JP3601129B2 - タマネギの増収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタマネギの増収方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、タマネギを増収させる場合、窒素、燐酸、カリ等の肥料の施用、育種法による多収性優良品種の選抜が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、肥料の施用の場合、肥料の効果を最大限発揮させるには適切な量を植物の各生育時期に応じて分けて施用する必要があり、さらに栽培土壌に適合した適切な管理も必須である。また育種法による多収性優良品種の選抜の場合、数年間という長い期間がかかり、しかもその間において多くの労力を必要とするが、必ずしも飛躍的な増収は期待でない。仮に優良品種が出ても、栽培地域によって適応性が異なるために広範囲な地域において該品種を利用することは容易でない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような状況下で、本発明者らは鋭意検討を行った結果、ある種の生理作用を示す植物生長調節剤を、特定な時期のタマネギ植物に茎葉散布することによって、容易にタマネギの収量を著しく向上させることができることを見い出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を、鱗葉形成期から球茎肥大期にあるタマネギ植物に茎葉散布することを特徴とするタマネギの増収方法(以下、本発明方法と記す。)を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、さらに詳細に本発明を説明する。
本発明の対象となる植物は、タマネギ植物である。ここでいう「タマネギ植物」とは、Allium cepa L.グループに属する植物を意味し、例えば、オーストラリアン・ブラウン、イエロー・バミューダ、エベニーザー、アーリー・イエロー・グローブ、マウンテン・ダンバース、オハイオ・イエロー・グローブ、アーリー・グラノ、イエロー・グローブ・ダンバース、サウスボード・イエロー・グローブ、プリハム・イエロー・グローブ、スイート・スパニッシュ、クリスタル・ワックス、ホワイト・クロール、ホワイト・ポルトガル、サウスポート・ホワイト・グローブ、ホワイト・スイート・スパニッシュ、カリフォルニア・アーリー・レッド、イタリアン・レッド、レッド・ウェザース・フィールド、レッド・クロール、サウスポート・レッド・グローブ等の各群をあげることができる。
【0006】
本発明で用いられる薬剤は、「ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤」である。
ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤は、例えば、植物の草丈の伸長を抑制する等の典型的な作用を示すものであり、代表的な化合物としては、例えば、(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(特開昭56−25105号公報に記載される化合物)もしくはその塩、(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オール(特開昭53−28170号公報に記載される化合物)もしくはその塩、(E)−1−シクロヘキシル−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(特開昭55−111477号公報に記載される化合物)もしくはその塩、rel−(1R,2R,6S,7R,8R,11S)−5−(4−クロロフェニル)−3,4,5,9,10−ペンタアザテトラシクロ[5.4.1.O2,6 .O8,11]ドデカ−3,9−ジエン(Short Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第316頁に記載の化合物)もしくはその塩等のトリアゾール系化合物や4’−クロロ−2’−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリド(Short Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第306頁に記載の化合物)等のイソニコチンアニリド系化合物や(RS)−2−メチル−1−ピリミジン−5−イル−1−(4−トリフルオロメトキシフェニル)プロパン−1−オール(米国特許第4002628号及びShort Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第318頁に記載される化合物)もしくはその塩、α−シクロプロピル−4−メトキシ−α−(ピリミジン−5−イル)−ベンジルアルコール(英国特許第1218623号及びShort Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第318頁に記載される化合物)もしくはその塩等のピリミジン系化合物等があげられる。これら薬剤は一種単独でも二種以上の混合物であってもよい。もちろん、光学活性な異性体を有する化合物においては、植物生長調節活性を有する光学活性な異性体を用いることもできる。
【0007】
上記のようなジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤は、通常、液体担体、固体担体、界面活性剤、その他の製剤用補助剤を用いて乳剤、液剤、水和剤、懸濁剤等に製剤して用いられる。これらの製剤には、有効成分が重量比で、通常、約0.00001〜約99.9%含有される。
【0008】
用いられる液体担体としては、例えば、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素、イソプロパノール、エチレングリコール、セロソルブ等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、大豆油、綿実油等の植物油、ジメチルスオルホキシド、アセトニトリル、液状複合肥料、水等をあげることができる。
固体担体としては、例えば、カオリンクレー、アタパルジャイトクレー、ベントナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石、クルミ殻粉、尿素、硫酸アンモニウム、化成肥料、合成含水酸化珪素等の微粉末あるいは粒状物があげられる。
【0009】
乳化、分散、湿潤、展開、結合、崩壊性調節、有効成分安定化、流動性改良、防錆等の目的で使用される界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性および両性イオン性のいずれのものをも使用しうるが、通常は非イオン性および/または陰イオン性のものが使用される。代表的な非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等をあげることができる。また代表的な陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホこはく酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩等があげられる。
【0010】
その他の製剤用補助剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルギン酸塩、ポリビニールアルコール、アラビアガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PAP(酸性リン酸イソプロピル)等を挙げることができる。
【0011】
このようにして製剤されたジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤の処理濃度や処理量は、該植物生長調節剤の種類等によりことなるが、通常、有効成分が約0.01〜約1000ppmの溶液を、有効成分量として約0.1〜約50000g/ha、好ましくはトリアゾール系化合物の場合には、約0.1〜約5000g/ha、イソニコチンアニリド系化合物の場合には、約1〜約50000g/ha、ピリミジン系化合物の場合には、約0.1〜約5000g/haの割合で施用する。もちろん、ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を処理する場合には、本発明の効果を妨げない範囲において、肥料、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、その他の植物生長調節剤との混合も可能である。
【0012】
つぎに、本発明における薬剤散布時期、すなわち「鱗葉形成期から球茎肥大期」について説明する。
本発明では、上記のような植物生長調節剤を、鱗葉形成期から球茎肥大期にあるタマネギ植物に茎葉散布することが必須である。
タマネギ植物は、発芽後25日目で約2枚、75日目で3〜4枚の葉が出現する。これまでの期間を幼苗期という。通常この頃に畑へ移植する。その後、栄養生長期となり葉鞘に対する葉身の比が1以上である普通葉が展開する。この期間に長日条件となると5〜10枚の普通葉が展開した後、葉鞘に対する葉身の比が1以下である鱗葉が形成され鱗葉形成期となり、その葉鞘が肥厚して球を形成し球茎肥大期になる。球茎の肥大が進行すると、約1ヵ月後に葉が葉鞘のところからくびれて倒れる。これが倒伏といわれる現象である。倒伏後も約1ヵ月間は球茎が肥大し、この期間を充実期という。その後、休眠期に入り肥大は停止する。そして本発明でいう「鱗葉形成期から球茎肥大期」の期間は、天候、品種、栽培条件等によっても異なるが一般的には秋播き栽培、春どり栽培で移植後、約100〜170日の間で、春播き栽培で移植後、約30〜110日の間で、冬どり栽培で移植後、約30〜100日の間である。
具体的には、天候、栽培条件等によっても異なるが、例えば、春播き栽培に用いられるタマネギである「札幌黄」・「フラヌイ」・「キタモミジ」では、移植が4月中旬から6月下旬で、鱗葉形成期から球茎肥大期が5月中旬から9月中旬で、収穫期が7月中旬から10月下旬であり、秋播き栽培、春どり栽培に用いられるタマネギである「愛知白」・「大阪中生」・「淡路中甲高」・「今井系」・「O.P.黄」では、移植が10月下旬から12月中旬で、鱗葉形成期から球茎肥大期が2月中旬から6月下旬で、収穫期が4月上旬から7月下旬であり、冬どり栽培に用いられるタマネギである「貝塚系」・「O.A.黄」では、移植が8月上旬から9月下旬で、鱗葉形成期から球茎肥大期が9月上旬から12月上旬で、収穫期が11月上旬から1月下旬である。
【0013】
本発明の薬剤処理方法は、噴霧、散粉等による茎葉散布である。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を製剤例および試験例によってさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、製剤例を示す。これらの製剤例中、部は重量部を表すものである。
【0015】
製剤例1 (乳剤)
(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(以下、化合物Aと記す。)5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル10部およびシクロヘキサノン50部にキシレンを加えて全体を100部とし、攪拌混合することにより乳剤を得る。
【0016】
製剤例2 (水和剤)
(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オール(以下、化合物Bと記す。) 10部、ラウリル硫酸ナトリウム5部および芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物2部にカオリンクレーを加えて全体を100部とし、ジュースミキサーでよく混合した後ジェットミルで微粉砕することにより水和剤を得る。
次に、試験例を示す。
【0017】
試験例1
圃場においてタマネギ(品種、O.P.黄)を栽培し、鱗葉形成期(移植後150日)に、製剤例2に準じて水和剤に調製した化合物Aの50ppm溶液を、200L/haの薬剤処理量で茎葉散布した。移植から184日間栽培した後、収量を調査した。収量は、1区4.8平方メートル中の連続した20株について球重量を調査し、一株当たりの平均値を求めた。
収量の調査結果を表1に示す。なお、本試験は1区3反復にて行った。収量は3反復の平均値を求め、対照区(無処理区)を100%とした相対値で示した。表1から明らかなように本発明区では対照区(無処理区)と比較して、きわめて高い増収効果を示した。
【0018】
【表1】
【0019】
試験例2
化合物Aの薬剤散布時期を、球茎肥大期(移植後150日)の代わりに、鱗葉形成期(移植後133日)としたこと以外は試験例1と同様な方法によって試験した。その結果を表2に示す。
表2から明らかなように本発明区では対照区(無処理区)と比較して、きわめて高い増収効果を示した。
【0020】
【表2】
【0021】
試験例3
薬剤処理濃度50ppmの代わりに20ppmを用いること以外は試験例2と同様な方法によって試験した。その結果を表3に示す。
表3から明らかなように本発明区では対照区(無処理区)と比較して、きわめて高い増収効果を示した。
【0022】
【表3】
【0023】
試験例4
化合物A〔薬剤処理濃度(ppm):50〕の代わりに化合物B〔薬剤処理濃度(ppm):500〕を用いること以外は試験例2と同様な方法によって試験した。その結果、同様な増収効果が認められた。
【0024】
【発明の効果】
本発明により、容易にタマネギの収量を著しく向上させることが可能になった。
Claims (4)
- ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を、鱗葉形成期から球茎肥大期にあるタマネギ植物に茎葉散布することを特徴とするタマネギの増収方法。
- ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤がトリアゾール系化合物、イソニコチンアニリド系化合物またはピリミジン系化合物であることを特徴とする請求項1記載のタマネギの増収方法。
- トリアゾール系化合物が(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オールもしくはその塩、または(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オールもしくはその塩、あるいはイソニコチンアニリド系化合物が4’−クロロ−2’−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリドもしくはその塩であることを特徴とする請求項2記載のタマネギの増収方法。
- (E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オールもしくはその塩を、鱗葉形成期から球茎肥大期にあるタマネギ植物に茎葉散布することを特徴とするタマネギの増収方法。
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