JP3583674B2 - スチルベン誘導体、その製造方法およびそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体現像剤に対して良好な耐溶剤性を有し、耐久性に優れかつ高感度のスチルベン誘導体、その製造方法および該スチルベン誘導体を含有し、静電式複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ等の画像形成装置に用いられる電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記画像形成装置においては、当該装置に用いられる光源の波長領域に感度を有する種々の有機感光体が使用されている。この有機感光体は、従来の無機感光体に比べて製造が容易であり、電荷輸送剤、電荷発生剤、結着樹脂等の感光材料の選択肢が多様で、機能設計の自由度が高いという利点を有することから、近年、広く用いられている。
【0003】
有機感光体には、電荷輸送剤を電荷発生剤とともに同一の感光層中に分散させた単層型感光体と、電荷発生剤を含有する電荷発生層と電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とを積層した積層型感光体がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
画像形成装置で用いられる液体現像剤には一般的に、脂肪族系あるいはシリコン系等の溶剤からなるアイソパーを使用する。
【0005】
液体現像剤と併せて使用する有機感光体用の電荷輸送剤として、特開昭58−190953号公報および特開平1−155356号公報にはスチルベン誘導体が開示されている。
【0006】
しかしながら、前記公報に開示されているスチルベン誘導体は、一般に液体現像剤に対し、耐アイソパー性が乏しくいため、感光層が溶出してしまうのに加えて、結着樹脂との相溶性が乏しいため、感光層中に均一に分散されず、電荷移動が生じにくいばかりか、感光層のひび割れ、結晶化が発生してしまう。そのため、前記スチルベン誘導体自体は高い電荷移動度を有しているが、これを電荷輸送剤として感光体に使用した際には、その特性が十分に発揮できず、感光体の残留電位が高くなり、光に対する感度が不十分になる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記の技術的な問題を解決し、電子写真感光体の電荷輸送剤として好適な新規スチルベン誘導体を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、従来に比べて、光感度および繰り返し特性が向上した電子写真感光体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために研究を重ねていくなかで、一般式(1):
【0010】
【化2】
【0011】
(式(1)中、R1〜R4は同一または異なってアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、水素原子またはニトロ基を示し、R5はシアノ基、カルボニル基、ニトロ基またはビニル基を示す。nは1または2を示す。)
で表されるスチルベン誘導体が、従来のスチルベン誘導体よりも耐アイソパー性に優れ、かつ電荷移動度が大きいという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、一般式(1)で表される本発明のスチルベン誘導体は、耐アイソパー性が優れているので、感光層が溶出してしまうことがない。また、結着樹脂との相溶性が良好であるため感光層のひび割れや結晶化が発生することがなく、感光層中に均一に分散され、電荷移動が生じ易い。従って、スチルベン誘導体(1)は、低電界であっても優れた電荷(正孔)輸送性を示し、電子写真感光体等における正孔輸送剤として好適である。
【0013】
従って、スチルベン誘導体(1)を電子写真感光体における電荷(正孔)輸送剤として使用することにより、高感度で繰り返し安定性が向上した電子写真感光体を得ることができる。
【0014】
また、本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、感光層が、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を含有することを特徴とする。
【0015】
本発明の電子写真感光体は、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を感光層中に含有することから、電化発生剤で発生した電荷(正孔)を輸送する速度が速く、すなわち電荷移動度が大きく、帯電および露光時の光に対する感度が優れている。その結果、本発明の電子写真感光体によれば、従来のスチルベン誘導体を正孔輸送剤として使用したときよりも、高い感度が得られ、繰り返し特性が向上する。
【0016】
また、前記感光層は一般式(1)で表されるスチルベン誘導体と共に、電荷発生剤と電子輸送剤とを含有した単層型の感光層であることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のスチルベン誘導体(1)について詳細に説明する。
【0018】
前記一般式(1)中、R1〜R4に相当するアルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等の炭素数1〜6のアルキル基があげられる。中でも、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0019】
また、R1〜R4に相当するアルキル基は置換基を有していてもよく、具体的にはヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基、アミノアルキル基などがあげられる。
【0020】
とりわけ本発明のスチルベン誘導体(1)においては、電荷移動度を高めるという観点から、置換基としてアルコキシ基、モノアルキルアミノ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基などの電子供与性基を有するアルキル基が好ましい。
【0021】
R1〜R4に相当するアルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の炭素数が1〜6のアルコキシ基があげられる。また、R1〜R4に相当するアルコキシ基は置換基を有してもよく、その置換基としては、前述のアルキル基の場合と同様の置換基があげられる。ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルカノイルオキシ基などの、前述のアルキル基の場合と同様の置換基があげられる。
【0022】
また、R1〜R4に相当するアリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等の基があげられる。
【0023】
また、R1〜R4に相当するアラルキル基としては、例えばベンジル、1−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル等のアルキル部分の炭素数が1〜6であるアラルキル基があげられる。
【0024】
前記アリール基およびアラルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基などの他、前述と同様の炭素数1〜6の置換基を有してもよいアルキル基や炭素数1〜6の置換基を有してもよいアルコキシ基などがあげられる。なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されない。
【0025】
R5に相当するカルボニル基およびビニル基は置換基を有していても良く、かかる置換基としては、例えばハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基などの他、前述と同様の炭素数1〜6の置換基を有してもよいアルキル基や炭素数1〜6の置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいフェニル基などがあげられる。
【0026】
前記一般式(1)で表されるスチルベン誘導体の具体例として、基R1〜R5に相当する置換基を下記の表1に示す。
【0027】
なお、表1中、Hは水素原子、Meはメチル基、Etはエチル基、i−Prはi−プロピル基、n−Buはn−ブチル基、MeOはメトキシ基、Phはフェニル基を示す。また、元素(分子)記号の前に付いている数字は置換基の置換位置を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
また、本発明のスチルベン誘導体(1)には、ビニレン基に対する中心ベンゼン環と周辺置換基であるトリフェニルアミンとの配置の違いによって、下記一般式(2)で表されるシス(cis−)異性体と、下記一般式(3)で表されるトランス(trans−)異性体とが混在する。
【0030】
【化3】
【0031】
【化4】
【0032】
(式(2)および(3)中、R1〜R5は前記一般式(1)と同じ基である。)
本発明の電子写真感光体には、trans−異性体(3)の割合が多いものを使用するのが好ましい。
【0033】
一般式(1)で表されるスチルベン誘導体は、前述のように電荷移動度が大きく、すなわち高い正孔輸送能を有することから、電子写真感光体における正孔輸送剤として好適に使用されるほか、太陽電池、エレクトロルミネッセンス素子等の種々の分野での利用が可能である。
【0034】
次に、本発明のスチルベン誘導体(1)の合成方法について、スチルベン誘導体(1)中のトリフェニルアミノ基の3個のベンゼン環がそれぞれ異なった置換基あるいは置換位置を示す場合を例にとって説明する。
【0035】
反応式(I):
【0036】
【化5】
【0037】
(式中、R1〜R5は前記と同じである。)
この反応は、ホルミル化トリフェニルアミン誘導体(4)とベンジルリン酸エステル誘導体(5)とを適当な無水溶媒中、塩基の存在下で反応させることにより、本発明のスチルベン誘導体(1)を得るものである。
【0038】
反応に使用する無水溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであればよく、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素があげられる。
【0039】
この反応で使用する塩基としては、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド等のナトリウムアルコキシド等の金属水素化物があげられる。
【0040】
ベンジルリン酸エステル誘導体(5)に対する塩基の使用量は、少なくとも1〜2倍モル量、好ましくは1〜1.3倍モル量である。
【0041】
ホルミル化トリフェニルアミン誘導体(4)の使用量は、ベンジルリン酸エステル(5)に対して0.90〜1.25倍モル量、好ましくは0.98〜1.05倍モル量である。反応は、通常−10〜25℃で行われ、3〜12時間程度で終了する。
【0042】
反応式(II):
【0043】
【化6】
【0044】
(式中、R1〜R4は前記と同じである。)
この反応は、アニリン誘導体(6)に2種類のヨードベンゼン誘導体(7)、(8)を順次反応させることにより、反応式(I)の出発原料であるホルミル化トリフェニルアミン誘導体(4)を得るものである。すなわち、反応式(II)において、まず、アニリン誘導体(6)をアセチル化して得られたアセチルアニリン誘導体(10)と一方のヨードベンゼン誘導体(7)とをニトロベンゼン中に加え、無水炭酸カリウム、銅などの触媒と共に反応させることにより、アセチル化ジフェニルアミン誘導体(11)を得る。次いで、アセチル化ジフェニルアミン誘導体(11)を加水分解することによりジフェニルアミン誘導体(12)を得る。最後に、ジフェニルアミン誘導体(12)と他方のヨードベンゼン誘導体(8)とをニトロベンゼン中に加え、無水炭酸カリウム、銅などの触媒と共に反応させることにより、シアノトリフェニルアミン誘導体(13)を得る。
【0045】
最後に、シアノトリフェニルアミン誘導体(13)とジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL)をそれぞれ適当な無水溶媒中に加え、それらの溶液を混合して反応させることにより、ホルミル化トリフェニルアミン誘導体(4)を得るも。この反応に使用する無水溶媒としては、反応式(I)で使用されるのと同じものがあげられる。シアノトリフェニルアミン誘導体(13)に対するジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL)の使用量は、少なくとも1〜2倍モル量、好ましくは1〜1.3倍モル量である。反応は、通常−10〜25℃で行われ、3〜12時間程度で終了する。
【0046】
反応式(III):
【0047】
【化7】
【0048】
(Xはハロゲン元素を示す。)
この反応は、ベンジルハライド誘導体(14)と亜リン酸トリエステル(15)とを無溶媒あるいは適当な溶媒中にて反応させることにより、反応式(III)の出発原料であるベンジルリン酸エステル誘導体(5)を得るものである。その際、第三級アミンを添加すると、反応系からハロゲン化アルキルが除去され、反応が促進する。
【0049】
この反応に使用する溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであればよく、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミドがあげられる。
【0050】
上記第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等があげられる。
【0051】
ベンジルハライド誘導体(14)に対する亜リン酸トリエステル(15)の使用量は、少なくとも1倍モル量、好ましくは1〜1.2倍モル量である。反応は、通常、80〜150℃で行われ、1〜4時間程度で終了する。
【0052】
次に、本発明の電子写真感光体について詳細に説明する。
【0053】
本発明の電子写真感光体は、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を、含有した感光層を導電性基体上に設けたものである。感光体には、前述のように単層型と積層型とがあるが、本発明はこのいずれも適用可能である。
【0054】
単層型感光体は、導電性基体上に単一の感光層を設けたものである。この感光層は一般式(1)で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)、電化発生剤および結着樹脂、さらに必要に応じて電子輸送剤を適当な溶媒に溶解または分散させ、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成される。かかる単層型感光体は、単独の構成で正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単で生産性に優れている。
【0055】
本発明の単層型電子写真感光体は、従来の単層型電子写真感光体に比べて、感光体の残留電位が大きく低下しており、感度および繰り返し安定性が向上している。
【0056】
一方、積層型感光体は、まず導電性基体上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層を形成し、次いでこの電荷発生層状に、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することによって、作製される。また、前記とは逆に、導電性基体上に電荷輸送層を形成し、その上に電荷発生層を形成してもよい。但し、電荷発生層は電荷輸送層に比べて膜圧がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
【0057】
積層型感光体は、前記電荷発生層および電荷輸送層の形成順序と、電荷輸送層に使用する電荷輸送剤の種類によって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。例えば、前記のように、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成した場合において、電荷輸送層における電荷輸送剤として、本発明のスチルベン誘導体(1)のような正孔輸送剤を使用した場合には、感光体は負帯電型となる。
【0058】
本発明の積層型感光体は、従来のスチルベン誘導体を正孔輸送剤として使用した積層型電子写真感光体に比べて、感光体の残留電位が大きく低下しており、感度が向上している。
【0059】
前述のように、本発明の電子写真感光体は、単層型および積層型のいずれにも適用できるが、特に正負いずれの帯電型にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、層を形成する際の皮膜欠陥を抑制できること、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の観点から、単層型が好ましい。
【0060】
次に、本発明の電子写真感光体に用いられる種々の材料について説明する。
《電荷発生剤》
本発明に用いられる電荷発生剤としては、例えば、種々のフタロシアニン顔料、多環キノン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、スクアリリウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム染料、チオピリリウム染料、キサンテン染料、キノンイムン色素、トリフェニルメタン色素、スチリル色素、アンサンスロン系顔料、ピリリウム塩、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料等の有機光導電材料、セレン、テルル、アモルファスシリコン、硫化カドミウム等の無機光導電材料があげられ、単独または2種類以上を混合して使用できる。
【0061】
また、前記例示の電荷発生剤のうち、特に半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば下記一般式(CG1):
【0062】
【化8】
【0063】
で表される無金属フタロシアニンや一般式(CG2):
【0064】
【化9】
【0065】
で表されるオキソチタニルフタロシアニン等の金属含有フタロシアニンといった、フタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、フタロシアニン系顔料の結晶形については特に限定されず、種々のものを使用できる。
【0066】
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば下記一般式(CG3):
【0067】
【化10】
【0068】
(式中、Rg1およびRg2は同一または異なって、炭素数が18以下の置換または未置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカノイル基またはアラルキル基を示す。)
で表されるペリレン系顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
《正孔輸送剤》
本発明の電子写真感光体においては、正孔輸送剤である本発明のスチルベン誘導体(1)と共に、従来公知の他の正孔輸送剤を感光層に含有させてもよい。
【0069】
かかる、正孔輸送剤としては、高い正孔輸送能を有する種々の化合物、例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系の化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、スチルベン系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等があげられる。
【0070】
本発明において、正孔輸送剤は1種のみを用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。また、ポリビニルカルバゾール等の成膜性を有する正孔輸送剤を用いる場合には、結着樹脂は必ずしも必要でない。
《電子輸送剤》
本発明に用いられる電子輸送剤としては、高い電子輸送能を有する種々の化合物、例えば、ナフトキノン系化合物、ベンゾキノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テトラシアノエチレンシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等があげられる。
【0071】
本発明において、電子輸送剤は1種のみを用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。
《結着樹脂》
前記各成分を分散させるための結着樹脂は、従来、感光層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。例えば、ビスフェノールA骨格あるいはビスフェノールZ骨格等を有する種々のポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
【0072】
本発明において、バインダー樹脂は1種のみを用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。
【0073】
感光層には、前記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0074】
単層型感光体において、電荷発生剤は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すればよい。本発明のスチルベン誘導体(1)(正孔輸送剤)は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部、好ましくは30〜200重量部の割合で配合すればよい。電子輸送剤を含有させる場合、電子輸送剤の割合を結着樹脂の100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部とするのが適当である。また、単層型感光体における感光層の厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
【0075】
積層型感光体において、電荷発生層を構成する電荷発生剤と結着樹脂とは、種々の割合で使用することができるが、結着樹脂100重量部に対して電荷発生剤を5〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部の割合で配合するのが適当である。電荷発生層に正孔輸送剤を含有させる場合は、正孔輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して10〜500重量部、好ましくは50〜200重量部とするのが適当である。
【0076】
電荷輸送層を構成する正孔輸送剤と結着樹脂とは、電荷の輸送を阻害しない範囲および結晶化しない範囲で種々の割合で使用することができるが、光照射により電荷発生層で生じた電荷が容易に輸送できるように、結着樹脂100重量部に対して、本発明のスチルベン誘導体(1)(正孔輸送剤)を10〜500重量部、好ましくは25〜200重量部の割合で配合するのが適当である。電荷輸送層に電子輸送剤を含有させる場合は、電子輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部とするのが適当である。
【0077】
単層型感光体においては、導電性基体と感光層との間に、また積層型感光体においては、導電性基体と電荷発生層との間、導電性基体と電荷輸送層との間または電荷発生層と電荷輸送層との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層が形成されていてもよい。また、感光体の表面には、保護層が形成されていてもよい。
【0078】
前記感光層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属単体や、前記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
【0079】
導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート上、ドラム上等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。
【0080】
感光層を塗布の方法により形成する場合には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂を適当な溶剤とともに、公知の方法、例えばロール見る、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
【0081】
前記分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0082】
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性をよくするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
【0083】
【実施例】
以下、本発明を合成例、実施例および比較例に基づいて説明する。
《ホルミル化トリフェニルアミン誘導体の合成》
[参考例A1]
2−エチル−6−メチルトリフェニルアミン0.023mol(6.3g)にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50mlを加え、攪拌した。その後、氷浴で冷却しながらオキシ塩化リン0.033mol(5.1g)を徐々に滴下し、90〜100℃で2時間、攪拌した。反応終了後、反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。抽出物を水洗した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(展開液:クロロホルム、ヘキサン混合溶媒)で精製を行い、2−エチル−6−メチル−4’−ホルミルトリフェニルアミン4g(収率61%)を得た。
[参考例A2]
2−エチル−6−メチルトリフェニルアミンに代えて、トリフェニルアミン0.023mol(5.6g)を用いる他は、参考例A1と同様にして、ホルミルトリフェニルアミン3.2g(収率93%)を得た。
《ベンジルリン酸エステル誘導体の合成》
[参考例B1]
表2の化合物番号4−14に相当するベンジルハライド誘導体0.01mol(1.5g)に亜リン酸トリエチル0.012mol(2.0g)を加え、150〜160℃で5時間攪拌した。反応終了後、過剰の亜リン酸トリエチルを減圧留去し、表2の化合物番号5−14に相当するベンジルリン酸エステル誘導体を2.3g(収率92%)を得た。
【0084】
【表2】
【0085】
なお、表2は一般式(4):
【0086】
【化11】
【0087】
で表されるベンジルハライド誘導体および一般式(5):
【0088】
【化12】
【0089】
で表されるベンジルリン酸エステル誘導体の具体例として、基R5に相当する置換基を示したものである。また、元素(分子)記号の前に付いている数字は置換基の置換位置を示す。
[参考例B2]
ベンジルハライド誘導体(4−14)に代えて、表2の化合物番号4−3に相当するベンジルハライド誘導体0.0099mol(2.4g)を用いる他は、参考例B1と同様にして、表2の化合物番号5−3に相当するベンジルリン酸エステル誘導体3.2g(収率93%)を得た。
[参考例B3]
ベンジルハライド誘導体(4−14)に代えて、表2の化合物番号4−15に相当するベンジルハライド誘導体0.0091mol(2.4g)を用いる他は、参考例B1と同様にして、表2の化合物番号5−15に相当するベンジルリン酸エステル誘導体3.1g(収率95%)を得た。
[参考例B4]
ベンジルハライド誘導体(4−14)に代えて、表2の化合物番号4−16に相当するベンジルハライド誘導体0.01mol(2.7g)を用いる他は、参考例B1と同様にして、表2の化合物番号5−16に相当するベンジルリン酸エステル誘導体3.4g(収率92%)を得た。
[参考例B5]
ベンジルハライド誘導体(4−14)に代えて、表2の化合物番号4−13に相当するベンジルハライド誘導体0.01mol(1.8g)を用いる他は、参考例B1と同様にして、表2の化合物番号5−13に相当するベンジルリン酸エステル誘導体2.6g(収率93%)を得た。
[比較参考例1]
ベンジルハライド誘導体(4−14)に代えて、表2の化合物番号C−14に相当するベンジルハライド誘導体0.016mol(2.0g)を使用し、亜リン酸トリエチル0.019mol(3.2g)を用いる他は、参考例B1と同様にして、表2の化合物番号C−15に相当するベンジルリン酸エステル誘導体3.4g(収率96%)を得た。
[比較参考例2]
ベンジルハライド誘導体(4−14)に代えて、表2の化合物番号C−24に相当するベンジルハライド誘導体0.016mol(2.5g)を使用し、亜リン酸トリエチル0.019mol(3.2g)を用いる他は、参考例B1と同様にして、表2の化合物番号C−25に相当するベンジルリン酸エステル誘導体3.8g(収率93%)を得た。
《スチルベン誘導体の合成》
[合成例1]
参考例1で得たベンジルリン酸エステル誘導体(5−14)0.0092mol(2.3g)をテトラヒドロフラン150mlに加え、氷浴で冷やしながらナトリウムメトキシド0.0092mol(0.50g)を徐々に滴下し、0℃に保ちながら2時間攪拌した。そのままの温度で、2−エチル−6−メチル−4’−ホルミルトリフェニルアミン0.0092mol(2.9g)を滴下し、0℃乃至室温で3時間攪拌した。反応終了後、反応液に水を加えて反応を停止し、これを酢酸エチルで抽出、水洗し、溶媒を留去した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(展開液:クロロホルム、ヘキサン混合溶媒)で精製を行い、表1の化合物番号(1−14)に相当するスチルベン誘導体3.1g(収率81%、融点:145℃)を得た。
[合成例2]
ベンジルリン酸エステル誘導体(5−14)に代えて、ベンジルリン酸エステル誘導体(5−3)0.0092mol(3.2g)を用いる他は、合成例1と同様にして、表1の化合物番号(1−3)に相当するスチルベン誘導体3.9g(収率84%、融点:89℃)を得た。
[合成例3]
ベンジルリン酸エステル誘導体(5−14)に代えて、ベンジルリン酸エステル誘導体(5−15)0.0086mol(3.1g)を使用し、ナトリウムメトキシド0.0086mol(0.46g)および2−エチル−6−メチル−4’−ホルミルトリフェニルアミン0.0086mol(2.7g)を用いる他は、合成例1と同様にして、表1の化合物番号(1−15)に相当するスチルベン誘導体3.6g(収率79%、融点:87℃)を得た。
[合成例4]
ベンジルリン酸エステル誘導体(5−14)に代えて、ベンジルリン酸エステル誘導体(5−16)0.0095mol(3.4g)を使用し、ナトリウムメトキシド0.0095mol(0.46g)および2−エチル−6−メチル−4’−ホルミルトリフェニルアミン0.0095mol(3.0g)を用いる他は、合成例1と同様にして、表1の化合物番号(1−16)に相当するスチルベン誘導体4.0g(収率80%、融点:160℃)を得た。
[合成例5]
ベンジルリン酸エステル誘導体(5−14)に代えて、ベンジルリン酸エステル誘導体(5−13)0.0095mol(2.6g)を使用し、ナトリウムメトキシド0.0095mol(0.46g)およびホルミルトリフェニルアミン0.0095mol(3.0g)を用いる他は、合成例1と同様にして、表1の化合物番号(1−13)に相当するスチルベン誘導体2.9g(収率77%、融点:143℃)を得た。
[比較合成例1]
ベンジルリン酸エステル誘導体(5−14)に代えて、ベンジルリン酸エステル誘導体(C−15)0.015mol(3.4g)を使用し、ナトリウムメトキシド0.015mol(0.81g)および2−エチル−6−メチル−4’−ホルミルトリフェニルアミン0.015mol(4.7g)を用いるを用いる他は、合成例1と同様にして、表1の化合物番号(C−1)に相当するスチルベン誘導体4.4g(収率75%、融点:104℃)を得た。
[比較合成例2]
ベンジルリン酸エステル誘導体(5−14)に代えて、ベンジルリン酸エステル誘導体(C−25)0.0092mol(2.3g)を用いる他は、合成例1と同様にして、表1の化合物番号(C−2)に相当するスチルベン誘導体3.1g(収率80%)を得た。
《電子写真感光体の製造》
[実施例1]
電荷発生剤としてX型無金属フタロシアニン(CG1)5重量部および結着樹脂としてポリカーボネート100重量部、溶媒としてテトラヒドロフラン800重量部、電子輸送剤として3,5−ジメチル−3’,5’−ジt−ブチル−4,4’−ジフェノキノン30重量部および正孔輸送剤である表1の化合物番号(1−14)に相当するスチルベン誘導体50重量部をボールミルにて50時間混合、分散させて単層感光体用の塗布液を作製した。次いで、この塗布液をアルミニウム素管上にディップコート法にて塗布し、100℃で30分間熱風乾燥させて、膜厚が25μmの感光層を形成させ、単層型感光体を製造した。
[実施例2]
正孔輸送剤として、表1の化合物番号(1−3)に相当するスチルベン誘導体を用いた他は、実施例1と同様にして単層型感光体を製造した。
[実施例3]
正孔輸送剤として、表1の化合物番号(1−15)に相当するスチルベン誘導体を用いた他は、実施例1と同様にして単層型感光体を製造した。
[実施例4]
正孔輸送剤として、表1の化合物番号(1−16)に相当するスチルベン誘導体を用いた他は、実施例1と同様にして単層型感光体を製造した。
[実施例5]
正孔輸送剤として、表1の化合物番号(1−13)に相当するスチルベン誘導体を用いた他は、実施例1と同様にして単層型感光体を製造した。
[比較例1]
正孔輸送剤として、表1の化合物番号(C−1)に相当するスチルベン誘導体を用いた他は、実施例1と同様にして単層型感光体を製造した。
《評価試験》
[溶出性試験]
合成例および比較合成例で作製したスチルベン誘導体について、以下の方法でポリカーボネートへ分散したときの、アイソパーへの溶出試験を行った。
【0090】
まず、試験を行うスチルベン誘導体0.1gとポリカーボネート0.2gをテトラヒドロフラン0.8g中に溶解させ、この溶液をアルマイトシートに塗工し、130℃で30分間、熱処理した。次いで、このシートを12×12mmに切り取り試験片を作成した。この試験片を5mlのアイソパーへ13日間、浸積した後の溶液の濃度(溶出濃度(mg/l))を測定した。濃度の測定はアイソパー溶液のUV域の最大吸収波長における吸光度を、あらかじめ作成しておいた検量線に当てはめて求めた。
【0091】
溶出試験の結果を表3に示す。表2より、合成例1〜4は比較合成例1〜2よりも、アイソパーへの溶出濃度が小さく、耐アイソパー性が優れていることがわかる。
【0092】
【表3】
【0093】
[劣化試験]
実施例および比較例で作製した感光体について、アイソパーに浸積した後の光感度および外観の劣化を評価した。これは、アイソパー浸積後の感光体の状態を大量複写後の状態と見なし、液体現像方式における、感光体の耐久性を評価するための試験である。以下に評価方法を記載する。
【0094】
まず、感光体の残留電位Vr0(V)を口述する方法で測定した。次いで、感光体の外観(ひび割れ、結晶化など)に欠陥がないことを確認した後、感光体全体をアイソパーに浸積した。浸積1週間(148h)後、感光体を取り出して自然乾燥させてから、外観を確認し、残留電位Vr1w(V)を測定した。
(残留電位の測定)
ドラム感度試験機(ジェンテック社製)を用いて、感光体に印加電圧を加え、その表面を+700±20Vに帯電させた後、初期表面電位V0(V)を測定した。次いで、露光光源であるハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルターを用いて取り出した780nm(半値幅20nm)の単色光(光強度I=16μJ/cm2)を感光体表面に照射(照射時間80msec)し、露光開始後330sec後の感光体の表面電位を残留電位Vr0(V)(アイソパー浸積後はVr1w(V))として測定した。残留電位Vr0、Vr1wが小さいほど、光感度が大きい感光体である。
【0095】
上記各実施例および比較例で使用した感光体の外観および残留電位Vr0、Vr1wの測定結果を表4に示す。実施例はアイソパー浸積前の残留電位Vr0と浸積後の残留電位Vr1wがほぼ同じであり、光感度が劣化していないことがわかる。また、感光体の外観はアイソパー浸積後も欠陥がなく良好な状態を保っていた。
【0096】
一方比較例は、アイソパー浸積後の残留電位Vr1wは浸積前に比べて著しく高くなっており、光感度が劣化していることがわかる。また、アイソパー浸積後の感光体の表面にはひび割れが確認された。
【0097】
【表4】
【0098】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のスチルベン誘導体は、耐アイソパー性に優れているため、アイソパーに溶出することがない。
【0099】
また、本発明の電子写真感光体は、上記本発明のスチルベン誘導体を正孔輸送剤として用いることから、アイソパーに浸積しても感光層のひび割れ、結晶化が発生せず、光感度が劣化することがないため、特に液体現像方式において優れた性能を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】表1の化合物(1−14)に相当するスチルベン誘導体の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】表1の化合物(1−14)に相当するスチルベン誘導体のNMRスペクトルを示すグラフである。
【図3】表1の化合物(1−15)に相当するスチルベン誘導体の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図4】表1の化合物(1−15)に相当するスチルベン誘導体のNMRスペクトルを示すグラフである。
【図5】表1の化合物(1−16)に相当するスチルベン誘導体の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図6】表1の化合物(1−16)に相当するスチルベン誘導体のNMRスペクトルを示すグラフである。
【図7】表1の化合物(1−13)に相当するスチルベン誘導体の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図8】表1の化合物(1−13)に相当するスチルベン誘導体のNMRスペクトルを示すグラフである。
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