JP4555433B2 - 加工性が良好で欠陥の少ない缶用鋼板の製造方法 - Google Patents

加工性が良好で欠陥の少ない缶用鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工性が良好で欠陥が少ない缶用鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ぶりき、ティンフリースチール等の缶用鋼板は通常、深絞り加工、しごき加工、曲げ加工、ストレッチ加工等を施して容器として使用される。これらの鋼板は、通常転炉で溶製された未脱酸の溶鋼をAlで脱酸を行うAlキルド鋼で製造されている。このようなAl脱酸鋼では、脱酸時に添加したAlと溶鋼中の酸素が反応したり、脱酸後に鋼中に残留したAlがスラグや空気中等の酸素によって酸化してアルミナが生じる。このアルミナは硬質であるため圧延や加工等で破砕されずに鋼板に塊状で残存し、製缶時に割れや疵等の欠陥発生の原因となる。そこでこれらのアルミナに対して、<1> スラグ中や雰囲気中の酸素の制御による溶鋼中のAlの酸化によるアルミナの生成防止や、<2> 溶鋼中へのガスやフラックスの吹き込みによる溶鋼中のアルミナの浮上促進による低減と、<3> 溶鋼中へのCaの添加によってアルミナを圧延・加工時に破砕されやすいカルシウムアルミネートに形態制御する無害化が行われてきた。
【0003】
しかし、Alで脱酸を行っている限りはアルミナの生成は皆無にはできず、除去も不十分である。そして、Ca添加による方法もCaは高価であるとともに歩留まりが極めて悪いために合金コストが高くなる。また介在物にアルミナを含有するため冷却時に介在物中に固いアルミナが部分的に晶出し、圧延等によっても破砕されずに残存し欠陥が発生する。さらに、Caを添加して生成するカルシウムアルミネートは肥大化しやすく、このような介在物が浮上しきれず残留した場合には欠陥となる。これらの問題を解決するためにはAl以外の元素で脱酸することが考えられ、特公昭48−29005号公報に見られるようにAlもSiも全く添加せずにTiのみで脱酸する方法があるが、この場合Tiのみによる脱酸のためにTi添加前の溶鋼中酸素は非常に高い値となり、この様な溶鋼にTiを添加すると粒径の大きなチタン酸化物が多量に生成して溶鋼中に残存し、これはアルミナと同様に固く破砕されにくいため欠陥となる。
このため、特公平2−9646号公報に見られるようにTi添加前にAlを添加して予備脱酸を行い、溶鋼酸素を低減した後にTiを添加する方法がある。
【0004】
上記のごとき方法では溶鋼中の酸素が高い状態でAlを添加するために、多量のAlを添加する必要があり、その結果、多量のアルミナが生成してそのまま残留したり、アルミナを含有する複合介在物が生成して冷却時に介在物中の一部にアルミナが晶出し、この部分が圧延等によっても破砕されずに残存し欠陥が発生する。また、Alは脱酸力が強いので酸素のコントロールが不安定である。さらに、Tiを添加した際にTiと溶鋼中の酸素との反応によって生成したチタン酸化物の一部は複合介在物となるが、この複合酸化物はアルミナを含むために冷却時に介在物中に晶出するアルミナが破砕されずに残存し欠陥が発生する。一方、生成したチタン酸化物の大部分は粒径が大きくかつ、破砕されにくいチタン酸化物となって溶鋼中に存在し、その一部は浮上しきれずに残留して欠陥となる等の課題がある。このように通常の製造方法では、粒径が大きくかつ、硬質の介在物が含まれるのが一般的であり、この介在物は製缶時に亀裂の起点となるため、この種の介在物が多量に含まれると、破胴、ピンホール等の欠陥が多発するという問題を有していた。
【0005】
上記の鋼板中の介在物に起因した製缶時の欠陥の防止を実現するために、本発明者らは、鋼中の介在物を微細でかつ、部分的に固い晶出相がなく介在物全体が変形・破砕しやすい組成の介在物にコントロールした缶用鋼板およびその製造方法を先に提案(特開平9−184044号公報、特開平11−264052号公報)した。
【0006】
これらの技術によって、従来鋼に比して製缶時の欠陥が低減し、さらに、実操業における適正操業範囲の拡大(緩和)が可能になった。しかしながら、製缶時に発生する欠陥は完全には防止されておらず、さらなる改善が望まれていた。特に近年、製造工程省略によるコスト低減、環境保全の観点から、金属板素材の表面に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした素材が缶用鋼板として使用されているが、鋼板中に存在する硬質の介在物が製缶時にフィルムを破断させ、耐食性等の缶特性を劣化させる課題が残る。
【0007】
また、缶用として用いられる表面処理鋼板の原板の調質度は、JIS(G3303)に規定されるように、ロックウェル硬さに応じて軟質のものから調質度T1として、T6までの6種に分類される。一般に調質度がT1〜T3の軟質ぶりきは焼鈍工程において箱型焼鈍法で、調質度がT4〜T6までの硬質ぶりきは連続焼鈍法で製造されている。しかし、箱型焼鈍法では生産性や材質ばらつき等の問題があり、軟質ぶりきの製造も連続焼鈍法で行うことが望まれていた。連続焼鈍法による軟質ぶりきの製造に関しては、特開昭58−197224号公報や特開平4−228526号公報がある。これらの技術はいずれも極低炭素鋼を用い、さらに結晶粒の微細化や面内異方性を改善するために、所定量のNbを添加した鋼板あるいはその製造方法に関するものである。これらの技術の提案により、連続焼鈍法において軟質でかつ加工性の良好なブリキ原板の製造が可能となった。
【0008】
しかしながら、成形性の改善を目的としたNbの多量添加は鋼板の耐食性劣化や再結晶温度の上昇を招き、連続焼鈍工程での鋼板の軟化による通板不良等の原因となり、材質特性と安定製造に関して課題も残っている。
【0009】
極低炭素鋼を用いた連続焼鈍での安定製造に関しては、特開平7−278678号公報がある。この技術は、加工性および時効性を改善するために、焼鈍工程で脱炭反応を利用し、最終的に鋼中に残存するC量を0.0015mass%未満にするものであり、この技術により軟質でかつ加工性の良好なブリキ原板が連続焼鈍法で安定的に製造することが可能となったが、この技術もAlで脱酸しているのでAlの酸化物が鋼中に残存するのは必然で、これらの鋼においてもAlの酸化物のよる欠陥の発生は抑え得ないものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、鋼中の介在物を微細で、かつ、部分的に固い晶出相がなく、介在物全体が変形・破砕しやすい組成の介在物にコントロールし、従来、一般的に実施されている操業条件範囲の中で低コストで介在物欠陥を少なくし、鋼板表面にラミネートした熱可塑性樹脂フィルムを有する素材でも製缶時のフィルムの破断を防止し、かつ、加工性の良好な缶用鋼板の製造方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴とするところは、
(1)脱酸用合金としてFeTiAlを用いて溶鋼を脱酸することにより精錬後の溶鋼成分を質量%で、
C :0.0002〜0.0080%、
Si:0.001 〜0.10%、
Mn:0.05〜1.0 %、
P :0.001 〜0.050 %、
S :0.001 〜0.030 %、
Sol.Al:0.001 〜0.008 %、
N :0.0005〜0.0080%、
Ti:0.002 〜0.030 %、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物とし、この鋼を連続鋳造−熱間圧延の後、600 ℃〜750 ℃で巻取って、ついで脱スケール処理、冷間圧延後、650 ℃〜750 ℃の連続焼鈍を施し、調質圧延あるいは2次冷間圧延の後、めっき工程、または、めっき工程、フィルムラミネート工程を経て缶用鋼板とする加工性が良好で欠陥の少ない缶用鋼板の製造方法、
(2)精錬後の溶鋼成分がさらに、
Ca:50ppm 以下
Mg:50ppm 以下
の1種以上を含有することを特徴とする(1)記載の加工性が良好で欠陥の少ない缶用鋼板の製造方法、
にある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、種々の組成の介在物を人工的に合成して鋼中に埋め込み、実験室的に圧延実験を行った。その結果、介在物をTi酸化物とアルミナ酸化物を主成分とする晶出相、あるいはTi酸化物とアルミナ酸化物とCaOとMgOの1種以上からなる晶出相の介在物とすれば、融点が比較的低く、冷却時に高融点で固い晶出相が生成せず、圧延等によって微細に破砕されることを知見した。
【0013】
このような組成の異なる介在物を分散させた鋼を実験室的に溶製、鋳造し、通常の方法で熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延、めっきを行って鋼板とし、製缶を行ったが一部の鋼板で割れ等の欠陥が発生した。この欠陥の部分の調査を行った結果、欠陥部には伸延した介在物が検出された。介在物サイズを測定した結果、その大きさは鋳片での大きさに換算すると粒径が300μm より大きい場合が大半であった。また、介在物の大きさ(鋳片での大きさに換算)が粒径300μm 以下でも欠陥となる場合があり、この場合には欠陥部に多数の介在物が存在していることが判明した。さらに詳細に調査した結果、欠陥部に存在する多数の介在物は、鋳片での介在物の大きさに換算すると粒径が38μm 以上であった。この38μm 以上の介在物は50個/1kg(スライム抽出にて測定)より多く存在した。欠陥が発生しなかった部分を切断し鋼中の介在物の大きさを測定すると、この部分には、鋳片での介在物の大きさに換算すると粒径が38μm 以上の介在物が50個/kg以下であった。しかし、粒径が38μm 以上の個数が50個/1kg以下でも欠陥が発生した場合もあり、このときの介在物の硬度(マイクロビッカース硬度)は600未満、あるいは1300より大きくなっていた。
【0014】
鋼板中に存在する介在物が<1> 鋳片での介在物の大きさに換算で粒径が300μm以上、<2> 鋳片での介在物の大きさに換算で粒径が38μm以上でその個数が50個/kgを超える、<3> 介在物のビッカース硬度が600未満あるいは1300を超える、場合に製缶時に欠陥が発生する。これは鋼板製造時の圧延で伸展・ 圧下を受けても、破砕されずに連続したまま残ったり、破砕されてもその粒が大きく連続して存在するために製缶時に欠陥になると考えられる。さらに、鋼板中に存在する介在物は、鋼板の中央付近において圧延方向に列状に分散しているほうが製缶時の欠陥発生に対しては有利に作用することが判明した。
【0015】
以上のことより、介在物がTi酸化物とアルミナ酸化物を主成分とする晶出相、あるいはTi酸化物とアルミナ酸化物とCaOとMgOの1種以上からなる晶出相であり、鋳片での最大径が300μm 以下でかつ粒径38μm以上の介在物の個数が50個/kg以下、さらに介在物のビッカース硬度が600〜1300であることが判明したため、これらの介在物のみを分散させた鋼を実験室的に溶製、鋳造し、通常の方法で熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、2次冷間圧延、Crめっきを行い、さらに鋼板表面にポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを貼り付け缶用鋼板として、製缶を行ったところ加工性が良好でフィルムの破損等の欠陥の発生がないことが確認できた。
【0016】
さらに添加するTi濃度を変化させて実験を行った結果、介在物をTi酸化物とアルミナ酸化物を主成分とする晶出相、あるいはTi酸化物とアルミナ酸化物とCaOとMgOの1種以上からなる晶出相の介在物とするには、Ti濃度を0.030%以下にすることが必要である。これはTiが高すぎるとクラスター化しやすいTi酸化物のみが生成し、アルミナと同様な高融点の硬質の介在物が生成するためである。一方、Tiの下限を0.002%としたのは連続鋳造時に脱酸不足による気泡の発生を防止するためであり、Ti量はNを固定するのに必要最低量である鋼中N量の3.43倍以上添加すればよい。Tiを添加した後にAlを添加することで、Al添加時の酸素濃度が下がっており、Alの添加量が少なくてすみ、生成する介在物中のアルミナ含有量も少なく、介在物中にアルミナが含有していても製缶時の欠陥発生はほとんどない。この、Alの添加によって操業範囲も緩和される。
【0017】
以下、鋼の各成分を所定の範囲に限定する理由について述べる。
Cは、鋼板の強度を安定して向上させる元素であり、所定の強度を保持するためには、0.0002%以上を必要とする。しかし、含有量が多くなると、加工性が劣化するため0.0080%を上限とする。
【0018】
Tiは前述したが、溶鋼成分として0.002〜0.030%含有させる。溶鋼中のTi濃度を0.030%以下とすることで介在物をTi酸化物とアルミナ酸化物を主成分とする晶出相、あるいはTi酸化物とアルミナ酸化物とCaOとMgOの1種以上からなる晶出相の介在物とすることが可能となる。溶鋼中のTi濃度が高すぎると高融点のチタン酸化物が主成分の介在物となる。
【0019】
Mnは、0.05%未満に下げるのは精錬時間が長くなり経済性を大きく損ねるので、0.05%を下限とし、1.0%を越えると鋼板の加工性が大きく劣化し缶としての加工ができなくなるので、1.0%を上限とする。
【0020】
Si量は、0.001%未満に下げるのは十分な予備処理等が必要で精錬に大幅なコスト負担をかけ経済性を損ねるので0.001%を下限とし、0.1%を越えるとめっきの際にめっき不良が発生し、表面性状、耐食性を損ねるので0.1%を上限とする。
【0021】
Pは、0.001%未満に下げることは溶銑予備処理に時間とコストがかかり、経済性を大きく損ねるので、0.001%を下限とし、0.050%を越えると加工性が劣化し、缶としての加工に支障をきたすので0.050%を上限とする。
【0022】
Sは、0.001%未満に下げることは溶銑予備処理に時間とコストがかかり、経済性を大きく損ねるので、0.001%を下限とし、0.030%を越えると加工性・耐食性が劣化し、缶としての加工・性能に支障をきたすので0.030%を上限とする。
【0023】
Sol.Alは、0.001%未満では十分な脱酸処理が行えず、0.008%より多いとアルミナのみが生成し、製缶時の欠陥を発生させるため、上限を0.008%とする。
【0024】
Nは、0.0005%未満に下げることは精錬の段階での大幅なコスト上昇を伴い経済性を大きく損ねるので、0.0005%を下限とし、0.0080%を越えると、固溶NをなくすためのTi添加量が多く必要で、本願の目的である介在物の形態制御が不可能になるので、0.0080%を上限とする。固溶N量を少なくするために、NをTiNとして固定するには、少なくともTi>3.43Nとする必要がある。
【0025】
CaとMgはともに酸化物を主成分とする晶出相を酸化物系介在物中に形成して、<1> 晶出相自体の微細化と<2> 圧延時に微細な晶出相の界面に沿った更なる介在物の破砕、微細化に寄与する。Caが50ppm 以下、Mgが50ppm 以下の1種以上を含有するとしたのは、CaとMgの蒸気圧が高く歩留が低いので、これ以上ではコストデメリットが大きくなるためである。また、CaとMgの下限を明示していないのは鋼の組成分析において、CaとMgの濃度が分析下限値以下でも介在物中に十分なCaO、MgOの一種以上を含有させることができるためである。
【0026】
そして、本発明では前記したような成分を基本構成および選択構成とする鋼板であり、脱酸用合金としてFeTiAlを用いて溶鋼の脱酸を行い、且つ、脱酸工程・凝固工程で生成される酸化物系介在物が、主としてTi酸化物とアルミナ酸化物を主成分とする晶出相、あるいはTi酸化物とアルミナ酸化物とCaOとMgOの1種以上からなる晶出相からなり、この晶出相が鋼板中に分散して存在していることを特徴的構成としている。ここで晶出相とは、固体状態の結晶相を示すものであり、固体状態のガラス相を含まない。即ち、酸化物系介在物を主としてTi酸化物とアルミナ酸化物を主成分とする晶出相、あるいはTi酸化物とアルミナ酸化物とCaOとMgOの1種以上の少なくとも3相からなる晶出相とすることにより、晶出相自体を微細化したうえ圧延時に微細な晶出相の界面に沿ってさらに微細に破砕し易くし、この結果、製缶時の欠陥が少なく加工性に優れた鋼板を得るものである。
【0027】
なお、酸化物系介在物の晶出相が、鋳片の厚みに対し中央付近において圧延方向に列状に分散したものとした場合は、圧延後の鋼板表面に酸化物系介在物がほとんど存在せず、より介在物起因による欠陥が少ない鋼板が得られることとなって一層好ましい。
【0028】
また、酸化物系介在物の常温マイクロビッカース硬度は、熱間圧延後の圧延時における変形能への影響を考慮すると600〜1300の範囲が好ましい。これは、600未満では、伸延しすぎ、1300より大きいとほとんど伸延せず圧延加工そのものが困難になってくる。
【0029】
このようにして溶製した溶鋼を通常と同じ方法でタンディッシュを通して、連続鋳造機で鋳造する。さらに、適宜、熱間圧延に先立って加熱を施し、この鋳片を通常と同じ方法で熱間圧延した後、600〜750℃の温度範囲で巻取りを行う。ただ、単にTi量をNの当量以上加えても、Nは全量TiNとして析出することはないので、捲取温度を600〜750℃の範囲とする。また、巻取温度600℃未満では、TiによるNの析出固定が不十分で加工性が劣化するので600℃を下限とし、750℃を越えると粗大粒となり製缶後肌荒れを起こして外観を損ねるので750℃を上限とする。ついで、脱スケール処理を行う。一般には酸洗を施すが、機械的にスケール除去を行っても良い。その後、冷間圧延を行い、連続焼鈍を行う。連続焼鈍の温度は、650〜750℃とする。650℃未満では再結晶が完全ではなく加工性が劣化するので650℃を下限とし、750℃を越えると鋼板の高温強度が弱まり、連続焼鈍炉内で絞りと呼ばれる現象を起こし、破断するなどの問題が生じやすくなるので750℃を上限とする。その後、スキンパス圧延あるいは5〜40%程度のDR圧延を施し、クロムめっきあるいは錫めっきなどの表面処理を施し、缶用の鋼板とする。
【0030】
鋼板へのクロムめっきは、電解クロム酸処理が望ましく、特に10〜200mg/m2 の金属クロム層と1〜50mg/m2(金属クロム換算)のクロム酸化物層とを備えたもので、塗膜密着性と耐食性との組み合わせに優れている。また、錫めっきは0.5〜11.2mg/m2 のメッキ量を有する硬質ブリキ板であり、さらに金属クロム換算で、クロム量が1〜30mg/m2 となるようなクロム酸/リン酸処理が行われていることが望ましい。
【0031】
さらに、上記のめっきが施された鋼板の表面に熱可塑性樹脂フィルムを貼り付けラミネート鋼板とする。ラミネートに用いる熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリルエステル共重合体、アイオノマー等のオレフィン系樹脂フィルムやポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステルフィルムやナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミドフィルム、さらにポリ塩化ビニルフィルム、ポリビニリデンフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは未延伸のものでも、二軸延伸のものでもよい。その厚みは、一般に3〜50μm、特に5〜40μmの範囲にあることが望ましい。フィルムの金属板への積層は、熱融着法、ドライラミネーション、押出コート法等により行われ、フィルムと鋼板との間に接着性(熱融着性)が乏しい場合には、例えばウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酸変性オレフィン樹脂系接着材、コポリアミド系接着剤、コポリエステル系接着剤等を介在することができる。
【0032】
さらに、熱可塑性樹脂フィルムには、製缶時の鋼板へのしわ抑え力の伝達を向上させる目的で無機フィラー(顔料)を含有することができる。無機フィラーとしては、ルチル型またはアナターゼ型の二酸化チタン、亜鉛華、グロスホワイト等の無機白色顔料やバライト、沈降性硫酸バライト、炭酸カルシウム、石膏、沈降性シリカ、エアロジル、タルク、焼成あるいは未焼成クレイ、炭酸バリウム、アルミナホワイト、合成あるいは天然のマイカ、合成ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の白色体質顔料やカーボンブラック、マグネタイト等の黒色顔料やベンガラ等の赤色顔料、シエナ等の黄色顔料や群青、コバルト青等の青色顔料を挙げることができる。これらの無機フィラーは、樹脂あたり10〜500質量%、特に10〜300質量%の量で配合させることができる。
これらの鋼板は特に2ピース缶用の鋼板として好適である。
【0033】
【実施例】
270トン転炉で表1に示す脱酸用合金を用いて、各成分の鋼を溶製し連続鋳造した。表1に示すように脱酸用合金としてはFeTiAlが用いられるが、FeTiAlを他の脱酸用合金と組み合わせて使用してもよい。製造した鋼の成分を合わせて表1に示す。ついで、加熱−熱間圧延を行った。その際の仕上圧延及び巻取は、表3に示す温度で行った。ついで、酸洗、冷間圧延を行った後、表3に示す温度で焼鈍を行った。焼鈍の後、一部のものについてはDR圧延(ダブルレデュース圧延)を施した。ついでクロムめっきまたは錫めっきを施し、さらに一部の鋼板については表裏面にポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを貼り付け、缶用鋼板となした。
【0034】
その鋳片の一部および冷延鋼板の一部を採取して断面を調査し、酸化物系介在物内晶出相中の主成分、硬度、存在形態を調査した。その結果を表2に示す。介在物の晶出相の成分は、質量1±0.1kgの全厚鋳片からスライム電界抽出(最小メッシュ38μmを使用)した介在物を走査型電子顕微鏡でエネルギー分散分析装置によって成分同定した。さらに検出された副成分については、特性X線ピークの積分強度から含有量を求めた。表2の介在物の圧延方向断面での存在形態は、圧延方向に平行な断面の全厚を光学顕微鏡で観察し、介在物の存在する位置の光学顕微鏡写真(400倍、50視野)から決めた。さらに、得られた缶用鋼板を用いて、3段絞りにより成形した絞り缶と絞りとしごきを加えたDI缶を製造し、このときの割れが発生した欠陥率を調査した。この結果を表3に示す。本発明鋼では、比較鋼に比べて欠陥率が少なくなっていることが確認された。
【0035】
なお、表1および表2における*1〜*4の意味は以下のとおりである。
*1:Tr:分析可能下限以下
*2:1介在物当たり3箇所に25gの荷重をかけて、介在物10個の室温における平均値を算出
*3、4:最大介在物径の測定方法は、質量1±0.1kgの全厚鋳片からスライム電界抽出(最小メッシュ38μm を使用)した介在物を実体顕微鏡にて写真撮影(40倍)し、写真撮影した介在物の長径と短径の平均値を全ての介在物で求めてその平均値の最大値を最大介在物径とした。介在物個数は質量1±0.1kgの全厚鋳片からスライム電界抽出した介在物であり、光学顕微鏡(100倍)で観察した全ての個数を1kg単位個数に換算した。
【0036】
【表1】
Figure 0004555433
【0037】
【表2】
Figure 0004555433
【0038】
【表3】
Figure 0004555433
【0039】
【発明の効果】
本発明によって、加工性が良好で欠陥の発生が少ない表面処理用鋼板の製造が可能となった。

Claims (2)

  1. 脱酸用合金としてFeTiAlを用いて溶鋼を脱酸することにより精錬後の溶鋼成分を質量%で、
    C :0.0002〜0.0080%、
    Si:0.001 〜0.10%、
    Mn:0.05〜1.0 %、
    P :0.001 〜0.050 %、
    S :0.001 〜0.030 %、
    Sol.Al:0.001 〜0.008 %、
    N :0.0005〜0.0080%、
    Ti:0.002 〜0.030 %、
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物とし、この鋼を連続鋳造−熱間圧延の後、600 ℃〜750 ℃で巻取って、ついで脱スケール処理、冷間圧延後、650 ℃〜750 ℃の連続焼鈍を施し、調質圧延あるいは2次冷間圧延の後、めっき工程、または、めっき工程、フィルムラミネート工程を経て缶用鋼板とする加工性が良好で欠陥の少ない缶用鋼板の製造方法。
  2. 精錬後の溶鋼成分がさらに、
    Ca:50ppm 以下
    Mg:50ppm 以下
    の1種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の加工性が良好で欠陥の少ない缶用鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH10226843A (ja) * 1997-02-19 1998-08-25 Nippon Steel Corp 欠陥が少なくプレス成形性に優れた薄鋼板およびその製造方法
JPH11279721A (ja) * 1998-03-30 1999-10-12 Nippon Steel Corp 加工性が良好で欠陥の少ない表面処理用鋼板およびその製造方法
JP2000063984A (ja) * 1998-08-13 2000-02-29 Kawasaki Steel Corp 加工性に極めて優れる缶用鋼板

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