JP3578725B2 - 厚みが一端部から他端部に向けて漸減するくさび形状の導光板の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、導光板の製造方法に関し、詳しくは、固定型と可動型の合わせ面が密着する状態を維持させながら嵌め合い部を嵌合させることなく、厚みが一端部から他端部に向けて漸減するくさび形状の導光板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液晶ディスプレイ内で光を液晶に導くバックライトユニットの中に組み込まれる透明樹脂からなる導光板の大部分は射出成形により製造されている。導光板の多くは厚みが一端部から他端部に向けて漸減するくさび形状をなし(以降の記載において、「厚みが一端部から他端部に向けて漸減するくさび形状の導光板」と記載せず、単に「導光板」と記載する場合においても「厚みが一端部から他端部に向けて漸減するくさび形状の導光板」を意味する)、これらの導光板の射出成形は、固定型と可動型の間に形成される製品部に溶融樹脂を射出後、圧縮する射出圧縮成形により行うこともでき、この成形法によれば導光板の均一化と成形時間の短縮化を図ることができる。このような射出圧縮成形による導光板の製造は、以下に示す金型を用いて行われていた。
(1)図6に示すように、金型100の可動型60に取り付けられた油圧、空気圧等の圧力源80を用いて可動型60を型閉じ方向に移動させ、製品部95内に射出された溶融樹脂を圧縮して成形する方法。
(2)図7に示すように、金型100の可動型60と固定型70の合わせ面90を完全に閉じ、型締め力よりも僅かに大きな力を発生させる射出圧力で製品部95内に溶融樹脂を射出することで(射出圧力により合わせ面が開く)、可動型60を射出成形機の可動プラテンと一緒に型開き方向に移動させ、固定型70と可動型60の合わせ面90間に圧縮するのに必要な拡幅された空間部を作り、射出後型締め力を上昇させ圧縮して成形する方法、あるいは図7に示す金型100の可動型60と固定型70の合わせ面90を閉じない状態で溶融樹脂を製品部95内に射出し、射出が完了した時点で射出成形機の型締め力を利用して金型100を閉じて圧縮して成形する方法。
(3)図8に示すように、金型100の可動型60と固定型70の合わせ面90を閉じず、かつ射出樹脂が製品部95外に漏れ出さないように固定型70と可動型60に設けた嵌め合い部91を嵌合させた状態で溶融樹脂を製品部95内に射出し、射出が完了した時点で射出成形機の型締め力を利用して金型100を閉じて圧縮して成形する方法、あるいは図8に示す金型100の可動型60と固定型70の合わせ面90を完全に閉じ、かつ固定型70と可動型60の嵌め合い部91を完全に嵌合させた状態で、型締め力よりも僅かに大きな力を発生させる射出圧力で溶融樹脂を射出することで可動型60と射出成形機の可動プラテンとを一緒に型開き方向に移動させ、固定型70と可動型60の合わせ面90間に圧縮させるのに必要な拡幅された空間部を作り、射出後型締め力で圧縮して成形する方法。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(1)の金型を用いる成形法によれば、射出圧力に抗しながら可動型を型閉じ方向に移動させるために高い圧力で押圧しなければならず、圧力源の大型化、ひいては金型自体の大型化を招き、省スペース化には不向きであった。(2)の金型を用いる成形法によれば、圧縮前に合わせ面は開いた状態にあるため、射出された溶融樹脂が漏れだし、導光板にバリ等の不具合が発生する虞があった。(3)の金型を用いる成形法によれば、型開きして導光体を取り出した後の型閉じの際に嵌め合い部の位置合わせが難しくなり、かじりなどにより金型に痛みを生じやすいという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、叙述の射出圧縮成形による利点を保持しつつ、省スペース化に好適で導光板にバリ等が発生するという不具合を防止でき、また金型の痛みを防止できる導光板の製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ね、本発明を完成した。
すなわち、可動型は、縦断面視においてくさび形状をなす製品部を固定型との間に形成する可動入れ子と、該可動入れ子の外周を摺動可能に囲繞する可動外周入れ子と、射出圧縮成形用金型の可動側又は射出成形機の可動側に設けられ、前記可動外周入れ子の型開き方向側の端部を型閉じ方向に押圧する圧力源とからなり、固定型と可動型との間にできる製品部に溶融樹脂を射出後、圧縮して成形する厚みが一端部から他端部に向けて漸減するくさび形状の導光板の射出圧縮成形用金型を用い、前記圧力源を作動させて前記可動外周入れ子と前記固定型の合わせ面を少なくとも射出時と圧縮時に密着状態に維持させて成形することを特徴とする厚みが一端部から他端部に向けて漸減するくさび形状の導光板の製造方法を要旨とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、射出圧縮成型用金型を図面を参照して説明し、これを用いる本発明の導光板の製造方法について詳細に説明する。
【0007】
図1〜図3は、本発明の導光板の製造方法に用いる射出圧縮成形用金型(以下、本金型という)50の概略切断縦断面図であり、図4は概略切断横面図である。本金型50は、可動入れ子11と可動外周入れ子12とからなる可動型10と、固定型20と、可動側取付板13及び固定側取付板21と、可動側取付板13に設けられた油圧装置30とから構成されている。
【0008】
可動入れ子11は、型閉じ方向側の端部がテーパ面をなす略角柱体で、固定型20の端部との間に縦断面視においてくさび形状をなす製品部45を形成する。また、可動入れ子11の型開き方向側の端部は角板状の可動側取付板13に固定されている。なお、可動側取付板13は図示しない射出成形機の可動プラテンに固定されている。
【0009】
可動外周入れ子12は、両端が開放する角筒状をなし、可動入れ子11の外周に摺動可能に嵌入されている。この可動外周入れ子12は、可動入れ子11の外周に摺動可能であるため、成形完了後の導光板150の取り出しに用いることができる。また、図4に示すように、可動入れ子11が固定されている可動側取付板13の4隅には、4台の公知の構成からなる油圧装置30が内設され、各油圧装置30のプランジャー31の先端部は可動外周入れ子12の型開き方向側の端部に当接している。可動外周入れ子12の型閉じ方向側の端部は、固定型20の型開き方向側の端部に当接し、合わせ面40を構成している。 固定型20の型閉じ方向側の端部は、固定側取付板21に固定されており、固定側取付板21は図示しない射出成形機の固定プラテンに固定されている。なお、可動側取付板13に内設される油圧装置30の数は、前記4台に限定されるものではなく、適宜増減できる。
【0010】
次いで、上記のように構成される本金型50の動作について説明する。まず、型閉じ状態では、図1に示すように型開き方向側の可動入れ子11の端面と可動外周入れ子12の端面が面一になっており、可動外周入れ子12の型閉じ方向側の端部は固定型20に当接密着している。可動型10と固定型20との間には、くさび形状の製品部45が形成されている。
【0011】
図2に示すように射出成形機の可動プラテンを僅かに型開き方向に作動させることにより可動入れ子11を型開き方向に僅かに移動させると、図示しない射出成形機のノズルから溶融樹脂が射出され、上記の製品部45には溶融樹脂が充填される。可動入れ子11の型開き方向への移動に伴い、可動側取付板13に内設された油圧装置30が作動し、プランジャー31が可動外周入れ子12の型開き方向側の端部を押圧するので、可動入れ子11が型開き方向へ移動しても可動外周入れ子12が固定型20から離反することがなく、可動外周入れ子12と固定型20の合わせ面40を密着状態に維持させることができる。 なお、可動入れ子11の型開き方向への移動は、前記のように射出成形機を作動させて行う場合に限定されるものではなく、射出成形機の型締め力より僅かに大きな射出圧力で溶融樹脂を製品部45内に射出させることにより行う構成とすることもできる。
【0012】
可動外周入れ子12の端部を押圧する油圧装置30の圧力は、射出圧力に抗する必要はなく、単に可動外周入れ子12を固定型20との合わせ面40に密着させれば足りるので僅かな押圧力で十分であり、図6に示す既述従来の金型のように油圧装置30を大型化する必要がなく、ひいては本金型50自体の小型化が可能となる。また、溶融樹脂の射出は可動外周入れ子12と固定型20の合わせ面40が閉じた状態で行えるので、溶融樹脂が漏れ出すことがなく、導光板150にバリ等が発生するという不具合がない。更に、可動型10と固定型20の嵌め合い部を嵌合させる必要がないので、かじりなどにより本金型50に痛みを生じることがない。なお、圧力源は本金型50自体や射出成形機自体に設けることなく、これらに外付けする構成とすることもできる。また、可動外周入れ子12の型開き方向側の端部を押圧するだけでなく、可動外周入れ子12の外周部など端部以外の部位を型閉じ方向に押圧する構成とすることもできる。更に、可動外周入れ子12と固定型20とを係合させることにより可動外周入れ子12を固定型20に押圧させるようにし、導光板150の取り出し時に係合を解除させる構成とすることもできる。
【0013】
溶融樹脂の射出が完了したら、射出成形機の型締め力により図3に示すように可動入れ子11を型閉じ状態にし、更に製品部45に充填された溶融樹脂を圧縮して図5に示す厚みが一端部から他端部に向けて漸減するくさび形状の導光板150が製造される。本金型50により製造された導光板150は、上記のようにバリ等の発生がないばかりか、また射出圧縮成形により製造されるため、ヒケを回避するために保圧時間や冷却時間を長くする必要がないので、成形時間の短縮化を図ることができ、更に一定の応力により成形されるので輝度ムラを少なくすることができる。
【0014】
以上、本発明の導光板の製造方法に用いる射出圧縮成形用金型について説明したが、この射出圧縮成形用金型は、種々形態を変更して具体化することができる。
(1)可動入れ子や可動外周入れ子は上記形態に限定されるものではなく、目的とする導光板の形態に応じて種々変更できる。
(2)本発明の導光板の射出圧縮成形用金型には、金型分野で通常講じられる種々の突出し機構、ランナー機構、温調機構等を適宜設けることができる。
(3)圧力源は、可動外周入れ子を型閉じ方向に押圧できれば特に限定されるものではなく、油圧以外に空気圧、スプリングの付勢力、サーボモータなどを用いることができる。
(4)圧力源は、可動取付板に内設される場合に限定されるものではなく、可動外周入れ子や射出成形機の可動プラテンなどに設けてもよい。
(5)可動外周入れ子は、複数のブロックに分けて製造し、金型の組立時に各ブロックを組み立てる構成にしてもよい。このように構成することにより可動外周入れ子を効率的に製造できる。
(6)可動外周入れ子の固定型への押圧は、少なくとも射出時と圧縮時に行えばよいが、常時押圧する構成としてもよい。
(7)製品部の外周面と可動入れ子の外周面とを面一に構成する必要はなく、製品部の内径を可動入れ子の内径よりも大きくなる構成としてもよい。このように構成することにより、可動外周入れ子に成形品押し出し機能を付加することができる。
【0015】
【発明の効果】
本発明は、上記で詳述したように構成されるので、以下の効果を奏する。本発明の導光板の製造方法によれば、バリ等の発生のない均一な導光板を成形時間を短縮して製造でき、不良な導光板の発生を抑制しながら導光板の効率的な製造ができると共に、輝度ムラの少ない高品質な導光板を製造できる。また、かじりなどにより金型を痛めることなく導光板を製造できる。更に、小型化された金型を用いることができ、省スペース化して導光板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態における導光板の製造方法に用いる射出成形用金型の型閉じ状態を示す概略切断縦断面図である。
【図2】本実施形態における導光板の製造方法に用いる射出成形用金型の射出時の状態を示す概略切断縦断面図である。
【図3】本実施形態における導光板の製造方法に用いる射出成形用金型の圧縮時の状態を示す概略切断縦断面図である。
【図4】本実施形態における導光板の製造方法に用いる射出圧縮成形用金型を示す概略切断横断面図である。
【図5】本実施形態における導光板の製造方法に用いる射出圧縮成形用金型を用いて製造された導光板を示す斜視図である。
【図6】従来例の金型を示す模式的切断縦断面図である。
【図7】従来例の金型を示す模式的切断縦断面図である。
【図8】従来例の金型を示す模式的切断縦断面図である。
【符号の説明】
10、60 可動型
11 可動入れ子
12 可動外周入れ子
13 可動側取付板
20、70 固定型
21 固定側取付板
30、80 油圧装置(圧力源)
31 油圧装置のプランジャー
40、90 合わせ面
45、95 製品部
91 嵌め合い部
50、100 導光板の射出圧縮成形金型
150 導光板
Claims (1)
- 可動型は、縦断面視においてくさび形状をなす製品部を固定型との間に形成する可動入れ子と、該可動入れ子の外周を摺動可能に囲繞する可動外周入れ子と、射出圧縮成形用金型の可動側又は射出成形機の可動側に設けられ、前記可動外周入れ子の型開き方向側の端部を型閉じ方向に押圧する圧力源とからなり、固定型と可動型との間にできる製品部に溶融樹脂を射出後、圧縮して成形する厚みが一端部から他端部に向けて漸減するくさび形状の導光板の射出圧縮成形用金型を用い、前記圧力源を作動させて前記可動外周入れ子と前記固定型の合わせ面を少なくとも射出時と圧縮時に密着状態に維持させて成形することを特徴とする厚みが一端部から他端部に向けて漸減するくさび形状の導光板の製造方法。
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