JP3580721B2 - トラッキング調整装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体であるコンパクトディスク、ミニディスク、光磁気ディスク、相変化ディスク等の光ディスクに対して情報データを再生あるいは記録する光ディスク装置において、トラッキング誤差信号に基づいてトラッキング状態を自動調整するトラッキング調整装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、記録媒体であるコンパクトディスク(以下CDと略す)、ミニディスク(以下MDと略す)、光磁気ディスク(以下MOと略す)、相変化ディスク(以下PCと略す)等の光ディスクに対して情報データを再生あるいは記録する光ディスク装置では、光ディスクに対してトラッキング状態を調整する際にトラッキング誤差信号に基づいてトラッキング状態を自動調整するトラッキング調整装置が使用されている。
【0003】
このようなトラッキング調整装置におけるトラッキング検出方法として、従来からファーフィールド法(以下FF法と略す)あるいはプッシュプル法(以下PP法と略す)と呼ばれる方式が広く知られており、構成が簡単であり、かつ3ビーム法に比べてレーザ光量の利用効率が高いために、特に大きなレーザー出力を必要とする記録可能な光ディスク装置に適している。
【0004】
しかし、対物レンズが光ディスク(単にディスクと表現する場合もある)の半径方向に変位することにより、光ビームのディスクからの反射光とピックアップ本体に固定された受光素子の相対位置が設計の中心位置からずれ、トラッキング誤差信号にオフセットを生ずるという問題点がある。
これを解消するためには、ディスクの偏心等によってトラック位置が変化しても、光ビームのディスクからの反射光とピックアップ本体に固定された受光素子の相対位置が常に中心に位置するように(言い換えれば、対物レンズが常にピックアップの光軸中心に位置するように)、ピックアップ本体を偏心に応じて高速に応答させるトラバースメカニズムが必要であり、これらが光ディスク装置におけるコストアップの大きな原因となっている。
【0005】
近年、対物レンズがディスクの半径方向に変位することにより発生する光ビームのディスクからの反射光とピックアップ本体に固定された受光素子との相対位置(以下対物レンズ位置と略す)に応じたトラッキング誤差信号において、そのオフセットを低減する改良型FF法(あるいはPP法)が、特願平08−028905号等に提案されている。
【0006】
このように、トラッキング誤差検出に改良型FF法を用いた従来の光ディスク用のトラッキング調整装置について、以下に説明する。
図4は改良型FF法を用いた従来のトラッキング調整装置の構成を示すブロック図である。図4において、1は光ディスク、2は光ディスク1を固定するターンテーブル、3は光ディスク1を回転させるためのモータ、4は光ビームを光ディスク1の記録面上に集光してかつ反射光を集光する対物レンズ、5は光ビームを光ディスク1の情報トラックに追従させるために、対物レンズ4を光ディスク1の半径方向に移動させるトラッキングアクチュエータ、6は光ディスク1の情報面からの反射光の光スポット、7は光スポット6を受光する複数の受光セルから構成される受光素子、8は受光素子7をトラックに相当する方向に対して略垂直に複数の受光セルに分割する分割線、9は受光素子7をトラックに相当する方向に対して略平行に複数の受光セルに分割する分割線である。
【0007】
7A、7B、7C、7Dは分割線8、9によって分割された受光セルであり、7A、7Bは光スポット6の中心に対して端領域の光を受光し、7C、7Dは光スポット6の中心に対して中領域の光を受光する。
10は受光セル7Cの出力から受光セル7Dの出力を減算(中領域の差分)して、ディスク記録面上に集光した光ビームと情報トラックの相対位置を検出してトラッキング誤差信号を出力する演算手段、11は受光セル7Aの出力から受光セル7Bの出力を減算(端領域の差分)して、受光素子7上の光スポット6のディスク半径方向の相対位置(即ち対物レンズの光軸中心からの位置)を検出して対物レンズ位置信号を出力する演算手段、12は演算手段11の出力信号(対物レンズ位置信号)に係数Ka(=補正係数)による重み付けを行う増幅手段、13は演算手段10の出力(トラッキング誤差信号)から増幅手段12の出力を減算して、補正されたトラッキング誤差信号を出力する演算手段、17は演算手段13が出力する補正されたトラッキング誤差信号の平均値(オフセット)を検出する平均値検出手段、18は平均値検出手段17の出力に応じて増幅手段12の補正係数Kaの値を設定するゲイン設定手段、14は(補正された)トラッキング誤差信号に対して位相補償や低域補償を施してトラッキング制御系を構成するトラッキング制御手段、19は増幅手段12の補正係数Kaを設定する自動調整動作を行うためのコントローラ、15はコントローラ19の出力に応じてトラッキング制御手段14の出力と所定電圧Vdを選択して出力する選択手段、16は選択手段15の出力を入力としてトラッキングアクチュエータ5を駆動する駆動手段である。
【0008】
以上のように構成された従来のトラッキング調整装置について、その動作を図5を用いて以下に説明する。
図5は対物レンズ位置に対するトラッキング誤差信号のオフセット(平均値)及び対物レンズ位置信号を示す特性図である。図5において、横軸は対物レンズ位置を表し、図の右側が対物レンズがディスクの外周側に変位する方向、図の左側が内周側に変位する方向を示し、図中のXdは自動調整のために強制的に位置決めされる対物レンズ位置を示す。縦軸は各信号の振幅を表し、図5(A)、(B)、(C)において、a、d、f1、f2は自動調整前のトラッキング誤差信号のオフセット特性を示し、b、e、g1、g2は自動調整後のトラッキング誤差信号のオフセット特性を示し、図5(A)のcは対物レンズ位置信号を示している。
【0009】
図5(A)において、ofs1は自動調整前の対物レンズ位置Xdにおけるトラッキング誤差信号のオフセット量を示し、図5(B)において、ofs0は対物レンズの標準位置(対物レンズの機械的あるいは光学的中心位置)におけるトラッキング誤差信号のオフセット量を示し、図5(C)において、f1、g1は対物レンズ外周側におけるトラッキング誤差信号のオフセット特性、f2、g2は対物レンズ内周側におけるトラッキング誤差信号のオフセット特性を示している。
【0010】
図4において、演算手段10で受光素子7の中領域の信号を差分することにより(7C−7D)のトラッキング誤差信号が得られるが、この信号は対物レンズ位置に応じたオフセットを含んでいる。また、演算手段11で受光素子7の端領域の信号を差分することにより(7A−7B)の対物レンズ位置に応じた対物レンズ位置信号が得られる。これに増幅手段12で補正係数Kaを乗算して演算手段13でトラッキング誤差信号から減算することにより、対物レンズ位置に応じたトラッキング誤差信号のオフセットを補正することができる。この動作の詳細については、特願平8−28905号において明らかにされている。
【0011】
ここで自動調整により増幅手段12の補正係数Kaを最適化する場合、まず、コントローラ19の制御により選択手段15で所定電圧Vdを選択してトラッキングアクチュエータ5を駆動し、対物レンズを所定位置Xdに変位させる。この時、増幅手段12の補正係数Kaの初期値を0とすると、演算手段13が出力するトラッキング誤差信号のオフセットは、図5(A)のaに示すように、対物レンズ位置Xdに応じた値(ofs1)となる。
【0012】
ここで、平均値検出手段17によりトラッキング誤差信号のオフセットofs1を検出し、これが0になるようにゲイン設定手段18によって増幅手段12の補正係数Kaの値を可変する(トラッキング誤差信号のオフセットが概略0になるまで、Kaの値を所定量づつ可変していく)。
図4の構成からわかるように、演算手段11が出力する対物レンズ位置信号(図5(A)のc)に補正係数Kaを乗じて、演算手段10が出力するトラッキング誤差信号(図5(A)のa)から減算して、補正されたトラッキング誤差信号を生成しているので、図5(A)の波形でいうと、b=a−Ka×cとなり、Kaの値を変化させると、補正されたトラッキング誤差信号のオフセットの傾きが変化する。
【0013】
ここで対物レンズ位置信号は、図5(A)のcに示すように、対物レンズの位置が標準位置(図5の横軸の中心位置:対物レンズの機械的あるいは光学的中心)において”0”となるので、補正係数Kaを可変しても標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットは変化しない。標準位置におけるトラッキングオフセットは、図5(A)のaに示すように”0”であるから、図5(A)のaはKaを可変することによって原点を中心に回転し、bに示すように対物レンズ位置に依らず常にオフセットが発生しないトラッキング誤差信号が得られる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のような従来のトラッキング調整装置では、
対物レンズ位置の標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットが0でない場合や、対物レンズ位置がディスクの外周側にあるのと内周側にあるのとでトラッキング誤差信号のオフセットの傾きが異なる場合に、トラッキング誤差信号のオフセットが正しく補正できないという問題点を有していた。
【0015】
これについて図5(B)、(C)を用いて以下に説明する。
図5(B)は、対物レンズの標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットが”0”でない場合の動作を示している。自動調整前のトラッキング誤差信号は、図5(B)のdに示すように、対物レンズの位置に応じたオフセットを持つと同時に対物レンズの標準位置においても残留オフセットofs0を持つ。この状態で対物レンズを所定の位置Xdに変位させ、その時のトラッキング誤差信号のオフセットが”0”になるように補正係数Kaの値を可変すると、図5(B)のdは対物レンズの標準位置(対物レンズ位置信号=0)の点を中心に回転するため、eに示すようにオフセットの傾きを残した特性となり、対物レンズ位置に応じたオフセットを正しく補正することができない。
【0016】
また図5(C)は、対物レンズ位置がディスクの外周側と内周側におけるトラッキング誤差信号のオフセットの傾きが異なる場合の動作を示している。プッシュプル方式によるトラッキング誤差信号の対物レンズ位置に応じたオフセットの傾きは、ピックアップ内での光軸の傾き等の影響により、このように外周側と内周側で異なる場合がある。ここで対物レンズを所定の位置Xdに変位させ、その時のトラッキング誤差信号のオフセットが”0”になるように、補正係数Kaの値を可変すると、外周側のオフセット特性は、図5(C)のf1がg1のようになり正しく補正できるが、内周側のオフセット特性は図5(C)のf2がg2のようになり、正しく補正することができない。
【0017】
本発明は、上記従来の問題点を解決するもので、対物レンズの標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットが0でない場合や、対物レンズ位置がディスクの外周側にある場合と内周側にある場合とでトラッキング誤差信号のオフセットの傾きが異なる場合でも、常に補正係数を最適に調整し、トラッキング誤差信号のオフセットを正しく補正することができるトラッキング調整装置を提供する。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明のトラッキング調整装置は、情報が所定のトラック形態で記録された光ディスクの情報面上に光ビームを集光する集光手段と、前記集光された光ビームを前記光ディスクの半径方向に移動させる光ビーム移動手段と、前記集光された光ビームに基づいて前記光ディスクから反射した光スポットを受光する受光手段と、前記受光手段からの前記光スポットによる出力によって前記光ビームと前記トラックとのディスク半径方向の相対位置誤差を検出して、トラッキング誤差信号を出力するトラッキング誤差検出手段と、前記光ビーム移動手段を用いて前記光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置を所定の位置に定める位置決め手段と、前記トラッキング誤差信号を補正する補正手段とを備え、前記補正手段は、光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置に応じた値を検出する位置検出手段と、トラッキング誤差信号と前記位置検出手段の出力とによる演算により補正されたトラッキング誤差信号を出力する演算手段とを有し、前記位置決め手段により定められた複数の位置に対応して得られたトラッキング誤差信号のオフセットに基づいて複数の仮演算係数を求め、それら複数の仮演算係数の平均処理により係数を設定することにより、ディスクの外周側と内周側でトラッキング誤差信号のオフセットが異なる場合でも、外周側と内周側とでバランスした最適な補正を行うことを特徴とする。
【0019】
以上により、対物レンズの標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットが0でない場合や、対物レンズ位置がディスクの外周側にある場合と内周側にある場合とでトラッキング誤差信号のオフセットの傾きが異なる場合でも、常に補正係数を最適に調整し、トラッキング誤差信号のオフセットを正しく補正することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載のトラッキング調整装置は、情報が所定のトラック形態で記録された光ディスクの情報面上に光ビームを集光する集光手段と、前記集光された光ビームを前記光ディスクの半径方向に移動させる光ビーム移動手段と、前記集光された光ビームに基づいて前記光ディスクから反射した光スポットを受光する受光手段と、前記受光手段からの前記光スポットによる出力によって前記光ビームと前記トラックとのディスク半径方向の相対位置誤差を検出して、トラッキング誤差信号を出力するトラッキング誤差検出手段と、前記光ビーム移動手段を用いて前記光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置を所定の位置に定める位置決め手段と、前記トラッキング誤差信号を補正する補正手段とを備え、前記補正手段は、光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置に応じた値を検出する位置検出手段と、トラッキング誤差信号と前記位置検出手段の出力とによる演算により補正されたトラッキング誤差信号を出力する演算手段とを有し、前記位置決め手段により定められた複数の位置に対応して得られたトラッキング誤差信号のオフセットに基づいて複数の仮演算係数を求め、それら複数の仮演算係数の平均処理により係数を設定する構成とする。
以上の構成によると、対物レンズ位置がディスクの外周側にあるのと内周側にあるのとでトラッキング誤差信号のオフセットの傾きが異なる場合でも、外周側の補正係数の最適値と内周側の補正係数の最適値の中間値を採用することにより、外周側と内周側とでバランスした最適な補正を行う
【0021】
請求項2に記載のトラッキング調整装置は、情報が所定のトラック形態で記録された光ディスクの情報面上に光ビームを集光する集光手段と、前記集光された光ビームを前記光ディスクの半径方向に移動させる光ビーム移動手段と、前記集光された光ビームに基づいて前記光ディスクから反射した光スポットを受光する受光手段と、前記受光手段からの前記光スポットによる出力によって前記光ビームと前記トラックとのディスク半径方向の相対位置誤差を検出して、トラッキング誤差信号を出力するトラッキング誤差検出手段と、前記光ビーム移動手段を用いて前記光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置を所定の位置に定める位置決め手段と、前記トラッキング誤差信号を補正する補正手段とを備え、前記補正手段は、光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置に応じた値を検出する位置検出手段と、前記トラッキング誤差信号から、前記位置検出手段の出力値に所定の演算係数を乗じた値を減算することにより補正されたトラッキング誤差信号を出力する演算手段とを有し、前記位置決め手段により、前記光ビームと前記受光手段のディスク半径方向の相対位置を、ディスク内周側及び外周側に定め、各々において前記トラッキング誤差信号のオフセットを補正する演算係数値を求め、前記ディスク内周側で求めた演算係数値と前記ディスク外周側で求めた演算係数値を、前記位置検出手段の出力信号の正負の符号に応じて切り換える構成とする。
以上の構成によると、外周側と内周側で各々補正係数の最適値を求めて対物レンズ位置信号=0を境界として切り換えることにより、外周側と内周側とで各々独立に補正する
【0022】
請求項3に記載のトラッキング調整装置は、情報が所定のトラック形態で記録された光ディスクの情報面上に光ビームを集光する集光手段と、前記集光された光ビームを前記光ディスクの半径方向に移動させる光ビーム移動手段と、前記集光された光ビームに基づいて前記光ディスクから反射した光スポットを受光する受光手段と、前記受光手段からの前記光スポットによる出力によって前記光ビームと前記トラックとのディスク半径方向の相対位置誤差を検出して、トラッキング誤差信号を出力するトラッキング誤差検出手段と、前記光ビーム移動手段を用いて前記光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置を所定の位置に定める位置決め手段と、前記トラッキング誤差信号を補正する補正手段とを備え、前記補正手段は、光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置に応じた値を検出する位置検出手段と、前記トラッキング誤差信号から、前記位置検出手段の出力値に所定の演算係数を乗じた値を減算することにより、補正されたトラッキング誤差信号を出力する演算手段とを有し、前記位置決め手段により、前記光ビームと前記受光手段のディスク半径方向の相対位置を、ディスク内周側及び外周側に定め、各々において前記トラッキング誤差信号のオフセットを補正する演算係数値を求め、更に、前記光ビームと前記受光手段のディスク半径方向の相対位置が標準位置である場合の前記位置検出手段の出力値を記憶値として記憶し、前記位置検出手段の出力信号を前記記憶値と比較した結果に応じて、前記ディスク内周側で求めた演算係数値と前記ディスク外周側で求めた演算係数値を切り換える構成とする。
以上の構成によると、外周側と内周側で各々補正係数の最適値を求めて、それらの補正係数を、対物レンズの標準位置(ビーム移動手段に駆動力を加えない場合の位置)における対物レンズ位置信号レベルを境界として切り換えることにより、対物レンズの標準位置における対物レンズ位置信号のレベルに依らず正しいタイミングで係数を切り換える
【0033】
以下、本発明の実施の形態を示すトラッキング調整装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は本発明の実施の形態のトラッキング調整装置の構成を示すブロック図である。図1において、1〜16及び7A、7B、7C、7Dは従来例の図4と同様であるので説明を省略する。20は演算手段13が出力するトラッキング誤差信号をディジタル値に変換するA/D変換手段、21はA/D変換手段20が出力するトラッキング誤差信号の平均値(オフセット)を検出する平均値検出手段、22は演算手段11が出力するレンズ位置信号をディジタル値に変換するA/D変換手段、23はA/D変換手段22が出力するレンズ位置信号の平均値を検出する第2の平均値検出手段、24は自動調整動作を制御するコントローラ、25、26はコントローラ24の制御信号出力端子であり、25は自動調整動作を行うかトラッキング制御動作を行うかの切り換え信号出力端子、26は自動調整時に位置決めする対物レンズ位置を、標準位置(ここでは対物レンズ4に駆動力を加えない位置、言い換えれば対物レンズ4の機械的中心位置)、外周側、内周側の何れにするかの切り換え信号出力端子である。
【0034】
27は、コントローラ24の出力端子26からの制御信号に応じて、自動調整時に対物レンズの位置決めを行うためにトラッキングアクチュエータ5に印可する電圧として、+Vd、0−Vdの何れかを選択して出力する選択手段であり、+Vdは対物レンズを外周側に変位させる電圧、−Vdは対物レンズを内周側に変位させる電圧、0は対物レンズを標準位置に変位させる電圧(駆動力を加えない状態)である。
【0035】
28は、コントローラ24の出力端子26からの制御信号と平均値検出手段21が出力するトラッキング誤差信号のオフセットに応じて、増幅手段12のアナログ乗算係数Kaを設定するゲイン設定手段であり、29、32、33はゲイン設定手段28の構成要素であり、29は平均値検出手段21の出力に応じたゲインを算出するゲイン算出手段、30は対物レンズを標準位置及び外周側に位置決めした時のトラッキング誤差信号のオフセットに応じて算出したゲインを出力する出力端子、31は対物レンズを標準位置及び内周側に位置決めした時のトラッキング誤差信号のオフセットに応じて算出したゲインを出力する出力端子、32は、ゲイン算出手段29の出力端子30、31からの2系統の出力に基づいて、中間値を計算して出力する中間値検出手段、33は、コントローラ24の出力端子26からの制御信号に応じて、ゲイン算出手段29の2系統の出力と中間値検出手段32の出力の何れかを選択して出力し、増幅手段12のアナログ補正係数Kaとする選択手段である。
【0036】
34は、コントローラ24の出力端子26からの制御信号に応じて、対物レンズの標準位置と外周側位置でのトラッキング誤差信号のオフセットの変化量とレンズ位置信号の平均値の変化量とを求め、それらの比率から外周側でのディジタル補正係数Kd1を求め、また、対物レンズの標準位置と内周側位置でのトラッキング誤差信号のオフセットの変化量とレンズ位置信号平均値の変化量とを求め、それらの比率から内周側でのディジタル補正係数Kd2を求める補正係数算出手段であり、35、36、37は補正係数算出手段34の構成要素であり、35は平均値検出手段21が出力するトラッキング誤差信号のオフセットの対物レンズ位置による変化量を検出する変化量検出手段、36は第2の平均値検出手段23が出力する対物レンズ位置信号の平均値の対物レンズ位置による変化量を検出する第2の変化量検出手段、37は変化量検出手段35が出力するトラッキング誤差信号オフセットの変化量を第2の変化量検出手段36が出力する対物レンズ位置信号の平均値の変化量で割り算する割算手段である。
【0037】
割算手段37は、対物レンズの外周側と内周側位置で各々独立に割り算を行ってその結果を記憶し、外周側での割り算結果をディジタル補正係数Kd1として出力端子38から出力し、内周側での割り算結果をディジタル補正係数Kd2として出力端子39から各々出力する。
40は、コントローラ24の出力端子26からの制御信号に応じて、対物レンズが標準位置の場合に、第2の平均値検出手段23が出力する対物レンズ位置信号の平均値を記憶する記憶手段、41はA/D変換手段22が出力する対物レンズ位置信号を記憶手段40の出力と比較して比較結果を出力する比較手段、42は比較手段41の出力に応じて割算手段42が出力するディジタル補正係数Kd1、Kd2の何れかを選択して出力する選択手段、43は選択手段42の出力をディジタル補正係数KdとしてA/D変換手段22が出力する対物レンズ位置信号に乗算して出力する乗算手段、44はA/D変換手段20が出力するトラッキング誤差信号から乗算手段43の出力を減算してディジタル補正されたトラッキング誤差信号を出力する減算手段である。
【0038】
以上のように構成された実施の形態のトラッキング調整装置について、図2及び図3を用いて以下に説明する。
図2はA/D変換手段20が出力するアナログ補正されたトラッキング誤差信号のオフセットの対物レンズ位置に対する特性を示す特性図、図3は減算手段44が出力するディジタル補正されたトラッキング誤差信号のオフセット及び対物レンズ位置信号の対物レンズ位置に対する特性を示す特性図である。
【0039】
図2及び図3において、横軸は対物レンズ位置、縦軸は各信号のレベルを表し、図の右側が対物レンズが外周側に変位する方向を示し、図の左側が内周側に変位する方向を示し、図中のXd、−Xdは自動調整のためにコントローラ24によって強制的に位置決めされる対物レンズ位置を示し、図の上側は信号レベルの正側を示し、下側は負側を示す。
【0040】
図2において、(A)、(B)、(C)、(D)は、演算手段12のアナログ補正係数Kaによってアナログ補正されたトラッキング誤差信号をA/D変換手段20でディジタル化したトラッキング誤差信号のオフセット特性を示し、(A)はアナログ補正係数Ka=0の場合、(B)は対物レンズを外周側に位置決め(+Xd)してアナログ補正係数Kaを最適に調整した結果、(C)は対物レンズを内周側に位置決め(−Xd)してアナログ補正係数Kaを最適に調整した結果、(D)は(B)と(C)の調整結果の中間値にアナログ補正係数Kaを設定した結果を示す。ここではピックアップ内の光軸の傾き等の影響により、何れにおいても対物レンズ位置の内周側と外周側でトラッキング誤差信号のオフセットの傾きが異なる場合を想定している。図中のofs0は、対物レンズの標準位置におけるアナログ補正されたトラッキング誤差信号のオフセットレベルを示す。
【0041】
図3において、(A)、(C)、(D)は乗算手段43のディジタル乗算係数Kdによってディジタル補正されたトラッキング誤差信号(減算手段44の出力)の対物レンズ位置に応じたオフセット特性を示し、(A)はディジタル補正係数Kd=0の場合、(C)は対物レンズを外周側(+Xd)及び内周側(−Xd)に各々位置決めし、各々について最適なディジタル補正係数Kd1及びKd2を求めて補正を行った結果、(D)は(C)に対して更に対物レンズ位置に依らず一定なオフセット補正を加えた結果を示す。(B)は対物レンズ位置信号を示す。図中の−Xd2は、対物レンズ位置信号(B)のレベルが”0”になる対物レンズ位置を示し、TEofs0、TEofs1、TEofs2は、各々対物レンズが標準位置、外周側位置(+Xd)、内周側位置(−Xd)におけるトラッキング誤差信号のオフセットレベルを示し、ΔTE1は、TEofs1とTEofs0の差(TEofs1−TEofs0)、ΔTE2は、TEofs2とTEofs0の差(TEofs2−TEofs0)を示す。LPofs0、LPofs1、LPofs2は、各々対物レンズが標準位置、外周側位置(+Xd)、内周側位置(−Xd)における対物レンズ位置信号のオフセットレベルを示し、ΔLP1は、LPofs1とLPofs0の差(LPofs1−LPofs0)、ΔLP2は、LPofs2とLPofs0の差(LPofs2−LPofs0)を示す。TEofs3は、(C)において、対物レンズ位置が標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットレベルを示す。
【0042】
本実施の形態では、まず演算手段10が出力するトラッキング誤差信号に対して増幅手段12の補正係数Kaによってアナログ的に補正を行い、その信号をA/D変換手段20でディジタル化し、更に乗算手段43の補正係数Kdによってディジタル的に補正を行う。アナログ補正係数Kaの調整値は単独の値であるが、ディジタル補正係数Kdは対物レンズ位置が外周側と内周側で独立した2つの調整値Kd1及びKd2を持ち、対物レンズ位置信号に応じて切り換える。このような切り換え処理はアナログ回路よりもディジタル処理に適しており、DSPを用いたソフトウエア等で容易に実現が可能である。このようにアナログ補正とディジタル補正を組み合わせることにより、アナログ補正でトラッキング誤差信号の対物レンズに応じたオフセットを所定範囲に入るように調整して、A/D変換手段のビット精度を確保し、ディジタル補正で更に精度の良い補正を行っている。
【0043】
上記した動作について、以下に詳細に説明する。
まず増幅手段12のアナログ補正係数Kaの初期値を0とする。この時A/D変換手段20が出力するトラッキング誤差信号のオフセット特性は図2(A)に示すようになる。ここでコントローラ24の出力端子25からの制御信号により、選択手段15で選択手段27の出力を選択する。選択手段27はコントローラ24の出力端子26からの制御信号により、0を選択する。これにより、トラッキングアクチュエータ5には駆動力が加えられないので、対物レンズ4は標準位置に位置決めされる。この状態で、平均値検出手段21によりA/D変換手段20が出力するトラッキング誤差信号の平均値(図2(A)のofs0)を求める。次にコントローラ24の出力端子26からの制御信号により、選択手段27は所定電圧+Vdを選択して出力する。これによりトラッキングアクチュエータ5は所定電圧+Vdに応じて駆動され、対物レンズ4は所定の外周側位置+Xdに位置決めされる。この状態で、平均値検出手段21によりA/D変換手段20が出力するトラッキング誤差信号の平均値を求める。これを、先ほど測定したofs0と比較すると、図2(A)に示すように、ofs0より大きい(正側)ため、これがofs0と等しくなるまで増幅手段12のアナログ補正係数Kaを可変して追い込み調整を行う。
【0044】
具体的には、まず選択手段33でゲイン算出手段29の出力端子30の出力を選択して出力する。ゲイン算出手段29は、出力端子30からゲイン係数を出力し、この値を、対物レンズ位置が+Xdの時のトラッキング誤差信号平均値がofs0と等しくなるまで可変し、その結果を出力端子30に保持する。補正係数Kaを可変すると、従来例で説明したように、対物レンズ位置信号レベルが0となる対物レンズ位置を中心にトラッキング誤差信号のオフセット特性が回転する。ここで従来例と同様に対物レンズが標準位置の場合に対物レンズ位置信号が0になる(図5(A)のcを参照)とすると、図2(A)に示すオフセット特性は標準位置を中心に回転するため、(B)に示すようになり、対物レンズが標準位置から外周側においては対物レンズ位置に応じたオフセットが無くなり、対物レンズ位置に依らない一定値(ofs0)のみとなる。このように、対物レンズ位置が+Xdにおけるトラック誤差信号のオフセットを0にするのではなく、標準位置のオフセット(TEofs)と等しくするように、アナログ補正係数Kaを設定することにより、従来例の自動調整結果である図5(B)のeの特性に見られるような、対物レンズ位置に応じたオフセットを無くすことができる。対物レンズ位置に依らない一定のオフセットであれば、そのオフセット値を検出して減算する等、他の補正手段で容易に補正が可能である。
【0045】
但しこの段階では、もともとトラッキング誤差信号のオフセット特性が対物レンズ位置の外周側と内周側で異なるため、内周側では対物レンズ位置に応じたオフセットが残る。
次に、アナログ補正係数Kaの値を再度0とする。選択手段27は、コントローラ24の出力端子26からの制御信号により、所定電圧−Vdを選択して出力する。これにより対物レンズ4は所定の内周側位置−Xdに位置決めされる。この状態で、平均値検出手段21によりA/D変換手段20が出力するトラッキング誤差信号の平均値を求める。これを、先ほど測定した対物レンズが標準位置にある場合におけるオフセットofs0と比較すると、図2(A)に示すように、ofs0より小さい(負側)ため、これがofs0と等しくなるまでアナログ補正係数Kaを可変する。
【0046】
具体的には、まず選択手段33でゲイン算出手段29の出力端子31の出力を選択して出力する。ゲイン算出手段29は、出力端子31からゲイン係数を出力し、この値を、対物レンズ位置が−Xdの時のトラッキング誤差信号平均値がofs0と等しくなるまで可変し、その結果を出力端子31に保持する。補正係数Kaを可変すると、図2(A)に示すオフセット特性は、対物レンズの標準位置を中心に回転し、図2(C)に示すように対物レンズが標準位置から内周側においては対物レンズ位置に依らずオフセットは一定値(ofs0)となる。但し、トラッキング誤差信号のオフセット特性が対物レンズ位置の外周側と内周側で異なるため、外周側では対物レンズ位置に応じたオフセットが残る。
【0047】
次に、コントローラ24の出力端子26からの制御信号に応じて、中間値検出手段32はゲイン算出手段29の出力端子30、31に保持された外周側、内周側でのゲインの平均値を検出して出力し、選択手段33でこれを選択して出力し、増幅手段12におけるアナログ補正係数Kaとする。これにより、アナログ補正されたトラッキング誤差信号の対物レンズ位置に応じたオフセット特性は、図2(D)に示すように、図2(B)、(C)の中間的な特性となり、対物レンズの外周側と内周側でバランスのとれた特性となる。この状態が、対物レンズ位置の絶対値をある範囲内で考えた場合(例えば+Xdから−Xdの範囲)に、トラッキング誤差信号のオフセットが最小となることは明らかであり、補正係数Kaが単独の値の場合においては基も望ましい補正状態となる。
【0048】
以上でトラッキング誤差信号のアナログ補正係数Kaの調整が完了した。
次に、ディジタル補正係数Kdの調整について説明する。
アナログ補正係数Kaが正しく調整された状態で、まず、乗算手段43のディジタル補正係数Kdの初期値を0とする。この時減算手段44が出力するトラッキング誤差信号の対物レンズ位置に応じたオフセット特性は、図3(A)に示すようになる。アナログ補正において外周側と内周側のオフセット特性が完全にバランスする用に調整されていれば、図3(A)において、TEofs1=TEofs2、ΔTE1=ΔTE2となるはずであるが、ここでは若干の誤差が残った場合を想定してTEofs1≠TEofs2、ΔTE1≠ΔTE2としている。選択手段27はコントローラ24の出力端子26からの制御信号により0を選択する。これにより対物レンズ4は標準位置に位置決めされる。
【0049】
この状態で、まず平均値検出手段21によりA/D変換手段20が出力するトラッキング誤差信号の平均値(図3(A)のTEofs0)を求め、さらに第2の平均値検出手段23によりA/D変換手段22が出力する対物レンズ位置信号の平均値(図3(B)のLPofs0)を求めて記憶手段40に記憶する。
次にコントローラ24の出力端子26からの制御信号により、選択手段27は所定電圧+Vdを選択して出力する。これにより対物レンズ4は所定の外周側位置+Xdに位置決めされる。この状態で、平均値検出手段21によりA/D変換手段20が出力するトラッキング誤差信号の平均値(図3(A)のTEofs1)を求め、さらに第2の平均値検出手段23によりA/D変換手段22が出力する対物レンズ位置信号の平均値(図3(B)のLPofs1)を求める。
【0050】
変化量検出手段35は、対物レンズ位置+Xdにおけるトラッキング誤差信号のオフセットTEofs1と対物レンズが標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットTEofs0の差ΔTE1(=TEofs1−TEofs0)を検出し、第2の変化量検出手段36は、対物レンズ位置+Xdにおける対物レンズ位置信号のオフセットLPofs1と対物レンズが標準位置における対物レンズ位置信号のオフセットLPofs0の差ΔLP1(=LPofs1−LPofs0)を検出する。割り算手段37は、変化量検出手段35が出力するトラッキング誤差信号のオフセット変化量ΔTE1を、第2の変化量検出手段36が出力する対物レンズ位置信号のオフセット変化量ΔLP1で割り算し、外周側のディジタル補正係数Kd1として出力端子38から出力する。
【0051】
Kd1=ΔTE1/ΔLP1・・・式(1)
このようにして求めたKd1を用いて補正することにより、対物レンズ位置が外周側におけるトラッキング誤差信号のオフセットは、図3(C)に示すように対物レンズ位置に応じたオフセット成分が無くなり、対物レンズ位置に依らない一定値(TEofs3)となる。これは、トラッキング誤差信号のオフセット(図3(A))と対物レンズ位置信号(図3(B))を、各々対物レンズ位置の一次関数と考えて傾きを求め、その比率を補正係数とするとトラッキング誤差信号のオフセットの傾きが0となるからである。これについて以下に式を用いて詳しく説明する。
【0052】
対物レンズ位置をx、ディジタル補正係数Kd=0の場合のトラッキング誤差信号のオフセット(図3(A))をTE(x)、対物レンズ位置信号(図3(B))をLP(x)、ディジタル補正された後のトラッキング誤差信号のオフセットをTE’(x)とすると、TE(x)、LP(x)は対物レンズ位置にほぼ比例するので、以下のような一次関数で表すことができる。
【0053】
TE(x)=(ΔTE1/Xd)×x+TEofs0・・・式(2)
LP(x)=(ΔLP1/Xd)×x+LPofs0・・・式(3)
図1に示すように、LP(x)にディジタル補正係数Kd1を掛けてTE(x)から減算して補正するので、
TE’(x)=TE(x)−Kd1×LP(x)・・・式(4)
式(1)、(2)、(3)を式(4)に代入すると、
Figure 0003580721
式(5)により、ディジタル補正されたトラッキング誤差信号には、対物レンズ位置xに応じたオフセット成分が無くなり、対物レンズ位置に依らない一定値(TEofs3)となることが解る。
【0054】
このように、対物レンズを標準位置と外周あるいは内周側に位置決めし、その場合のトラッキング誤差信号と対物レンズ位置信号の変化量を各々求め、それらの比率に基づいて補正係数を求めると、トラッキング誤差信号のオフセットの傾き成分のみをキャンセルできるため、アナログ補正係数Kaを求めるところで前述した方法(対物レンズを外周あるいは内周側に位置決めした場合のトラッキング誤差信号のオフセットを、標準位置におけるオフセットと等しくするように補正係数を可変する)と同様に標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットが0でない場合でも正しいオフセット補正が可能であり、かつ、係数を少しづつ可変して追い込み調整を行う必要がなく、一回の割り算で調整が終了するので、自動調整の時間を大幅に短縮することが可能である。
【0055】
以上で対物レンズが外周側におけるディジタル補正係数Kd1が求まった。次に内周側のディジタル補正係数Kd2を求める。
外周側と同様に、コントローラ24の出力端子26からの制御信号により選択手段27は所定電圧−Vdを選択して対物レンズ4を所定の内周側位置−Xdに位置決めし、平均値検出手段21によりA/D変換手段20が出力するトラッキング誤差信号の平均値(図3(A)のTEofs2)を求め、第2の平均値検出手段23によりA/D変換手段22が出力する対物レンズ位置信号の平均値(図3(B)のLPofs2)を求める。
【0056】
変化量検出手段35は、対物レンズ位置−Xdにおけるトラッキング誤差信号のオフセットTEofs2と対物レンズが標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットTEofs0の差ΔTE2(=TEofs2−TEofs0)を検出し、第2の変化量検出手段36は、対物レンズ位置−Xdにおける対物レンズ位置信号のオフセットLPofs2と対物レンズが標準位置における対物レンズ位置信号のオフセットLPofs0の差ΔLP2(=LPofs2−LPofs0)を検出する。割り算手段37は、変化量検出手段35が出力するトラッキング誤差信号のオフセット変化量ΔTE2を、第2の変化量検出手段36が出力する対物レンズ位置信号のオフセット変化量ΔLP2で割り算し、内周側のディジタル補正係数Kd2(=ΔTE2/ΔLP2)として出力端子39から出力する。
【0057】
このようにして求めたKd2を用いて補正することにより、対物レンズ位置が内周側におけるトラッキング誤差信号のオフセットは、図3(C)に示すように対物レンズ位置に応じたオフセット成分が無くなり、対物レンズ位置に依らない一定値(TEofs3)となる。
以上により外周側、内周側のディジタル補正係数Kd1、Kd2が求められた。
【0058】
次に、この2つの係数を対物レンズ位置信号のレベルに応じて切り換えてトラッキング誤差信号を補正する。具体的には、A/D変換手段22が出力する対物レンズ位置信号を、記憶手段40で記憶した値(対物レンズの標準位置における対物レンズ位置信号の値LPofs0)と比較手段41で常時比較し、対物レンズ位置信号レベルがLPofs0より大きい場合(対物レンズが外周側に位置している場合)は選択手段42によって割り算手段手段37の出力端子38から出力される外周側の補正係数Kd1を選択し、対物レンズ位置信号レベルがLPofs0より小さい場合(対物レンズが内周側に位置している場合)は選択手段42によって割り算手段手段37の出力端子39から出力される内周側の補正係数Kd2を選択して出力する。これにより、図3(B)に示すように、標準位置における対物レンズ位置信号が0でない場合でも、対物レンズの標準位置を境界として外周側と内周側の係数を正しく切り換えることができる。
【0059】
ここでもし、単純に対物レンズ位置信号の正/負に応じて係数を切り換えると、図3(B)に示す−Xd2の位置で係数Kd1とKd2を切り換えることになる。これにより、対物レンズ位置が標準位置から−Xd2までの範囲では、本来Kd2を用いるべきであるのに対しKd1を用いてしまうので、オフセット補正に誤差が発生する。
【0060】
乗算手段43は、対物レンズが外周側に位置する時は外周側で求めた補正係数Kd1、内周側に位置する時は内周側で求めた補正係数Kd2を乗算係数として用いて各々独立に最適な補正を行う。これにより、ディジタル補正されたトラッキング誤差信号は、図3(C)に示すように対物レンズ位置が外周側/内周側に依らず、常に対物レンズ位置に応じたオフセット成分がなくなり、対物レンズ位置に依らない一定値となる。
【0061】
前述したように、対物レンズ位置に依らないオフセットであれば、そのオフセット値を検出して減算する等、他の補正手段で容易に補正することが可能であるため、図3(C)のオフセット特性は容易に(D)に示す特性に補正することが可能であり、対物レンズ位置に依らず常にオフセットが発生しない理想的なトラッキング誤差信号を得ることができる。
【0062】
以上のように本実施の形態では、トラッキングアクチュエータに所定電圧を印可することにより対物レンズを標準位置とディスクの外周側と内周側に位置決めし、外周側で求めたアナログ補正係数と内周側で求めたアナログ補正係数Kaの中間値を採用することにより、外周側と内周側でトラッキング誤差信号のオフセットの傾きが異なる場合でも、外周側と内周側がバランスした最適な補正が可能であり、また、外周側と内周側で各々ディジタル補正係数の最適値Kd1及びKd2を求め、対物レンズ位置信号に応じて切り換えることにより、外周側と内周側のトラッキング誤差信号のオフセット特性が異なる場合でも、外周側と内周側を独立して最適に補正することが可能であり、また、外周側と内周側で各々ディジタル補正係数の最適値を求め、対物レンズが標準位置における位置検出信号レベルを境界値として切り換えることにより、標準位置における対物レンズ位置信号のレベルに依らず、外周側と内周側のトラッキング誤差信号のオフセット特性が異なる場合でも、外周側と内周側を独立して最適に補正することが可能であり、また、外周側あるいは内周側におけるトラッキング誤差信号のオフセットが標準位置におけるオフセットと等しくなるようにアナログ補正係数Kaを調整することにより、標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットが0でない場合でも正しいオフセット補正が可能であり、また、標準位置と外周あるいは内周側位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットの変化量と位置検出信号の変化量の比率に基づいてディジタル補正係数を設定することにより、標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットが0でない場合でも正しいオフセット補正が可能であると同時に、追い込み調整が不要なため自動調整時間の大幅な短縮が可能である。
【0063】
なお、本発明の実施の形態においては、対物レンズを標準位置と外周側位置と内周側位置に位置決めして調整するとしたが、この3個所に限定されるものではなく、複数の位置であればどのような位置でもよい。例えば、標準位置と外周あるいは内周側位置の2個所でも良いし、外周側と内周側の2個所でも良いし、あるいは、調整時の位置決め個所を4個所以上として、3つ以上の係数を学習して切り換えても良い。
【0064】
また、補正前のトラッキング誤差信号のオフセットを測定する場合に、図1に示すアナログ補正係数kaやディジタル補正係数Kdの値の初期値を0として、増幅手段12や乗算手段43による補正後の信号を用いて測定したが、構成的に増幅手段12や乗算手段43で補正される前の信号(例えば演算手段10の出力信号)を用いて測定しても同様である。
【0065】
また、自動調整を行う場合に、アナログ補正係数Kaやディジタル補正係数Kdの初期値を0としたが、必ずしも0である必要はなく、予め標準的な係数値を初期値として設定した上で自動調整を行っても良いし、始めに外周側で係数値を求めたとすると、次に内周側で調整する場合には、先に外周側で求めた係数値を初期値として用いても良い。
【0066】
また、アナログ補正において、外周側で求めた係数値と内周側で求めた係数値の平均値を採用するとしたが、必ずしも平均値である必要はなく、ピックアップや光ディスク駆動装置の都合により、外周側と内周側の値の中間的な値であれば、様々な計算方法が考えられる。
また、対物レンズの位置決めは、トラッキングアクチュエータに所定の電圧を加えるとしたが、対物レンズ位置信号に位相補償等の処理を施してトラッキングアクチュエータを駆動して、対物レンズの位置を制御するフィードバックループを構成し、対物レンズ位置信号に所定のオフセットを加えることにより位置制御の目標点をずらして、対物レンズを所定の位置に位置決めする方法を用いてもよい。
【0067】
この場合、対物レンズの外周側で求めた係数と内周側で求めた係数を切り換えは、対物レンズ位置信号=0を境界として切り換えるのが望ましい。またこの場合、割り算によって補正係数を求める際の分母は、実際に測定した対物レンズ位置信号の変化量ではなく、対物レンズ位置信号に加えたオフセット量(即ち目標位置の変化量)で代用することが可能である。
【0068】
また本実施の形態では、図1に示すように、6分割された受光素子7の出力に基づいた演算によりトラッキング誤差信号や対物レンズ位置信号を検出したが、このような構成に限定されるものではなく、対物レンズ位置に応じたトラッキング誤差信号のオフセットを補正する構成であれば、どのような検出方法を用いたものでも本発明の趣旨に何らの変りはない。
【0069】
また本実施の形態の図1における受光素子7は、ディスクからの反射光を直接受光するフォトディテクタ等の素子であってもよいし、ホログラム等の素子であってもよい。
【0070】
【発明の効果】
以上のように発明によれば、ディスクの外周側と内周側でトラッキング誤差信号のオフセットが異なる場合でも、外周側と内周側とでバランスした最適な補正を行うことができる。
【0071】
また、発明によれば、ディスクの外周側と内周側でトラッキング誤差信号のオフセットが異なる場合でも、外周側と内周側とで各々独立して最適に補正することができる。
【0072】
また、発明によれば、対物レンズの標準位置における対物レンズ位置信号のレベルに依らず正しいタイミングで係数を切り換えることができる。
【0075】
そのため、対物レンズの標準位置におけるトラッキング誤差信号のオフセットが0でない場合や、対物レンズ位置がディスクの外周側にある場合と内周側にある場合とでトラッキング誤差信号のオフセットの傾きが異なる場合でも、常に補正係数を最適に調整し、トラッキング誤差信号のオフセットを正しく補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のトラッキング調整装置の構成を示すブロック図
【図2】同実施の形態における各信号の特性を示す特性図
【図3】同実施の形態における各信号の特性を示す他の特性図
【図4】従来のトラッキング調整装置の構成を示すブロック図
【図5】同従来例における各信号の特性を示す特性図
【符号の説明】
6 光スポット
7 受光素子
7A (光スポットの端領域を受光する)受光セル
7B (光スポットの端領域を受光する)受光セル
7C (光スポットの中領域を受光する)受光セル
7D (光スポットの中領域を受光する)受光セル
8 (光スポットをトラックに相当する方向と垂直に分割する)分割線
9 (光スポットをトラックに相当する方向と平行に分割する)分割線
12 (アナログ補正係数を与える)増幅手段
21 平均値検出手段
23 第2の平均値検出手段
32 中間値検出手段
35 変化量検出手段
36 第2の変化量検出手段
37 割算手段
40 記憶手段
43 (ディジタル補正係数を与える)乗算手段

Claims (3)

  1. 情報が所定のトラック形態で記録された光ディスクの情報面上に光ビームを集光する集光手段と、
    前記集光された光ビームを前記光ディスクの半径方向に移動させる光ビーム移動手段と、
    前記集光された光ビームに基づいて前記光ディスクから反射した光スポットを受光する受光手段と、
    前記受光手段からの前記光スポットによる出力によって前記光ビームと前記トラックとのディスク半径方向の相対位置誤差を検出して、トラッキング誤差信号を出力するトラッキング誤差検出手段と、
    前記光ビーム移動手段を用いて前記光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置を所定の位置に定める位置決め手段と、
    前記トラッキング誤差信号を補正する補正手段とを備え、
    前記補正手段は、光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置に応じた値を検出する位置検出手段と、
    トラッキング誤差信号と前記位置検出手段の出力とによる演算により補正されたトラッキング誤差信号を出力する演算手段とを有し、
    前記位置決め手段により定められた複数の位置に対応して得られたトラッキング誤差信号のオフセットに基づいて複数の仮演算係数を求め、それら複数の仮演算係数の平均処理により係数を設定することを特徴とするトラッキング調整装置。
  2. 情報が所定のトラック形態で記録された光ディスクの情報面上に光ビームを集光する集光手段と、
    前記集光された光ビームを前記光ディスクの半径方向に移動させる光ビーム移動手段と、
    前記集光された光ビームに基づいて前記光ディスクから反射した光スポットを受光する受光手段と、
    前記受光手段からの前記光スポットによる出力によって前記光ビームと前記トラックとのディスク半径方向の相対位置誤差を検出して、トラッキング誤差信号を出力するトラッキング誤差検出手段と、
    前記光ビーム移動手段を用いて前記光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置を所定の位置に定める位置決め手段と、
    前記トラッキング誤差信号を補正する補正手段とを備え、
    前記補正手段は、
    光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置に応じた値を検出する位置検出手段と、
    前記トラッキング誤差信号から、前記位置検出手段の出力値に所定の演算係数を乗じた値を減算することにより補正されたトラッキング誤差信号を出力する演算手段とを有し、
    前記位置決め手段により、
    前記光ビームと前記受光手段のディスク半径方向の相対位置を、
    ディスク内周側及び外周側に定め、
    各々において前記トラッキング誤差信号のオフセットを補正する演算係数値を求め、
    前記ディスク内周側で求めた演算係数値と前記ディスク外周側で求めた演算係数値を、
    前記位置検出手段の出力信号の正負の符号に応じて切り換えることを特徴とするトラッキング調整装置。
  3. 情報が所定のトラック形態で記録された光ディスクの情報面上に光ビームを集光する集光手段と、
    前記集光された光ビームを前記光ディスクの半径方向に移動させる光ビーム移動手段と、
    前記集光された光ビームに基づいて前記光ディスクから反射した光スポットを受光する受光手段と、
    前記受光手段からの前記光スポットによる出力によって前記光ビームと前記トラックとのディスク半径方向の相対位置誤差を検出して、トラッキング誤差信号を出力するトラッキング誤差検出手段と、
    前記光ビーム移動手段を用いて前記光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置を所定の位置に定める位置決め手段と、
    前記トラッキング誤差信号を補正する補正手段とを備え、
    前記補正手段は、
    光ビームと前記受光手段とのディスク半径方向の相対位置に応じた値を検出する位置検出手段と、
    前記トラッキング誤差信号から、前記位置検出手段の出力値に所定の演算係数を乗じた値を減算することにより、補正されたトラッキング誤差信号を出力する演算手段とを有し、
    前記位置決め手段により、
    前記光ビームと前記受光手段のディスク半径方向の相対位置を、
    ディスク内周側及び外周側に定め、
    各々において前記トラッキング誤差信号のオフセットを補正する演算係数値を求め、
    更に、前記光ビームと前記受光手段のディスク半径方向の相対位置が標準位置である場合の前記位置検出手段の出力値を記憶値として記憶し、
    前記位置検出手段の出力信号を前記記憶値と比較した結果に応じて、
    前記ディスク内周側で求めた演算係数値と前記ディスク外周側で求めた演算係数値を切り換えることを特徴とするトラッキング調整装置。
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