JP3584993B2 - 回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、摩擦力によって車輪を制動する摩擦ブレーキ装置、およびこの摩擦ブレーキ装置を備えるとともに車両の制動の際、その制動エネルギを車両運転用エネルギとして利用するために回収する回生ブレーキ装置とを備えた回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気自動車においては、所定の速度で走行中の制動時に車輪の回転により発電機のモータを回転駆動させて車輪の回転に対し抵抗を与えることにより減速するとともに、発電機のモータの回転駆動により発電させて制動エネルギを回収する回生ブレーキ装置が搭載されている。この回生ブレーキ装置によって回収された制動エネルギは、電気自動車の運転のためのエネルギとして有効に利用されるようになっている。
【0003】
また、この電気自動車には、摩擦によって車輪の回転を減速または停止させる従来からある一般的な摩擦ブレーキ装置が搭載されている。この摩擦ブレーキ装置は、一般に回生ブレーキ装置においては、比較的低車速および比較的高車速の時に回生トルクが小さいのでブレーキ力が不足し、また例えば約5km/h以下の超低車速時に回生トルクが発生しないので、不足するブレーキ力を補うとともに超低車速時に車両の制動を確実に行わせるために回生ブレーキ装置に連動して作動するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステムにおいては、制動エネルギをできるだけ効率よく回収して、車両運転のためのエネルギとして有効に利用するようにすることが望まれる。
【0005】
しかしながら、従来の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステムにおいては、回生ブレーキ装置および摩擦ブレーキ装置の連動制御が必ずしも適正に行われていなく、したがって回生ブレーキ装置による制動エネルギの回収が効率よく行われていなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、摩擦ブレーキ装置を必要最低限で作動することで、摩擦ブレーキ装置と回生ブレーキ装置との連動制御をより一層適正に行い、制動エネルギをより一層効率よく回収することのできる回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステムを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステムは、ブレーキ操作手段と、このブレーキ操作手段の操作により作動して作動流体またはブレーキ圧を出力口から出力する制御弁と、この制御弁から出力される作動流体に基づいてブレーキ倍力装置が発生するブレーキ圧または前記制御弁から出力されるブレーキ圧により作動してブレーキ力を発生するブレーキ作動装置と、前記制御弁の出力口と前記ブレーキ倍力装置とを連通しかつ前記制御弁から出力される前記作動流体が流動する通路または前記制御弁の出力口と前記ブレーキ作動装置とを連通しかつ前記制御弁から出力される前記ブレーキ圧が伝達される通路と、前記ブレーキ作動装置の前記ブレーキ力により、車輪と連動して回転する回転部材に摩擦部材を押圧する制動部と、前記通路に設けられ、前記ブレーキ作動装置への前記作動流体の流動または前記ブレーキ作動装置への前記ブレーキ圧の伝達を制限して摩擦ブレーキの作動を制限する摩擦ブレーキ制限手段と、この摩擦ブレーキ制限手段を制御する摩擦ブレーキ制御用電子制御装置とを備えている摩擦ブレーキ装置と、車輪の回転でモータが回転することにより発電する発電機、この発電機により発電された電力を貯える蓄電器および前記発電機のモータを制御するモータ制御用電子制御装置を少なくとも備えている回生ブレーキ装置と、前記ブレーキ操作手段のブレーキ操作を検出し、そのブレーキ操作検出信号を前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置と前記モータ制御用電子制御装置とに出力するブレーキ操作検出手段とを備え、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置が前記ブレーキ操作検出手段からの前記ブレーキ操作検出信号に基づいて前記摩擦ブレーキ制限手段を、前記作動流体の流動または前記ブレーキ圧の伝達を制限するように制御する制御手段であり、前記モータ制御用電子制御装置が前記ブレーキ操作検出手段からの前記ブレーキ操作検出信号に基づいて回生ブレーキ装置の発電機を作動するとともに回生トルクに関係する前記発電機の発電量を制御する制御手段であり、前記モータ制御用電子制御装置が、前記発電機の発電量を監視し、前記発電量の減少を検出したとき、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置にデューティ制御による摩擦ブレーキの作動信号を出力する回生トルク監視制御手段を備えていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2の発明の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステムは、前記摩擦ブレーキ制限手段が常開の電磁開閉弁であり、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置が、前記ブレーキ操作検出手段からの前記ブレーキ操作検出信号に基づいて前記電磁開閉弁を閉に制御することを特徴としている。
【0009】
更に、請求項3の発明は、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置が、前記回生トルク監視制御手段からの前記摩擦ブレーキの作動信号に基づいて前記電磁開閉弁の開閉をデューティ制御することを特徴としている。
【0010】
更に請求項4の発明は、前記回生トルク監視制御手段が、前記回生トルクの減少率を算出し、算出した回生トルク減少率に基づいて前記デューティ制御のデューティ比を決定し、決定したデューティ比により前記電磁開閉弁の前記デューティ制御を行う制御手段であることを特徴としている。
【0011】
更に請求項5の発明は、車輪の車輪速を検出し、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置または前記モータ制御用電子制御装置に車輪速信号を出力する車輪速センサが設けられており、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置または前記モータ制御用電子制御装置は、前記車輪速信号に基づいて車速を監視し、前記車速が設定速度以下になったことを検出したとき、前記電磁開閉弁の開信号を出力する車速監視制御手段を備えていることを特徴としている。
【0012】
更に請求項6の発明は、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置または前記モータ制御用電子制御装置が、更に前記車速監視制御手段によって車速が0であることが検出されかつ前記ブレーキ操作検出手段のブレーキ操作が所定時間以上継続して操作されたことが検出されたとき、前記電磁開閉弁の閉信号を出力する停車保持制御手段を備えていることを特徴としている。
【0013】
更に請求項7の発明は、停車保持制御手段が、車両発進操作手段の発進操作が検出されたとき、前記前記電磁開閉弁の開信号を出力する制御手段であることを特徴としている。
【0014】
更に請求項8の発明は、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置または前記モータ制御用電子制御装置が、前記ブレーキ操作検出手段のブレーキ操作量増加速度を算出し、算出したブレーキ操作量増加速度が設定値を超えたことを検出したとき、前記電磁開閉弁の開信号を出力するブレーキ操作量増加速度算出手段を備えていることを特徴としている。
【0015】
更に請求項9の発明は、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置または前記モータ制御用電子制御装置が、前記ブレーキ操作手段のブレーキ操作量を算出し、算出したブレーキ操作量が設定値を超えたことを検出したとき、前記電磁開閉弁の開信号を出力するブレーキ操作量算出手段を備えていることを特徴としている。
【0016】
【作用】
このような構成をした請求項1の発明の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキ装置においては、制御弁の出力口とブレーキ倍力装置とを連通しかつ制御弁から出力される作動流体が流動する通路または制御弁の出力口とブレーキ作動装置とを連通しかつ制御弁から出力されるブレーキ圧が伝達される通路に配設された摩擦ブレーキ制限手段により、摩擦ブレーキ装置のブレーキ操作にもかかわらず、摩擦ブレーキ装置の作動を制限することが可能となる。そして、所定の条件で摩擦ブレーキ制限手段を制御することにより、摩擦ブレーキ装置を作動させたりあるいは作動させなかったりして摩擦ブレーキ装置の作動を制限し、この摩擦ブレーキ装置を必要最低限で作動させることができるようになる。
【0017】
また、ブレーキ操作手段のブレーキ操作時に摩擦ブレーキ制御用電子制御装置により摩擦ブレーキ制限手段が制御されるとともに、モータ制御用電子制御装置により回生ブレーキ装置の発電機が作動されて発電し、かつ摩擦ブレーキによるブレーキ力が発電機の発電量に対応して制限される。これにより、回生ブレーキ装置が作動するとともに摩擦ブレーキ装置が実質的に作動しないようになる。したがって、回生ブレーキ装置が有効に作動して発電機が効率よく発電するようになり、制動エネルギを効率よく回収することができるようになる。
更に、モータ制御用電子制御装置内の回生トルク関し制御手段が回生トルクの減少を検出したとき、摩擦ブレーキ制御用電子制御装置が摩擦ブレーキ装置をデューティ制御により作動させる。したがって、回生ブレーキの回生トルクが小さくなってブレーキ力が不足した場合には、摩擦ブレーキ装置により、回生ブレーキによるブレーキ力不足が摩擦ブレーキにより補われるようになる。これにより、車両のブレーキを確実に作動させることができるようになる。
【0018】
特に、請求項2の発明においては、摩擦ブレーキ制限手段である常開の電磁開閉弁を開閉制御することにより、摩擦ブレーキ装置を必要最低限で作動させることができるようになる。
また請求項3の発明においては、回生トルクの減少が検出されたとき、摩擦ブレーキ制御用電子制御装置は電磁開閉弁をデューティ制御により開閉することで、摩擦ブレーキ装置をデューティ制御により作動させる。
その場合、請求項4の発明においては、回生トルクの減少率に基づいたデューティ比でデューティ制御が行われるようになるので、摩擦ブレーキを回生ブレーキのブレーキ力不足分に対応してより適切に行うことができるようになる。これにより、制動エネルギをより一層効率よく回収できるようになる。
【0019】
更に請求項5の発明においては、車速が設定速度以下になると、車速監視制御手段により電磁開閉弁が開かれ、摩擦ブレーキ装置が作動するようになる。これにより、車速が超低速になって回生ブレーキが作動しなくなっても、摩擦ブレーキが確実に作動するので、超低車速での車両の制動を確実に行うことができるとともに、車両を確実に停止することができるようになる。
【0020】
更に請求項6の発明においては、ブレーキ操作手段のブレーキ操作により車両が停止した後、このブレーキ操作を所定時間以上継続して保持されると、停車保持制御手段により、電磁開閉弁が閉じられ、摩擦ブレーキが作動状態に保持される。これにより、車両は自動的に停車保持されるようになる。そして、請求項8の発明においては、この停車保持制御手段は、例えばアクセルペダルの踏み込み等の車両発進操作手段の発進操作が行われたとき、電磁開閉弁を開くようになる。これにより、停車保持されている車両は、発進時に摩擦ブレーキの作動保持が自動的に解除される。したがって、坂道における発進時にスムーズに発進できるようになり、本発明の摩擦ブレーキシステムは坂道発進補助機能を発揮できるようになる。
【0021】
更に請求項8の発明においては、ブレーキ操作手段のブレーキ操作量増加速度が設定値を超えたときは、ブレーキ操作量増加速度検出手段により電磁開閉弁が開かれ、摩擦ブレーキ装置が作動するようになる。ブレーキ操作量増加速度が設定値を超えるときは急ブレーキ操作時であるが、回生ブレーキが減速機的な作用しか行わないので、回生ブレーキは急ブレーキに対応することができない。そこで、このように急ブレーキ操作時摩擦ブレーキ装置が作動することにより、車両の急ブレーキを確実に行うことができるようになる。
【0022】
更に請求項9の発明においては、ブレーキ操作手段のブレーキ操作量が設定値を超えたときは、ブレーキ操作算出手段により電磁開閉弁が開かれ、摩擦ブレーキ装置が作動するようになる。ブレーキ操作量が設定値を超えるときは、車両の高減速ブレーキ操作時であるが、この高減速ブレーキ操作時には回生ブレーキによるブレーキ力のみではブレーキ力が不足するようになる。そこで、このように高減速ブレーキ操作時摩擦ブレーキ装置が作動することにより、車両の高減速ブレーキを確実に行うことができるようになる。
【0023】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
図1は本発明の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステムの第1実施例を示す回路図であり、図2はこの第1実施例における摩擦ブレーキに使用される真空ブレーキ倍力装置を示す図である。
【0024】
図1に示すように、この回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム1は、摩擦ブレーキ装置2および回生ブレーキ装置3から構成されており、更に摩擦ブレーキ2は、ブレーキ操作部4、ブレーキ倍力部5、および制動部6から構成されている。
【0025】
ブレーキ操作部4は、制動時運転者によって踏み込まれるとともに本発明のブレーキ操作手段であるブレーキペダル7およびこのブレーキペダル7の踏み込み操作によって制動して二つの液室8a,8bにブレーキ操作圧を発生するタンデムマスタシリンダ8から構成されている。二つの液室8a,8bは、それぞれ第1ブレーキ系統Aおよび第2ブレーキ系統Bに接続されているが、両ブレーキ系統A,Bはまったく同じ構成を有しているので、以後第1ブレーキ系統Aのみを説明かつ図示し、第2ブレーキ系統Bの説明および図示は省略する。
【0026】
ブレーキ倍力部5は、本発明のブレーキ作動装置である真空ブレーキ倍力装置9、真空タンク10、真空ポンプ11、および本発明の電磁開閉制御用電子制御装置である摩擦ブレーキ電子制御装置(以下、摩擦ブレーキECUともいう)12から構成されている。図1および図2に示すように、真空ブレーキ倍力装置9は、ブレーキ圧を発生して後述するブレーキシリンダ31に送給するハイドロリックシリンダ13、パワーシリンダ14、このパワーシリンダ14に対する真空および大気圧の給排保持の切換制御を行うとともに本発明の制御弁であるリレーバルブ15から構成されている。
【0027】
ハイドロリックシリンダ13内にはハイドロリックピストン16が摺動可能に設けられており、ハイドロリックピストン16の左右の液室13a,13bは、ブレーキ非作動時にこのピストン16の貫通孔が開かれて連通するとともに、ブレーキ作動時にこの貫通孔が閉じられて遮断するようになっている。一方の液室13aにマスタシリンダ8の液室8aからのブレーキ操作圧が供給されるようになっているとともに、他方の液室13bにブレーキ圧が発生し、このブレーキ圧がブレーキシリンダ31に供給されるようになっている。
【0028】
パワーシリンダ14内にはパワーピストン17が気密に摺動可能に設けられており、パワーピストン17によって区画形成された一方の室は、空気流通路18を介してリレーバルブ15の出力口15aに接続されて非作動時真空が導入されまた作動時大気圧が導入される変圧室14aとされているとともに、他方の室は真空タンク10に常時連通して常時真空が保持されている定圧室14bとされている。また、パワーピストン17はブレーキ非作動時にはリターンスプリング19により図示の非作動位置にあり、またブレーキ作動時には変圧室14aに大気が導入されることによりスプリング19の付勢力に抗して右方へ移動してハイドロリックピストン16を押圧するようになっている。
【0029】
リレーバルブ15内にはダイヤフラム15bが設けられており、このダイヤフラム15bによって区画形成された左方の室は、通路20を介して定圧室14bに連通していて常時真空が保持された真空室15cとされている。また右方の室は、出力口15a、通路18を介して変圧室14aに連通可能となっているとともに、ハウジングに穿設された孔21を介して大気に連通可能となっていて大気が導入される大気導入室15dとされている。このハウジングの孔21を開閉制御する常閉の大気弁22が設けられており、したがってブレーキ非作動時には大気導入室15dは大気と遮断され、ブレーキ作動時に大気弁22が開くことにより大気と連通するようになっている。
【0030】
また、真空室15cと大気導入室15dとは、ダイヤフラム15bの中央に穿設された孔23によって連通可能となっている。このダイヤフラム15bの孔23を開閉制御する常開の真空弁24が設けられており、したがってブレーキ非作動時に真空室15cと大気導入室15dとが連通するとともにブレーキ作動時に真空室15cと大気導入室15dとが遮断するようになっている。更にこれらの大気弁22および真空弁24の開閉制御する制御ピストン25が設けられており、この制御ピストン25の受圧面にはハイドロリックシリンダ13の一方の液室13aの液圧、すなわちマスタシリンダ8の一方の液室8aの液圧が通路26を通って作用するようになっている。したがって、ブレーキ非作動時には制御ピストン25はその受圧面に圧力が作用しないので図示の非作動位置にあり、このときにはリレーバルブ15は大気弁22が閉じて真空弁24が開いた位置I(図1に図示)に設定され、大気導入室15dは真空室15cに連通して真空に保持される。またブレーキ作動時に制御ピストン25は、その受圧面にマスタシリンダ8の液室8aの液圧が作用することにより右方へ移動してダイヤフラム15bを介して真空弁24を閉じるとともに大気弁22を開き、したがってリレーバルブ15は位置III(図1に図示)に設定され、大気導入室15dには大気が導入される。そして、大気導入室15dの圧力がマスタシリンダ8からの液圧に対応した所定圧以上になると、真空弁24が閉じたままダイヤフラム15bと制御ピストン25が左方へ移動して大気弁22も閉じ、リレーバルブ15は、大気導入室15dが真空および大気のいずれとも遮断する中立位置II(図1に図示)に設定されるようになっている。
【0031】
以上の真空ブレーキ倍力装置9のハイドロリックシリンダ13、パワーシリンダ14およびリレーバルブ15の各構成は、例えば特公昭62ー24300号公報および実公昭62ー18529号公報等に開示されている従来のハイドロリックシリンダとまったく同じである。
【0032】
更に、本実施例においては、パワーシリンダ14の変圧室14aとリレーバルブ15の出力口15aとを接続する通路18に、連通位置Iと遮断位置IIとの二位置が設定された常開の電磁開閉弁27が設けられている。この電磁開閉弁27は摩擦ブレーキECU12によって開閉制御されるようになっている。
【0033】
制動部6は、車輪28の車軸29に固設された本発明の回転部材であるブレーキディスク30、および摩擦部材を有するキャリパ等のブレーキシリンダ31から構成されている。ブレーキシリンダ31は、ハイドロリックシリンダ13からのブレーキ圧が導入されることによりその摩擦部材でブレーキディスク30を挟圧してその摩擦力によりブレーキディスク30の回転を減速または停止するようになっている。なお、図示しないがもう一つの車輪に対する制動部も同様の構成となっている。
【0034】
回生ブレーキ装置3は、車軸29の回転により回転駆動されるモータ32aにより発電する発電機32、交流を直流に変換するインバータ33を介して発電機32のモータ32aの磁石とコイルとの位相をストロークセンサ36からのブレーキペダル7の踏み込みストローク信号に基づいて制御してその発電量を制御するモータ制御用電子制御装置(以下、モータECUともいう)34、およびインバータ33に接続された蓄電器35から構成されている。
【0035】
モータECU34には摩擦ブレーキECU12が接続されているとともに、ブレーキペダル7の踏み込みストロークを検出してブレーキ操作検出信号を出力する本発明のブレーキ操作検出手段であるストロークセンサ36が接続されている。
更に、車輪28の車輪速を検出する車輪速センサ34が車輪28の近傍に設けられており、検出した車輪速信号がモータECU34に入力されるようになっている。
【0036】
なお、真空ポンプ11、摩擦ブレーキECU12、インバータ33、モータECU34および蓄電器35は第1、第2ブレーキ系統A、Bに共通に設けられている。
【0037】
このように構成された本実施例の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキ1における摩擦ブレーキ装置2および回生ブレーキ装置3の個々の基本的な作用について説明する。
【0038】
まず、摩擦ブレーキ装置2について説明すると、電磁開閉弁27が連通位置Iに設定されることにより、摩擦ブレーキ装置2が作動可能となる。制動のため、ブレーキペダル7を踏み込むと、マスタシリンダ8の液室8aにブレーキ操作圧が発生し、このブレーキ操作圧は真空ブレーキ倍力装置5のハイドロリックシリンダ13の一方の液室13aに導入されてブレーキシリンダ31に送られるとともに、リレーバルブ15の制御ピストン25の受圧面に作用する。このため、制御ピストン25が右方へ移動して真空弁24が閉じるとともに、大気弁22が開く。これにより、大気導入室15dは真空室15cから遮断されるとともに大気と連通し、室15dには大気が導入される。そして、室15dに導入された大気は出力口15a、通路8、開いている電磁開閉弁27、および通路18を通ってパワーシリンダ14の変圧室14aに導入される。その結果、パワーピストン17が右方へ移動してハイドロリックシリンダ13のハイドロリックピストン16を右方へ押圧し、ハイドロリックピストン16は右方へ移動して他方の液室13bにブレーキ圧を発生する。発生したブレーキ圧はブレーキシリンダ31に導入され、ブレーキシリンダ31はその摩擦部材でブレーキディスク30を挟圧し、その摩擦力で制動が行われる。
【0039】
一方、回生ブレーキ装置3は、制動時ブレーキペダル7が踏み込まれると、ストロークセンサ36がこのブレーキペダル7の踏み込みストロークを検出して、モータECU34へストローク信号を出力する。このストローク信号を受けて、モータECU34は作動制御信号を出力し、この作動制御信号により、発電機32のモータ32aが回転駆動し、モータ32aが発電を行う。このモータ32aの発電の際の抵抗により車軸29の回転が抑制されて減速される。こうして回生ブレーキによる制動が行われる。発電機32によって発電された交流電力はインバータ33によって直流電力に変換されて蓄電器35に蓄電される。蓄電器35に蓄電された直流電力は、車両の運転のためのエネルギとして利用される。
【0040】
このような回生ブレーキにおける最大回生トルクTmaxは、図3に示すように車速によって変化する特性を呈する。すなわち、例えば車速が約5km/h以下の低速域では回生トルクはほとんど発生しなく、車速が約5km/hを超えると回生トルクが発生するようになる。そして、その車速に対応する最大回生トルクTmaxは車速の増加に比例して増大していくとともに、車速が約13km/h前後で一定となる。更に、最大回生トルクTmaxは、車速が約30km/h前後から曲線的に徐々に減少し、更に車速が約45km/h前後からは直線的に減少する。更に、車速が約50km/h前後で回生トルクはほとんど発生しなくなる。
【0041】
そして、本実施例は、回生トルクが発生する車速領域では、回生トルクはブレーキペダル7のストローク量に応じてT1,T2,T3,T4と最大回生トルクTmaxまで上昇していくようにしている。この回生トルクが最大回生トルクTmaxまで達した後、更にブレーキペダル7を踏み込んでも回生トルクは上昇しなく、その最大回生トルクTmaxで回生ブレーキが作動するようになる。
【0042】
ところで、本実施例においては、通常の回生ブレーキ作動時には、モータECU34から回生ブレーキ作動信号が摩擦ブレーキECU12へ出力され、この回生ブレーキ作動信号により摩擦ブレーキECU12は電磁開閉弁27にオン信号を出力し、このオン信号により電磁開閉弁27がオンされて通路遮断位置II(すなわち閉)に設定され、その結果通路18が遮断されるようにしている。これにより、ブレーキペダル7の踏み込みによりマスタシリンダ8からの液圧がリレーバルブ15の制御ピストン25の受圧面に作用してリレーバルブ15の真空弁24が閉じかつ大気弁22が開いて大気が大気弁22、リレーバルブ15の大気導入室15d、および出力口15aを通って通路18に導入されても、電磁開閉弁27が遮断位置IIにあるので、大気はパワーシリンダ14の変圧室14aには導入されない。これにより、パワーピストン17が作動しないので、ブレーキ操作時には回生ブレーキのみが作動して、摩擦ブレーキはほとんど作動しないようにしている。なお、ブレーキペダル7の踏み込みにより、マスタシリンダ8からのブレーキ液がハイドロリックシリンダ13の一方の室13a、ハイドロリックピストン16の通路、および他方の室13bを通ってブレーキシリンダ31に供給されるが、このようにブレーキ液が供給されてもブレーキシリンダ31にはブレーキ圧が発生するまでに至らないか、または若干のブレーキ圧だけが発生する。したがって、摩擦ブレーキ装置2は実質的に作動しない。
【0043】
そして、本実施例においては、電磁開閉弁27を次のように制御することにより、回生ブレーキ装置3が摩擦ブレーキ装置2に優先して作動するように回生ブレーキ装置3と摩擦ブレーキ装置2との連動制御を行い、制動エネルギをより一層効率よく回収できるようにしている。
【0044】
すなわち、図1に示すようにモータECU34内に車速監視制御手段44が設けられており、この車速監視制御手段44は、車輪速センサ34からの車輪速信号に基づいて、車速が設定速度V0km/h(例、5km/h)以下の超低速である判断したときは、電磁開閉弁27をオフ(すなわち開)にし、ブレーキシリンダ31のブレーキ圧を上昇させて摩擦ブレーキを作動するようにしている。これは、図3に示すように車速が例えば約5km/h以下のときは、回生ブレーキの回生トルクが0になって回生ブレーキが作動しなくなるために、摩擦ブレーキを作動させて車両を確実に制動または停止しようとするものである。
【0045】
また、図1に示すようにモータECU34内にブレーキ操作量増加速度算出手段45が設けられており、このブレーキ操作量増加速度算出手段45は、ストロークセンサ36からのブレーキペダル7の踏み込みストローク信号に基づいてストローク増加速度を算出し、算出したストローク増加速度が設定値を超えるときも、電磁開閉弁27をオフ(すなわち開)にして、前述と同様に摩擦ブレーキを作動するようにしている。これは、ブレーキペダル7のストローク速度が設定値を超えたと判断したときは急ブレーキ作動のときであるが、回生ブレーキが減速機的な作用を行うものであるためこの急ブレーキに対応することができないので、急ブレーキ作動時には摩擦ブレーキを作動させて車両の急ブレーキを確実に行うことができるようにするものである。
【0046】
更に、図1に示すようにモータECU34内にブレーキ操作量算出手段46が設けられており、このブレーキ操作量算出手段46は、ストロークセンサ36からのストローク信号に基づいてブレーキペダル踏み込みのストローク量を算出し、算出したストローク量が設定値を超えたと判断したときも、電磁開閉弁27をオフ(すなわち開)にして、前述と同様に摩擦ブレーキを作動するようにしている。これは、ブレーキペダル7のストローク量が設定値を超えるときは高減速度のブレーキ作動時であり、この高減速度のブレーキ作動時では回生トルクが最大になっても車両のブレーキ力が不足するために、更にブレーキペダル7が踏み込まれた場合に摩擦ブレーキを作動させて高減速度時の車両のブレーキを確実に行うことができるようにするものである。
【0047】
これらの車速監視制御手段44、ブレーキ操作量増加速度算出手段45、ブレーキ操作量算出手段46は、摩擦ブレーキECU12に設けることもできる。
【0048】
更に、図1に示すようにモータECU34内に回生トルク監視制御手段47が設けられており、この回生トルク監視制御手段47は、回生ブレーキの作動時に、発電機32の発電量を監視して発電量の減少が検出されたとき、換言すれば回生ブレーキの回生トルクを監視して、回生トルクの減少が検出されたときは、電磁開閉弁27をデューティ制御によりオン・オフ(すなわち開閉)してブレーキシリンダ31のブレーキ圧をデューティ制御により上昇させて摩擦ブレーキをデューティ制御により作動するようにしている。その場合、回生トルク監視制御手段47は、デューティ制御のデューティ比が回生トルクの減少率すなわち発電機32の発電量の減少率を算出して、この減少率に基づいてデューティ比を決定するようにしている。このように電磁開閉弁27のデューティ制御を行うようにするのは、図3に示すように車速が低速になると回生トルクが低下して、回生ブレーキのみでは車両のブレーキ力が不足するので、摩擦ブレーキを作動させて回生ブレーキにおける回生トルク減少時の車両のブレーキを確実に行うことができるようにするためである。
【0049】
そして、上記の条件以外では、電磁開閉弁27をオン(すなわち閉)して回生ブレーキのみを摩擦ブレーキに優先させて作動させるようにしている。この電磁開閉弁の開閉制御の例では、通常走行中における車両の通常のブレーキは回生ブレーキで行われる場合が多くなり、制動エネルギを効率よく回収することができるようになる。
【0050】
更に、図1に示すようにモータECU34内に停車保持制御手段48が設けられており、この停車保持制御手段48は、ブレーキペダル7の踏み込みにより摩擦ブレーキ装置2が作動して車両が停止することにより、車輪速センサ43からの車輪速信号に基づいて車速が0であることを検出した後ストロークセンサ36からのストローク信号によりブレーキペダル7の踏み込みが所定時間継続して保持されたと判断したときに、電磁開閉弁27を閉じるようにしている。これにより、車両は停止時の停車保持状態となる。また、停車保持制御手段48は、図示しないアクセルペダルの踏み込みによる車両発進時に、アクセルペダル踏み込み信号に基づいて電磁開閉弁27を開くようにしている。これにより、車両発進時に自動的に車両の停車保持が解除されるようになり、例えば坂道発進時に車両の発進をスムーズにできるように発進補助機能を行わせることができる。
【0051】
図4は、第1実施例における電磁開閉弁27の開閉制御の一例のフローを示す図である。
図4に示すように、この例では、まずステップS1においてブレーキ操作が行われたか否かが判断される。このブレーキ操作の検出はストロークセンサ36のペダルストロークを検出することにより行われる。なお、ブレーキ操作の検出はこれ以外に例えば図示しないストップランプスイッチのオンを検出したりあるいは後述する実施例のように圧力センサによりマスタシリンダ8の圧力を検出するようにすることもできる。
【0052】
ブレーキ操作が行われたと判断されると、ステップS2において車速が設定速度V0km/h(例、5km/h)以下であるか否かが判断され、車速が設定速度V0km/h以下でない、すなわち低速でないと判断されると、ステップS3においてストロークセンサ36のストローク増加速度が設定値より大きいか否かが判断される。ストローク増加速度が設定値より大きくないと判断されると、ステップS4においてストロークセンサ36のストローク量が設定値より大きいか否かが判断される。ストローク量が設定値より大きくないと判断されると、ステップS5において回生トルクが減少しているか否かが判断される。回生トルクが減少していないと判断されると、ステップS6において電磁開閉弁27がオンされて(すなわち閉じられ)摩擦ブレーキの作動が制限される。これにより、通常走行中の通常のブレーキ操作時には回生ブレーキが優先して作動するようになる。
【0053】
ステップS5において回生トルクが減少していると判断されると、ステップS7において回生トルクの減少率が算出され、次いでステップS8において算出された回生トルク減少率に基づいて電磁開閉弁27のデューティ制御のためのデューティ比が決定される。そして、ステップS9において電磁開閉弁27が決定されたデューティ比のデューティ制御によりオン・オフ制御される。これにより、回生トルクの減少による回生ブレーキのブレーキ力不足時、回生トルクの減少に応じて摩擦ブレーキが作動するようになる。
【0054】
また、ステップS4でストロークセンサ36のストローク量が設定値より大きいと判断されたとき、あるいはステップS3でストロークセンサ36のストローク増加速度が設定値より大きいと判断されたとき、あるいはステップS2で車速が設定速度V0km/hより大きいと判断されると、ステップS10において電磁開閉弁27がオフ(すなわち開)にされて摩擦ブレーキの作動が何ら制限されない。
【0055】
図5は、本実施例における電磁開閉弁27の開閉制御の他の例のフローを示す図である。
この例では、前述の図4に示す例の電磁開閉弁27の制御に加えて、更に車速が0km/hのときすなわち車両停止時に、ブレーキペダル7を設定時間以上を踏み続けたときは、電磁開閉弁27をオン(すなわち閉)にするとともに、車両のアクセルペダル(不図示)を踏み込んだときに、電磁開閉弁27をオフ(すなわち開)にするようにしている。これにより、車両停止時にブレーキを作動状態に保持することができるようになるとともに、車両発進時のアクセルペダル踏み込み時にブレーキの作動状態を解除することができるようになる。すなわち、この例では、電磁開閉弁27を制御することにより、回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム1が停車保持機能と坂道発進補助機能とを有するようになる。
【0056】
電磁開閉弁27の開閉制御のこの例を図5に示すフローにしたがって具体的に説明すると、まずステップS11においてアクセルペダルが踏み込まれたか否かが判断され、アクセルペダルが踏み込まれていないと判断されると、ステップS12において図4に示すステップS1の処理と同様のブレーキ操作が行われたか否かの判断が行われる。ブレーキ操作が行われたと判断されると、ステップS13において車速が0km/hであるか否かが判断され、車速が0km/hでないと判断されると、前述の図4に示す制御のステップS2〜S10の各処理とそれぞれまったく同じステップS14〜S21およびS26の各処理が行われる。
【0057】
ステップS13において車速が0km/hであると判断されると、ステップS22において停車保持タイマがインクリメントされた後、ステップS23において停車保持タイマが設定時間より大きいか否かが判断される。停車保持タイマが設定時間より大きいと判断されると、ステップS24において停車保持フラグがセットされた後、ステップS18において電磁開閉弁27がオン(すなわち閉)され、ブレーキペダル7を解放しても車両は停止状態でかつブレーキ作動状態に保持される。ステップS23において停車保持タイマが設定時間より大きくないと判断されると、ステップS26において電磁開閉弁27がオフ(すなわち開)され、車両は停止状態でかつブレーキ作動状態に保持される。しかし、この場合にはブレーキペダル2を解放すると、車両のブレーキ作動状態が解放される。
【0058】
ステップS12においてブレーキ操作が行われていないと判断されると、ステップS25において停車保持フラグがセットされているか否かが判断される、停車保持フラグがセットされていると判断されるとステップS18に移行して電磁開閉弁27がオンされ、停車保持フラグがセットされていないと判断されるとステップS26に移行して電磁開閉弁27がオフされる。更に、ステップS11においてアクセルペダルが踏み込まれていると判断されると、ステップS27において停車保持フラグがクリアされるとともに、ステップS28において停車保持タイマがリセットされた後、ステップS26に移行する。
【0059】
図6は、本発明の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステムの第2実施例を示す回路図である。なお、前述の図1に示す第1実施例と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
【0060】
図6に示すように、第2実施例においては前述の第1実施例に更にマスタシリンダ8の液圧を検出するとともに本発明のブレーキ操作検出手段である圧力センサ37が設けられており、この圧力センサ37は摩擦ブレーキECU12に接続されている。この第2実施例の摩擦ブレーキおよび回生ブレーキの各作用は前述の第1実施例と同じである。
【0061】
また、第2実施例においては、電磁開閉弁27を次のように制御することにより、回生ブレーキ装置3と摩擦ブレーキ装置2との連動制御を行い、制動エネルギをより一層効率よく回収できるようにしている。その場合、圧力センサ37により本発明のブレーキ操作手段であるマスタシリンダ8のブレーキ操作圧を検出することにより、ブレーキ操作を検出するようにしている。
【0062】
図7は、第2実施例における電磁開閉弁27の開閉制御の一例のフローを示す図である。
この例の電磁開閉弁27の制御は、前述の図4に示す第1実施例の場合の制御とまったく同じであるが、この例は急ブレーキ作動の判断および急減速度のブレーキ作動の判断が図4に示す例と異なる。したがって、電磁開閉弁27の制御については説明を省略する。
【0063】
図4に示す例では、急ブレーキ作動をブレーキペダル7のストローク増加速度により判断しているが、第2実施例では急ブレーキ作動をマスタシリンダ8の圧力増加速度により判断している。すなわち、マスタシリンダ8の圧力増加速度が設定値を超えるときは急ブレーキ作動であると判断し、電磁開閉弁27をオフ(すなわち開)にして、前述と同様に摩擦ブレーキを作動するようにしている。
【0064】
また、図4に示す例では、高減速度のブレーキ作動をブレーキペダル7のストローク量により判断しているが、第2実施例では高減速度のブレーキ作動をマスタシリンダ8の圧力により判断している。すなわち、マスタシリンダ8の圧力が設定値を超えるときは高減速度のブレーキ作動であると判断し、電磁開閉弁27をオフ(すなわち開)にして、前述と同様に摩擦ブレーキを作動するようにしている。
【0065】
具体的には図7に示すこの例の電磁開閉弁27の開閉制御のフローにおいて、ステップS31のマスタシリンダ8の圧力増加速度が設定値より大きいか否かの判断処理が図4に示すフローのステップS3のストローク増加速度が設定値より大きいか否かの判断処理と異なるとともに、ステップS32のマスタシリンダ8の圧力が設定値より大きいか否かの判断処理が図4に示すフローのステップS4のストローク量が設定値より大きいか否かの判断処理が異なる。これらの以外の各処理、すなわちこの例のステップS29、S30、およびS33〜S38の各処理は、それぞれ図4に示す例のステップS1、S2、およびS5〜S10の各処理とまったく同じである。
【0066】
図8は、第2実施例における電磁開閉弁27の開閉制御の他の例のフローを示す図である。
この例の電磁開閉弁27の制御は、前述の図5に示す第1実施例の場合の制御とまったく同じであるが、この例も急ブレーキ作動の判断および急減速度のブレーキ作動の判断が図5に示す例と異なる。したがって、電磁開閉弁27の制御については説明は省略する。また、本例と図5に示す例との急ブレーキ作動の判断および急減速度のブレーキ作動の判断の相違も、前述の図7に示す例と図4に示す例との場合の相違と同じであるので、その説明も省略する。
【0067】
具体的には図8に示すこの例の電磁開閉弁27の開閉制御のフローにおいて、ステップS43のマスタシリンダ8の圧力増加速度が設定値より大きいか否かの判断処理が図5に示すフローのステップS15のストローク増加速度が設定値より大きいか否かの判断処理と異なるとともに、ステップS44のマスタシリンダ8の圧力が設定値より大きいか否かの判断処理が図5に示すフローのステップS16のストローク量が設定値より大きいか否かの判断処理と異なる。これらの以外の各処理、すなわちこの例のステップS39〜S42およびS45〜S56の各処理は、それぞれ図5に示す例のステップS11〜S14およびS17〜S28の各処理とまったく同じである。
【0068】
なお、前述の各実施例では、真空ブレーキ倍力装置9のパワーシリンダ14がピストン17を有するものとしているが、パワーシリンダ14はダイヤフラムを有するタイプのものでもよい。また、ブレーキ倍力装置として真空ブレーキ倍力装置9を用いるものとしているが、圧縮空気によるブレーキ倍力装置にも本発明を適用することができる。
【0069】
更に、図9に示すような従来の一般的なエアブレーキシステムにも本発明を適用することができる。すなわち、前述の各実施例と対応する構成要素には同じ符号を付すことにより、その説明は省略する。また、前述の各実施例と対応する構成要素以外で、38はブレーキバルブ、39は圧縮空気が貯溜されたエアタンク、40は本発明の制御弁である中継弁、41はブレーキアクチュエータ、42はドラムブレーキである。このエアブレーキシステムにおいては、電磁開閉弁27は中継弁40とブレーキアクチュエータ41との間の通路に配設され、この電磁開閉弁27の制御も前述の第1および第2実施例における各制御と同じである。
【0070】
更に、従来のエアオーバーハイドロリックブレーキシステムにおいても本発明を適用することができる。
更に、前述の各実施例では、本発明のブレーキ操作手段としてブレーキペダル7またはマスタシリンダ8を用いているが、このブレーキ操作手段としてはブレーキ操作レバーを用いることもできる。
【0071】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1の発明の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキ装置によれば、摩擦ブレーキ制限手段により、摩擦ブレーキ装置のブレーキ操作にもかかわらず、摩擦ブレーキ装置の作動を制限することができる。そして、所定の条件で摩擦ブレーキ制限手段を制御することにより、摩擦ブレーキ装置を必要最低限で作動させることができるようになる。
【0072】
また、ブレーキ操作時に回生ブレーキ装置を作動させるとともに摩擦ブレーキ装置を実質的に作動させないようにしているので、回生ブレーキ装置を有効に作動させて、制動エネルギを効率よく回収することができるようになる。
更に、回生ブレーキの回生トルクが減少してブレーキ力が不足した場合には、摩擦ブレーキ装置をデューティ制御により作動するようにしているので、回生ブレーキによるブレーキ力不足を摩擦ブレーキにより補うことができる。したがって、車両のブレーキを常時確実に作動させることができるようになる。
【0073】
特に、請求項2の発明によれば、摩擦ブレーキ制限手段である常開の電磁開閉弁を開閉制御することで、摩擦ブレーキ装置を必要最低限で作動させることができる。
また請求項3の発明によれば、回生ブレーキの回生トルクが減少してブレーキ力が不足した場合には、デューティ制御により電磁開閉弁の開閉制御して摩擦ブレーキ装置の作動を制御しているので、回生ブレーキによるブレーキ力不足を摩擦ブレーキにより補うことができる。
更に請求項4の発明によれば、回生トルクの減少率に基づいたデューティ比で電磁開閉弁のデューティ制御を行うようにしているので、回生ブレーキのブレーキ不足分に対応して摩擦ブレーキをより適切に行うことができる。これにより、制動エネルギをより一層効率よく回収できるようになる。
【0074】
更に請求項5の発明によれば、車速が設定速度以下のとき摩擦ブレーキ装置を作動するようにしているので、車速が超低速になって回生ブレーキが作動しなくなっても、超低車速での車両の制動を確実に行うことができるとともに、車両を確実に停止することができる。
【0075】
更に請求項6の発明によれば、車両停止時にブレーキ操作手段のブレーキ操作を所定時間以上継続したとき電磁開閉弁を閉じるようにしているので、車両を自動的に停車保持することができる。そして請求項8の発明によれば、発進操作により、電磁開閉弁を開くようにしているので、停車保持されている車両の停車保持状態を、発進時に自動的に解除することができる。したがって、例えば坂道における発進時にスムーズに発進できる
更に請求項9の発明によれば、ブレーキ操作量増加速度が設定値を超えたときに、摩擦ブレーキ装置を作動するようにしているので、車両の急ブレーキを確実に行うことができる。
【0076】
更に請求項9の発明によれば、ブレーキ操作量が設定値を超えたときに、摩擦ブレーキ装置を作動するようにしているので、車両の高減速ブレーキを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステムの第1実施例を示す回路図である。
【図2】この第1実施例における摩擦ブレーキ装置の一例である真空ブレーキ倍力装置を示す図である。
【図3】回生ブレーキの車速による回生トルクの特性を示す図である。
【図4】第1実施例における電磁開閉弁の開閉制御の一例のフローを示す図である。
【図5】第1実施例における電磁開閉弁の開閉制御の他の例のフローを示す図である。
【図6】本発明の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステムの第2実施例を示す回路図である。
【図7】第2実施例における電磁開閉弁の開閉制御の一例のフローを示す図である。
【図8】第2実施例における電磁開閉弁の開閉制御の他の例のフローを示す図である。
【図9】本発明の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステムの変形例を示す図である。
【符号の説明】
1…回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム、2…摩擦ブレーキ装置、3…回生ブレーキ装置、4…ブレーキ操作部、5…ブレーキ倍力部、6…制動部、7…ブレーキペダル、8…マスタシリンダ、9…真空ブレーキ倍力装置、10…真空タンク、11…真空ポンプ、12…摩擦ブレーキ用電子制御装置、13…ハイドロリックシリンダ、14…パワーシリンダ、14a…変圧室、15…リレーバルブ、15a…出力口、16…ハイドロリックピストン、17…パワーピストン、18…空気流通路、22…大気弁、24…真空弁、25…制御ピストン、27…電磁開閉弁、28…車輪、29…車軸、30…ブレーキディスク、31…ブレーキシリンダ、32…発電機、32a…モータ、33…インバータ、34…モータ制御用電子制御装置、35…蓄電器、36…ストロークセンサ、37…圧力センサ、38…ブレーキバルブ、39…エアタンク、40…中継弁、41…ブレーキアクチュエータ、42…ドラムブレーキ、43…車輪速センサ、44…車速監視制御手段、45…ブレーキ操作量増加速度算出手段、46…ブレーキ操作量算出手段、47…回生トルク監視制御手段、48…停車保持制御手段
Claims (9)
- ブレーキ操作手段と、このブレーキ操作手段の操作により作動して作動流体またはブレーキ圧を出力口から出力する制御弁と、この制御弁から出力される作動流体に基づいてブレーキ倍力装置が発生するブレーキ圧または前記制御弁から出力されるブレーキ圧により作動してブレーキ力を発生するブレーキ作動装置と、前記制御弁の出力口と前記ブレーキ倍力装置とを連通しかつ前記制御弁から出力される前記作動流体が流動する通路または前記制御弁の出力口と前記ブレーキ作動装置とを連通しかつ前記制御弁から出力される前記ブレーキ圧が伝達される通路と、前記ブレーキ作動装置の前記ブレーキ力により、車輪と連動して回転する回転部材に摩擦部材を押圧する制動部と、前記通路に設けられ、前記ブレーキ作動装置への前記作動流体の流動または前記ブレーキ作動装置への前記ブレーキ圧の伝達を制限して摩擦ブレーキの作動を制限する摩擦ブレーキ制限手段と、この摩擦ブレーキ制限手段を制御する摩擦ブレーキ制御用電子制御装置とを備えている摩擦ブレーキ装置と、
車輪の回転でモータが回転することにより発電する発電機、この発電機により発電された電力を貯える蓄電器および前記発電機のモータを制御するモータ制御用電子制御装置を少なくとも備えている回生ブレーキ装置と、
前記ブレーキ操作手段のブレーキ操作を検出し、そのブレーキ操作検出信号を前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置と前記モータ制御用電子制御装置とに出力するブレーキ操作検出手段とを備え、
前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置は前記ブレーキ操作検出手段からの前記ブレーキ操作検出信号に基づいて前記摩擦ブレーキ制限手段を、前記作動流体の流動または前記ブレーキ圧の伝達を制限するように制御する制御手段であり、
前記モータ制御用電子制御装置は前記ブレーキ操作検出手段からの前記ブレーキ操作検出信号に基づいて回生ブレーキ装置の発電機を作動するとともに回生トルクに関係する前記発電機の発電量を制御する制御手段であり、
前記モータ制御用電子制御装置は、前記発電機の発電量を監視し、前記発電量の減少を検出したとき、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置にデューティ制御による摩擦ブレーキの作動信号を出力する回生トルク監視制御手段を備えていることを特徴とする回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム。 - 前記摩擦ブレーキ制限手段は常開の電磁開閉弁であり、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置は、前記ブレーキ操作検出手段からの前記ブレーキ操作検出信号に基づいて前記電磁開閉弁を閉に制御することを特徴とする請求項1記載の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム。
- 前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置は、前記回生トルク監視制御手段からの前記摩擦ブレーキの作動信号に基づいて前記電磁開閉弁の開閉をデューティ制御することを特徴とする請求項2記載の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム。
- 前記回生トルク監視制御手段は、前記回生トルクの減少率を算出し、算出した回生トルク減少率に基づいて前記デューティ制御のデューティ比を決定し、決定したデューティ比により前記電磁開閉弁の前記デューティ制御を行う制御手段であることを特徴とする請求項3記載の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム。
- 車輪の車輪速を検出し、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置または前記モータ制御用電子制御装置に車輪速信号を出力する車輪速センサが設けられており、前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置または前記モータ制御用電子制御装置は、前記車輪速信号に基づいて車速を監視し、前記車速が設定速度以下になったことを検出したとき、前記電磁開閉弁の開信号を出力する車速監視制御手段を備えていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1記載の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム。
- 前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置または前記モータ制御用電子制御装置は、更に前記車速監視制御手段によって車速が0であることが検出されかつ前記ブレーキ操作検出手段のブレーキ操作が所定時間以上継続して操作されたことが検出されたとき、前記電磁開閉弁の閉信号を出力する停車保持制御手段を備えていることを特徴とする請求項5記載の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム。
- 停車保持制御手段は、車両発進操作手段の発進操作が検出されたとき、前記前記電磁開閉弁の開信号を出力する制御手段であることを特徴とする請求項6記載の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム。
- 前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置または前記モータ制御用電子制御装置は、前記ブレーキ操作検出手段のブレーキ操作量増加速度を算出し、算出したブレーキ操作量増加速度が設定値を超えたことを検出したとき、前記電磁開閉弁の開信号を出力するブレーキ操作量増加速度算出手段を備えていることを特徴とする請求項2ないし7のいずれか1記載の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム。
- 前記摩擦ブレーキ制御用電子制御装置または前記モータ制御用電子制御装置は、前記ブレーキ操作手段のブレーキ操作量を算出し、算出したブレーキ操作量が設定値を超えたことを検出したとき、前記電磁開閉弁の開信号を出力するブレーキ操作量算出手段を備えていることを特徴とする請求項2ないし8のいずれか1記載の回生ブレーキ連動摩擦ブレーキシステム。
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