JP3581721B2 - N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドおよびその合成中間体の製造方法 - Google Patents
N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドおよびその合成中間体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、高い抗菌活性を示し、有害生物防除剤などとして有用なN−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドの製造方法、およびこの化合物を得るために有用なN−置換−プロピオール酸アミドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドは、特開平5−255215号公報に開示されているように、有害生物に対する防除効果が高く、高い抗菌抗黴、防藻、殺ダニ、防蟻活性を示す。従って、この化合物は、有害生物防除剤などとして広範囲に有用である。
【0003】
この先行文献には、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドの製造法の1つとして、N−置換−プロピオール酸アミドをヨウ素化してN−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドを得る方法が開示されている。前記N−置換−プロピオール酸アミドは、種々の方法で製造することができる。例えば、プロピオール酸、プロピオール酸ハライド、プロピオール酸無水物若しくはプロピオール酸エステルと第1級アミンとを反応させることにより製造できる。プロピオール酸エステルを用いる反応としては、プロピオール酸エステルと、メチルアミン又はエチルアミンとを用いて、50%メタノール水溶液中で反応させ、N−置換−プロピオール酸アミドを得る方法が報告されている(J. Org. Chem., 30 巻、2660頁(1965年))。しかし、プロピオール酸エステルと第一級アミンとの反応に際しては、第一級アミンの三重結合への付加反応が生じ、目的化合物の収率および選択率が小さく、工業的に満足し得るものではない。
【0004】
上記特開平5−255215号公報には、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドの製造方法に関し、N−置換−プロピオール酸アミドをヨウ素化剤でヨウ素化し、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドを得る方法が開示されている。さらに、3−ヨードプロピオール酸または3−ヨードプロピオール酸エステルと第1級アミンとを反応させ、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドを得る方法も開示されている。しかし、工業的観点からすると、これらの方法では、未だ目的化合物の収率及び選択率が十分でなく、さらに改良が望まれる。
【0005】
より具体的には、前記特開平5−255215号公報の実施例には、次のような工程からなるN−アルキル−プロピオール酸アミドおよびN−アルキル−3−ヨードプロピオール酸アミドの製造方法が開示されている。
【0006】
▲1▼アクリロニトリルとアルコールとを反応させてN−アルキルアクリル酸アミドを得る工程、▲2▼N−アルキルアクリル酸アミドに臭素を付加してN−アルキル−2,3−ジブロモプロピオン酸アミドを得る工程、▲3▼N−アルキル−2,3−ジブロモプロピオン酸アミドを脱臭化水素化してN−アルキルプロピオール酸アミドを得る工程、および▲4▼N−アルキルプロピオール酸アミドをヨウ素化してN−アルキル−3−ヨードプロピオール酸アミドを得る工程。
【0007】
しかし、このプロセスは工業的製造面からみた場合、必ずしも満足な方法といえるわけではない。すなわち、前記工程▲1▼のリッター反応は、一級アルコールを用いると反応が円滑に進行しないか、または反応が進行しても目的化合物の収率が非常に低い。また、前記工程▲3▼の脱臭化水素化反応が強い塩基性条件下で行われるため、副生物が多量に生成し、目的化合物の収率が低下するとともに、精製操作が不可欠となる。さらに、各反応工程での反応溶媒が異なるため、各工程毎にそれぞれの中間体を単離する必要がある。
【0008】
そのため、このようなN−アルキル−プロピオール酸アミドおよびN−アルキル−3−ヨードプロピオール酸アミドの工業的製造上の課題を解決し、より単純な操作で、より効率的で工業的に有利な方法が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高い選択率および高い収率でN−置換−プロピオール酸アミドを得ることができる製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、N−置換−プロピオール酸アミドを中間体として経由することにより、経済的および工業的に有利な方法でN−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドを効率よく製造できる方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドを容易かつ全工程的にみて高い収率で製造できる方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、繁雑な工程を経ることなく、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドを全工程からみて工業的に高い収率で製造できる方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、(A)水と親水性溶媒とを特定の割合で含む混合溶媒中で、プロピオール酸エステルと第1級アミンとを反応させると、N−置換−プロピオール酸アミドが高い収率および選択率で得られること、さらに(B)プロピオール酸のエステル化、プロピオール酸エステルのアミド化およびプロピオール酸アミドのヨウ素化を組合せると、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドが全工程的にみて高い収率で効率よく生成することを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の1つの特徴は、(A)下記一般式(1)
HC≡C−COOR1 (1)
(式中、R1はアルキル基を示す)
で表される化合物と、下記一般式(2)
R2−NH2 (2)
(式中、R2はアルキル基を示す)
で表される化合物とを、水と親水性有機溶媒との割合が前者/後者=1.5〜10/1(容量比)である混合溶媒中で反応させ、下記一般式(3)
HC≡C−CONHR2 (3)
(式中、R2は前記に同じ)
で表されるN−置換−プロピオール酸アミドを製造する改良方法に関わる。
【0015】
本発明のもう1つの特徴は、(B)プロピオール酸をエステル化し、下記一般式(1)
HC≡C−COOR1 (1)
(式中、R1はアルキル基を示す)
で表される化合物を生成させる工程、
化合物(1)と、下記一般式(2)
R2−NH2 (2)
(式中、R2はアルキル基を示す)
で表される化合物とを反応させ、下記一般式(3)
HC≡C−CONHR2 (3)
(式中、R2は前記に同じ)
で表される化合物を生成させる工程、および
化合物(3)とヨウ素化剤とを反応させ、下記一般式(4)
IC≡C−CONHR2 (4)
(式中、R2は前記に同じ)
で表される化合物を生成させる工程を含むN−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドの新規な製造方法に関わる。
【0016】
で表すことができる上述の結合工程(B)において、化合物(1)から化合物(3)を生成させるアミド化工程としては、上述の(A)の方法のみならず、他の一般的なアミド化反応が種々適用できる。
【0017】
前記一般式(1)において、R1で表されるアルキル基には、炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソアミル、t−アミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル基などが含まれる。好ましいR1には、低級アルキル基、例えば、炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が含まれる。特に好ましいアルキル基は、炭素数1〜3の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、なかでもメチル基又はエチル基である。
【0018】
前記一般式(1)で表される化合物としては、前記R1に対応するプロピオール酸のアルキルエステルが挙げられる。好ましい化合物には、例えば、プロピオール酸メチル、プロピオール酸エチル、プロピオール酸n−プロピル、プロピオール酸イソプロピル、プロピオール酸n−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキルエステルが好ましい。
【0019】
前記一般式(2)において、R2で表されるアルキル基には、炭素数1〜12程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソアミル、t−アミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル基などが含まれる。好ましいR2には、例えば、炭素数2〜10程度、特に炭素数3〜8、なかでも炭素数4〜6程度のアルキル基が含まれる。R2は分岐鎖状アルキル基であってもよいが、反応収率を高めるためには、α−位がメチレン基であるアルキル基、特に直鎖状アルキル基が好ましい。さらに好ましいアルキル基は、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドにおいて活性の高いn−ブチル基である。
【0020】
一般式(2)で表される第1級アミンとしては、前記R2に対応するアミンが挙げられる。すなわち、R2として、炭素数1〜12程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が置換したアミンが好ましい。このような第1級アミンには、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−ペンチルアミン、t−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミンなどが含まれる。
【0021】
好ましい第1級アミンには、前記のように、α−位がメチレン基であるアルキル基を有する下記式(2a)で表される化合物で含まれる。
【0022】
R2a−CH2−NH2 (2a)
(式中、R2aは、前記アルキル基R2よりも炭素数が1つ少ないアルキル基を示す)
さらに好ましい第1級アミンには、プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、t−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミンなどが含まれ、なかでも、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、t−アミルアミン、n−ヘキシルアミンなどが好ましい。
【0023】
以下、本発明の各工程について詳細に説明する。なお、プロピオール酸またはその誘導体(例えば、プロピオール酸エステル)からN−置換−プロピオール酸アミドを生成させる工程を単に「アミド化工程」、プロピオール酸又はその誘導体をプロピオール酸エステルへ誘導する工程を単に「エステル化工程」、N−置換−プロピオール酸アミドからN−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドへ導く工程を単に「ヨウ素化工程」という場合がある。
【0024】
a.アミド化工程
N−置換−プロピオール酸アミドは、一般的な種々の製法、例えば、プロピオール酸とアミンを縮合させる方法(薬学雑誌、102 巻、276 貢(1982年);特公昭60−58885号公報)、プロピオール酸ハライド又はプロピオール酸無水物と第1級アミンを反応させる方法、前記のように、プロピオール酸エステルを第1級アミンと反応させる方法(J. Org. Chem.,30巻、2660頁(1965年))、アクリル酸アミドに臭素などのハロゲンを付加し、続いて脱ハロゲン化水素化する方法(特開平5−255215号公報)などにより製造できる。
【0025】
これらの方法のうち、プロピオール酸又はそのエステルと第1級アミンとを反応させる方法においては、溶媒は有機溶媒単独でもよいが、水と親水性有機溶媒(例えば、炭素数1〜3程度のアルコール)との混合溶媒を用いるのが有利である。水と親水性有機溶媒との割合は適当に選択でき、例えば、親水性有機溶媒1容量部に対して0.1以上、1.5容量部未満、好ましくは0.5〜1.4容量部程度であってもよい。一般式(2)で表される第1級アミンの使用量は、一般式(1)で表されるプロピオール酸又はそのエステル1モルに対して、1.0〜2.0モル、好ましくは1.1〜1.5モル、さらに好ましくは1.2〜1.4モル程度である。
【0026】
アミド化工程の好ましい態様
アミド化工程のより好ましい態様として、前記の本発明の方法(A)などが挙げられる。本発明の方法(A)では、一般式(1)で表される化合物(プロピオール酸エステル)と一般式(2)で表される化合物(第1級アミン)とを、特定の混合溶媒中で反応させ、前記一般式(3)で表される化合物(N−置換−プロピオール酸アミド)を生成させる。
【0027】
前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物との割合は、目的化合物(3)の選択率および収率を低下させない範囲で選択できる。本発明の方法では、前記一般式(1)で表される化合物1モルに対して、1.1モル以上、好ましくは1.2〜1.5モル、さらに好ましくは1.25〜1.4モル程度の前記一般式(2)で表される化合物を用いて反応させるのが好ましい。化合物(1)1モルに対して1.3モル以上の化合物(2)を用いると、さらに好ましい。化合物(1)1モルに対して1.1モル未満の化合物(2)を用いると、N−置換−プロピオール酸アミドの選択率が低下し易い。なお、プロピオール酸エステル1モルに対して1.5モルを越える量の第1級アミンを用いてもよいが、選択率がさほど向上しないので、経済的ではない。
【0028】
溶媒として、水と親水性有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類;アセトンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)などのカルビトール類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などが含まれる。これらの親水性有機溶媒は一種または二種以上使用できる。
【0029】
好ましい親水性有機溶媒は、炭素数1〜4の一価アルコール類、特に炭素数1〜3のアルコール類、なかでもメタノール又はエタノールである。
【0030】
水とアルコールなどの親水性有機溶媒との割合は、前者/後者=1.5〜10/1(容量比)、好ましくは1.5〜5/1(容量比)、さらに好ましくは1.5〜3/1(容量比)、特に約2/1(容量比)程度である。親水性有機溶媒1容量部に対する水の割合が1.5容量部未満であると、一般式(2)で表される一級アミンの三重結合への付加反応により副生物が生成し、選択率が大きく低下する。このような混合溶媒は、先行文献に記載の溶媒組成に比べて、アルコールなどの親水性有機溶媒の濃度が小さいという特色がある。
【0031】
特に、前記化合物(1)に対する化合物(2)のモル比と、前記水と親水性有機溶媒との割合とを組合せて反応させると、副反応を抑制しつつ、化合物(3)を高い選択率および収率で得ることができる。
【0032】
なお、プロピオール酸とアルコールとのエステル化反応により化合物(1)を生成させる場合、アミド化工程における親水性有機溶媒として、エステル化工程でのアルコールをそのまま利用すると、化合物(2)の単離操作が不要であるという利点がある。
【0033】
アミド化工程での反応は、上記成分が反応系に存在する限り特に制限されない。代表的な方法としては、例えば、全量のプロピオール酸エステルおよび第1級アミンの存在下で反応させる方法、プロピオール酸エステルが存在する反応系に第1級アミンを連続的又は間欠的に供給する方法、第1級アミンが存在する反応系にプロピオール酸エステルを連続的又は間欠的に供給する方法などが挙げられる。これらの方法において、プロピオール酸エステルおよび第1級アミンのうち少なくともいずれか一方の成分は、水、親水性有機溶媒、または水及び親水性有機溶媒の混合溶媒との混合液として使用してもよい。
【0034】
反応温度は、目的化合物(3)の選択率が低下しない限り、反応液の固化温度から還流温度までの広い範囲から選択できるが、通常、−20℃〜30℃、好ましくは−15℃〜20℃、さらに好ましくは−10℃〜10℃程度である。反応温度が高すぎると、一級アミンの三重結合への付加による副生物の生成が生じ易く、反応温度が低すぎると反応速度が小さくなり、生産効率が低下する。
【0035】
反応時間は、反応温度に応じて適当に選択でき、通常、5分〜6時間、好ましくは10分〜3時間、さらに好ましくは30分〜2時間程度である。なお、反応時間は、ガスクロマトグラフィーなどの分析手段による反応の進行に基づいて容易に調整できる。
【0036】
本発明の方法により生成した一般式(3)で表される化合物(N−置換−プロピオール酸アミド)は、必要に応じて、通常の分離、精製方法によって単離してもよく、単離することなく反応混合液を、そのまま、N−置換−3−ヨードプロビオール酸アミドを生成させるヨウ素化反応に供してもよい。
【0037】
単離精製方法としては、例えば、濃縮、蒸留、晶析、再結晶、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーやこれらを組合わせた方法などが挙げられる。
【0038】
b.エステル化工程
一般式(1)で表されるプロピオール酸エステルは、慣用のエステル化反応により生成させることができる。例えば、プロピオール酸又はその塩若しくは対応する酸ハライド(例えば酸クロライド)や酸無水物と、R1に対応するアルキル基を有するアルコールとの反応、あるいはプロピオール酸の塩と、R1に対応するアルキル基を有するハロゲン化物との反応などにより、プロピオール酸エステルを生成させることができる。
【0039】
エステル化工程の好ましい態様
好ましいエステル化工程においては、プロピオール酸と前記一般式(1)におけるR1に対応するアルコールとの反応によりプロピオール酸エステルを生成させる。
【0040】
アルコールとしては、前記「アミド化工程の好ましい態様」の項で述べたアルコールが使用できる。好ましいアルコールには、炭素数1〜3程度の直鎖状又は分岐鎖状アルコール、特に、メタノール、エタノール及びイソプロパノールが含まれる。特に好ましいアルコールはメタノールおよエタノールである。
【0041】
アルコールの使用量は、通常、プロピオール酸1モルに対して過剰モル使用される。アルコールの使用量は、プロピオール酸1モルに対して1.1モル以上、好ましくは1.3モル〜50モル、さらに好ましくは2〜25モル程度である。好ましい方法では、プロピオール酸に対して過剰量のアルコール、特に反応溶媒を兼ねてアルコール中でプロピオール酸をエステル化する。このような方法は、アミド化工程において化合物(3)を工業的に有利に製造する上で極めて有用である。すなわち、前記エステル化反応に使用した過剰量のアルコールを、前記アミド化工程における親水性有機溶媒としてそのまま利用できるので、アミド化工程において水とアルコールとの割合を調整することにより、アミド化工程での副反応を抑制しつつ化合物(3)を生成させることができる。そのため、エステル化工程で生成したプロピオール酸エステルを単離、精製することなく、一貫したプロセスで(ワンポットの反応で)プロピオール酸から一般式(3)で示される化合物(N−置換−プロピオール酸アミド)を高い収率及び選択率で製造でき、工業的に極めて有用である。
【0042】
エステル化反応は、触媒の非存在下で行なってもよいが、酸触媒の存在下で行なう場合が多い。酸触媒としては、例えば、硫酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などの有機酸又はスルホン酸、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体、酸性イオン交換樹脂などが挙げられる。これらの酸触媒は一種又は二種以上使用してもよい。好ましい酸触媒には、硫酸、p−トルエンスルホン酸などが含まれる。触媒の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、プロピオール酸1モルに対して0.01〜0.5モル、好ましくは0.1〜0.2モル程度である。
【0043】
エステル化の反応温度は、通常、反応成分の種類などにより異なるが、室温から還流温度の範囲で適当に選択でき、通常、還流温度で行なう場合が多い。反応時間は、反応成分および触媒の種類や使用量、反応温度によって異なるが、通常、30分〜24時間、好ましくは1〜12時間程度である。プロピオール酸とアルコールとのエステル化反応に際しては、反応により生成する水を共沸脱水のような手段により系中から除去しながら反応を行ってもよいが、プロピオール酸に対して過剰量のアルコール、特にアルコールを反応溶媒として使用する場合には、共沸脱水しなくても反応は円滑に進行する。
【0044】
c.ヨウ素化工程
前記一般式(3)で表される化合物(N−置換−プロピオール酸アミド)をヨウ素化剤で処理してヨウ素化することにより、下記一般式(4)で表される化合物(N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミド)を効率よく高収率で生成させることができる。
【0045】
IC≡C−CONHR2 (4)
(式中、R2は前記に同じ)
ヨウ素化剤としては、例えば、ヨウ素、ヨウ素−モルホリン錯体、ヨウ素、アルカリ金属ヨウ化物、ヨウ化第一銅、ヨウ化亜鉛などが使用できる。ヨウ素化剤の使用量は、一般式(3)で示される化合物1モルに対して1〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル程度である。前記ヨウ素化剤のうち、ヨウ素およびアルカリ金属ヨウ化物は、酸化剤と組合せて使用する場合が多い。このようなヨウ素化剤としては、例えば、ヨウ素−次亜塩素酸又はその塩(例えば、ヨウ素−次亜塩素酸ナトリウムなど)、アルカリ金属ヨウ化物−次亜塩素酸又はその塩(例えば、ヨウ化カリウム−次亜塩素酸ナトリウムなど)などが含まれる。
【0046】
ヨウ素化反応には、種々の塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、水素化ナトリウム、ナトリウムアミドなどの無機塩基;三級アミン(例えば、トリエチルアミン、ピリジンなど)などの有機塩基;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルコラート、n−ブチルリチウムなどを使用してもよい。塩基を使用すると、反応が円滑に進行する場合が多い。塩基の使用量は、前記一般式(3)で表される化合物1モルに対して、通常1〜1.5モル程度である。
【0047】
反応は、通常、溶媒中で行なわれる。溶媒としては、ヨウ素化剤との反応を含めて、反応に不活性な種々の有機溶媒または有機溶媒−水の混合溶媒が使用できる。
【0048】
溶媒は含水溶媒であるのが好ましいが、無水溶媒を用いても、一般式(4)で表される化合物を高い収率で得ることができる。特に化合物(3)の製造の際に用いた親水性有機溶媒(特にアルコール)−水の混合溶媒をそのまま使用するのが好ましい。この場合、前記アミド化工程で生成した化合物(3)を、単離又は精製することなく、そのままヨウ素化反応に供することができ、経済性を含めて工業的に有利である。
【0049】
反応は、副反応を抑制できる範囲で適当に選択でき、例えば、冷却下または室温で行うことができる。反応は、冷却下、好ましくは−20℃〜30℃、さらに好ましくは−10℃〜10℃程度で行なう場合が多い。反応時間は、ヨウ素化剤の種類や反応温度に応じて選択でき、通常、1分〜6時間、好ましくは5分〜3時間程度である。
【0050】
反応終了後、慣用の分離精製手段により、反応混合液から目的化合物を得ることができる。分離精製方法としては、例えば、濃縮、蒸留、晶析、再結晶、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーやこれらを組合わせた方法などが挙げられる。
【0051】
ヨウ素化工程の好ましい態様
好ましいヨウ素化工程を採用する目的は、一般式(4)で表される化合物を、さらに容易かつ高い収率で製造する方法を提供することにある。
【0052】
前記ヨウ素化工程においては、前記一般式(3)で表される化合物1モルに対して、アルカリ金属ヨウ化物1〜1.5モル、好ましくは1.1〜1.3モル程度を用い、酸化剤の存在下、一般式(3)で表される化合物(N−置換−プロピオール酸アミド)をヨウ素化し、前記一般式(4)で表されるN−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドを製造する。
【0053】
アルカリ金属ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどが挙げられる。これらのアルカリ金属ヨウ化物は一種又は二種以上使用できる。好ましいアルカリ金属ヨウ化物には、ヨウ化カリウムが含まれる。
【0054】
酸化剤には、過酸化水素、次亜ハロゲン酸(次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸など)又はその塩が含まれる。次亜ハロゲン酸塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が繁用される。好ましい酸化剤には、次亜塩素酸又はその塩、特に次亜塩素酸ナトリウムが含まれる。次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤は水溶液として使用される場合が多い。水溶液中の酸化剤の濃度は特に制限されないが、濃度が低いと使用量が増加し、効率的ではない。そのため、酸化剤は、通常、5〜20%程度、特に一般に市販されている12%程度の濃度で使用する場合が多い。
【0055】
アルカリ金属ヨウ化物と酸化剤との割合は、例えば、アルカリ金属ヨウ化物1モルに対して酸化剤0.5〜2倍モルの範囲で選択できるが、酸化剤の量はアルカリ金属ヨウ化物と等モルまたはアルカリ金属ヨウ化物よりも若干多いのが好ましい。アルカリ金属ヨウ化物1モルに対する酸化剤の割合は、通常、1〜2倍モル、好ましくは1.2〜1.8倍モル程度である。
【0056】
ヨウ化カリウムと次亜塩素酸塩とを組合せて用い、前記一般式(3)で表される化合物をヨウ素化すると、副反応を抑制しつつ高い収率で目的化合物が得られる。
【0057】
反応は、通常、溶媒中で行なわれる。溶媒としては、親水性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、メチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトンなどのケトン類、セロソルブ類、これらの混合溶媒などが挙げられる。好ましい有機溶媒には、アミド化工程での反応溶媒と共通する溶媒、例えば、アルコール、特に炭素数1〜3程度のアルコール、なかでもメタノールおよびエタノールが含まれる。
【0058】
特に好ましい溶媒には、アルカリ金属ヨウ化物の溶解度の関係から、水−親水性有機溶媒の混合溶媒、特に水−アルコールの混合溶媒が含まれる。さらに、前記アミド化工程で生成した化合物(3)を反応混合液から単離又は精製することなく、そのままヨウ素化反応に供するため、好ましい溶媒は、前記アミド化工程での反応溶媒と共通する溶媒、特に炭素数1〜3程度のアルコールと水との混合溶媒である。水−親水性有機溶媒の混合溶媒の組成は、前記アミド化工程で述べたのと同様であり、必要に応じて水や親水性溶媒を添加し、水/親水性有機溶媒=0.1〜10/1(容量比)、好ましくは0.5〜5/1(容量比)程度としてもよい。このような混合溶媒を用いると、アミド化工程で生成した化合物(3)を単離又は精製することなく、アミド化工程から一貫したプロセスにより目的化合物(4)を収率よく生成させることができ、工業的に極めて有利である。
【0059】
すなわち、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドは水に対する溶解度が小さいので、反応混合液からの分離に先立って適当な量の水を添加すると、高い収率で高純度の目的化合物(4)を簡単な操作で得ることができる。そのため、工業的には、反応混合液に水を添加して晶析したり、水を含む反応系で反応させることにより晶析させる場合が多い。水の添加量は、水/親水性有機溶媒=1〜100/1(容量比)、好ましくは1.5〜50/1(容量比)、さらに好ましくは1.5〜10/1(容量比)程度となる量である。
【0060】
晶析した目的化合物は、遠心分離などの分離機による分離回収工程、乾燥工程に供される場合が多い。
【0061】
なお、反応温度および反応時間、並びに目的化合物の分離精製は、前記ヨウ素化工程と同様に行なうことができる。
【0062】
前記好ましい態様でヨウ素化すると、前記一般式(4)で表される化合物を簡単な操作で容易かつ高い収率及び選択率で得ることができる。
【0063】
前記の3工程を組合せた本発明の方法(B)において、エステル化工程、アミド化工程およびヨウ素化工程では、対応する各工程における方法が、それぞれそのまま援用できる。
【0064】
好ましい方法では、少なくとも1つの工程において、前記「エステル化工程の好ましい態様」の項で述べた方法、「アミド化工程の好ましい態様」の項で述べた方法、前記「ヨウ素化工程の好ましい態様」の項で述べた方法が採用できる。さらに好ましい方法では、前記「エステル化工程の好ましい態様」、「アミド化工程の好ましい態様」および「ヨウ素化工程の好ましい態様」の項で述べた工程を組合せて行なわれる。
【0065】
上記各工程で生成した化合物(1)又は(3)はそれぞれの工程、又は任意の工程で単離精製した後、後続する反応工程に供してもよく、ヨウ素化工程で生成した化合物(4)は単離精製などの後処理工程に供してもよい。好ましい方法には、エステル化工程で生成した化合物(1)及びアミド化工程で生成した化合物(3)を単離又は精製することなく、前段の工程で生成した化合物を順次、後続する工程に供する連続的な方法が含まれる。
【0066】
特に、炭素数1〜3のアルコールを用いてプロピオール酸をエステル化するエステル化工程、上記アルコールの存在下でアミド化工程およびヨウ素化工程を組合せると、工業的に極めて有利である。
【0067】
すなわち、エステル化工程で、プロピオール酸1モルに対して過剰モルのアルコールを用いてエステル化すると、残存するアルコールをアミド化工程での親水性溶媒として利用できる。そのため、エステル化工程で生成した化合物(1)を単離することなく、反応混合液をアミド化工程に供することができる。
【0068】
また、アミド化工程において、親水性有機溶媒に対する水の割合を調整した含水溶媒中でアミド化反応を行なうと、副反応を抑制しつつ高い選択率および収率で化合物(3)が生成する。
【0069】
さらに、アミド化工程で生成した化合物(3)を単離することなく、反応混合液をヨウ素化工程に供すると、含水溶媒により、アルカリ金属ヨウ化物および酸化剤の溶解度を高めことができるとともに、高い収率および選択率で目的化合物(4)を生成させることができる。しかも、目的化合物であるN−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドは水に対する溶解度が小さいので、反応過程で水を添加したり、反応終了後に反応混合液に水を添加すると、高純度の目的化合物(4)を高い収率で効率よく晶析させることができる。なお、反応混合液からアルコールを回収し、前記エステル化工程の反応成分として再利用してもよい。
【0070】
このようなエステル化工程、アミド化工程およびヨウ素化工程を組合せたプロセスでは、各工程で単離精製操作を行なうことなく、一貫したプロセスで(ワンポットの反応で)、プロピオール酸から、化合物(1)及び化合物(3)を経由して、一般式(4)で示される化合物(N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミド)を高い収率及び選択率で製造でき、工業的に極めて有用である。
【0071】
なお、前記エステル化工程bで用いられる出発化合物プロピオール酸は、通常、プロパルギルアルコールを酸化することにより得られる。この工程を単に「酸化工程」ということがある。
【0072】
d.酸化工程
プロピオール酸はプロパルギルアルコールを酸化反応に供することにより製造できる。
【0073】
プロパルギルアルコールからプロピオール酸を誘導する酸化反応は、慣用の方法で行なうことができる。例えば、アルカリ水溶液中でプロパルギルアルコールをニッケルパーオキサイドで酸化する方法(J. Org. Chem., 27, 1597(1962) )、陽極酸化法、例えば、硫酸水溶液中、陽極として過酸化鉛/鉛電極を、陰極として鉛電極を備えた隔膜付電解槽を用いて陽極酸化する方法(特公昭55−43510号公報)、アセトン−硫酸水溶液中、クロム酸などのJones 試薬で酸化する方法(例えば、Chem. 6, 735(1953))などを利用して、プロパルギルアルコールからプロピオール酸を製造することができる。これらの方法のうち、Jones 試薬で酸化する方法は、工業的製造方法として比較的優れている。
【0074】
一方、アセトン−硫酸水溶液中でクロム酸で酸化する方法では、反応混合液からプロピオール酸を単離する際、クロム酸の混入を避けるのが好ましい。クロム酸の混入を避けるためには、抽出溶媒を用いてプロピオール酸を抽出するのが好ましい。抽出溶媒としては、種々の有機溶媒、例えば、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、これらの混合溶媒などが挙げられる。
【0075】
プロピオール酸を抽出した有機層を、例えば、水洗などの洗浄、濃縮、蒸留、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーやこれらを組合わせた分離精製手段に供することによりプロピオール酸を単離精製できる。このような方法は、溶剤抽出だけでなく、溶媒の分離・回収という煩雑な操作を必要とし、工業的に効率よくプロピオール酸を製造するのが困難である。
【0076】
酸化工程の好ましい態様
好ましい酸化工程を採用する目的は、煩雑な操作を必要とせず、プロピオール酸を効率よく単離できる製造方法を提供することにある。
【0077】
本発明者らは、プロパルギルアルコールをクロム酸で酸化する際、反応溶媒としてメチルエチルケトンなどの水に対して非混和性のケトンを使用すると、抽出溶媒を用いることなくプロピオール酸を単離できることを見いだした。
【0078】
すなわち、水に対して非混和性のケトンを溶媒として、プロパルギルアルコールを、クロム酸又は重クロム酸で酸化し、プロピオール酸を製造する。なお、プロパルギルアルコールは工業的に容易に入手できる。
【0079】
前記ケトンとしては、水に対する溶解度が小さく分液可能な非混和性ケトンであればいずれのケトン系溶媒も使用できる。好ましいケトンは、下記一般式(6)で表される化合物である。
【0080】
R4COR5 (6)
(式中、R4およびR5は炭素数1〜4のアルキル基から選ばれ、かつ少なくともいずれか一方は炭素数2〜4のアルキル基である)
前記アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル基などが含まれる。この方法で用いるケトンは、前記R4およびR5の少なくともいずれか一方が、炭素数2〜4のアルキル基である点に特色がある。
【0081】
一般式(6)で表されるケトンの具体例としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルt−ブチルケトン(ピナコロン)、ジエチルケトン(プロピオン)、エチルプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチルブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン(ブチロン)、ジイソプロピルケトンなどが挙げられる。これらのケトン系溶媒は一種又は二種以上使用できる。工業的に有利なケトンには、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン、特にメチルエチルケトンが含まれる。
【0082】
酸化剤としては、クロム酸又は重クロム酸(二クロム酸)若しくはそれらの塩(例えば、クロム酸アンモニウム、クロム酸ナトリウム、クロム酸カリウム、重クロム酸アンモニウム、重クロム酸ナトリウム、重クロム酸カリウムなど)などが使用できる。これらの酸化剤はクロム酸混液として用いる場合が多い。
【0083】
クロム酸混液は慣用の方法(例えば、第4版実験化学講座、23巻に記載の方法)に従って調製することができる。クロム酸混液には、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸またはこれらの塩と、硫酸、酢酸との混合物が含まれる。クロム酸混液の具体例としては、例えば、無水クロム酸−硫酸、無水クロム酸−酢酸、二クロム酸ナトリウム−硫酸、二クロム酸ナトリウム−酢酸などが挙げられる。これらクロム酸混液のうち無水クロム酸−硫酸が繁用される。
【0084】
クロム酸混液の量は、酸化効率を損わない範囲で選択でき、例えば、理論必要量に対して1.0〜2.0倍量、好ましくは1.0〜1.5倍量程度である。
【0085】
酸化反応は特に制限されず、前記ケトン溶媒中、プロパルギルアルコールと、クロム酸、重クロム酸又はそれらの塩とが存在する反応系で行なえばよいが、プロパルギルアルコールとケトンとの混合液に、クロム酸混液を滴下する場合が多い。
【0086】
反応温度は、副反応を抑制できる限り特に制限されないが、通常、20℃以下(例えば、−20℃〜15℃程度)、好ましくは10℃以下(例えば、−20℃〜10℃程度)である。反応時間は反応温度に応じて選択でき、通常、1〜24時間、好ましくは2〜20時間程度である。
【0087】
酸化反応により生成したプロピオール酸は、極めて簡単にかつ効率よく分離できる。すなわち、反応終了後の反応混合液は、クロム酸成分を含む水層とプロピオール酸を含む有機層(ケトン層)とに迅速かつ明瞭に分離する。しかも、有機層へのクロム酸成分の混入が著しく抑制される。そのため、ケトン層を分離し、必要に応じて水洗し、ケトン溶媒を除去するだけで、高純度のプロピオール酸を高い収率および選択率で得ることができる。なお、ケトン溶媒の除去は、慣用の方法、例えば、常圧又は減圧下で留去することにより行なうことができる。
【0088】
好ましい方法では、メチルエチルケトンを溶媒として、プロパルギルアルコールを含水クロム酸混液を用いて酸化し、有機層からプロピオール酸を回収することにより、プロピオール酸を製造できる。
【0089】
前記のような方法では、抽出溶媒を必要とせず、単一の溶媒を用いるだけで全操作を行うことができるとともに、プロピオール酸を簡単な操作で工業的に高収率で製造できる。そのため、工業的に極めて有利な方法である。
【0090】
本明細書は、前記のように、新規なヨウ素化方法および酸化方法に加えて、さらに次のような新規な工程の組合せによる方法(C)及び(D)も開示する。
【0091】
(C)アミド化工程とヨウ素化工程との組合せにより化合物(4)を製造する方法
この方法では、下記反応工程式で表されるように、一般式(1)で表される化合物(プロピオール酸エステル)と一般式(2)で表される化合物(第1級アミン)とを反応させて一般式(3)で表される化合物(N−置換−プロピオール酸アミド)を生成させる工程、化合物(3)とヨウ素化剤とを反応させて一般式(4)で表される化合物(N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミド)を生成させる工程を含む。
【0092】
(式中、R1およびR2は前記に同じ)
前記の各工程においては、前記のアミド化工程およびヨウ素化工程における方法がそれぞれ援用できる。
【0093】
好ましい方法では、少なくとも1つの工程において、前記「アミド化工程の好ましい態様」の項で述べた方法、前記「ヨウ素化工程の好ましい態様」の項で述べた方法が採用できる。さらに好ましい方法では、前記「アミド化工程の好ましい態様」および「ヨウ素化工程の好ましい態様」の項で述べた工程を組合せて行なわれる。
【0094】
さらに、前記アミド化工程で生成した化合物(3)は単離してヨウ素化工程に供してもよい。好ましい方法においては、アミド化工程で生成した化合物(3)を単離精製することなく、反応混合液をヨウ素化工程に供する方法が含まれる。すなわち、アミド化工程では、特定の割合で含む水と親水性有機溶媒(例えば、アルコール)との混合溶媒中で反応させて、化合物(3)の選択率及び収率を高める。次いで、生成した化合物(3)を単離することなく、アミド化工程での反応混合物をヨウ素化工程に供し、酸化剤の存在下、アルカリ金属ヨウ化物を用いてヨウ素化し、化合物(4)を生成させる。そして、ヨウ素化工程の反応溶媒又は反応終了後の反応混合液において、水と親水性有機溶媒との割合を調整することにより、目的化合物(4)を反応系から効率よく析出させることができる。
【0095】
このような方法は、親水性有機溶媒に対する水の割合を調整するという簡単な操作で、各工程での反応生成物を単離することなく、一貫したプロセスで化合物(4)を高い選択率および収率で製造することができる。
【0096】
(D)前記酸化工程、エステル化工程、アミド化工程およびヨウ素化工程の組合せにより化合物(4)を製造する方法
この方法では、下記反応工程式で表されるように、プロパルギルアルコールを酸化してプロピオール酸を生成させる工程、プロピオール酸とアルコールとを反応させて一般式(1)で表される化合物(プロピオール酸エステル)を生成させる工程、化合物(1)と一般式(2)で表される化合物(第1級アミン)とを反応させて一般式(3)で表される化合物(N−置換−プロピオール酸アミド)を生成させる工程、化合物(3)とヨウ素化剤とを反応させて一般式(4)で表される化合物(N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミド)を生成させる工程を含んでいる。
【0097】
(式中、R1およびR2は前記に同じ。R1OHはアルキル基R1を有するアルコールを示す。)
前記(D)の新規な方法の各工程においては、前記の酸化工程、エステル化工程、アミド化工程およびヨウ素化工程における方法がそれぞれ援用できる。
【0098】
好ましい方法では、少なくとも1つの工程において、前記「酸化工程の好ましい態様」の項で述べた方法、前記「エステル化工程の好ましい態様」の項で述べた方法、前記「アミド化工程の好ましい態様」の項で述べた方法、前記「ヨウ素化工程の好ましい態様」の項で述べた方法が採用できる。さらに好ましい方法では、前記各工程での「好ましい態様」の項で述べた方法を組合せて行なわれる。また、前記の方法において、それぞれの工程で又は任意の工程で生成した化合物は、それぞれ単離して後続する工程に供してもよい。好ましい方法では、「酸化工程の好ましい態様」の項で述べた方法を採用して、プロパルギルアルコールからプロピオール酸を高い収率で効率よく生成させた後、少なくともエステル化工程以降の工程において、反応生成物から化合物(1),(3)を単離することなく、前段の反応混合液を後続する反応工程に順次供する方法が含まれる。このような方法では、簡単な操作でプロピオール酸を高い収率で得ることができることに加えて、前記本発明の方法の項で述べたように、親水性有機溶媒に対する水の割合を調整するだけで、エステル化工程、アミド化工程およびヨウ素化工程を経て、化合物(4)を高い選択率および収率で製造できる。
【0099】
このようにして得られた化合物(4)は、幅広い細菌類および黴類に対して発育阻害作用を示すことに加えて、殺虫、殺ダニなどの活性も有するので、防菌防黴剤、有害生物防除剤として有用である。化合物(4)は、例えば、特開平5−255215号公報に記載の方法で、乳剤、水和剤、粉剤、粒剤、油剤などの剤型として、常法に従って用いることができる。
【0100】
【発明の効果】
本発明の方法(A)では、化合物(1)と化合物(2)とを、水と親水性有機溶媒とを特定の割合で含む混合溶媒中で反応させるので、N−置換−プロピオール酸アミドを高い選択率および高い収率で得ることができる。また、N−置換−プロピオール酸アミドを経由することにより、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドを効率よく製造でき、経済的および工業的に有利である。
【0101】
さらに、本発明の方法(B)では、エステル化工程、アミド化工程(上記(A)の方法のみならず他の方法を適用してもよい)およびヨウ素化工程を組合せることにより、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドを容易かつ高い収率で製造できる。この方法において、アルコールを用いたり、各工程で反応生成物を単離精製することなく順次反応させる場合には、一貫したプロセスにより、繁雑な工程を経ることなく、N−置換−3−ヨードプロピオール酸アミドを工業的に高い収率で製造できる。
【0102】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0103】
実施例1(アミド化工程)
プロピオール酸メチル6g、メタノール40mlおよび水80mlの混合溶液に、n−ブチルアミン7.05g[1.35当量(エステル1モルに対して1.35モル)]を0±3℃で徐々に滴下し、1時間撹拌した。反応混合液をジクロロメタンによる抽出に供し、抽出液を乾燥、濃縮して、微黄色の残渣を得た。この残渣をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドの収率は94%であった。なお、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドと三重結合へアミンが付加した副生物との割合は23:1(重量比)であった。
【0104】
実施例2(アミド化工程)
n−ブチルアミン7.05g(1.35当量)および水80mlの混合溶液に、メタノール40mlとプロピオール酸メチル6gとの混合液を0±3℃で徐々に滴下し、1時間撹拌した。反応混合液をジクロロメタンによる抽出に供し、抽出液を乾燥、濃縮して、微黄色の残渣を得た。この残渣をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドの収率は94%であった。なお、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドと三重結合へアミンが付加した副生物との比率は23:1(重量比)であった。
【0105】
参考例(アミド化工程)
プロピオール酸メチル6g、メタノール40ml、水40mlおよびn−ブチルアミン6.27g(1.2当量)を用いて、実施例2と同様に反応を行った。その結果、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドの収率は64%であり、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドと三重結合へアミンが付加した副生物との比率は3:1(重量比)であった。
【0106】
実施例3(アミド化工程)
プロピオール酸メチル6g、メタノール40ml、水80mlおよびn−ブチルアミン6.27g[1.2当量(エステル1モルに対して1.2モル)]を用いて実施例2と同様に反応を行った。その結果、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドの収率は75%であり、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドと三重結合へアミンが付加した副生物との比率は4:1(重量比)であった。
【0107】
実施例4(アミド化工程)
n−ブチルアミンに代えてn−ヘキシルアミンを用いる以外、実施例2と同様に反応を行ったところ、N−n−ヘキシル−プロピオール酸アミドの収率は85%であり、N−n−ヘキシル−プロピオール酸アミドと三重結合へアミンが付加した副生物との比率は9:1(重量比)であった。
【0108】
実施例5(アミド化工程)
n−ブチルアミンに代えてn−デシルアミンを用いる以外、実施例1と同様に反応を行ったところ、N−n−デシル−プロピオール酸アミドの収率は80%であり、N−n−デシル−プロピオール酸アミドと三重結合へアミンが付加した副生物との比率は8:1(重量比)であった。
【0109】
実施例6(エステル化工程、アミド化工程およびヨウ素化工程の組合わせ)
撹拌装置および還流冷却器を備えた100mlのコルベンに、プロピオール酸5g、p−トルエンスルホン酸一水和物2.03g(0.15当量)、メタノール37.5mlを入れ、メタノールが穏やかに還流する温度で5時間撹拌した。
得られた反応混合液を室温まで冷却し、この混合液を、水75mlとn−ブチルアミン7.05gとの混合液に0±3℃で徐々に滴下し、1時間撹拌した。その後、この反応混合液にヨウ化カリウム11.85gを添加して溶解し、メタノール112.5ml、12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液66.42gを、順次、0±3℃で徐々に滴下し、30分間撹拌した。反応混合液に水100mlを加えて、さらに1時間撹拌した。析出した白色結晶を濾取し、水洗、乾燥してN−n−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド13.08gを得た(プロピオール酸からの一貫収率73%)。
【0110】
実施例7
撹拌装置及び還流冷却器を備えた100mlコルベンにプロピオール酸5g、p−トルエンスルホン酸一水和物2.03g、メタノール37.5mlを入れ、メタノールが穏やかに還流する温度で5時間撹拌した。得られた反応混合液を0℃以下にまで冷却し、水75mlを0℃以下で滴下した。混合液にn−ブチルアミン7.05gを0±3℃で徐々に滴下し、1時間撹拌した。その後、この反応混合液にヨウ化カリウム11.85gを添加して溶解し、メタノール112.5ml、12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液66.42gを、順次、0±3℃で徐々に滴下し、30分間撹拌した。反応混合液に水100mlを加え、さらに1時間撹拌した。析出した白色結晶を濾取し、水洗、乾燥してN−n−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド13.01gを得た(プロピオール酸からの一貫収率73%)。
【0111】
実施例8
n−ブチルアミンに代えてn−ヘキシルアミンを用いる以外、実施例6と同様に反応を行ったところ、プロピオール酸からN−n−ヘキシル−3−プロピオール酸アミドへの一貫収率は68%であった。
【0112】
実施例9
n−ブチルアミンに代えてn−デシルアミンを用いる以外、実施例6と同様に反応を行ったところ、プロピオール酸からN−n−デシル−3−ヨードプロピオール酸アミドへの一貫収率は64%であった。
【0113】
実施例10
(1)エステル化工程
撹拌装置および還流冷却器を備えた100mlのコルベンにプロピオール酸5g、パラトルエンスルホン酸一水和物2.03g(0.15当量)、メタノール37.5mlを入れ、メタノールが穏やかに還流する温度で5時間撹拌した。反応混合液に水100mlを加えた後、ジクロロメタン100mlにより3回抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより、プロピオール酸メチル4.92gを得た(収率82%)。
【0114】
(2)アミド化工程
上記エステル化工程で得られたプロピオール酸メチル6g、メタノール40mlおよび水80mlの混合溶液に、n−ブチルアミン7.05g(1.35当量)を0±3℃で徐々に滴下し、1時間撹拌した。反応混合液をジクロロメタンによる抽出に供し、抽出液を乾燥、濃縮して、微黄色の残渣を得た。この残渣をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドの収率は94%であり、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドと三重結合へアミンが付加した副生物との割合は23:1(重量比)であった。
【0115】
(3)ヨウ素化工程
上記アミド化工程で得られたN−n−ブチル−プロピオール酸アミド8.0g、メタノ−ル160ml、水80mlの混合溶液に、ヨウ化カリウム12.73g(1.2当量)を溶解させ、混合液に12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液69.38g(1.75当量)を0±3℃で徐々に滴下し、30分間撹拌した。反応混合液に水110mlを0±3℃で加え、さらに30分間撹拌した。析出した白色結晶をガラスフィルターで濾過し、水洗、乾燥してN−n−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド13.16gを得た(収率82%)。
【0116】
実施例11
(1)酸化工程
無水クロム酸28.8gを水40mlに溶解し、この溶液に10℃以下で硫酸46gを徐々に滴下した。滴下終了後、水60mlを加えて希釈し、クロム酸混液を調製した。
【0117】
プロパルギルアルコール11.2gとメチルエチルケトン240mlとの混合液に、上記クロム酸混液を5℃以下で徐々に滴下し、そのまま15時間攪拌した。反応終了後、有機層を分液し、水24mlで2回洗浄した。溶媒を減圧下に留去し、得られた濃縮残渣にメタノール100mlを加えて十分に混合し、さらに減圧下で溶媒を留去した。
【0118】
(2)エステル化工程
得られた濃縮残渣にメタノール100ml、p−トルエンスルホン酸一水和物4.83gを加え、メタノールが穏やかに還流する温度で5時間撹拌した。
【0119】
(3)アミド化工程
得られた反応混合液を室温まで冷却し、水180mlとn−ブチルアミン16.78gとの混合液を0±3℃で徐々に滴下し、1時間撹拌した。
【0120】
(4)ヨウ素化工程
得られた反応混合液にヨウ化カリウム28.20gを加えて溶解させ、メタノール270ml、12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液158.08g、水240mlを、順次、0±3℃で徐々に滴下し、1時間撹拌した。析出した白色結晶を濾取し、水洗、乾燥してN−n−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド31.13gを得た(プロパルギルアルコールからの一貫収率62%)。
【0121】
実施例12
(1)酸化工程
無水クロム酸28.8gを水40mlに溶解し、この溶液に10℃以下で硫酸46gを徐々に滴下した。滴下終了後、水60mlを加えて希釈し、クロム酸混液を調製した。
【0122】
プロパルギルアルコール11.2gをメチルエチルケトン240mlに溶解した混合液に、上記クロム酸混液を5℃以下で徐々に滴下し、15時間撹拌した。反応終了後、有機層を分液し、水24mlで2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去したところ、僅かに着色した濃縮残渣を得た。濃縮残渣を減圧下に蒸留し、プロピオール酸11.6gを得た(収率82%、沸点72〜74℃/40mmHg)。
【0123】
(2)エステル化工程
撹拌装置および還流冷却器を備えた100mlのコルベンに、上記酸化工程で得られたプロピオール酸5g、パラトルエンスルホン酸一水和物2.03g(0.15当量)、メタノール37.5mlを入れ、メタノールが穏やかに還流する温度で5時間撹拌した。反応混合液に水100mlを加えた後、ジクロロメタン100mlにより3回抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより、プロピオール酸メチル4.92gを得た(収率82%)。
【0124】
(3)アミド化工程
上記エステル化工程で得られたプロピオール酸メチル6g、メタノール40mlおよび水80mlの混合溶液に、n−ブチルアミン7.05g(1.35当量)を0±3℃で徐々に滴下し、1時間撹拌した。反応混合液をジクロロメタンによる抽出に供し、抽出液を乾燥、濃縮して、微黄色の残渣を得た。この残渣をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドの収率は94%であり、N−n−ブチル−プロピオール酸アミドと三重結合へアミンが付加した副生物との割合は23:1(重量比)であった。
【0125】
(4)ヨウ素化工程
上記アミド化工程で得られたN−n−ブチル−プロピオール酸アミド8.0g、メタノ−ル160mlおよび水80mlの混合溶液に、ヨウ化カリウム12.73g(1.2当量)を溶解させ、混合液に12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液69.38g(1.75当量)を0±3℃で徐々に滴下し、30分間撹拌した。反応混合液に水110mlを0±3℃で加え、さらに30分間撹拌した。析出した白色結晶をガラスフィルターで濾過し、水洗、乾燥してN−n−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミドを13.16g得た(収率82%)。
Claims (5)
- 下記一般式(1)
HC≡C−COOR1 (1)
(式中、R1はアルキル基を示す)
で表される化合物と、下記一般式(2)
R2−NH2 (2)
(式中、R2はアルキル基を示す)
で表される化合物とを、水と親水性有機溶媒との割合が前者/後者=1.5〜10/1(容量比)である混合溶媒中で反応させ、下記一般式(3)
HC≡C−CONHR2 (3)
(式中、R2は前記に同じ)
で表されるN−置換−プロピオール酸アミドを製造する方法。 - 親水性有機溶媒がアルコールである請求項1記載のN−置換−プロピオール酸アミドの製造方法。
- 一般式(1)で表される化合物1モルに対して1.1モル以上の一般式(2)で表される化合物を用いる請求項1記載のN−置換−プロピオール酸アミドの製造方法。
- 一般式(1)で表される化合物1モルに対して一般式(2)で表される化合物1.2〜1.5モルを用いる請求項1記載のN−置換−プロピオール酸アミドの製造方法。
- R1がメチル基又はエチル基である請求項1記載のN−置換−プロピオール酸アミドの製造方法。
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