JP3223758B2 - 耐側壁破断性の優れたdtr缶適合鋼板 - Google Patents

耐側壁破断性の優れたdtr缶適合鋼板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はDTR(Draw and Thin Red
raw)製缶用途に適合する缶用鋼板に関するもので、当
該製缶工程で行われる缶胴の張力付加深絞り成形時に顕
在化する側壁破断現象の発生し難い鋼板を提供するもの
である。
【0002】
【従来の技術】飲料缶等を中心として、軽量化、工程省
略、素材および製造コスト低減の観点から、3ピース缶
から2ピース缶への移行、更には缶体の薄肉化が進めら
れている。今日、飲料缶用2ピース缶の主流となってい
るのは、円形のブランクをカップ状に深絞り成形(Draw)
後、缶胴を2〜3回しごき成形(Ironing)することに
よって側壁部の薄肉化と所定の缶高さを得るDI(Draw an
d Ironing)成形法であるが、一般に陽圧缶用途に限定さ
れ、内容物をホットパックするレトルト缶(コーヒー
缶、紅茶缶)等の陰圧缶には使用されない。
【0003】一方、しごき加工を伴わない成形法として
は、絞り加工を2回行うDRD(Draw and ReDraw)成形法
と、2回目以降の絞り成形時にフランジ部に高いしわ押
え力を付加してフランジから側壁部への流れ込みを抑制
し、側壁部に積極的に張力を付加する張力付加深絞り成
形を行うことによって缶胴の薄肉化を行うDTR(Draw and
Thin Redraw)成形法が実用化されている。これらの方法
の最大の特長は、しごき加工が施されないため、プレコ
ート鋼板やラミネート鋼板を使用することによって、工
程省略が可能なばかりか、意匠性やデザイン性の優れた
飲料缶の製造が可能になる点である。
【0004】さて、近年、上記のDTR成形を飲料缶用途
に展開する技術が開発され、実用化の段階に入ってい
る。当該用途に対しては、一般的にT5-CAからDR-9程度
のテンパー度を有するティンフリースティール(TFS)
にポリエステルフィルム(PET)をラミネートした鋼板
を素材としてカップ成形した後、2段の張力付加深絞り
成形が行われる。
【0005】これによって、缶側壁は20%以上の薄肉化
が達成され、缶の軽量化が可能になるばかりか、素材厚
と缶底部のドーム形状を変えることによって、陽圧缶、
陰圧缶の両方に適合させることが可能である。しかし、
当該成形法では、素材設計上以下の諸問題を解決する必
要がある。 1.張力付加絞り成形時のダイ肩部との摺動によるラミ
ネートフィルムの剥離。 2.張力付加絞り成形時に缶壁部がポンチとダイス間に
拘束されず自由表面状態で引張り変形を受けるため、肌
荒れが発生し易い。 3.高速で張力付加絞り成形を行うため、各カップ成形
時にポンチ肩と接触した箇所(ショックライン)を起点
とした側壁破断が起こり易い。
【0006】上記の各技術課題のうち下地鋼板の設計に
係わる2と3の課題に対して、従来いくつかの特許技術
が開示されている。例えば特開平4-314535号公報では、
鋼板の結晶粒径を所定のサイズ以下まで細粒化して肌荒
れを抑制する技術が開示されている。
【0007】特に、耐側壁破断性に関しては、特開平7-
34192〜34194号公報において、ある製造方法の下で結晶
粒径を規定することにより、加工性、肌荒れ性、耐食性
を向上させる技術が開示されている。これらの技術で
は、固溶CおよびNを低減させ、くびれの発生やボイド
の連結を抑制し、それによって耐側壁破断性を高めるこ
とを開示しているが、金属組織的に側壁破断の起点とな
る部分に関しては触れられておらず、側壁破断を根本的
に回避するには至らないと考えられる。
【0008】また特開平5-247669号公報では、特定の組
成の鋼を連続焼鈍の際にフェライト−オーステナイト二
相域から急冷することによってミクロ組織をフェライト
相と低温変態相の二相組織にし、1回冷圧で十分な高強
度を得る技術が開示されている。しかし、このような二
相組織では、フェライト相と硬質な低温変態相との界面
でDTR加工に伴いボイドが発生し易いため、十分な耐側
壁破断性を得ることは困難である。
【0009】一方、一般的な絞り加工時の破断に関する
技術としては、製鋼性介在物のみを規制して加工欠陥を
低減する技術(特開昭58-16026号公報)、鋼中に析出す
るセメンタイト(Fe3 C )の平均粒径を規定して耐食性
ならびに加工性を向上させる技術(特開昭60-149743号
公報、特開昭60-215739号公報)、固相反応で生成するM
nS、AlN等の非金属介在物のサイズと結晶粒径を同時に
規定して加工性を向上させる技術(特公平4-78714号公
報、特公平6-76618号公報)などが開示されている。
【0010】これらの技術に共通するのは、金属組織学
的な原理原則に基づいて、組織の微細化と割れの起点と
なる鋼中介在物を減少させようとするものである。
【0011】しかし、個々の技術について詳細に検討す
ると、DTR成形時の缶側壁破断の問題に対して、素材に
要求される絶対的な強度レベル、側壁破断現象の本質的
なメカニズムとそれに対する最適ミクロ組織のあり方等
について、最適な技術は開示されていない。このため、
25%を超える側壁部の薄肉化を安定して実現すること
は、従来の素材設計技術の範囲内では不可能であり、結
局しごき加工を付加せざるを得ないものと考えられる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、DTR成形に
適用される各種の樹脂などをラミネートした鋼板に対す
る前記の従来技術の問題点の中で、耐側壁破断性を著し
く向上させることを目的とするものである。
【0013】図6、図7は、従来技術によってDTR成形
された飲料缶の側壁部のミクロ組織を走査電子顕微鏡
(SEM)観察した結果である。当該飲料缶は、フィルム
密着性、耐食性、肌荒れ等の表面性状、耐圧強度、側壁
のパネリング強度、側壁のバックリング強度等、飲料缶
として要求される性能は具備している。
【0014】しかし、ミクロ組織的には、MnSと母相の
界面あるいはセメンタイトと母相の界面に微小な割れが
多数観察される。こうした素材は、更に激しい引張り深
絞り成形を受けるとこれらの微小な割れが起点となって
側壁破断することが予想される。
【0015】本発明は、20%以上の薄肉化において側
壁破断が皆無であり、30%以上の薄肉化を受けても、
こうした微小な割れがほとんど発生しない鋼板を提供す
るものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成するため本発明の要旨とするところは下記の通りで
ある。
【0017】(1)mass%で、0.02<C≦0.1 %、Si≦
0.03%、0.3≦Mn≦1.2 %、P≦0.03%、S≦0.008%、0.
02≦Sol.Al≦0.1 %、0.002 ≦N≦0.007%、Total-O≦
0.005%、log[Mn][S]≦ー2.22と、残部Feおよび不可避
不純物からなる鋼組成を有し、実質的にフェライト相と
微細分散したセメンタイトからなる組織で構成されるこ
、即ちフェライト単相組織であり、フェライト粒内に
セメンタイトが微細分散していることを特徴とする耐側
壁破断性の優れたDTR適合鋼板、(2) mass%で、0.02
<C≦0.1 %、Si≦0.03%、0.3≦Mn≦1.2 %、P≦0.03
%、S≦0.008 %、0.02≦Sol.Al≦0.1 %、0.002 ≦N≦
0.007 %、Total-O≦0.0025%、 log[Mn][S]≦ー2.22
と、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼組成を有し、
実質的にフェライト相と微細分散したセメンタイトから
なる組織で構成されること、即ちフェライト単相組織で
あり、フェライト粒内にセメンタイトが微細分散してい
ることを特徴とする耐側壁破断性の優れたDTR適合鋼板
である。
【0018】さらに本発明では、上記の基本構成要件に
加えて、DTR成形時の耐側壁破断性をより一層高める狙
いから、以下の構成要件を付加するものである。
【0019】(3)(1)〜(2)において、微細分散
したセメンタイトの群落の長さLcが10μm以下であるこ
とを特徴とする耐側壁破断性の優れたDTR適合鋼板鋼板
である。
【0020】
【作用】本発明を成すに至った基本的な考え方と、それ
に基づいて構成した本発明とその限定理由について以下
に述べる。
【0021】現状のDTR鋼板では、鋼板中に存在するわ
ずかな酸化物系非金属介在物がある確率でDTR成形時の
ポンチ肩部に形成されるショックライン部と合致するこ
とによって側壁破断が引き起こされると言われており、
それら製鋼性の酸化物系非金属介在物を低減することが
耐側壁破断性を向上させる上で第一義的に重要である。
しかし、より高いレベルの薄肉化を達成するためには、
鋼板のミクロ組織自体を適正化することが極めて重要で
ある。
【0022】まず本発明者らは、図6、図7に示した現
状のDTR成形品のミクロ組織に着目し、側壁破断を引き
起こす主因は、製鋼性の酸化物系非金属介在物は勿論の
こと、加えて鋼板製造過程で固相反応によって析出する
MnS、AlN、セメンタイト(Fe3 C )の存在と、その析出
形態であることを解明した。
【0023】MnSについて注目すると、図6に示したよ
うにDTR加工によって発生した微小な割れの中に、圧延
方向にフィルム状に展伸したMnSが認められた。MnSは、
鋼板中の不純物として熱間脆性をもたらすSを、Mnの添
加によってMnSとして固定化する結果生成するもので、
その存在を完全になくすことはできない。しかし、耐側
壁破断性を高めるためにはでき得る限りMnSの析出を抑
制し、ミクロ組織的には圧延方向にフィルム状に展伸し
たMnSの存在を回避する必要があることがわかる。
【0024】次いで、本発明者らは現状のDTR成形品の
断面組織の微細分散炭化物の析出形態に着目して多数の
断面を観察した結果、図7で認められるように発生した
割れの中には微細なセメンタイト(Fe 3 C)が存在してい
ることがわかり、セメンタイトと母相との界面が割れの
起点になっているとの知見を得た。
【0025】本発明は上述のようなMnSやセメンタイト
等の析出物と母相との界面で微小な割れが発生し、析出
形態によっては発生した微小な割れが伝播し易く、DTR
加工の際に側壁破断に至り易いとの知見に基づき成した
ものである。
【0026】また、評価方法に関し、本発明者らは、従
来の技術で極めて曖昧かつ定性的な評価しかなされてい
なかった耐側壁破断性に対して、材料間の有意差を正確
かつ定量的に評価できる指標として、図5に示す高速ド
ロービード引抜き試験法によって求められる限界薄肉化
率(еth)を用いた。
【0027】eth=100(e0ー e )/e0 ただし、e0は初期板厚、 e は破断面以外の近傍の板厚
である。
【0028】DTRシミュレーションによって、еthは側
壁破断を伴わないでDTR成形可能な缶胴側壁の限界薄肉
化率と正の相関があり、概ね(еth+5%)程度の値と限界
薄肉化率が一致することを確認した。
【0029】この限界薄肉化率(еth)を用いて、具体
的な構成要件と限定範囲を定めた。以下に、本発明の各
限定理由について具体的に述べる。
【0030】S:Sは、本発明において極めて重要な元
素である。SはMnSとして鋼板の中に存在し、展伸したMn
SはDTR成形時の側壁破断に至る割れの起点になり易い。
従って、Sは極力少ない方が好ましい。
【0031】従来、缶用鋼板においては耐食性の観点か
らSが添加されるケースがあるが、DTRに適用されるラミ
ネート鋼板においては、ラミネート層によって優れた耐
食性が確保されるため、Sを増量すべきとの要請は無く
なる。
【0032】本発明では、eth>30%の充分な耐側壁破断
性を得るために、図1の結果からSの上限を0.008 % と
する。
【0033】Mn:Mnは、鋼中のSをMnSとして析出させ
ることによってスラブの熱間割れを防止するばかりでな
く、連続焼鈍の過時効過程では、MnSを核としたフェラ
イト結晶粒内での微細セメンタイト析出を促す役割を果
たす。また、固溶強化元素としてCによる強化を補う役
割も果たす。そこで、Sを析出固定するに足る下限とし
て0.3%とする。
【0034】一方、Mnを多量に添加することは素材強度
を高めるためには有効であるが、反面MnSの溶解度積が
増大し、鋳造板(例えばスラブ)段階で比較的大きなMn
Sが形成されるばかりか、熱延時にバンド組織の形成を
助長して鋼中Cのミクロ的な不均一分布を促す。これら
は、いずれもDTR時の側壁破断に対して不利な組織を発
生させるものである。そこで、Mnの上限を1.2%に限定
する。
【0035】前述したように、耐側壁破断性を高めるた
めにはでき得る限りMnSの析出を抑制し、ミクロ組織的
には圧延方向にフィルム状に展伸したMnSの存在を回避
する必要があるので、MnとSは関連づけて限定する必
要がある。
【0036】図1は、DR-9相当のテンパー度に調整し
た鋼板における限界薄肉化率ethにおよぼすSおよびMn
含有量の影響について示したものである。
【0037】図1に示されるように、SおよびMn含有量
を低減するほどethは向上する傾向にあり、特にMn含有
量が比較的低い領域では、S含有量の低減による効果が
大きく、S≦0.008 %でeth>30%が達成される。
【0038】Mnが比較的多い領域では、ethは溶解度の
積[Mn][S]に支配され、log[Mn][S]≦ー2.22でeth>30%が
達成される。すなわち、Sの絶対量を低減することによ
って、ミクロ組織的に破断の起点となり易いMnSが少な
くなり、ethが向上する。これは、log[Mn][S]の増加に
伴い、MnSはスラブ均熱時の初期段階から析出し易い傾
向となり、それが在炉中にわたって成長することから粗
大なMnSになり易いことであると推定している。
【0039】そのような粗大なMnSは熱間圧延によって
圧延方向にフィルム状に展伸され、ミクロ組織的に破断
の起点となり易くなるので、log[Mn][S]を低くすること
でMnSの粗大化を抑制し、ethの向上効果がもたらされ
る。
【0040】つまり、側壁破断が発生しにくいDTR加工
に適合した鋼板の具備すべきミクロ組織を得るために
は、Sを低減化し、かつ log[Mn][S]を図1の結果を基に
上限をー2.22に制限する。
【0041】O:酸化物系介在物は耐側壁破断性を著し
く阻害する。一般的には、微量のAl2 3系が問題とな
り、CaO、MnO系介在物が残留するケースもあり、対策
としては鋼板の中の全酸素濃度(Total-O)を低減する
ことが有効である。図2は各種鋼板のethをTotal-Oで
整理したものである。
【0042】これらの鋼板は、Sを低減しlog[Mn][S]を
制限することで、ほぼeth>30%を得ているが、Total-O
≦0.005 %とすることでethが向上し、Total-O≦0.0025
%ではさらに向上する。そこで本発明では、ethの要求
レベルによりTotal-Oを0.005 %以下に、さらに望まし
い範囲として0.0025 %以下に限定する。
【0043】C:CはDTR適合鋼板として要求される強度
レベルを確保する上で極めて重要な元素である。また、
本発明で規定するセメンタイトの析出形態を制御する上
でも重要である。0.02 %以下の場合、DTR鋼板として要
求される強度レベルを確保することができない。
【0044】一方、0.1 %超えでは、高強度となりすぎ
ることで加工性の劣化が懸念されるとともに、粗大なパ
ーライトを形成し、隣接して密集した微細セメンタイト
の圧延方向での長さが大きくなり、側壁破断が顕在化す
るようになる。従って、Cの範囲を0.02<C≦0.1 %に限
定する。
【0045】Si:Siは、鋼板を脆化させる元素であ
り、少ない方が好ましい。また本発明による鋼板にTFS
などの表面処理を施す上でも少ない方が好ましい。本発
明では、実用上問題とならない0.03%以下とする。
【0046】P:Pはフェライト粒界に偏析して粒界を
脆化させる元素であるため、極力少ない方が好ましい。
本発明では、実用上耐側壁破断性に影響しない上限とし
て、0.03%以下に限定する。
【0047】Sol.Al:Sol.Alは、鋼板中のNをAlNとして
析出させることによって、(固溶Cと同様な)動的ひず
み時効現象により鋼板の局部延性を低下させる固溶Nの
弊害を軽減する。
【0048】また、微細なAlNはフェライト結晶粒の微
細化に有効であり、さらにMnSと同様に連続焼鈍の過時
効過程で、微細なセメンタイトがフェライト結晶粒内へ
析出する場合の核となる。しかし、Sol.Al量を高めるた
め多量のAl添加を行うと、微小なAl23 介在物が残留
し易くなり、側壁破断の原因となる。そこで本発明で
は、上記の効果が発現される下限として0.02%を、実用
上それ以上の添加が耐側壁破断性を阻害する限界とし
て、上限を0.1 %とする。
【0049】N:Nは、AlNとして微細分散してフェライ
ト粒の細粒化と微細なセメンタイトの析出核として活用
することと、経済的観点からその範囲を20〜70ppmとす
る。
【0050】また、本発明の鋼板はそのミクロ組織をフ
ェライト相と微細分散したセンタイトからなる、実質的
なフェライト単相組織とする。これは、低炭素鋼におい
て不可避的に存在する炭化物(パーライトまたはセメン
タイト)以外の相(マルテンサイト、ベイナイトなど)
を意図的に生成させた場合、そうした硬質第2相とフェ
ライト母相の界面が、DTR成形時の微少割れの起点とな
り、耐側壁破断性を一層劣化させるためである。
【0051】本発明では、上記の微細分散したセメンタ
イトの析出形態を規定することによってより安定した耐
側壁破断性が得られる。
【0052】鋼板中のセメンタイトには、熱間圧延工程
で析出するものと、固溶Cが焼鈍工程を経て析出するも
のがある。これらのセメンタイトは、その析出形態によ
って、耐側壁破断性に影響をおよぼすものである。
【0053】つまり、DTR缶用鋼板として具備すべき強
度を確保するために必要な0.02%超えから0.1 %以下の
C含有量の鋼板では、熱間圧延工程の冷却過程でパーラ
イト変態が起り、熱延組織の結晶粒界にパーライト(フ
ェライトとセメンタイトの微細な混在組織)が形成され
る。このパーライトは冷間圧延工程で圧延方向に破砕さ
れ、その結果として、図4に示すような、互いに隣接し
て密集し圧延方向にフェライト結晶粒を股がる状態、フ
ェライト結晶粒を貫通する状態などで分布する微細なセ
メンタイトの群落が形成される。
【0054】このような群落状のセメンタイトは、局所
的に比較的結合力の弱いセメンタイトと母相の界面を増
加させることになり、図7に示すようなDTR成形時の微
小な割れの起点を与えることになる。よって、このよう
なセメンタイトの発生を回避することが望ましいが、DT
R缶用鋼板として具備すべき強度を確保するためには、
前述したように適正なCの含有量として0.02%超えから
0.1 %以下が必要であり、その様なC含有量の鋼ではセ
メンタイトの存在は不可避である。
【0055】しかし、単位体積当りのセメンタイトと母
相の界面を減少させる意味から、その大きさを制限する
ことが有効である。すなわち、図4に示した圧延方向で
の長さLc(本発明は群落の方向を規定するものではない
が、通常、最も長さの大きいのが圧延方向である)が小
さい場合、限界薄肉化率ethが向上する傾向がある。
【0056】図3は、セメンタイトの析出形態を種々に
変化させた鋼板をDR-9相当のテンパー度に調整したも
のにおけるethにおよぼすLcの影響を示したものであ
る。
【0057】図3に示すように、限界薄肉化率ethはLc
に依存し、おおむねLc10μm以下でeth>30%を確保でき
る。よって、本発明では微細分散したセメンタイトの長
さLcを10μm以下に規定する。
【0058】以上に開示した本発明鋼板は、缶成形にお
けるプロセスがWetプロセス、Dryプロセスの如何にかか
わらず、張力を付加しながら深絞り成形を行う所謂DTR
製缶法に使用される全ての鋼板に適用出来る技術であ
る。
【0059】また、DTR加工後、更にしごき成形(Ir
oning)を実施して、薄肉化を図る場合にも適用可能で
ある。
【0060】TFSのみならず錫めっき鋼板、極薄錫めっ
き、錫ーニッケルめっき、ニッケルめっき、クロムめっ
き、Niフラッシュめっき鋼板などに於てもその特性が損
なわれるものではない。
【0061】これらの表面処理鋼板は、鋼板単独のま
ま、あるいはポリエステル等の樹脂フィルムをラミネー
トしたフィルムラミネート鋼板、エポキシ等の塗料をコ
ーティングしたプレコート鋼板としてDTR缶用途に適用
される。
【0062】とくに、これらの表面処理鋼板をフィルム
ラミネート鋼板、プレコート鋼板の下地鋼板として用い
る場合は、下層が金属クロム、上層がクロム水和酸化物
の2層構造をもつ電解クロム酸処理鋼板すなわちTFS
が、加工密着性の観点から最も望ましい。
【0063】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づき説明する。
【0064】実施例1 鋼を溶製し、連続軽圧下鋳造し、表1に示した成分の鋳
片(スラブなど)とし、このスラブを1200℃に加熱後、
熱間圧延で仕上温度840℃、巻取温度600℃で1.8mmの熱
延板とした。
【0065】本発明では、鋼中のP、Sのセミマクロおよ
びマクロ偏析の軽減を意図した連続鋳造のスラブ軽圧下
鋳造、MnSの均一微細化の観点から1150℃以上のスラブ
高温加熱、熱延板組織の微細化の観点から熱間圧延を87
0℃以下の低温仕上、パーライトの微細分散化の観点か
ら620℃以下の低温巻取りが好ましい。
【0066】この熱延鋼板を酸洗後0.24mmまで冷間圧延
し、引き続き連続焼鈍炉(CA )または箱焼鈍炉(BA )にて
再結晶焼鈍を行った。
【0067】連続焼鈍においては、動的ひずみ時効によ
って鋼板の局部延性を劣化させる残留固溶Cを低減さ
せ、なおかつその析出形態がフェライト結晶粒内に微細
分散するように制御するため、400℃を越えない温度範
囲で300〜400℃での保定時間が20秒以上の過時効処理(C
A+ OA)を行うのが有効である。
【0068】また、本実施例では、過時効処理帯を付設
しない連続焼鈍炉で焼鈍した後、400℃を越えない温度
範囲で箱焼鈍炉にて過時効処理を行う方法(CA +BA )も
行った。また、焼鈍後の鋼板に対して板厚0.18mmまでの
2次圧延を施し、DR(Double Reduced)鋼板とした。一
部については焼鈍後の鋼板に対して調質圧延のみとし、
SR(Single Reduced)鋼板とした。
【0069】これらの鋼板をティンフリー鍍金ラインに
て金属CrとCr水和酸化物からなる複層構造の皮膜を有す
るTFS鋼板とした。この鋼板の表裏面に実験室的にPETフ
ィルムを熱融着法にてラミネートし、高速ドロービード
引き抜き試験によってethを評価した。
【0070】評価結果を表2に示す。焼鈍プロセスによ
ってethのレベルに若干の差は認められるが、本発明鋼
板(I)を用いることによっていずれの焼鈍方法でも比
較鋼板(C)よりも高いethが得られ、耐側壁破断性に
優れたDTR適合性を具備している。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】実施例2 鋼を溶製し、連続軽圧下鋳造し、表1に示した鋼番5、
10、15、22、30、32、40、43の成分の鋳
片(スラブなど)を製造した。このスラブを1200℃に加
熱後、熱間圧延で仕上温度840℃、巻取温度560 〜680℃
で1.8mmの熱延板とした。
【0074】この熱延鋼板を酸洗後0.24mmまで冷間圧延
し、引き続き過時効処理帯を備えた連続焼鈍炉で加熱温
度650℃、過時効処理温度350℃の条件で連続焼鈍(CA +
OA)した。焼鈍後の鋼板に対して板厚0.18mmまでの2次
圧延を施し、DR(Double Reduced)鋼板とした。
【0075】これらの鋼板をティンフリー鍍金ラインに
て金属CrとCr水和酸化物からなる複層構造の皮膜を有す
るTFS鋼板とした。この鋼板の表裏面に実験室的にPETフ
ィルムを熱融着法にてラミネートし、高速ドロービード
引き抜き試験によってethを評価した。
【0076】評価結果を表3に示す。本発明鋼板(I)
はLcを適正化することによって、より耐側壁破断性に優
れたDTR適合性を具備している。
【0077】
【表3】
【0078】
【発明の効果】本発明は、ミクロ組織のMnSと母相の界
面あるいは炭化物と母相の界面の微小な割れを防止する
ことで、激しい引張り深絞り成形を受けるDTR成形にお
ける鋼板の耐側壁破断性を著しく向上させた。
【0079】このため20%以上の薄肉化においては側
壁破断が皆無で、30%以上の薄肉化を受けても、こう
した微小な割れがほとんど発生しない耐側壁破断性の優
れたDTR缶適合鋼板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 еthにおよぼす鋼板中のSおよびMn含有量
の影響を示す図である。
【図2】 еthにおよぼす鋼板中のTotal-Oの影響を示
す図である。
【図3】 еthにおよぼす鋼板中のLcの影響を示す図で
ある。
【図4】 微細分散したセメンタイト形態とLcの定義を
示す図である。
【図5】 高速ドロービード引き抜き試験方法の模式図
である。
【図6】 DTR成形後の缶側壁部の割れの断面の状態
を示す断面ミクロ組織の図面代用写真である。(MnS
と割れの対応も示す図である。)
【図7】 DTR成形後の缶側壁部の割れの断面の状態
を示す断面ミクロ組織の図面代用写真である。(セメン
タイトと割れの対応も示す図である。)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川瀬 幸夫 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 西原 英喜 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−264254(JP,A) 特開 昭63−38529(JP,A) 特開 平5−295485(JP,A) 特開 平3−44423(JP,A) 特開 昭60−215739(JP,A) 特開 平5−209253(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 8/00 - 8/10 C21D 9/46 - 9/48

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】mass%で、0.02<C≦0.1 %、Si≦0.03
    %、0.3≦Mn≦1.2 %、P≦0.03%、S≦0.008 %、0.02
    ≦Sol.Al≦0.1 %、0.002 ≦N≦0.007%、Total-O≦0.
    005%、log[Mn][S]≦ー2.22 と、残部Feおよび不可避不
    純物からなる鋼組成を有し、フェライト単相組織であ
    り、フェライト粒内にセメンタイトが微細分散している
    ことを特徴とする耐側壁破断性の優れたDTR缶適合鋼
    板。
  2. 【請求項2】mass%で、0.02<C≦0.1 %、Si≦0.03
    %、0.3≦Mn≦1.2%、P≦0.03%、S≦0.008 %、0.02≦
    Sol.Al≦0.1 %、0.002 ≦N≦0.007 %、Total-O≦0.0
    025%、 log[Mn][S]≦ー2.22と、残部Feおよび不可避不
    純物からなる鋼組成を有し、フェライト単相組織であ
    り、フェライト粒内にセメンタイトが微細分散している
    ことを特徴とする耐側壁破断性の優れたDTR缶適合鋼
    板。
  3. 【請求項3】セメンタイトの群落の長さLcが10μm以下
    であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の
    耐側壁破断性の優れたDTR缶適合鋼板。
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