JP3582871B2 - 構造物と盛土との境界部における道路構造 - Google Patents

構造物と盛土との境界部における道路構造 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高速道路や一般道路等における橋台等の構造物と盛土部分との境界部における道路構造に係り、特に構造物と盛土部分との境界部における舗装体に段差やひびわれ等が生じるのを防止することができる道路構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、高速道路や一般道路等における橋梁は、例えば図8(a)に示すように、橋梁を架設する対向部位にそれぞれ道路構造物としてコンクリート製の橋台1、1を設置し、これらの橋台1、1上に桁2を横架する。そして、橋台1の背面側を埋め戻して盛土部分とし、この盛土部分上、橋台上及び桁上に舗装5を敷設して道路を構成する。あるいは、図8(b)に示すように、ボックスカルバート6を設置し、このボックスカルバート6の両側を埋め戻して盛土を形成するとともに、この盛土部分とボックスカルバート上とに連続して舗装5を敷設して道路を構成する。
【0003】
上記のように構成される道路構造において、橋台やボックスカルバートの背面側は埋め戻し土4が充分に転圧され後、その上に粒度分布を適切に調整した採石、砂等の混合材からなる路盤材が敷き均され、さらに転圧して路盤3が形成される。そして、その上に舗装が敷設されるが、埋め戻し土4の部分は、橋梁部分や既存の地盤に比べて軟質であるため、埋め戻し土4上の舗装5に自動車の輪荷重等が加わると沈下を生じる。この沈下によって舗装5には、橋台1やボックスカルバート6と盛土部分との境界部で塑性変形を生じ、ひびわれ(クラック)等を生じる。さらに、沈下が大きくなると、図9に示すように、橋台1やボックスカルバート6と盛土部分との境界部に段差が生じることがある。このように境界部に段差が生じると、自動車等の車両の走行に支障をきたすばかりでなく、予期せぬ事故を招く原因にもなる。
【0004】
このような問題点に対処するために、従来から踏掛け板を用いることがある。これは、鉄筋コンクリートからなる板状の部材であって、図10(a)に示すように、橋台1の上部背面側に設けられたブラケット部7と、橋台の背面から所定距離、例えば約4m程度離れた位置の路盤3の上部に設置された枕材8との上に、横架されるものである。そして、橋台から踏掛け板9、埋め戻し土の部分の路盤上にかけて、連続して舗装5が敷設される。このような踏掛け板9を用いることにより埋め戻し土4が沈下したときに、沈下部分と橋台1との間に緩やかな勾配を形成し、橋台1の背面で段差を生じて舗装5が破壊されるのを防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような踏掛け板9を用いた場合においても次のような問題点がある。
図10(b)に示すように、埋め戻し土4の部分が沈下すると踏掛け板9が傾斜し、踏掛け板の両端で不連続な変形を生じる。また、輪荷重が載荷されることによって図10(b)に示すように踏掛け板9が弾性的にたわみ、その両端部で不連続な変形を生じる。このような変形が、輪荷重の作用する毎に繰り返され、踏掛け板9の両端部上の舗装に徐々にひびわれが発生し、この部分から舗装の破壊が進行する。
【0006】
一方、踏掛け板はすべての橋台、ボックスカルバート等に設けられているわけではなく、橋台が完成した後、例えば舗装の補修・改修時に踏掛け板を新たに設置しようとしても、既設の橋台に、踏掛け板を支持するためのブラケット部を設けることは困難である。
【0007】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、道路構造物と盛土との境界部に連続して敷設された舗装にひびわれや段差が生じるのを防止し、舗装の耐久性を向上させることができる、構造物と盛土との境界部における道路構造を得ることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、 コンクリート等からなる道路構造物の背面側の盛土部に、上面が前記道路構造物の上端とほぼ等しい高さとなるように形成されたアスファルト混合物層と、 前記アスファルト混合物層の前記道路構造物側の端部をこの道路構造物に対して、少なくとも上下方向に変位するのを拘束する固定手段と、 前記アスファルト混合物層中に、ほぼ水平方向に埋設され、一端が前記道路構造物に固定されて引張力に抵抗することができるほぼ網状の補強材と、 前記道路構造物上から盛土部にわたり、連続して敷設された舗装体と、を有する構造物と盛土との境界部における道路構造を提供するものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、 請求項1に記載の構造物と盛土との境界部における道路構造において、 前記補強材を、上下方向に幅を有する帯状の鋼板を水平方向に折曲し、ハニカム状に接合されたほぼ網状の部材とするものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、 請求項1又は請求項2に記載の構造物と盛土との境界部における道路構造において、 前記固定手段が、前記道路構造物に固着された型鋼と、前記補強材を前記型鋼に固定する結合部材とを含み、 前記アスファルト混合物層は前記型鋼上に積層されるものとする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、 請求項1又は請求項2に記載の構造物と盛土との境界部における道路構造において、 前記固定手段が、前記道路構造物の上端部における盛土側に設けられた水平受部と、前記補強材を前記水平受部に固定する結合部材とを含み、 前記アスファルト混合物層は、前記水平受部上を埋めるように積層されるものとする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、 請求項1から請求項4までのいずれかに記載の構造物と盛土との境界部における道路構造において、 前記道路構造物と前記アスファルト混合物層との境界上における、前記舗装体の下面、又は/及び舗装体の基層と表層との間に、水平方向の相対変位を許容するゴムアスファルトマットが介挿されているものとする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構造物と盛土との境界部における道路構造において、 前記ゴムアスファルトマットには、引張力を負担する補強材が埋め込まれているものとする。
【0013】
上記アスファルト混合物層は、例えば舗装体を形成するのに用いられるアスファルト混合物と同等のものを用いて形成することができるが、適宜骨材の粒径や配合を変えたものを用いることもできる。
上記網状の補強材は、請求項2に示すように帯状の鋼板をハニカム状に接合した部材を用いるのが望ましいが、このほかに鋼線により形成された金網、棒鋼を格子状に溶接した溶接金網、鋼板材を断続的に切断し、これを引伸して網状としたエキスパンドメタル等を用いることもできる。
【0014】
【作用】
請求項1に記載の発明に係る道路構造では、橋台等の道路構造物の背面側における舗装の下側にアスファルト混合物層が設けられ、その一端が道路構造物に固定されているので、道路構造物の背面の埋め戻し土が輪荷重等によって圧密沈下を生じても、アスファルト混合物層が塑性変形し、道路構造物に固定された一端から盛土部分にかけてなだらかな勾配を形成する。従って、舗装に生じる歪や応力は分散されて、舗装にひびわれや段差を生じるのが防止される。また、アスファルト混合物層には補強材が埋設され、引張応力に対して補強されているので、アスファルト混合物層は容易に破壊せず、過大な勾配や段差を生じることなく、なだらかな勾配が維持される。
さらに、この補強材は一端が道路構造物に固定されているので、道路構造物と盛土部分との境界付近でアスファルト混合物層を有効に補強し、変形が過大になるのを防止する。このため、埋め戻し土の沈下量を、道路構造物の背面から盛土部分にかけてなだらかに擦り付けることができる。
【0015】
請求項2に記載の道路構造では、補強材として上下方向に幅を有する帯状の鋼板をハニカム状に接合したほぼ網状の部材を用いているので、アスファルト混合物が上記補強材のハニカム状の空間に充填され、補強材とアスファルト混合物層とが一体化されて補強効果が向上する。また、補強材が上下方向に幅を有する部材で形成されているので剪断力に対する補強効果が得られる。
【0016】
請求項3に記載の道路構造では、道路構造物に型鋼が固着され、この型鋼に補強材が固定されるとともに、アスファルト混合物層はこの型鋼上に形成されるので、橋台等の道路構造物が既に構築されたものであっても、舗装の改修時等に、本発明の道路構造を新たに採用することも可能となる。
【0017】
請求項4に記載の道路構造では、道路構造物の背面側に水平受部を設け、この水平受部上にアスファルト混合物層の一端が載置されるので、確実かつ容易にアスファルト混合物層を道路構造物に固定することができる。
【0018】
請求項5に記載の道路構造では、道路構造物とアスファルト混合物層との境界上における、舗装体の下面、又は/及び舗装体の基層と表層との間に、水平方向の相対変位を許容するゴムアスファルトマットを介挿することにより、道路構造物またはアスファルト混合物層と舗装体との間、舗装体の基層と表層との間で、水平方向に滑動が可能となるので、輪荷重や埋め戻し土の沈下等によって舗装体が変形しても、水平方向の歪み及び応力を分散することができ、舗装体のひびわれを防止することができる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、道路構造物が橋台である場合について説明し、また従来の道路構造と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0020】
◎第一の実施例
図1は請求項1、請求項2、請求項3、請求項5又は請求項6に記載の発明の一実施例である道路構造の概略断面図及び平面構成図である。
本実施例の道路構造は、鉄筋コンクリートからなる橋台1の背面側の埋め戻し土4上に、粒度を調整した砕石、砂等の混合物を転圧した路盤3を形成し、その上に上面が橋台1の上端とほぼ等しい高さとなるようにアスファルト混合物層10が形成され、さらにこの上に舗装5が、橋台1上から盛土部分にかけて連続して形成されている。アスファルト混合物層10の橋台1側の端部は、固定手段によって、橋台1に対して少なくとも上下方向に変位するのが拘束されている。また、アスファルト混合物層10中には、ほぼ水平方向に網状の補強材30が埋設され、一端が橋台1に固定されて引張力に抵抗することができるようになっている。
【0021】
上記アスファルト混合物層10は、砕石,砂利,砂あるいはフィラー等の中から適宜選択される材料からなる骨材と、アスファルトとを適切な配合割合で混合して形成されており、アスファルトは、石油アスファルトあるいは施工性等の要求に応じて天然アスファルトが用いられる。このアスファルト混合物は、例えば舗装に用いられるものとほぼ同等のものとすることができる。
【0022】
上記補強材30は、図2に示すように、上下方向に幅を有する鋼板30aが水平方向に折曲され、このような鋼板30aが多数組み合わされたものであり、鋼板30aによって仕切られた六角柱状の空間が平面方向にハニカム状に配列され、これが連続してほぼ網状となっている。この補強材30は以下のようにして形成されるものである。
幅が約20mm程度、厚さが0.5〜1.0mm程度の帯状の鋼板材を約30mm間隔の2箇所で約60度折り曲げ、更に続く2箇所では逆方向に約60度折り曲げ、これを繰り返すように加工する。このような帯状の鋼板材30aの幅方向を上下にして多数並列し、平面上でほぼ正六角形を形成するように隣接する鋼板材30aを互いに接合する。接合の方法は溶接でもよいし、図2に示すように、帯状の鋼板材30aに開口30bを設けるものとし、接合する鋼板材30aを重ねて開口30bを打ち抜き、このときの開口周縁の変形(バリ)によって接合するものでもよい。
【0023】
一方、上記アスファルト混合物層10及び補強材30を橋台1に固定する固定手段20は、不等辺山形状の型鋼21と、この型鋼を橋台1に固定するアンカーボルト23と、補強材30を型鋼21に固定する樹脂モルタル22とで主要部が構成されている。この型鋼21の一面には適宜間隔をおいて取付孔(図示せず)が穿設されており、この取付孔に貫挿されたアンカーボルト23によって型鋼21が橋台1の上部背面にほぼ水平に固定されている。また、この型鋼21の他方の面には樹脂モルタル22の接着力によって補強材30が固定され、この接着面の上にアスファルト混合物層10が、補強材30を埋め込むように積層されている。
【0024】
上記舗装5は、基層51と表層52とを積層した二層構造に形成されている。上記基層51は、骨材として砕石,砂利,砂,フィラー等の中から適宜選択される材料を用い、これらとアスファルトとを混合したアスファルト混合物からなるものであり、骨材は、砂利、砂などを適宜混合して、道路の交通量、環境、施工性等に応じた粒度分布に調整される。また、アスファルトは石油アスファルトを用いることができ、施工性等の要求に応じて天然アスファルトを用いてもよい。表層52に用いられるアスファルト混合物も上記基層51と同様に適宜材料および骨材の粒度分布等が選択される。
【0025】
橋台1の背面上および上記アスファルト混合物層10の他端上における舗装の下面には、ゴムアスファルトマット40が介挿され、滑り層を形成している。このゴムアスファルトマット40は、図3に示すように厚さが1.5〜2.0mm程度のシート状に形成された柔軟なゴムアスファルトコンパウンド層40a内に、ガラス繊維をメッシュ状に織った補強材40bを埋め込んだものである。このようなゴムアスファルトマット40は橋台1またはアスファルト混合物層10と舗装5との間に滑りを許容するものであり、埋め戻し土4の沈下や輪荷重によって橋台1とアスファルト混合物層10との間、又は路盤3とアスファルト混合物層10との間に相対的な変位が生じたときに、引張力がガラス繊維40bで負担されるとともに、ゴムアスファルトコンパウンド層40aの流動によって舗装5と橋台1との間または舗装5とアスファルト混合物層10との間等で滑りを生じるようになっている。このため、舗装5に伝達される歪または応力が分散され、舗装5にひびわれが生じるのを防止することができる。
さらに舗装の基層51と表層52との間にもゴムアスファルトマット40が介挿されており、基層51と表層52との間の滑りを許容して、舗装体の表層に応力が集中するのを防止し、路面にひびわれが及ぶのを抑止するようになっている。
【0026】
上記ゴムアスファルトマット40は工場で製作されるものであり、その上面には、図3に示すように硅砂40cが付着されている。この硅砂40cはゴムアスファルトマット40と舗装5の下面、またはゴムアスファルトマット40と舗装の表層52との付着を良好なものとすると共に、敷設するまでの取扱いを容易にするものである。また、このゴムアスファルトマット40が、現場で敷設されるまでは下面側に剥離紙40dが貼着されており、ロール状に巻いて搬入するときに重なり合うマット間の付着を制限し、取扱いを容易にしている。敷設時には、剥離紙40dを剥がし、敷き延ばすことによって柔軟なゴムアスファルトコンパウンド40aがアスファルト混合物層10、橋台1の上面、又は基層51に付着するようになっている。
【0027】
なお、上記実施例では、舗装5の下面、および舗装5の基層51と表層52との間に、ゴムアスファルトマット40を介挿する場合について説明したが、いずれか一方にゴムアスファルトマット40を介挿させるようにしてもよい。
【0028】
次に、上記実施例の施工手順について説明する。
まず、橋台1の背面側に路盤3を形成した後、この路盤上の橋台の背面に沿った部分に樹脂モルタル24を打設し、型鋼21を正確な位置に据え付けることができるように路盤3上の凹凸を修正する。この樹脂モルタル24の打設後、硬化が終わらないうちに型鋼21を設置し、アンカーボルト23によって型鋼21を橋台1の背面に固定する。
なお、上記型鋼21は腐食防止のために、全面を樹脂によってコーティングしておくのが望ましい。
【0029】
次に、補強材30の一端部を型鋼21に沿わせて仮置きし、溶接または機械的な接続方法で所定の大きさに組み立て、端部は高速カッター等で切断する。このようにして組み立てられた補強材30の一端部を型鋼21の水平片上に載置し、補強材30の端部を埋め込むように樹脂モルタル22を型鋼21上に打設する。この樹脂モルタル22は硬化して補強材30と一体となるとともに、その接着力によって型鋼21に接着される。その後、加熱・混合されたアスファルト混合物を補強材30を埋め込むように敷き均し、上面が橋台の上端とほぼ一致するように仕上げる。
この際、金属製の補強材30とアスファルト混合物がよく接着するように、高接着性のゴム入りアスファルトを散布機にて散布し、補強材30の表面に接着層を形成するのが望ましい。
【0030】
次に、橋台1とアスファルト混合物層10との境界部及びアスファルト混合物層10の他端部、すなわちアスファルト混合物層の盛土側終端部に滑り層40を形成するゴムアスファルトマット40を貼着する。そして、橋台1上からアスファルト混合物層10の上部にかけて舗装体を形成するアスファルト混合物を敷き均し、舗装の基層51を形成する。さらに、橋台の背面上およびアスファルト混合物層の他端上の基層表面にゴムアスファルトマット40を敷き、その上にアスファルト混合物を敷き均して表層52を形成し、施工を完了する。
【0031】
上記のようにして施工された本実施例の道路構造によれば、盛土部分の埋め戻し土4に沈下が生じても、盛土部分の路盤3上に設けられ、橋台1の背面側に一端が固定されたアスファルト混合物層10が、図4に示すようになだらかに変形して舗装5にひびわれを生じたり、路面に段差が生じるのが防止される。また、アスファルト混合物層10中には、一端が橋台1に固定されて引張力に抵抗することができるほぼ網状の補強材30が埋設されているので、橋台1と盛土部分の埋め戻し土4上にわたって敷設される舗装5に輪荷重等が加わった場合でも、補強材30が水平方向の歪み及び応力を分散し、アスファルト混合物層の過度の変形や破壊を防止して、なだらかな変形(図4参照)が維持される。また、アスファルト混合物層10は組成変形によって盛土部分の沈下に追従するので、輪荷重によって舗装5に水平方向の大きな繰り返し応力が生じるのを防止することができ、橋台1と盛土部分との境界上の舗装にひびわれが生じるのが防止される。
【0032】
また、橋台1の背面上およびアスファルト混合物層10の他端上における舗装5の下面、又は/及び舗装5の基層51と表層52との間に、ゴムアスファルトマット40を設けることにより、橋台1またはアスファルト混合物層10と舗装5の間、舗装5の基層51と表層52との間で、上部層と下部層とが水平方向に滑動可能となり、輪荷重等によって発生する水平方向の歪み及び応力を分散することができる。したがって、橋台1と盛土部分との境界部およびアスファルト混合物層の端部上における舗装5のひびわれを防止することができる。
【0033】
◎第二の実施例
図5は請求項1、請求項2、請求項4、請求項5又は請求項6に記載の発明の一実施例である道路構造を示す概略断面図および平面構成図である。
この実施例は固定手段の一部を道路構造物にて形成するようにしたものである。すなわち、図5(a)に示すように、道路構造物を構成する橋台1の背面側における上端部付近にブラケット部11を突設し、このブラケット部11の上面に、押え金具25とアンカーボルト26とで補強材30を固定している。押え金具25は図6に示すように、長形状の金属性板材の両端部22aが二つに分割されるとともに、円弧状に曲げ加工されており、補強材30の帯状板に設けられた開口30aに挿入して係止されるものである。この押え金具25の中央部にはアンカーボルト26を貫通する開口25bが設けられており、このアンカーボルト26の先端部をブラケット部11に埋設・固定することによって補強材30が橋台に固定される。
このようにして固定された補強材30を埋め込むように、ブラケット部11上から盛土部分にかけてアスファルト混合物層10が敷設され、さらにその上に舗装5が設けられている。
なお、図5に示す実施例において、上記以外の部分は図1に示す実施例と同じ構成とすることができ同一部分には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0034】
上記のような道路構造においても、図1に示す道路構造と同様に舗装のひび割れや路面に段差が生じるのが防止される。
また、上記のように橋台1の上端部における背面側にブラケット部11を設けることにより、上記第一実施例のような型鋼21を用いずにアスファルト混合物層10及び補強材30を固定することができるので、構成部材の削減及び施工性の向上を図ることができる。
【0035】
また、図7に示すように、上記ブラケット部11を設ける代わりに、橋台1の上端部に切欠部12を設け、この切欠部内に補強材30を固定して、これを埋めるようにアスファルト混合物層10を設けてもよい。
【0036】
◎その他の実施例
上記実施例では道路構造物が橋台1である場合について説明したが、ボックスカルバート上に直接舗装が施される場合においても、上記実施例と同様の構成を採用することができ、舗装のひびわれや路面に段差が生じるのを防止することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1に記載の発明に係る道路構造では、橋台等の道路構造物の背面側における舗装の下側にアスファルト混合物層が設けられ、その一端が道路構造物に固定されているので、道路構造物の背面の埋め戻し土が輪荷重によって圧密沈下を生じても、アスファルト混合物層がなだらかに塑性変形し、舗装にひびわれや段差を生じるのが防止される。また、アスファルト混合物層には補強材が埋設され、引張応力に対して補強されているので、アスファルト混合物層は容易に破壊せず、過大な勾配や段差を生じることなく、なだらかな勾配が維持される。さらに、この補強材は一端が道路構造物に固定されているので、アスファルト混合物層が有効に補強され、なだらかな変形が維持される。
【0038】
請求項2に記載の道路構造では、補強材として上下方向に幅を有する帯状の鋼板をハニカム状に接合したほぼ網状の部材を用いているので、アスファルト混合物が上記補強材のハニカム状の空間に充填され、補強材とアスファルト混合物層とが一体化されて補強効果が向上する。また、補強材が上下方向に幅を有する部材で形成されているので剪断力に対する補強効果が得られる。
【0039】
請求項3に記載の道路構造では、道路構造物に型鋼が固着され、この型鋼に補強材が固定されるとともに、アスファルト混合物層はこの型鋼上に形成されるので、橋台等の道路構造物が既に構築されたものであっても、舗装の改修時等に、本発明の道路構造を新たに採用することも可能となる。
【0040】
請求項4に記載の道路構造では、道路構造物の背面側に水平受部を設け、この水平受部上にアスファルト混合物層の一端が載置されるので、確実かつ容易にアスファルト混合物層を道路構造物に固定することができる。
【0041】
請求項5に記載の道路構造では、道路構造物の背面上における、舗装体の下面、又は/及び舗装体の基層と表層との間に滑り層が設けられているので、舗装体に生じるひずみおよび応力が分散され、舗装体のひびわれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1、請求項2、請求項3、請求項5又は請求項6に記載の発明の一実施例である道路構造を示す断面図およびその平面構成図である。
【図2】図1に示す実施例で用いられる補強材の概略斜視図である。
【図3】図1に示す実施例で用いられるゴムアスファルトマットの断面図である。
【図4】図1に示す実施例の道路構造における舗装及びアスファルト混合物層の変形状態を示す断面図である。
【図5】請求項1、請求項2、請求項4、請求項5又は請求項6に記載の発明の一実施例である道路構造を示す断面図およびその平面構成図である。
【図6】図5に示す実施例で用いられる補強材の固定構造を示す概略斜視図及び概略断面図である。
【図7】請求項1、請求項2、請求項4、請求項5又は請求項6に記載の発明の他の実施例である道路構造を示す断面図およびその平面構成図である。
【図8】構造物と盛土との境界部における道路構造を示す概略断面図である。
【図9】構造物と盛土との境界部における従来の道路構造およびその問題点を示す断面図である。
【図10】構造物と盛土との境界部における従来の他の道路構造およびその問題点を示す断面図である。
【符号の説明】
1 橋台(道路構造物)
2 桁
3 路盤
4 埋め戻し土
5 舗装
6 ボックスカルバート(道路構造物)
10 アスファルト混合物層
11 ブラケット部
12 切欠部
20 固定手段
21 型鋼
22 樹脂モルタル
23 アンカーボルト
24 樹脂モルタル
25 押え金具
26 アンカーボルト
30 補強材
40 ゴムアスファルトマット
51 基層
52 表層

Claims (6)

  1. コンクリート等からなる道路構造物の背面側の盛土部に、上面が前記道路構造物の上端とほぼ等しい高さとなるように形成されたアスファルト混合物層と、
    前記アスファルト混合物層の前記道路構造物側の端部をこの道路構造物に対して、少なくとも上下方向に変位するのを拘束する固定手段と、
    前記アスファルト混合物層中に、ほぼ水平方向に埋設され、一端が前記道路構造物に固定されて引張力に抵抗することができるほぼ網状の補強材と、
    前記道路構造物上から盛土部にわたり、連続して敷設された舗装体と、を有することを特徴とする構造物と盛土との境界部における道路構造。
  2. 請求項1に記載の構造物と盛土との境界部における道路構造において、
    前記補強材は、上下方向に幅を有する帯状の鋼板を水平方向に折曲し、ハニカム状に接合したほぼ網状の部材であることを特徴とする、構造物と盛土との境界部における道路構造。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の構造物と盛土との境界部における道路構造において、
    前記固定手段は、前記道路構造物に固着された型鋼と、前記補強材を前記型鋼に固定する結合部材とを含み、
    前記アスファルト混合物層は前記型鋼上に積層されることを特徴とする、構造物と盛土との境界部における道路構造。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の構造物と盛土との境界部における道路構造において、
    前記固定手段は、前記道路構造物の上端部における盛土側に設けられた水平受部と、前記補強材を前記水平受部に固定する結合部材とを含み、
    前記アスファルト混合物層は、前記水平受部上に積層されることを特徴とする、構造物と盛土との境界部における道路構造。
  5. 請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の構造物と盛土との境界部における道路構造において、
    前記道路構造物と前記アスファルト混合物層との境界上における、前記舗装体の下面、又は/及び舗装体の基層と表層との間に、水平方向の相対変位を許容するゴムアスファルトマットが介挿されていることを特徴とする、構造物と盛土との境界部における道路構造。
  6. 請求項5に記載の構造物と盛土との境界部における道路構造において、
    前記ゴムアスファルトマットには、引張力を負担する補強材が埋め込まれていることを特徴とする、構造物と盛土との境界部における道路構造。
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