JP3584359B2 - 紫外線硬化性ホットメルト型粘着剤組成物 - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、耐候性、耐久性、耐溶剤性、さらに高温での粘着性能、とくに、粘着性保持力に優れる、紫外線硬化性ホットメルト型粘着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アクリル系重合体を用いた粘着剤は耐候性、耐久性、耐溶剤性、透明性に優れていることから、さまざまの用途に使用されている。現在、使用されているアクリル系重合体を用いた粘着剤は溶剤型粘着剤とエマルジョン型粘着剤とに分けられ、溶剤型粘着剤は有機溶剤を多量に含んでいるため、その作業環境が悪い、有機溶剤が公害発生原因となる、爆発、火災発生の危険性があるといった問題点を有している。また、溶剤型粘着剤を製造する際の乾燥工程では、多量のエネルギーを必要とし、乾燥設備も大きくなり経済性にも問題がある。一方、エマルジョン型粘着剤は、爆発や火災の危険性は少ないものの、やはり、乾燥工程が必要であり、その乾燥工程で必要なエネルギーは、溶剤型粘着剤よりも多量のエネルギーを必要とし、乾燥設備も大きくなるといった問題点も有している。
【0003】
そこで、例えば、特開昭59−75975号公報、特開昭60−23469号公報、特開昭61−109371号公報などに示されるように、有機溶剤を全く使用せず、樹脂を熱溶融することにより塗工するアクリル系ホットメルト型粘着剤が提案されている。
【0004】
しかし、これら従来のアクリル系共重合体を用いたホットメルト型粘着剤は、高温における粘着物性、とくに、保持力が劣るため、特開平2−276879号公報、特開平3−115481号公報、特開平3−119081号公報、特開平3−119082号公報、特開平3−220275号公報などに示されるように、熱可塑性アクリル樹脂に1分子中に不飽和二重結合を2個以上有するモノマーを配合し、活性エネルギー線によってラジカル重合させて粘着層を形成することにより、該粘着層の、高温での保持力を改良する方法が提案されてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらのラジカル重合型の粘着剤は、主に電子線硬化をうたっており、電子線発生装置のコストが非常に高くなっている。また、これらを紫外線で硬化させる場合、硬化装置のコストは低くなるものの、硬化速度が遅いため、粘着剤製造のためのラインスピードが制限される。また、該粘着剤中には不飽和二重結合が含まれているため、熱重合が起きやすく、粘着剤中の溶剤除去時や粘着剤の塗工工程における、高温での処理時の安定性が不足するという難点がある。これらの改良対策として、粘着剤中に酸化防止剤などの重合禁止剤を配合することが提案されているが、その場合、添加剤に由来する粘着剤の着色が問題になりやすい。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、従来の活性エネルギー線硬化性アクリル系ホットメルト型粘着剤の上記の欠点を改良することを目的として種々検討した結果、アクリル樹脂系ベースポリマーに、脂環式エポキシ基を導入し、これにカチオン重合型光開始剤、エポキシドとカチオン共重合性のあるポリオールを配合することにより、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明における紫外線硬化性ホットメルト型粘着剤組成物は、
A成分として、(1)一般式[1]で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル80〜99.9重量部と、
【化3】
CH=CR−COOR … [1]
(式中、RはHまたはCHを、Rは炭素数1〜18の鎖状炭化水素を示す。)
(2)シクロヘキセンモノエポキシド基を有するビニル単量体0.1〜20重量部とからなる重量平均分子量が1万〜30万のアクリル共重合体100重量部、
B成分として、一般式[2]で示される化合物を0重量部またはA成分(2)のエポキシド1当量に対して水酸基が2当量以下になる量、
【化4】
−(OH)n … [2]
(式中、Rは有機化合物残基、nは2以上の整数を示す。)
およびC成分として、A成分とB成分との樹脂組成物100重量部に対し、カチオン重合型光開始剤0.01〜5重量部、を主成分としてなるものである
【0008】
以下、本発明の粘着剤組成物の各成分について詳細に説明する。
【0009】
本発明で用いるA成分のアクリル共重合体は、(1) 一般式[1] で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(2) シクロヘキセンモノエポキシド基を有するビニル単量体とからなり、本発明の粘着剤のホットメルト性および粘着特性に大きな影響力を有する成分である。
【0010】
本発明を構成するA成分(1) の一般式[1] で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルは1種または2種以上併用して用いることができる。このA成分(1) の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用割合は、A成分中80〜99.9重量部であり、好ましくは95〜99.5重量部である。
【0011】
本発明を構成するA成分(2)のシクロヘキセンモノエポキシド基を有するビニル単量体としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルエチレン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上で用いることができる。
【0012】
このA成分(2)のシクロヘキセンモノエポキシド基を有するビニル単量体の使用割合は、A成分中0.1〜20重量部が好ましく、とくに0.5〜5重量部が好ましい。このA成分(2)のシクロヘキセンモノエポキシド基を有するビニル単量体を0.1重量部未満の量用いて得られる粘着剤は、その保持力が不足し、また、該ビニル単量体を20重量部を越える量用いて得られる粘着剤は、そのタック性が劣り、適当でない。
【0013】
A成分のガラス転移温度は−5℃以下が好ましく、とくに−20℃以下が好ましい。ガラス転移温度が−5℃より高いアクリル共重合体を用いて得られる粘着剤は、そのタック性が劣る。
【0014】
A成分のアクリル共重合体の重量平均分子量は、1万〜30万が好ましく、とくに10万〜20万が好ましい。重量平均分子量が1万未満のアクリル共重合体を用いて得られる粘着剤は、その保持力が劣る。保持力を向上させる方法として、粘着剤の架橋密度を上げる方法があるが、架橋密度を上げすぎた粘着剤は、そのタック性が劣り、好ましくない。また、重量平均分子量が30万を越えるアクリル共重合体を用いて得られる粘着剤は、その溶融粘度が高くなり、得られる粘着剤の塗工作業性が悪くなるので適当でない。
【0015】
また、A成分であるアクリル共重合体の粘着物性、安定性、耐候性、耐溶剤性を損なわない範囲で、A成分と共重合可能な他のビニルモノマーを共重合してもよい。A成分と共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどが挙げられる。
【0016】
本発明において、A成分のアクリル共重合体を得る方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の重合方法を用いればよい。それらの重合開始方法としては、過酸化物、アゾ化合物などの熱重合開始剤による方法、光重合開始剤と紫外線照射による方法、また、電子線照射による方法などから任意に選べばよい。
【0017】
また、必要に応じて重合時に連鎖移動剤、可塑剤を添加してもよい。
【0018】
溶剤、水分を揮散させる方法は従来使用されている公知の方法を用いればよい。
【0019】
本発明を構成するB成分である、一般式[2] で示される化合物は、A成分との光架橋を促進する目的で用いるものであり、1分子内に2個以上の水酸基を持つ化合物類である。
【0020】
それらの具体例としては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、本発明の粘着剤組成物は、ホットメルト型であるため、揮発性の高いものや、熱分解性のある化合物を必須成分として用いることは好ましくない。
【0021】
B成分の化合物は、0重量部またはA成分(2)のビニル単量体のエポキシド基1当量に対して、B成分の化合物の水酸基が2当量以下になるような量用いる。該水酸基が2当量を越える一般式[2]で示される化合物を使用して得た粘着剤は、保持力が低下するので好ましくない。
【0022】
本発明を構成するC成分である、カチオン重合型光開始剤は、光によって、ルイス酸またはブレンステッド酸を放出して、カチオン重合の開始剤となる化合物であり、公知のものを用いることができる。この具体例としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルフォニウム塩、メタロセン系化合物等が挙げられ、市販品としては、アデカオプトマーSP−150、SP−170(旭電化工業株式会社製)、CYRACURE UVI−6950 、UVI−6970(ユニオン・カーバイド株式会社製)や、イルガキュア261 (チバガイギー株式会社製)などが挙げられる。
【0023】
C成分は、A成分とB成分との樹脂組成物 100重量部に対し0.01〜5重量部用いる。C成分の添加量が0.01重量部未満なる割合の樹脂組成物は、光照射による硬化性が不足となり、保持力は十分ではない。一方、A成分とC成分との相溶性が悪いため、C成分の添加量が5重量部を越えた樹脂組成物は、光の透過性が悪くなり、光照射による硬化速度の向上はこれ以上望めない上、コスト高になるため実用に適さない。
【0024】
本発明の粘着剤組成物は、その粘着性や光硬化性、安定性、耐候性、耐溶剤性を損なわない範囲で粘着付与剤など、各種添加剤を使用することができる。
【0025】
本発明の粘着剤組成物の製造工程のうち、溶剤の除去は、全成分を配合後に行ってもよいし、A成分のアクリル共重合体の樹脂溶液の合成後に脱溶剤を行いアクリル共重合体固形物を得、該固形物を加熱溶融して他成分を混合してもよい。
【0026】
本発明の粘着剤組成物は、加熱溶融して基材に塗布した後、常温光硬化、加熱光硬化、または光硬化後の熱によるアフターキュア等の方法によって、硬化して実用に供することができる。
【0027】
ここで用いる光とは、波長領域200〜450nmに属する紫外線である。本発明の粘着剤組成物の硬化に用いられる光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、アーク灯、ガリウムランプ等、放射波長200〜450nmのランプが有効である。加熱光硬化する場合の加熱温度は、粘着剤の組成によって異なるが、通常20〜200℃、好ましくは60〜100℃である。
【0028】
本発明の粘着剤組成物の硬化には、電子線を使用することも可能である。
【0029】
以下、実施例、比較例によりさらに本発明を詳細に説明する。実施例中、「部」とあるのは「重量部」の意味である。
【0030】
[合成例1]
(アクリル共重合体A−1の合成)
冷却管、温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管を備えた反応装置に、酢酸エチル42部、イソプロピルアルコール8部、n−ブチルアクリレート49部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、シクロヘキセンモノエポキシド基を有するビニル単量体(ダイセル化学工業株式会社製 M−100)1部、重合開始剤としてナイパーBMT−K40 (日本油脂株式会社製)を用い、窒素雰囲気下、還流下で4時間反応後、さらにアゾビスイソブチロニトリルの酢酸エチル溶液(アゾビスイソブチロニトリル 0.1部と酢酸エチル5部の混合溶液)を1時間ごとに3回滴下し、2時間熟成し、重量平均分子量17万の樹脂溶液A−1を得た。
【0031】
[合成例2]
(アクリル共重合体A−2の合成)
n−ブチルアクリレートを47部、M−100 を3部に変更する以外は合成例1と同様にして合成を行い、重量平均分子量23万の樹脂溶液A−2を得た。
【0032】
[合成例3]
(アクリル共重合体A−3の合成)
n−ブチルアクリレートを25部、M−100 を25部に変更する以外は合成例1と同様にして合成を行い、重量平均分子量16万の樹脂溶液A−3を得た。
【0033】
[合成例4]
(アクリル共重合体A−4の合成)
M−100 の代わりにメチルアクリレート1部を用いる以外は合成例1と同様にして合成を行い、重量平均分子量17万の樹脂溶液A−4を得た。
【0034】
【実施例1〜5、比較例1および2】
A成分としてエポキシ基を有する合成例1〜3で得られた樹脂溶液、B成分として水酸基を1分子あたり2個以上有する化合物である、トリエチレングリコールまたは、ユニオン・カーバイド(株)製のトーンポリオール0301、およびC成分として、カチオン重合性光開始剤であるユニオン・カーバイド(株)製の商標名 CYRACURE UVI−6950、およびUVI−6970を使用し、表1に示した割合で配合し、よく攪拌混合した後、加熱して溶剤を除去しホットメルト型粘着剤を得た。得られた該粘着剤をホットメルトコーターで、PETフィルム上に厚さ30μmになるように塗布し、80W/cmの高圧水銀ランプの下を10m/min の速度で通過させてから、離型紙を貼り合わせた。
【0035】
得られた粘着フィルムの粘着特性評価結果を表1に示す。粘着特性評価はJIS Z 0237に準じて行った。
【表1】
Figure 0003584359
【0036】
【比較例3および4】
合成例4で得た樹脂溶液A−4と、多官能アクリレートとしてアロニックスM−360 (東亜合成化学株式会社製)、光開始剤としてイルガキュア184 (チバガイギー(株)製)を、熱重合禁止剤としてクペロン1301(和光純薬(株)製)を、それぞれ表2に示す割合で配合し、よく攪拌混合した。
【0037】
その後、加熱して溶剤を除去したところ、比較例3の粘着剤はゲル化し、ホットメルト型粘着剤にはならなかった。
【0038】
比較例4で得た粘着剤をホットメルトコーターでPETフィルム上に厚さが30μmになるように塗布し、80W/cmの高圧水銀ランプの下を10m/min の速度で通過させてから、離型紙を貼り合わせた。実施例1と同様にして得られた粘着フィルムの粘着特性の評価結果を表2に示す。
【表2】
Figure 0003584359
【0039】
【発明の効果】
本発明の紫外線硬化性ホットメルト型粘着剤組成物は、ホットメルト型でありながら、高温での保持力に優れ、また、硬化性に優れており、粘着テープ類製造用として工業上非常に有益である。

Claims (2)

  1. A成分として、(1)一般式[1]で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル80〜99.9重量部と、
    Figure 0003584359
    (式中、RはHまたはCHを、Rは炭素数1〜18の鎖状炭化水素を示す。)
    (2)シクロヘキセンモノエポキシド基を有するビニル単量体0.1〜20重量部とからなる重量平均分子量が1万〜30万のアクリル共重合体100重量部、
    B成分として、一般式[2]で示される化合物を0重量部またはA成分(2)のエポキシド1当量に対して水酸基が2当量以下になる量、
    Figure 0003584359
    (式中、Rは有機化合物残基、nは2以上の整数を示す。)
    およびC成分として、A成分とB成分との樹脂組成物100重量部に対し、カチオン重合型光開始剤0.01〜5重量部、
    を主成分としてなる、紫外線硬化性ホットメルト型粘着剤組成物。
  2. A成分が、ガラス転移温度が−5℃以下のアクリル共重合体である、請求項1記載の紫外線硬化性ホットメルト型粘着剤組成物。
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