JP3583607B2 - 防音壁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、道路,鉄道,工場等より発生する騒音を低減させるために設けられる防音壁に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、道路,鉄道,工場等より発生する騒音の防止対策としては、騒音発生源より直接的に騒音が伝播するのを防止するため、防音壁を設置することが広く採用されている。これは、各種騒音防止対策の中で防音壁が対策費用が比較的安く、しかも、種々の騒音発生源に対し効果的であるためである。騒音低減効果をより大きくするためには、防音壁の高さを高くすることが必要である。しかし防音壁を高くすると、コストアップになる(高さが高くなればなるほど施工費等が増し、コストアップになる)。また、日照,景観,眺望,圧迫感,通風,電波障害,耐風圧荷重等多くの問題がある。
【0003】
さらには直壁だけでは、騒音低減効果が不十分な場合、防音壁の先端部を騒音発生源側に折り曲げた先折れ型防音壁、防音壁の先端部を騒音発生源側に湾曲した湾曲防音壁があるが、これらは直壁以上に、前述の事項がより問題となる。
【0004】
最近交通量の増加、車両の高速化に伴い、環境騒音問題が深刻になり、他に対応策がないので、前記の問題点を犠牲にして5m,7m,10mといった高さの直壁型防音壁、さらには先折れ型防音壁、湾曲型防音壁が使われている。
【0005】
しかし、これらの防音壁を用いてもこれらは防音壁の高さに見合った効果しか期待できない。一般に、遠方(防音壁より20m程度離れたところ)の位置では、防音壁の高さを1m増すことにより得られる騒音低減効果は約1dBである。
【0006】
そこで、図9に示すように、ほぼ垂直な本体壁100の上端に音源側へ傾斜する第1の分岐壁101を設けるとともに、反音源側へ傾斜する第2の分岐壁102を設け、これら第1及び第2分岐壁101,102にこれら分岐壁101,102とは異なる方向に再分岐する再分岐壁103,104を設けたものが開発された。これは、壁全体を高くすることなく、下方から上方に向かう騒音のみならず、上方から下方に向かう騒音に対しても防音効果があるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9に示す防音壁でもさらに高さを低くすることはむずかしく、また再分岐壁103,104間に取込まれた騒音は、これらの壁間で反射を繰り返し、共鳴するため、或る周波数で騒音低減効果が期待できないことがわかった。
【0008】
そこで、この発明は、全体の高さを低くしても騒音低減効果に優れ、従来の防音壁では解決できなかった共鳴による騒音の発生を防止した防音壁を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、この発明は、ほぼ垂直に立上った本体壁の上部に第1の吸音ユニットを設けるとともに、本体壁の反音源側の側面から反音源側へ延出するとともに先端側が上方に延出した張出部の上部に第2の吸音ユニットを設けた防音壁であって、第1の吸音ユニットは本体壁の上部から左右に夫々斜め上方に延びる2つの分岐壁を有するとともに、これら分岐壁の先端から互いに近づくように夫々斜め上方に延びる2つの再分岐壁を有し、これら再分岐壁の先端間に開口部を設け、第2の吸音ユニットは張出部の上部から左右に夫々斜め上方に延びる2つの分岐壁を有するとともに、これら分岐壁の先端から互いに近づくように夫々斜め上方に延びる2つの再分岐壁を有し、これら再分岐壁の先端間に開口部を設けたものである。また、2つの吸音ユニットの内部空間の大きさを異ならしめ共鳴周波数を変えて共鳴による騒音を防止したものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の好適な実施例について図面を参照にして説明する。
【0011】
図1に示す第1実施例では、ほぼ垂直に立上った本体壁1の上部と反音源側に第1及び第2の吸音ユニット2,3を設けてある。吸音ユニット2,3の形状は側面形状ほぼひし形の頂角を含む上部を切断して開口部2A,3Aを設けた形状としてある。このような吸音ユニット2,3を所定間隔をあけて横方向に並べて設けてある。第1の吸音ユニット2は本体壁1の真上に設け、第2の吸音ユニット3は本体壁1から反音源側に水平に延びた張出部4とこの張出部4の先端から斜め上方に立上った張出部5とで支持されている。この実施例では第2の吸音ユニット3の内部空間30の大きさが第1の吸音ユニット2の内部空間20の大きさよりも小さく形成してあるとともに、第2の吸音ユニット3が第1の吸音ユニット2よりも上方、すなわち高い個所に位置している。張出部4は図1の二点鎖線に示すように水平方向に延びるものではなく斜め上方に延びるものであってもよい。また、張出部5も斜めに延びるもののみならず水平に延びるものであってもよい。吸音ユニット2,3の内部空間はそれぞれ符号20,30で示す。第1の吸音ユニット2は、本体壁1の上部から左右に夫々斜め上方に実質上直線状に延びる2つの分岐壁21,22を有するとともに、これら分岐壁21,22の先端から互いに近づくように夫々斜め上方に実質上直線状に延びる2つの再分岐壁23,24を有している。分岐壁21,22と本体壁1とは側面形状がY字型をなしている。再分岐壁23,24の先端間には開口部2Aが形成されている。2つの分岐壁21,22が形成する角度は120°に設定し、分岐壁21と再分岐壁23が形成する角度並びに分岐壁22と再分岐壁24が形成する角度は夫々90°に設定してある。また、第1の吸音ユニット2の図面上左右の最大幅は0.5mに設計してある。第2の吸音ユニット3は、張出部5の上部から左右に夫々斜め上方に実質上直線状に延びる2つの分岐壁31,32を有するとともに、これら分岐壁31,32の先端から互いに近づくように夫々斜め上方に実質上直線状に延びる2つの再分岐壁33,34を有している。2つの再分岐壁33,34の先端間には開口部3Aが形成されている。2つの分岐壁31,32が形成する角度は90°に設定し、分岐壁31と再分岐壁33とが形成する角度並びに分岐壁32と再分岐壁34とが形成する角度も夫々90°に設定してある。
【0012】
また、分岐壁22に対向する張出部5は分岐壁22と平行には設けていない。分岐壁22と張出部4,5とで囲まれた空間に入り込んだ音が定在波として残らないようにするためには、分岐壁22と張出部5とが平行でない方がよい。
【0013】
図2に示す第2実施例では、第1実施例と同様の張出部4,5を設け、吸音ユニット2,3の内部空間20,30の大きさを同一とし、それぞれの吸音ユニット2,3を同高位置に設定した。
【0014】
図3に示す第3実施例では、張出部4を斜めに延出するように設け、張出部5も斜め上方に設け、張出部5の先端に第2の吸音ユニット3を設け、本体壁1の上端に第1の吸音ユニット2を設けたものを示し、第2の吸音ユニット3が第1の吸音ユニット2よりも高い位置に設けてある。また、内部空間30は内部空間20よりも小さくしてある。
【0015】
図4に示す第4実施例では張出部4を斜め上方に延ばし、この張出部4の先端に第2の吸音ユニット3を設け、本体壁1の上端に第1の吸音ユニット2を設けたものを示し、第2の吸音ユニット3が第1の吸音ユニット2よりも高い位置にある。また内部空間30は内部空間20よりも小さくしてある。
【0016】
図1に示す第1実施例において、内部空間20と内部空間30の比率を1対0.6とした場合の直壁対比騒音低減量(dB)を図5のグラフAに示す。また図1と同一構造で第2の吸音ユニット3の大きさを変え、第2の吸音ユニット3の内部空間30が第1の吸音ユニット2の内部空間20と同じ大きさにしたものをグラフBで示す。対比される直壁は高さ3mのものとし、グラフA,Bで示される夫々の防音壁は、第1の吸音ユニット2までの高さを3mとし、第2の吸音ユニット3は第1の吸音ユニット2よりも5cm高くしてある。そして、音源として防音壁から5m離れた位置にスピーカーをセットし、防音壁から反音源側へ10m離れた高さ0mの位置で計測した。2つの吸音ユニット2,3のそれぞれの内部空間20,30の大きさを変えることにより、周波数による減音効果が異なることがわかる。吸音ユニット2,3の内部空間20,30の大きさを変えることにより、各吸音ユニット2,3の共鳴周波数を変えて、その共鳴音同士の干渉により防音壁に特定の周波数で騒音低減効果が小さくなることを防止できる。
【0017】
図6では、図5のグラフAで示す防音壁の第1及び第2吸音ユニット2,3と同一構造のものを使用し、第1及び第2吸音ユニット2,3の高さを同一高さすなわち地上からともに3mの高さとしたものをグラフCで示し、第1及び第2吸音ユニット2,3の高さは同じであるが地上からの高さを3.05mとしたものをグラフDで示す。このグラフから、反音源側の第2の吸音ユニット3の開口部3Aを音源側の第1の吸音ユニット2の開口部2Aよりも高くすることにより、騒音源から反音源側に伝わる騒音をより効果的に減音することができることが判明した。なお、計測方法は図5に示すグラフと同様の方法で行なった。
【0018】
図7は騒音源から発生された音の流れを示し、騒音源から発せられた騒音は最初に第1の吸音ユニット2の分岐壁21により遮蔽され、この分岐壁21の先端を回折した騒音はその先端で回折効果により減音するとともに再分岐壁23により遮蔽される。分岐壁21及び再分岐壁23の先端を回折した騒音は、これら先端で回折効果により減音するとともに、再分岐壁23及び再分岐壁24との間に取込まれ遮蔽される。再分岐壁24を回折した騒音は第2の吸音ユニット3の分岐壁31で遮蔽され、以後第1の吸音ユニット2と同様の作用が生じる。
図8は、吸音ユニット2又は3(両方でもよい)の内部空間20(又は30)の内側に吸音材6を取付けた例を示す。吸音材6としては、ロックウール,グラスウール,セラミック,発泡コンクリート等が好適に使用できる。
【0019】
【発明の効果】
この発明によれば、防音壁全体の高さを高くすることなく騒音低減効果を向上させることができる。また、2つの吸音ユニットの内部空間の大きさを異ならしめることにより、それぞれの吸音ユニットの共鳴周波数が変わり、共鳴音同士の干渉により防音壁に特定の周波数で騒音低減効果が小さくなることを防ぐことができる。さらに、音源側吸音ユニットの開口部よりも反音源側ユニットの開口部を上方に位置させることにより、騒音源から反音源側に伝わる騒音をより効果的に減音することができる。さらに、第1の吸音ユニットの分岐壁とこれに対向する張出部とを互いに平行にならないようにすることで、これらに囲まれた空間内に定在波が生ずるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例を示す側面図。
【図2】第2実施例を示す側面図。
【図3】第3実施例を示す側面図。
【図4】第4実施例を示す側面図。
【図5】2つの吸音ユニットの内部空間の大きさを変えたものと同一のものとの周波数毎による直壁対比騒音低減量を示すグラフ。
【図6】2つの吸音ユニットの高さを変えたものと同一のものとの周波数毎による直壁対比騒音低減量を示すグラフ。
【図7】騒音に対するこの防音壁の作用を示す図。
【図8】内部空間内に吸音材を取付けた実施例を示す側面図。
【図9】従来例を示す側面図。
【符号の説明】
1 本体壁
2 第1の吸音ユニット
3 第2の吸音ユニット
2A,3A 開口部
4,5 張出部
20,30 内部空間
21,22 分岐壁
23,24 再分岐壁
31,32 分岐壁
33,34 再分岐壁

Claims (4)

  1. ほぼ垂直に立上った本体壁の上部に第1の吸音ユニットを設けるとともに、本体壁の反音源側の側面から反音源側へ延出するとともに先端側が上方に延出した張出部の上部に第2の吸音ユニットを設けた防音壁であって、
    第1の吸音ユニットは本体壁の上部から左右に夫々斜め上方に延びる2つの分岐壁を有するとともに、これら分岐壁の先端から互いに近づくように夫々斜め上方に延びる2つの再分岐壁を有し、これら再分岐壁の先端間に開口部を設け、
    第2の吸音ユニットは張出部の上部から左右に夫々斜め上方に延びる2つの分岐壁を有するとともに、これら分岐壁の先端から互いに近づくように夫々斜め上方に延びる2つの再分岐壁を有し、これら再分岐壁の先端間に開口部を設けたことを特徴とする防音壁。
  2. 2つの吸音ユニットの内部空間の大きさを異ならしめたことを特徴とする請求項1に記載の防音壁。
  3. 音源側吸音ユニットの開口部よりも反音源側ユニットの開口部を上方に位置させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の防音壁。
  4. 前記張出部の第1の吸音ユニットの反音源側の分岐壁に対向する部分をこの分岐壁とは平行に設けないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防音壁。
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