JP3586030B2 - ステレオ楽音制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、広がり感のある残響音を生成する楽音制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の2チャンネルのステレオサウンドシステムにおいては、音像を形成するために右音源の楽音波形データSRと左音源の楽音波形データが生成される。そして、図8に示すように右音源の楽音波形データSRは、右音源用の残響装置20Rによって残響音データが付加され、右音源用のサウンドシステム21Rへ送られる。また、左音源の楽音波形データSLは、左音源用の残響装置20Lによって残響音データが付加され、左音源用のサウンドシステム21Lへ送られる。このようなステレオ残響音を生成する装置は、特開昭57−116500号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来装置では、右音源用の残響装置20Rと左音源用の残響装置20Lとが互いに独立しており、右音源用のサウンドシステム21Rからは右音源の楽音とその残響音が発音され、左音源用のサウンドシステム21Lからは左音源の楽音とその残響音が発音される。このため、右音源の残響音は右に偏り、左音源の残響音は左に偏って、左右の広がり感が十分に得られない。
【0004】
例えばピアノを弾く場合に、低音(高音)は奏者の左方向(右方向)から発音されるから、直接音は奏者の左耳(右耳)に大きなレベルで到達する。また、この低音の残響音は奏者の周囲の壁に複雑に反射して左右の耳へ到達する。すなわち、奏者の左方(右方)の壁に反射した楽音の一部は奏者の左耳(右耳)に到達し、他の一部は奏者の右方(左方)の壁へ到達してさらに反射されて奏者の右耳(左耳)に到達する。
【0005】
ところが、上記従来装置では右音源用の残響装置20Rによって生成される残響音と、左音源用の残響装置20Lで生成される残響音とは互いに独立している。このため、上記従来装置では、右音源の残響音が奏者の右側において複数回反射する残響音と、左音源の残響音が奏者の左方において複数回反射する残響音が生成されるに過ぎない。すなわち、上記のように奏者の左方(右方)の壁に反射されて右方(左方)の壁へ至り、さらに反射されて奏者の右耳(左耳)に到達するような反射音を作り出すことができない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、音像を形成するための処理が施された複数の楽音データを複数の楽音合成手段によって合成し、それぞれの楽音合成手段から出力された合成楽音データに残響音を付加するようにしたものである。また、上記複数の楽音データとして、各楽音データ独自の初期反射音が付加された楽音データと、他の楽音データに与える初期反射音が付加された楽音データが生成されても良い。
【0007】
【作用】
例えば、ステレオサウンドシステムにおいて、右音源用のサウンドシステムから左音源の残響音が遅延されて発音され、左音源用のサウンドシステムから右音源の残響音が遅延されて発音される。これにより、残響音の広がり感が向上し、より自然音に近い残響効果を得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
1.全体回路
図1は左右2チャンネルのステレオサウンドを発音する電子楽器の全体回路を示す。キーボード1の各キーは、楽音の発音/消音の操作を行うものであり、キーボードスキャン回路2によってスキャンされ、キー操作、すなわちキーオン、キーオフを示すデータが検出され、CPU5によってRAM6に書き込まれる。そして、それまでRAM6に記憶されていた各キーのオン、オフの状態を示すデータと比較され、各キーのオンイベント、オフイベントの判別が、CPU5によって行われる。これにより、オン/オフに係るキーのポジションが検出される。また、スキャンは周期的に行われるので、キーのオン/オフのタイミングも検出される。なお、上記キーボード1は、電子弦楽器、電子管(リード)楽器、電子打(パッド)楽器、コンピュータのキーボード等で代用される。このキーボード1とキーボードスキャン回路2では、キーオン、キーオフ、音高の検出のほか、打鍵の遅速または強弱(タッチ)が検出されてタッチデータとしてCPU5へ送られる。
【0009】
パネルスイッチ群3の各スイッチは、パネルスキャン回路4によってスキャンされる。このスキャンにより、各スイッチのオン、オフを示すデータが検出され、CPU5によってRAM6に書き込まれる。そして、それまでRAM6に記憶されていた各スイッチのオン、オフの状態を示すデータと比較され、各スイッチのオンイベント、オフイベントの判別が、CPU5によって行われる。
【0010】
上記キーオン、キーオフ、オンイベント、オフイベント、各スイッチのオンイベント、オフイベントのデータは、MIDI(ミュージカル・インスツルメント・デジタル・インターフェイス)回路(図示略)を介して、他の処理装置(電子楽器)からも発生され受け取られ、または他の処理装置(電子楽器)へも発生され送られる。
【0011】
上記パネルスイッチ群3の各スイッチのオン/オフに応じた楽音制御信号と、上記キーボード1の各キーのオン/オフに応じた楽音データは、楽音発生システム8へ送られる。この楽音発生システム8では、楽音データに応じた楽音波形データを生成して、この楽音波形データから右音源の楽音波形データと左音源の楽音波形データを発生させる。さらに、右音源の楽音波形データと左音源の楽音波形データに初期反射音データを付加して、複数の楽音波形データを生成する。
【0012】
楽音発生システム8によって生成された複数の楽音波形データは、右音源用の残響装置10Rと左音源用の残響装置10Lへ送られる。そして、右音源用の残響装置10Rへ送られた複数の楽音波形データは、残響装置10R内において合成された後、残響音が付加されて右音源用のサウンドシステム11Rへ送られる。また、左音源用の残響装置10Lへ送られた複数の楽音波形データは、残響装置10L内において合成された後、残響音が付加されて左音源用のサウンドシステム11Lへ送られる。サウンドシステム11R、11Lは、D−A変換器で楽音の波形データをアナログ信号に変換し、増幅器で増幅したのちスピーカから可聴音として楽音を発音する。
【0013】
2.データテーブル16(ROM7)
ROM7内には図2に示すようなディレイタイムデータDT1〜DT6と減衰率データA〜Fのデータテーブル16が記憶されている。これらのデータは、音楽的ファクタ毎、及び発音開始からの経過時間毎、エンベロープレベルまたはエンベロープフェーズ毎に多層的に記憶されている。また、0<A、B、C、D、E、F<1である。なお、減衰率は入力レベルに対する出力レベルの変化率でも良い。これら各データDT1〜6、A〜Fの各値は何れかが同じであっても良いし、全て異なっていても良い。
【0014】
上記発音経過時間は音長を表し、発音開始(キーオン)からの経過時間、エンベロープ等である。音楽的ファクタは、音高的ファクタ、音色的ファクタ、タッチ的ファクタ、パート的ファクタ、エフェクト的ファクタ、リズム的ファクタ、クオンタイズ情報、音像情報(ステレオ的ファクタ)、変調情報、テンポ情報、音量情報、フォルマント情報、またはエンベロープ情報(エンベロープレベル)等である。
【0015】
上記音高的ファクタは、例えば音高、音域等である。上記音色的ファクタは、例えば楽器(ピアノ、バイオリン、フルート、ドラム等)の種類、高調波成分、ノイズ成分、楽音波形の形状(正弦波、三角波、鋸波、またはピアノの楽音波形やフルートの楽音波形等の楽器の種類に応じた楽音波形等)等である。上記タッチ的ファクタは、例えばキー操作の速さまたは強さ、イニシャルタッチ、アフタータッチ、ベロシティ等である。上記パート的ファクタは、具体的には、メロディ、伴奏、コード、ベース等の演奏パート、楽器の種類等の楽器的ファクタに応じた楽音パート、ピアノの上鍵盤、下鍵盤、足鍵盤のように楽器の部分に応じた楽器パートである。また、上記音像情報(ステレオ的ファクタ)は、音像ポジションを決めるデータであって、例えば各チャンネルの楽音のレベルを設定するレベル設定データ、各チャンネルの楽音の位相を設定する位相設定データであって、これらのデータによって音像の位置(方向)、大きさ等が設定される。
【0016】
3.データテーブル17(ROM7)
また、ROM7内には、音像形成データのデータテーブル17が記憶されている。この音像形成データは、例えば図3に示すように、左右の音源の楽音波形データの減衰比と音像ポジションとを対応させるデータである。左右の音源の楽音波形データの減衰比は(右音源の楽音波形データの減衰率)/(左音源の楽音波形データの減衰率)である。この減衰比が「1」のときには音像ポジションは中央にあり、1より大きいときには音像ポジションが右方へ移動し、1より小さいときには音像ポジションが左方へ移動する。
【0017】
減衰比と音像ポジションとの関係は種々設定可能である。例えば、図3に実線で示された曲線P1のような特性の場合には、減衰比の変化に対して音像ポジションの変化は緩やかである。また、図3に破線で示された折れ線P2のような特性の場合には、減衰比が一定以上または一定以下になると音像ポジションの移動が緩やかになる。また、図3に一点鎖線で示された直線P3のような特性であれば、減衰比の変化に比例して音像ポジションが左右に移動する。
【0018】
さらに、音像形成データは、図4に示すように、左右の音源の楽音波形データの遅延比と音像ポジションとを対応させるデータでも良い。左右の音源の楽音波形データの遅延比は(左音源の楽音波形データの遅延率)/(右音源の楽音波形データの遅延率)である。この遅延比が「1」のときには音像ポジションは中央にあり、1より大きいときには音像ポジションが右方へ移動し、1より小さいときには音像ポジションが左方へ移動する。
【0019】
遅延比と音像ポジションとの関係は種々設定可能である。例えば、図4に実線で示された曲線P4のような特性の場合には、遅延比の変化に対して音像ポジションの変化は緩やかである。また、図4に破線で示された折れ線P5のような特性の場合には、遅延比が一定値以上または一定値以下になると音像ポジションの移動が緩やかになる。また、図4に一点鎖線で示された直線P6のような特性であれば、遅延比の変化に比例して音像ポジションが左右に移動する。
【0020】
この図3及び図4では、音像が中央のとき、左右の減衰比と遅延比は同じである。音像が左へ寄ると左音源の減衰率は右音源の減衰率より大きくなり、音像が右へ寄ると左音源の減衰率は右音源の減衰率より小さくなる。また、音像が左へ寄ると左音源の遅延率は右音源の遅延率より小さくなり、音像が右へ寄ると左音源の遅延率は右音源の遅延率より大きくなる。なお、この減衰率(減衰量)及び遅延率(遅延量)の変化は、上記の変化とは逆にしても良い。
【0021】
3.第1実施例の楽音発生システム8
図5は楽音発生システム8と残響装置10R、10Lを示す。楽音発生システム8は、トーンジェネレータ12と、パンポット回路13と、右音源用の初期反射音付加回路14Rと、左音源用の初期反射音付加回路14Lとを備えている。前述のように、トーンジェネレータ12へは、上記パネルスイッチ群3の各スイッチのオン/オフに応じた楽音制御信号と、上記キーボード1の各キーのオン/オフに応じた楽音データが入力される。
【0022】
トーンジェネレータ12には、複数チャンネル分、例えば32チャンネル分の楽音生成系が時分割処理により生成されており、楽音をポリフォニックに発音させることができる。上記32チャンネルの楽音生成系は、キーボード1の1つのオンキーに対して2チャンネルずつ割り当てられる。この2チャンネルはステレオ楽音を実現するためのものであり、この2チャンネルのうち一方のチャンネルに右音源の楽音データが割り当てられ、他方のチャンネルに左音源の楽音データが割り当てられる。
【0023】
これら各チャンネルに割り当てられた各楽音の楽音データに応じて生成された各楽音波形データは、右音源の楽音波形データと左音源の楽音波形データとに分けられ、左右の楽音波形データSが、それぞれパンポット回路13へ送られる。トーンジェネレータ12で生成された楽音の波形データは、自然音における直接音に相当する楽音の波形データである。パンポット回路13からは右音源の楽音波形データSRと左音源の楽音波形データSLとが区別されて出力される。パンポット回路13では、右音源と左音源の楽音波形データのレベル制御(音量制御)または位相制御が行われ、ステレオ楽音化が行われる。そして、右音源の楽音波形データSRは右音源用の初期反射音付加回路14Rへ送られ、左音源の楽音波形データSLは左音源用の初期反射音付加回路14Lへ送られる。
【0024】
右音源用の初期反射音付加回路14Rは、2つのディレイ回路30、31と2つのクロックジェネレータ40、41とレジスタ44を備えている。同様に、左音源用の初期反射音付加回路14Rは、2つのディレイ回路32、33と2つのクロックジェネレータ42、43とレジスタ45を備えている。上記ディレイ回路30〜33は、例えばCCD(Charge Coupled device)またはBBD(Bucket Brigade Device)で構成されている。
【0025】
CPU5によってROM7のデータテーブル16からディレイタイムデータDT1、DT2と減衰率データA、Bが読み出されて、右音源用の初期反射音付加回路14Rへ送られる。また、CPU5によってROM7のデータテーブル16からディレイタイムデータDT3、DT4と減衰率データC、Dが読み出されて、左音源用の初期反射音付加回路14Lへ送られる。これらのディレイタイムデータと減衰率データは、発音経過時間と音楽的ファクタに応じてROM7から読み出される。音楽的ファクタ中の音像情報に応じたディレイタイムデータと減衰率データが読み出されるときには、上記データテーブル17の音像形成データに応じてディレイタイムデータと減衰率データが読み出される。
【0026】
クロックジェネレータ40〜43はプログラマブル・クロックジェネレータである。CPU5によってROM7から読み出されたディレイタイムデータDT1、DT2、DT3、DT4がプログラムデータとして入力され、これによってクロックジェネレータ40〜43からはディレイタイムデータDT1、DT2、DT3、DT4に応じた周期のクロック信号φ1、φ2、φ3、φ4が出力される。レジスタ44、45には、CPU5によってROM7のデータテーブル16から読み出された減衰率データA、B、C、Dが記憶され、これらの減衰率データは所定タイミングで乗算器34〜37へ送られる。
【0027】
右音源用の初期反射音付加回路14R内のディレイ回路30は、クロック信号φ1に同期して入力データを遅延させて出力する。このディレイ回路30の出力データには減衰率データAが乗じられ、右音源用の残響装置10Rへ送られる。また、ディレイ回路31は、クロック信号φ2に同期して入力データを遅延させて出力する。このディレイ回路31の出力データには減衰率データBが乗じられ、左音源用の残響装置10Rへ送られる。
【0028】
同様に、左音源用の初期反射音付加回路14L内のディレイ回路32は、クロック信号φ3に同期して入力データを遅延させて出力する。このディレイ回路32の出力データには減衰率データCが乗じられ、左音源用の残響装置10Lへ送られる。また、ディレイ回路33は、クロック信号φ4に同期して入力データを遅延させて出力する。このディレイ回路33の出力データには減衰率データDが乗じられ、右音源用の残響装置10Lへ送られる。
【0029】
4.第1実施例の残響装置10R、10L
右音源用の残響装置10Rは、加算器50、ディレイ回路52、クロックジェネレータ54及びレジスタ56を備えている。左音源用の残響装置10Lは、加算器50、ディレイ回路53、クロックジェネレータ55及びレジスタ57を備えている。ディレイ回路52、53は、例えばCCDまたはBBDで構成されている。CPU5によってROM7のデータテーブル16からディレイタイムデータDT5と減衰率データEが読み出されて、右音源用の残響装置10Rへ送られる。また、CPU5によってROM7のデータテーブル16からディレイタイムデータDT6と減衰率データFが読み出されて、左音源用の残響装置10Lへ送られる。
【0030】
これらのディレイタイムデータと減衰率データは、発音経過時間と音楽的ファクタに応じてROM7から読み出される。音楽的ファクタ中の音像情報に応じたディレイタイムデータと減衰率データが読み出されるときには、上記データテーブル17の音像形成データに応じてディレイタイムデータと減衰率データが読み出される。
【0031】
クロックジェネレータ54、55はプログラマブル・クロックジェネレータである。CPU5によってROM7から読み出されたディレイタイムデータDT5、DT6がプログラムデータとして入力され、これによってクロックジェネレータ54、55からはディレイタイムデータDT5、DT6に応じた周期のクロック信号φ5、φ6が出力される。レジスタ56、57には、CPU5によってROM7のデータテーブル16から読み出された減衰率データE、Fが記憶され、これらの減衰率データは所定タイミングで乗算器38、39へ送られる。
【0032】
右音源用の残響装置10R内の加算器50は、右音源用の初期反射音付加回路14Rからの楽音波形データSRAと、左音源用の初期反射音付加回路14Lからの楽音波形データSLCとを合成してディレイ回路52へ送る。ディレイ回路52は、クロック信号φ5に同期して入力データを遅延させてフィードバックを行う。フィードバックループには乗算器38が介在されており、フィードバックデータに減衰率Eが乗じられ、加算器50によって入力データに加算される。
【0033】
同様に、左音源用の残響装置10L内の加算器51は、右音源用の初期反射音付加回路14Rからの楽音波形データSRBと、左音源用の初期反射音付加回路14Lからの楽音波形データSLDとを合成してディレイ回路53へ送る。ディレイ回路53は、クロック信号φ6に同期して入力データを遅延させてフィードバックを行う。フィードバックループには乗算器39が介在されており、フィードバックデータに減衰率Fが乗じられ、加算器51によって入力データに加算される。
【0034】
5.発音動作
キーボード1のキーが打鍵されると、キーボードスキャン回路2から打鍵されたキーのオンイベント信号がCPU5へ送られる。CPU5は、キーオンイベントがあったキーのキーナンバデータとパネルスキャン回路4から送られるスイッチのオン/オフデータや数値データに応じた楽音制御データをRAM6から読み出してトーンジェネレータ12へ送る。トーンジェネレータ12は、パネルスイッチ群3において設定された音楽的ファクタ及びキーナンバデータに応じた基本楽音波形データをRAM6から読み出す。そして、この基本楽音波形データにエンベロープを付加したり、楽音制御データに応じた変調を行って波形を整形する等の信号処理を行う。これにより、自然音における直接音に相当する楽音の左右の音源の楽音波形データ、すなわち上記直接音データSが生成される。この直接音データSはパンポット回路13へ送られる。
【0035】
パンポット回路13では、パネルスイッチ群3において設定されたまたは自動演奏データ内の音像位置データに応じて、左右の音源の楽音波形データのレベル制御または位相制御が行われる。パンポット回路13によって生成された右音源の楽音波形データSRは右音源用の初期反射音付加回路14Rへ送られ、左音源の楽音波形データSLは左音源用の初期反射音付加回路14Lへ送られる。これらステレオシステムのレベル制御または位相制御は特願平3−204404号の明細書及び図面が参照される。
【0036】
右音源用の初期反射音付加回路14Rでは、2つのディレイ回路30、31によって右音源の楽音波形データSRを、異なるディレイタイムDT1、DT2で遅延させ、さらに異なる減衰率A、Bで減衰させる。そして、一方の出力データSRAは右音源用の残響装置10Rへ送られ、他方の出力データSRBは左音源用の残響装置10Lへ送られる。
【0037】
また、左音源用の初期反射音付加回路14Lでは、2つのディレイ回路32、33によって左音源の楽音波形データSLを、異なるディレイタイムDT3、DT4で遅延させ、さらに異なる減衰率C、Dで減衰させる。そして、一方の出力データSLCは右音源用の残響装置10Rへ送られ、他方の出力データSLDは左音源用の残響装置10Lへ送られる。
【0038】
右音源用の残響装置10Rでは、加算器50によって楽音波形データSRAとSLCが合成され、この合成された楽音波形データがディレイ回路52によってディレイタイムDT5毎に繰り返し遅延され、減衰される。また、左音源用の残響装置10Lでは、加算器51によって楽音波形データSLDとSRBが合成され、この合成された楽音波形データがディレイ回路53によってディレイタイムDT6毎に繰り返し遅延され、減衰される。そして、右音源用の残響装置10Rからの出力データSSAは右音源用のサウンドシステム11Rへ送られ、左音源用の残響装置10Lからの出力データSSBは左音源用のサウンドシステム11Lへ送られる。
【0039】
上記楽音波形データSRAは右音源の楽音が演奏者または聴者の右方で反射された初期反射音に相当し、上記楽音波形データSRBは右音源の楽音が演奏者または聴者の左方で反射された初期反射音に相当する。また、上記楽音波形データSLCは左音源の楽音が演奏者または聴者の左方で反射された初期反射音に相当し、上記楽音波形データSLDは左音源の楽音が演奏者または聴者の右方で反射された初期反射音に相当する。そして、上記楽音波形データSSAは右音源と左音源が演奏者または聴者の右方で反射された初期反射音が、演奏者または聴者の右方で何度も反射されて右耳に到達する残響音に相当する。また、上記楽音波形データSSBは右音源と左音源が演奏者または聴者の左方で反射された初期反射音が、演奏者または聴者の左方で何度も反射されて左耳に到達する残響音に相当する。
【0040】
このように本実施例では、右音源の初期反射音成分を左音源用の残響装置10Lへ送って左音源の残響音を生成し、左音源の初期反射音成分を右音源用の残響装置10Rへ送って、右音源の残響音を生成する。これによって、本実施例では、演奏者または聴者の右側で発音された右音源の楽音と演奏者または聴者の左側で発音された左音源の楽音とが、左右の壁で反射してできる初期反射音、及びこの初期反射音がさらに左右の壁で複雑に反射してできる後期残響音が生成され、残響効果の左右の広がり感を高めることができる。また、ディレイタイムDT1〜DT6、及び減衰率A〜Fが変えられることによって、左右の広がり感および音像位置を細かく変えることができる。
【0041】
6.第2実施例の楽音発生システム8と残響装置10R、10L
図6に示すように、第2実施例の楽音発生システム8では、第1実施例におけるディレイ回路31、32と、クロックジェネレータ41、42が省略されている。また、本実施例の残響装置10R、10Lでは、第1実施例におけるフィードバックループが省略され、乗算器38、39と、レジスタ56、57が省略されている。この他の構成部分は第1実施例と同じである。
【0042】
本実施例では、右音源用の初期反射音付加回路14Rによって付加される初期反射音成分は、一つのディレイ回路30による遅延処理によって生成される。同様に、左音源用の初期反射音付加回路14Lによって付加される初期反射音成分は、一つのディレイ回路33による遅延処理によって生成される。そして、左右の残響装置10R、10Lでは、フィードバックが行われず、入力データには一回の遅延処理によって生成される残響音が付加される。
【0043】
従って、本実施例では第1実施例よりも左右の広がり感の可変範囲が限定されるが、遅延処理量が減少するので、コスト減少が可能になる。なお、左右の残響装置10R、10Lは第1実施例と同様にフィードバック式のディレイ回路としても良い。
【0044】
7.第3実施例の楽音発生回路路8と残響装置10R、10L
図7に示すように、第3実施例の楽音発生システム8では、第2実施例におけるディレイ回路30、33と、クロックジェネレータ40、43が省略されている。また、トーンジェネレータ12とパンポット回路13の間にディレイ回路60が挿入されている。この他の構成部分は第2実施例と同じである。ディレイ回路60は、例えばCCDまたはBBDで構成されている。
【0045】
本実施例では、第2実施例では左右別々に行われている遅延処理がパンポット回路13の前で行われることによって、初期反射音付加処理が左右の音源の楽音波形データSについて同じ条件で行われる。従って、遅延処理量が減少するので、コスト減少が可能になる。なお、左右の残響装置10R、10Lは第1実施例と同様にフィードバック式のディレイ回路としても良い。
【0046】
8.変形例
なお、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、残響音には、後期残響音のほかに、初期反射音が含まれる。また、本発明がステレオシステムに適用される場合には、ステレオチャンネル数は左右の2チャンネルに限られず、左右上下前後等の3チャンネル以上であっても良い。また、本発明はモノラルシステムにも適用できる。また、遅延時間を決定するためのクロックジェネレータ40〜43、54、55は、左右の初期反射音付加回路14R、14Lまたは残響装置10R、10Lについて共通のものとしても良い。同様に、減衰率データを供給するためのレジスタ44、45、56、57も、左右の初期反射音付加回路14R、14Lまたは残響装置10R、10Lについて共通のものとしても良い。
【0047】
また、上記実施例では楽音波形データSRAとSLC、楽音波形データSRBとSLDの合成が加算器50、51によって行われているが、他の合成手段、例えば、加算以外の演算または混合等によって行われても良い。さらに、上記ディレイタイムDT1〜DT6は互いに異なっていても良いし、一部または全部が等しくても良い。
【0048】
また、上記ディレイタイムDT1〜DT6、または減衰率A〜Fの値を可変としても良い。例えばパネルスイッチ群3にツマミ、スイッチ、ベンダー、テンキー等のエフェクト量の設定手段が設けられ、この設定手段がマニュアル操作されることによって入力されたエフェクト量に応じてディレイタイムDT1〜DT6及び減衰率A〜Fの値が可変設定される。また、上記楽音発生システム8または残響装置10R、10Lは、DSP(Digital Signal Processor)またはマイクロコンピュータLSIに置き換えられても良く、上記の動作をソフトウェアによる処理によって行っても良い。
なお、出願当初の特許請求の範囲は以下の通りであった。
[1]楽音データを発生する少なくとも1つの楽音発生手段と、 この楽音発生手段から発生された楽音データにつき音像を形成するための音像形成データを発生する音像形成データ発生手段と、 この音像形成データ発生手段から発生された音像形成データに基づいて、上記楽音発生手段から発生された楽音データに対して音像を形成する制御を行って、複数の楽音データを発生する音像制御手段と、 この音像制御手段から発生された複数の楽音データを合成する複数の楽音合成手段と、 この複数の楽音合成手段それぞれから出力された合成楽音データに残響音を付加する残響音付加手段とを備えたことを特徴とする楽音制御装置。
[2]上記楽音発生手段は、楽音データを発生するとともに、発生された楽音データに反射音を付加し、この楽音発生手段は、入力される楽音データを1回または繰り返し遅延させて反射音を生成し、これにより上記楽音制御装置は反射音生成機能を有することを特徴とする請求項1記載の楽音制御装置。
[3]上記残響音付加手段は、入力される楽音データを1回または繰り返し遅延させて残響音を生成し、これにより上記楽音制御装置は残響音生成機能を有することを特徴とする請求項1または2記載の楽音制御装置。
[4]上記音像制御手段から発生された複数の楽音データそれぞれは、上記楽音発生手段において、異なる反射音が付加されまたは異なる反射音付加処理が行われていることを特徴とする請求項1、2または3記載の楽音制御装置。
[5]上記音像制御手段から発生された複数の楽音データそれぞれは、上記残響音付加手段において、異なる残響音が付加されまたは異なる残響音付加処理が行われていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の楽音制御装置。
[6]上記異なる反射音の付加または異なる反射音付加処理は、反射音の遅延における、遅延される楽音データの減衰率または遅延率が異なっていることを特徴とする請求項4記載の楽音制御装置。
[7]上記異なる残響音の付加または異なる残響音付加処理は、残響音の遅延における、遅延される楽音データの減衰率または遅延率が異なっていることを特徴とする請求項5記載の楽音制御装置。
[8]上記楽音発生手段における反射音付加の遅延内容、または上記残響音付加手段における遅延内容における、遅延される楽音データの減衰率または遅延率は、音高的ファクタ、音色的ファクタ、タッチ的ファクタ、音長的ファクタ、ステレオ的ファクタまたは設定エフェクト量に応じて変更され異なっていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の楽音制御装置。
[9]ステレオサウンドを作るための複数チャンネルの音源の楽音波形データを発生する楽音波形データ発生手段と、 この楽音波形データ発生手段から発生された各チャンネルの音源の楽音波形データを遅延させて各チャンネル毎の初期反射音データを付加する第1の初期反射音付加手段と、 前記楽音波形データ発生手段から発生された楽音波形データまたは前記第1の初期反射音付加手段から発生された楽音波形データについて、手動入力または音楽的ファクタに応じた音像を形成するための音像形成データを発生する音像形成データ発生手段と、 この音像形成データ発生手段から発生された音像形成データに基づいて、上記楽音発生手段から発生された楽音波形データに対して音像を形成する制御を行って、複数チャンネルの楽音波形データを発生する音像制御手段と、 この音像制御手段から発生された複数チャンネルの楽音波形データを、そのままのレベルで、または一回だけ減衰させて、あるいは繰り返し減衰させて、各チャンネル毎の初期反射音データおよび他のチャンネルに与えるための初期反射音データを付加する第2の初期反射音付加手段と、 この音像制御手段から発生された複数チャンネルの楽音波形データを、一回または繰り返し遅延させて、さらに、そのままのレベルで、または一回だけ減衰させて、あるいは繰り返し減衰させて、各チャンネル毎の初期反射音データおよび他のチャンネルに与えるための初期反射音データを付加する第3の初期反射音付加手段と、 各チャンネル毎に一つずつ設けられ、前記第2または第3の初期反射音付加手段によって初期反射音データが付加された複数チャンネルの楽音波形データについて、各チャンネル毎の初期反射音データが付加された楽音波形データのうちの一つのチャンネルの楽音波形データと、前記他のチャンネルに与えるための初期反射音データが付加された楽音波形データのうち当該チャンネルに与えるための初期反射音データが付加された楽音波形データとを合成する複数の楽音合成手段と、 この複数の楽音合成手段それぞれから出力された合成楽音波形データを、一回だけ遅延させ、またはフィードバックを行って繰り返し遅延させ、さらに、そのままのレベルで、または一回だけ減衰させて、あるいはフィードバックを行って繰り返し遅延させて、前記合成楽音波形データに残響音を付加し、チャンネル毎に別々に設けられたサウンドシステムへ送る複数の残響音付加手段と、 上記ステレオの各チャンネルの間に形成される音像がシフトすると、このシフトによって音像が近付いたチャンネルの楽音波形データの上記減衰量がより大きくなり、または上記遅延量がより小さくなる減衰量・遅延量制御手段とを備えたことを特徴とする楽音制御装置。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、音像を形成するための処理が施された複数の楽音データを複数の楽音合成手段によって合成し、それぞれの楽音合成手段から出力された合成楽音データに残響音を付加するようにしたものである。これによって、例えば、ステレオサウンドシステムにおいて、右音源用のサウンドシステムから左音源の残響音が遅延されて発音され、左音源用のサウンドシステムから右音源の残響音が遅延されて発音される。従って、演奏者または聴者の右側で発音された右音源の楽音と演奏者または聴者の左側で発音された左音源の楽音とが、左右の壁で反射してできる初期反射音、及びこの初期反射音がさらに左右の壁で複雑に反射してできる後期残響音が生成され、残響効果の左右の広がり感を高めることができ、より自然に近い残響効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電子楽器の全体回路を示す図である。
【図2】ROM7内のディレイタイムデータと減衰率データを記憶したデータテーブル16を示す図である。
【図3】ROM7内のデータテーブル17に記憶されている音像形成データを示す図である。
【図4】ROM7のデータテーブル17に記憶されている音像形成データの他の例を示す図である。
【図5】第1実施例における楽音発生システム8と残響装置10R、10Lのブロック図である。
【図6】第2実施例における楽音発生システム8と残響装置10R、10Lのブロック図である。
【図7】第3実施例における楽音発生システム8と残響装置10R、10Lのブロック図である。
【図8】従来装置における残響音形成回路のブロック図である。
【符号の説明】
1…キーボード、3…パネルスイッチ群、5…CPU、6…RAM、7…ROM、8…楽音発生システム、10R、10L…残響装置、11R、11L…サウンドシステム、12…トーンジェネレータ、13…パンポット回路、14R、14L…初期反射音付加回路、30〜33、52、53、60…ディレイ回路、40〜43、54、55…クロックジェネレータ、44、45、56、57…レジスタ、34〜39…乗算器、50、51…加算器。
【発明の属する技術分野】
この発明は、広がり感のある残響音を生成する楽音制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の2チャンネルのステレオサウンドシステムにおいては、音像を形成するために右音源の楽音波形データSRと左音源の楽音波形データが生成される。そして、図8に示すように右音源の楽音波形データSRは、右音源用の残響装置20Rによって残響音データが付加され、右音源用のサウンドシステム21Rへ送られる。また、左音源の楽音波形データSLは、左音源用の残響装置20Lによって残響音データが付加され、左音源用のサウンドシステム21Lへ送られる。このようなステレオ残響音を生成する装置は、特開昭57−116500号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来装置では、右音源用の残響装置20Rと左音源用の残響装置20Lとが互いに独立しており、右音源用のサウンドシステム21Rからは右音源の楽音とその残響音が発音され、左音源用のサウンドシステム21Lからは左音源の楽音とその残響音が発音される。このため、右音源の残響音は右に偏り、左音源の残響音は左に偏って、左右の広がり感が十分に得られない。
【0004】
例えばピアノを弾く場合に、低音(高音)は奏者の左方向(右方向)から発音されるから、直接音は奏者の左耳(右耳)に大きなレベルで到達する。また、この低音の残響音は奏者の周囲の壁に複雑に反射して左右の耳へ到達する。すなわち、奏者の左方(右方)の壁に反射した楽音の一部は奏者の左耳(右耳)に到達し、他の一部は奏者の右方(左方)の壁へ到達してさらに反射されて奏者の右耳(左耳)に到達する。
【0005】
ところが、上記従来装置では右音源用の残響装置20Rによって生成される残響音と、左音源用の残響装置20Lで生成される残響音とは互いに独立している。このため、上記従来装置では、右音源の残響音が奏者の右側において複数回反射する残響音と、左音源の残響音が奏者の左方において複数回反射する残響音が生成されるに過ぎない。すなわち、上記のように奏者の左方(右方)の壁に反射されて右方(左方)の壁へ至り、さらに反射されて奏者の右耳(左耳)に到達するような反射音を作り出すことができない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、音像を形成するための処理が施された複数の楽音データを複数の楽音合成手段によって合成し、それぞれの楽音合成手段から出力された合成楽音データに残響音を付加するようにしたものである。また、上記複数の楽音データとして、各楽音データ独自の初期反射音が付加された楽音データと、他の楽音データに与える初期反射音が付加された楽音データが生成されても良い。
【0007】
【作用】
例えば、ステレオサウンドシステムにおいて、右音源用のサウンドシステムから左音源の残響音が遅延されて発音され、左音源用のサウンドシステムから右音源の残響音が遅延されて発音される。これにより、残響音の広がり感が向上し、より自然音に近い残響効果を得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
1.全体回路
図1は左右2チャンネルのステレオサウンドを発音する電子楽器の全体回路を示す。キーボード1の各キーは、楽音の発音/消音の操作を行うものであり、キーボードスキャン回路2によってスキャンされ、キー操作、すなわちキーオン、キーオフを示すデータが検出され、CPU5によってRAM6に書き込まれる。そして、それまでRAM6に記憶されていた各キーのオン、オフの状態を示すデータと比較され、各キーのオンイベント、オフイベントの判別が、CPU5によって行われる。これにより、オン/オフに係るキーのポジションが検出される。また、スキャンは周期的に行われるので、キーのオン/オフのタイミングも検出される。なお、上記キーボード1は、電子弦楽器、電子管(リード)楽器、電子打(パッド)楽器、コンピュータのキーボード等で代用される。このキーボード1とキーボードスキャン回路2では、キーオン、キーオフ、音高の検出のほか、打鍵の遅速または強弱(タッチ)が検出されてタッチデータとしてCPU5へ送られる。
【0009】
パネルスイッチ群3の各スイッチは、パネルスキャン回路4によってスキャンされる。このスキャンにより、各スイッチのオン、オフを示すデータが検出され、CPU5によってRAM6に書き込まれる。そして、それまでRAM6に記憶されていた各スイッチのオン、オフの状態を示すデータと比較され、各スイッチのオンイベント、オフイベントの判別が、CPU5によって行われる。
【0010】
上記キーオン、キーオフ、オンイベント、オフイベント、各スイッチのオンイベント、オフイベントのデータは、MIDI(ミュージカル・インスツルメント・デジタル・インターフェイス)回路(図示略)を介して、他の処理装置(電子楽器)からも発生され受け取られ、または他の処理装置(電子楽器)へも発生され送られる。
【0011】
上記パネルスイッチ群3の各スイッチのオン/オフに応じた楽音制御信号と、上記キーボード1の各キーのオン/オフに応じた楽音データは、楽音発生システム8へ送られる。この楽音発生システム8では、楽音データに応じた楽音波形データを生成して、この楽音波形データから右音源の楽音波形データと左音源の楽音波形データを発生させる。さらに、右音源の楽音波形データと左音源の楽音波形データに初期反射音データを付加して、複数の楽音波形データを生成する。
【0012】
楽音発生システム8によって生成された複数の楽音波形データは、右音源用の残響装置10Rと左音源用の残響装置10Lへ送られる。そして、右音源用の残響装置10Rへ送られた複数の楽音波形データは、残響装置10R内において合成された後、残響音が付加されて右音源用のサウンドシステム11Rへ送られる。また、左音源用の残響装置10Lへ送られた複数の楽音波形データは、残響装置10L内において合成された後、残響音が付加されて左音源用のサウンドシステム11Lへ送られる。サウンドシステム11R、11Lは、D−A変換器で楽音の波形データをアナログ信号に変換し、増幅器で増幅したのちスピーカから可聴音として楽音を発音する。
【0013】
2.データテーブル16(ROM7)
ROM7内には図2に示すようなディレイタイムデータDT1〜DT6と減衰率データA〜Fのデータテーブル16が記憶されている。これらのデータは、音楽的ファクタ毎、及び発音開始からの経過時間毎、エンベロープレベルまたはエンベロープフェーズ毎に多層的に記憶されている。また、0<A、B、C、D、E、F<1である。なお、減衰率は入力レベルに対する出力レベルの変化率でも良い。これら各データDT1〜6、A〜Fの各値は何れかが同じであっても良いし、全て異なっていても良い。
【0014】
上記発音経過時間は音長を表し、発音開始(キーオン)からの経過時間、エンベロープ等である。音楽的ファクタは、音高的ファクタ、音色的ファクタ、タッチ的ファクタ、パート的ファクタ、エフェクト的ファクタ、リズム的ファクタ、クオンタイズ情報、音像情報(ステレオ的ファクタ)、変調情報、テンポ情報、音量情報、フォルマント情報、またはエンベロープ情報(エンベロープレベル)等である。
【0015】
上記音高的ファクタは、例えば音高、音域等である。上記音色的ファクタは、例えば楽器(ピアノ、バイオリン、フルート、ドラム等)の種類、高調波成分、ノイズ成分、楽音波形の形状(正弦波、三角波、鋸波、またはピアノの楽音波形やフルートの楽音波形等の楽器の種類に応じた楽音波形等)等である。上記タッチ的ファクタは、例えばキー操作の速さまたは強さ、イニシャルタッチ、アフタータッチ、ベロシティ等である。上記パート的ファクタは、具体的には、メロディ、伴奏、コード、ベース等の演奏パート、楽器の種類等の楽器的ファクタに応じた楽音パート、ピアノの上鍵盤、下鍵盤、足鍵盤のように楽器の部分に応じた楽器パートである。また、上記音像情報(ステレオ的ファクタ)は、音像ポジションを決めるデータであって、例えば各チャンネルの楽音のレベルを設定するレベル設定データ、各チャンネルの楽音の位相を設定する位相設定データであって、これらのデータによって音像の位置(方向)、大きさ等が設定される。
【0016】
3.データテーブル17(ROM7)
また、ROM7内には、音像形成データのデータテーブル17が記憶されている。この音像形成データは、例えば図3に示すように、左右の音源の楽音波形データの減衰比と音像ポジションとを対応させるデータである。左右の音源の楽音波形データの減衰比は(右音源の楽音波形データの減衰率)/(左音源の楽音波形データの減衰率)である。この減衰比が「1」のときには音像ポジションは中央にあり、1より大きいときには音像ポジションが右方へ移動し、1より小さいときには音像ポジションが左方へ移動する。
【0017】
減衰比と音像ポジションとの関係は種々設定可能である。例えば、図3に実線で示された曲線P1のような特性の場合には、減衰比の変化に対して音像ポジションの変化は緩やかである。また、図3に破線で示された折れ線P2のような特性の場合には、減衰比が一定以上または一定以下になると音像ポジションの移動が緩やかになる。また、図3に一点鎖線で示された直線P3のような特性であれば、減衰比の変化に比例して音像ポジションが左右に移動する。
【0018】
さらに、音像形成データは、図4に示すように、左右の音源の楽音波形データの遅延比と音像ポジションとを対応させるデータでも良い。左右の音源の楽音波形データの遅延比は(左音源の楽音波形データの遅延率)/(右音源の楽音波形データの遅延率)である。この遅延比が「1」のときには音像ポジションは中央にあり、1より大きいときには音像ポジションが右方へ移動し、1より小さいときには音像ポジションが左方へ移動する。
【0019】
遅延比と音像ポジションとの関係は種々設定可能である。例えば、図4に実線で示された曲線P4のような特性の場合には、遅延比の変化に対して音像ポジションの変化は緩やかである。また、図4に破線で示された折れ線P5のような特性の場合には、遅延比が一定値以上または一定値以下になると音像ポジションの移動が緩やかになる。また、図4に一点鎖線で示された直線P6のような特性であれば、遅延比の変化に比例して音像ポジションが左右に移動する。
【0020】
この図3及び図4では、音像が中央のとき、左右の減衰比と遅延比は同じである。音像が左へ寄ると左音源の減衰率は右音源の減衰率より大きくなり、音像が右へ寄ると左音源の減衰率は右音源の減衰率より小さくなる。また、音像が左へ寄ると左音源の遅延率は右音源の遅延率より小さくなり、音像が右へ寄ると左音源の遅延率は右音源の遅延率より大きくなる。なお、この減衰率(減衰量)及び遅延率(遅延量)の変化は、上記の変化とは逆にしても良い。
【0021】
3.第1実施例の楽音発生システム8
図5は楽音発生システム8と残響装置10R、10Lを示す。楽音発生システム8は、トーンジェネレータ12と、パンポット回路13と、右音源用の初期反射音付加回路14Rと、左音源用の初期反射音付加回路14Lとを備えている。前述のように、トーンジェネレータ12へは、上記パネルスイッチ群3の各スイッチのオン/オフに応じた楽音制御信号と、上記キーボード1の各キーのオン/オフに応じた楽音データが入力される。
【0022】
トーンジェネレータ12には、複数チャンネル分、例えば32チャンネル分の楽音生成系が時分割処理により生成されており、楽音をポリフォニックに発音させることができる。上記32チャンネルの楽音生成系は、キーボード1の1つのオンキーに対して2チャンネルずつ割り当てられる。この2チャンネルはステレオ楽音を実現するためのものであり、この2チャンネルのうち一方のチャンネルに右音源の楽音データが割り当てられ、他方のチャンネルに左音源の楽音データが割り当てられる。
【0023】
これら各チャンネルに割り当てられた各楽音の楽音データに応じて生成された各楽音波形データは、右音源の楽音波形データと左音源の楽音波形データとに分けられ、左右の楽音波形データSが、それぞれパンポット回路13へ送られる。トーンジェネレータ12で生成された楽音の波形データは、自然音における直接音に相当する楽音の波形データである。パンポット回路13からは右音源の楽音波形データSRと左音源の楽音波形データSLとが区別されて出力される。パンポット回路13では、右音源と左音源の楽音波形データのレベル制御(音量制御)または位相制御が行われ、ステレオ楽音化が行われる。そして、右音源の楽音波形データSRは右音源用の初期反射音付加回路14Rへ送られ、左音源の楽音波形データSLは左音源用の初期反射音付加回路14Lへ送られる。
【0024】
右音源用の初期反射音付加回路14Rは、2つのディレイ回路30、31と2つのクロックジェネレータ40、41とレジスタ44を備えている。同様に、左音源用の初期反射音付加回路14Rは、2つのディレイ回路32、33と2つのクロックジェネレータ42、43とレジスタ45を備えている。上記ディレイ回路30〜33は、例えばCCD(Charge Coupled device)またはBBD(Bucket Brigade Device)で構成されている。
【0025】
CPU5によってROM7のデータテーブル16からディレイタイムデータDT1、DT2と減衰率データA、Bが読み出されて、右音源用の初期反射音付加回路14Rへ送られる。また、CPU5によってROM7のデータテーブル16からディレイタイムデータDT3、DT4と減衰率データC、Dが読み出されて、左音源用の初期反射音付加回路14Lへ送られる。これらのディレイタイムデータと減衰率データは、発音経過時間と音楽的ファクタに応じてROM7から読み出される。音楽的ファクタ中の音像情報に応じたディレイタイムデータと減衰率データが読み出されるときには、上記データテーブル17の音像形成データに応じてディレイタイムデータと減衰率データが読み出される。
【0026】
クロックジェネレータ40〜43はプログラマブル・クロックジェネレータである。CPU5によってROM7から読み出されたディレイタイムデータDT1、DT2、DT3、DT4がプログラムデータとして入力され、これによってクロックジェネレータ40〜43からはディレイタイムデータDT1、DT2、DT3、DT4に応じた周期のクロック信号φ1、φ2、φ3、φ4が出力される。レジスタ44、45には、CPU5によってROM7のデータテーブル16から読み出された減衰率データA、B、C、Dが記憶され、これらの減衰率データは所定タイミングで乗算器34〜37へ送られる。
【0027】
右音源用の初期反射音付加回路14R内のディレイ回路30は、クロック信号φ1に同期して入力データを遅延させて出力する。このディレイ回路30の出力データには減衰率データAが乗じられ、右音源用の残響装置10Rへ送られる。また、ディレイ回路31は、クロック信号φ2に同期して入力データを遅延させて出力する。このディレイ回路31の出力データには減衰率データBが乗じられ、左音源用の残響装置10Rへ送られる。
【0028】
同様に、左音源用の初期反射音付加回路14L内のディレイ回路32は、クロック信号φ3に同期して入力データを遅延させて出力する。このディレイ回路32の出力データには減衰率データCが乗じられ、左音源用の残響装置10Lへ送られる。また、ディレイ回路33は、クロック信号φ4に同期して入力データを遅延させて出力する。このディレイ回路33の出力データには減衰率データDが乗じられ、右音源用の残響装置10Lへ送られる。
【0029】
4.第1実施例の残響装置10R、10L
右音源用の残響装置10Rは、加算器50、ディレイ回路52、クロックジェネレータ54及びレジスタ56を備えている。左音源用の残響装置10Lは、加算器50、ディレイ回路53、クロックジェネレータ55及びレジスタ57を備えている。ディレイ回路52、53は、例えばCCDまたはBBDで構成されている。CPU5によってROM7のデータテーブル16からディレイタイムデータDT5と減衰率データEが読み出されて、右音源用の残響装置10Rへ送られる。また、CPU5によってROM7のデータテーブル16からディレイタイムデータDT6と減衰率データFが読み出されて、左音源用の残響装置10Lへ送られる。
【0030】
これらのディレイタイムデータと減衰率データは、発音経過時間と音楽的ファクタに応じてROM7から読み出される。音楽的ファクタ中の音像情報に応じたディレイタイムデータと減衰率データが読み出されるときには、上記データテーブル17の音像形成データに応じてディレイタイムデータと減衰率データが読み出される。
【0031】
クロックジェネレータ54、55はプログラマブル・クロックジェネレータである。CPU5によってROM7から読み出されたディレイタイムデータDT5、DT6がプログラムデータとして入力され、これによってクロックジェネレータ54、55からはディレイタイムデータDT5、DT6に応じた周期のクロック信号φ5、φ6が出力される。レジスタ56、57には、CPU5によってROM7のデータテーブル16から読み出された減衰率データE、Fが記憶され、これらの減衰率データは所定タイミングで乗算器38、39へ送られる。
【0032】
右音源用の残響装置10R内の加算器50は、右音源用の初期反射音付加回路14Rからの楽音波形データSRAと、左音源用の初期反射音付加回路14Lからの楽音波形データSLCとを合成してディレイ回路52へ送る。ディレイ回路52は、クロック信号φ5に同期して入力データを遅延させてフィードバックを行う。フィードバックループには乗算器38が介在されており、フィードバックデータに減衰率Eが乗じられ、加算器50によって入力データに加算される。
【0033】
同様に、左音源用の残響装置10L内の加算器51は、右音源用の初期反射音付加回路14Rからの楽音波形データSRBと、左音源用の初期反射音付加回路14Lからの楽音波形データSLDとを合成してディレイ回路53へ送る。ディレイ回路53は、クロック信号φ6に同期して入力データを遅延させてフィードバックを行う。フィードバックループには乗算器39が介在されており、フィードバックデータに減衰率Fが乗じられ、加算器51によって入力データに加算される。
【0034】
5.発音動作
キーボード1のキーが打鍵されると、キーボードスキャン回路2から打鍵されたキーのオンイベント信号がCPU5へ送られる。CPU5は、キーオンイベントがあったキーのキーナンバデータとパネルスキャン回路4から送られるスイッチのオン/オフデータや数値データに応じた楽音制御データをRAM6から読み出してトーンジェネレータ12へ送る。トーンジェネレータ12は、パネルスイッチ群3において設定された音楽的ファクタ及びキーナンバデータに応じた基本楽音波形データをRAM6から読み出す。そして、この基本楽音波形データにエンベロープを付加したり、楽音制御データに応じた変調を行って波形を整形する等の信号処理を行う。これにより、自然音における直接音に相当する楽音の左右の音源の楽音波形データ、すなわち上記直接音データSが生成される。この直接音データSはパンポット回路13へ送られる。
【0035】
パンポット回路13では、パネルスイッチ群3において設定されたまたは自動演奏データ内の音像位置データに応じて、左右の音源の楽音波形データのレベル制御または位相制御が行われる。パンポット回路13によって生成された右音源の楽音波形データSRは右音源用の初期反射音付加回路14Rへ送られ、左音源の楽音波形データSLは左音源用の初期反射音付加回路14Lへ送られる。これらステレオシステムのレベル制御または位相制御は特願平3−204404号の明細書及び図面が参照される。
【0036】
右音源用の初期反射音付加回路14Rでは、2つのディレイ回路30、31によって右音源の楽音波形データSRを、異なるディレイタイムDT1、DT2で遅延させ、さらに異なる減衰率A、Bで減衰させる。そして、一方の出力データSRAは右音源用の残響装置10Rへ送られ、他方の出力データSRBは左音源用の残響装置10Lへ送られる。
【0037】
また、左音源用の初期反射音付加回路14Lでは、2つのディレイ回路32、33によって左音源の楽音波形データSLを、異なるディレイタイムDT3、DT4で遅延させ、さらに異なる減衰率C、Dで減衰させる。そして、一方の出力データSLCは右音源用の残響装置10Rへ送られ、他方の出力データSLDは左音源用の残響装置10Lへ送られる。
【0038】
右音源用の残響装置10Rでは、加算器50によって楽音波形データSRAとSLCが合成され、この合成された楽音波形データがディレイ回路52によってディレイタイムDT5毎に繰り返し遅延され、減衰される。また、左音源用の残響装置10Lでは、加算器51によって楽音波形データSLDとSRBが合成され、この合成された楽音波形データがディレイ回路53によってディレイタイムDT6毎に繰り返し遅延され、減衰される。そして、右音源用の残響装置10Rからの出力データSSAは右音源用のサウンドシステム11Rへ送られ、左音源用の残響装置10Lからの出力データSSBは左音源用のサウンドシステム11Lへ送られる。
【0039】
上記楽音波形データSRAは右音源の楽音が演奏者または聴者の右方で反射された初期反射音に相当し、上記楽音波形データSRBは右音源の楽音が演奏者または聴者の左方で反射された初期反射音に相当する。また、上記楽音波形データSLCは左音源の楽音が演奏者または聴者の左方で反射された初期反射音に相当し、上記楽音波形データSLDは左音源の楽音が演奏者または聴者の右方で反射された初期反射音に相当する。そして、上記楽音波形データSSAは右音源と左音源が演奏者または聴者の右方で反射された初期反射音が、演奏者または聴者の右方で何度も反射されて右耳に到達する残響音に相当する。また、上記楽音波形データSSBは右音源と左音源が演奏者または聴者の左方で反射された初期反射音が、演奏者または聴者の左方で何度も反射されて左耳に到達する残響音に相当する。
【0040】
このように本実施例では、右音源の初期反射音成分を左音源用の残響装置10Lへ送って左音源の残響音を生成し、左音源の初期反射音成分を右音源用の残響装置10Rへ送って、右音源の残響音を生成する。これによって、本実施例では、演奏者または聴者の右側で発音された右音源の楽音と演奏者または聴者の左側で発音された左音源の楽音とが、左右の壁で反射してできる初期反射音、及びこの初期反射音がさらに左右の壁で複雑に反射してできる後期残響音が生成され、残響効果の左右の広がり感を高めることができる。また、ディレイタイムDT1〜DT6、及び減衰率A〜Fが変えられることによって、左右の広がり感および音像位置を細かく変えることができる。
【0041】
6.第2実施例の楽音発生システム8と残響装置10R、10L
図6に示すように、第2実施例の楽音発生システム8では、第1実施例におけるディレイ回路31、32と、クロックジェネレータ41、42が省略されている。また、本実施例の残響装置10R、10Lでは、第1実施例におけるフィードバックループが省略され、乗算器38、39と、レジスタ56、57が省略されている。この他の構成部分は第1実施例と同じである。
【0042】
本実施例では、右音源用の初期反射音付加回路14Rによって付加される初期反射音成分は、一つのディレイ回路30による遅延処理によって生成される。同様に、左音源用の初期反射音付加回路14Lによって付加される初期反射音成分は、一つのディレイ回路33による遅延処理によって生成される。そして、左右の残響装置10R、10Lでは、フィードバックが行われず、入力データには一回の遅延処理によって生成される残響音が付加される。
【0043】
従って、本実施例では第1実施例よりも左右の広がり感の可変範囲が限定されるが、遅延処理量が減少するので、コスト減少が可能になる。なお、左右の残響装置10R、10Lは第1実施例と同様にフィードバック式のディレイ回路としても良い。
【0044】
7.第3実施例の楽音発生回路路8と残響装置10R、10L
図7に示すように、第3実施例の楽音発生システム8では、第2実施例におけるディレイ回路30、33と、クロックジェネレータ40、43が省略されている。また、トーンジェネレータ12とパンポット回路13の間にディレイ回路60が挿入されている。この他の構成部分は第2実施例と同じである。ディレイ回路60は、例えばCCDまたはBBDで構成されている。
【0045】
本実施例では、第2実施例では左右別々に行われている遅延処理がパンポット回路13の前で行われることによって、初期反射音付加処理が左右の音源の楽音波形データSについて同じ条件で行われる。従って、遅延処理量が減少するので、コスト減少が可能になる。なお、左右の残響装置10R、10Lは第1実施例と同様にフィードバック式のディレイ回路としても良い。
【0046】
8.変形例
なお、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、残響音には、後期残響音のほかに、初期反射音が含まれる。また、本発明がステレオシステムに適用される場合には、ステレオチャンネル数は左右の2チャンネルに限られず、左右上下前後等の3チャンネル以上であっても良い。また、本発明はモノラルシステムにも適用できる。また、遅延時間を決定するためのクロックジェネレータ40〜43、54、55は、左右の初期反射音付加回路14R、14Lまたは残響装置10R、10Lについて共通のものとしても良い。同様に、減衰率データを供給するためのレジスタ44、45、56、57も、左右の初期反射音付加回路14R、14Lまたは残響装置10R、10Lについて共通のものとしても良い。
【0047】
また、上記実施例では楽音波形データSRAとSLC、楽音波形データSRBとSLDの合成が加算器50、51によって行われているが、他の合成手段、例えば、加算以外の演算または混合等によって行われても良い。さらに、上記ディレイタイムDT1〜DT6は互いに異なっていても良いし、一部または全部が等しくても良い。
【0048】
また、上記ディレイタイムDT1〜DT6、または減衰率A〜Fの値を可変としても良い。例えばパネルスイッチ群3にツマミ、スイッチ、ベンダー、テンキー等のエフェクト量の設定手段が設けられ、この設定手段がマニュアル操作されることによって入力されたエフェクト量に応じてディレイタイムDT1〜DT6及び減衰率A〜Fの値が可変設定される。また、上記楽音発生システム8または残響装置10R、10Lは、DSP(Digital Signal Processor)またはマイクロコンピュータLSIに置き換えられても良く、上記の動作をソフトウェアによる処理によって行っても良い。
なお、出願当初の特許請求の範囲は以下の通りであった。
[1]楽音データを発生する少なくとも1つの楽音発生手段と、 この楽音発生手段から発生された楽音データにつき音像を形成するための音像形成データを発生する音像形成データ発生手段と、 この音像形成データ発生手段から発生された音像形成データに基づいて、上記楽音発生手段から発生された楽音データに対して音像を形成する制御を行って、複数の楽音データを発生する音像制御手段と、 この音像制御手段から発生された複数の楽音データを合成する複数の楽音合成手段と、 この複数の楽音合成手段それぞれから出力された合成楽音データに残響音を付加する残響音付加手段とを備えたことを特徴とする楽音制御装置。
[2]上記楽音発生手段は、楽音データを発生するとともに、発生された楽音データに反射音を付加し、この楽音発生手段は、入力される楽音データを1回または繰り返し遅延させて反射音を生成し、これにより上記楽音制御装置は反射音生成機能を有することを特徴とする請求項1記載の楽音制御装置。
[3]上記残響音付加手段は、入力される楽音データを1回または繰り返し遅延させて残響音を生成し、これにより上記楽音制御装置は残響音生成機能を有することを特徴とする請求項1または2記載の楽音制御装置。
[4]上記音像制御手段から発生された複数の楽音データそれぞれは、上記楽音発生手段において、異なる反射音が付加されまたは異なる反射音付加処理が行われていることを特徴とする請求項1、2または3記載の楽音制御装置。
[5]上記音像制御手段から発生された複数の楽音データそれぞれは、上記残響音付加手段において、異なる残響音が付加されまたは異なる残響音付加処理が行われていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の楽音制御装置。
[6]上記異なる反射音の付加または異なる反射音付加処理は、反射音の遅延における、遅延される楽音データの減衰率または遅延率が異なっていることを特徴とする請求項4記載の楽音制御装置。
[7]上記異なる残響音の付加または異なる残響音付加処理は、残響音の遅延における、遅延される楽音データの減衰率または遅延率が異なっていることを特徴とする請求項5記載の楽音制御装置。
[8]上記楽音発生手段における反射音付加の遅延内容、または上記残響音付加手段における遅延内容における、遅延される楽音データの減衰率または遅延率は、音高的ファクタ、音色的ファクタ、タッチ的ファクタ、音長的ファクタ、ステレオ的ファクタまたは設定エフェクト量に応じて変更され異なっていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の楽音制御装置。
[9]ステレオサウンドを作るための複数チャンネルの音源の楽音波形データを発生する楽音波形データ発生手段と、 この楽音波形データ発生手段から発生された各チャンネルの音源の楽音波形データを遅延させて各チャンネル毎の初期反射音データを付加する第1の初期反射音付加手段と、 前記楽音波形データ発生手段から発生された楽音波形データまたは前記第1の初期反射音付加手段から発生された楽音波形データについて、手動入力または音楽的ファクタに応じた音像を形成するための音像形成データを発生する音像形成データ発生手段と、 この音像形成データ発生手段から発生された音像形成データに基づいて、上記楽音発生手段から発生された楽音波形データに対して音像を形成する制御を行って、複数チャンネルの楽音波形データを発生する音像制御手段と、 この音像制御手段から発生された複数チャンネルの楽音波形データを、そのままのレベルで、または一回だけ減衰させて、あるいは繰り返し減衰させて、各チャンネル毎の初期反射音データおよび他のチャンネルに与えるための初期反射音データを付加する第2の初期反射音付加手段と、 この音像制御手段から発生された複数チャンネルの楽音波形データを、一回または繰り返し遅延させて、さらに、そのままのレベルで、または一回だけ減衰させて、あるいは繰り返し減衰させて、各チャンネル毎の初期反射音データおよび他のチャンネルに与えるための初期反射音データを付加する第3の初期反射音付加手段と、 各チャンネル毎に一つずつ設けられ、前記第2または第3の初期反射音付加手段によって初期反射音データが付加された複数チャンネルの楽音波形データについて、各チャンネル毎の初期反射音データが付加された楽音波形データのうちの一つのチャンネルの楽音波形データと、前記他のチャンネルに与えるための初期反射音データが付加された楽音波形データのうち当該チャンネルに与えるための初期反射音データが付加された楽音波形データとを合成する複数の楽音合成手段と、 この複数の楽音合成手段それぞれから出力された合成楽音波形データを、一回だけ遅延させ、またはフィードバックを行って繰り返し遅延させ、さらに、そのままのレベルで、または一回だけ減衰させて、あるいはフィードバックを行って繰り返し遅延させて、前記合成楽音波形データに残響音を付加し、チャンネル毎に別々に設けられたサウンドシステムへ送る複数の残響音付加手段と、 上記ステレオの各チャンネルの間に形成される音像がシフトすると、このシフトによって音像が近付いたチャンネルの楽音波形データの上記減衰量がより大きくなり、または上記遅延量がより小さくなる減衰量・遅延量制御手段とを備えたことを特徴とする楽音制御装置。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、音像を形成するための処理が施された複数の楽音データを複数の楽音合成手段によって合成し、それぞれの楽音合成手段から出力された合成楽音データに残響音を付加するようにしたものである。これによって、例えば、ステレオサウンドシステムにおいて、右音源用のサウンドシステムから左音源の残響音が遅延されて発音され、左音源用のサウンドシステムから右音源の残響音が遅延されて発音される。従って、演奏者または聴者の右側で発音された右音源の楽音と演奏者または聴者の左側で発音された左音源の楽音とが、左右の壁で反射してできる初期反射音、及びこの初期反射音がさらに左右の壁で複雑に反射してできる後期残響音が生成され、残響効果の左右の広がり感を高めることができ、より自然に近い残響効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電子楽器の全体回路を示す図である。
【図2】ROM7内のディレイタイムデータと減衰率データを記憶したデータテーブル16を示す図である。
【図3】ROM7内のデータテーブル17に記憶されている音像形成データを示す図である。
【図4】ROM7のデータテーブル17に記憶されている音像形成データの他の例を示す図である。
【図5】第1実施例における楽音発生システム8と残響装置10R、10Lのブロック図である。
【図6】第2実施例における楽音発生システム8と残響装置10R、10Lのブロック図である。
【図7】第3実施例における楽音発生システム8と残響装置10R、10Lのブロック図である。
【図8】従来装置における残響音形成回路のブロック図である。
【符号の説明】
1…キーボード、3…パネルスイッチ群、5…CPU、6…RAM、7…ROM、8…楽音発生システム、10R、10L…残響装置、11R、11L…サウンドシステム、12…トーンジェネレータ、13…パンポット回路、14R、14L…初期反射音付加回路、30〜33、52、53、60…ディレイ回路、40〜43、54、55…クロックジェネレータ、44、45、56、57…レジスタ、34〜39…乗算器、50、51…加算器。
Claims (4)
- 楽音データを発生する少なくとも1つの楽音発生手段と、
この楽音発生手段から発生された楽音データにつき音像を形成するための音像形成データを発生する音像形成データ発生手段と、
この音像形成データ発生手段から発生された音像形成データに基づいて、上記楽音発生手段から発生された楽音データに対して音像を形成する制御を行って、複数の楽音データを発生する音像制御手段と、
この音像形成制御された複数の楽音データごとに遅延及び減衰させて当該楽音データに残響音を付加し、この音像形成制御されかつ残響音の付加された当該複数の楽音データを合成して、サウンドシステムへ出力させる残響音付加合成手段と、
上記音像形成データに応じて、上記残響音の遅延の内容または減衰の内容を変更する残響制御手段とを備えたことを特徴とするステレオ楽音制御装置。 - 上記音像制御手段から発生された複数の楽音データそれぞれには、異なる残響音が付加されることを特徴とする請求項1記載のステレオ楽音制御装置。
- 上記異なる残響音の付加は、遅延及び減衰される楽音データの減衰の内容または遅延の内容が異なっていることを特徴とする請求項2記載のステレオ楽音制御装置。
- 上記残響音の付加における、楽音データの遅延の内容または減衰の内容は、音高的ファクタ、音色的ファクタ、タッチ的ファクタ、音長的ファクタまたは設定エフェクト量に応じて変更されることを特徴とする請求項1、2または3記載のステレオ楽音制御装置。
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