JP3577413B2 - 欠陥が少なく焼付き硬化性に優れた缶用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

欠陥が少なく焼付き硬化性に優れた缶用鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製缶加工時に欠陥発生が少なくかつ焼付硬化性に優れた缶用鋼板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、2ピース缶用鋼板は、転炉で溶製された未脱酸の溶鋼をAlで脱酸を行うAlキルド鋼で製造されている。このようなAl脱酸鋼では、脱酸時に添加したAlと溶鋼中の酸素が反応したり、脱酸後の鋼中に残留したAlがスラグや空気中等の酸素によって酸化してアルミナが生じる。このアルミナは硬質であるため圧延や加工等で破砕されずに鋼板に塊状で残存し、製缶時に割れや疵等の欠陥発生の原因となる。そこでこれらのアルミナに対して、▲1▼スラグ中や雰囲気中の酸素の制御による溶鋼中のAlの酸化によるアルミナの生成防止や、▲2▼溶鋼中へのガスやフラックスの吹き込みによる溶鋼中のアルミナの浮上促進による低減と、▲3▼溶鋼中へのCaの添加によってアルミナを圧延・加工時に破砕されやすいカルシウムアルミネートに形態制御する無害化が行われてきた。
【0003】
しかし、Alで脱酸を行っている限りはアルミナの生成は皆無にはできず、除去も不十分である。そして、Ca添加による方法もCaは高価であるとともに歩留まりが極めて悪いために合金コストが高くなる。また介在物にアルミナを含有するため冷却時に介在物中に固いアルミナが部分的に晶出し、圧延等によっても破砕されずに残存し欠陥が発生する。さらに、Caを添加して生成するカルシウムアルミネートは肥大化しやすく、このような介在物が浮上しきれず残留した場合には欠陥となる。これらの問題を解決するためにはAl以外の元素で脱酸することが考えられ、特公昭48−29005に見られるようにAlもSiも全く添加せずにTiのみで脱酸する方法があるが、この場合Tiのみによる脱酸のためにTi添加前の溶鋼中酸素は非常に高い値となり、この様な溶鋼にTiを添加すると粒径の大きなチタン酸化物が多量に生成して溶鋼中に残存し、これはアルミナと同様に固く破砕されにくいため欠陥となる。
【0004】
このため、特公平2−9646に見られるようにTi添加前にAlを添加して予備脱酸を行い、溶鋼酸素を低減した後にTiを添加する方法があるが、上記のごとき方法では溶鋼中の酸素が高い状態でAlを添加するために、多量のAlを添加する必要があり、その結果、多量のアルミナが生成してそのまま残留したり、アルミナを含有する複合介在物が生成して冷却時に介在物中の一部にアルミナが晶出し、この部分が圧延等によっても破砕されずに残存し欠陥が発生する。また、Alは脱酸力が強いので酸素のコントロールが不安定である。さらに、Tiを添加した際にTiと溶鋼中の酸素との反応によって生成したチタン酸化物の一部は複合介在物となるが、この複合酸化物はアルミナを含むために冷却時に介在物中に晶出するアルミナが破砕されずに残存し欠陥が発生する。一方、生成したチタン酸化物の大部分は粒径が大きくかつ、破砕されにくいチタン酸化物となって溶鋼中に存在し、その一部は浮上しきれずに残留して欠陥となる等の課題がある。このように通常の製造方法では、粒径が大きくかつ、硬質の介在物が含まれるのが一般的であり、この介在物は製缶時に亀裂の起点となるため、この種の介在物が多量に含まれると、破胴、ピンホール等の欠陥が多発するという問題を有していた。
【0005】
上記の鋼板中の介在物に起因した製缶時の欠陥の防止を実現するために、本発明者らは、鋼中の介在物を微細でかつ、部分的に固い晶出相がなく介在物全体が変形・破砕しやすい組成の介在物にコントロールした欠陥の少ない缶用鋼板およびその製造方法を先に提案(特開平9−184044号公報)した。
ところがこの技術による場合、溶鋼中の酸素の残留等や鋼板成分の規定のための適正な操業範囲は狭く、操業範囲の拡大(緩和)が求められていた。
【0006】
一方、2ピース缶は特開平5−117760号公報等に示されるように、めっき鋼板を素材として絞り−再絞り加工あるいは絞り−しごき加工によって缶側壁部と缶底を同時に成形し、塗装・乾燥工程を経た後、缶体開口部にネックイン加工を施して所定の外径を持つ開口部とし、イージーオープン機構を有した缶蓋を巻き締めして製造している。
【0007】
近年、缶体製造のコストダウンの観点から軽量化を目的として、素材板厚の薄肉化が進んでいる。さらに缶蓋の軽量化を目的とした缶蓋径の縮小化に合わせて缶体の開口部の縮径化も求められている。製缶後の缶体には、内外圧によって缶体の弱い部分が外側に突き出したり、内側にへこんでしまうのを防ぐために、所定の耐圧強度とパネリング強度が要求される。この耐圧強度は、(板厚)×( 降伏強さ) によってほぼ決まるので、所定の耐圧強度を満足して素材板厚の薄肉化を実現するためには、素材の高強度化が必要である。しかし、高強度化によって製缶時の加工性や缶蓋との径を適合させるネック加工性が劣る問題があった。さらに、前述のように縮径化のニーズからも缶体開口部の加工はより困難なものとなってくる。
【0008】
このような課題を解決するため、これまで加工性を改善しためっき鋼板の提案がなされ、特開昭63−89625号公報等に記載されるようにフランジ加工性に優れた薄鋼板の技術がある。
【0009】
特開昭63−89625号公報は、フランジ加工性の良好な極薄鋼板の製造方法であり、ロックウェル硬さ(HR−30T)で調質度T−1(49±3)あるいはそれよりも軟質材を対象として、連続焼鈍プロセスでの極低炭素鋼の結晶粒の粗大化を防止してフランジ(ネック)加工性を向上させるものである。この技術の提案により軟質薄鋼板の製缶後のネック部の加工性は向上したが、以下の問題が残った。この発明は、上述したように調質度T−1(49±3)あるいはそれよりも軟質な鋼板を対象としているため、通常の2ピース缶の製造に適用するには強度(耐圧強度) が低い。このため飲料缶に適用するためには、材料の組成を一定とした場合、連続焼鈍後の調質圧延工程で圧下率を大きくして強度を高くする方法が考えられる。しかし強度を高くした薄鋼板を缶用素材として使用した場合、強度の増加に対応して延びは小さくなるため、フランジ加工性が良好であるかはわからない。さらに、この技術もAlで脱酸を行っているのでAlの酸化物が鋼中に残存するのは必然で、これらの鋼においてもAlの酸化物による欠陥の発生は抑え得ないものであった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、鋼中の介在物を微細でかつ部分的に固い晶出相がなく介在物全体が変形・破砕しやすい組成の介在物にコントロールし、低コストで介在物欠陥を少なくして、さらに、鋼中の固溶元素を適量、残留させることで、製缶後の塗装工程での時効硬化(焼付硬化)によって高強度化が達成されるので、素材が薄肉化されても製缶時の加工性とネック加工性および製缶後の耐圧強度を満足する鋼板およびその製造方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、
(1)質量%で、
C : 0.01〜0.10%、
Si: 0.001〜0.10%、
Mn: 0.05〜1.0 %、
P : 0.001〜0.050 %、
S : 0.001〜0.030 %、
N :0.0005〜0.0060%、
Sol.Al:0.002 〜0.008 %、
Ti: 0.002〜0.020 %、かつTi(%)> 3.43 ×N(%)
固溶C+固溶N:0.0005〜0.0020%
を含有し、残部鉄および不可避的不純物よりなる鋼であり、鋼中の介在物を、チタン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、アルミナからなる酸化物系介在物であって、チタン酸化物が5〜30%、アルミナが2〜15%、チタン酸化物とアルミナの和が 40 %以下であり、かつその平均粒径が150μ m 以下である酸化物系介在物としたことを特徴とする欠陥が少なく焼付硬化性に優れた缶用鋼板、
(2)精錬後の溶鋼の鋼中酸素量を250ppm 以下に脱酸し、ついでTiを添加し、その後Alを添加して前記1記載の成分の鋼とし、この鋼を連続鋳造−熱間圧延の後、600 ℃〜750 ℃で巻取って、ついで脱スケール処理、冷間圧延後連続焼鈍により650 ℃〜750 ℃の温度域に加熱し、その後350 〜450 ℃の温度範囲にまで冷却して過時効処理を行い、さらに調質圧延あるいは2次冷間圧延の後、めっき工程を経て缶用鋼板とする欠陥が少なく焼付硬化性に優れた缶用鋼板の製造方法、
(3)Alを添加する際に、化学組成がAl:10〜80質量%、残りFe、Mn、Siの1種〜3種及び不可避的不純物からなる合金を添加して行うことを特徴とする前記2に記載の欠陥が少なく焼付硬化性に優れた缶用鋼板の製造方法、である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、種々の組成の介在物を人工的に合成して鋼中に埋め込み,実験室的に圧延実験を行った。その結果、介在物中にアルミナを少量含有しチタン酸化物(TiO、X=1.5 〜2.0)、マンガン酸化物(MnO) 、シリコン酸化物(SiO)、アルミナ(AlO)からなる組成の介在物とすれば、融点が比較的低く、冷却時に高融点で固い晶出相が生成せず、圧延等によって微細に破砕されることを知見した。
【0013】
このようなアルミナ含有量および組成の異なる介在物を分散させた鋼を実験室的に溶製、鋳造し、通常の方法で熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延、めっきを行って鋼板とし、製缶を行ったが一部の鋼板で割れ等の欠陥が発生した。この欠陥の部分の調査を行った結果、欠陥部には伸延した介在物が検出された。介在物サイズを測定した結果、その大きさは鋳片での大きさに換算するといずれも平均粒径50μm より大きかったことが判った。欠陥が発生しなかった部分を切断し鋼中の介在物の大きさを測定すると、これには平均粒径150μm 以下の介在物が検出された。平均粒径が50〜150μm で欠陥が発生しなかった部分の介在物の組成を調査すると、チタン酸化物(TiO、X=1.5 〜2.0)とアルミナ(Al)との和が40%以下の介在物組成であった。介在物の組成がチタン酸化物(TiO、X=1.5 〜2.0)とアルミナ(Al)との和が40%超で、平均粒径が50〜150μm になると、硬質の介在物で比較的粒径が大きいため、圧延等による圧下で伸展・変形を受けても、破砕されずに連続したまま残ったり、破砕されてもその粒が大きく連続して存在するために製缶時に欠陥となると考えられる。さらに、詳細な調査をしたところ、介在物の平均粒径が150μm 以下で、チタン酸化物(TiO、X=1.5 〜2.0)とアルミナ(Al)との和が40%以下でも、チタン酸化物(TiO、X=1.5 〜2.0)とアルミナ(Al)がそれぞれ、30%超と15%超では欠陥が発生することが判明した。
【0014】
以上のことより、平均粒径が150μm 以下で、組成がチタン酸化物(TiO、X=1.5 〜2.0)とアルミナ(AlO)がそれぞれ30%以下と15%以下でかつ両者の和が40%以下であれば欠陥とならないことが推測されたため、150μm
以下のチタン酸化物(TiO、X=1.5 〜2.0)が5〜30%とアルミナ(AlO)が2〜15%で両者の和が40%以下含有したチタン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、アルミナからなる組成の介在物のみを分散させた鋼を実験室的に溶製、鋳造し、通常の方法で熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、2次冷間圧延、めっきを行って、製缶を行ったところ時効性が良好で欠陥の発生がないことが確認できた。
【0015】
さらに添加するTi濃度を変化させて実験を行った結果、チタン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、アルミナからなる組成の介在物とするには、Ti濃度を0.020%以下にすることが必要である。これはTiが高すぎるとTiの脱酸力がMnやSiに比べて高いのでこれらの酸化物と複合せず、アルミナと同様な高融点のチタン酸化物含有量の高い介在物が生成するためである。一方、Tiの下限を0.002%としたのは連続鋳造時に脱酸不足による気泡の発生を防止するためであり、Ti量はNを固定するのに必要最低量である鋼中N量の3.43倍以上添加すればよい。Tiを添加した後にAlを添加することで、Al添加時の酸素濃度が下がっており、Alの添加量が少なくてすみ、生成する介在物中のアルミナ含有量も少なく、介在物中にアルミナが含有していても製缶時の欠陥発生はほとんどない。また、Ti添加時に生成したチタン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物からなる組成の介在物はAlによって還元されてしまわずにチタン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、アルミナからなる組成の介在物となる。これらの介在物はアルミナ単体に比べると溶鋼中で浮上しやすく、清浄性も向上する。さらに、Alの添加によって操業範囲も緩和される。
【0016】
また、鋼板中に適量の固溶C及び固溶Nを本発明の範囲に残留させることで製缶時の加工性とネック加工性を有し、さらに製缶後の塗装・乾燥工程で時効硬化作用で高強度化を図り所定の耐圧強度を満足させることを確認した。すなわち、固溶Cと固溶N量の総和が0.0005%より少なくなると、十分な時効硬化作用が得られず素材の薄肉化時に耐圧強度が不足するため、0.0005%以上含有する必要がある。また、0.0020%より多くなると、製缶時の缶底部でのストレッチャー・ストレインに起因するしわやネック加工性が劣化するだけでなく、製缶前の固溶硬化も生じるため製缶性も劣化するため、上限を0.0020%とする。
【0017】
以上のような介在物と固溶Cおよび固溶Nを含有する鋼板は、以下に述べる成分および製造方法と相まって本発明の目的を達成する。以下、本発明の製造法について詳述しながら説明する。
【0018】
まず、転炉で目標とする0.01〜0.10%のCを含む溶鋼を溶製する。この際、溶鋼中のCが目標とするC濃度より高い場合には出鋼後に真空脱ガス装置等による脱炭処理を行い所定のC濃度まで低減し、目標とするC濃度より低い場合には出鋼後にCを添加して所定のC濃度とする。
【0019】
次に、出鋼した溶鋼をMn、Siの1種または2種を添加するか、真空脱ガス処理による予備脱酸を行って溶鋼中の酸素を250ppm以下とする。単体のアルミナを生成さませないためにはTiを添加させる前にAlを添加しないことが必要であり、Fe−MnやFe−Siを添加してMn、Siにより脱酸を行う。Mn、Siの添加量は脱酸時に添加するTi合金中に含まれるSiやMnによって増加する量を考慮して添加する。また、MnやSiは脱酸力が弱いので製品によっては目標範囲内では溶鋼中の酸素を300ppm以下にすることが困難な場合があるので、その際には真空脱ガス処理により真空脱酸を行い酸素を下げる。溶鋼中の酸素が250ppmより高くなると、Ti合金を多量に添加することが必要になり、後述するように脱酸時の過飽和度が大きくなり、Ti添加時にアルミナと同様の高融点のチタン酸化物が多数生成し、複合介在物が安定して生成しない。また、これらが凝集して大きな介在物となる。このようにして溶鋼中の酸素を250ppm以下に調整した溶鋼に、化学組成がTi:10〜70質量%の成分と残部はFe、Mn、Siのうち1種から3種および不可避的不純物とからなる合金を添加して、Tiを溶鋼成分として0.002 〜0.020 %含有させる。溶鋼中のTi濃度を0.020 %以下とすることでチタン酸化物、マンガン酸化物、シリカを主成分からなる組成の複合介在物とすることが可能となる。溶鋼中のTi濃度が高すぎるとTiの脱酸力がMnやSiに比べて高いのでこれらの酸化物と複合せず、アルミナと同様な高融点のチタン酸化物が主成分の介在物となる。
【0020】
更に、脱酸時の過飽和度を小さくすれば核生成速度が遅くなり、生成する介在物の個数及び介在物径が小さくなる。過飽和度はTiと酸素の積で決まるので、過飽和度を小さくする方法として脱酸合金中のTi含有量を低くすることと脱酸時の溶鋼中の酸素を低くすることが有効である。脱酸合金中のTi含有量が高い場合には溶鋼中に添加した脱酸合金の周囲にTi濃度の高い部分が生成して過飽和度が高くなるので、Ti含有量の低い脱酸合金を使用する。酸素濃度および合金中Ti含有量が低くなるにしたがって介在物径は小さくなり、酸素を250ppm以下とし、かつ、Ti含有量が70%以下の合金で脱酸することで、最大でも50μm 以下の介在物となる。Ti含有量が高くなると介在物径が大きくなるとともに、脱酸時にチタン酸化物の割合の高い介在物が生成し、それが溶鋼中に残存し混在する。Ti濃度が低すぎると脱酸合金の投入量が多くなりすぎ、溶鋼温度の低下が起こって溶鋼の凝固や鋳造が困難になったり、添加に時間がかかり生産性に障害を与える。また、Ti含有量が高い場合には少量ずつ添加すると部分的に過飽和度の高い部分が少なくなり有効である。
【0021】
また、TiをFeやSi、Mnとの合金とすることで、Tiの活量を下げるとともに部分的に濃度の高い領域を減少させるために、過飽和度が一層減少し、チタン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物の複合介在物の生成を促進する。
【0022】
最終的に鋼中に含有されるMnの含有量は、0.05%未満に下げるのは精錬時間が長くなり経済性を大きく損ねるので、0.05%を下限とし、1.0%を越えると鋼板の加工性が大きく劣化し缶としての加工ができなくなるので、1.0%を上限とする。
Si量は、0.001 %未満に下げるのは十分な予備処理等が必要で精錬に大幅なコスト負担をかけ経済性を損ねるので0.001 %を下限とし、0.1%を越えるとめっきの際にめっき不良が発生し、表面性状、耐食性を損ねるので0.1%を上限とする。
Pは、0.001 %未満に下げることは溶銑予備処理に時間とコストがかかり、経済性を大きく損ねるので、0.001 %を下限とし、0.050 %を越えると加工性が劣化し、缶としての加工に支障をきたすので0.050 %を上限とする。
Sは、0.001%未満に下げることは溶銑予備処理に時間とコストがかかり、経済性を大きく損ねるので、0.001 %を下限とし、0.030 %を越えると加工性・耐食性が劣化し、缶としての加工・性能に支障をきたすので0.030 %を上限とする。Nは、0.0005%未満に下げることは精錬の段階での大幅なコスト上昇を伴い経済性を大きく損ねるので、0.0005%を下限とし、0.0060%を越えると、固溶NをなくすためのTi添加量が多く必要で、本願の目的である介在物の形態制御が不可能になるとともに鋼板が過度に硬質化するため、製缶性、ネック加工性をそこなうので、0.0060%を上限とする。
【0023】
このようにして溶製した溶鋼を通常と同じ方法でタンディッシュを通して、連続鋳造機で鋳造する。さらに、適宜、熱間圧延に先立って加熱を施し、この鋳片を通常と同じ方法で熱間圧延した後、600 ℃〜750 ℃の温度範囲で巻取りを行う。巻取温度600 ℃未満では、TiによるNの析出固定が不十分で鋼板中の固溶N量が多くなりすぎ製缶性が劣化するので600 ℃を下限とし、750 ℃を越えると粗大粒となり製缶後肌荒れを起こして外観を損ねるので750 ℃を上限とする。ついで、脱スケール処理を行う。一般には酸洗を施すが、機械的にスケール除去を行っても良い。その後、冷間圧延を行い、連続焼鈍を行う。焼鈍の温度は、650 ℃〜750 ℃とする。650 ℃未満では再結晶が完全ではなく加工性が劣化するので650 ℃を下限とし、750 ℃を越えると鋼板の高温強度が弱まり、連続焼鈍炉内で絞りと呼ばれる現象を起こし、破断するなどの問題が生じやすくなるので750 ℃を上限とする。そして、さらに鋼板中に固溶Cと固溶Nの総量を本発明内の範囲とするために350 〜450 ℃まで冷却して過時効処理を施す。過時効処理温度を350 ℃未満にすると固溶C量の析出に時間がかかりすぎる。また、450 ℃を越えるとその温度における平衡固溶C量が多くなり、最終的な鋼板中の固溶Cが多くなり本発明範囲を越える可能性があるため、過時効処理温度を350 〜450 ℃の範囲とする。その後、スキンパス圧延あるいは5〜40%程度のDR圧延を施し、クロムめっきあるいは錫めっきなどの表面処理(例えば、クロムめっきおよび/または錫めっき層があれば、地鉄との界面にNi等の極薄層があってもかまわないし、錫めっきが錫−鉄合金めっきでもかまわない。)を施し、缶用の鋼板とする。また、表面に樹脂フィルムを貼り付けたラミネート鋼板又は、溶融した樹脂を少なくとも片面に被覆せしめた樹脂積層鋼板とすることも可能である。これらの鋼板は特に2ピース缶用の鋼板として好適である。
【0024】
【実施例】
270トン転炉で表1に示す合金組成の脱酸用合金を用いて,各成分の鋼を溶製し連続鋳造した。製造した鋼の成分及び鋼中の介在物組成を合わせて表1に示す。ついで、加熱−熱間圧延を行った。その際の、仕上圧延及び巻取は,表2に示す温度で行った。ついで、酸洗,冷間圧延を行った後、表2に示す条件で焼鈍過時効処理を行った。その後、一部のものについては,DR圧延(ダブルレデュース圧延)を施した。ついでクロムめっきまたは錫めっきを施し、さらに一部の鋼板については表裏面にポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを貼り付け,缶用鋼板となした。鋼中の固溶元素(C+N)の総量は、内部摩擦法により測定し、表2に示した。
【0025】
その鋳片の一部および冷延鋼板の一部を採取し、断面を調査し、介在物の組成、大きさ、形状を調査した。その結果を表1に示す。介在物の組成は、走査型電子顕微鏡でエネルギー分散分析装置によって測定した。本発明法では鋳片内にはチタン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物からなる組成で、ほぼ球形の介在物が検出されており、アルミナを含む介在物やチタン酸化物の濃度の高い介在物は検出されなかった。また、冷延鋼板ではこれらの介在物が破砕され微細分散化していた。
【0026】
さらに、得られた缶用鋼板を用いて、3段絞りにより成形した絞り缶と絞りとしごきを加えたDI缶を製造し、このときの割れが発生した欠陥率を調査した。この結果を表2に示す。本発明鋼では、比較鋼に比べて欠陥率が少なくなっていることがわかる。また、塗装焼付後の耐圧強度の調査を行った。耐圧強度は所定の圧力(0.75MPa)を缶内部から負荷したときの缶の塑性変形の有無によって評価した。本発明鋼では欠陥の発生が少なく、更に製缶後の耐圧強度にも優れていることが確認された。
【0027】
【表1】
Figure 0003577413
【0028】
【表2】
Figure 0003577413
【0029】
【表3】
Figure 0003577413
【0030】
【発明の効果】
本発明によって、製缶時の欠陥発生が少なく焼付き硬化性に優れた缶用鋼板の製造が可能となった。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C : 0.01〜0.10%、
    Si: 0.001〜0.10%、
    Mn: 0.05〜1.0 %、
    P : 0.001〜0.050 %、
    S : 0.001〜0.030 %、
    N :0.0005〜0.0060%、
    Sol.Al:0.002 〜0.008 %、
    Ti: 0.002〜0.020 %、かつTi(%)> 3.43 ×N(%)
    固溶C+固溶N:0.0005〜0.0020%
    を含有し、残部鉄および不可避的不純物よりなる鋼であり、鋼中の介在物を、チタン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、アルミナからなる酸化物系介在物であって、チタン酸化物が5〜30%、アルミナが2〜15%、チタン酸化物とアルミナの和が 40 %以下であり、かつその平均粒径が150μ m 以下である酸化物系介在物としたことを特徴とする欠陥が少なく焼付硬化性に優れた缶用鋼板。
  2. 精錬後の溶鋼の鋼中酸素量を250ppm以下に脱酸し、ついでTiを添加し、その後Alを添加して請求項1記載の成分の鋼とし、この鋼を連続鋳造−熱間圧延の後、600 ℃〜750 ℃で巻取って、ついで脱スケール処理、冷間圧延後連続焼鈍により650 ℃〜750 ℃の温度域に加熱し、その後350 〜450 ℃の温度範囲にまで冷却して過時効処理を行い、さらに調質圧延あるいは2次冷間圧延の後、めっき工程を経て缶用鋼板とする欠陥が少なく焼付硬化性に優れた缶用鋼板の製造方法。
  3. Alを添加する際に、化学組成がAl:10〜80質量%、残りFe、Mn、Siの1種〜3種及び不可避的不純物からなる合金を添加して行うことを特徴とする請求項2に記載の欠陥が少なく焼付硬化性に優れた缶用鋼板の製造方法。
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