JP3582429B2 - 録音音量制御機能を具えた楽音処理装置 - Google Patents

録音音量制御機能を具えた楽音処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、楽曲データの再生による自動演奏とユーザによる手弾き演奏の音量を制御する録音音量制御機能を具えた楽音処理装置(以下、単に「録音音量制御装置」という)に関し、特に予め記録しておいた楽曲データを再生しながら手弾き演奏を楽曲データへ追加録音(すなわち、記憶)する際に、ユーザの所望する音量バランスで楽曲データに手弾き演奏を追加録音することができるようにした録音音量制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から知られた電子楽器あるいは自動演奏装置等の演奏装置においては、記憶装置(あるいは記憶媒体)内に複数の楽曲データを記憶し、当該複数の楽曲データの中から選択されたいずれかの楽曲データに基づいて自動演奏(つまり、楽曲データの再生)を行うことができるようになっている。かかる電子楽器あるいは自動演奏装置等の演奏装置では、楽曲データの再生を行いながらユーザが並行して手弾き演奏を行うことができる。手弾き演奏とはユーザ自身が鍵盤等の演奏音入力操作子を直接操作することによって行う演奏のことであり、手を用いて行うものに限らない。つまり、足等の体の一部を用いて演奏を行うもの全てを含む概念である。一般的に、ユーザは楽曲データの音量と手弾き演奏の音量とを各々独立に手動設定することができる。
ところで、楽曲データの再生を行いながら手弾き演奏に係る演奏データを当該楽曲データのファイルに追加録音(すなわち、記憶)する場合、楽曲データの音量は強制的に初期化(例えば、楽曲データ内に予め記載されている音量データの値に設定)され、ユーザにより設定された楽曲データの音量が無視された状態で楽曲データの再生が行われていた。すなわち、従来の録音音量制御装置では、ユーザにより設定された楽曲データの音量(すなわち、ユーザ設定音量)を無効化し、楽曲データから読み出された音量データ(すなわち、記憶音量)のみに従って楽曲データの音量を設定し楽音データを再生していた。そして、ユーザは当該音量による楽曲データの再生音(自動演奏音)を聴きながら手弾き演奏の音量を調節することにより、ユーザ所望の音量バランスで手弾き演奏を録音することができるようになっていた。このような方法で手弾き演奏を楽曲データに録音することにより、手弾き演奏録音後に楽曲データの再生(すなわち、自動演奏)を行う際に、手弾き演奏録音時の音量バランス(すなわち、既に記録済みであった楽曲データの音量と新たに録音した手弾き演奏の音量とにおける音量バランス)で演奏を行うことができるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の録音音量制御装置では、記録済みの楽曲データの再生を行いながら手弾き演奏を記録する際に、楽曲データの音量をユーザが自由に変更して設定することができなかったことから、楽曲データの音量と手弾き演奏の音量との双方を自由に設定した上でのユーザ所望の音量バランスで記録することができない、という問題点があった。すなわち、楽曲データの音量と手弾き演奏の音量との音量バランスを、従来では楽曲データに予め記録された音量(つまり、固定された音量)を基に決定していたことから、録音時の手弾き演奏の音量は楽曲データの音量に束縛されるものであり、従ってユーザは自由に音量バランスを操作して手弾き演奏を追加録音することができなかった。例えば、楽曲データ内に記載されている音量データ(例えば、チャンネルボリュームデータ等)が最大音量値であった場合には、楽曲データの音量を下げることが全くできなかったことから、ユーザの行う手弾き演奏を楽曲データの音量よりも大きな音量で録音することができなかった。
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、楽曲データの再生を行いながらユーザによる手弾き演奏を録音する際に、ユーザが自由に楽曲データ及び手弾き演奏の音量を設定することができ、当該設定音量に基づいてユーザの意図する音量バランスで手弾き演奏の追加録音を行うことができるようにした楽音処理装置(すなわち録音音量制御装置)を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る楽音処理装置は、楽曲データを記憶する記憶手段と、前記楽曲データの音量を調整する音量調整手段と、前記記憶手段から楽曲データを読み出して、当該楽曲データに基づく楽音を、前記音量調整手段で調整された音量で発音する楽曲発音手段と、演奏データを入力する演奏入力手段と、前記演奏データの音量を設定する音量設定手段と、前記演奏入力手段から演奏データを入力して、当該演奏データに基づく楽音を、前記音量設定手段で設定された音量で発する演奏発音手段と、前記演奏入力手段から入力した演奏データを前記記憶手段に書き込む書込手段であって、前記音量調整手段で調整された前記楽曲データの音量と前記音量設定手段で設定された前記演奏データの音量とに基づいて、前記記憶手段に記憶している前記楽曲データの新たな音量データと、前記記憶手段に書き込む前記演奏データの音量データとを決定し、当該決定した音量データを記憶手段に書き込むものとを備え、前記書込手段における前記楽曲データに対応する新たな音量データと演奏データの音量データとは、前記音量調整手段により調整される楽曲データの音量と前記音量設定手段により設定される演奏データの音量との音量バランスを保つように決定することを特徴とする
【0006】
ユーザは楽曲データの音量、すなわち、記憶手段から読み出した所望の楽曲データを再生して行う自動演奏の音量音量調整手段で調整することができる。また、ユーザは自身の操作に従った演奏データを演奏入力手段から入力することができ、当該入力した演奏データの音量を音量設定手段から設定することができる。前記記憶手段から読み出した楽曲データに基づく楽音が前記音量調整手段で調整された音量で発音され、前記演奏入力手段から入力した演奏データに基づく楽音音量設定手段で設定された音量で発音される。したがって、ユーザは各々の音量を各手段自由に調整・設定することで、楽曲データの音量と演奏データの音量とのバランスをユーザの思い通りにして演奏を行わせることができる。書込手段は、前記演奏入力手段から入力した演奏データを前記記憶手段に書き込むものであって前記音量調整手段で調整された前記楽曲データの音量と前記音量設定手段で設定された前記演奏データの音量とに基づいて、前記記憶手段に記憶している前記楽曲データの新たな音量データと、前記記憶手段に書き込む前記演奏データの音量データとを決定し、当該決定した音量データを記憶手段に書き込む。この書込手段における前記楽曲データに対応する新たな音量データと演奏データの音量データとは、前記音量調整手段により調整される楽曲データの音量と前記音量設定手段により設定される演奏データの音量との音量バランスを保つように決定することを特徴とする。こうすることにより、ユーザの操作による演奏データを記憶手段に書込む際に各発音手段から発生していた楽曲データの音量と演奏データの音量とのバランスのままで、演奏データを書き込むことができる。
【0007】
本発明の好ましい実施例として、前記記憶手段に記憶される楽曲データには音量データが含まれており、前記書込手段は、前記記憶手段に記憶している前記楽曲データに含まれている音量データを、前記決定した楽曲データの新たな音量データへ書き換えることを特徴とする。また、前記音量調整手段は前記楽曲データに含まれている音量データに対する所定の比率を入力することで音量調整を行うものであり、前記書込手段は、当該比率を元にして算出した音量データを、前記楽曲データの新たな音量データとして決定することを特徴とする。
【0008】
本発明は、装置の発明として構成し、実施することができるのみならず、方法の発明として構成し、実施することができる。また、本発明は、コンピュータまたはDSP等のプロセッサのプログラムの形態で実施することができるし、そのようなプログラムを記憶した記録媒体の形態で実施することもできる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0010】
図1は、この発明の一実施例に係る録音音量制御装置のハードウエア構成例を示すハードブロック図である。ここに示されたハードウエア構成例はコンピュータを用いて構成されており、そこにおいて、録音音量制御処理は、コンピュータがこの発明に係る録音音量制御処理を実現する所定のプログラム(ソフトウエア)を実行することにより実施される。勿論、この録音音量制御処理は、コンピュータソフトウエアの形態に限らず、DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)によって処理されるマイクロプログラムの形態でも実施可能であり、また、この種のプログラムの形態に限らず、ディスクリート回路又は集積回路若しくは大規模集積回路等を含んで構成された専用ハードウエア装置の形態で実施してもよい。また、この録音音量制御装置は、電子楽器あるいはカラオケ装置又は電子ゲーム装置又はその他のマルチメディア機器又はパーソナルコンピュータ等、任意の製品応用形態をとっていてよい。そこで、図1では電子楽器の形態のものを例に示した。
【0011】
この電子楽器は、マイクロプロセッサユニット(CPU)1、リードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3からなるマイクロコンピュータによって制御されるようになっている。CPU1は、この電子楽器全体の動作を制御するものである。このCPU1に対して、データ及びアドレスバス1Dを介してリードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3、押鍵検出回路4、操作子検出回路5、表示回路6、音源回路7、通信インタフェース8、外部記憶装置9がそれぞれ接続されている。更に、CPU1には、タイマ割込み処理における割込み時間や各種時間を計時するタイマ1Aが接続されている。
【0012】
ROM2は、CPU1により実行あるいは参照される各種の動作プログラムや各種のデータ等を格納するものである。RAM3は、各種フラグ(後述のRUNフラグ、RECフラグ、MODEフラグなど)、各種バッファ(後述の手弾き音量バッファ、楽曲データ音量バッファ、鍵状態バッファなど)、楽曲データ、タイムカウンタなどのデータを格納するものである。すなわち、RAM3は演奏に必要な各種データやCPU1がプログラムを実行する際に発生する各種データを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは現在実行中のプログラムやそれに関連するデータを記憶するメモリ等として使用される。RAM3の所定のアドレス領域がそれぞれの機能に割り当てられ、レジスタやフラグ、テーブル、メモリなどとして利用される。鍵盤4Aは楽音の音高を選択するための複数の鍵を備えており、各鍵に対応してキースイッチを有しており、この鍵盤4Aは楽音演奏のために使用できるのは勿論のこと、楽曲データの選択指示あるいは音量設定指示を行うための入力手段として使用することもできる。押鍵検出回路4は、鍵盤4Aの各鍵の押圧及び離鍵を検出し、検出出力を生じる。
【0013】
操作子5Aは楽曲データの選択指示や演奏音量の設定指示を入力したり、あるいは自動演奏曲に関する各種の音楽条件を入力するための各種の操作子を含んで構成される。例えば、数値データ入力用のテンキーや文字データ入力用のキーボード、あるいはパネルスイッチ等である。本実施例においては、例えば自動演奏スイッチ、演奏データの選択スイッチ、記録スイッチ、モードスイッチ、手弾き音量の設定スイッチ、演奏データ音量の設定スイッチなどの操作子5Aがある。自動演奏スイッチは自動演奏の開始及び停止を指示するためのスイッチであり、当該自動演奏スイッチをオンすることにより、RAM3あるいは外部記憶装置9から楽曲データを読み出して演奏を開始する。反対に、当該自動演奏スイッチをオフすることにより、現在演奏中の楽曲データの演奏を終了する。演奏データの選択スイッチは、RAM3あるいは外部記憶装置9等に記憶されている複数の楽曲データの中から自動演奏を行わせたい楽曲データを選択するためのスイッチである。記録スイッチは、後述する「新規記録モード」あるいは「追加記録モード」といったユーザ指定の処理モード時に、楽曲データに対して手弾き演奏の記録を行う指示を与えるために用いられるスイッチである。すなわち、ユーザの行う手弾き演奏を楽曲データに新規に記録したり、あるいは現存する楽曲データに追加記録したりする際の記録開始指示及び記録終了指示を行うためのスイッチである。例えば、記録スイッチがオンされた場合は記録開始が指示された場合であり、手弾き演奏を楽曲データに記録する。反対に、記録スイッチがオフされた場合は記録終了が指示された場合であり、手弾き演奏を楽曲データに記録しない。モードスイッチは、処理モードとして「追加記録モード」を選択するためのスイッチである。本実施例では、3つの処理モードを示す。第1のモードは「通常自動演奏モード」であり、第2のモードは「新規記録モード」であり、第3のモードは「追加記録モード」である。これらの各処理モードにおける処理内容については後述する。手弾き音量の設定スイッチは、ユーザの行う手弾き演奏の音量を設定するためのスイッチである。演奏データ音量の設定スイッチは、楽曲データを自動演奏する際の音量を設定するためのスイッチである。この演奏データ音量の設定スイッチでは、楽曲データ中の全パート(チャンネル)の音量(チャンネルボリューム)を一律の割合で変更するように設定を行うことができる。本実施例において、1曲分の楽曲データは複数パート(複数チャンネル)構成であり、それぞれのパート(チャンネル)の情報はチャンネルボリュームと演奏データとから構成されている。チャンネルボリュームとは、該パート(チャンネル)の音量を設定するためのデータであり、本実施例においては‘1〜127’の値をとる。すなわち、本実施例において、楽曲データの音量及び手弾き演奏の音量は‘0〜127’の128段階で制御されるものとする。例えば、チャンネルボリュームが‘1’の場合は最小音量となり、チャンネルボリュームが‘127’の場合は最大音量となる。反対に、チャンネルボリュームが‘1’の場合は最大音量となり、チャンネルボリュームが‘127’の場合は最小音量となるようにしてもよい。このような場合、チャンネルボリュームが‘0’の場合は無音であるということになる。勿論、チャンネルボリュームの設定内容は上記のものに限られるものでないことは言うまでもない。演奏データは該パート(チャンネル)の演奏イベントを演奏順に記録した情報であり、音色などの設定情報をも含むデータである。
操作子検出回路5は操作子5Aの操作状態を検出し、その操作状態に応じた操作子情報をデータ及びアドレスバス1Dを介してCPU1に出力する。表示回路6はCPU1の制御状態、楽曲データの内容あるいは処理モード等の各種情報を、例えば液晶表示パネル(LCD)やCRT等から構成される表示部6Aに表示する。なお、操作子5Aは上述した他にも音高、音色、効果等を選択・設定・制御するための各種の操作子5Aを含んでいてよいことは言うまでもない。また、上記の自動演奏スイッチ、演奏データの選択スイッチ、記録スイッチ、モードスイッチ、手弾き音量の設定スイッチ、演奏データ音量の設定スイッチなどの操作子5Aは手動操作されるものに限らず、外部から入力されたデータに従って各スイッチに対応した設定内容が設定されるものであってもよい。
【0014】
音源回路7は複数のチャンネルで楽音信号の同時発生が可能であり、データ及びアドレスバス1Dを経由して与えられた演奏情報を入力し、このデータに基づき楽音信号を発生する。音源回路7から発生された楽音信号は、サウンドシステム7Aを介して発音される。前記音源回路7における楽音信号発生方式はいかなるものを用いてもよい。例えば、発生すべき楽音の音高に対応して変化するアドレスデータに応じて波形メモリに記憶した楽音波形サンプル値データを順次読み出す波形メモリ読み出し方式、又は上記アドレスデータを位相角パラメータデータとして所定の周波数変調演算を実行して楽音波形サンプル値データを求めるFM方式、あるいは上記アドレスデータを位相角パラメータデータとして所定の振幅変調演算を実行して楽音波形サンプル値データを求めるAM方式等の公知の方式を適宜採用してもよい。すなわち、音源回路の方式は、波形メモリ方式、FM方式、物理モデル方式、高調波合成方式、フォルマント合成方式、VCO+VCF+VCAのアナログシンセサイザ方式、アナログシミュレーション方式等、どのような方式であってもよい。また、専用のハードウェアを用いて音源回路を構成するものに限らず、DSPとマイクロプログラム、あるいはCPUとソフトウェアを用いて音源回路を構成するようにしてもよい。さらに、1つの回路を時分割で使用することによって複数の発音チャンネルを形成するようなものでもよいし、1つの発音チャンネルが1つの回路で形成されるようなものであってもよい。さらに、効果回路を前記音源回路7とは独立に設けて、前記音源回路7から発生された楽音信号に対して各種効果を与えることができるようにしてもよい。
【0015】
通信インタフェース8は、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)やインターネット、電話回線等の通信ネットワーク8Aに接続されており、概通信ネットワーク8Aを介して、図示しないサーバコンピュータ等と接続され、当該サーバコンピュータから制御プログラムや各種データを電子楽器側に取り込むためのインタフェースである。すなわち、ROM2や外部記憶装置9(例えば、ハードディスク)に制御プログラムや各種データが記憶されていない場合に、サーバコンピュータから制御プログラムや各種データをダウンロードするために用いられる。クライアントとなる電子楽器は、通信インターフェース8及び通信ネットワーク8Aを介してサーバコンピュータへと制御プログラムや各種データのダウンロードを要求するコマンドを送信する。サーバコンピュータは、このコマンドを受け、要求された制御プログラムやデータを、通信ネットワーク8Aを介して本電子楽器へと配信し、本電子楽器が通信インタフェース8を介して、これらの制御プログラムや各種データを受信して外部記憶装置9(例えば、ハードディスク)に蓄積することにより、ダウンロードが完了する。
なお、他のMIDI機器等からMIDI規格の演奏情報(MIDIデータ)を当該電子楽器へ入力したり、あるいは当該電子楽器からMIDI規格の演奏情報(MIDIデータ)を他のMIDI機器等へ出力するためのMIDIインタフェース(図示せず)を具えていてもよい。その場合、MIDIインタフェースは専用のMIDIインタフェースを用いるものに限らず、RS232−C、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、IEEE1394(アイトリプルイー1394)等の汎用のインタフェースを用いてMIDIインタフェースを構成するようにしてもよい。このような汎用のインタフェースを用いた場合には、MIDIメッセージ以外のデータをも同時に送受信するようにしてもよい。
【0016】
外部記憶装置9は、楽曲データなどの演奏曲に関するデータやCPU1が実行する各種プログラム等の制御に関するデータ等を記憶するものである。前記ROM2に制御プログラムが記憶されていない場合、この外部記憶装置9(例えば、ハードディスク)に制御プログラムを記憶させておき、それを前記RAM3に読み込むことにより、ROM2に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU1にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。なお、外部記憶装置9はハードディスク(HD)に限られず、フロッピィーディスク(FD)、コンパクトディスク(CD−ROM・CD−RAM)、光磁気ディスク(MO)、あるいはDVD(Digital Versatile Diskの略)等の着脱自在な様々な形態の外部記憶媒体を利用する記憶装置であってもよい。
【0017】
図1に示した電子楽器では、ユーザの行った手弾き演奏を新規に、あるいは追加的に楽曲データへ記録することができる。図2は、このデータ記録の機能を説明するための機能ブロック図である。以下、データ記録機能について図2を用いて説明する。なお、理解しやすくするために、図2では3つのパート(パート1〜パート3)から構成されている1曲分の楽曲データのみを図示した。
本実施例において、ユーザの行う手弾き演奏に伴って発生する演奏データ(以下、これを手弾きデータと呼ぶことにする)に対して、ユーザは手弾き音量の設定スイッチを用いて手弾き演奏の音量の絶対値(チャンネルボリュームの値)を設定することで(上段側の「音量設定」101)、例えば‘0〜127’までの範囲内の値で手弾き演奏の音量(絶対値)を設定することができる。一方、演奏データの選択スイッチにより選択され、RAM3あるいは外部記憶手段9から読出された(「読出」104)楽曲データに対しては、ユーザは演奏データ音量の設定スイッチを用いて現在記録されている楽曲データの音量に対する比率を設定することで(下段側の「音量設定」105)、例えば‘1〜127’までの範囲内の値で楽曲データの音量を設定することができる。すなわち、楽曲データの音量については、ユーザは楽曲データに記録されているチャンネルボリュームの値に対する比率(全パート(つまり、全チャンネル)に対する共通値:以下、これを楽曲データ音量比率と呼ぶことにする)を設定することができるようになっており、楽曲データの音量(絶対値)はこの楽曲データ音量比率を基にして算出される(後述の「書込音量算出」103)。このようにして各々音量設定が行われた手弾き演奏及び楽曲データは楽音合成されて、「サウンドシステム」7Aを介して楽音の「再生」が行われる。すなわち、「楽音合成」106では受信した手弾きデータ、手弾き音量、楽曲データ、演奏データ音量等の情報に基づいたデジタル楽音波形を形成し、形成したデジタル楽音波形を「サウンドシステム」7Aへ送信する。そして、「サウンドシステム」7Aでは受信したデジタル楽音波形に基づいて楽音を再生する。
【0018】
本実施例においては、上述したように楽曲データに対する音量を複数パートのチャンネルボリュームの値に共通する所定の比率(つまり、楽曲データ音量比率)によって設定できるようになっている。そのため、楽曲データのチャンネルボリュームとして記録するためには、楽曲データの音量値(絶対値)を各パート毎に新たに算出しなければならない。そこで、「書込音量算出」103において、楽曲データの音量値を各パート毎に算出する。すなわち、読出し時に楽曲データに記録されていた各パートのオリジナルの音量値に前記楽音データ音量比率を反映させた新たな音量値を算出し、当該音量値を楽曲データのチャンネルボリュームとして各パート毎に記録する。勿論、これに限らず、演奏データ音量の設定スイッチにより各パート毎の楽音データの音量を音量値(絶対値)で設定できるようにした場合には当該音量値を楽曲データの音量値としてそのまま書き込んだりする等、いろいろと変形することが可能である。これらの変形例の具体例については後述する。
手弾き演奏が行われることによって入力される演奏データ(すなわち、手弾きデータ)と手弾き音量設定スイッチにより設定された手弾き演奏の音量は、選択されている楽曲データにユーザが指定した手弾き演奏用パート(手弾き演奏チャンネル)の演奏データ及びチャンネルボリュームとして記録される(「書込」102)。この「書込」102では、楽曲データに手弾き演奏用パートを新たに作成して書き込みするようにしてもよいし、あるいは楽曲データの既存パートを手弾き演奏用パートとして上書きするようにしてもよい。また、当該「書込」102では、既存の楽曲データの各パートにおけるオリジナルのチャンネルボリュームの書き換えを行う。すなわち、上述の「書込音量算出」103において算出された各パート毎の音量値(つまり、楽曲データに記録されている各パートのオリジナルのチャンネルボリュームに楽音データ音量比率を反映させて算出した新たな音量値)を各パートのチャンネルボリュームに書き込む。
【0019】
上述した各機能は、図1に示す電子楽器のCPU1で実行される「メイン処理」によって制御される機能である。そこで、「メイン処理」について図3を用いて説明する。図3は、「メイン処理」の一実施例を示すフローチャートである。当該「メイン処理」は、例えば電子楽器の電源をオンすることによりスタートし、上述したデータ記録機能における各機能を制御する。
以下、図3に示すフローチャートに従って、当該「メイン処理」の動作を説明する。
まず、最初に「初期化処理」を行う(ステップS1)。この「初期化処理」では、各種フラグ(例えば、後述のRUNフラグ、RECフラグ、MODEフラグ等)やバッファ(例えば、後述の手弾き音量バッファ、楽音データ音量バッファ、鍵状態バッファ等)の初期化や表示部6Aへの初期画面の表示などの処理を行って、当該電子楽器を初期状態にする。この「初期化処理」が終了すると、楽曲データの選択が行われる(ステップS2)。すなわち、ユーザによる演奏データの選択スイッチの操作があった場合にそれにあわせて、自動演奏させたい楽曲データあるいは手弾き演奏を追加記録する対象としたい楽曲データをRAM3あるいは外部記憶装置9から読み出す。引き続いて、手弾き演奏音量の設定(ステップS3)及び自動演奏音量の設定(ステップS4)を行う。ユーザは手弾き音量の設定スイッチの操作により手弾き演奏の音量を所望の音量値(音量を所定の数値0〜127で表したもの)に設定することができ、設定された音量値は手弾き音量バッファに記録される。一方、ユーザは演奏データ音量の設定スイッチの操作により自動演奏される楽曲データの音量を所望の楽音データ音量比率で設定することができ、設定された楽音データ音量比率は楽曲データ音量バッファに記録される。
こうすることによって、ユーザ所望の音量で楽曲データの自動演奏を行いながら、ユーザによる手弾き演奏をユーザ所望の音量で並行して行うことができるように電子楽器は環境設定される。
【0020】
次に、ステップS5ではモードスイッチの操作があったか否かを判定する。すなわち、当該電子楽器における処理モードが「追加記録モード」に設定されたか否かを判定する。ユーザによるモードスイッチの操作があれば(ステップS5のYES)、処理モードが「追加記録モード」に設定されて「モード処理」を行う(ステップS6)。モードスイッチの操作がなければ(ステップS5のNO)、ステップS7へジャンプする。すなわち、「モード処理」を行わない。この場合、処理モードは「通常自動演奏モード」あるいは「新規記録モード」のいずれかである。
この「モード処理」(ステップS6)の一実施例のフローチャートを示すと図4のようである。図4に示すように、当該「モード処理」ではMODEフラグの内容を反転し(ステップS21)、RUNフラグに‘0’をセットする(ステップS22)。すなわち、当該「モード処理」は「追加記録モード」における追加記録の開始待機状態(RUNフラグ=0、RECフラグ=0、MODEフラグ=1)に当該電子楽器を設定する処理である。
【0021】
ここで、処理モードと各フラグとの関係について説明する。
まず、処理モードについて簡単に説明する。上述したように、本実施例においては3つの処理モードがある。第1に「通常自動演奏モード」がある。この処理モードは、選択された楽曲データに従った楽曲の再生を行う処理モードである。つまり、通常の自動演奏処理を行う処理モードであって、この処理モードでは手弾き演奏の記録処理は行われない。第2に「新規追加モード」がある。この処理モードは、手弾き演奏を新規楽曲データとして記録する処理モードであり、この処理モードでは手弾きのみの楽曲データが作成される。第3に「追加記録モード」がある。この処理モードは、手弾き演奏を選択された楽曲データに追加記録する処理モードである。
次に、フラグについて簡単に説明する。「RUNフラグ」は、選択された楽曲データが再生中(つまり、自動演奏中)であるか否かを表すフラグである。「RECフラグ」は、現在手弾き演奏を楽曲データに記録中であるか否かを表すフラグである。「MODEフラグ」は、楽曲データを再生(つまり、自動演奏)しながら手弾き演奏を記録することのできる処理モード(つまり、追加記録モード)が選択されているか否かを表すフラグである。
【0022】
これら「RUNフラグ」と「RECフラグ」及び「MODEフラグ」の各設定状態の組み合わせで上述の各処理モード(つまり、当該電子楽器の状態)を表すことができる。すなわち、「RUNフラグ=1、RECフラグ=0、MODEフラグ=0」は「通常自動演奏モード」であり、当該電子楽器では通常の自動演奏を実行中(ユーザに選択された楽曲データの再生中)であることを表す。これは、自動演奏スイッチのみが操作された場合の動作である。「RUNフラグ=0、RECフラグ=1、MODEフラグ=0」は「新規記録モード」であり、当該電子楽器では手弾き演奏の新規記録中であることを表す。これは、記録スイッチのみが操作された場合の動作である。「RUNフラグ=0、RECフラグ=0、MODEフラグ=1」は「追加記録モード」の開始待機状態を表す。つまり、モードスイッチが操作された時の動作であり、その後の記録スイッチ操作に応答して当該電子楽器では追加記録が開始される。「RUNフラグ=1、RECフラグ=1、MODEフラグ=0」は「追加記録モード」であり、当該電子楽器では選択された楽曲データへの手弾き演奏の追加記録中であることを表す。つまり、モードスイッチ操作後に記録スイッチが操作された場合の動作である。このように、各フラグのオン(例えば、=1の場合)・オフ(例えば、=0の場合)の組み合わせにより当該電子楽器における処理モードが決定する。
なお、上記の各フラグの設定は上述した各スイッチのオン・オフと対応しており、「RUNフラグ」は自動演奏スイッチでオン(例えば、1に設定)・オフ(例えば、0に設定)することができ、「RECフラグ」は記録スイッチでオン(例えば、1に設定)・オフ(例えば、0に設定)することができ、「MODEフラグ」はモードスイッチでオン(例えば、1に設定)・オフ(例えば、0に設定)することができる。
【0023】
図3に示す「メイン処理」のフローチャートに戻り、ステップS7ではユーザによる記録スイッチの操作があったか否かを判定する。記録スイッチの操作があった場合には(ステップS7のYES)、後述の「記録準備処理」を行う(ステップS8)。すなわち、「新規記録モード」あるいは「追加記録モード」の開始を指示する。記録スイッチの操作がなかった場合には(ステップS7のNO)、ステップS9へジャンプする。すなわち、この場合には「記録準備処理」を行わない。ステップS9では、自動演奏設定を行う。すなわち、自動演奏スイッチの操作により自動演奏開始又は停止(RUNフラグの反転)を指示し、ステップS2で選択された楽曲データを再生して自動演奏を行う(通常自動演奏モードの設定)。ステップS10では、「その他の処理」を行う。当該「その他の処理」には、例えば、演奏データの新規作成(ステップ入力)や楽曲データの編集、あるいは電子楽器上での各種設定変更など種々の処理を行う。ステップS11では、「メイン処理」を終了するか否かの判定を行う。「メイン処理」を終了しない場合(ステップS11のNO)にはステップS2の処理へ戻り、「メイン処理」終了指示(例えば、当該電子楽器の電源オフ等)があるまで(ステップS11のYES)、ステップS2〜ステップS11の各処理を繰り返し行う。
以上のようにして、「メイン処理」では自動演奏を行いながらユーザによる手弾き演奏を録音するために必要な各種設定を行っている。
【0024】
図5は、上述の「記録準備処理」(図3のステップS8参照)の一実施例を示すフローチャートである。「記録準備処理」は「新規記録モード」あるいは「追加記録モード」の開始を指示し、手弾き演奏を楽曲データに記録するための準備を行う処理である。
まず、ステップS31ではRECフラグの内容を反転する。すなわち、記録スイッチの操作に伴い(図3のステップS7参照)、RECフラグの設定内容を反転する。ステップS32では、RUNフラグに‘0’をセットする。そして、ステップS33では、ステップS31で反転したRECフラグが‘1’であるか否かの判定を行う。RECフラグが‘1’である場合(ステップS33のYES)、記録チャンネルの設定を行い(ステップS34)、手弾き演奏のチャンネルボリュームデータを書き込む(ステップS35)。すなわち、RECフラグが‘1’に設定されている場合は新たに手弾き演奏の記録開始が指示された場合であり、手弾き音量の設定スイッチから入力された手弾き演奏の音量を記録チャンネル(つまり、楽曲データの手弾き演奏チャンネル)のチャンネルボリュームとして記録する処理を行っている。なお、ステップS34の記録チャンネルの設定において、手弾き演奏を楽曲データ中のいずれのパート(チャンネル)に対応付けて記録するかをユーザが自由に設定することができるが、これに限らず、手弾き演奏を記録するパート(手弾き演奏チャンネル)が自動的に設定されてもよい。
一方、RECフラグが‘1’でない場合(ステップS33のNO)には、新たなチャンネルボリュームに基づいて、手弾き演奏の音量と楽曲データの音量とを初期化する(ステップS36)。すなわち、RECフラグが‘1’に設定されていない場合は手弾き演奏の記録処理を終了した場合であり、楽曲データにエンドデータを書き込んで、発音中の楽音を消音させ手弾き演奏の記録処理を終了する。ステップS36の処理は、録音した楽曲データが録音時の音量で再生されるよう、新たに楽曲データに書き込まれた各チャンネルボリュームに基づいて音量設定を行う。こうすると、録音終了後にユーザがわざわざ音量を設定し直すことなく、録音した楽曲を録音時の音量で、即、試聴することができるようになる。つまり、ユーザによる煩わしい作業を削減することができることから、ユーザにとって非常に便利な機能である。このように、ステップS36の処理を実行する方がユーザにとって非常に好ましいことであるが、必ずしも当該処理を実行しなければならないというわけではない。すなわち、ステップS36の処理はあってもなくてもよい。
【0025】
次に、ステップS37では、MODEフラグが‘1’であるか否かを判定する。すなわち、MODEフラグが‘1’である場合は「追加記録モード」における手弾き演奏の記録が指示されたときの動作であり、MODEフラグが‘1’でない場合は「新規記録モード」における手弾き演奏の記録が指示されたときの動作である。したがって、MODEフラグが‘1’でない場合には(ステップS37のNO)、当該「記録準備処理」を終了する。一方、MODEフラグが‘1’である場合には(ステップS37のYES)、既に選択されている楽曲データの各パート(チャンネル)毎に新規音量を算出する(ステップS38)。すなわち、ユーザにより設定されている楽曲データ音量比率(楽曲データ音量バッファ内の値)を用いて、楽曲データ内のそれぞれのパート毎に新規音量値を算出する。こうして算出された新規音量値は、楽曲データの元音量に上書きされる(ステップS39)。そして、RUNフラグに‘1’をセットし(ステップS40)、MODEフラグに‘0’をセットして(ステップS41)、当該「記録準備処理」を終了する。このように、「追加記録モード」時(ステップS37のYES)には、手弾き演奏チャンネルにはユーザにより設定された手弾き演奏の音量値そのものがチャンネルボリュームとして記録される。一方、楽曲データ中の他の各チャンネルにおけるチャンネルボリュームは、ユーザにより設定された楽音データ音量比率に応じた値に書き換えられる。すなわち、「追加記録モード」で記録される各チャンネル毎の新規音量値は以下のようになる。
手弾き演奏チャンネルのチャンネルボリューム=ユーザ設定の手弾き演奏音量…(式1−1)
その他のチャンネルのチャンネルボリューム=元のチャンネルボリューム(元音量)×ユーザ設定の楽曲データ音量比率…(式1−2)
このようにチャンネルボリュームを記録することによって、手弾き演奏録音後の楽曲データ再生の際に、手弾き演奏録音時にユーザが聴いていた音量バランスと同じ音量バランスで録音した手弾き演奏を含んだ自動演奏を行わせることができるようになる。なお、「新規記録モード」時(ステップS37のNO)には、ユーザにより設定された手弾き演奏の音量値そのものをチャンネルボリュームとした手弾き演奏チャンネルのみが記録される(式1‐1参照)。
【0026】
上述の「追加記録モード」で記録される各チャンネル毎の新規音量値(ステップS39参照)は、手弾き音量の設定スイッチあるいは演奏データ音量の設定スイッチから入力する内容に従ってその算出方法(ステップS38参照)が種々変わる。
例えば、手弾き演奏の音量についてはデフォルトの音量値が記録されており、手弾き演奏録音時における各チャンネルの再生音量をユーザが比率により設定する場合がある。この場合、手弾き演奏音量設定(図3のステップS3参照)において、ユーザは当該デフォルト値に対する所定の比率(これを手弾き演奏再生音量比率と呼ぶ)を設定することにより、手弾き演奏の音量を設定することができる。
この場合における手弾き演奏録音時の手弾き演奏の再生音量及び楽音再生音量は以下のようになる。
手弾き再生音量=デフォルト値×ユーザ設定の手弾き演奏再生音量比率…(式2‐1)
その他のチャンネルの再生音量=各チャンネルのチャンネルボリューム×ユーザ設定の楽曲データ再生音量比率…(式2‐2)
この場合において録音された手弾き演奏(手弾き演奏チャンネル)と楽曲データ(その他チャンネル)とを手弾き演奏録音時の音量バランスで再生するためには、以下の式に示すようにして各チャンネルボリュームが記録されなければならない。
手弾き演奏チャンネルのチャンネルボリューム=デフォルト値…(式2‐3)
その他のチャンネルのチャンネルボリューム=元のチャンネルボリューム(元音量)×(ユーザ設定の楽曲データ再生音量比率÷ユーザ設定の手弾き演奏再生音量比率)…(式2‐4)
すなわち、ステップS35において手弾き演奏チャンネルのチャンネルボリュームとしてデフォルト値を書込む。そして、この場合にも手弾き演奏の音量と楽曲データの音量とのバランスがユーザの意図通りのバランスとならなければならない。つまり、楽曲データを再生した際に、手弾き演奏録音時の音量バランスと同じ音量バランスで手弾き演奏を含む楽曲データが再生されなければならない。そこで、ステップS38において各チャンネルの新規音量を算出するが、その新規音量は(式2‐4)に示す算出式から導き出されるものである。
勿論、それぞれの再生音量の値をそのままチャンネルボリュームとして記録してもよい(以下の各例においても同様)。
【0027】
あるいは、ユーザが手弾き音量と演奏データの各チャンネルの音量とを独立して音量値(絶対値)で設定できるようにしてもよい。この場合における手弾き演奏録音時の手弾き演奏の再生音量及び楽音再生音量は以下のようになる。
手弾き再生音量=ユーザ設定の手弾き演奏再生音量(チャンネルボリューム値)…(式3‐1)
その他のチャンネルの再生音量=ユーザ設定の楽曲データ再生音量(チャンネル毎のチャンネルボリューム値)…(式3‐2)
この場合において録音された手弾き演奏(手弾き演奏チャンネル)と楽曲データ(その他チャンネル)とを手弾き演奏録音時の音量バランスで再生するためには、以下の式に示すようにして各チャンネルボリュームが記録されなければならない。
手弾き演奏チャンネルのチャンネルボリューム=入力された手弾き再生音量(チャンネルボリューム値)…(式3‐3)
その他のチャンネルのチャンネルボリューム=入力されたその他チャンネルの再生音量(チャンネルボリューム値)…(式3‐4)
すなわち、ステップS35において手弾き演奏チャンネルのチャンネルボリュームとして設定された手弾き音量の音量値(絶対値)を書込む。そして、この場合にも手弾き演奏の音量と楽曲データの音量とのバランスがユーザの意図通りのバランスでなければならない。つまり、楽曲データを再生した際に、ユーザが現在聞いている音量バランスと同じ音量バランスで再生されなければならない。そこで、この場合には、各チャンネルの新規音量を算出することなく、ユーザが直接入力した音量値をその他のチャンネルボリュームとして各チャンネルに記録する。すなわち、ステップS38の処理を行わずに、かつ、ステップS39において「入力された音量値を元音量に上書き」する。
【0028】
上述の各実施例では、手弾き演奏を新規に記録するように記載しているがこれに限らず、すでになんらかの演奏データが記録されているチャンネル(パート)に手弾き演奏を上書き(すなわち、追加記録)してもよい。
この場合における手弾き演奏録音時の手弾き演奏の再生音量及び楽音再生音量は以下のようになる。
手弾き演奏の再生音量=手弾きチャンネルに指定されたチャンネルのチャンネルボリューム×ユーザ設定の手弾き演奏再生音量比率…(式4‐1)
その他チャンネルの再生音量=各チャンネルのチャンネルボリューム×ユーザ設定の楽曲データ再生音量比率…(式4‐2)
従って、手弾き演奏を所望のチャンネルに対して上書きする場合においても、録音された手弾き演奏(手弾き演奏チャンネル)と楽曲データ(その他チャンネル)とを手弾き演奏録音時の音量バランスで再生するためには、以下の式に示すようにして各チャンネルボリュームが記録されなければならない。
手弾き演奏チャンネルのチャンネルボリューム=手弾き演奏チャンネルに指定されたチャンネルのチャンネルボリューム…(式4‐3)
その他のチャンネルのチャンネルボリューム=元のチャンネルボリューム(元音量)×(ユーザ設定の楽曲データ再生音量比率÷ユーザ設定の手弾き演奏再生音量比率)…(式4‐4)
【0029】
なお、上述の各実施例では楽曲データに音量を制御する情報としてチャンネルボリュームのみが記録されている例を示したがこれに限られず、例えば、楽曲データの先頭にマスターボリューム(全チャンネルの音量に影響するボリューム)を記録するように楽曲データを構成してもよい。こうした場合、ユーザは手弾き演奏の音量を前記マスターボリュームに対する比率で設定し、楽曲データの音量を全チャンネル共通の比率で設定することができるようになる。
この場合における手弾き演奏録音時の手弾き演奏の再生音量及び楽音再生音量は以下のようになる。
手弾き再生音量=マスターボリューム+(マスターボリューム×ユーザ設定の手弾き演奏音量比率)…(式5‐1)
その他のチャンネルの再生音量=マスターボリューム+(各チャンネルボリューム×ユーザ設定の楽曲データ音量比率)…(式5‐2)
この場合において録音された手弾き演奏(手弾き演奏チャンネル)と楽曲データ(その他チャンネル)とを手弾き演奏録音時の音量バランスで再生するためには、以下の式に示すようにして各チャンネルボリュームが記録されなければならない。
手弾き演奏チャンネルのチャンネルボリューム=マスターボリューム×ユーザ設定の手弾き演奏音量比率…(式5‐3)
その他のチャンネルのチャンネルボリューム=元のチャンネルボリューム(元音量)×ユーザ設定の楽曲データ音量比率…(式5‐4)
【0030】
「追加記録モード」ではユーザの記録スイッチの操作によって、手弾き演奏を楽曲データに追加記録したり、追加記録しなかったりすることができる。すなわち、上述のようにRECフラグの判定とMODEフラグの判定とを別々に行うことにすると(ステップS33及びステップS37参照)、「追加記録モード」において、ユーザは記録スイッチを操作することによって、手弾き演奏を楽曲データに追加記録したり、あるいは追加記録しないといった操作を選択的に行うことができるようになる。したがって、ユーザは所望の一部分のみを追加記録したい場合に、記録スイッチを操作してその一部分の手弾き演奏を楽曲データに追加することができる。
なお、作成された手弾き演奏チャンネルに対して、更に手弾き演奏を追加録音することができる。すなわち、新規に作成された手弾き演奏チャンネルを他のチャンネルと共に自動演奏させ、これに対してユーザが新たな手弾き演奏を行って当該手弾き演奏を新たに手弾き演奏チャンネルとして楽曲データに追加録音することができる。
【0031】
また、手弾き演奏の録音時に、手弾き演奏チャンネル、楽曲データの複数チャンネルのいずれかの音量が最大値以上になる場合には、該最大値以上となるチャンネルの音量を最大値とし、その時の超過量だけ他のチャンネルの音量を下げるようにしてよい。
さらに、手弾き演奏の録音時に、手弾き演奏チャンネルあるいは楽曲データの複数チャンネルのいずれかの音量が最小値に限りなく近くなった場合には、全チャンネル中の最大音量を持つチャンネルの音量値が最大値を超えない程度に、全チャンネルの音量値に対してオフセット値を加算(あるいは乗算)するようにしてもよい。
【0032】
図6は、図1に示す電子楽器におけるCPU1で所定のタイミング毎に実行される「割込み処理」の一実施例を示すフローチャートである。「割込み処理」では、タイムカウンタにより楽曲進行のタイミングを制御する。該タイムカウンタの値は、自動演奏開始時や記録開始時などにリセットされる。
ステップS51では、タイムカウンタの値をインクリメントする。このタイムカウンタの値を、現在の楽曲データの再生と手弾き演奏の録音とで利用することにより、手弾き演奏を楽曲データの再生に同期させて録音することができる。ステップS52では、RECフラグが‘1’であるか否かを判定する。RECフラグが‘1’である場合(ステップS52のYES)、鍵状態バッファとタイムカウンタの内容に基づいて手弾き演奏を記録する(ステップS53)。すなわち、新たに発生した押離鍵イベントを、現在の楽曲進行タイミングを表す情報(タイムカウンタの値に従った値)と共に、手弾き演奏チャンネル(ユーザの指定したチャンネル)の演奏データとして記録する。さらに、RUNフラグが‘1’であるか否かを判定する(ステップS54)。RUNフラグが‘1’である場合(ステップS54のYES)、今回タイミングに該当するイベントを音源へ放出して(ステップS55)、当該「割込み処理」を終了する。
【0033】
図7は、鍵盤の押離鍵時に割込み処理される「押離鍵処理」の一実施例を示すフローチャートである。すなわち、手弾き演奏の状態を新たな状態変化(押鍵あるいは離鍵)がある毎に記録しておく処理であり、従って当該「押離鍵処理」は押離鍵状態に変化がある毎に割りこみ処理として実行される。
当該「押離鍵処理」は、鍵操作の変化状態を鍵状態バッファに記録しておき(ステップS61)、変化状態に基づいて手弾き演奏の発音を制御する(ステップS62)。この鍵状態バッファに記録された鍵操作の変化状態は、上述したように手弾きチャンネルの演奏データとして記録される(図6のステップS53参照)。
【0034】
以上のように、従来の録音音量制御装置においては、演奏データ音量の設定スイッチによる設定値を無効化し、楽曲データ内から読み出された各演奏パートのチャンネルボリュームに基づいてパート(チャンネル)毎の音量を設定していたが、本発明に係る録音音量制御装置においては、演奏データ音量の設定スイッチを用い、新たに楽曲データの音量を算出して、楽曲データの音量を書きかえることができる。したがって、ユーザは思い通りの音量バランスで手弾き演奏を楽曲データに追加録音することができるようになる。すなわち、ユーザが手弾き演奏録音時に聞いている前記楽音再生手段により再生される演奏の音量バランスと、手弾き演奏録音後の楽曲データの再生時における音量バランスとを同じバランスで自動演奏を行うことができるようになる。
【0035】
本実施例に係る録音音量制御装置を電子楽器に適用した場合、電子楽器は鍵盤楽器の形態に限らず、弦楽器や管楽器、あるいは打楽器等どのようなタイプの形態でもよい。また、そのような場合に、音源装置、自動演奏装置等を1つの電子楽器本体に内蔵したものに限らず、それぞれが別々に構成され、MIDIインタフェースや各種ネットワーク等の通信手段を用いて各装置を接続するように構成されたものにも同様に適用できることはいうまでもない。また、パソコンとアプリケーションソフトウェアという構成であってもよく、この場合処理プログラムを磁気ディスク、光ディスクあるいは半導体メモリ等の記憶メディアから供給したり、ネットワークを介して供給するものであってもよい。さらに、カラオケ装置やゲーム装置、あるいは携帯電話等の携帯型通信端末、自動演奏ピアノ等に適用してもよい。
【0036】
なお、楽曲データを構成する演奏データのフォーマットは、イベントの発生時刻を曲や小節内における絶対時間で表した『イベント+絶対時間』形式のもの、イベントの発生時刻を1つ前のイベントからの時間で表した『イベント+相対時間』形式のもの、音符の音高と符長あるいは休符と休符長で曲データを表した『音高(休符)+符長』形式のもの、演奏の最小分解能毎にメモリの領域を確保し、演奏イベントの発生する時刻に対応するメモリ領域にイベントを記憶した『ベタ方式』形式のものなど、どのような形式のものでもよい。また、複数チャンネル分の演奏データが存在する場合は、複数のチャンネルのデータが混在した形式であってもよいし、各チャンネルのデータがトラック毎に別れているような形式であってもよい。さらに、演奏データの処理方法は、設定されたテンポに応じて処理周期を変更する方法、処理周期は一定で自動演奏中のタイミングデータの値を設定されたテンポに応じて変更する方法、処理周期は一定で1回の処理において演奏データ中のタイミングデータの計数の仕方をテンポに応じて変更する方法等、どのようなものであってもよい。
また、メモリ上において、時系列の演奏データが連続する領域に記憶されていてもよいし、飛び飛びの領域に散在して記憶されている演奏データを、連続するデータとして別途管理するようにしてもよい。すなわち、時系列的に連続する演奏データとして管理することができればよく、メモリ上で連続して記憶されているか否かは問題ではない。
さらに、楽曲データに含まれる音量データとは、複数楽音に共通の音量ボリュームデータに限らず、ベロシティデータのような個別楽音毎の音量もその概念に含んでいる。
なお、本発明において、手弾き演奏とはユーザ自身が鍵盤等の演奏音入力操作子を直接操作することによって行う演奏のことであり、手を用いて行うものに限らず、足等の体の一部を用いて演奏を行うもの全てを含むのは勿論である。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、楽曲データと手弾き演奏との音量バランスを保ちつつ、ユーザの演奏しやすい音量で手弾き演奏を記録することができるようになり、音楽性の高い手弾き演奏の録音機能を実現することができる、という優れた効果が得られる。
また、楽曲データ内に記載されている音量データ(ボリュームデータ)がどのような値であっても、ユーザの所望する音量バランスで自動演奏を聞きながら手弾き演奏を録音することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る録音音量制御装置を内蔵した電子楽器の全体概略構成を示すハードブロック図である。
【図2】本発明に係る録音音量制御装置におけるデータ記録機能を説明するための機能ブロック図である。
【図3】図1に示す電子楽器おけるCPU1で実行される「メイン処理」の一実施例を示すフローチャートである。
【図4】図3に示すメイン処理における「モード処理」の一実施例を示すフローチャートである。
【図5】図3に示すメイン処理における「記録準備処理」の一実施例を示すフローチャートである。
【図6】図1に示す電子楽器おけるCPU1で所定のタイミング毎に実行される「割込み処理」の一実施例を示すフローチャートである。
【図7】鍵盤の押離鍵時に割込み処理される「押離鍵処理」の一実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…CPU、1A…タイマ、2…ROM、3…RAM、4…押鍵検出回路、4A…鍵盤、5…操作子検出回路、5A…操作子、6…表示回路、6A…表示器、7…音源回路、7A…サウンドシステム、8…通信インタフェース、8A…通信ネットワーク、9…外部記憶装置、1D…データ及びアドレスバス

Claims (3)

  1. 楽曲データを記憶する記憶手段と、
    前記楽曲データの音量を調整する音量調整手段と、
    前記記憶手段から楽曲データを読み出して、当該楽曲データに基づく楽音を、前記音量調整手段で調整された音量で発音する楽曲発音手段と、
    演奏データを入力する演奏入力手段と、
    前記演奏データの音量を設定する音量設定手段と、
    前記演奏入力手段から演奏データを入力して、当該演奏データに基づく楽音を、前記音量設定手段で設定された音量で発する演奏発音手段と、
    前記演奏入力手段から入力した演奏データを前記記憶手段に書き込む書込手段であって、前記音量調整手段で調整された前記楽曲データの音量と前記音量設定手段で設定された前記演奏データの音量とに基づいて、前記記憶手段に記憶している前記楽曲データの新たな音量データと、前記記憶手段に書き込む前記演奏データの音量データとを決定し、当該決定した音量データを記憶手段に書き込むものと
    を備え、前記書込手段における前記楽曲データに対応する新たな音量データと演奏データの音量データとは、前記音量調整手段により調整される楽曲データの音量と前記音量設定手段により設定される演奏データの音量との音量バランスを保つように決定することを特徴とする楽音処理装置。
  2. 前記記憶手段に記憶される楽曲データには音量データが含まれており、前記書込手段は、前記記憶手段に記憶している前記楽曲データに含まれている音量データを、前記決定した楽曲データの新たな音量データへ書き換えることを特徴とする請求項1に記載の楽音処理装置。
  3. 前記音量調整手段は前記楽曲データに含まれている音量データに対する所定の比率を入力することで音量調整を行うものであり、前記書込手段は、当該比率を元にして算出した音量データを、前記楽曲データの新たな音量データとして決定することを特徴とする請求項2に記載の楽音処理装置。
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