JP3587902B2 - 重合体エマルション組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、感圧接着剤、コンタクト接着剤、ラミネート接着剤等の接着剤、また、繊維、不織布などに対する含浸用接着剤、サイジング剤、コーティング剤等に使用される重合体エマルション組成物に関する。特にポリ塩化ビニル等の樹脂に対し良好な接着性を有する重合体エマルション組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ塩化ビニル樹脂はその優れた性能から多方面の分野で使用されている。例えば、シート状や発泡体として各種成形体の保護材として広く使用されている。また、補強のための支持体(基材)としても利用されている。かかる場合に用いられる接着剤としては、被着体に応じてニトリルゴム系の接着剤やクロロプレン系の接着剤が多い。比較的、塩ビに対する密着性が良好なことと、溶剤型が多いため、成膜性も良く、接着面積も確保しやすいこと、凝集力を期待できること、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、脱塩酸防止剤などの添加剤や、成形時の離型剤が付いたままで接着する油面接着に効果があることが理由として上げられる.
しかるに、その要求性能はますます厳しくなってきており、以下に挙げるような、更なる高性能化が期待されている。その性能は、耐老化性(耐熱接着性等)向上や軽量高強度化、また、作業性の改善として、初期接着力の向上、油面や汚染面での高い接着力の発現、湿潤面での高い接着力の発現、塩ビゾルなどとの高い密着性が要求される場合もある。環境面から、世の中の動きは、徐々に脱溶剤系の方向に進んでおり、溶剤型から水系への移行も検討されている。更に低コストの要求がある。
【0003】
かかる目的のために、耐熱接着性等の改良として、クロロプレンと塩素化ポリプロピレンによる一液自己架橋型接着剤が、特開平6−306341号公報に紹介されている。
水系接着剤の検討としては、アクリル系エマルションを含む、室温で接着可能な二液水系接着剤として、特開昭55−164244号公報、特開昭62−175577号公報、特開昭64−26689号公報、特開平3−111417号公報、特開平3−172379号公報、特に塩ビ用接着剤として特開昭63−297481号公報、特開平3−541419号公報が開示されている。また、従来より使用されている反応性の良い架橋剤としてアジリジン架橋やヒドラジン架橋が特開昭63−288490号公報や特開平3−13783号公報に開示されている。更に、金属イオン架橋とタッキファイアー併用の技術が、特開昭61−268778号公報に開示されている。イソシアネートによる架橋も従来から紹介されているが、最近では、特開平6−330017号公報に変性アミノ樹脂の併用による一液化、イソシアネート架橋の安定剤としてアセチルアセトンアルミニウムの技術が特公平6−104815号公報に開示されている。
【0004】
しかしながら、水系接着剤では、溶剤系接着剤に比べ、被着体への濡れ性、被着体の表面を粗すことによるアンカー効果及び短時間での媒体の飛散が期待できないため、初期接着力及び耐老化性の飛躍的な改良は困難であった。
水系アクリル接着剤の性能を補うため、特開平6−65552号公報には無溶剤型ウレタンのハネムーン接着剤として、技術的に満足の行く水系ウレタンが開示されている。
【0005】
また、ホットメルト型接着剤として、特開平6−13685号公報ではエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の金属イオン架橋によるアイオノマー接着剤が開示されている。更に、特公平6−62827号公報に塩化ビニリデンによる水性ラテツクス組成物が開示されている。しかし、接着システムを含めたコストは決して安価とは言い難く、使用される用途は、高級品などに限定される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、樹脂、特にポリ塩化ビニル樹脂の接着性に優れ、初期接着力、耐熱、耐水、耐老化性を有する安価な一液型水系で、油面、湿面、汚染面でも密着性が損なわれない接着剤を提供するものである。
しかも、一液タイプとして、接着システム、生産システムも複雑な装置を必須としない、低コストの重合体エマルション組成物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、(A)(a)カルボキシル基を有するラジカル重合性単量体1〜10重量%、(b)ニトリル基を有するラジカル重合性単量体5〜20重量%、(c)その他のラジカル重合性単量体70〜93重量%を、乳化重合して得られるエマルションの固型分100gに対し,(B)Zn、Fe、Ni、Cu、Cr、Pd、Ti、Si、Al、Ga、Ge、Sn、Pb、Se、Te、Co、Mn、Ag、Au、Cd、Hgの金属から選ばれる2〜5価の金属イオン0.05〜175ミリモルが含まれてなる樹脂に対する接着用重合体エマルション組成物に関する。
【0008】
本発明におけるカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体とは、その分子内にカルボキシル基を少なくとも1つ有し、且つ、ラジカル重合可能なビニル基を少なくとも1つ有する化合物を言い、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル安息香酸等を例示することが出来る。これらのカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体は1〜10重量%使用されるが、好ましくは2〜6さらに好ましくは2.5〜4重量%である。
【0009】
本発明における、ニトリル基を有するラジカル重合性単量体とは、その分子中にニトリル基を少なくとも1つ有し、且つ、ラジカル重合可能なビニル基を少なくとも1つ有する化合物を言い、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スクシノニトリルの他、プロペノニトリル或いはプロペノジニトリルの誘導体として、エチル−、プロピル−、n−ブチル−、イソブチル−、第三ブチル−、n−アミル−、イソアミルヘキシル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ドデシル−、オクタデシル−、シクロヘキシル−、フェニル−、ベンジル−などによる1及び2置換体を言う。中でも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。ニトリル基を有するラジカル重合性単量体は5〜20重量%が使用されるが、好ましくは5〜15重量%、さらに好ましくは5〜10重量%である。この範囲を逸脱した場合、本発明の高い塩ビ接着性の効果は得られない。
【0010】
その他のラジカル重合性単量体に特に制限はないが、好ましいものを例示すれば、メチル−、エチル−、プロピル−、n−ブチル−、イソブチル−、第三ブチル−、n−アミル−、イソアミルヘキシル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ドデシル−、オクタデシル−、シクロヘキシル−、フエニル−、ベンジル−の各アクリレート又はメタクリレート類、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルステアレート、ビニルラウレート、ビニルミリステート、ビニルプロピオネート、バーサティック酸ビニルなどのビニルエステル類、さらに、ビニルエーテル類として、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシルなどのアルキル基を有するビニルエーテル類、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノ又はジアルキルエステルのような不飽和二塩基酸アルキルエステル、エチレンのようなオレフィン類、グリシジル(メタ)アクリレートやメチルグリシジル(メタ)アクリレートのようなグリシジル化合物、アクリルアミド、メタクリルアミドのようなアミド類及びそれらのN−メチロール化合物やアルコキシ化合物、ビニルトリクロロシランやビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有α,β−エチレン性不飽和単量体、β−ヒドロキシアクリレートやβ−ヒドロキシメタクリレートなどの水酸基含有α,β−不飽和単量体、ケイ皮酸ビニルスルホン酸やスチレンスルホン酸などの不飽和酸類、ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどの塩基性単量体を挙げることができる。
【0011】
その他に単量体としては、分子中に重合性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物が重合した形のものもあげることができる。このような例としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレートその他ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、アリルメタクリレートなどがある。 この他、ジエン系単量体として例えばブタジエン、クロロプレン、イソプレンや、トリビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等の3個以上の二重結合を有するポリエン系単量体もあげられる。
【0012】
更に、この他の単量体としては、芳香族ビニル単量体を上げることができる。芳香族ビニル単量体とは、その分子内に、芳香族性基を少なくとも1つ有し、且つ、ラジカル重合可能なビニル基を少なくとも1つ有する化合物を言い、好ましい例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、フェニレンジビニルアセテートなどが上げられる。かかる芳香族ビニル単量体は0.1〜50重量%の範囲で使用することが好ましいが、なお好ましくは0.2〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。
【0013】
これらの単量体は、1種のみを使用してもよいし、また2種以上であってもよい。これらの単量単位の組成は、重合体のガラス転移温度、および最低成膜温度に大きく影響するので、この点を加味して設計する必要がある。
本発明の接着剤用エマルションは、従来公知の乳化重合で製造することが出来る。即ち、水、乳化剤の存在下、必要により、連鎖移動剤やシード粒子の存在下に重合開始剤を用いて単量体を重合させる方法が挙げられる。
【0014】
乳化剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤を使用することができる。アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩、アルキルサルフェートアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールサルフェートアルカリ金属塩、アルキルジフエニルエーテルジスルホン酸アルカリ金属塩、ジアルキルスルホコハク酸アルカリ金属塩、アンモニウム塩などを用いることができる。ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、エチレンオキシドープロピレンオキシドブロック共重合体などを用いることができる。また、アクリル系水溶性オリゴマーを前記アニオン性界面活性剤と併用してもよい。さらに、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのコロイド保護剤としての作用を有する水溶性高分子化合物も必要に応じて用いることができる。これらの界面活性剤や水溶性高分子化合物は、不飽和結合を一箇所以上含むものが好ましい。これらの界面活性剤や水溶性高分子化合物は使用量が増加するに伴い、得られる重合体の耐水性が低下する場合があるので、その使用量は少ない方が好ましいが、少なくとも重合安定性や生成物の機械的安定性、化学的安定性を保持するための必要最低限度の量を用いることが好ましい。この使用量は通常単量体100gに対して、0.1〜7重量%の範囲で選ばれる。
【0015】
連鎖移動剤としては、通常の重合反応の分子量調節に慣用されているものの中から適宜選択して用いることができる。このような連鎖移動剤には、例えばプロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンのような炭素数1〜30のアルキル基をもつメルカプタンや、オクチルチオグリコレート、チオグリコール酸、ジフエニルスルフイドのような炭素数1〜30の有機硫黄化合物や、四塩化炭素、四臭化炭素、ブロムトリクロルメタンのような炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素や、トリフェニルフォスフィン、ジシクロヘキシルフォスフェート、シクロペンタジエニルフォスフェート、フォスフォサルフェートなどの有機リン或いは有機リン・硫黄化合物が含まれる。これらの連鎖移動剤は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
重合開始剤としては、0〜150℃の温度において、ラジカルを発生する化合物が使用される。この重合開始剤としては、主として水溶性のものが用いられるが、油溶性のものであってもよい。代表的な重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの水溶性過硫酸塩類、過酸化水素などの無機過酸化物、ベンゾイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、第三ブチルパーオキシド、第三ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどのジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステルの様な有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。また、上記過酸化物と還元剤とを組み合わせ、微量の金属イオンの存在下ラジカルを発生させる、いわゆるレドックス系の開始剤も用いられる。このレドックス系の例としては、過酸化水素−塩化第一鉄系、クメンヒドロパーオキシド−アスコルビン酸ナトリウム系などが挙げられる。さらに、アゾビスイソブチルアミンのごときアミノ基を有する開始剤も使用することができる。これらの重合開始剤の使用量は、通常、単量体の合計量100gに対して、0.1〜2.5重量%の範囲で選ばれる。また、前記過酸化物は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
重合反応は、通常0〜130℃、好ましくは30〜100℃の範囲の温度で行われる。その場合均一温度でも、そうでなくても良い。重合時間に特に制限はなく、通常、1ないし24時間、好ましくは1ないし、6時間である。
本発明は、上記のように乳化重合して得られるエマルションの固型分100gに対し、多価金属イオン0.05〜175ミリモルが含まれてなる重合体エマルション組成物に関している。
【0018】
多価金属イオンは、Zn、Fe、Ni、Cu、Cr、Pd、Ti、Si、Mg、Ca、Ba、Sr、Al、Ga、Ge、Sn、Pb、Se、Te、Co、Mn、Ag、Au、Cd、Hgの金属から選ばれる2〜5価のイオンを言う。
これらは、使用に特に制限はなく、一種で用いても、複数を組み合わせて用いても良いが、目的の用途に応じて適宜決められる。中でも、Zn、Fe、Cu、Ti、Siのイオンが好ましい。更に、一価のイオン、例えば、Na、K、Li、NH4 やP、Sなどと併用しても良い。
【0019】
多価金属イオンについて、例えば、添加時、その前後、或いは反応時において、添加するもの、或いは中間体が、イオン、単塩、酸性水素含塩、複塩、三重塩、酸化物或いは水酸化物の単塩もしくは複塩、錯体、多核錯体、付加化合物、不定組成結晶相などであってもよい。その場合、多価金属イオンの対イオンは、有機系でも無機系でも、両者を含んでもかまわないが、好ましくは、無機系を含むことである。更に好ましくは、対イオンが、アクア、アンミン、スルホキシド、チオ酸化物、硫化物、ハロゲン化物、水酸化物、炭化物、炭酸化物、リン化物、珪化物、酸化物を含むことなどが挙げられる。混合時の状態については、水溶液でも、溶剤、或いはそれらの混合液、乳化液、ペースト、スラリーでも良い。
【0020】
混合量としては、エマルションの固型分100gに対し、多価金属イオン量が0.05〜175ミリモルであるが、好ましくは、0.18〜65ミリモル、更に好ましくは1.8〜24ミリモルである。
この範囲を逸脱した場合、目的の効果は得られない。
更に詳しくは、多価金属イオンが、エマルションに含まれるカルボキシル基或いはヒドロキシル基に対して0.01〜3当量、好ましくは0.1〜2当量であり、更に好ましくは、カルボキシル基、特に、粒子表層と水相中のカルボキシル基に対し、0.1〜2当量である。
【0021】
多価金属イオンを混合する方法は、重合中あるいは、重合後に加えてもよい。例えば、重合上がりに添加する方法が好ましい。添加の方法は、例えば、乳化重合と同様でもよい。
好ましくは、ノニオン、アニオンの併用が望ましい。更に好ましくは、HLB12以上の鎖状、櫛状、梯子状のノニオン、金属変性ノニオンが好ましい。この混合方法については、重合中に添加しても重合後に添加しても良い。多価金属イオンを与える物質を添加する前後でも、同時、混合或いは別々でも良い。
【0022】
本発明の組成物は、上記共重合体分散剤中に、多価金属イオンが溶解、ないしは分散媒中、媒質中に分散したものである。分散媒としては水が好ましいが、これと相溶する有機化合物及び無機化合物が、安定性を阻害しない程度に含まれることは何等差し支えない。エマルション中の不揮発分(固型分)は、通常10〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは45〜63重量%である。重合体粒子の粒子径は、通常長径0.01〜10μm、短径0.01〜10μm、の棒状、球状、星形、複芯状、鱗片状、覆微子状などで、0.05〜1μm程度が好ましく、さらに好ましくは0,1〜0.5μmである。
【0023】
更に、組成物のトルエン不溶分が96重量%以下、好ましくは、60重量%以下である。特に、重合に、連鎖移動剤を用いた場合は、30重量%以下、連鎖移動剤を用いない場合は、20〜60重量%が好ましい。
また、組成物のジオクチルフタレート或いはジブチルフタレートに対する不溶分が20〜100重量%、更には、70〜100重量%が好ましい。
【0024】
組成物のガラス転移温度としては、−50℃〜130℃が好ましく、より好ましくは−40℃〜40℃であり、、更に接着剤として好ましくは、−30℃〜15℃である。
組成物の溶融粘度は、好ましくは100℃に於いて2万ポイズ以上、更に好ましくは、80℃に於いて1万ポイズ以上である。
【0025】
組成物のSP値は、作用させる組成物のSP値に近いことが好ましく、一般には、8.0〜12.0が好ましい。特に、塩ビに対する場合は、8.3〜9.9が望ましい。
組成物のpHは、好ましくは、3〜10、特に好ましくは、6〜9である.
本発明の組成物は、上述したような通常の乳化重合に使用されるものの他に、各種添加剤を含んでもよい。添加剤としては防腐剤、殺菌剤、老化防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、可塑剤、調香剤、感熱剤、感温剤、調色剤、光反射剤、紫外線吸収剤、光吸収剤、などが挙げられる。
【0026】
本発明の組成物は、エマルション状態にある場合は、安定であり、且つ、各種用途に用いた場合の経時安定性にも優れている。
本発明の組成物は、感圧接着剤、コンタクト接着剤、ラミネート接着剤および水性ビニルウレタン接着剤、特殊接着剤、また、繊維、不織布の含浸接着剤、サイジング剤、コーティング剤等に使用する事ができ、常温でも加熱下でも成膜、接着、注型、など目的の用途に利用できる。特に、コンタクト性を生かして、曲面の加工や、再はく離などにその効果を発揮する。
【0027】
これらの用途に使用する本組成物のガラス転移温度は、接着剤の場合、−50℃〜80℃が好ましく、より好ましくは−30℃〜15℃である。繊維、不織布の含浸接着剤、サイジング剤、コーティング剤等の場合、本組成物のガラス転移温度は、−40℃〜100℃が好ましく、より好ましくは−20℃〜40℃である。更に、上記用途に本組成物を用いる場合、上記ガラス転移温度外の部分が60重量%を越えない範囲で本組成物中に含まれても良い。
【0028】
本組成物を、上記用途に用いるに当たり、従来公知の方法によって製造することができる。即ち、本組成物に必要により、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、チタン、セメント、珪砂、アスファルト、ガラスビーズ、樹脂ビーズなどの無機、有機フィラー、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸類などの水溶性ポリマー、エポキシ樹脂、アジリジン、ピペラジン、モルホリン、ピラン類、オキサゾール類、チアゾール類、イミダゾール類、トリアゾール類、インドール類、ベンゾチアゾール類、イソシアネート類、カルボジイミド類、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の架橋剤、増粘剤、耐水化剤、成膜助剤などを適宜配合することによって得ることができる。本組成物の他にその他のポリマー、オリゴマー単体或いはエマルションを混合、共重合して使用することも可能である。これらの例としては、例えば特定のカルボニル骨格を持つウレタンポリマー、ポリ酢酸ビニル、EVA、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエン、ポリリン酸、ヌクレオチド、カゼイン、スターチ、カルシウム(骨)、甲殻、木材、アルカロイド、フィトンチッド、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、カシミロンなどがあげられる。粘着付与樹脂単体、エマルションを配合するなども可能であり、樹脂の例としては、スラック、テルペンフェノール、不均一化ロジン、酸化ロジン、ピネン系樹脂などである。 これらは、単独でも組み合わせて使用しても良く、使用方法も特に制限はないが、特に、特定のカルボニル骨格を持つウレタンポリマー、ポリ酢酸ビニル、EVA、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエン、ポリリン酸、スラック、テルペンフェノール、不均一化ロジン、酸化ロジン、ピネン系樹脂などは、それが変質しない重合条件のもとで、目的の性能を引き出しやすい。
【0029】
本発明における組成物を使用することにより、樹脂、ことにポリ塩化ビニルに対し、良好な接着性を有する接着剤を調製することが可能である。ことに可塑剤を多量に含む軟質のポリ塩化ビニルに対しても高性能を発揮する。
【0030】
【実施例】
実施例において、%および部は、それぞれ重量%、重量部を表す。
【0031】
【実施例1】
接着剤用組成物[A1]による接着評価
メタクリル酸3%、アクリロニトリル12%、フェニレンジビニルアセテート10%、エチルアクリレート75%の混合物100部に、界面活性剤アデカリアソープSE1025N(旭電化(株)製)1部を添加したものを、83℃に保った軟水80部の入った反応容器内に、一括添加する。温度が復帰した後、5%過硫酸カリウムの60℃水溶液5部を2時間掛けて滴下し、エマルション[a1]を得た。エマルションの重合率は、99.7%であった。得られた[a1]固形分100gに対し、ホスホヒドロキシアンモニウムシリケートを、2.6ミリモル、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpHを8に調整して、接着剤用組成物[A1]を得た。粘度は、BL型粘度計で、3500cpsであった。
【0032】
【実施例2】
接着剤用組成物[A2]による接着評価
メタクリル酸3%、アクリロニトリル12%、フェニレンジビニルアセテート10%、エチルアクリレート75%を実施例1と同様の乳化重合によってエマルション[a2]を得た。エマルションの重合率は、99.8%であった。得られた[a2]固形分100gに対し、次亜リン酸アンモニウム2亜鉛、2.6ミリモル、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpHを8に調整して、接着剤用組成物[A2]を得た。粘度は、BL型粘度計で、4000cpsであった。
【0033】
【実施例3】
接着剤用組成物[A3]による接着評価
メタクリル酸2%、アクリロニトリル8%、フェニレンジビニルアセテート1%、ブチルアクリレート89%を実施例1と同様の乳化重合によってエマルション[a3]を得た。エマルションの重合率は、99.9%であった。得られた[a3]固形分100gに対し、次亜リン酸アンモニウム2亜鉛を、1.8ミリモル、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpHを8に調整して、接着剤用組成物[A3]を得た。粘度は、BL型粘度計で、3800cpsであった。
【0034】
【実施例4】
接着剤用組成物[A4]による接着評価
メタクリル酸2%、アクリロニトリル8%、フェニレンジビニルアセテート1%、スチレン2%、メチルメタクリレート20%、ブチルアクリレート67%を実施例1と同様の乳化重合によってエマルション[a4]を得た。エマルションの重合率は、99.7%であった。得られた[a4]固形分100gに対し、次亜リン酸アンモニウム2亜鉛を1.8ミリモル、炭酸ナトリウムを0.05ミリモル、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpHを8に調整して、接着剤用組成物[A4]を得た。粘度は、BL型粘度計で、3600cpsであった。
【0035】
【実施例5】
接着剤用組成物[A5]による接着評価
メタクリル酸2%、アクリロニトリル8%、フェニレンジビニルアセテート1%、スチレン2%、メチルメタクリレート20%、ブチルアクリレート57重量%、ブチルメタクリレート10重量%を実施例1と同様の乳化重合によってエマルション[a5]を得た。エマルションの重合率は、99.9%であった。得られた[a5]固形分100gに対し、次亜リン酸アンモニウム2亜鉛を1.8ミリモル、炭酸ナトリウムを0.05ミリモル、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpHを8に調整して、接着剤用組成物[A5]を得た。粘度は、BL型粘度計で、3300cpsであった。
【0036】
【実施例6】
接着剤用組成物[A6]による接着評価
メタクリル酸2%、アクリロニトリル8%、スチレン2%、メチルメタクリレート20%、ブチルアクリレート58%、ブチルメタクリレート10%を実施例1と同様の乳化重合によってエマルション[a6]を得た。エマルションの重合率は、99.8%であった。得られた[a6]固形分100gに対し、次亜リン酸アンモニウム2亜鉛を1.8ミリモル、炭酸ナトリウムを0.05ミリモル、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpHを8に調整して、接着剤用組成物[A6]を得た。粘度は、BL型粘度計で、3900cpsであった。
【0037】
【実施例7】
接着剤用組成物[A7]による接着評価
アクリル酸6%、アクリロニトリル16%、スチレン1%、メチルメタクリレート20%、エチルアクリレート57%、を実施例1と同様の乳化重合によってエマルション[a7]を得た。エマルションの重合率は、99.9%であった。得られた[a7]固形分100gに対し、炭酸アンモニウム2亜鉛を1.8ミリモル、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpHを8に調整して、接着剤用組成物[A7]を得た。粘度は、BL型粘度計で、4000cpsであった。
【0038】
[A7]を用い、ポリ塩化ビニルシートをそのまま使用したものa)とアセトンにて脱脂したものb)の2種類を綿帆布と接着し、JISK6854に準拠した試験を行った。それぞれのはく離接着強さは、良好な塩ビ接着性を示した。
【0039】
【比較例1】
比較接着剤用組成物[B1]による接着評価
エチルアクリレート98%、アクリロニトリル2%を実施例1と同様の乳化重合によってエマルション[b1]を得た。エマルションの重合率は、99.7%であった。このエマルションに、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpHを6に調整して、接着剤用組成物[B1]を得た。粘度は、BL型粘度計で、3500cpsであった。
【0040】
【比較例2】
比較接着剤用組成物[B2]による接着評価
エチルアクリレート98%、メタクリル酸2%を実施例1と同様の乳化重合によってエマルション[b2]を得た。エマルションの重合率は、99.7%であった。このエマルションに、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpHを8に調整して、接着剤用組成物[B2]を得た。粘度は、BL型粘度計で、3500cpsであった。
【0041】
【比較例3】
比較接着剤用組成物[B3]による接着評価
エチルアクリレート100%を実施例1と同様の乳化重合によってエマルション[b3]を得た。エマルションの重合率は、99.7%であった。得られた[b3]固形分100gに対し、次亜リン酸アンモニウム2亜鉛を1.8ミリモル、炭酸ナトリウムを0.05ミリモル、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpHを7.8に調整して、接着剤用組成物[B3]を得た。粘度は、BL型粘度計で、4200cpsであった。
【0042】
【比較例4】
比較接着剤用組成物[B4]による接着評価
メタクリル酸2%、アクリロニトリル8%、フェニレンジビニルアセテート1%、スチレン2%、メチルメタクリレート20%、ブチルアクリレート57重量%、ブチルメタクリレート10%を実施例1と同様の乳化重合によってエマルション[b4]を得た。エマルションの重合率は、99.7%であった。得られた[b4]固形分100gに対し、次亜リン酸アンモニウム2亜鉛、0.02ミリモル、炭酸ナトリウムを0.05ミリモル、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30重量%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpH調整して、接着剤用組成物[B4]を得た。[B4]のpHは、7.7、粘度は、BL型粘度計で、4500cpsであった。
【0043】
【比較例5】
比較接着剤用組成物[B5]による接着評価
メタクリル酸2%、アクリロニトリル8%、フェニレンジビニルアセテート1%、スチレン2%、メチルメタクリレート20%、ブチルアクリレート57重量%、ブチルメタクリレート10%を実施例1と同様の乳化重合によってエマルション[b5]を得た。エマルションの重合率は、99.7%であった。得られた[b5]固形分100gに対し、次亜リン酸アンモニウム2亜鉛を200ミリモル、炭酸ナトリウムを0.05ミリモル、コラクラールVL(ポリビニルピロリドン30%;BASF社製)0.3部を攪拌しながら徐々に加えた後、アンモニアでpHを7.6に調整して、接着剤用組成物[B5]を得た。粘度は、BL型粘度計で、3700cpsであった。
【0044】
[B1]〜[B5]を用い、ポリ塩化ビニルシート及びJISL3102に準拠の綿帆布を被着体とし、JISK6854に準拠した。はく離接着強さは、塩ビ界面はく離を生じ、低い接着性であった。
実施例1〜7、及び比較例1〜5での試験結果を表1に示す。
塗布は、75番のワイヤーコーターで被着体双方に一度塗りする。オープンタイムは、20℃65重量%RHにて30分、圧締は、4.5kg/inchローラー1往復、接着強さは、180゜はく離接着強さ、引張試験機(株式会社エーアンドディー社製)、引張速度5mm/min、初期接着力は、圧締後、20℃65%RH1時間養生後の接着力を測定する。
【0045】
耐熱接着力は、初期接着力測定試験片を80℃7日養生し、80℃雰囲気下で接着力を測定する。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
本発明の重合体エマルション組成物を、塩ビ接着剤として用いた場合、塩ビ密着性に優れるため、初期から高い強度を発現し、耐熱性も良好な自動車、建築分野用接着剤などが得られる。
Claims (1)
- (A)(a)カルボキシル基を有するラジカル重合性単量体1〜10重量%、(b)ニトリル基を有するラジカル重合性単量体5〜20重量%、(c)その他のラジカル重合性単量体70〜93重量%を、乳化重合して得られるエマルションの固型分100gに対し、(B)Zn、Fe、Ni、Cu、Cr、Pd、Ti、Si、Al、Ga、Ge、Sn、Pb、Se、Te、Co、Mn、Ag、Au、Cd、Hgの金属から選ばれる2〜5価の金属イオン0.05〜175ミリモルが含まれてなる樹脂に対する接着用重合体エマルション組成物。
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