JP5860223B2 - 難加工形状を具えた厚肉金属部品の製造方法 - Google Patents
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Description
このため、このような細ピッチ歯型を有する部品については、従来はレーザ加工やワイヤカット、切削加工、バニシング加工の併用等、の一般の機械プレス加工に比べては、生産効率を上げることが難しい手法で製造されていた(特許文献1)。
しかしながら、この種の金属部品等の供給に際してはコスト低減の要求が常になされており、このような要求に応えるためには、従来手法の範囲で効率化を求めたとしても限界があった。
まず本発明に係る製造方法の適用対象物である厚肉金属部品1について説明する。このものは、いわゆる難加工形状を具えるものであり、微細な凹凸例えば歯車形状の歯型、ラチェット爪形状の歯型等が全体またはその一部に成形されたものである。
まず図1に示す厚肉金属部品1は、一例として例えば卓上照明器具Aの支持杆部の角度調整部品要素として提供されるようなものが想定される。この厚肉金属部品1は、一例として、円環状の本体に対し、その外周部の一部に歯型11を具える。当然歯型11は、全体として連続した凹凸形状であり、突起部を歯型11とするとその間に相対的に凹陥した部位として、歯溝12が形成される。なおこの本体10は、円環状であり、その内部内側を内孔13とする。また本体10は、その外周の一部に例えばストッパー作用等を奏する外周凸部14を具える。
この図示した厚肉金属部品1の一例は、本体10の肉厚寸法tを基準とすると、歯型ピッチ寸法pは、1/3〜1/6程度であり、例えばこの比を1/4とし、t=6mmとした場合、歯型ピッチ寸法pは、1.5mm程度のピッチとなる。
また歯高寸法hと、歯型ピッチ寸法pとの比は1/3〜1/1程度の比であり、前記数値の場合、歯高寸法hには概ね0.7mmから1.5mm程度になるものである。
このように本発明により製造される厚肉金属部品1は、その歯型11と歯溝12との形状が肉厚寸法tに対し、比較して微細形状であり、これを正確に一般の機械プレス装置で製造することは難しく、本明細書において、このような形状を難加工形状と定義する。なおこのような難加工形状は、本体10に対して、全周に亘って形成されてもよいし部分的に形成されてもよい。
この厚肉金属部品1の製造方法における加工の概略は、
(1)粗型ブランク抜きプレス工程と、
(2)粗型歯型成形プレス工程と、
(3)中間仕上げプレス工程と、
(4)製品仕上げプレス工程と
の大別して4工程を経るものであり、更にこれらの加工を処理するために各工程に複数の処理が行われる場合もある。以下各工程について説明する。
まず粗型ブランク抜きプレス工程は、二段階の処理が行われるものであり、第一段階の処理として、図3に示すように(1−i )出発素材抜き処理が行われ、次いで第二段階の処理として図4に示すように(1−ii)粗型ブランクトリミング処理が行われる。
出発素材Sとして想定されるものは、6mm厚程度の鋼板であって、この出発素材Sを金型2におけるポンチ20とダイス21とにより打ち抜きプレスを行い、打ち抜き原ブランクWを得る。
この処理にあたっては、図3に示すように出発素材Sから打ち抜かれるのは、打ち抜き原ブランクWと、更に他の前記厚肉金属部品5を構成するための打ち抜き原ブランクW′である。この打ち抜き原ブランクW′は、打ち抜き原ブランクWの内側の出発素材Sを打ち抜くようにして得られるものである。要は、厚肉金属部品1の形状が円環状であり、打ち抜き原ブランクWの中心部は概ね素材マージンMとして排除されるものであるから、この部位を有効に利用して打ち抜き原ブランクW′を得るのである。
また以降の加工に関する説明、及び図面中の表示において、順次加工が進むにつれて、ブランク乃至はワークが形状を変えてゆく状態の理解を助けるために次のような参照符号を付した。
即ちまず打ち抜き原ブランクWの後に形状を変化させるワークを順に、トリミング原ブランクW0 、粗型歯型付ワークW1 、第一中間ワークW2 、第二中間ワークW3 、仕上げワークW4 とする。
そして、これらの加工にあたって、あるいは製品完成後形状を説明するにあたっての各種線形状を、
トリミング原ブランクW0 については、原ブランク線L0 と、
粗型歯型付ワークW1 については、粗型歯型線L1 と、
第一中間ワークW2 については、中間(一次)シェービング線L2 と、
第二中間ワークW3 については、中間(二次)シェービング線L3 と、
仕上げワークW4 (実質厚肉金属部品1)については、仕上げシェービング線L4 とする。
更に完成した仕上げ形状においては、歯頂部11Tを結ぶ線を歯頂線L11とし、歯溝底部12を結ぶ線を歯溝底線L12する。
また歯型については、
粗型歯型付ワークW1 に成形されたものを粗型歯型111とし、
第一中間ワークW2 成形されたものを中間歯型(一次)112とし、
第二中間ワークW3 成形されたものを中間歯型(二次)113とし、
仕上げワークW4 成形されたものを仕上げ歯型114とする。
この処理は、トリミング原ブランクW0 得るための処理であって、図4に示すように既に厚肉金属部品1の外周形状については、前処理で得られているため、専ら打ち抜き原ブランクWの内側を打ち抜き、この部位の材料をトリミングマージンM0 して排除するものである。これによって円環状のトリミング原ブランクW0 を得る。
もちろん、この粗型ブランク抜きプレス工程は、出発素材抜き処理、粗型ブランクトリミング処理ともに一般の機械プレスで行われるものである。
前工程で得られたトリミング原ブランクW0 からこの粗型歯型成形プレス工程で粗型歯型付ワークW1 得る。この工程は、図5に示すように粗型歯型付ワークW1 の成型形状に応じた加工形状を有するポンチ20とダイス21とを具えた一般の機械プレスにより行われる。この工程ではトリミング原ブランクW0 の外周を正確な寸法とするため、本体マージン10Mをしごき除けるように塑性変形させるとともに、内周部についてもしごき除けるような加工を行う。このしごき除けられた内孔マージン13M、本体マージン10Mともにこの工程では完全に打ち抜かず、それぞれ張り出したバリ状の形状を維持する。この工程と同時に緩やかな歯型状の粗型歯型111が成形される。この状態でのワークを区別して示すときは、粗型歯型付ワークW1 (a)とする。
この中間仕上げプレス工程は、一例として3段階の処理によって行われるものであって、(3−i)マージン素材除去処理と、(3−ii)中間(一次)シェービング処理と、(3−iii)中間二次シェービング処理とがすべて一般の機械プレスにより行われる。
まず(3−i)マージン素材除去処理は、図6に示すように機械プレスにおけるポンチ20とダイス21とにより、前記粗型歯型成形プレス工程で生じた本体マージン10M、内孔マージン13Mをトリミングするように打ち抜き、マージン取り除き済みの粗型歯型付ワークW1 (b)を得る。
中間(一次)シェービング処理では、前段の処理で得られたマージン取り除き済みの粗型歯型付ワークW1 (b)を加工処理対象として、図7に示すように特にその中間歯型(一次)112を得る。この中間歯型(一次)112は、図9(a)、(c)に示すように粗型歯型線L1 からその歯溝部に相当する部位を比較的大きな寸法のシェービングしろでシェービング排除する工程である。この排除された部位を、中間歯型マージン112Mとして示す。この処理によって、中間歯型(一次)112を具えた第一中間ワークW2 が得られる。
このようにして得られた第一中間ワークW2 は、更に中間(二次)シェービング処理によって加工され、第二中間ワークW3 となる。この処理も、主として歯溝部側のシェービングしろを大きく採ってをシェービングする加工であり、図9(a)、(d)に示すように歯頂部11Tの部位においては、殆んどシェービング処理がなされない。
なおこれによって、中間歯型マージン113Mが排除される。
このように中間仕上げプレス工程では、中間シェービング処理を一次、二次と行い、シェービング処理時における材料にかかるストレスを少なくし、歯頂部11Tにおいてこれらのシェービング処理に伴いがちな材料流動等が起こらないような処理がなされる。
このようにして得られた第二中間ワークW3 を加工対象として図8に示すように製品とするための仕上げプレス工程が行われる。
この工程も、前工程と同様機械プレスによるシェービング処理であり、図9(e)に示すようにこの仕上げにあたっては、歯頂部11Tを含み、ほぼ歯型全周に亘って適宜の厚さ寸法でシェービングを行う。
なおこのときのシェービングしろは、歯頂部11Tにおいて最大であり、歯溝底部、歯型側部においては、それより少ない寸法のシェービングしろでトリミング処理が行われる。これによって、仕上げワークW4 構成されるものであり、仕上げワークW4 は、実質的に本発明の厚肉金属部品1となるものである。
また既に述べた実施例の歯型11は、波状のラチェット歯様の形状を採るものであるが、他の形状も採り得る。図10(b)に示すものは、一般のインボリュート歯型11Bである。また図10(c)に示すものは、セレーション用の歯型11Cである。また図10(d)に示すものは、スプライン状の歯型11Dである。本発明は、このような精密歯型の何れも製造し得るものである。
10 本体
11 歯型
11B 歯型(インボリュート歯型)
11C 歯型(セレーション用の歯型歯型)
11D 歯型(スプライン状の歯型)
11T 歯頂部
12 歯溝
13 内孔
14 外周凸部
10M 本体マージン
112M 中間歯型マージン
113M 中間歯型マージン
114M 仕上げ歯型マージン
13M 内孔マージン
111 粗型歯型
112 中間歯型(一次)
113 中間歯型(二次)
114 仕上げ歯型
2 金型
20 ポンチ
21 ダイス
5 厚肉金属部品
50 本体
51 歯型
52 歯溝
53 軸孔
S 出発素材
W 打ち抜き原ブランク
W′ 打ち抜き原ブランク
W0 トリミング原ブランク
W1 粗型歯型付ワーク
W1 (a)粗型歯型付ワーク
W1 (b)粗型歯型付ワーク
W2 第一中間ワーク
W3 第二中間ワーク
W4 仕上げワーク
L0 原ブランク線
L1 粗型歯型線
L2 中間(一次)シェービング線
L3 中間(二次)シェービング線
L4 仕上げシェービング線
L11 歯頂線
L12 歯溝底線
p 歯型ピッチ寸法
t 肉厚寸法
h 歯高寸法
M 素材マージン
M0 トリミングマージン
A 卓上照明器具
Claims (3)
- 出発素材である平板状金属素材から、難加工形状を具えた厚肉金属部品を機械プレス加工により製造する方法であって、この厚肉金属部品は本体部側面に多数の細ピッチの歯型を具えるものであり、歯型ピッチ寸法Pは、本体部の肉厚dに対して最大1/3dの寸法であり、また歯高寸法と歯型ピッチ寸法との比は1/2〜1/1であり、
この厚肉金属部品を加工するにあたっては、粗型ブランク抜きプレス工程と、粗型歯型成形プレス工程と、中間仕上げプレス工程と、製品仕上げプレス工程と、を経るものであり、
前記粗型ブランク抜きプレス工程では、出発素材から粗型ブランクを打ち抜き、
続く前記粗型歯型成形プレス工程では、粗型ブランクにおける本体部のマージンをしごき除けるとともに、歯型が成形される部位には、粗型歯型となる凹凸条を現出させるように粗型ブランクにおけるマージンをしごき除けるものであり、
更に前記中間仕上げプレス工程では、しごき除けられたマージンを打ち抜き除去させる加工と、前記粗型歯型の中間シェービングにより中間歯型の形状を現出させる加工とを行うものであり、この中間シェービングは、複数回に亘って行われ、且つ中間シェービングは、歯溝側でシェービングしろを大きく採って行われるものであり、
更に前記製品仕上げプレス工程では、前記中間歯型の仕上げシェービングにより、仕上げ寸法を現出させる加工を行うものであり、この製品仕上げプレス工程における仕上げシェービングしろは、中間歯型の全範囲に亘って設けられ、且つ歯溝側を小さい寸法とすることによって、製品歯型を得ることを特徴とする難加工形状を具えた厚肉金属部品の製造方法。
- 前記出発素材の肉厚は、5mm〜12mmのものが適用されることを特徴とする請求項1記載の難加工形状を具えた厚肉金属部品の製造方法。
- 前記歯型と歯溝とは、他部材に形成された同形状の歯型と歯溝とに対して、噛み合い自在な形状であることを特徴とする請求項1または2記載の難加工形状を具えた厚肉金属部品の製造方法。
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