JP3550801B2 - インゲン類の増収方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はインゲン類の増収方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、インゲン類を増収させる場合、窒素、燐酸、カリ等の肥料の施用、育種法による多収性優良品種の選抜が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、肥料の施用の場合、過度の施用により倒伏を引き起こす結果、収量減を招くことがあり、肥料の効果を最大限発揮させるには栽培土壌に適合した適切な管理が必須である。また育種法による多収性優良品種の選抜の場合、年単位の時間、多くの労力を必要とするが、必ずしも飛躍的な増収は期待でない。仮に優良品種が出ても、栽培地域によって適応性が異なるために広範囲な地域において該品種を利用することは容易でない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような状況下で、本発明者らは鋭意検討を行った結果、ある種の生理作用を示す植物生長調節剤を、特定な時期のインゲン類植物に茎葉散布することによって、容易にインゲン類の収量を著しく向上させることができることを見い出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を、花粉母細胞形成期から竜骨弁わん曲期までの期間または開花期にあるインゲン類植物に茎葉散布することを特徴とするインゲン類の増収方法(以下、本発明方法と記す。)を提供するものである。
【0005】
以下、さらに詳細に本発明を説明する。
本発明の対象となる植物は、インゲン類植物である。ここでいう「インゲン類植物」とは、Phaseolus 属に属する植物を意味し、例えば、インゲン(Phaseolus vulgaris L. )、アオイマメ(Phaseolus lunatus L.)、ライマメ(Phaseolus limensis MACF.)、ベニバナインゲン(Phaseolus coccineus L.)、モスビーン(Phaseolus aconitifolius JACQ. )、テパリービーン(Phaseolus acutifolius GRAY var. latifolius FREEM. )等をあげることができる。
【0006】
本発明で用いられる薬剤は、「ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤」である。
ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤は、例えば、植物の草丈の伸長を抑制する等の典型的な作用を示すものであり、代表的な化合物としては、例えば、(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(特開昭56−25105号公報に記載される化合物)もしくはその塩、(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オール(特開昭53−28170号公報に記載される化合物)もしくはその塩、(E)−1−シクロヘキシル−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(特開昭55−111477号公報に記載される化合物)もしくはその塩、rel−(1R,2R,6S,7R,8R,11S)−5−(4−クロロフェニル)−3,4,5,9,10−ペンタアザテトラシクロ[5.4.1.O2,6 .O8,11]ドデカ−3,9−ジエン(Short Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第316頁に記載の化合物)もしくはその塩等のトリアゾール系化合物や4’−クロロ−2’−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリド(Short Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第306頁に記載の化合物)等のイソニコチンアニリド系化合物や(RS)−2−メチル−1−ピリミジン−5−イル−1−(4−トリフルオロメトキシフェニル)プロパン−1−オール(米国特許第4002628号及びShort Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第318頁に記載される化合物)もしくはその塩、α−シクロプロピル−4−メトキシ−α−(ピリミジン−5−イル)−ベンジルアルコール(英国特許第1218623号及びShort Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ケ谷化学(株)出版,第318頁に記載される化合物)もしくはその塩等のピリミジン系化合物等があげられる。これら薬剤は一種単独でも二種以上の混合物であってもよい。もちろん、光学活性な異性体を有する化合物においては、植物生長調節活性を有する光学活性な異性体を用いることもできる。
【0007】
上記のようなジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤は、通常、液体担体、固体担体、界面活性剤、その他の製剤用補助剤を用いて乳剤、液剤、水和剤、懸濁剤等に製剤して用いられる。これらの製剤には、有効成分が重量比で、通常、約0.00001〜約99.9%含有される。
【0008】
用いられる液体担体としては、例えば、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素、イソプロパノール、エチレングリコール、セロソルブ等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、大豆油、綿実油等の植物油、ジメチルスオルホキシド、アセトニトリル、水等をあげることができる。
固体担体としては、例えば、カオリンクレー、アタパルジャイトクレー、ベントナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石、クルミ殻粉、尿素、硫酸アンモニウム、合成含水酸化珪素等の微粉末あるいは粒状物があげられる。
【0009】
乳化、分散、湿潤、展開、結合、崩壊性調節、有効成分安定化、流動性改良、防錆等の目的で使用される界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性および両性イオン性のいずれのものをも使用しうるが、通常は非イオン性および/または陰イオン性のものが使用される。代表的な非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等をあげることができる。また代表的な陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホこはく酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩等があげられる。
【0010】
その他の製剤用補助剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルギン酸塩、ポリビニールアルコール、アラビアガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PAP(酸性リン酸イソプロピル)等を挙げることができる。
【0011】
このようにして製剤されたジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤の処理濃度や処理量は、該植物生長調節剤の種類等によりことなるが、通常、有効成分が約0.01〜約1000ppmの溶液を、有効成分量として約0.1〜約50000g/ha、好ましくはトリアゾール系化合物の場合には、約0.1〜約5000g/ha、イソニコチンアニリド系化合物の場合には、約1〜約50000g/haの割合で施用する。もちろん、ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を処理する場合には、本発明の効果を妨げない範囲において、肥料、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、その他の植物生長調節剤との混合も可能である。
【0012】
つぎに、本発明における薬剤散布時期、すなわち「花粉母細胞形成期から竜骨弁わん曲期までの期間または開花期」について説明する。
本発明では、上記のような植物生長調節剤を、花粉母細胞形成期から竜骨弁わん曲期までの期間または開花期にあるインゲン類植物に茎葉散布することが必須である。好ましくは、開花始日から約4週間の期間である。
ところで、インゲン類植物の花は、花房分化期、花芽分化期、がく片形成期、花弁初生期、雄ずい初生期、柱頭初生期、柱頭完成期、花粉母細胞形成期、四分子形成期、竜骨弁わん曲期を経てつくられる。そしてこの間は、天候、品種、栽培条件等によっても異なるが、例えば、早生型のインゲン(わい性品種)の場合、一般的には発芽後40日(花芽分化後28日に相当)程度かかる。このうち、花芽分化期は通常4〜5葉期に相当し、また、がく片形成期は花芽分化後約2日、花弁初生期は花芽分化後約3日、雄ずい初生期は花芽分化後約5日、柱頭初生期は花芽分化後約6日、柱頭完成期は花芽分化後約13日、花粉母細胞形成期は花芽分化後約16日、四分子形成期は花芽分化後約18日、竜骨弁わん曲期は花芽分化後約21日に相当している。したがって、本発明でいう花粉母細胞形成期から竜骨弁わん曲期までの期間とは、インゲン類植物における花の形成過程の最終段階の時期にあたり、例えば、インゲンの場合、開花前約1日〜約13日程度の時期になる。しかしながら、このような開花前日数は天候、品種、栽培条件等によって変化することもある。一方、開花期の期間は、天候、品種、栽培条件等によって6週間にわたるものもあるが、例えば、インゲンの場合、通常、早生型のインゲン(わい性品種)では約2週間から約4週間、遅生型のインゲン(つる性品種)では約3週間から約6週間である。
【0013】
本発明の薬剤処理方法は、噴霧、散粉等による茎葉散布である。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を製剤例および試験例によってさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、製剤例を示す。これらの製剤例中、部は重量部を表すものである。
【0015】
製剤例1 (乳剤)
(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(以下、化合物Aと記す。)5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル10部およびシクロヘキサノン50部にキシレンを加えて全体を100部とし、攪拌混合することにより乳剤を得る。
【0016】
製剤例2 (水和剤)
(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オール(以下、化合物Bと記す。) 10部、ラウリル硫酸ナトリウム5部および芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物2部にカオリンクレーを加えて全体を100部とし、ジュースミキサーでよく混合した後ジェットミルで微粉砕することにより水和剤を得る。
【0017】
製剤例3 (乳剤)
3,5−ジオキソ−4−プロピオニルシクロヘキサンカルボン酸(以下、化合物Cと記す。)5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル10部およびシクロヘキサノン50部にキシレンを加えて全体を100部とし、攪拌混合することにより乳剤を得る(なお、化合物Cは特開昭59−196840号公報に記載される。)。
次に、試験例を示す。
【0018】
試験例1
インゲン(品種、姫手芒)を栽培し、開花期(播種後52日)に、製剤例2に準じて水和剤に調製した化合物Aの4ppm溶液を、500L/haの薬剤処理量で茎葉散布した。播種から108日間栽培した後、収量を調査した。収量は、一株当りの総粒数と平均一粒重の積である子実収量で示した。ここで、総粒数とは稔実胚珠数であり、総胚珠数から胚の発育過程で子実として発達しなかった発育停止粒をもつ胚珠を差引いたものである。具体的には3mmメッシュのふるいにて稔実胚珠と子実として発達しなかった発育停止粒を選別し、収量を求めた。収量の調査結果を表1に示す。なお、本試験は1区3反復にて行った。収量は3反復の平均値を求め、対照区(無処理区)を100%とした相対値で示した。表1から明らかなように本発明区では対照区(無処理区)と比較して、きわめて高い増収効果を示した。
【0019】
【表1】
【0020】
試験例2
薬剤処理濃度4ppm、薬剤処理量500L/haの代わりに、50ppm、200L/haを用いること以外は試験例1と同様な方法によって試験した。その結果を表2に示す。
表2から明らかなように本発明区では対照区(無処理区)と比較して、上記の試験例1と同様にきわめて高い増収効果を示した。
【0021】
【表2】
【0022】
試験例3
化合物A〔薬剤処理濃度(ppm):4〕の代わりに化合物B〔薬剤処理濃度(ppm):200〕を用いること以外は試験例1と同様な方法によって試験した。その結果、同様な増収効果が認められた。
【0023】
【発明の効果】
本発明により、容易にインゲン類の収量を著しく向上させることが可能になった。
Claims (4)
- ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤を、花粉母細胞形成期から竜骨弁わん曲期までの期間または開花期にあるインゲン類植物に茎葉散布することを特徴とするインゲン類の増収方法。
- ジベレリン生合成阻害型植物生長調節剤がトリアゾール系化合物またはイソニコチンアニリド系化合物であることを特徴とする請求項1記載のインゲン類の増収方法。
- トリアゾール系化合物が(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オールもしくはその塩、または(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オールもしくはその塩、あるいはイソニコチンアニリド系化合物が4’−クロロ−2’−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリドもしくはその塩であることを特徴とする請求項2記載のインゲン類の増収方法。
- (E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オールまたはその塩を、花粉母細胞形成期から竜骨弁わん曲期までの期間または開花期にあるインゲン類植物に茎葉散布することを特徴とするインゲン類の増収方法。
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