JP3584535B2 - テンサイの増糖方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はテンサイの増糖方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、テンサイの糖量を増加させる方法としては、窒素、燐酸、カリ等の肥料の施用、育種法による多収性優良品種の選抜が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、肥料の施用の場合、その効果を最大限発揮させるには栽培土壌毎に適合した適切な管理が必須であり、過度の施用を行っても糖量は増えず、逆に茎葉重が重くなってしまう。また育種法による多収性優良品種の選抜の場合、10年単位の時間と多くの労力を要するが、必ずしも飛躍的な増糖を得られるとは限らない。仮に優良品種を作出できても、栽培地域によって適応性が異なるため広範囲な地域において該品種を利用することは容易でない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような状況下で、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ある種の生理作用を示す植物生長調節剤を、特定な時期のテンサイ植物に茎葉散布することによって、栽培地域に関係なくしかも容易にテンサイの糖量を著しく向上させることができることを見い出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を、茎葉繁茂期にあるテンサイ植物に茎葉散布することを特徴とするテンサイの増糖方法(以下、本発明方法と記す。)を提供するものである。
【0005】
以下、さらに詳細に本発明を説明する。
本発明の対象となる植物は、ベータ(Beta)属ブルガーリス(vulgaris)種に属する植物であるテンサイである。該テンサイの品種としては、例えば、メロディ、スターヒル、モノホマレ、ポリラーベ、カーベポリ、ソロラーベ、カーベメガモノ、モノホープ、モノヒル、Bushel、Monteso、ビクトリア、Gala、Edda、Tina、クロスビース・エジプシャン、デトロイト・ダーク・レッド等をあげることができる。
【0006】
本発明で用いられる薬剤は、「ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤」である。
ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤は、例えば、植物の草丈の伸長を抑制する等の典型的な作用を示すものであり、代表的な化合物としては、例えば、(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(特開昭56−25105号公報に記載される化合物)もしくはその塩、(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オール(特開昭53−28170号公報に記載される化合物)もしくはその塩、(E)−1−シクロヘキシル−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(特開昭55−111477号公報に記載される化合物)もしくはその塩、rel−(1R,2R,6S,7R,8R,11S)−5−(4−クロロフェニル)−3,4,5,9,10−ペンタアザテトラシクロ[5.4.1.O2,6 .O8,11]ドデカ−3,9−ジエン(Short Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第316頁に記載の化合物)もしくはその塩等のトリアゾール系化合物や4’−クロロ−2’−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリド(Short Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第306頁に記載の化合物)等のイソニコチンアニリド系化合物や(RS)−2−メチル−1−ピリミジン−5−イル−1−(4−トリフルオロメトキシフェニル)プロパン−1−オール(米国特許第4002628号及びShort Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第318頁に記載される化合物)もしくはその塩、α−シクロプロピル−4−メトキシ−α−(ピリミジン−5−イル)−ベンジルアルコール(英国特許第1218623号及びShort Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第318頁に記載される化合物)もしくはその塩等のピリミジン系化合物等があげられる。これら薬剤は一種単独でも二種以上の混合物であってもよい。もちろん、光学活性な異性体を有する化合物においては、植物生長調節活性を有する光学活性な異性体を用いることもできる。
【0007】
上記のようなジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤は、通常、液体担体、固体担体、界面活性剤、その他の製剤用補助剤を用いて乳剤、液剤、水和剤、懸濁剤、粒剤等に製剤して用いられる。これらの製剤には、有効成分が重量比で、通常、約0.00001〜約99.9%含有される。
【0008】
用いられる液体担体としては、例えば、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素、イソプロパノール、エチレングリコール、セロソルブ等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、大豆油、綿実油等の植物油、ジメチルスオルホキシド、アセトニトリル、液状複合肥料、水等をあげることができる。
固体担体としては、例えば、カオリンクレー、アタパルジャイトクレー、ベントナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石、クルミ殻粉、尿素、硫酸アンモニウム、化成肥料、合成含水酸化珪素等の微粉末あるいは粒状物があげられる。
【0009】
乳化、分散、湿潤、展開、結合、崩壊性調節、有効成分安定化、流動性改良、防錆等の目的で使用される界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性および両性イオン性のいづれのものをも使用しうるが、通常は非イオン性および/または陰イオン性のものが使用される。代表的な非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等をあげることができる。また代表的な陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホこはく酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩等があげられる。
【0010】
その他の製剤用補助剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルギン酸塩、ポリビニールアルコール、アラビアガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PAP(酸性リン酸イソプロピル)等をあげることができる。
【0011】
このようにして製剤されたジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤の処理濃度や処理量は、該植物生長調節剤の種類等によりことなるが、通常、有効成分が約0.01〜約1000ppmの溶液を、有効成分量として約0.1〜約50000g/ha、好ましくはトリアゾール系化合物の場合には、約0.1〜約5000g/ha、イソニコチンアニリド系化合物の場合には、約1〜約50000g/ha、ピリミジン系化合物の場合には、約0.1〜約5000g/haの割合で施用する。もちろん、ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を処理する場合には、本発明の効果を妨げない範囲において、肥料、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、その他の植物生長調節剤との混合も可能である。
【0012】
つぎに、本発明における薬剤散布時期、すなわち「茎葉繁茂期」について説明する。
本発明では、上記のような植物生長調節剤を、茎葉繁茂期にあるテンサイ植物に茎葉散布することが必須である。
ところで、テンサイの生育は、稚苗期、生育初期、茎葉繁茂期、登熟期、収穫期を経る。そして本発明でいう茎葉繁茂期の期間は、地上部の生育の最も盛んな時期で、本葉が8から9枚程度以上になる時期から地上部乾物重が最高に達する時期までをいう(ビートの安定多収栽培 著者 男沢良吉 他 発行所 社団法人 農山漁村文化協会 昭和52年7月30日 第1刷発行 第31頁〜第35頁)。該期間は、天候、品種、栽培条件等によっても異なるが、たとえば、北海道において4月下旬に直播または移植すると、およそ7月上旬から9月上旬までに相当する約2カ月間であり、この期間における根中糖分(%)はおよそ7から12程度である。
【0013】
本発明の薬剤処理方法は、噴霧、散粉等による茎葉散布である。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を製剤例および試験例によってさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、製剤例を示す。これらの製剤例中、部は重量部を表すものである。
【0015】
製剤例1 (乳剤)
(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(以下、化合物Aと記す。)5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル10部およびシクロヘキサノン50部にキシレンを加えて全体を100部とし、攪拌混合することにより乳剤を得る。
【0016】
製剤例2 (水和剤)
(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オール(以下、化合物Bと記す。)10部、ラウリル硫酸ナトリウム5部および芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物2部にカオリンクレーを加えて全体を100部とし、ジュースミキサーでよく混合した後ジェットミルで微粉砕することにより水和剤を得る。
【0017】
製剤例3 (乳剤)
3,5−ジオキソ−4−プロピオニルシクロヘキサンカルボン酸(以下、化合物Cと記す。)5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル10部およびシクロヘキサノン50部にキシレンを加えて全体を100部とし、攪拌混合することにより乳剤を得る(なお、化合物Cは特開昭59−196840号公報に記載される。)。
【試験例】
次に、試験例を示す。
【0018】
試験例1
圃場においてテンサイ(品種、メロディ)を栽培し、茎葉繁茂期(播種後79日:本葉が21枚まで生育)に、製剤例2に準じて水和剤に調製した化合物Aの50ppm溶液を、200L/haの薬剤処理量(有効薬剤成分量:10g/ha)で茎葉散布した。播種から172日間栽培した後、糖量を調査した。糖量は一株当たりの根重と根中糖度(根のBrix値)の積で示した。糖量の調査結果を表1に示す。なお、糖量は対照区(無処理区)を100%とした相対値で示した。
表1から明らかなように本発明区では対照区(無処理区)と比較して、顕著な増糖効果を示した。
【0019】
【表1】
【0020】
試験例2
50ppm溶液(有効薬剤成分量:10g/ha)の代わりに、20ppm溶液(有効薬剤成分量:4g/ha)を用いること以外は試験例1と同様な方法によって試験した。その結果、本発明区では対照区(無処理区)と比較して、127.9(%)というすぐれた増糖効果が認められた。
【0021】
試験例3
化合物A[50ppm溶液(有効薬剤成分量:10g/ha)]の代わりに化合物B[1500ppm溶液(有効薬剤成分量:300g/ha)]を用いること以外は試験例1と同様な方法によって試験した。その結果、同様な増糖効果が認められた。
【0022】
【発明の効果】
本発明により、栽培地域に関係なくしかも容易にテンサイの糖量を著しく向上させることが可能になった。
Claims (4)
- ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を茎葉繁茂期にあるテンサイ植物に茎葉散布することを特徴とするテンサイの増糖方法。
- ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤がトリアゾール系化合物、イソニコチンアニリド系化合物またはピリミジン系化合物であることを特徴とする請求項1記載のテンサイの増糖方法。
- トリアゾール系化合物が(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オールもしくはその塩、または(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オールもしくはその塩、あるいはイソニコチンアニリド系化合物が4’−クロロ−2’−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリドもしくはその塩であることを特徴とする請求項2記載のテンサイの増糖方法。
- (E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オールもしくはその塩を、茎葉繁茂期にあるテンサイ植物に茎葉散布することを特徴とするテンサイの増糖方法。
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