JP3581917B2 - 電気自動車のクリープ力発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クリープ走行に求められるクリープトルクを発生させる電気自動車のクリープ発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関を走行の動力源としたAT車(トルクコンバータと自動変速機とを組み合せた車両)は、トルクコンバータから発生するストールトルクにより、走行位置「D(ドライブ)ポジション」にシフト位置があるときは、アクセルペダルが踏まれていなくとも、極低速で走行する特性がある。このストールトルクによる走行をクリープ走行という。
【0003】
このクリープ走行は、ブレーキ操作だけで容易に車両の速度調整が行なえるので、このクリープ走行を利用して、極低速での車両操作、例えば車庫入れや縦列駐車などの車の取り回しが行われている。
【0004】
これ対して、一般にモータを走行の駆動源とした電気自動車は、無駄な電力消費を抑えるために、走行位置にあるとき、アクセルペダルを踏まない限り、モータにはトルクが発生させない制御が採用され、内燃機関を用いたAT車のようなクリープ走行が行なえないようにしている。
【0005】
このため、慣れ親しんだ内燃機関のAT車から電気自動車に乗り換えると、クリープ走行ができないので、車庫入れ等といった車の取り回しの際、運転者に違和感をもたらせる。
【0006】
そこで、近時、電気自動車では、特許第2741739号に示されるようにアクセルペダルおよびブレーキペダルが踏まれてなく、変速機が走行レンジに設定されているとき、車速がクリープ速度より小さいときにだけ、モータにクリープトルクを発生させる制御(ブレーキを踏んでいる限りモータは駆動されない制御)を行なって、クリープ走行を可能とする提案がなされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
クリープ走行を利用する頻度が高い後退動作からの車庫入れは、多くは車庫の入口において、一旦、車両を停止させて「R(リバース)ポジション」にシフトし、それからクリープ走行を用いて、車両を微速で後退させて車庫内へ進入させることで行われている。縦列駐車も、多くは駐車場所の間口で、一旦、車両を停止させて「R(リバース)ポジション」にシフトし、それからクリープ走行を用いて、車両を微速で後退させて駐車場所へ進入させることで行われている。
【0008】
つまり、クリープ走行を利用する頻度が高い状況の多くは、通常の前進走行から減速して、一旦、停止させ、この後、「Rポジション」にシフトしてから、クリープ走行で後退や前進を繰り返して、車庫入れや縦列駐車を行なっている。
【0009】
ところで、車庫入れや縦列駐車を行なう場所へ向かうときの減速は、ブレーキペダルを停止するまで踏み続けているだけでなく、多くはクリープ限界速度(クリープトルクの発生を規定する速度)内に入ってから停止するまでの間において、踏んだブレーキペダルを開放したり、再びブレーキペダルを踏むといった操作を繰り返して、車両位置を位置決めることが行われている。
【0010】
ところが、先の特許は、クリープ限界速度より小さな速度まで減速された状態から、ブレーキペダルを開放すると、モータがクリープトルクを発生させるように駆動される。つまり、先の特許だと、車庫入れや縦列駐車のために、車両を車庫の入口や縦列駐車場所の間口の近くで停車するよう減速させる際、車両がクリープ限界速度より小さな極低速域にまで減速されてから、ブレーキペダルを開放すると、モータが駆動されてしまう。これでは、限られた電気自動車の電力が無駄に消費されてしまう。
【0011】
電気自動車は、できるだけ無駄な電力消費を抑制したいので、こうした無駄なモータの作動なく車庫入れや縦列駐車などが行なえるようにした技術が望まれている。
【0012】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、無駄なモータの電力消費を抑制して、利用頻度の高い使用状況に適したクリープ力の発生が行なえる電気自動車のクリープ力発生装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に記載した電気自動車のクリープ力発生装置は、シフト位置検出手段が走行位置に設定され、ブレーキペダルの踏込み状態が所定値以下の状態で、車速検出手段による車速が略ゼロを検出してのちクリープ限界車速に至るまでの第1走行状態と車速がクリープ限界車速を越えたのち略ゼロとなるまでの第2走行状態とのいずれかを検出する走行状態検出手段と、第1走行状態のときモータをクリープ力が発生されるよう低トルクで作動させ、前記第2走行状態のときクリープの発生を禁止するモータ制御手段とを設けて、車両の減速時、車両が停止するまでは、ブレーキ操作にかかわらず、クリープ力を発生させず、車両が停止した後は、クリープ限界車速を越えるまで、ブレーキ操作(ブレーキペダル踏込み状態)が所定値以下の状態で、クリープ力を発生させるようにしたことにある。
【0014】
これにより、例えば車庫入れや縦列駐車等を行なうとき、車両が車庫の入口や縦列駐車場所の間口の付近で停止するまで減速するときは、ブレーキ操作にかかわらず、クリープ力が発生しない。また停止後、クリープ限界車速以下の車速で、車庫入れや縦列駐車等の実行(後退や前進)をするときは、ブレーキペダルの踏込み状態を所定値以下にゆるめて、クリープ力を発生させて、クリープ走行を利用した車庫入れや縦列駐車等が行なえるようになる。
【0015】
つまり、無駄なモータの電力消費を抑制しつつ、利用頻度の高い車庫入れや縦列駐車等に適したクリープ力の発生が行なえる。
【0016】
請求項2に記載した電気自動車のクリープ力発生装置は、上記目的に加え、車両を停止するまでの区間で、より多くの運動エネルギーを回生するために、モータ制御手段に、第2走行状態のとき、モータを、運動エネルギーの回生を行なう発電機として作用させる機能を加えて、より多くの運動エネルギーの回生を可能としたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図1ないし図3に示す一実施形態にもとづいて説明する。
【0018】
図1は電気自動車の概略構成を示し、図中1は例えば後輪2,2間に配置された走行用モータ、3は同モータ1の出力部に連結されたトランスミッションである。
【0019】
トランスミッション3の出力部は、例えばディファレンシャルギヤ3aを介して、それぞれ後輪2,2に接続されていて、走行用モータ1を動力源として後輪2,2を駆動できるようにしてある。
【0020】
車体(図示しない)の中央には、バッテリ4が搭載されている。そして、このバッテリ4の端子は、走行用モータ1の接続端子から延びている配線5に接続されていて、バッテリ4の電力を走行用モータ1へ供給できるようにしてある。
【0021】
前輪6,6間には、発電ユニット7が搭載されている。発電ユニット7は、エンジン8と、このエンジン8の出力部に連結された発電機9とから構成されていて、エンジン8を駆動源として発電機9が駆動できるようにしている。
【0022】
発電機9の出力端子は、配線5の延出端に接続されていて、配線5を通じて、発電機9で発電された電力をバッテリ4、走行用モータ1へ供給できるようにしてある。
【0023】
一方、10はコントローラ(モータ制御手段、走行状態検出手段に相当)である。コントローラ10は、例えばマイクロコンピュータから構成してある。このコントローラ10には、それぞれ走行用モータ1、バッテリ4に装着されている充電容量センサ4a、エンジン8、ディファレンシャルギヤ3aに取付けた車速センサ11(車速検出手段に相当)、シフト装置12のシフト位置[走行状態(前進、後退)、非走行状態(ニュートラル、駐車など)]を検出するシフト位置センサ13(シフト位置検出手段に相当)が接続してある。なお、ここでいう走行状態とは、図示しないアクセルペダルの操作により駆動力を発生して走行可能なシフトでの走行を指し、シフト位置がニュートラルで、惰性走行(惰性)するような場合は含まれない。
【0024】
このコントローラ10には、普段はバッテリ4だけの電力で走行させる機能、バッテリ4の電力が所定値以下に低下するとエンジンを始動させる機能、バッテリ4が所定の電力量まで充電されると、エンジン8の運転を停止する機能が設定してあり、バッテリ4の電力の走行、バッテリ4を充電しながらの走行が行われるようにしてある。なお、いずれの走行もアクセルペダル(図示しない)のペダル操作で行われる。さらにコントローラ10には、ブレーキペダル14の操作が行われると、走行用モータ1を発電機に切換える機能が設定されていて、減速時の運動エネルギーを該発電機(モータ1)から回生できるようにしてある。
【0025】
このコントローラ10、上記走行用モータ1、上記シフト位置センサ13、さらにはブレーキペダル14の踏込み量(踏込み状態)を検出する踏込量センサ15(ブレーキペダル状態検出手段に相当)との組み合わせから、本実施形態の要部が構成されている。
【0026】
本実施形態では、電気自動車が減速時、車速がクリープ限界車速を越えて略ゼロ、例えば停車(車速がゼロ)するまではクリープ力が発生させず、その後の停車してからクリープ限界車速に至るまでにおいてクリープ力を発生させるようにしている。
【0027】
具体的には、コントローラ10は、各センサ(車速センサ11、シフト位置センサ13、踏込量センサ15)の出力から、電気自動車の減速時、クリープ限界車速αを検出してから停車(車速がゼロ)を検出するまでの走行状態A(第2走行状態に相当)を検出する機能と、この停止(車速がゼロ)を検出してからブレーキペダル14の踏込み状態が所定値以下(クリープ走行をもたらすブレーキ踏込み)でクリープ限界車速αを検出するまでの走行状態B(第1走行状態に相当)を検出する機能とを備えている。またコントローラ10は、走行状態Aのときは、モータ1にはクリープトルクの発生を禁止する機能、走行状態Bのときは、モータ1からクリープ力を発生(モータ1を低トルクで作動)させる機能が設定されている。
【0028】
またコントローラ10は、走行状態Aのとき、走行用モータ4を発電機として作用させるモータ/発電機の切換も行い、走行状態Aのとき、減速時の運動エネルギーを回生できるようにしている。
【0029】
そして、こうした制御により、無駄なモータ電力消費を抑えて、利用頻度の高い車庫入れや縦列駐車等といった際、有効にクリープ力が発生されるようにしている。
【0030】
この制御の一例が図2のフローチャートに示されている。
【0031】
このフローチャートにもとづきクリープ力の発生について説明すれば、今、例えば車庫入れを行なうべく、バッテリ4の電力で市街を前進走行(シフト装置12がDポジション)している電気自動車を車庫の入口近くで位置決め停止させるとする。
【0032】
このときには、まず、電気自動車は、ブレーキペダルを踏込んで減速しながら車庫の入口へ向かう。
【0033】
ここで、電気自動車の当初の車速は、車速がクリープ限界車速αを越える車速であるから、コントローラ10は、停止したか否かを判定するステップS1,車速がクリープ限界車速α以下か否かを判定するステップS2を経て、ステップS3へ進み、クリープ限界車速αを越える速度から減速であることを示すフラグ1を付与する。続いて、クリープ走行を禁止するステップS4へ至り、ブレーキ操作にかかわらず、走行用モータ1の作動を禁止させる(クリープ走行:無)。なお、この減速中、走行用モータ1を発電機として切換え、該発電機から運動エネルギーを回生する。
【0034】
ついで、電気自動車はクリープ限界車速α以下にまで減速され、車両を位置決めながら、車庫の入口付近で停止させるとする。
【0035】
このときには、フラグは「1」であるから、ステップ1から、ステップS2、クリープ走行を行なうか否かを判定するステップ5、クリープ限界車速αを越える車速からの減速であるか否かを判定するステップS6を経て、クリープ走行を禁止するステップS4へと進む。このクリープ走行を禁止する処理が、ブレーキ操作にかかわらず、電気自動車が停止(車速がゼロ)するまでの間、継続する。
【0036】
つまり、コントローラ10は、例えば図3中に示されるようにクリープ限界車速αから停車(車速がゼロ)までに至る走行状態Aを検出すること、およびこの走行状態Aのときには、ブレーキペダルの踏込量にかかわらず、走行用モータ1を作動させない、すなわちクリープ力が発生しないようにする制御を実行する。
【0037】
これにより、減速時、クリープ限界車速αを越えてから車庫の入口付近に停止するまでの間は、ブレーキペダルの踏込量を小さくしたり、ブレーキペダルを開放させたり、再びブレーキペダルを踏込む等といった操作を繰り返しても、クリープ力は発生しない。このときにも、走行用モータ1は発電機として継続して機能していて、該発電機から運動エネルギーを回生している。
【0038】
ついで、車庫の入口付近において、電気自動車が車庫内に進入しやすい向きで、一旦、停止したら、シフト装置12を「Rポジション」に切換え、クリープ走行(微速)の後退や前進を繰り返して、車両をリアから車庫内へ進入させる。
【0039】
このときには、コントローラ10は、車速ゼロの判定により、ステップS1からステップS8に至り、一旦、停止したことを示すフラグ「0」に戻してから、ステップS2,ステップS5,ステップS6を経て、ステップS7へ進み、車速がクリープ限界車速αを越えない、あるいはクリープ走行を規定する所定値を越えるまでブレーキペダルを所定値より大きく踏み込まない限り、走行用モータ1を低トルクで作動させてクリープ力を発生させる。なお、クリープ限界車速αを越えると、ステップS2からステップS3へ進み、フラグは「1」に切り換わり、先に述べた減速時のクリープ無の制御に備える。
【0040】
このようにクリープ限界車速αを越えた車速から減速してから停止するまでは、クリープ力の発生を禁止し、停止後、クリープ限界車速αを越える車速までは、クリープ走行を行なったので、車両が減速をしている最中、走行用モータ1が作動されるという、無駄な走行用モータ1の電力消費を解消できる。これは、車庫入れだけでなく、この他、縦列駐車といったクリープ走行で車両を誘導するときでも同様である。
【0041】
それ故、利用頻度の高い車庫入れや縦列駐車等を行なうのに適したクリープ力を発生させることができる。しかも、停止するまでの減速は、走行用モータ1が作動することはないので、減速に抗して前方へ車両を進めるような流れ感の発生もない。そのうえ、車庫入れや縦列駐車等を実行する際は、常にクリープ力が作用しているので、ブレーキ操作だけで必要な速度の加減調整が滑らかに行なえる利点がある。
【0042】
また減速時、停止するまでの区間では、走行用モータ1を発電機として切換え、該発電機で減速時の車両の運動エネルギーを回生するようにしたので、より多くの運動エネルギーを回生することができ、電気自動車の効率の向上が図れる。
【0043】
なお、上述した一実施形態では、車両の停止でなく、極めて低車速となるときを境として、クリープ力の発生の有無を制御してもよい。要は、車速が略ゼロを境としてクリープ力の発生の有無を制御すればよい。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、車両の減速時、車両が停止するまでは、ブレーキ操作にかかわらず、クリープ力を発生させず、車両が停止した後は、クリープ限界車速を越えるまで、ブレーキ操作(ブレーキペダル踏込み状態)が所定値以下の状態で、クリープ力を発生させるので、例えば車庫入れや縦列駐車等を行なうとき、車両が車庫の入口や縦列駐車場所の間口の付近で停止するまで減速するときは、ブレーキ操作にかかわらず、クリープ力が発生せず、停止後、クリープ限界車速以下の車速で、車庫入れや縦列駐車等の実行(後退や前進)をするときは、ブレーキペダルの踏込み状態を所定値以下にゆるめて、クリープ力を発生させて、クリープ走行を利用した車庫入れや縦列駐車等が行なえる。
【0045】
したがって、無駄なモータの電力消費を抑制しつつ、利用頻度の高い車庫入れや縦列駐車等に適したクリープ力の発生を行なうことができる。しかも、停止するまでの減速では、モータが作動しないので、車両を進めるような流れ感の発生もない。そのうえ、車庫入れや縦列駐車等を実行する際は、常にクリープ力が作用しているので、ブレーキ操作だけで必要な速度の加減調整が行なえる。
【0046】
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加え、車両を停止するまでの区間を利用して、より多くの運動エネルギーを回生することができ、電気自動車の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気自動車のクリープ力発生装置を説明するための図。
【図2】同クリープ力発生装置におけるクリープ力の発生制御を説明するためのフローチャート。
【図3】同クリープ発生装置におけるクリープ限界車速付近でのクリープの有無を示す線図。
【符号の説明】
1…走行用モータ(モータ)
4…バッテリ
7…発電ユニット
10…コントローラ(モータ制御手段、走行状態検出手段)
11…車速センサ(車速検出センサ)
13…シフト位置センサ(シフト位置検出手段)
15…踏込量センサ(ブレーキペダル状態検出手段)。
Claims (2)
- 電気自動車を走行駆動させるモータと、
前記電気自動車が走行状態にあるかを検出するシフト位置検出手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
ブレーキペダルの踏込み状態を検出するブレーキぺダル状態検出手段と、
前記シフト位置検出手段が走行位置に設定され、前記ブレーキペダルの踏込み状態が所定値以下の状態で、前記車速検出手段による車速が略ゼロを検出してのちクリープ限界車速に至るまでの第1走行状態と、前記車速がクリープ限界車速を越えたのち略ゼロとなるまでの第2走行状態とのいずれかを検出する走行状態検出手段と、
前記第1走行状態のとき前記モータを低トルクで作動させてクリープ力を発生させ、前記第2走行状態のときクリープの発生を禁止するモータ制御手段と
を有することを特徴とする電気自動車クリープ力発生装置。 - 前記モータ制御手段は、前記第2走行状態のとき前記モータを、運動エネルギーの回生を行なう発電機として作用させる機能を有していることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車のクリープ力発生装置。
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