JP3586732B2 - 水処理方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光触媒を用いて廃水中の有害有機物であるダイオキシン、有機ハロゲン化合物、揮発性有機化合物、農薬及び菌類等の酸化分解を効率良く行い、廃水を浄化する水処理方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
廃水の処理・浄化には、活性炭吸着法、イオン交換法、沈殿法、接触酸化法及び薬液注入法等があり、廃水に含む物質の種類や態様によって最適な処理方法が単独あるいは複数の組み合わせで用いられている。しかし、これらの方法は建設費、維持・管理費が高くなる。これらを克服するために、近年、二酸化チタン(TiO)等の光触媒に光を照射すると強力な酸化力を生じて有害有機物分解、悪臭分解、殺菌等の作用を示すことが注目され、コンパクトで取り扱い易く、安価でしかも処理効率の高い光触媒を用いた水処理装置が提案されている。
【0003】
図4に従来技術に基づく光触媒を用いた水処理装置の一例の構成を示す。当該水処理装置は、反応器内管3とその外側を取り巻く反応器外管4とから構成される二重管構造の管状反応器である。反応容器内管3の中心部に光源2である蛍光灯が配置され、反応器外管4の内壁には光触媒1が担持されており、そして反応器内管3と反応器外管4との間に廃水5が流入して処理される。反応器下部に散気装置11が設置され、散気装置11から反応器内の廃水5中へガス13が供給される。ガス13は廃水5中で小さい気泡12となり移動する。廃水5が反応器下端付近から供給され、反応器内で廃水5中の有機化合物が分解された後、浄化水8として反応器上端付近から排出される。気泡12の移動により攪拌効果が生じて廃水5と光触媒1の接触効率が向上するので、有機化合物の分解が促進される。(例えば、特開平9−57279号)
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では以下のような課題がある。即ち、廃水中を移動する気泡は、反応器内管3と反応器外管4管の隙間より小さく、隙間を並列するかのよう移動し、すべての気泡が光触媒の表面もしくは近傍を通過することはないので、光触媒の表面もしくは近傍で十分に廃水の攪拌効果が生じない。また、小さな気泡が光触媒面に殆ど接することがなく、廃水が継続的に光触媒表面を通過するので、廃水中の有機化合物の分解過程で生じる中間生成物が光触媒表面に吸着される。
【0004】
本発明の目的は、従来の問題点を解決し、高効率で廃水中の有害成分を分解できる光触媒を用いた水処理方法及び装置を提案することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下に述べる水処理方法及び装置を用いることで達成される。
【0006】
本発明の水処理方法は、互いに対向する光触媒壁面と光源側壁面との間に設けた流路を通じて有機化合物を含む廃水を流し、この廃水中に気体を吹き込み、気泡により廃水を攪拌しながら、光触媒作用で有機化合物を酸化分解して浄水を生成する方法において、気泡は光触媒壁面と光源側壁面間を橋絡しながら流路にそって移動することを特徴とする。したがって気泡の径が光触媒壁面と光源側壁面との間の流路幅より大きい。
本発明の水処理方法では、図1(a)に示すように、気泡12の径は光触媒1壁面と光源側壁面30の間の流路幅よりも大きくなるように調整され、気泡12は光触媒1の壁面と光源側壁面30との間を橋絡しながら移動するので、局所的にみると、光触媒1表面から廃水5が排除廃水の流れ21に従って排除され、次に廃水5が接触廃水の流れ20に従って担持光触媒1と再接触することが繰り返されることになる。そのため、光触媒1の表面もしくは近傍で廃水5が効率的に攪拌され分解率が向上する。しかも、光触媒1表面が気泡の通過により逐次更新されるので、有機化合物の分解過程で生じる中間生成物の担持光触媒1表面への吸着を抑制することもできる。一方、 従来技術では、図1(b)に示すように、気泡12が小さいので、本発明における光触媒1表面からの廃水の除去/再接触は起きず、そして気泡2が橋絡するほど大きいときに比べて、光触媒1の表面もしくは近傍で廃水が十分に攪拌されない。
【0007】
本発明の水処理方法においては、気体として空気又は酸素を用いることが好ましい。また流路の出口に浄水から放出される気体を受け入れる気相部を設け、気相部に光触媒と光源とを対向させて設置してもよい。この気相部は廃水中に揮発性有機化合物が含まれる場合に有効で、廃水中で分解されず曝気されて気体となった揮発性有機化合物を捕捉して酸化分解処理する。このように処理された気相部中の気体を再び廃水中に吹き込んで利用してもよい。
【0008】
また、本発明の第1の水処理装置は、光源を内部に封入して上下方向に設置された光透過性の内管と該内管を囲い内周壁に光触媒を担持した外管とからなり、内管と外管間の隙間を有機化合物を含む廃水の流路とする反応器と、外管の底部に設けた廃水入口と、外管内底部に設置され気体を放出する散気装置と、外管上部に設けた水・気体出口とからなる水処理装置において、散気装置は流路に流入した廃水中で内管と外管間の隙間より大きな気泡を生成するように気体を供給するものである。気泡を適宜大きさにするためには、散気装置のノズル径を調整する、気体流量を調整する、又は粗目のバブラーを使用する。
【0009】
また、本発明の第2の水処理装置は、光源を内部に封入して上下方向に設置された光透過性の内管と該内管を囲い内周壁に光触媒を担持した外管とからなり内管と外管間の隙間を有機化合物を含む廃水の流路とする反応器と、外管の底部に設けた廃水入口と、外管内底部に設置され気体を放出する散気装置とを備えた水処理装置であって、廃水の液面を内管上端より下方に設定することにより外管内で液面上方の空間を気相室とし、この気相室に水出口と気体出口を設け、気体出口と散気装置とを配管で接続し、かつ散気装置は流路に流入した廃水中で内管と外管間の隙間より大きな気泡を生成するように気体を供給するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明するが、発明の思想を逸脱しない限りにおいて、本発明は各実施の形態により制限されるものではない。
(実施の形態1)
図2により、本発明の実施の形態1となる水処理装置を説明する。この水処理装置は、概略、蛍光灯である光源2と、光源2を封入して上下方向に設置された光透過性の反応器内管3と、反応器内管3全体を囲い内周壁に光触媒1を担持した反応器外管4と、反応器外管4内底に設置された散気装置11とから構成されており、反応器内管3と反応器外管4間の隙間を有機化合物を含む廃水5の流路としている。そして反応器外管4は底部に廃水供給口(廃水入口)7を、天井部に浄化水排出口9(水・気体出口)を設けている。この水処理装置の特徴は、散気装置11が廃水流路に流入した廃水5中に反応器内管3と反応器外管4間の隙間より大きな気泡12を生成するように気体を供給することである。
【0011】
製作した水処理装置は、長さ300mm、径50mmの反応器外管4と長さ250mm、径42mmの反応器内管3から構成される二重管構造の管状反応器を用いた。反応器内管3は石英ガラス製であり、反応器外管4はパイレックスガラス製である。反応器内の上端、下端から25mmまでの空間はそれぞれ液溜まりとなっている。光源2である蛍光灯には光量10Wのブラックライトブルーを用い、反応器内管3の中心部に設置した。光源2に対向している反応器外管4内壁には光触媒1を担持させた。光触媒1はデグッサ社製の光触媒p25(アナターゼ型二酸化チタン)で、これを担体であるE−グラス上に担持させた。担体に対する光触媒の重量比である担持率を12%、光照射に有効に利用できる触媒面積を0.10mとした。光触媒1と反応器内管3外壁間の隙間は4mmとし、その間隔を保つために反応器内管3と反応器外管4管に支持体15を挿入した。
【0012】
反応器内へ廃水供給口7から廃水5を供給した後、反応器下部に設置した散気装置11から反応器内の廃水中へ0.5 ml/minの流速で空気13を供給して径4.5mmの気泡12を発生させた。気泡12は光触媒1と反応器内管3外壁との間を橋絡させながら反応器内を上昇した。ダイオキシン模擬化合物であるo−クロロフェノール:16ppmを含む廃水5を23 ml/minの流速で反応器下端の廃水供給口7から供給し、反応器でo−クロロフェノールを分解する試験を行った。処理水8は押出し流れにより反応器上端の浄化水排出口9から排出した。この試験1の結果は、o−クロロフェノールの分解率が44.2%であった。なお、廃水中に供給する気体として空気の代わりに酸素を用いてもよい。
(実施の形態2)
図3により、本発明の実施の形態2の水処理装置を説明する。この水処理装置は、揮発性有機化合物を含む廃水を対象としたもので、大部分は実施の形態1の装置と同じである。相違点についてのみ説明すると、実施の形態1の装置では光触媒により処理した浄化水を上端の浄化水排出口9から押出して排出するのに対して、実施の形態2の水処理装置は、廃水の液レベルを反応器外管4の上端から下方75mmに設定し、液レベルより上の空間を気相室16(気相部)とし、気相室16には液レベル直上に浄化水排出口9を、天井にガス排出口17を設けたものである。気相部を設置すると気泡中に飛散した有機化合物を気相で除去することができる。ガス排出口17から出る排ガスを外気中に放出するか、又は散気装置11に戻して再使用してもよい。再使用の場合はガス排出口17から散気装置11までを配管で接続する。そして散気装置からの気体供給量は排ガスを含めて調整する。
【0013】
実施の形態2の水処理装置により、o−クロロフェノールを分解する試験2を実施した。o−クロロフェノール:16ppmを含む廃水5を23 ml/minの流速で反応器下部の廃水供給口7から供給し、散気装置11から反応器内の廃水中へ0.5 ml/minの流速で空気13を供給して径4.5mmの気泡12を発生させた。反応器内でo−クロロフェノールの分解を行い、処理水8はオーバフローさせて液レベル直上位置にある浄化水排出口9から排出させた。廃水5中のo−クロロフェノールの一部は曝気されて気体となって気相室16へ移動した。気化したo−クロロフェノールは気相室16に設置された光触媒1の作用で分解された後、抜き出されてガス排出口17から系外22へ排出された。試験2の結果は、o−クロロフェノールの分解率が46.8%であった。
(比較試験)
比較試験では、実施の形態1の水処理装置を用い、散気装置11から空気を0.5 ml/minの流速で廃水中に供給して1mm以下の気泡を生成させた。気泡のサイズより他の条件は試験1と同じである。表1に試験1、2と比較試験の結果をまとめて示す。o−クロロフェノールの分解率は、試験1で44.2%、試験2で46.8%、比較試験では36.3%である。
【0014】
【表1】
Figure 0003586732
試験1では大きな気泡12が光触媒1と反応器内管3外壁との間を橋絡した状態で上昇するので、光触媒1の表面もしくは近傍付近で効率的に廃水13の攪拌が行われる。しかし、比較試験では常に小さい気泡12が光触媒1表面に接して上昇しないので、光触媒1表面もしくは近傍で十分に廃水13の攪拌が行われない。したがって、試験1、2の方が比較例1よりも分解率が大きくなった。試験2では気化した有機化合物も分解できるので、試験2の分解率は試験1の分解率よりも大きくなった。また、比較試験では気泡が小さいため光触媒1表面が更新されないので、o−クロロフェノールの分解過程で生じるカルボン酸誘導体等の担持光触媒1表面への吸着がみられ、処理時間が長くなると光触媒の性能が若干低下した。
【0015】
以下、本発明の水処理装置を構成する各要素について説明する。反応器内管は支持体により反応器内に設置されるが、設置位置はどこであっても構わない。また反応器内管に設置される光源はその配線部分を水と接触しないようにすれば、内管を用いる必要はない。反応器内管は光透過性が良く、しかも耐薬品性、耐腐食性に優れた石英ガラス等の材質であれば何れでも構わない。反応器外管は光を透過する必要がなく耐薬品性、耐腐食性を有する材質であれば何れでもよく、特に、有機物濃度が低く外管を侵すおそれがない場合は塩化ビニル等の有機化合物の材質でも構わない。
【0016】
気泡の生成に用いるガスは、通常、空気でよく、空気以外に酸素を富化した空気、酸素、窒素あるいは二酸化炭素を用いることができるが、廃水中の溶存酸素を高めるために酸素を用いることが好ましい。その供給手段としては、通常の散気装置を用いることができる。気体を供給する位置として反応器下端あるいは廃水供給配管等が考えられるが、廃水中で上記のように橋絡する大きな気泡を供給できる限り、水処理装置のどの位置から供給されても構わない。
【0017】
光触媒としては、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化鉛及びセレン化カドミウム等の半導体が利用可能であるが、分解効率、安定性及び安全性の観点から二酸化チタンの利用が好ましい。二酸化チタンは結晶形態が異なるルチル型、アナターゼ型の2種類の単独あるいは併用して用いてもよいが、アナターゼ型はルチル型よりも光触媒活性が高いのでアナターゼ型の利用が好ましい。しかし、ルチル型はアナターゼ型よりもバンドギャップが低いので、紫外光よりもエネルギーの低い可視光も利用できる利点がある。さらに、光触媒の活性向上あるいは対象廃水中の成分の選択的分解のために光触媒として、金、銀、銅、白金、及びパラジウム等の貴金属あるいはこれらの塩化物、硫酸塩及び各種錯体等を用いてもよい。
【0018】
水処理システムを簡略化するためには、光触媒を、強度があり、加工し易く、耐薬品性、耐腐食性及び耐光性等に優れた織布、金属、ガラスまたはポリテトラフルオロエチレン等からなる担体に担持した方が好ましい。このように、光触媒を均一にしかも強固に担体に被覆することにより、光触媒の剥離や脱離の心配がなく、水処理装置の長期間にわたる連続使用が可能で管理・維持が容易である。また光触媒に起伏を設ければ、より攪拌効果が向上し有機化合物の分解が促進される。
【0019】
光触媒へ照射する光源としては、光触媒を励起するものであれば何れでもよく、ブラックライト、低圧水銀灯、高圧水銀灯、殺菌灯、キセノン灯及び捕虫灯等の使用が可能である。条件によっては適宜太陽光も利用も可能である。光源の位置としては、光源から放射状に光が照射されて光触媒の全面に当たり全光が有効に利用できれば反応器のどの位置でも構わない。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、水処理方法及び装置を、光触媒壁面と光源側壁面間の流路を通じて有機化合物を含む廃水を流し、廃水中に気体を吹き込み、気泡が光触媒壁面と光源側壁面間を橋絡しながら流路にそって移動するように構成したので、気泡が通過する度に光触媒表面から廃水が排除され、廃水が再び光触媒と接触することが繰り返されて光触媒表面もしくは近傍で廃水の攪拌が効率よく行うことができ、光触媒作用による酸化反応により廃水中の有機化合物の分解率を向上させることができるという効果がある。
【0021】
しかも、光触媒表面に対する廃水の排除、接触の繰り返しにより光触媒表面が逐次更新されるので、有機化合物の分解過程で生じる中間生成物が光触媒表面に吸着することを抑制され、光触媒の性能を低下させることなく長時間に亘って有機化合物を分解できる効果も有する。
【0022】
具体的には、光触媒の強力な酸化力により廃水中に存在するトリクロロエチレン、ダイオキシン、ベンゼン等の有機化合物、農薬及び菌類の分解ができるため、工場廃水、焼却設備の浸出水、ゴルフ場廃水、病院廃水等の廃水の浄化に本発明の水処理方法及び装置を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を原理的に説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態1の水処理装置の構成図である。
【図3】本発明の実施の形態2の水処理装置の構成図である。
【図4】従来の水処理装置の構成図である。
【符号の説明】
1 光触媒
2 光源
3 反応器内管
4 反応器外管
5 廃水
7 廃水供給口
8 浄化水
9 浄化水排出口
11 散気装置
12 気泡
13 空気
14 ガス供給配管
15 支持体
16 気相部
17 ガス排出口
19 液面

Claims (7)

  1. 互いに対向する光触媒壁面と光源側壁面との間に設けた流路を通じて有機化合物を含む廃水を流し、該廃水中に気体を吹き込み、気泡により廃水を攪拌しながら、光触媒作用で有機化合物を酸化分解して浄水を生成する水処理方法において、気泡が光触媒壁面と光源側壁面間を橋絡しながら流路にそって移動することを特徴とする水処理方法。
  2. 気泡の径が光触媒壁面と光源側壁面との間の流路幅より大きいことを特徴とする請求項1記載の水処理方法。
  3. 気体は空気又は酸素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理方法。
  4. 上記流路の出口に浄水から放出される気体を受け入れる気相部を設け、該気相部に光触媒と光源とを対向させて設置したことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の水処理方法。
  5. 気相部中の気体を再び廃水中に吹き込むことを特徴とする請求項4記載の水処理方法。
  6. 光源を内部に封入して上下方向に設置された光透過性の内管と該内管を囲い内周壁に光触媒を担持した外管とからなり内管と外管間の隙間を有機化合物を含む廃水の流路とする反応器と、外管の底部に設けた廃水入口と、外管内底部に設置され気体を放出する散気装置と、外管上部に設けた水・気体出口とからなる水処理装置において、散気装置は流路に流入した廃水中で内管と外管間の隙間より大きな気泡を生成するように気体を供給することを特徴とする水処理装置。
  7. 光源を内部に封入して上下方向に設置された光透過性の内管と該内管を囲い内周壁に光触媒を担持した外管とからなり内管と外管間の隙間を有機化合物を含む廃水の流路とする反応器と、外管の底部に設けた廃水入口と、外管内底部に設置され気体を放出する散気装置とを備えた水処理装置において、廃水の液面を内管上端より下方に設定することにより外管内で該液面上方の空間を気相室とし、該気相室に水出口と気体出口を設け、気体出口と散気装置とを配管で接続し、かつ散気装置は流路に流入した廃水中で内管と外管間の隙間より大きな気泡を生成するように気体を供給することを特徴とする水処理装置。
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