JP3587744B2 - 排ガスの廃熱回収方法及び廃熱回収装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属の熱処理設備等を有する工場から排出される高温の排ガスに含まれる廃熱を回収する廃熱回収方法及び廃熱回収装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
加熱炉、温風炉、温風器、浸炭炉、焼き鈍し炉や調質炉等の金属を熱処理する熱処理炉を有する工場においては、これらの炉から高温の燃焼ガスが外部に排出されている。従来、これらの排ガスの温度が不安定に変化するため、排ガスが有するエネルギーを回収することが困難であった。しかしながら、世界規模の地球環境保全が叫ばれている中、これらの活用しにくい未利用エネルギーを活用することが望まれている。
【0003】
非量産工場に設けられた熱処理炉からは、例えば100゜Cから800゜Cと、絶えず温度が変化する排ガスが排出されている。そこで、これらの排ガスから熱エネルギーを回収する方法がいくつか提案されている。例えば、廃熱温度が所定温度以下では、排ガスからエネルギーを回収させずにそのまま大気に放出し、廃熱温度が所定温度以上であれば、分岐管路を設けて吸引ファンにより熱交換器に排ガスを導き、熱交換器で熱エネルギーを回収している。そして、廃熱温度が熱交換器の許容温度以上の場合には、外部空気を吸気ダンパー部から導き、排ガスと外部空気を混合して熱交換器の許容温度以下としている。
【0004】
一方、高炉等を備える工場においては、鉱石を焼結温度まで加熱することにより生じた排ガスを回収するために廃熱回収ボイラーが設けられている。この場合、装置の稼働率を向上させるため、廃熱回収ボイラーを複数設け、これらを切換えて使用することにより、熱源設備の稼働率を向上させることが提案されている。この例が、特開平10−332101号公報に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の非量産工場における排熱回収装置においては、ダクトや煙突などの排気流路途中に流路閉止装置であるダンパーを設け、流路切換装置を作動させてバイパス路に排ガスを導いている。そして、、このバイパス路に設けた熱交換器で熱交換することにより、排ガスに含まれる廃熱を回収していた。このように構成すると、ダンパーや流路切換装置には高温耐熱性と耐久信頼性が要求され、価格の増大及び工期の増加という不具合を生じていた。また、ダンパや流路切換え装置が有する弁板が開閉不具合を起こし、排気不良や燃焼不良を発生する恐れもあった。
【0006】
さらに、上記特開平10−332101号公報に記載のものも、非量産工場におけるのと同様に、排ガスを導く流路が分岐するように分岐部が排ガス路に設けられており、この分岐部で流路切換え装置により排ガスの流れ方向を切換えている。この流路切換え装置は弁板のような機械的な切換え部分を有しており、やはり高温耐熱性や耐久性が必要であった。
【0007】
本発明は上記従来技術の有する不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、切換ダンパー等の機械的流路切換装置を不要とした廃熱回収方法及び排熱回収装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の第1の特徴は、廃熱を有する排ガスの少なくとも一部をバイパス流路に導き、このバイパス流路において熱回収する排ガスの廃熱回収方法において、バイパス前の排ガス温度とバイパス後の排ガス温度との温度差を求め、この温度差が所定の温度範囲内になるようにバイパス流路に導く排ガス量を制御するものである。そして、バイパス流路に導かれた排ガスの温度を検出し、この温度が設定温度より高いときにはバイパス流路に大気を導くようにするのが望ましい。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の第2の特徴は、熱源から放出される排ガスが有する廃熱を回収する装置であって、熱源から煙突へ排ガスを導く主流路と、この主流路から分岐し廃熱回収手段が設けられたバイパス流路と、このバイパス流路の分岐部前後に設けられた排ガスの温度検出手段と、バイパス流路に排ガスを吸引する吸引手段と、前記温度検出手段が検出した温度の温度差に基づいて前記吸引手段が吸引する排ガス量を制御する制御手段とを備えるものである。そして、好ましくは、廃熱回収手段の上流側にこの廃熱回収手段に導かれた排ガスの温度を検出する第2の温度検出手段を設け、この温度検出手段が検出した温度が所定値以上であればこの廃熱回収手段に大気を導く大気送風手段を設けるものである。また好ましくは、吸引手段がインバータで駆動されるファンとしたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は、非量産工場における廃熱回収システムの図である。金属の熱処理工場10には、焼入れ炉13、焼戻し炉14、15が設けられており、これらの炉を用いて主として鋼材の焼入れや焼き戻しが行われる。これらの炉からは150゜C以上の熱処理後のガスが排ガスとして排熱される。一方、浸炭作業に用いられる浸炭炉11、12からは600〜700゜Cにも及ぶ排ガスが排出される。この高温の排ガスは、廃熱回収用熱交換器16に導かれ、この熱交換器16内の水を加熱する。加熱された水は、温水タンクに溜められ、需要元である工場が備える食堂の厨房設備21やシャワー22や浴槽23へと供給される。
【0011】
なお、需要元の需要が多すぎる等のため、温水タンク25に溜められた温水温度が不足のときは、補助的に設けられたボイラー24で温水を加熱し需要元へと送られる。温水タンクには、使用した温水量に応じて外部から給水される。熱交換器16で水を加熱した排ガスは、煙突から大気に放出される。この時、排ガス温度を所定温度以下にするため、ファン41から煙突部に大気を導き、排ガスと大気を混合させて所定温度以下で大気放出する。
【0012】
焼入れ炉13、焼戻し炉14、15から排出された比較的低温の排ガスは、第2の廃熱回収用の熱交換器43に導かれ、工場が備える空調設備の熱源として作用する。この排ガスのエネルギーは熱交換器43で回収される。一方、熱交換器15で熱交換した後の排ガスの一部は、プレートフィン型の熱交換器44に導かれて、熱交換器43で熱交換した循環水と熱交換する。熱交換器43、44で加熱された循環水は、温水焚き吸収式冷凍機36の熱源として冷水発生に用いられる。この吸収式冷凍機36で発生した冷水は、冷水タンク35に溜められ、プレート式熱交換器33で空調室30に備えられたファンコイルユニット31内を流れる循環水と熱交換する。焼入れ炉13及び焼戻し炉14、15の排ガスは、ファン42で熱交換器43に導かれるとともに、これらの炉からの排ガスに大気を混入して冷却するのに用いられる。
【0013】
空調室30を暖房するために、別途ガス焚き吸収冷温水ユニット37が設けられており、この吸収冷温水ユニット37は温水を発生する。発生した温水は温水タンクに溜められ、プレート熱交換器32で空調室30内に設けられたファンコイルユニット31内を流れる循環水と熱交換する。先に述べた温水焚き吸収式冷凍機36とこのガス焚き吸収式冷温水ユニット37で発生する冷水と温水の量を適度に組み合せることにより、常に、空調室30の温度を設定値に保つことが可能になる。
【0014】
このような空調及び給湯システムにおける、排ガス流れの切換えの具体的な例を図2を用いて説明する。図2は、本発明に係る廃熱回収装置の機器構成とシステムフローを示す図である。浸炭炉等の炉1で発生した燃焼排ガスは、排気ダクト2に導かれる。排気ダクト2の途中には分岐部zが形成されており、この分岐部の一方は煙突8側に接続されている。分岐部zの他方は、バイパスダクト3に接続されている。
【0015】
バイパスダクト3の流路中には、炉1から排出された排ガスから廃熱を回収する熱交換器4と、排ガスを炉1から熱交換器4に吸引する吸気ファン5とが設けられている。吸気ファン5には、この吸気ファン5を駆動するモーター5aが接続されている。モーター5aは、インバーター5bにより速度制御される。熱交換器4は、その入口側に炉1から排出される排ガスの温度を検出する温度センサー3bが配設されている。この温度センサーが検出した排ガス温度は、演算器6bに入力され、予め設定された熱交換器の入口設定温度と比較される。この検出温度と設定値との比較に基づいて、吸気ダンパー7からの吸気eの量が決定される。
【0016】
さらに、分岐部zの上流側及び分岐後のバイパス路側には、それぞれ温度センサー2a、3aが取付けられている。これらセンサー2a、3aが検出した排ガスの温度は、演算器6aに入力される。演算器6aは、吸気ファン5の回転速度を演算し、インバータ5bに出力する。
【0017】
次にこのように構成した本実施例の作用を以下に説明する。バイパス流路側に設けた吸引ファン5が起動し、吸引を開始すると、炉1から排出された排ガスaは、分岐部zにおいて吸引排ガスcとしてバイパスダクト3側に流れる。これとは逆に、吸引ファン5を停止させると、炉1から排出された排ガスは流動抵抗の少ない煙突8へ直接導かれる本流路側を流れ、排出ガスbとして排気ダクト2の上部から大気へ放出される。分岐部前後のダクト2、3にそれぞれ設置した温度センサ2a、3aが検出した温度から、演算器6がそれら温度の温度差を求め、この温度差に基づいて吸引量が制御される。さらに、吸引排ガスcの温度が設定温度より高いときは、熱交換器4を保護するために吸気ダンパー7を作動させて外気eを取り入れる。
【0018】
熱処理工場が稼動していない等の理由で、炉1から燃焼排ガスaが得られない場合は、温度センサー2a、3aが検出した温度は常温となる。このときには、吸引ファン5を駆動するモーター5aは起動しないで、廃熱回収システムは待機状態となる。炉1から燃焼排ガスaが排出され、温度センサー2a、3aが検出した温度が設定温度以上になると、演算器6aはインバーター5bにモータ5aを起動する信号を入力する。インバータ5bは、この信号に基づいてモーター5aを起動し、吸気ファン5が起動してバイパスダクト3側へ炉1からの排ガスを吸引し始める。この結果、燃焼排ガスaは吸引排ガスcとしてバイパスダクト側を流通する。
【0019】
温度センサー3aはこの吸引排ガスcの温度を検出しており、この検出値は温度センサー2aの検出値と演算器6aで比較され差分の電気信号がインバーター5bに送られる。そして、この差分に逆比例してインバーター5bはファン用モーター5aの回転速度を変化させる。吸引排ガスc量が増加して燃焼排ガスa量を上回ると、配器側から熱交換器4側へ、逆流ガスdが生じる。この逆流ガスdが生じ始めると、高温の燃焼排ガスaと低温の逆流ガスdが混合して、吸引排ガスcの温度が下がり、燃焼排ガスaとの温度差が増大する。そして、この温度差が設定限界値に達したら、演算器6aがインバーター5bにファン5を駆動するモーター5aの回転速度を低下させるように指示する。この結果、逆流ガスd量と温度センサー2a、3aが検出した温度の温度差の双方が減少する。
【0020】
温度センサー3bは、演算器6bと対で熱交換器4の入口ガス温度を監視しており、入口ガス温度が設定値より高い場合には吸気ダンパー7の開度を調整して外気を取り入れ熱交換器4の入口ガス温度を低下させる。熱交換器4に吸引された吸引排ガスcは、熱交チューブ4aとの接触により、熱交チューブ4a内を流れる水と熱交換し、水を加熱する。熱交換した後の排ガスは、吸気ファン5の排気側バイパスダクトを通って排気ダクト2に合流し、煙突8から大気に放出される。
【0021】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、廃熱回収装置から機械的部品を極力減らしたので、装置の低廉化及び信頼性の向上が可能になる。また、廃熱回収を信頼性を高めて実行することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排熱回収装置を備えた空調及び給湯システムの一実施例の図である。
【図2】本発明に係る排熱回収装置の分岐部の一実施例の詳細を示す図である。
【符号の説明】
1…炉、2…排気ダクト、2a…温度センサー、3…バイパスダクト、3a…温度センサー、3b…温度センサー、4…熱交換機、4a…熱交チューブ、5…吸気ファン、5a…ファン用モーター、5b…インバーター、6a…演算器、6b…演算器、7…吸気ダンパー、8…煙突、a…燃焼排ガス、b…排出ガス、c…吸引排ガス、d…逆流ガス、e…吸気、z…分岐部。
Claims (5)
- 廃熱を有する排ガスの少なくとも一部をバイパス流路に導き、このバイパス流路において熱回収する排ガスの廃熱回収方法において、バイパス前の排ガス温度とバイパス後の排ガス温度との温度差を求め、この温度差が所定の温度範囲内になるようにバイパス流路に導く排ガス量を、バイパス流路に設けた吸引手段により機械的流路切換装置を設けずに制御することを特徴とする排ガスの廃熱回収方法。
- 前記バイパス流路に導かれた排ガスの温度を検出し、この温度が設定温度より高いときにはバイパス流路に大気を導くようにしたことを特徴とする請求項1に記載の排ガスの廃熱回収方法。
- 熱源から放出される排ガスが有する廃熱を回収する装置であって、熱源から煙突へ排ガスを導く主流路と、この主流路から分岐し廃熱回収手段が設けられたバイパス流路と、このバイパス流路の分岐部前後に設けられた排ガスの温度検出手段と、バイパス流路に排ガスを吸引する吸引手段と、前記温度検出手段が検出した温度の温度差に基づいて前記吸引手段が吸引する排ガス量を制御する制御手段とを設けることで、前記分岐部に機械的流路切換手段を不要としたことを特徴とする排ガスの廃熱回収装置。
- 前記廃熱回収手段の上流側にこの廃熱回収手段に導かれた排ガスの温度を検出する第2の温度検出手段を設け、この温度検出手段が検出した温度が所定値以上であればこの廃熱回収手段に大気を導く大気送風手段を設けたことを特徴とする請求項3に記載の排ガスの廃熱回収装置。
- 前記吸引手段がインバータで駆動されるファンであることを特徴とする請求項3または4に記載の排ガスの廃熱回収装置。
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