JP3586206B2 - インクタンク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクなどの液体を吐出して記録を行なう液体吐出記録装置におけるインクタンクに関し、特に、大量のインクを消費するインクジェットプリントシステムにおけるインクなどの液体を直接収容するのに好適なインクタンクに関する。
【0002】
【従来の技術】
液体吐出記録装置(インクジェット記録装置)に用いられるインクタンク(液体収容容器)は、インク消費時の交換を容易にするため、記録装置のインクタンク収納部であるインクタンクユニットに対して着脱自在に構成されている。インクタンクにはゴム栓などで栓をされたインク供給口が設けられ、物流時や交換時などのタンク単体で存在する場合のインク漏れなどを防止するように配慮されている。インクタンク装着部であるインクタンクユニットのインクタンクとの接続部に中空針等が設けられ、該中空針をインクタンクのインク供給口に接続することでインクタンクから記録ヘッドへのインクの供給を可能としている。
【0003】
インクタンクの内部の構造については、スポンジなどの毛管力発生部材にインクを保持するもの、可撓性の袋内にインクを保持するもの、剛性を有する筐体内部に直接インクを保持するものなど種々の形態が知られている。特に、インクタンクと記録ヘッドとをチューブ等で接続し、記録ヘッドとタンク液面との水頭差を一定範囲内に収めることで安定したインク供給を行なう記録装置においては、インクタンク筐体内部に直接インクを収容する構成は、部品点数を削減する点からも好ましいものである。
【0004】
上記構成を採用するインクタンクでは、前述したインク供給口の他に、インク供給時に筐体内部を大気に開放するための大気連通口が設けられ、大気連通口についても、タンク単体で存在する場合のインク漏れなどを防止するためにゴム栓などの密閉手段でシールされ、インクタンクユニット側に装着される際にこの密閉手段が解除されるようになっている。
さらに、記録デューティが高く、大量のインクを消費する大型のインクジェット記録装置においては、インクタンクの交換頻度を抑えるため、例えば500cc以上の大容量インクタンクを使用することが多い。また、内部に直接液体を貯留可能な大型の中空容器は低コストで容器を提供するために、通常はプラスチック成形品を溶着することにより製造される。
【0005】
タンクの大型化に伴う課題を解決するためのインクタンクの結合方法及びインクタンクの構造について本発明者らは、特開平11−198391号公報及び特開2000−238282号公報等で既に種々の提案を行なっており、インクタンクの装着方向とインク供給針の挿入方向を直交させることによりインクタンク装着時のインク供給針の損傷を防止することも提案済みである。具体的には、内部に直接液体を貯留可能な筐体と、該筐体内に収納された液体を前記記録装置へ供給するための供給部及び前記筐体内部を大気に連通させるための大気連通部を有するプレート部材とを備え、液体吐出記録装置のインク供給針及び大気連通針を装着方向と直交する方向に移動させて挿入し前記インク供給部と大気連通部を外部と連通させるものである。
【0006】
なお、前記インク供給部材と前記大気連通部は、前記プレート部材のインクタンクの装着方向と直交する上面に一体に設けられている。また、前記プレート部材は、前記インクタンクの筐体の上方に溶着接合されることで該筐体内部を密閉空間とするものである。さらに、インク供給部内部には、インクタンクの筐体内の底面からインクを汲み上げるためのチューブがインクタンクの筐体内の底面近傍まで延びるように配設されている。
【0007】
さらに、上述の記録装置において高画質・高精細な記録を実現するために、濃度や使用する色剤などの異なるインクを複数用いることが求められている。また、電気熱エネルギー変換素子を使用したサーマルインクジェット記録装置の場合、インクを吐出する電気熱エネルギー変換素子の寿命を延ばすために、アルカリ性のインクを使用することが多くなっている。近年では、写真調の高画質・高精細な記録が主流となり、インクを吐出する吐出口も年々微細化され、それに伴い記録ヘッド内部のフィルターも益々微細化されてきている。このフィルターについては、例えば、30pl程度のインクの吐出では12μmのメッシュフィルターで良かったが、4〜8plでは6μmの積層構造のフィルターが使用されており、記録ヘッド内に異物が詰まりやすくなってきている。
【0008】
ここで、インクとインクタンク材質の関係については、特登録2696828号及び特登録2874691号では、インクと接触するインク容器の材料が脂肪酸や脂肪酸誘導体類を含有してなる樹脂及び/又は合成ゴムからなるものと、インクのナトリウムイオン濃度についての記載があり、記録ヘッドのフィルターの目詰まりを化学的な配合で防止している。
また、汲み上げ式の液体容器に関しては、特開平10−118163号公報に手指消毒器が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、プラスチック成形によるインクタンクとアルカリ性のインクの組み合わせは、例えば、ナトリウムではなくリチウムイオンであったり、インクタンクに脂肪酸や脂肪酸誘導体類を含有していないものを使用する場合でも、本発明を適用するのに好適な大容量のインクを直接収容するインクタンクでは、インクジェット記録ヘッドのフィルターに目詰まりを生じることがあった。
また、前記プレート部材を前記インクタンクの筐体の上方に溶着接合する際に、該筐体が大きいために撓みやすく、筐体内部の底面からインクを汲み上げるためのチューブが該筐体内の底面に接触して変形したり、溶着が不安定になったり、接触防止のために短くするとインク残りが増える傾向が生じる、などといった不都合があった。
前述の特開平10−118163号公報には、特に液体の残りや表面張力に関する記載は何も存在しない。
【0010】
本発明はこのような従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、内部に直接液体を貯留可能な大型のインクタンクにおいても、比較的簡単な構成で、上述の2つの課題を同時に解決し、低コストを維持したままインクジェット記録ヘッドのフィルターの目詰まりを有効に防止するとともに、インク残り量を極力抑えることができ、当該インクタンクが使用される液体吐出記録装置の信頼性向上を図り得るインクタンクを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)は、上述の目的を達成するために、液体吐出記録装置に着脱自在に搭載されるとともに内部に記録を行なうための液体を直接貯留可能な筐体と、該筐体内に収納された液体を前記記録装置へ供給するための供給部と、前記筐体内部に大気を連通させるための大気連通部と、を備えるとともに、前記供給部に対して対向した面であって記録装置に対する装着状態で底となる面の近傍まで該供給部を基端として延在して設けられ、その端部には前記底となる面に対して略水平にフィルタが配置されて構成される供給管と、を備えており、前記フィルタの径は前記供給管の径より大きく構成されるとともに、前記底となる面は前記フィルタに対向した領域に向かって収納されたインクを集めるように構成されるインクタンクにおいて、前記底となる面は、前記フィルタ対向領域の周囲領域と前記フィルタとの間隔より、前記底となる面の前記フィルタ対向領域と前記フィルタとの間隔の方が小さくなるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
つまり、請求項1の発明によれば、液体を記録装置へ供給するための供給部に対して対向した面であって記録装置に対する装着状態で底となる面の近傍まで延びる供給管の先端部に、該底となる面に対して略水平に配置されるフィルタを有するインクタンクにおいて、底となる面は、フィルタ対向領域の周囲領域とフィルタとの間隔より、底となる面のフィルタ対向領域とフィルタとの間隔の方が小さくなるように構成されるので、内部に直接液体を貯留可能なインクタンクにおいても、比較的簡単な構成で、低コストを維持したままインクジェット記録ヘッドのフィルターの目詰まりを有効に防止するとともに、インク残り量を極力抑えることができ、当該インクタンクが使用される液体吐出記録装置の信頼性を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図面を通して、同じ符号は同一又は対応部分を示すものである。図6は本発明を適用したインクタンクを使用するのに好適な液体吐出記録装置の要部の概略構成を示す模式的斜視図である。先ず、本発明を適用したインクタンクを搭載するのに好適な液体吐出記録装置としてのインクジェット記録装置について図6を用いて説明する。
図6に示すように、互いに平行に配設された2本の主走査レール107には、ヘッドキャリッジ104及び供給キャリッジ105が矢印A方向に摺動自在に嵌合されている。ヘッドキャリッジ104には、記録信号に基づいてインクを吐出する記録手段としての吐出ヘッド部101が搭載されている。
【0016】
吐出ヘッド部101は、濃シアン、淡シアン、濃マゼンタ、淡マゼンタ、イエロー及びブラックの6色のインクに対応して、それぞれの色ごとに複数個づつ配列された吐出口を有し、各吐出口にはそれぞれインク吐出用の熱エネルギーを発生する電気熱変換体が設けられている。吐出ヘッド部101内には、吐出口での毛管現象によりインクが供給され、インクは吐出ヘッド部101の吐出口が開口した面(以下吐出口面という)でメニスカスを形成して吐出口を満たした状態を保つ。また、吐出ヘッド部101は、吐出ヘッド部101を駆動するための駆動基板とともにヘッドカバー106で覆われている。吐出ヘッド部101の駆動基板は、フラットケーブル113を介して、この記録装置全体の動作を制御する制御基板等を収納する基板ボックス114と接続されている。
【0017】
記録手段としての吐出ヘッド部101は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録ヘッドであって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。また、該インクジェット記録ヘッドは、前記電気熱変換体により印加される熱エネルギーによってインク内に膜沸騰を生じさせ、その時に生じる気泡の成長、収縮による圧力変化を利用して吐出口よりインクを吐出させ、記録を行うものである。
【0018】
図13は、前記記録手段としての吐出ヘッド部101のインク吐出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。図13において、記録紙等の記録媒体と所定の隙間(例えば、約0.2〜約2.0ミリ程度) をおいて対面する吐出口面181には、所定のピッチで複数の吐出口182が形成され、共通液室183と各吐出口182とを連通する各液路184の壁面に沿ってインク吐出用のエネルギーを発生するための電気熱変換体(発熱抵抗体など)185が配設されている。吐出ヘッド部101は、前記吐出口182が主走査方向(ヘッドキャリッジの移動方向)と交叉する方向に並ぶような位置関係で、ヘッドキャリッジ104に搭載されている。こうして、画像信号または吐出信号に基づいて対応する電気熱変換体185を駆動(通電)して、液路184内のインクを膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって吐出口182からインクを吐出させる記録手段(吐出ヘッド部)が構成されている。
【0019】
一方、供給キャリッジ105には、吐出ヘッド部101にインクを供給するためのサブタンク103が搭載されている。サブタンク103の内部は各色インクに対応して6つの室に分けられており、それぞれの室が、対応する吐出ヘッド部101に樹脂製のチューブで接続されている。さらに、サブタンク103の下方には、該サブタンク103に供給されるインクを収容する6つのインクタンク(メインタンク)102a、102b、102c、102d、102e、102fが記録装置に設けられたインクタンクユニット20内に保持されている。以下の説明では、これらのインクタンク(メインタンク)の任意の一つあるいは全体を指す場合は、単に「インクタンク102」又は「インクタンク1」と称し、本発明を適用したインクタンクについては、主として「インクタンク1」と称する。前記インクタンクユニット20については、図2〜図5を参照して後に詳述するものであり、図6では該インクタンクユニット20の詳細構造は省略されている。
【0020】
インクタンク102はサブタンク103よりも大きな容量を有するものであり、本例の場合、500〜1000ccのインクを収容することができる。各インクタンク102も、各色インクに対応するもので、それぞれ樹脂製のチューブによってサブタンク103の各室に接続されている。これにより、インクタンク102に収容されたインクはサブタンク103に供給されてサブタンク103内に保持され、さらにサブタンク103から吐出ヘッド部101に供給される。
【0021】
ヘッドキャリッジ104及び供給キャリッジ105は、それぞれタイミングベルトに結合され、主走査モータ108によってタイミングベルトを回転させることで、矢印A方向に往復走査される。吐出ヘッド部101の吐出口に対向する位置には、プラテン109が設けられる。記録媒体としての記録紙115は、プラテン109上を矢印B方向に搬送(紙送り)される。記録紙115の搬送は吐出ヘッド部101の1走査ごとに所定のピッチで間欠的に行われ、その間に吐出ヘッド部101からインクを吐出して記録が行われる。
【0022】
また、吐出ヘッド部101の走査領域内でかつ記録紙115への記録領域外には、吐出ヘッド部101のインクの吐出特性を良好に維持するためのヘッド回復系110が吐出ヘッド部101と対向して配置されている。ヘッド回復系110は、吐出ヘッド部101をキャッピングするキャップ117と吐出ヘッド部101の吐出口面を清浄にするためのブレード111とを備えている。吐出ヘッド部101がキャップ117と対向するときの当該吐出ヘッド部101の位置をホームポジションという。
【0023】
図2は本発明を適用したインクタンクを搭載可能なインクタンクユニットを示す正面図であり、図3は本発明を適用したインクタンクを搭載可能なインクタンクユニットを示す側面断面図であり、図4は図3のインクタンクユニットの要部を示す部分側面断面図であり、図5の(a)及び(b)は図3中の線A−A及び線B−Bに沿った水平方向断面図である。
次に、本発明を適用したインクタンクを装着するのに好適なインクタンクユニット、すなわち当該インクタンクを着脱可能に収容保持するために液体吐出記録装置に設けられるインクタンクユニットについて、図2〜図5を用いて説明する。
【0024】
図2〜図5において、本実施形態に使用されるインクタンクユニット20は、インクタンク1を1個あるいは複数個(ここでは6個収納する場合を例にとる)収納する。インクタンクユニット20の筐体底部には底板プレート21が設けられ、上部には上面プレート24が設けられ、これらは各々の両端を左シャーシ22及び右シャーシ23によってつながれている。底板プレート21と上面プレート24との間には中央プレート25が左シャーシ22及び右シャーシ23間に渡され、後述するリアシャーシ32などとともに筐体の剛性を高めている。
【0025】
26はインクタンク1の底部を案内する下ガイドであり、27は上部を案内する上ガイドである。下ガイド26のインクタンクが収納される凹部の右側には後述する第2の基準面へ付勢する第2の付勢手段としても機能するタンク付勢バネ28、29が設けられ、インクタンク1を左側に押しつけてインクタンク1の下部の位置決めが行われる。隣接するインクタンク収納部間はフロントガイド30によって仕切られ、操作者がインクタンク1を挿入するときに、挿入場所が一目でわかるようになっている。
【0026】
31はタンクロックレバーであり、インクタンク1が収納されていない状態では上方に持ち上げられているが、インクタンクを挿入した後に操作者が下方に押し下げてインクタンク1が引き抜かれないようにロックすることができる。
このように、複数色を収納するインクタンクユニット20に対し、各インクタンク1は、その長手方向とインクタンクユニットへの挿入方向とが一致することで、スペースの効率を高めている。
【0027】
このタンクロックレバー31は、主に操作者が操作するレバーグリップ33とレバー本体34から構成される。タンクロックレバー31は、レバー支持部材35に設けられたレバー軸36を中心に回動可能に支持されている。レバー支持部材35は中央プレート25に固定されている。レバー本体34のレバーグリップ33と反対側の端部34aと、左シャーシ22及び右シャーシ23間に設けられたバネフック37との間には、引っ張りバネ38が設けられている。したがって、タンクロックレバー31は、レバー軸36を中心に常に時計回り方向に付勢され、インクタンク1を挿入していないときにはフロントガイド30の突き当て部30aに当たった状態で保持されている。
【0028】
41、42はそれぞれ管状で先端が細くとがった針で、針41はインクタンク1のインク供給口部と接続される(突き通される)ことでインクタンク1内のインクを吸い上げるために設けられたインク供給針であり、針42はインクタンク1の大気連通部と接続される(突き通される)ことでインクタンク1内を大気に連通させるために用いられる大気連通針である。それぞれの針41、42は針ホルダ43によって保持されており、針ホルダ43は中央プレート25に植設された円柱状のガイド軸44、45に沿って図示の上下に移動可能である。
【0029】
針ホルダ43の両側には一対のピン46とその外側で回動可能なコロ47とが設けられており、このコロ47はレバー本体34の両側に設けられた軸受部材49に嵌め込まれている。このような構成により、タンクロックレバー31を押し下げることで、針ホルダ43及び針41、42を下降させることができる。
針41、42は、針ホルダ43内でL字状に曲げられ、ゴム製の針ジョイント60によって各々チューブ61、62につながっている。チューブ61は、サブタンク103側からのインクの逆流を防止するための逆止弁63及びチューブ64を介してサブタンク103とつながっている。なお、チューブ64の途中にはインク送液用のポンプが設けられている。チューブ62はリアシャーシ32の後方まで這い回されてチューブ端部が大気に開放されている。したがって、ポンプを動作させると逆止弁63が開き、インクタンク1(図6中のインクタンク102に相当する)内のインクがサブタンク103へ送られ、一方、チューブ62を通って空気がインクタンク1内へ補給される。
【0030】
下ガイド26のインクタンク収納部の中央にはインクタンクの入り口から奥側にかけて傾斜溝65が設けられており、さらに奥側にはインクタンク1の並び方向につながったインク吸収体66が設けられている。インク吸収体66は少なくともインクタンク1個分のインクが吸収できるようになっており、万が一インクタンク1が破損してインクが漏れ出したとしても、インクタンクユニット20外へインクが溢れることはない。傾斜溝65の角度は漏れ出したインクが速やかに吸収体66方向へ流れるように本実施例では1.5度となっている。
【0031】
72はレバーロック部材で支持軸73を中心に揺動可能に支持され、トーションスプリング74によって時計方向に付勢されている。インクタンク1が収納されていない場合には、レバーロック部材72は突き当て部72aが中央プレート25に突き当たった状態(図4参照)で保持されており、レバーロック部材72の上部の端部72bはレバー本体34の開口部34bを貫通している。従って、この状態でタンクロックレバー31を押し下げようとすると、レバー本体34の折り曲げ部34cがレバーロック部材72の肩部72cに当たり、これ以上タンクロックレバー31は下がらない。
【0032】
75は検出プレートであり、支持軸76を中心に回動可能に支持され、かつトーションスプリング77によって反時計方向に付勢されている。検出プレート75の当接部75aは針ホルダ43に植設されたホルダピン78に当接しており、針ホルダ43が下降し所定の最下位位置まで下がると反時計方向へ回転し、突出部75bがマイクロスイッチ79の検出部79aを押し、針41、42の所定位置への移動を検出する。
【0033】
81は針41をインクタンク1から抜いたときに針41に付着したインクを拭き取る吸収体であり、吸収体押さえ82によって保持されている。83はレバー本体34に設けられた凸部材であり、中央プレート25に固定された凹部材84と係合する。凸部材83と凹部材84は共にポリアセタール又はポリプロピレンなどのバネ性を有する材料で作られ、タンクロックレバー31を押し下げると係合し、その位置にタンクロックレバー31を保持でき、所定以上の力で引き上げるとその係合を解除できるものである。また、レバー本体34にはタンクの付勢手段としての板バネ85、ローラ86及び回転軸87が設けられている。板バネ85は、その一端がレバーグリップ33に固定され、他端にはアイドラーのローラ86と回転軸87が設けられている。
【0034】
ストッパ91は、中央プレート25から上方に植設された回動軸92を中心に回動可能であり、トーションスプリング93によって反時計方向に付勢されている(図5(a)参照)。インクタンク1が収納されていないときには針ホルダ43の脚部43aの下方にストッパ91がちょうど当たるため、針ホルダ43はこれ以上下降できないようになっている。
94はクリック部材であり、該クリック部材94は中央プレート25から下方に植設された回動軸95を中心に回動可能であり、圧縮バネ96によって時計方向に付勢されている(図5(b)参照)。
【0035】
また、27cは第1の基準面としての突き当て面であり、27bは第2の基準面としての突き当て面であり、それぞれ上ガイド27に設けられている。第1の基準面と第2の基準面とは直交しており、第1の基準面はインクタンクの挿入方向と直交する。従って、第2の基準面はインクタンクの挿入方向及び針の移動手段としての針ホルダ43の移動方向の双方に平行になっている。また、クリック部材94によって、インクタンク1の突出部としてのインク供給口部3及び大気連通部2は前記突き当て面27b及び27cに当接される。このようにすることで、第1キャップのbb方向への移動可能領域を図5(b)に示すddに抑えることができる。
【0036】
また、本実施例では、クリック部材94は、その高さ方向においては、端部94aでは円筒2aに相当する部分のみに設けられており、アーム部94bでは円筒2a及び2bの双方に相当する部分に設けられている。従って、後述する第1の突出部2が端部94aを通過する際には、クリック部材94はクリック動作を行なわないようになっている。
本実施例では、インクタンク1の挿入時に、クリック部材94が第1の突出部2に対してはクリック動作を行なわず、第2の突出部3に対してのみクリック動作を行うことで、タンクが所定の位置に位置決めされたことをユーザーは1回のクリック動作でより一層容易に確認することができる。
また、本実施例では、前記移動可能量ddは、クリック部材94のアーム部と第1の突出部2の円筒2aとの距離となるので、移動量を規制し、安定した結合を実現することが可能となる。
【0037】
このように、インクタンク1が大型容器である場合でも、インク供給口部により結合部の位置決めを行うことで、位置決めの精度を高めることができる。また、ユーザーはこの変化をクリック感として容易に検知することができるので、挿入が確実に行われたことを確認することができる。また、挿入方向に複数の突出部を有するインクタンクを結合する場合、インクタンクの挿入方向と直交する第1の基準面に対しては挿入方向前方の突出部を当接させ、第1の基準面と直交する第2の基準面に対しては、複数の突出部を当接させて位置決めを行うことにより、複数色を使用するインクジェット記録装置の場合でも、スペースの無駄を生じることなく挿入方向に対するがたつきを抑え、より確実な結合を実現することができる。
【0038】
本発明を適用したインクタンクは上述した液体吐出記録装置及びそのインクタンクユニット20に装着されるのに好適なものであり、その具体的な構成について、図1、図7及び図8を用いて詳細に説明する。
図1は本発明を適用したインクタンクの第1実施例を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図であり、(c)は立体斜視図である。また、図7は本発明者らによる既提案のインクタンクを示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図であり、(c)は立体斜視図である。また、図8は本発明を適用したインクタンクの第1実施例の要部を示す模式的縦断面図であり、(a)は図1の(b)中の線C−Cに沿った横断方向縦断面図であり、(b)は長さ方向縦断面図であり、(c)は残りインクの状態を示す横断方向縦断面図であり、(d)は残りインクの状態を示す長さ方向縦断面図である。これらの図面を参照して、本発明を適用したインクタンクの前述の記録装置への装着及び動作についても説明する。
【0039】
図1、図7及び図8において、インクタンク1は剛性のある筐体8の内部に直接インクなどの液体を収容可能であり、その底面と対向する面に、筐体内部に大気を導入するための大気連通口12を有する第1の突出部2と、筐体内部の液体を外部に導出するためのインク供給口13を有する第2の突出部3と、第1の誤装着防止部10aと、第2の誤装着防止部10c及び10dとが設けられている。図示のインクタンク1では、前述のインクタンクユニット20との結合に用いられる前記第1の突出部2と、前記第2の突出部3と、前記第1の誤装着防止部材10aと、第2の誤装着防止部材10c、10dとは、筐体8の開口面に密封接合されて一体化される1枚のプレート状のプレート部材9上に形成されている。
【0040】
なお、第1の突出部2は、前記第2の突出部3より径の小さい円筒2aと第2の突出部3と同じ径の円筒2bとを同心円的に配置した構造を有し、その高さは第2の突出部3と同じになっている。
ここで、筐体8の底面と対向する面にインク供給口13及び大気連通口12を設け、前述したインクタンクユニット20の針41、42が上方から挿入されることで、万が一結合時に不確実な結合が行なわれたとしても、結合部からインクが漏れてインクタンクユニット20を汚すことはない。大気連通口12及びインク供給口13はそれぞれ突出部2及び3内のゴム栓121により密閉されており、内部の液体が不用意に外部へ漏れ出ないようになっている。
【0041】
なお、既提案のインクタンクでは、図7(b)に示すように、インク供給口13には筐体8内を底部近傍まで延在するチューブ4が設けられており、図7(c)に示すように、プレート部材9が上部にくる姿勢においても、インク供給口13に接続された外部から吸引されることにより筐体8内部に収納された液体を外部に導出することが可能となっている。
【0042】
本発明を適用したインクタンクでは、図1(b)に示すように、インク供給口13には筐体8内を底部に向けて延在するチューブ4bが設けられており、その先端部には、図8の(a)及び(b)に示すように、フィルター支持部材200が固定され、該フィルター支持部材200にはフィルター201が固定されている。前記フィルター支持部材200の前記チューブ4bへの固定方法は、圧入又はかしめのどちらでもよいが、脱落することがなく、かつインク汲み上げ時にリーク等を起こさない構造で固定する必要がある。したがって、図1(c)に示すように、プレート部材9が上部にくる姿勢においても、インク供給口13と接続された針41により外部から吸引されることで、筐体8内部に収納された液体を外部に導出することが可能となっている。
【0043】
また、前述のインクタンク1では第1の突出部2及び第2の突出部3の形状はそれぞれ略円筒形状であり、その配置は、インクタンクの挿入方向から見ると、第1の突出部2及び第2の突出部3の中心軸がほぼ前後方向に一致する関係で、第1の突出部2の方が前方に配置されている。筐体8内底面と対向する面の第2の突出部3側(挿入方向後方)には、それぞれの突出部2、3の開口部の端面の高さより高い位置まで延びる傾斜面が設けられている。該傾斜面には、落下の際に前述の第2の突出部3の破損を防止するための保護用リブ5が形成されている。
【0044】
そして、傾斜面の高い方の端部(挿入方向後方の端部)は、インクタンク1をインクタンクユニット20のタンクロックレバー31に固定させるための垂直面部6を有している。この垂直面部6は、底面に対してほぼ直交する面となっており、第1の突出部2及び第2の突出部3の柱状の部分とほぼ平行になっている。また、前記垂直面部6の下端は、第1の突出部2及び第2の突出部3の柱状の部分より鉛直方向やや下方まで延在し、上端は第1の突出部2及び第2の突出部3の開口部より上方まで延在している。
【0045】
ここで、第2の突出部3の高さは、第1の突出部2の大気連通口を有する面と垂直面部上部とを結ぶ線より下方に位置するようになっている。従って、仮にタンクを落下させたとしても、第2の突出部3は地面に直接接することはないので、落下により第2の突出部3が破壊されることはない。このように、本実施例のインクタンクでは、インクタンク1のインク供給口13を保護することで、後述するインクタンク1を搭載可能な記録装置との結合をより確実に行なうことを実現している。なお、上述の保護用リブ5は、必ずしも必須の構成ではないが、リブを設けることで第2の突出部3の保護をより確実に行なうことができる。
【0046】
この垂直面部6の下方には、それぞれ筐体8を貫通する貫通孔により垂直面部から突出した把手部7及び引掛け孔部15が設けられており、それぞれ持ち運び時やインクタンクユニットからタンクを取り外す際にユーザーのハンドリング性を向上させている。本実施例では、これらの把手部7及び引掛け孔部15はインク収容可能な筐体8内部と連通する中空体で構成されており、これらの中にも液体を充填することができるので、その分インクタンク1のインク収納量を増大させることができるようになっている。
【0047】
本実施例のインクタンク1の第1の誤装着防止部10aはインクタンクの挿入方向前方の端部に設けられている。第1の誤装着防止部10aには、4箇所の爪部と該爪部を保護するようにインクタンクの長手方向(インクタンク1のインクタンクユニット20への装着方向)に平行な保護壁とが設けられ、爪部の不要部分を取り除くことによってインクタンクユニット20における誤装着を防止できるように構成されている。具体的には、インクタンク1を装着するインクタンクユニット20に凸形状の識別部材を設け、この凸形状に対応する部分の爪を取り除いたインクタンクのみが装着可能となっている。このため、インクタンク1のインク供給口13がインクタンクユニット20内に入る前にこの識別部材と前記誤装着防止部とによって、インクタンク1の誤装着を確実に防止することができる。本実施例では、第1の誤装着防止部10aの4個の爪のうち、3個の爪を取り除くことで4種類のインクタンク種類に対応できるようになっている。
【0048】
また、本実施例のインクタンク1では、第1の誤装着防止部10aと第1の突起部2の間に第2の誤装着防止部10c、10dを設けている。この第2の誤装着防止部には、前述の第1の誤装着防止部と同様、爪部10dと保護壁10cが設けられている。本実施例では、第2の誤装着防止部の爪部は2列にわたって6箇所設けられ、このうち合計3個の爪を取り除くことで20種類のインクタンク種類に対応できるようになっている。
【0049】
本実施例では、前記第1及び第2の誤装着防止部の組み合わせによって80種類(20×4)のインクタンク種に対応できるようになっているが、これらの誤装着防止部の爪部の数は、上述した数量に限定されるものではなく、要求されるタンク種の必要数量に合わせて自由に選択することができる。
本実施例のプレート部材9は、筐体8と同様、ポリプロピレン樹脂により形成されており、それぞれ、プレート部材9は射出成形で形成され、、筐体はブロー成形で形成されている。このように筐体8及びプレート部材9を熱可塑性樹脂でありリサイクル性に優れるオレフィン系の樹脂で構成することで、再生、再利用を容易にすることができる。
【0050】
本発明を適用したインクタンク1は、筐体8とプレート部材9とをそれぞれ別々に形成した後、プレート部材9の大気連通口12及びインク供給口13がそれぞれ筐体8の開口部(不図示)と対応するように両者を超音波溶着により接合することで製造される。接合方法としては、超音波溶着の他に、振動溶着や熱板溶着等による溶着や、接着剤による接着を行なってもよい。このあたりの構成は、本発明者らにより特開2000−238282号公報で既に提案されている。
【0051】
本発明を適用したインクタンクでは、図1(b)に示すように、インク供給口13に筐体8内を底部に向けて延在するチューブ4bが接続して設けられており、該チューブ4bの先端部には、図8(b)に示すようにフィルター支持部材200が固定されており、該フィルター支持部材200の下面にはフィルター201が固定されている。
図8を参照して、本発明を適用したインクタンクの第1実施例について、詳細に説明する。前述のように、図8の(a)は図1の(b)中の線C−Cに沿った横断縦断面図であり、図8の(b)は図1の(b)中にも示す上記フィルター支持部材200及び筐体8の内側底面8bを含む要部構成を示す長さ方向縦断面図である。なお、図8の(c)及び図8の(d)は、それぞれ図8の(a)及び図8の(b)における残りインクの状態を示す図である。
【0052】
図8において、フィルター支持部材200の下面の開口部には、フィルター201がその周囲を熱かしめすることにより固定されており、該フィルター支持部材200はチューブ4bの下端部に接続固定されている。フィルター支持部材200のチューブ4bへの固定方法は、脱落やインク汲み上げ時のリーク等を起こさない固定方法であれば、圧入あるいはかしめなど、適宜の固定方法を採用することができる。
【0053】
このようにチューブ4bの下端部にフィルター201を設けることにより、液体吐出記録装置の記録手段(インクジェット記録ヘッド)のフィルターの目詰まりを効果的に防止することができる。すなわち、上記フィルター201を設けることにより、アルカリ性のインクが筐体8やプレート部材9等に接触することで溶出することがある異物の大部分を、該フィルター201により捕捉することが可能となり、従って、当該インクタンクに接続された記録ヘッドへの前記溶出物(異物)の流入を無くすことができる。こうして、液体吐出記録装置(特にインクジェット記録ヘッドのフィルター)における上記溶出物(異物)による目詰まりを効果的に防止することができ、記録ヘッドのフィルターの目詰まりに起因する記録不良の発生を無くすことができる。
【0054】
図8の(a)及び(b)において、フィルター支持部材200の外周部下面200bは、フィルター201の下面より下方へ所定量(例えば約0.7mm)出っ張っている。また、筐体8の内側底面は符号8b及び8cで示すように、平坦面ではなく、曲面状に形成されている。そして、フィルター支持部材200の外周部下面200bと筐体8内の内側底面8bとの間隔は約1.5mm程度に設定されており、また、フィルター201の下面と筐体8の内側底面8cとの間隔は約2mm程度に設定されている。
図8の(c)及び(d)は筐体8内のインク切れ時のインクの残り状態を示す図であり、フィルター201の中央部の下側のインク205並びに筐体8の内側底面8c部のインク205aは、従来技術をも含め、通常のインクタンクの場合にインクが汲み上げられずに残る部分を示す。
【0055】
図11は筐体8内のインクを単体のチューブ4で汲み上げる従来のインクタンクの要部を示す部分断面図であり、(a)は通常の状態を示し、(b)はチューブ4が中央に配設された場合に筐体8の内側底面8cの両側にインク205bが残る状態を示し、(c)はチューブ4が偏った位置に配設された場合に筐体8の内側底面8cの両側にインク205c、205dが残る状態を示す。
チューブ4が中央にある図11の(b)の場合は、筐体8の内側底面8cの両側に、本発明を適用したインクタンクにおける残りインク(例えば図8中のインク205a)よりも多い量のインク205bが残ることになる。
また、チューブ4が偏った位置にある図11の(c)の場合は、筐体8の内側底面8cの両側にインク205c及び205dが残り、片側のインク205cの量はチューブ4が中央にある図11(b)の場合のインク205bの約2倍になり、この残りインク205cは本発明を適用したインクタンクにおける残りインク(例えば図8中のインク205a)よりも益々多い量になる。
【0056】
図12は、フィルター支持部材200の外周部下面200bと筐体8の内側底面8bとの間隔(底面との距離(mm))とインクの表面張力(γ)とを変えた場合のインク残り量を測定した結果を示す表及びグラフである。なお、液体吐出記録装置(インクジェット記録装置)においては、表面張力(γ)が20〜50dyne/cmのインクが多く使用される。
図12中の表及びグラフから明らかなように、フィルター支持部材200の外周部下面200bと筐体8の内側底面8bとの距離が5mmを超えると、表面張力(γ)が低いインクのインク残り量が急激に増大する。その理由は、インクの表面張力が低いために球状になることができず、外周部下面200bに触れることができなくなるためである。したがって、フィルター支持部材200の外周部下面200bと筐体8の内側底面8bとの間隔は5mm以下であることが好ましい。また、同一インクで比較すると、図11に示すようなチューブ単独の場合に比べ、本発明を適用したインクタンクではインク残り量が明らかに減少している。これは、図8の(b)、(d)及び図11の(b)を見ても明らかである。
【0057】
ここで、外周下面200bと筐体8の内側底面8bとの間隔は小さければ小さいほど良いが、プレート部材9を筐体8に超音波溶着する際に該筐体8が重力方向に撓むことを考慮すると、一定の限度がある。
超音波溶着する際に筐体8の下面を単純に下から受けて支持すると約1mm近く撓むが、筐体8の側面に図1の(b)及び(c)に示すような凹み部8aを形成し、該凹み部8aで受けるようにすると、上記撓みは約0.2mmに抑えることが可能である。これらを考察すると、外周部下面200bと筐体8の内側底面8bとの間隔は、プレート部材9を筐体8に超音波溶着する際に支障が起きないように、0.2mm以上にすることが必要である。なお、本発明を適用したインクタンク1の筐体8の肉厚は、ブロー成形品としてはやや厚めの約2.5mmに選定されている。
【0058】
以上の説明から明らかなように、本発明を適用したインクタンクにおいては、図1及び図8に示すように、フィルター201もしくはフィルター支持部材200の外径寸法はインク供給管であるチューブ4bの外径より大きく設定されている。このようにフィルター201もしくはフィルター支持部材200の外径寸法をチューブ4bの外径より大きくすることにより、筐体8内のインク残り量を少なく抑えることが可能である。
【0059】
図9は本発明を適用したインクタンクの第2実施例の要部構成を示す部分縦断面図であり、(a)は通常状態を示し、(b)は使い切った後でインク残りが生じた状態を示す。図9において、チューブ4bの下端部にフィルター支持部材200が固定され、該フィルター支持部材の下面にフィルター202が固定されているが、本実施例では、フィルター202は下方へ凸状の部分球面形状に成形されている。
【0060】
このような形状のフィルター202を使用することにより、図9に示すように筐体8の内側底面8eが曲面でなくても(平坦面であっても)、図9の(b)に示すように、フィルター202の中央部下側のインク(残りインク)206と筐体8の内側底面8e部のインク(残りインク)206aの量を減少させることができ、図8の第1実施例の場合と同様に僅かに残る程度に抑えることが可能となる。図9の第2実施例は、以上の点で図8の第1実施例と相違するが、その他の点では実質上同じ構成をしており、その詳細説明は省略する。従って、図9の第2実施例によっても、前述の第1実施例の場合と同様の効果が得られることは明らかである。
【0061】
図10は本発明を適用したインクタンクの第3実施例の要部構成を示す部分縦断面図であり、(a)は通常状態を示し、(b)は使い切った後でインク残りが生じた状態を示す。図10において、チューブ4bの下端部にフィルター支持部材200が固定され、該フィルター支持部材の下面にフィルター202が固定されており、このフィルター202は、図9の第2実施例と同様、下方へ凸状の部分球面形状に成形されている。そこで、本実施例においては、さらに、筐体8の内側底面8b、8cは図8の第1実施例の場合と同様の曲面状に形成されている。
【0062】
本実施例は、以上の点で前述の第1実施例及び第2実施例と相違しているが、その他の点では実質上同じ構成をしており、それらの詳細説明は省略する。
図10に示す第3実施例によれば、前述の各実施例の場合と比べ、図10の(b)のように、筐体8内のインクを使い切ったときにフィルター202の中央部の下側に残留する残りインク207の量を更に減少させることができる。なお、図10の残りインク206aは図9中の残りインク206aと同様(又は対応する)のインクを示すものである。また、図10の第3実施例によれば、、前述の第1実施例の場合と同様の効果が得られることも明らかである。
【0063】
なお、上述の実施例では、図8〜図10に示すように、フィルター支持部材200の外径(外周下端部)をフィルター201の外周熱かしめ部の外側に別個に設けたが、これは、フィルター201の外周熱かしめ部のみの構成、すなわちフィルター支持部材200の外周下端部を利用してフィルター201を熱かしめする構成としても同様の効果が得られるものであり、本発明はこのような構成もその範囲に含むものである。
また、フィルター支持部材200の外周部を大きくとり、外周部下面200bと筐体8の内側底部との間隔(距離)を更に減少させることにより、前述の残りインク207の量を更に減少させることができる。
【0064】
なお、以上の実施例では、液体吐出記録装置が記録手段(吐出ヘッド部101)を主走査方向に移動させながら記録するシリアル型記録装置である場合を例に挙げて説明したが、本発明は、液体吐出記録装置が記録紙等の記録媒体の全幅または一部をカバーする長さのラインタイプの記録手段を用いて副走査のみで記録するライン記録方式(ライン型記録装置)の場合にも、同様に適用することができ、同様の効果を達成し得るものである。
【0065】
また、本発明は、記録手段(吐出ヘッド部)の数にも関わりなく自由に実施できるものであり、1個の記録手段で記録する記録装置の他、複数の記録手段を用いる記録装置、あるいは同一色彩で異なる濃度で記録する複数の記録手段を用いる階調記録装置、さらには、これらを組み合わせた記録装置の場合にも、同様に適用することができ、同様の効果を達成し得るものである。さらに、本発明は、記録手段とインクタンクを一体化した交換可能なインクジェットカートリッジを用いる構成、記録手段とインクタンクを別体にし、その間をインク供給用のチューブ等で接続する構成など、記録手段(記録ヘッド)とインクタンクの配置構成がどのような場合にも同様に適用することができ、同様の効果が得られるものである。
【0066】
なお、本発明は、液体吐出記録装置がインクジェット記録装置の場合、例えば、ピエゾ素子等の電気機械変換体等を用いる記録手段を使用するものにも適用できるが、中でも、熱エネルギーを利用してインクを吐出する方式の記録手段を使用するインクジェット記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば、記録の高密度化、高精細化が達成できるからである。
【0067】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなごとく、本発明によれば、液体吐出記録装置に着脱自在に搭載されるとともに内部に記録を行なうための液体を直接貯留可能な筐体と、該筐体内に収納された液体を前記記録装置へ供給するための供給部と、前記筐体内部に大気を連通させるための大気連通部と、を備えるとともに、前記供給部に対して対向した面であって記録装置に対する装着状態で底となる面の近傍まで該供給部を基端として延在して設けられ、その端部には前記底となる面に対して略水平にフィルタが配置されて構成される供給管と、を備えており、前記フィルタの径は前記供給管の径より大きく構成されるとともに、前記底となる面は前記フィルタに対向した領域に向かって収納されたインクを集めるように構成されるインクタンクにおいて、前記底となる面は、前記フィルタ対向領域の周囲領域と前記フィルタとの間隔より、前記底となる面の前記フィルタ対向領域と前記フィルタとの間隔の方が小さくなるように構成されているので、内部に直接液体を貯留可能なインクタンクにおいても、比較的簡単な構成で、低コストを維持したままインクジェット記録ヘッドのフィルターの目詰まりを有効に防止するとともに、インク残り量を極力抑えることができ、当該インクタンクが使用される液体吐出記録装置の信頼性向上を図り得るインクタンクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したインクタンクの第1実施例を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図であり、(c)は立体斜視図である。
【図2】本発明を適用したインクタンクを搭載可能なインクタンクユニットを示す正面図である。
【図3】本発明を適用したインクタンクを搭載可能なインクタンクユニットを示す側面断面図である。
【図4】図3のインクタンクユニットの要部を示す部分側面断面図である。
【図5】図3中の線A−Aに沿った水平方向断面図(a)及び線B−Bに沿った水平方向断面図(b)である。
【図6】本発明を適用したインクタンクを使用するのに好適な液体吐出記録装置の要部の概略構成を示す模式的斜視図である。
【図7】本発明者らによる既提案のインクタンクを示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図であり、(c)は立体斜視図である。
【図8】本発明を適用したインクタンクの第1実施例の要部を示す模式的縦断面図であり、(a)は図1の(b)中の線C−Cに沿った横断方向縦断面図であり、(b)は長さ方向縦断面図であり、(c)は残りインクの状態を示す横断方向縦断面図であり、(d)は残りインクの状態を示す長さ方向縦断面図である。
【図9】本発明を適用したインクタンクの第2実施例の要部構成を示す部分縦断面図であり、(a)は通常状態を示し、(b)は使い切った後でインク残りが生じた状態を示す。
【図10】本発明を適用したインクタンクの第3実施例の要部構成を示す部分縦断面図であり、(a)は通常状態を示し、(b)は使い切った後でインク残りが生じた状態を示す。
【図11】筐体内のインクを単体のチューブで汲み上げる従来のインクタンクの要部を示す部分断面図であり、(a)は通常の状態を示し、(b)はチューブ4が中央に配設された場合に筐体の内側底面の両側にインクが残る状態を示し、(c)はチューブが偏った位置に配設された場合に筐体の内側底面の両側にインクが残る状態を示す。
【図12】本発明を適用したインクタンクにおいてフィルター支持部材の外周部下面と筐体の内側底面との間隔とインクの表面張力とを変えた場合のインク残り量を測定した結果を従来技術と比較して示す表及びグラフである。
【図13】図6に示す液体吐出記録装置の吐出ヘッド部の構造を模式的に示す部分斜視図である。
【符号の説明】
1 インクタンク
2 第1の突出部
3 第2の突出部
4b チューブ
6 垂直面部
7 把手部
8 筐体
8b 内側底面
8c 内側底面
8e 内側底面
9 プレート部材
12 大気連通口
13 インク供給口
20 インクタンクユニット
31 タンクロックレバー
34 レバー本体
41 針
42 針
72 レバーロック部材
101 吐出ヘッド部(記録手段)
102 インクタンク(メインタンク)
103 サブタンク
181 吐出口面
182 吐出口
184 液路
185 電気熱変換体
200 フィルター支持部材
200b 外周部下面
201 フィルター
202 フィルター
Claims (2)
- 液体吐出記録装置に着脱自在に搭載されるとともに内部に記録を行なうための液体を直接貯留可能な筐体と、該筐体内に収納された液体を前記記録装置へ供給するための供給部と、前記筐体内部に大気を連通させるための大気連通部と、を備えるとともに、前記供給部に対して対向した面であって記録装置に対する装着状態で底となる面の近傍まで該供給部を基端として延在して設けられ、その端部には前記底となる面に対して略水平にフィルタが配置されて構成される供給管と、を備えており、前記フィルタの径は前記供給管の径より大きく構成されるとともに、前記底となる面は前記フィルタに対向した領域に向かって収納されたインクを集めるように構成されるインクタンクにおいて、
前記底となる面は、前記フィルタ対向領域の周囲領域と前記フィルタとの間隔より、前記底となる面の前記フィルタ対向領域と前記フィルタとの間隔の方が小さくなるように構成されていることを特徴とするインクタンク。 - 前記フィルタが前記底となる面の方向に凸状の部分球面形状になっていることを特徴とする請求項1に記載のインクタンク。
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