JP3581857B2 - プリプレグの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気・電子機器分野等に使用される積層板と、その構成材料等として使用されるプリプレグおよびその製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえば、電気絶縁等のために用いられる積層板は、主として、エポキシ樹脂等を有機溶媒に溶かし、これに、硬化剤、硬化促進剤等を配合してワニスを作り、これを基材に含浸した後、加熱乾燥することにより、Bステージのプリプレグ(積層板用材料)を作り、次に、このプリプレグを所定枚数積層し、加熱・加圧下で成形することにより、製造される。
【0003】
しかし、この方法によると、プリプレグを作る工程において、基材に含浸されたワニスに含まれる有機溶媒を除去する必要があるため、この工程中に多量の有機溶媒蒸気が発生するので、作業環境が著しく悪化するばかりか、火災、爆発の危険性がある。
さらに、上記方法では、有機溶媒の加熱除去という、資源的、エネルギー的およびコスト的に非常に無駄な工程を含まざるを得ない。
【0004】
積層板の別の製造方法としては、特開昭58−110247号公報、特開平1−126344号公報等に、水の浸透の良好な紙基材を用い、この中へ、分散媒としての水と、乳化剤と、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤とを含有する水性エポキシ樹脂エマルジョンを含浸し、乾燥させた後、さらに、エポキシ樹脂ワニスを含浸し、乾燥させることによりプリプレグを作製し、このプリプレグを所定枚数重ねて加熱加圧することにより、積層板を製造する方法が開示されている。この方法では、有機溶媒を溶媒とするエポキシ樹脂ワニスを含浸させる前に、水を分散媒とする水性エポキシ樹脂エマルジョンで下塗りを行うため、有機溶媒の使用量を減らすことができる。
【0005】
特開昭57−83535号公報には、溶媒を用いずにガラス基材積層板を製造する方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前述した、特開昭58−110247号公報、特開平1−126344号公報等に開示の配合を持つ前記水性エポキシ樹脂エマルジョンを、紙基材よりも良好な積層板特性の得られるガラス基材に対して適用した場合、ガラス基材へのエポキシ樹脂の含浸度が低かったり、含浸ムラを生じたり、エポキシ樹脂本来の耐熱性が得られなかったりするため、充分な性能を持つ積層板が得られない。
【0007】
また、前記特開昭57−83535号公報に開示の方法では、従来の工法や樹脂が使用できず、特殊な設備や樹脂が必要となる。
そこで、本発明は、ガラス基材を用い、上記従来法における有機溶媒除去に伴う、安全性、作業環境、コストの面での問題が少なく、特殊な設備や樹脂を必要とせずに製造することができ、従来の有機溶媒ワニス含浸品と同等以上の優れた性能を持つプリプレグおよびその製造方法と、このプリプレグを用いた積層板とを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる、プリプレグの製造方法は、
ガラスクロスおよびガラス不織布からなる群から選ばれるガラス基材と、前記ガラス基材に含浸されている水系エポキシ樹脂エマルジョンの乾燥物とからなるプリプレグを製造する方法であって、
1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、前記エポキシ樹脂100重量部に対して0〜30重量部の有機溶媒と、前記エポキシ樹脂100重量部に対して1.0〜15重量部の乳化剤と、前記エポキシ樹脂100重量部に対して20〜300重量部の水とを混合攪拌することで分散した樹脂粒子を形成させて、平均粒子径0.15〜7.0μmの樹脂粒子が分散された水系エポキシ樹脂エマルジョンを得るエマルジョン化工程と、
前記水系エポキシ樹脂エマルジョンをガラス基材に含浸させることにより含浸体を得る含浸工程と、
前記含浸体を乾燥させる乾燥工程と、
を含む。
【0010】
本発明の製造方法で得られたプリプレグを成形して積層板が得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるガラス基材としては、特に限定はされないが、たとえば、ガラスクロス、ガラス不織布等が挙げられる。
ガラス基材の厚さは、得たい板厚と重ね枚数とに応じて変わり、特に限定はされないが、たとえば、0.05mm、0.10mm、0.18mm、0.20mm等である。
【0012】
本発明で得られるプリプレグに含まれる水系エポキシ樹脂エマルジョンの乾燥物は、水系エポキシ樹脂エマルジョン中の水分等を除去し、必要に応じてエポキシ樹脂を半硬化させたものである。乾燥の温度、方法等は、プリプレグの製造方法における乾燥工程に関して後述するものと同様でよい。
本発明で得られるプリプレグ中、水系エポキシ樹脂エマルジョンの乾燥物の含有量としては、特に限定はされないが、たとえば、ガラス基材がガラスクロスの場合、ガラスクロスに対して、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%である。また、ガラス基材がガラス不織布の場合、ガラス不織布に対して、好ましくは30〜500重量%、より好ましくは60〜150重量%である。
【0013】
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限されないが、その代表例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、各種ノボラック型エポキシ樹脂、各種臭素化エポキシ樹脂、3官能・4官能エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本発明で用いられる硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させることのできるものであれば特に制限されないが、その代表例としては、芳香族アミン系、脂肪族アミン系、ジシアンジアミド、ヒドラジド系化合物、尿素誘導体、イミダゾール誘導体、多官能フェノール、酸無水物系化合物等が挙げられる。これらの中でも、低温(たとえば、約70℃以下)で反応性が低く、高温(たとえば、約100℃以上)で高い反応性が得られ、一般に、潜在性硬化剤と呼ばれるものを必須成分として含む硬化剤を用いると、プリプレグの保存期間が長い等の利点が得られるので好ましい。ここで言う潜在性硬化剤とは、窒素環を有する化合物で、エポキシ樹脂とのみ(促進剤等を含まない)混合した配合物の反応による発熱温度のピーク(DSC=示差走査熱量試験器等を用いた測定による)が80〜250℃の範囲内に存在するものである。このような潜在性硬化剤の例としては、特に限定はされないが、ジシアンジアミド、ヒドラジド系化合物、尿素誘導体、イミダゾール誘導体等が挙げられ、これらの中でも特にジシアンジアミドが、硬化物の耐熱性、接着性等の特性の点から好ましい。硬化剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0015】
水系エポキシ樹脂エマルジョン中、硬化剤の含有割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、硬化剤中の活性水素が、好ましくは0.3〜1.5当量、より好ましくは0.5〜1.2当量である。硬化剤の含有割合が低すぎると、硬化物の耐熱性または強度が低下する恐れがあり、逆に高すぎると、硬化物の耐熱性または耐湿性が低下する恐れがある。
【0016】
本発明で用いられる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化を促進させることのできるものであれば特に限定はされないが、たとえば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール系促進剤;1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン;トリフェニルホスフィン等の有機燐系化合物等が挙げられる。硬化促進剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0017】
水系エポキシ樹脂エマルジョン中、硬化促進剤の含有割合は、エポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは0.02〜5.0重量部、より好ましくは0.03〜2.0重量部である。硬化促進剤の含有割合が低すぎると、反応性の低下により、硬化物の耐熱性が低下したり硬化物の強度が不足したりする恐れがあり、逆に高すぎると、製造プリプレグの保存期間(可使時間)の短くなる恐れがある。
【0018】
水系エポキシ樹脂エマルジョン中、有機溶媒の含有割合は、安全性の確保、作業環境の改善、コスト低減等の点から、エポキシ樹脂100重量部に対して、0〜30重量部、より好ましくは0〜20重量部、最も好ましくは0重量部(有機溶媒が全く含有されない)である。
使用可能な有機溶媒としては、特に限定はされないが、たとえば、トルエン、キシレン、メチルセロソルブ等が挙げられる。有機溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明で用いられる乳化剤としては、エポキシ樹脂を水中に安定かつ均一に分散させることのできるものであれば特に限定はされず、エポキシ樹脂の乳化のために従来用いられているものが使用可能であり、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤または水溶性高分子化合物等が挙げられる。
【0020】
カチオン性乳化剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ステアリルアミン塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
アニオン性乳化剤としては、特に限定はされないが、たとえば、オレイン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル燐酸エステル等が挙げられる。
【0021】
ノニオン性乳化剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
両イオン性乳化剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0022】
水溶性高分子化合物としては、特に限定はされないが、たとえば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、(メタ)アクリル酸共重合体、アクリルアミド共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
上記の種々の乳化剤の中でも、プリプレグおよび積層板の電気的特性の点では、ノニオン性乳化剤が優れる傾向にある。
【0023】
乳化剤は、プリプレグおよび積層板の耐水性・耐薬品性・耐熱性の点から、望ましくは、前記エポキシ樹脂との反応性を有する官能基および/またはエポキシ基を1分子中に1個以上、より望ましくは2個以上有する。前記官能基は、たとえば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、クロルスルホン酸基、メルカプト基およびブロックイソシアネート基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種である。
【0024】
水系エポキシ樹脂エマルジョン中、乳化剤の含有割合は、前記エポキシ樹脂100重量部に対して、1.0〜15重量部、好ましくは1.5〜10重量部、より好ましくは2.0〜5重量部である。乳化剤の含有割合がこれらの範囲を超え、著しく多いと、最終的に得られる積層板の性能(特に、耐湿性、耐熱性)に著しく悪影響を与える傾向がある。乳化剤の含有割合が著しく少ないと、樹脂粒子が良好に均一に分散した水系エポキシ樹脂エマルジョンが得られなかったり、水系エポキシ樹脂エマルジョンの安定性が悪いために、その製造後直ちに樹脂が分離沈殿する等の悪影響が生じたりするので、基材への樹脂含浸量が不足し、優れた性能のプリプレグが得られなくなる等の傾向がある。
【0025】
乳化剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
水系エポキシ樹脂エマルジョン中に分散して形成された樹脂粒子の平均粒子径は、乳化剤の量および乳化条件等によって、ある程度制御可能であり、好ましくは0.15〜7.0μmの範囲内、より好ましくは0.3〜4.0μm、さらに好ましくは0.5〜2.0μmの範囲内に制御される。平均粒子径が0.15μmより小さい場合、ガラス基材にエマルジョン樹脂が付着・含浸しにくくなるため、均一なプリプレグが得られない傾向がある。平均粒子径が7.0μmより大きいと、水系エポキシ樹脂エマルジョンの安定性が悪いために、分散樹脂粒子の沈殿・凝集が生じたり、積層板成形時の硬化ムラにより積層板性能が安定して得られなかったりする等の傾向がある。
【0026】
水系エポキシ樹脂エマルジョン中、水の含有割合は、前記エポキシ樹脂100重量部に対して、20〜300重量部、好ましくは30〜300重量部、より好ましくは30〜200重量部である。水の含有割合が低すぎると、エポキシ樹脂のエマルジョン化ができない傾向があり、逆に高すぎると、エマルジョンの粘度が低くなり、そのため、樹脂粒子が沈殿したりガラス基材に所定の樹脂量が付着しなかったりする傾向がある。
【0027】
本発明で用いられる水系エポキシ樹脂エマルジョンは、前述の各成分を含み、かつ、それらの含有割合が前述の範囲内にあるものであれば、1種類のみを用いてもよいし、含有成分の種類および/または含有割合、あるいは、エマルジョン作製方法が異なる2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明にかかるプリプレグを製造する方法としては、たとえば、本発明にかかる、プリプレグの製造方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0028】
本発明にかかる、プリプレグの製造方法において、水系エポキシ樹脂エマルジョンをガラス基材に含浸させる際の含浸温度は、特に限定されないが、エマルジョンの安定性の点からは、たとえば、20〜50℃、好ましくは20〜40℃である。含浸方法としては、特に限定はされないが、たとえば、ディップ容器に水系エポキシ樹脂エマルジョンを入れ、その中にガラス基材を浸漬する等の方法が挙げられる。
【0029】
本発明にかかる、プリプレグの製造方法における前記乾燥工程は、非加熱条件下、たとえば、常温で行ってもよいが、生産効率、製造安定性、樹脂の半硬化、樹脂の流動性の調整等の点からは、加熱条件下、たとえば、100〜220℃、好ましくは140〜200℃、より好ましくは160〜190℃の温度下で行ってもよい。なお、必要に応じ、非加熱乾燥と加熱乾燥とを併用してもよい。
【0030】
本発明で用いられる水系エポキシ樹脂エマルジョンを作製する方法(プリプレグの製造方法のエマルジョン化工程において、分散した樹脂粒子を形成させる方法)としては、特に限定はされないが、たとえば、下記A)〜E)の方法が挙げられる。
A)エポキシ樹脂(必要に応じては、これを加熱等により溶融したものであってもよい)、または、エポキシ樹脂を有機溶媒に溶解させた溶液を、乳化剤を含有する水溶液中に高速攪拌機等で分散乳化させる工程を含む方法。
【0031】
B)エポキシ樹脂と乳化剤とを有機溶媒に溶解させた溶液、または、エポキシ樹脂と乳化剤との混合物(必要に応じては、エポキシ樹脂と乳化剤とを加熱等により溶融混合したものであってもよい)を、水中、または、乳化剤を含有する水溶液中に高速攪拌機等で分散乳化させる工程を含む方法。
C)エポキシ樹脂(必要に応じては、これを加熱等により溶融したものであってもよい)、または、エポキシ樹脂を有機溶媒に溶解させた溶液を攪拌しつつ、この中へ、乳化剤を含有する水溶液、または、この水溶液と水とを徐々に添加することにより転相乳化させる工程を含む方法。
【0032】
D)エポキシ樹脂と乳化剤とを有機溶媒に溶解させた溶液、または、エポキシ樹脂と乳化剤との混合物(必要に応じては、エポキシ樹脂と乳化剤とを加熱等により溶融混合したものであってもよい)を攪拌しつつ、この中へ、前記乳化剤を含有する水溶液、および/または、水を徐々に添加することにより転相乳化させる工程を含む方法。
【0033】
E)2軸押出機等を用い、エポキシ樹脂、乳化剤および水を高圧加熱下で溶融混合することにより乳化させる工程を含む方法。
上記方法の中では、
方法C)において、エポキシ樹脂(必要に応じては、これを加熱等により溶融したものであってもよい)を攪拌しつつ、この中へ、乳化剤を含有する水溶液、または、この水溶液と水とを徐々に添加することにより転相乳化させる工程を含む方法(以下これを「方法C1」と称する)や、
方法D)において、エポキシ樹脂と乳化剤との混合物(必要に応じては、エポキシ樹脂と乳化剤とを加熱等により溶融混合したものであってもよい)を攪拌しつつ、この中へ、前記乳化剤を含有する水溶液、および/または、水を徐々に添加することにより転相乳化させる工程を含む方法(以下これを「方法D1」と称する)
が、製造の容易さ、完全無有機溶媒化の面で望ましい。なお、方法C1において、乳化剤を含有する水溶液、または、この水溶液と水とを添加する際の温度は、特に限定されないが、得られる水系エポキシ樹脂エマルジョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径を前記好ましい範囲内に制御するため、または、生産効率と製造安定性を向上させるためには、たとえば、20〜180℃、好ましくは20〜120℃、より好ましくは25〜90℃である。方法D1において、乳化剤を含有する水溶液、および/または、水を添加する際の温度についても方法C1と同様である。
【0034】
硬化剤および硬化促進剤の添加時機については、特に限定はされないが、たとえば、硬化剤および硬化促進剤は水溶性のものが多いので、水または乳化剤水溶液に溶解して添加すればよい。
本発明で得られるプリプレグを所定枚数(1枚または複数枚)積層(必要に応じて、最外層の少なくとも1つとして銅箔等の金属箔層をさらに積層してもよい)した後、成形することにより積層板が得られる。
【0035】
前記積層板を製造する方法のより詳しい方法としては、たとえば、下記の製造方法Iが挙げられるが、これに限定されない。
積層板の製造方法Iは、
本発明で得られたプリプレグを1枚または複数枚積層することにより、前記プリプレグを1枚または複数枚含む積層体を得る積層工程と、
前記積層体を加熱および加圧下で成形することにより、前記積層体の成形体を得る成形工程と、
を含む。
【0036】
積層板の製造方法Iにおいて、積層体を加熱および加圧下で成形する際の温度は、特に限定はされないが、適正な耐熱性等の特性を得る等の点からは、たとえば、最高温度が、150〜220℃、好ましくは160〜190℃である。成形最高圧力は、特に限定はされないが、適正な板厚およびボイドのない積層板を得る等の点からは、たとえば、10〜70kg/cm2 、好ましくは20〜50kg/cm2 である。最高温度での成形時間は、特に限定はされないが、適正な耐熱性等の特性を得る等の点からは、たとえば、10〜360分、好ましくは30〜100分である。
【0037】
積層板の製造方法Iにおいて、前記積層工程は、必要に応じては、前記積層体の最外層の少なくとも1つが金属箔層となるように、少なくとも1枚の金属箔を前記プリプレグとともに積層する工程を含んでいてもよい。このような工程を含む場合、最外層の少なくとも1つとして金属箔層を有する金属箔張積層板が得られる。
【0038】
本発明で使用できる金属箔としては、特に限定はされないが、たとえば、銅箔等が挙げられる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明のより具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
実施例1
パドル翼を備えた攪拌機内に、エポキシ当量500の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ダウケミカル社製、商品名DER511)70.0重量部と、エポキシ当量200の臭素化クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名YDCN702P)30.0重量部と、ノニオン系乳化剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド100モル付加物、第一工業製薬(株)製、商品名エマルジット100)11.2重量部(50重量%水溶液)およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー(第一工業製薬(株)製、商品名エパンU108)1.87重量部とを仕込み、加熱溶融し、よく攪拌しながら85℃に調整した。次に、硬化剤としてジシアンジアミド3.5重量部と硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.08重量部とをイオン交換水55重量部に溶解してなる水溶液を、上記溶融混合物中に85℃に加熱しながら1時間かけて連続的に添加することにより、水系エポキシ樹脂エマルジョンを得た。
【0040】
このエマルジョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径および同エマルジョンの保存安定性を後述の方法により評価した。それらの結果を表1に示す。
次に、上記エマルジョンを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、155℃の蒸気乾燥機内で約8分間乾燥させてBステージ化させることにより、適正なプリプレグを作製した。このプリプレグの付着樹脂量は約45重量%であった。また、付着樹脂の130℃における最低溶融粘度を後述の方法により評価した結果、約50PaSであった。
【0041】
上記プリプレグ8枚を後述の成形条件、構成で積層成形することにより、板厚約1.5mmの銅箔張積層板1を得た。この銅箔張積層板1のTg(ガラス転移温度)、銅箔引き剥がし強度、層間引き剥がし強度、比誘電率、誘電正接、絶縁抵抗、吸水率、はんだ耐熱性、煮沸後はんだ耐熱性、耐熱性、耐アルカリ性を後述の方法により評価した。これらの結果を表3に示す。
【0042】
実施例2
実施例1において、ノニオン系乳化剤として用いたポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(50重量%水溶液)およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーの使用量をそれぞれ2.25重量部、0.38重量部に変更するとともに、イオン交換水の使用量を60重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして水系エポキシ樹脂エマルジョンを得た。
【0043】
このエマルジョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径および同エマルジョンの保存安定性を後述の方法で評価した。その結果を表1に示す。
このエマルジョンを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、155℃の蒸気乾燥機内で約7分間乾燥させてBステージ化させることにより、適正なプリプレグを作製した。このプリプレグの付着樹脂量は約45重量%であった。また、付着樹脂の130℃における溶融粘度を後述の方法で評価した結果、約45PaSであった。
【0044】
上記プリプレグ8枚を用い、後述の方法で積層成形することにより、板厚約1.5mmの銅箔張積層板2を得た。この銅箔張積層板2の物性を後述の方法で評価した。その結果を表3に示す。
実施例3
実施例1と同様の攪拌機内に、実施例1と同様のエポキシ樹脂(使用量も同じ)と、乳化剤としてカルボキシル化アクリル共重合体(中央理化工業(株)製、商品名リカボンドSA261P、酸価155、不揮発分50%)のアンモニウム塩水溶液16.0重量部とを仕込み、加熱溶融し、よく攪拌しながら85℃に調整した。次に、硬化剤としてジシアンジアミド3.5重量部と硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.08重量部とをイオン交換水52重量部に溶解してなる水溶液を、上記溶融混合物中に85℃に加熱しながら1時間かけて連続的に添加することにより、水系エポキシ樹脂エマルジョンを得た。
【0045】
このエマルジョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径および同エマルジョンの保存安定性を後述の方法で評価した。その結果を表1に示す。
このエマルジョンを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、155℃の蒸気乾燥機内で約7分間乾燥させてBステージ化させることにより、適正なプリプレグを作製した。このプリプレグの付着樹脂量は約45重量%であった。また、付着樹脂の130℃における溶融粘度を後述の方法で評価した結果、約45PaSであった。
【0046】
上記プリプレグ8枚を用い、後述の方法で積層成形することにより、板厚約1.5mmの銅箔張積層板3を得た。この銅箔張積層板3の物性を後述の方法で評価した。その結果を表3に示す。
実施例4
実施例1と同様のエポキシ樹脂(使用量も同じ)をトルエン15重量部に約60℃で完全溶解させ、これに実施例1と同様の乳化剤(使用量も同じ)を添加することでトルエン溶液を得た。次に、硬化剤としてジシアンジアミド3.5重量部と硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.08重量部とをイオン交換水45重量部に溶解してなる水溶液中に上記トルエン溶液を、60℃に加熱しながら1時間かけて連続的に添加することにより、水系エポキシ樹脂エマルジョンを得た。
【0047】
このエマルジョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径および同エマルジョンの保存安定性を後述の方法で評価した。その結果を表1に示す。
このエマルジョンを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、155℃の蒸気乾燥機内で約7分間乾燥させてBステージ化させることにより、適正なプリプレグを作製した。このプリプレグの付着樹脂量は約45重量%であった。また、付着樹脂の130℃における溶融粘度を後述の方法で評価した結果、約50PaSであった。
【0048】
上記プリプレグ8枚を用い、後述の方法で積層成形することにより、板厚約1.5mmの銅箔張積層板4を得た。この銅箔張積層板4の物性を後述の方法で評価した。その結果を表3に示す。
実施例5
実施例1と同様の攪拌機内に、実施例1と同様のエポキシ樹脂(使用量も同じ)と、乳化剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(実施例1で用いたものと同じもの)12.0重量部(50重量%水溶液)およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、商品名ゴーセノールGH−17、けん化度88.3モル%の10%水溶液)20重量部とを仕込み、加熱溶融し、よく攪拌しながら85℃に調整した。次に、硬化剤としてジシアンジアミド3.5重量部と硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.08重量部とをイオン交換水37重量部に溶解してなる水溶液を、上記溶融混合物中に85℃に加熱しながら1時間かけて連続的に添加することにより、水系エポキシ樹脂エマルジョンを得た。
【0049】
このエマルジョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径および同エマルジョンの保存安定性を後述の方法で評価した。その結果を表1に示す。
このエマルジョンを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、155℃の蒸気乾燥機内で約7分間乾燥させてBステージ化させることにより、適正なプリプレグを作製した。このプリプレグの付着樹脂量は約45重量%であった。また、付着樹脂の130℃における溶融粘度を後述の方法で評価した結果、約53PaSであった。
【0050】
上記プリプレグ8枚を用い、後述の方法で積層成形することにより、板厚約1.5mmの銅箔張積層板5を得た。この銅箔張積層板5の物性を後述の方法で評価した。その結果を表3に示す。
実施例6
実施例1において、ノニオン系乳化剤として用いたポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(50重量%水溶液)およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーの使用量をそれぞれ3.75重量部、0.63重量部に変更するとともに、イオン交換水の使用量を60重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして水系エポキシ樹脂エマルジョンを得た。
【0051】
このエマルジョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径および同エマルジョンの保存安定性を後述の方法で評価した。その結果を表1に示す。
このエマルジョンを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、155℃の蒸気乾燥機内で約7分間乾燥させてBステージ化させることにより、適正なプリプレグを作製した。このプリプレグの付着樹脂量は約45重量%であった。また、付着樹脂の130℃における溶融粘度を後述の方法で評価した結果、約45PaSであった。
【0052】
上記プリプレグ8枚を用い、後述の方法で積層成形することにより、板厚約1.5mmの銅箔張積層板6を得た。この銅箔張積層板6の物性を後述の方法で評価した。その結果を表3に示す。
比較例1
実施例1と同様のエポキシ樹脂(使用量も同じ)と、硬化剤としてジシアンジアミド3.5重量部と、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.08重量部とを、2−ブタノン20重量部とメチルセロソルブ20重量部とジメチルホルムアミド20重量部との混合有機溶媒に溶解させることにより、有機溶媒系エポキシ樹脂ワニスを得た。
【0053】
この有機溶媒系エポキシ樹脂ワニスを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、155℃の蒸気乾燥機内で約6分間乾燥させてBステージ化させることにより、プリプレグを作製した。このプリプレグの付着樹脂量は約45重量%であった。また、付着樹脂の130℃における溶融粘度を後述の方法で評価した結果、約45PaSであった。
【0054】
上記プリプレグ8枚を用い、後述の方法で積層成形することにより、板厚約1.5mmの銅箔張積層板を得た。この銅箔張積層板の物性を後述の方法で評価した。その結果を表4に示す。
比較例2
実施例1において、ノニオン系乳化剤として用いたポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(50重量%水溶液)およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーの使用量をそれぞれ2.0重量部、0.3重量部に変更するとともに、イオン交換水の使用量を60重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして水系エポキシ樹脂エマルジョンを得た。
【0055】
この水系エポキシ樹脂エマルジョンは、樹脂粒子の分散が悪く、不均一なものであった。また、その保存安定性を後述の方法で評価した結果、24時間以内に沈殿を生じる悪いものであり、評価不可能であった。
上記水系エポキシ樹脂エマルジョンを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、乾燥させることにより、プリプレグを作製しようとしたが、エマルジョンが不均一であるため、含浸性と、樹脂付着量の均一性が極めて悪く、そのため、積層板に成形可能なプリプレグの製造は不可能であった。
【0056】
比較例3
実施例1において、ノニオン系乳化剤として用いたポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(50重量%水溶液)およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーの使用量をそれぞれ16.8重量部、2.8重量部に変更するとともに、イオン交換水の使用量を52重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして水系エポキシ樹脂エマルジョンを得た。
【0057】
このエマルジョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径および同エマルジョンの保存安定性を後述の方法で評価した。その結果を表2に示す。
このエマルジョンを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、155℃の蒸気乾燥機内で約8分間乾燥させてBステージ化させることにより、プリプレグを作製した。このプリプレグの付着樹脂量は約44重量%であった。また、付着樹脂の130℃における溶融粘度を後述の方法で評価した結果、約45PaSであった。
【0058】
上記プリプレグ8枚を用い、後述の方法で積層成形することにより、板厚約1.5mmの銅箔張積層板を得た。この銅箔張積層板の物性を実施例1と同様にして評価した。その結果を表4に示す。
比較例4
実施例1において、ジシアンジアミドと2−エチル−4−メチルイミダゾールとのイオン交換水溶液を溶融混合物中に添加する際の温度を75℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして水系エポキシ樹脂エマルジョンを得た。
【0059】
このエマルジョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径および同エマルジョンの保存安定性を後述の方法で評価した。その結果を表2に示す。
このエマルジョンを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、155℃の蒸気乾燥機内で約8分間乾燥させてBステージ化させることにより、プリプレグを作製したが、含浸性が悪く、かつ、プリプレグの付着樹脂量が38重量%以下となり、適度な含浸度の樹脂付着量を有するプリプレグが得られなかった。
【0060】
上記プリプレグの付着樹脂の130℃における溶融粘度を後述の方法で評価した結果、約45PaSであった。
上記プリプレグを用い、後述の方法で積層成形したが、樹脂不足のため、適正な銅箔張積層板が得られず、樹脂かすれのある不良成形品しか得られなかった。そのため、この積層板の適正な評価は行えなかった。
【0061】
比較例5
実施例1において、ジシアンジアミドと2−エチル−4−メチルイミダゾールとのイオン交換水溶液を溶融混合物中に添加する際の温度を95℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして水系エポキシ樹脂エマルジョンを得た。
このエマルジョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径および同エマルジョンの保存安定性を後述の方法で評価した。その結果を表2に示す。
【0062】
このエマルジョンを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、155℃の蒸気乾燥機内で約7分間乾燥させてBステージ化させることにより、プリプレグを作製した。このプリプレグの付着樹脂量は約45重量%であった。また、付着樹脂の130℃における溶融粘度を後述の方法で評価した結果、約45PaSであった。
【0063】
上記プリプレグ8枚を用い、後述の方法で積層成形することにより、板厚約1.5mmの銅箔張積層板を得た。この銅箔張積層板の物性を後述の方法で評価した。その結果を表4に示す。
比較例6
実施例1において、乳化剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(50重量%水溶液)およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーの代わりにジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム塩(第一工業製薬(株)製、商品名ネオコールSW−C、有効成分約69%)6.0重量部(有効成分約4.1重量部)を使用したこと以外は実施例1と同様にして水系エポキシ樹脂エマルジョンを得た。
【0064】
このエマルジョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径および同エマルジョンの保存安定性を後述の方法で評価した。その結果を表2に示す。
このエマルジョンを旭シュエーベル社製ガラスクロス(商品名7628、約0.18mm厚)に含浸させた後、155℃の蒸気乾燥機内で約7分間乾燥させてBステージ化させることにより、プリプレグを作製した。このプリプレグの付着樹脂量は約45重量%であった。また、付着樹脂の130℃における溶融粘度を後述の方法で評価した結果、約48PaSであった。
【0065】
上記プリプレグ8枚を用い、後述の方法で積層成形することにより、板厚約1.5mmの銅箔張積層板を得た。この銅箔張積層板の物性を後述の方法で評価した。その結果を表4に示す。
上記実施例および比較例において、成形方法および評価方法は下記の通りである。
<成形方法>
成形条件:
圧力5kg/cm2 、温度120℃、10分。
【0066】
【0067】
積層成形構成:
厚さ18μmの銅箔2枚の間にプリプレグ8枚を挟むようにして積層し、成形した。
<評価方法>
エマルジョンの平均粒子径:
(株)島津製作所製の粒度分布測定機(SALD2000)で測定した。
【0068】
エマルジョンの保存安定性:
エマルジョンを室温で15日間放置した後、樹脂の沈降状態を目視により観察し、以下の基準に基づいて保存安定性を評価した。
○:放置後、沈降が見られなかった。
△:放置後、沈降が生じたが、再度攪拌することにより、元の分散状態に戻
った。
【0069】
×:沈降し、再度攪拌しても元の状態に戻らなかった。
プリプレグ付着樹脂の溶融粘度:
加熱乾燥工程後のプリプレグ付着樹脂のみを分離し、高化式フローテスター(島津製作所製、CFT 500A)により、130℃最低溶融粘度を測定した。
・使用ノズル=φ0.5mm,長さ10.0mm
・荷重 =20kg
・予熱 =30秒
積層板のTg(ガラス転移温度):
成形した積層板の厚み方向の熱膨張係数の温度依存性を熱膨張係数測定機(TMA=Thermal Mechanical Analyzer)で測定(50〜250℃)し、温度による変化をグラフ化し、このグラフにより、ガラス状領域の熱膨張係数からゴム状領域の熱膨張係数への変曲点を求め、これを積層板のTgとした。
【0070】
積層板の銅箔引き剥がし強度:
JIS−C6481に基づき、幅約10mm、長さ約100mmの銅箔張積層板試験片を作製し、その一端の銅箔を引き剥がした。この引き剥がした銅箔の一端を引っ張り試験機のチャックに固定し、この銅箔端部を、積層板および引き剥がしていない銅箔面に対して90°の方向に引っ張り、その引き剥がし強さ(単位:N/cm)を測定した。
【0071】
積層板の層間引き剥がし強度:
上記銅箔引き剥がし強度測定と同様の方法で、成形後のプリプレグ層1枚分の端部を引き剥がした。この引き剥がしたプリプレグ層の一端を引っ張り試験機のチャックに固定し、この端部を、積層板面に対して90°の方向に引っ張り、その引き剥がし強さ(単位:N/cm)を測定した。
【0072】
積層板の比誘電率と誘電正接:
JIS−C6481に基づいて試験片を作製し、常態(20℃/65%RHで96時間保存後)および吸水処理(23℃の水中で24時間吸水)後の1MHzにおける比誘電率と誘電正接を測定した。
積層板の絶縁抵抗:
JIS−C6481に基づいて、銅箔をエッチングした絶縁抵抗測定用試験片を作製し、常態(20℃/65%RHで96時間保存後)および煮沸処理(100℃の水中で2時間処理)後の絶縁抵抗を測定した。
【0073】
積層板の吸水率:
JIS−C6481に基づいて、銅箔をエッチングした吸水率測定用試験片((50±1)×(50±1)mm)を作製した。このサンプルを50℃で24時間乾燥後、23℃の水で24時間吸水させ、その吸水率(%)を測定した。
積層板のはんだ耐熱性:
JIS−C6481に基づいて、はんだ耐熱性評価用試験片((25±1)×(25±1)mm)を作製した。このサンプル8枚を105℃で75分間乾燥後、銅箔面を下にして260℃の溶融はんだ浴上に浮かせることで120秒以上処理した後、銅箔面および積層板に膨れが生じていないかどうかを評価した。
【0074】
積層板の煮沸後はんだ耐熱性:
銅箔を両面エッチングした試験片((50±1)×(50±1)mm)を作製した。このサンプル8枚を105℃で75分間乾燥後、煮沸処理(100℃で2時間)して直ちに260℃の溶融はんだ浴中に30秒間浸漬し、積層板の表面、内部に膨れ、層間剥離が生じていないかどうかを評価した。
【0075】
積層板の耐熱性:
JIS−C6481に基づいて、耐熱性評価用試験片((50±1)×(50±1)mm)を作製した。このサンプル8枚を240℃の恒温槽内で60分間放置することで処理した後、銅箔面および積層板に膨れが生じていないかどうかということと、変色程度を評価した。
【0076】
積層板の耐アルカリ性:
JIS−C6481に基づいて、両面の銅箔をエッチング等により除去した耐アルカリ性評価用試験片((25±1)×(25±1)mm)を作製した。このサンプル8枚を40℃、濃度3重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に3分間浸漬した後、流水中で20±10分間洗浄し、外観の変化を目視により評価した。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
上記表1および表2中、乳化剤a〜eは下記の通りである。
a:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド100モル付加物、第一工業製薬(株)製、商品名エマルジット100)。
b:ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー(第一工業製薬(株)製、商品名エパンU108)。
【0080】
c:カルボキシル化アクリル共重合体(中央理化工業(株)製、商品名リカボンドSA261P)。
d:ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、商品名ゴーセノールGH−17)。
e:ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム塩(第一工業製薬(株)製、商品名ネオコールSW−C)。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【発明の効果】
本発明で得られるプリプレグでは、乳化剤を前記特定割合で含有するためエポキシ樹脂粒子が水中に安定かつ均一に分散した前記水系エポキシ樹脂エマルジョンがガラス基材への含浸原材料として用いられているので、ガラス基材へのエポキシ樹脂の含浸・付着の量および均一性が向上している。そのため、このプリプレグおよびそれを用いた積層板は、ガラス基材とエポキシ樹脂の優れた特性を兼ね備え、従来の有機溶媒ワニス含浸品と同等以上に、耐水性、耐湿性、耐薬品性、耐熱性、電気的特性、金属箔とプリプレグとの間の密着性等に優れている。
【0084】
本発明では、プリプレグの製造の際、従来の有機溶媒ワニスの代わりに、有機溶媒の含有量が少ないか、あるいは、有機溶媒を全く含まず、水を分散媒とする前記水系エポキシ樹脂エマルジョンを基材への含浸材料として用いるため、従来の有機溶媒ワニス含浸プリプレグの製造の場合に必要な有機溶媒除去工程に伴う火災、爆発の危険性、多量の有機溶媒蒸気の発生等に対する配慮が不要であるか、または、大幅に軽減されるので、作業環境上、安全衛生上安心して取扱いが可能である。また、前記有機溶媒除去工程に伴う資源、エネルギーの消費量を節約でき、特殊な設備や樹脂を必要とせず、かつ、原材料の一つとして極めて安価な水を用いるので、製造コストを削減できる。
Claims (8)
- ガラスクロスおよびガラス不織布からなる群から選ばれるガラス基材と、前記ガラス基材に含浸されている水系エポキシ樹脂エマルジョンの乾燥物とからなるプリプレグを製造する方法であって、
1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、前記エポキシ樹脂100重量部に対して0〜30重量部の有機溶媒と、前記エポキシ樹脂100重量部に対して1.0〜15重量部の乳化剤と、前記エポキシ樹脂100重量部に対して20〜300重量部の水とを混合攪拌することで分散した樹脂粒子を形成させて、平均粒子径0.15〜7.0μmの樹脂粒子が分散された水系エポキシ樹脂エマルジョンを得るエマルジョン化工程と、
前記水系エポキシ樹脂エマルジョンをガラス基材に含浸させることにより含浸体を得る含浸工程と、
前記含浸体を乾燥させる乾燥工程と、
を含む、プリプレグの製造方法。 - 前記エマルジョン化工程は、前記エポキシ樹脂を攪拌しつつ、この中へ、前記乳化剤を含有する水溶液、または、この水溶液と水とを徐々に添加することで転相乳化させることにより、前記分散樹脂粒子を形成させる工程を含む工程である、請求項1に記載のプリプレグの製造方法。
- 前記エマルジョン化工程は、前記エポキシ樹脂と前記乳化剤との混合物を攪拌しつつ、この中へ、前記乳化剤を含有する水溶液、および/または、水を徐々に添加することで転相乳化させることにより、前記分散樹脂粒子を形成させる工程を含む工程である、請求項1または2に記載のプリプレグの製造方法。
- 前記水系エポキシ樹脂エマルジョン中、前記有機溶媒の含有割合は0重量部であり、かつ、前記水の含有割合は、前記エポキシ樹脂100重量部に対して30〜300重量部である、請求項1〜3の何れかに記載のプリプレグの製造方法。
- 前記硬化剤として潜在性硬化剤を含む、請求項1〜4の何れかに記載のプリプレグの製造方法。
- 前記硬化剤としてジシアンジアミドを含む、請求項1〜5の何れかに記載のプリプレグの製造方法。
- 前記乳化剤は、前記エポキシ樹脂との反応性を有する官能基および/またはエポキシ基を1分子中に1個以上有する化合物である、請求項1〜6の何れかに記載のプリプレグの製造方法。
- 前記乳化剤が含有する前記官能基は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、クロルスルホン酸基、メルカプト基およびブロックイソシアネート基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種である、請求項7に記載のプリプレグの製造方法。
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