル,メチルフェニルシリコーンオイル,ポリエーテル変性シリコーンオイルいずれか単独または両者の混合物でもよい。
【0026】
これらのシリコーンオイル相当品としては、KF−96,KF−92,KF−69(以上メチルシリコーンオイル),KF−50,KF−53,KF−54,KF−56(以上メチルフェニルシリコーンオイル),KF−351,KF−353(ポリエーテル変性シリコーンオイル)(いずれも信越化学工業株式会社製、商品名)などを用いることができる。
【0027】
これらの撥水性有機化合物の反応硬化型シリコーンゴムに対する混合割合は、反応硬化型シリコーンゴム固形分に対し、1〜50重量%、好ましくは5〜35重量%である。混合割合が1重量%未満になると防汚性能が低下し、50重量%を超えると塗膜の硬化性が劣り耐久性のある塗膜が得られない。
【0028】
必要に応じて配合される上記加水分解性シリル基含有アクリル共重合体樹脂(c)としては、従来公知のものが広く用いられるが、特に、
(i)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、
(ii)(メタ)アクリル酸およびヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の単量体との共重合体[I]に、
加水分解性基としてアセトキシ基、ケトオキシム基またはアルコキシ基などを含有するシラン化合物を反応させて得られる加水分解性シリル基含有共重合体が好ましい。
【0029】
前記共重合体[I]は、
(i)−(1)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、
(i)−(2)酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルピロリドンから選ばれるビニル系化合物と、
(ii)(メタ)アクリル酸およびヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の単量体との共重合体であってもよい。
【0030】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート(以上のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい)およびこれらに対応するメタアクリル化合物たとえばメチルメタアクリレートなどが例示される。
【0031】
またビニル系化合物としては、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルピロリドンなどが例示される。
ヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0032】
加水分解性基としてアセトキシ基、ケトオキシム基、またはアルコキシ基を含有するシラン化合物としては、
メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、トリス(エチルメチルケトキシム)メチルシラン、トリス(エチルメチルケトキシム)ビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシランなどが例示される。
【0033】
加水分解性シリル基含有アクリル共重合体樹脂(c)は、(i)(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびビニル系化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体と、(ii)(メタ)アクリル酸およびヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の単量体とを有機溶剤の存在下にラジカル重合して得られる共重合体[I]に、
加水分解性基としてアセトキシ基、ケトオキシム基またはアルコキシ基を含有するシラン化合物を反応させることにより得ることができる。
【0034】
この反応では、共重合体[I]が有する活性基((ii)として(メタ)アクリル酸を用いた場合にはカルボキシル基であり、ヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合には水酸基)に、
加水分解性基を有するシラン化合物が反応するのであろうと考えられる。
【0035】
共重合体[I]を製造するに際して用いられる(i)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体の量および、(ii)(メタ)アクリル酸およびヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の単量体の量、さらには加水分解性基を有するシラン化合物の量は、得られる加水分解性シリル基含有アクリル共重合体の加水分解後の水酸基と、混合される反応硬化型シリコーンゴムの疎水性メチル基の表面配向バランスとを考慮し決定されることが好ましい。
【0036】
一般には、(ii)(メタ)アクリル酸またはヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリル酸エステルは、共重合体[I]において1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%の量で共重合されていることが好ましい。
【0037】
また加水分解性基を有するシラン化合物は、共重合体[I]における(ii)(メタ)アクリル酸またはヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリル酸エステルの量と等モル比以上の量で用いられることが好ましい。
【0038】
(ii)(メタ)アクリル酸またはヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリル酸エステルが1〜30重量%でない場合には、得られる加水分解性シリル基含有アクリル共重合体の加水分解後の水酸基と、シリコーンゴムの疎水性メチル基の表面配向バランスが適当でなく、該シリコーンゴムに対し加水分解性シリル基含有アクリル共重合体を過剰に混合しなければならないので、表面の撥水性が劣り防汚性も低下することがある。
【0039】
また、上記加水分解性シリル基含有アクリル共重合体樹脂(c)は、数平均分子量が3000〜30000の範囲であることが好ましい。数平均分子量が3000未満の場合、十分な塗膜強度が得られない。また30000を超える場合はシリコーンゴムとの相溶性が劣る。
【0040】
加水分解性シリル基含有アクリル共重合体樹脂のシリコーンゴムに対する混合割合は、シリコーンゴム固形分に対し、0.1〜35重量%、一般には1〜20重量%が好ましい。0.1重量%未満の場合および35重量%を超えると、いずれも防汚性が劣る。
【0041】
この無毒性防汚塗料組成物においては、必要に応じて、一般の防汚塗料製造技術において使用される体質顔料,着色顔料,タレ止め剤,防汚剤,有機溶剤等を混合することができる。
【0042】
そのほかの上塗り防汚塗料組成物としては、防汚剤として亜酸化銅を含有する防汚塗料組成物、その他従来公知の錫を含まない防汚剤を含有する防汚塗料組成物、錫を含む防汚剤を含有する防汚塗料組成物が挙げられる。本発明では、上記のような無毒性防汚塗料組成物が特に好ましく用いられる。
【0043】
なお、下塗り塗料、中塗り塗料および上塗り防汚塗料の各組成物は、上記の品種に限定されるものではなく、同等の性能を有する塗料であれば一般の市販品を利用することができる。
【0044】
下塗り塗料組成物、中塗り塗料組成物および上塗り防汚塗料組成物は、下地前処理を行なった基材層表面に刷毛またはスプレーなどの方法で下塗り、中塗り、上塗りの工程をもって順次塗り重ねられる。各塗装工程ごとに常温乾燥により塗膜の乾燥が行なわれる。工程を急ぐ場合においては、下塗り、中塗りに対してはそれぞれの塗膜に適した温度にて一定時間加熱し強制乾燥を行なってもよい。
【0045】
上記基材層表面の下地前処理は、プラスチックス、ゴム類に対してはサンドペーパーなどの研磨材により面荒らしを行なって基材層表面を粗面とした後、ラッカーシンナーなどの有機溶剤を滲み込ませた布で汚れを拭き取って基材層表面を清浄にする。またコンクリート材に対しては、ディスクサンダー、パワーブラシなどにより、基材層表面に付着しているエフロレセンス、レイタンスなどを入念に除去した後、清水洗いを行なって基材層表面を清浄にし、さらに表面水分が10重量%以下となるように自然乾燥または熱風乾燥により吸着水分を除去する。炭素鋼材に対しては、ミルスケール、さびなどをディスクサンダー、パワーブラシなどにより除去した後、有機溶剤を滲み込ませた布で基材層表面に付着している汚染物を除去する。また、アルミニウム、ステンレス鋼、銅合金などの材料に対しては、パワーブラシ、サンドペーパーなどにより基材層表面に軽度の面荒らしを行なった後、有機溶剤を滲み込ませた布で汚れを拭き取って基材層表面を清浄にする。
【0046】
上記の各塗料組成物の乾燥膜厚は、非防汚構造物において期待される防汚・防食寿命、コスト等を勘案して決定されるが、通常は、次のとおりである。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、被防汚構造物の接水表面に防汚パネルを着脱自在に容易に固定できるので、短期間の工期で、しかも、低コストで防汚壁を構築することができる。したがって、たとえば火力発電所の冷却水取水路の接水表面に防汚処理するためには、発電を停止する必要があるが、本発明によれば、防汚効果のなくなった防汚パネルを新しい防汚パネルと取り替える作業が容易で工期が短縮でき、防汚処理の工期を大幅に短縮することができ、発電停止期間を従来の防汚処理工事と比べ大幅に短縮することができる。
【0048】
さらに、本発明によれば、防汚塗料の塗装がしにくい場所でも、容易に防汚パネルを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、火力・原子力発電所の冷却水取水路または排水路の被防汚壁構造物の縦断面図である。
【図2】図2は、本発明で用いられる防汚パネルの構成を説明するための断面図である。
【図3】図3は、防汚パネルを被防汚壁の接水表面に着脱自在に固定する方法の一例を説明するための図面である。
【符号の説明】
1 ・・・・・・ 被防汚構造物
2 ・・・・・・ 被防汚構造物の接水表面
3 ・・・・・・ 鋼製ボルトなどの被締結具
4 ・・・・・・ 防汚パネル
5 ・・・・・・ 基材層
6 ・・・・・・ 防汚塗料層
6a ・・・・ 下塗り塗料組成物の塗膜
6b ・・・・ 中塗り塗料組成物の塗膜
6c ・・・・ 上塗り防汚塗料組成物の塗膜
7 ・・・・・・ 係合用穴
8 ・・・・・・ 鋼製ナットなどの締結具
9 ・・・・・・ 目地部用当て板
Claims (8)
- 接水表面を有し、該表面の所定位置に複数のボルトが埋設された被防汚構造物に、基材層と基材層表面に形成された防汚塗料層とからなり、かつ、該ボルトに対応する位置に係合用穴が形成されている防汚パネルが、防汚塗料層が接水面となるように着脱自在に固定された防汚壁構造であって、
被防汚構造物が、臨海プラントの冷却水取水路または排水路であり、
上記防汚パネルの係合用穴を通してボルトが防汚パネル表面に突出するようにセットされ、ナットを用いて防汚パネルが着脱自在に固定されるとともに、この防汚パネルの端部から所定の間隔をおいて同様に他の防汚パネルが着脱自在に固定され、かつ、
固定された両防汚パネル間の被防汚構造物の接水表面に予め突出するように埋設されている複数のボルトと、これらのボルトに対応する位置に係合用穴が形成されている目地部用当て板とが、両防汚パネルの端部表面に接触して、ナットを用いて着脱自在に固定されていることを特徴とする防汚壁構造。 - 前記被防汚構造物が、発電所の冷却水取水路または排水路である請求項1に記載の防汚壁構造。
- 前記複合パネルの防汚性塗料塗膜層が、シリコーン系防汚塗料で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の防汚壁構造。
- 前記目地部用当て板の表面が、防汚塗料層で被覆されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防汚壁構造。
- 接水表面を有し、該表面の所定位置に複数のボルトが埋設された被防汚構造物に、基材層と基材層表面に形成された防汚塗料層とからなり、かつ、該ボルトに対応する位置に係合用穴が形成されている防汚パネルを、防汚塗料層が接水面となるように着脱自在に固定する防汚壁の構築方法であって、
被防汚構造物が、臨海プラントの冷却水取水路または排水路であり、
上記防汚パネルの係合用穴を通してボルトが防汚パネル表面に突出するようにセットし、ナットを用いて防汚パネルを着脱自在に固定するとともに、この防汚パネルの端部から所定の間隔をおいて同様に他の防汚パネルを着脱自在に固定し、
次いで、固定された両防汚パネル間の被防汚構造物の接水表面に予め突出するように埋設されている複数のボルトと、これらのボルトに対応する位置に係合用穴が形成されている目地部用当て板とを、両防汚パネルの端部表面に接触して、ナットを用いて着脱自在に固定することを特徴とする防汚壁の構築方法。 - 前記被防汚構造物が、発電所の冷却水取水路または排水路である請求項5に記載の防汚壁の構築方法。
- 前記複合パネルの防汚性塗料塗膜層が、シリコーン系防汚塗料で形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の防汚壁の構築方法。
- 前記目地部用当て板の表面が、防汚塗料層で被覆されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の防汚壁の構築方法。
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