JP3577878B2 - プレス部品の製造方法および時計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプレス部品の製造方法に係り、特に、時計用番車、カレンダ修正車、小鉄車等の微少な歯車を製造する場合に好適な製造技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、腕時計用の微少な番車の歯車部は、薄い金属板をプレス抜きによって円盤状に加工し、この円盤の外縁部に切削加工によって歯割りを施し、さらに、その中心部にプレス抜きにより軸孔を形成することにより製造されるのが通常である。一方、番車よりもさらに小さい腕時計用のカレンダ修正車、小鉄車等は、通常、歯割装置付自動旋盤等を用い、切削加工によって、荒加工、歯割り、仕上げ加工等を順次行うことにより軸部やカナとともに一体に成形される。
【0003】
図6には、腕時計用のカレンダ修正車の概略図を示す。このカレンダ修正車10は上記の歯割装置付自動旋盤によって荒加工、歯割り、仕上げ加工を経て一体に形成されたものである。その製造においては、まず、歯車部11よりも多少大径の軸材からカレンダ修正車10の概略形状を切削加工によって削り出し、次に、歯割装置によって歯11aの歯の部分を先に形成する。最後に、歯車部11の外形を切削によって正確に形成するとともに、軸部12を削り出す。このカレンダ修正車は、歯車部11の外径が2.4mm程度、軸部12の径が0.7mm程度のものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の歯車の製造方法では、相互に異なる種類の加工方法により行われる複数の工程を含んでいるために、工程間の段取り作業や加工機械の調整作業が困難であったり、高度な複合加工を行うことのできる高価な加工機械を用いる必要があるために、製造コストの低減が難しいという問題点がある。
【0005】
一方、製造コストを低減するための方法として、プレスの順送り加工があり、この加工方法は、比較的大きい歯車や、安価な時計用の歯車を製造する場合に使用されている。しかしながら、このプレス加工による方法では、歯をプレス加工によって形成することから、プレス時に歯の変形(歯先ダレ)が発生するとともに、プレス加工によって歯先に剪断面とともに形成される破断面の存在によって、歯の加工精度が悪くなるという問題点がある。したがって、上記のような複数種類の加工工程を持つ製造方法に較べて、歯車間の食い付きが発生したり、歯車のあがき等の原因によって歯車間の噛み合いが外れたり、歯先の加工精度や形状が悪いことによって歯の摩耗が早くなるために耐久性に劣るなどの問題があり、プレス加工により製造した歯車は高級時計には使用できないのが現状である。
【0006】
なお、プレス加工によって高精度に部品を加工する技術としてファインブランキングがあるが、この方法では歯端面を剪断面として形成することはできるが、歯先ダレを防止することはできず、また、この方法を小型の部品に適用すると金型強度が不足し、金型寿命が極端に低下する等の問題点がある。
【0007】
また、同様の目的を果たすことの可能な技術としてシェービング加工があるが、このシェービング加工は、部品を一旦荒成形してからその外表面を薄く削り落とすものであり、歯車の場合、荒成形時に一旦母材から抜き落とし、その後別の金型の加工位置にセットしなければならないため、母材(金属板)に付着させた状態で順次加工を行う順送り加工は実施不可能であるという問題点がある。
【0008】
さらに、対向ダイス剪断法によれば、歯先ダレを防止し、歯端面を剪断面とすることができるが、小部品に適用すると型強度が不足し、金型の寿命が低下するという問題点がある。
【0009】
そこで本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、プレスの順送り加工を用いることによって製造コストを低減するとともに、歯車の歯などの微細な構造を備えた部品に対しても高精度の加工が可能な新規のプレス部品の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は、
1)金属テープ30に、絞り加工を行うことにより、歯車部に相当する平面視円形状の成形部31を周囲部32から伏椀状に盛り上げて形成し、
次に、前記金属テープを次のプレス位置に配置した後、
平底型のパンチ41aとリング状の傾斜面を備えたダイ41bとによって、前記金属テープ30を挟み込んで前記成形部31の外縁部下面に傾斜面31aを形成する
第1プレス工程と、
2)さらに、前記金属テープ30を次のプレス位置に配置した後、
歯車型の断面形状を備えたパンチ42aと歯車を抜いた断面形状を備えたダイ42bとによって前記成形部31を挟み込んで、
新たに形成された成形部31´と周囲部32との間に、段差面31b´を形成しながら、
前記新たに形成された成形部31´の歯先に相当する部分では、前記成形部31´と周囲部32との連結部に、前記段差面31b´から延長するように伸びた破断面33を形成し、
かつ、前記成形部31´の歯底に相当する部分に対向する前記ダイ42bの内縁角部には面取部または曲面部が設けられることによって、前記成形部31´の歯底に相当する部分には破断面が形成されず、前記成形部31´と周囲部32とが薄い連結部によって連結された状態に形成する
第2プレス工程と、
3)再び前記金属テープ30を次のプレス位置に配置した後、歯車型の断面形状を備えたパンチ43aと歯車を抜いた形状の断面形状を備えたダイ43bとにより前記成形部31´を挟みこみながら抜き落とすことによって、歯車部を成形する第3プレス工程とからなる
ことを特徴とする。
【0011】
この手段によれば、歯車部の歯先に相当する部分は精度よく成形する必要があり、また、歯底に相当する部分はそれ程精度が要求されないため、歯先に相当する外縁部には破断面を形成し、歯底に相当する外縁部には破断面が形成されないようにすると、歯先の形状精度をより向上させることができる。そして、傾斜面を形成することによって、プレス型によってプレスカットを行った際に発生する外縁部の面ダレを抑制若しくは解消することができるため、プレス部品の外縁部の形状精度を向上させることができる。そして、基材に他側を向く段差面を備えた段差を形成した後に、この段差面に沿ってプレスカットを行うことにより、段差面がシェービングと同様の状態で加工されるとともに、段差を形成する工程及びプレスカットを行う工程の双方においてプレス時の加工応力を低減することができるため、カット面における剪断面積を増加させ、破断面積を低減させることができるとともに、カット面に近い表面若しくは裏面の面ダレを抑制することができるから、カット面の一側に形成されるプレス部品の外縁部の加工精度をさらに高めることができる。さらに、この手段によれば、プレス型の少なくとも一方について、周縁角部を部分的に面取状若しくは曲面状に形成することにより、面取状若しくは曲面状に形成された周縁角部が当接する部分では破断面が形成されない。このため、段差を挟んで破断面が形成される周縁部と形成されない周縁部とが発生することとなり、段差を形成した後に、破断面が形成されない周縁部によって段差を挟んだ両側の部分が互いに連結されているため、両者が相対的に位置ズレを起こしたり、落下したりすることを防止できるため、この状態でプレスカットを行うことによって破断面が形成された周縁部の加工精度をさらに向上させることができる。
【0012】
また、本発明では、段差を形成する第2プレス工程を複数工程とし、この第2プレス工程のうちの前工程において形成された段差面よりも内側に、後工程において新たに段差面が形成されるようにすることが好ましい。この場合には、前工程の際に発生した面ダレが大きく形成されても、その際の加工形状線を最終的な成形部の外縁から大きく離れるように設定できるため、成形部の外縁形状には、上記の面ダレの部分が残らないように設定でき、外縁形状に対する面ダレの影響を低減することができる。
【0024】
そして、上記プレス部品の製造方法により製造された歯車は、時計に用いることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1乃至図4は、本発明に係るプレス部品の製造方法の第1実施形態を示す工程拡大断面図及びプレス部品の拡大平面図である。この実施形態は、腕時計の4番車の歯車部を製造するものであるが、歯車に限らず、種々のプレス部品に対しても適用できるものである。
【0027】
本実施形態はプレスの順送り加工によって、歯車を連続して形成する場合の加工方法であり、プレス加工用のスズ入り黄銅、リン青銅、ベリリウム銅等の種々の金属で構成される金属テープ30を基材として用いる。この金属テープ30は、プレス装置の所定経路に沿って移動するようにセットされ、この経路上に複数のプレス工程に対応する金型が配置され、複数のプレス工程に対応する複数のプレス位置が予め設定されている。
【0028】
これらのうちの最初のプレス位置では、図1(a)に示すように、絞り加工を行うことにより、歯車部に相当する平面視円形状の成形部31を周囲部32から伏椀状に盛り上げて形成する。次に、金属テープ30を上記経路に沿って送り、次のプレス位置に配置した後、図1(b)に示すように、平底型のパンチ41aと、リング状の傾斜面を備えたダイ41bとによって挟み込む。このことによって、成形部31の外縁部下面には、傾斜面31aが形成される。これらの図1(a)及び(b)に示すプレス加工を行う工程を第1プレス工程という。
【0029】
次に、金属テープ30を再び経路に沿って送り、次のプレス位置に配置する。ここでは、歯車型の断面形状を備えたパンチ42aと歯車を抜いた断面形状を備えたダイ42bとによって成形部31を挟み込み、図2(a)及び図3(a)に示すように、新たに形成された成形部31’と周囲部32との間に、段差面31b’を有する段差を形成する。ここで、段差面31b’は図4に示す加工形状線Iに沿って形成される。図2(a)に示す断面は、成形部31’における歯先に相当する部分の断面であり、図3(a)に示す断面は、形成部31’における歯底に相当する部分の断面である。
【0030】
図2(a)に示すように、成形部31’の歯先に相当する部分では、成形部31’と周囲部32との連結部に、パンチ42aとダイ42bとによって形成された段差面31b’から延長するように伸びた破断面33が形成されている。この破断面33は、パンチ42aとダイ42bとによって成形部31’に段差面31b’が形成される際に同時に形成されるものである。
【0031】
一方、図3(a)に示すように、ダイ42bにおける成形部31’の歯底に相当する部分に対向する内縁角部には、面取部42b−1が形成されている。この面取部42b−1の平面形状は図4に示されている。この面取部42b−1によって、成形部31’の歯底に相当する部分には破断面が形成されず、成形部31’と周囲部32とが薄い連結部によって連結された状態となっている。以上のように成形部31’を形成する工程を第2プレス工程という。
【0032】
この第2プレス工程では、パンチ42aとダイ42bとによって行われるプレス加工により、成形部31の外縁部下面に形成された傾斜面31aがやや上方に変形し、傾斜角が低減された傾斜面31a’が成形部31’の外縁部下面に残るようになっている。
【0033】
さらに、上記第2プレス工程が終了すると、再び金属テープ30を経路に沿って送り、次のプレス位置に配置する。このプレス位置においては、歯車型の断面形状を備えたパンチ43aと、歯車を抜いた形状の断面形状を備えたダイ43bとによって、成形部31’を挟み込み、成形部31”が抜き落とされる。この成形部31”は、腕時計の4番車の歯車部を構成し、円盤状の板状体の外縁部に歯が形成されたものである。この工程は、歯車部を成形する最終工程であり、以下、第3プレス工程という。
【0034】
この場合、成形部31”の外縁部に形成された歯の歯先部分では、図2(b)に示すように、成形部31’に形成されていた段差面31b’が薄く削られ、破片部34が形成される。この破片部34は、上記破断面33によって周囲部32とは分割されているため、変形してダイ43bと周囲部32との間に設けられた間隙部に収容される。
【0035】
一方、成形部31”の外縁部に形成された歯の歯底部分では、図3(b)に示すように、前工程にて形成された段差面31b’よりも内側においてプレスカットされる。このとき、プレスカットされた外側の部分は、周囲部32に連結されたままの状態となる。
【0036】
この第3プレス工程におけるプレスカットによるカット面の平面形状は、図4に加工形状線IIとして描かれている。歯車部の歯形状は、この加工形状線IIで示される輪郭を備え、図2(b)及び図3(b)に示される歯端面31b”を備えている。
【0037】
ここで、図4に示すように、歯端面31b”のうちの歯先部分31b”−1においては、前工程にて破断面33が形成されていることによって、図2に示すように通常のシェービング加工とほとんど同様の状態で加工されるために剪断長さが長くなり、歯端面31b”の面形状を高精度に仕上げることができる。
【0038】
一方、歯端面31b”のうちの歯底部分31b”−2においては、前工程にて破断面が形成されていないことによって、前工程にて成形部31’に形成された段差面31b’の深さに対応する部分がシェービング加工と類似した状態で加工されるとともに、成形部31’と周囲部32とが連結された部分はそのまま連続してプレスカットが行われる。
【0039】
第3プレス工程によって抜き落とされた成形部31”の外縁部下面31a”には、僅かな面ダレが発生することもあるが、第1プレス工程において成形部31の外縁部下面に傾斜面31aが形成され、第2プレス工程においても、傾斜面31aに起因して残った傾斜面31a’が存在しているため、第3プレス工程において抜き落とされた成形部31”の外縁部下面31a”の面ダレが抑制されている。
【0040】
第1プレス工程における傾斜面31aの範囲及び傾斜角度は、最終的に形成される成形部31”の外縁部下面31a”の形状に応じて適宜設定することができる。また、第2プレス工程と第3プレス工程との間に、すなわち、最終的に成形部31”を抜き落とす直前に、成形部31’の外縁部下面の傾斜面31a’を再成形するための、傾斜面31a’に対応した形状のプレス面を有するダイと、加工形状線Iに一致する外縁を備えたパンチとによってプレスを行う工程を導入することが好ましい。この場合には、第2プレス工程の後に再度傾斜面31a’を成形し直すことができるので、最終的に形成された成形部31”の外縁部下面の面ダレの発生を抑制することができるため、特に、歯車部の歯先ダレを低減することができる。
【0041】
上記の第2プレス工程における破断面33の形成は、本発明においては当然のことながら、本実施形態においても必ずしも必要なものではないし、逆に、本実施形態とは異なり、成形部31’の歯先に相当する外縁部だけではなく、外縁部全周に形成されていてもよい。しかしながら、本実施形態のように、成形部31’と周囲部32とが完全に分割されない程度に、金属テープ30の平面方向若しくは厚さ方向に部分的に形成することによって、成形部31’と周囲部32とが破断面の形成されていない場所において連結されているため、第2プレス工程の後において、成形部31’が周囲部32に対して位置ズレを起こしたり、成形部31’が落下してしまったりすることが防止され、第3プレス工程における抜き落とし加工をより高精度に行うことができる。
【0042】
特に歯車部の歯先に相当する部分は精度よく成形する必要があり、また、歯底に相当する部分はそれ程精度が要求されないため、本実施形態のように、歯先に相当する外縁部には破断面を形成し、歯底に相当する外縁部には破断面が形成されないようにすると、歯先の形状精度をより向上させることができる。
【0043】
なお、本発明の効果を高めるには成形部31’の厚さに対して段差面31a’がなるべく上下方向に深くなるように形成する必要があり、段差面31a’をある程度以上深く形成すると必然的に破断面33が形成される。また、破断面33が形成された場合には、第3プレス加工が容易になるとともに、本実施形態の効果もより高くなる。
【0044】
なお、上記第2プレス工程においては、段差面31a’を形成するだけであり、プレスカットを行うことはないので、パンチの外縁とダイの内縁とを、上記のように加工形状線Iに沿うように平面的に一致させることなく、パンチの外縁とダイの内縁のうちのいずれか一方を他方に対して内側、外側のどちら側にずらしてもよい。特に、パンチ42aの外縁をダイ42bの内縁よりも外側(周囲部32の側)にずらすことによって、破断面33が傾斜面として形成されると、破断面33によって周囲部32に対して成形部31’が確実に接触保持されるため、成形部31’が下方にズレ難くなるという利点がある。
【0045】
本実施形態においては、まず、成形部の外縁の抜き落とし側の下面に、予め外周方向に従って高くなり、同時に板厚も厚くなるような傾斜面31aを形成してあるため、最終的に形成された成形部31”の外縁部の面ダレを抑制することが可能となっている。
【0046】
また、従来のように一度のプレス加工で歯車を抜き落とすのではなく、予め成形品側に段差面31b’を形成してから、この段差面31b’の形成された外縁部を薄く引き剥がすようにシェービングと類似の加工を施して歯を成形するので、歯車の歯形状の成形精度を高めることができる。つまり、歯端面は、シェービング加工と同様の加工を受けるため、歯端面にはほとんど剪断面のみが形成され、若しくは、歯端面に破断面が形成されてもその面積乃至は比率を従来よりも少なくすることができる。したがって、歯端面の面精度を向上させることができ、その結果、歯形状の精度を向上させることができるので、歯車の噛み合わせの引っ掛かりや外れを防止することができる。
【0047】
さらに、最終的に歯車部をプレスカットにより抜き落とす工程(本実施形態では第3プレス工程)の前の工程(本実施形態では第2プレス工程)にて予め段差面31b’を形成することによって、各プレス工程において受けるプレス方向の応力を少なくすることができるので、各プレス工程において多少なりとも発生する外縁部の面ダレをそれぞれ小さくすることができ、最終的に成形された歯車の歯先ダレ(外縁部下面31b”)を実質的になくすことができる。この効果は上記傾斜面31aの形成と組み合わされて成形品外縁部の面ダレを抑制するため、傾斜面による作用と段差形成による作用との両者を勘案して最も歯先の面ダレが少なくなるように各プレス工程が設計される。
【0048】
上記効果は、最終的に歯車部を抜き落とす前の第2プレス工程において、段差面31a’と連続した破断面33を形成することによってより高められる。すなわち、段差面31a’と破断面33とによって成形部31’が周囲部32や破片部34aから完全に分割されているので、最終工程においてシェービング加工と実質的に同じ状態で加工を行うことができるため、歯車部の歯形状の精度をさらに向上させることが可能となっている。
【0049】
なお、本実施形態では、第1プレス工程と第3プレス工程との間に、単一の第2プレス工程を設けているが、段差を形成する第2プレス工程を複数工程とし、この第2プレス工程のうちの前工程において形成された段差面よりも内側(成形部側)に後工程において新たに段差面が形成されるようにすることによって、段差を形成することによって得られる効果をさらに高めることができる。また、この場合には、前工程の際に発生した面ダレが大きく形成されても、その際の加工形状線を最終的な成形部31”の外縁から大きく離れるように設定できるため、成形部31”の外縁形状には、上記の面ダレの部分が残らないように設定でき、外縁形状に対する面ダレの影響を低減することができる。
【0050】
また、第2プレス工程を複数設けることにより、最終工程の直前の第2プレス工程において、成形部31’の外周側に対向配置される周縁部32との重なり部分の厚さが少なくなり、より通常のシェービング加工に近い条件で加工することができる。ここで、成形部31’と周縁部32との重なり部分の厚さは、成形部31’の上面位置と、周囲部32の下面位置とによって決定されるから、成形部31の上面位置が周囲部32の下面位置よりも下方に来る形状に金属テープ30をプレス加工することにより、成形部31’と周囲部32との厚さ方向の重なりが全くなくなり、さらに成形精度を向上させることができる。
【0051】
さらに、第2プレス工程を複数設けると、後工程において成形部31’が破断面33を介して接触している相手は、変形しにくい周囲部32ではなく、前工程において先に形成された、周囲部32に対して分離されている破片部となる。したがって、第3プレス工程においては、通常のシェービング加工とは異なり、成形部31’の外周面が完全に露出してはいないものの、形成部31’の外周面の上部を覆う破片部34を容易に変形させることができるとともに、この変形し易い破片部34を周囲部32とパンチ32a又はダイ42bとの間に設けられた間隙に逃がすことができるので、さらに通常のシェービング加工と同様の状況で加工を行うことができ、加工精度をより高めることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、図4に示すように、上記面取部42b−1をダイ42bにおける成形部31’の歯底に対向する内縁角部にのみ設けている。これは、破断面の形成されない部位は、成形部31’と周囲部32との対向部分の全部でなくとも一部であればよく(一部がつながっていれば成形部の位置ずれや脱落は起こらない。)、しかも、ダイ42bの歯底に相当する内縁角部は内側に突出しているため、ダイの加工(切削加工等)が容易となるからである。逆に、パンチ42aに面取部を形成する場合には、パンチの加工を容易にするために、成形部31’の歯先に相当する外縁角部にのみ設けることが好ましい。
【0053】
上記面取部はパンチとダイのいずれか少なくとも一方に形成されていれば上記と同様の効果を得ることができる。パンチの外縁角部又はダイの内縁角部には、面取部ではなく、角部を曲面状に形成した曲面部を設けてもよい。
【0054】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。この実施形態は腕時計のカレンダ修正車を形成する場合を示すものであり、基本的な加工手順は、上記第1実施形態と同様の第1プレス工程、第2プレス工程及び第3プレス工程によって実行され、歯車の歯部分の加工は、第1実施形態と全く同様にして行われる。
【0055】
本実施形態が第1実施形態と異なるのは、プレスの順送り加工によって、図6に示すカレンダ修正車10の軸部12をも含めた全体を一体に成形してしまうように設計されている点にある。図5(a)に示すように、プレスの順送り加工によって、第1実施形態と同様の金属テープの中央部に、軸部12が既に形成されている(第1プレス工程、実際には複数のプレス工程にて成形される。)。この工程では、同時に、歯車部11の外周部に相当する下面部に傾斜面11aが形成され、歯車部11の下面から外側に向かうに従って下面が高くなり、同時に板厚も厚くなっている。
【0056】
次に、この歯車部11については、パンチ51aとダイ51bとによって図5(b)に示す第2プレス工程で段差面11b’を有する歯車部11’が形成され、歯車部11’の歯先に対応する部分では破断面14を介して周囲部13と分離される。歯車部11’の歯底に対応する部分では、第1実施形態と同様に、図中点線で示すようにダイ51bの内縁角部に面取部51b−1が形成されており、このために破断面が形成されない。
【0057】
この第2プレス工程においては、上記傾斜面11aの最も高くなっている場所に段差面11b’の歯先に相当する外縁部が形成されるように設定されている。したがって、ダイ51bによって段差面11b’が形成される際に、歯車部11’の外縁部下面11a’には、僅かな傾斜角で傾斜面11a’が残るようになっている。
【0058】
最後に、第3プレス工程においては、パンチ52aとダイ52bとによって、上記段差面11b’よりも内側においてプレスカットが行われ、歯車部11”が一体に形成された軸部12とともに抜き落とされる。このように形成された歯車部11”と軸部12は、図6に示すカレンダ修正車となる。
【0059】
この実施形態においても、上記の第1実施形態と同様に歯先の面ダレの発生を防止することができるとともに、歯端面の剪断長さを長く形成することができるために、歯先形状を高精度に成形することができる。
【0060】
なお、上記各実施形態では、成形部と周囲部との間の一部に破断面を形成し、残りは成形部と周囲部とを連結した状態にしているが、成形部と周囲部との間を全周にわたって破断させるようにしてもよい。この場合には、破断面の形成によって成形部が落下しないように、破断面を介して成形部が周囲部に接触保持されるように半抜状態にする必要がある。ただし、この場合、成形部が周囲部に対して位置ズレを起こす可能性がある。
【0061】
逆に、成形部と周囲部との間を全周にわたって破断しないように、或いは、基材の厚さ方向の一部のみに破断面が形成されるようにしてもよい。ただし、成形部の段差面を深く形成し、成形部と周囲部32との連結部の厚さを薄く形成すると、これらの連結部に自然に破断面が形成されることから、破断面が形成されないようにすると、段差面を深くしたり、連結部の厚さを薄くすることができず、歯端面の形状を充分に高精度に成形することができなくなるという欠点がある。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば以下の効果を奏する。
【0063】
本発明によれば、歯車部の歯先に相当する部分は精度よく成形する必要があり、また、歯底に相当する部分はそれ程精度が要求されないため、歯先に相当する外縁部には破断面を形成し、歯底に相当する外縁部には破断面が形成されないようにすると、歯先の形状精度をより向上させることができる。そして、傾斜面を形成することによって、プレス型によってプレスカットを行った際に発生する外縁部の面ダレを抑制若しくは解消することができるため、プレス部品の外縁部の形状精度を向上させることができる。そして、基材に他側を向く段差面を備えた段差を形成した後に、この段差面に沿ってプレスカットを行うことにより、段差面がシェービングと同様の状態で加工されるとともに、段差を形成する工程及びプレスカットを行う工程の双方においてプレス時の加工応力を低減することができるため、カット面における剪断面積を増加させ、破断面積を低減させることができるとともに、カット面に近い表面若しくは裏面の面ダレを抑制することができるから、カット面の一側に形成されるプレス部品の外縁部の加工精度をさらに高めることができる。さらに、この手段によれば、プレス型の少なくとも一方について、周縁角部を部分的に面取状若しくは曲面状に形成することにより、面取状若しくは曲面状に形成された周縁角部が当接する部分では破断面が形成されない。このため、段差を挟んで破断面が形成される周縁部と形成されない周縁部とが発生することとなり、段差を形成した後に、破断面が形成されない周縁部によって段差を挟んだ両側の部分が互いに連結されているため、両者が相対的に位置ズレを起こしたり、落下したりすることを防止できるため、この状態でプレスカットを行うことによって破断面が形成された周縁部の加工精度をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプレス部品の製造方法の第1実施形態の第1プレス工程を示す工程拡大断面図(a)及び(b)である。
【図2】第1実施形態における成形部の歯先に対応する部分の第2プレス工程及び第3プレス工程を示す工程拡大断面図(a)及び(b)である。
【図3】第1実施形態における成形部の歯底に対応する部分の第2プレス工程及び第3プレス工程を示す工程拡大断面図(a)及び(b)である。
【図4】第1実施形態における加工位置の平面形状を示す拡大平面図である。
【図5】本発明に係るプレス部品の製造方法の第2実施形態を示す工程拡大断面図(a)、(b)及び(c)である。
【図6】腕時計用のカレンダ修正車の形状を示す正面図である。
【符号の説明】
10 カレンダ修正車
11,11’,11” 歯車部
11a,11a’,11a” 外縁部下面
11b’ 段差面
12 軸部
30 金属テープ
31,31’,31” 成形部
31a,31a’段差面
32 周囲部
33 破断面
41a,42a,43a パンチ
41b,42b,43b ダイ
42b−1 面取部

Claims (3)

1 )金属テープ30に、絞り加工を行うことにより、歯車部に相当する平面視円形状の成形部31を周囲部32から伏椀状に盛り上げて形成し、
次に、前記金属テープを次のプレス位置に配置した後、
平底型のパンチ41 a とリング状の傾斜面を備えたダイ41bとによって、前記金属テープ30を挟み込んで前記成形部31の外縁部下面に傾斜面31 a を形成する
第1プレス工程と、
2 )さらに、前記金属テープ30を次のプレス位置に配置した後、
歯車型の断面形状を備えたパンチ42 a と歯車を抜いた断面形状を備えたダイ42bとによって前記成形部31を挟み込んで、
新たに形成された成形部31´と周囲部32との間に、段差面31b´を形成しながら、
前記新たに形成された成形部31´の歯先に相当する部分では、前記成形部31´と周囲部32との連結部に、前記段差面31b´から延長するように伸びた破断面33を形成し、
かつ、前記成形部31´の歯底に相当する部分に対向する前記ダイ42bの内縁角部には面取部または曲面部が設けられることによって、前記成形部31´の歯底に相当する部分には破断面が形成されず、前記成形部31´と周囲部32とが薄い連結部によって連結された状態に形成する
第2プレス工程と、
3 )再び前記金属テープ30を次のプレス位置に配置した後、歯車型の断面形状を備えたパンチ43 a と歯車を抜いた形状の断面形状を備えたダイ43bとにより前記成形部31´を挟みこみながら抜き落とすことによって、歯車部を成形する第3プレス工程とからなる
ことを特徴とするプレス部品の製造方法。
請求項1において、段差を形成する第2プレス工程を複数工程とし、この第2プレス工程のうちの前工程において形成された段差面よりも内側に、後工程において新たに段差面が形成されるようにする
ことを特徴とするプレス部品の製造方法。
請求項1または2に記載のプレス部品の製造方法により製造された歯車を用いたことを特徴とする時計
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