JP3562036B2 - サツマイモの増収方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はサツマイモの増収方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、サツマイモの収量を増加させる場合、窒素、燐酸、カリ等の肥料の施用、育種法による多収性優良品種の選抜が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、肥料の施用の場合、過度の施用によりサツマイモの収量が減少することがあり、肥料の効果を最大限発揮させるには栽培土壌に適合した適切な管理が必須である。また育種法による多収性優良品種の選抜の場合、年単位の時間、多くの労力を必要とするが、必ずしも飛躍的な増収は期待できない。仮に優良品種が出ても、栽培地域によって適応性が異なるため広範囲な地域において該品種を利用することは容易でない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような状況下で、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ある種の生理作用を示す植物生長調節剤を、特定な時期のサツマイモ植物に茎葉散布することによって、栽培地域に関係なくしかも容易にサツマイモの収量を著しく向上させることができることを見い出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を、塊根肥大中期にあるサツマイモ植物に茎葉散布することを特徴とするサツマイモの増収方法(以下、本発明方法と記す。)を提供するものである。
【0005】
以下、さらに詳細に本発明を説明する。
本発明の対象となる植物は、サツマイモ植物である。サツマイモ植物の代表的な品種としては、例えば、「護国藷」、「甘藷農林1号」、「甘藷農林2号」、、「甘藷農林8号」、「シロセンガン(甘藷農林13号)」、「ベニセンガン(甘藷農林19号)」、「ベニワセ(甘藷農林23号)」、「なると金時」、「コガネセンガン」、「シロサツマ」、「シロユタカ」、「沖縄100号」等をあげることができる。
【0006】
本発明で用いられる薬剤は、「ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤」である。
ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤は、例えば、植物の草丈の伸長を抑制する等の典型的な作用を示すものであり、代表的な化合物としては、例えば、(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(特開昭56−25105号公報に記載される化合物)もしくはその塩、(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オール(特開昭53−28170号公報に記載される化合物)もしくはその塩、(E)−1−シクロヘキシル−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(特開昭55−111477号公報に記載される化合物)もしくはその塩、rel−(1R,2R,6S,7R,8R,11S)−5−(4−クロロフェニル)−3,4,5,9,10−ペンタアザテトラシクロ[5.4.1.O2,6 .O8,11]ドデカ−3,9−ジエン(Short Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第316頁に記載の化合物)もしくはその塩等のトリアゾール系化合物や4’−クロロ−2’−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリド(Short Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第306頁に記載の化合物)等のイソニコチンアニリド系化合物や(RS)−2−メチル−1−ピリミジン−5−イル−1−(4−トリフルオロメトキシフェニル)プロパン−1−オール(米国特許第4002628号及びShort Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第318頁に記載される化合物)もしくはその塩、α−シクロプロピル−4−メトキシ−α−(ピリミジン−5−イル)−ベンジルアルコール(英国特許第1218623号及びShort Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第318頁に記載される化合物)もしくはその塩等のピリミジン系化合物等があげられる。これら薬剤は一種単独でも二種以上の混合物であってもよい。もちろん、光学活性な異性体を有する化合物においては、植物生長調節活性を有する光学活性な異性体を用いることもできる。
【0007】
上記のようなジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤は、通常、液体担体、固体担体、界面活性剤、その他の製剤用補助剤を用いて乳剤、液剤、水和剤、懸濁剤等に製剤して用いられる。これらの製剤には、有効成分が重量比で、通常、約0.00001〜約99.9%含有される。
【0008】
用いられる液体担体としては、例えば、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素、イソプロパノール、エチレングリコール、セロソルブ等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、大豆油、綿実油等の植物油、ジメチルスオルホキシド、アセトニトリル、液状複合肥料、水等をあげることができる。
固体担体としては、例えば、カオリンクレー、アタパルジャイトクレー、ベントナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石、クルミ殻粉、尿素、硫酸アンモニウム、化成肥料、合成含水酸化珪素等の微粉末あるいは粒状物があげられる。
【0009】
乳化、分散、湿潤、展開、結合、崩壊性調節、有効成分安定化、流動性改良、防錆等の目的で使用される界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性および両性イオン性のいづれのものをも使用しうるが、通常は非イオン性および/または陰イオン性のものが使用される。代表的な非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等をあげることができる。また代表的な陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホこはく酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩等があげられる。
【0010】
その他の製剤用補助剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルギン酸塩、ポリビニールアルコール、アラビアガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PAP(酸性リン酸イソプロピル)等をあげることができる。
【0011】
このようにして製剤されたジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤の処理濃度や処理量は、該植物生長調節剤の種類等によりことなるが、通常、有効成分が約0.01〜約1000ppmの溶液を、有効成分量として約0.1〜約50000g/ha、好ましくはトリアゾール系化合物の場合には、約0.1〜約5000g/ha、イソニコチンアニリド系化合物の場合には、約1〜約50000g/ha、ピリミジン系化合物の場合には、約0.1〜約5000g/haの割合で施用する。もちろん、ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を処理する場合には、本発明の効果を妨げない範囲において、肥料、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、その他の植物生長調節剤との混合も可能である。
【0012】
つぎに、本発明における薬剤散布時期、すなわち「塊根肥大中期」について説明する。
本発明では、上記のような植物生長調節剤を、塊根肥大中期にあるサツマイモ植物に茎葉散布することが必須である。
サツマイモは、根が塊状に肥大し、貯蔵根として発達したものである。したがって、サツマイモは地上部の生育とともに根の塊根化過程が収量の決定に重要である。サツマイモの不定根は、一般的に、苗移植後約5日で皮層の細胞層が破生細胞間隙に富み始め、約10日で第1期形成層が発達し、約20日で第2形成層が発達(不定根とイモとの区別がつくようになる)し、以後、塊根肥大初期、塊根肥大中期、塊根肥大後期を経て塊根化する。塊根肥大初期には木部柔組織内で大形の柔細胞が数個の柔細胞に分裂・増加(第3形成層が発達)し、つぎに塊根肥大中期に中心柱の柔組織内で帯状又は環状の形成層が発生するようになる。その後、塊根肥大後期に細胞数増加は緩慢となる。
本発明でいう塊根肥大中期の期間は、天候、品種、栽培条件等によっても異なるが一般的には苗移植後、約25〜60日の間である。
【0013】
本発明の薬剤処理方法は、噴霧、散粉等による茎葉散布である。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を製剤例および試験例によっさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、製剤例を示す。これらの製剤例中、部は重量部を表すものである。
【0015】
製剤例1 (乳剤)
(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(以下、化合物Aと記す。)5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル10部およびシクロヘキサノン50部にキシレンを加えて全体を100部とし、攪拌混合することにより乳剤を得る。
【0016】
製剤例2 (水和剤)
(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オール(以下、化合物Bと記す。)10部、ラウリル硫酸ナトリウム5部および芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物2部にカオリンクレーを加えて全体を100部とし、ジュースミキサーでよく混合した後ジェットミルで微粉砕することにより水和剤を得る。
【0017】
製剤例3 (乳剤)
3,5−ジオキソ−4−プロピオニルシクロヘキサンカルボン酸(以下、化合物Cと記す。)5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル10部およびシクロヘキサノン50部にキシレンを加えて全体を100部とし、攪拌混合することにより乳剤を得る(なお、化合物Cは特開昭59−196840号公報に記載される。)。
次に、試験例を示す。
【0018】
試験例1
圃場においてサツマイモ(品種、なると金時)を栽培し、塊根肥大中期(苗移植後40日)に、製剤例2に準じて水和剤に調製した化合物Aの10ppm溶液を、200L/haの薬剤処理量で茎葉散布した。移植から116日間栽培した後、収量を調査した。収量は一株当たりの上いも(1個重50g以上)数と上いも1個平均重の積で示した。
収量の調査結果を第1表に示す。なお、収量は対照区(無処理区)を100%とした相対値で示した。
表1から明らかなように本発明区では対照区(無処理区)と比較して、きわめて高い増収効果を示した。
【0019】
【表1】
【0020】
試験例2
薬剤処理濃度10ppm溶液を用いる代わりに、5ppm溶液を用いること以外は試験例1と同様な方法によって試験した。その結果を表2に示す。
表2から明らかなように本発明区では対照区(無処理区)と比較して、きわめて高い増収効果を示した。
【0021】
【表2】
【0022】
試験例2
化合物A[薬剤処理濃度(ppm):10]の代わりに化合物B[薬剤処理濃度(ppm):500]を用いること以外は試験例1と同様な方法によって試験した。その結果、同様な増収効果が認められた。
【0023】
【発明の効果】
本発明により、容易にサツマイモの収量を著しく向上させることが可能になった。
Claims (4)
- ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を塊根肥大中期にあるサツマイモ植物に茎葉散布することを特徴とするサツマイモの増収方法。
- ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤がトリアゾール系化合物、イソニコチンアニリド系化合物またはピリミジン系化合物であることを特徴とする請求項1記載のサツマイモの増収方法。
- トリアゾール系化合物が(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オールもしくはその塩、または(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オールもしくはその塩、あるいはイソニコチンアニリド系化合物が4’−クロロ−2’−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリドもしくはその塩であることを特徴とする請求項2記載のサツマイモの増収方法。
- (E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オールもしくはその塩を、塊根肥大中期にあるサツマイモ植物に茎葉散布することを特徴とするサツマイモの増収方法。
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