JP3474432B2 - 欠陥が少なく面内異方性の小さい缶用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

欠陥が少なく面内異方性の小さい缶用鋼板およびその製造方法

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JP3474432B2 JP06851498A JP6851498A JP3474432B2 JP 3474432 B2 JP3474432 B2 JP 3474432B2 JP 06851498 A JP06851498 A JP 06851498A JP 6851498 A JP6851498 A JP 6851498A JP 3474432 B2 JP3474432 B2 JP 3474432B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製缶加工時に欠陥
発生が少なくかつ面内異方性の小さい缶用鋼板及びその
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】通常2ピース缶用鋼板は、転炉で溶製さ
れた未脱酸の溶鋼をAlで脱酸を行うAlキルド鋼で製
造されている。このようなAl脱酸鋼では、脱酸時に添
加したAlと溶鋼中の酸素が反応したり、脱酸後に鋼中
に残留したAlがスラグや空気中等の酸素によって酸化
してアルミナが生じる。このアルミナは硬質であるため
圧延や加工等で破砕されずに鋼板に塊状で残存し、製缶
時に割れや疵等の欠陥発生の原因となる。そこでこれら
のアルミナに対して、スラグ中や雰囲気中の酸素の制
御による溶鋼中のAlの酸化によるアルミナの生成防止
や、溶鋼中へのガスやフラックスの吹き込みによる溶
鋼中のアルミナの浮上促進による低減と、溶鋼中への
Caの添加によってアルミナを圧延・加工時に破砕され
やすいカルシウムアルミネートに形態制御する無害化が
行われてきた。
【0003】しかし、Alで脱酸を行っている限りはア
ルミナの生成は皆無にはできず、除去も不十分である。
そして、Ca添加による方法もCaは高価であるととも
に歩留まりが極めて悪いために合金コストが高くなる。
また介在物にアルミナを含有するため冷却時に介在物中
に固いアルミナが部分的に晶出し、圧延等によっても破
砕されずに残存し欠陥が発生する。さらに、Caを添加
して生成するカルシウムアルミネートは肥大化しやす
く、このような介在物が浮上しきれず残留した場合には
欠陥となる。これらの問題を解決するためにはAl以外
の元素で脱酸することが考えられ、特公昭48−290
05に見られるようにAlもSiも全く添加せずにTi
のみで脱酸する方法があるが、この場合Tiのみによる
脱酸のためにTi添加前の溶鋼中酸素は非常に高い値と
なり、この様な溶鋼にTiを添加すると粒径の大きなチ
タン酸化物が多量に生成して溶鋼中に残存し、これはア
ルミナと同様に固く破砕されにくいため欠陥となる。こ
のため、特公平2−9646に見られるようにTi添加
前にAlを添加して予備脱酸を行い、溶鋼酸素を低減し
た後にTiを添加する方法がある。
【0004】上記のごとき方法では溶鋼中の酸素が高い
状態でAlを添加するために、多量のAlを添加する必
要があり、その結果、多量のアルミナが生成してそのま
ま残留したり、アルミナを含有する複合介在物が生成し
て冷却時に介在物中の一部にアルミナが晶出し、この部
分が圧延等によっても破砕されずに残存し欠陥が発生す
る。また、Alは脱酸力が強いので酸素のコントロール
が不安定である。さらに、Tiを添加した際にTiと溶
鋼中の酸素との反応によって生成したチタン酸化物の一
部は複合介在物となるが、この複合酸化物はアルミナを
含むために冷却時に介在物中に晶出するアルミナが破砕
されずに残存し欠陥が発生する。一方、生成したチタン
酸化物の大部分は粒径が大きくかつ、破砕されにくいチ
タン酸化物となって溶鋼中に存在し、その一部は浮上し
きれずに残留して欠陥となる等の課題がある。このよう
に通常の製造方法では、粒径が大きくかつ、硬質の介在
物が含まれるのが一般的であり、この介在物は製缶時に
亀裂の起点となるため、この種の介在物が多量に含まれ
ると、破胴、ピンホール等の欠陥が多発するという問題
を有していた。
【0005】上記の鋼板中の介在物に起因した製缶時の
欠陥の防止を実現するために、本発明者らは、鋼中の介
在物を微細でかつ、部分的に固い晶出相がなく介在物全
体が変形・破砕しやすい組成の介在物にコントロールし
た欠陥の少ない缶用鋼板およびその製造方法を先に提案
(特開平9−184044)した。ところがこの技術に
よる場合、溶鋼中の酸素の残留等や鋼板成分の規定のた
めの適正な操業範囲は狭く、適正操業範囲の拡大(緩
和)が求められていた。
【0006】一方、2ピース缶は一般に絞り加工によっ
て製缶されるため、その素材は絞り加工性の指標となる
r値が高いことが望ましいが、r値が高くても鋼板が薄
いため、絞り加工時のしわ発生の防止のため、再絞り、
再々絞りを実施する場合が多く、実際には高いr値は要
求されない。それよりも、むしろ材料の歩留まり向上の
ために、製缶後の缶のフランジ部のトリミング代を少な
くするのにr値の面内異方性、即ちΔrの小さい材料が
要求される。また鋼板には、高い製缶効率を確保するた
めに、このΔrが鋼板全体にわたって均一なことも求め
られている。製缶後の缶のフランジ部は、円周方向の板
厚分布と高さに異方性が現れるが、これは、Δrによっ
て生じる。すなわち、r値の高い方向で缶の耳が大きく
なって山部を形成し、r値の低い方向で缶の耳が小さく
なって谷部を形成するので、材料歩留りを向上させるに
は、Δrが小さいほうが望ましい。これらのr値および
Δrは、鋼板の集合組織に関係し、成分組成熱間圧
延温度、トータルの冷間圧延率(焼鈍をはさんで実施
される1次冷延と2次冷延のトータルの圧下率)、再
結晶時の析出物の析出挙動および分散状態が影響を及ぼ
し、特にトータルの冷間圧延率が大きくなるDR(Doubl
e Reduced)材ではΔrが大きくなる傾向にある。
【0007】このΔrの改善については、多くの提案が
なされており、極低炭素鋼の適用、冷延率の適正
化、等が行われてきたが、いまだ完全ではない。特開平
7−228925号公報によれば、Δrの鋼板内での変
動の原因はAl含有量が高いことに起因するとし、Al
濃度を低減させるために鋼板の成分組成を特定の範囲に
限定する方法が提案されている。しかし、Al脱酸のた
め、Alの濃度を少なくしすぎると脱酸不足が生じ、鋼
中に気泡が残ることがしばしば起き、ブローホールと呼
ばれる欠陥により表面性状を損ねるため、Al濃度の低
減にも必然的に限界が存在するため、Δrの改善にも限
界が生じる。さらにAl脱酸に起因するAlの酸化物が
鋼中に残存するのは必然で、これらの鋼においてもAl
の酸化物のよる欠陥の発生は抑え得ないものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような課
題を解決するためになされたものであり、鋼中の介在物
を微細でかつ、部分的に固い晶出相がなく介在物全体が
変形・破砕しやすい組成の介在物にコントロールし、従
来、一般的に実施されている操業条件範囲の中で低コス
トで介在物欠陥を少なくして、さらに鋼中のAlの含有
量を極めて少なくできるので、Δrが小さくかつ、Δr
の鋼板内での変動を少なくできる鋼板およびその製造方
法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明は、 (1)重量%で、 C :0.01〜0.10%、 Si:0.001〜0.10%、 Mn:0.05〜1.0%、 P :0.001〜0.050%、 S :0.001〜0.030%、 N :0.0005〜0.0060%、 Sol.Al:0.002〜0.008%、 Ti:0.002〜0.020%、かつTi(%)>
3.43×N(%) を含有し、残部鉄および不可避的不純物よりなる鋼で、
その平均粒径が150μm以下であり、かつ鋼中の介在
物をチタン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、
アルミナが主成分である酸化物系複合介在物であって、
チタン酸化物が5〜30%、アルミナが2〜15%でか
つチタン酸化物とアルミナの和が40%以下である酸化
物系介在物としたことを特徴とする欠陥が少なく面内異
方性の小さい缶用鋼板、 (2)精錬後の溶鋼の鋼中酸素量を250ppm以下に
脱酸し、ついでTiを添加し、その後Alを添加して
C:0.01〜0.10%、Si:0.001〜0.1
0%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.001〜
0.050%、S:0.001〜0.030%、N:
0.0005〜0.0060%、Sol.Al:0.0
02〜0.008%、Ti:0.002〜0.020
%、かつTi(%)>3.43×N(%)を含有し、残
部鉄および不可避的不純物よりなる溶鋼中に、チタン酸
化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、アルミナが主
成分である酸化物系複合介在物であって、チタン酸化物
が5〜30%、アルミナが2〜15%でかつチタン酸化
物とアルミナの和が40%以下である酸化物系介在物を
介在せしめた溶鋼とし、この溶鋼を連続鋳造−熱間圧延
の後、600℃〜750℃で巻取って、ついで脱スケー
ル処理、冷間圧延後、650℃〜750℃の温度域に加
熱し、さらに必要に応じて過時効処理を行う連続焼鈍を
施し、調質圧延あるいは2次冷間圧延の後、めっき工程
を経て缶用鋼板とする欠陥が少なく面内異方性の小さい
缶用鋼板の製造方法、 (3)Alを添加する際に、化学組成がAl:10〜8
0重量%、残りFe、Mn、Siの1種〜3種及び不可
避的不純物からなる合金を添加して行うことを特徴とす
る前記2に記載の欠陥が少なく面内異方性の小さい缶用
鋼板の製造方法、である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明者らは、種々の組成の介在
物を人工的に合成して鋼中に埋め込み、実験室的に圧延
実験を行った。その結果、介在物中にアルミナを少量含
有しチタン酸化物(TiOx 、X=1.5 〜2.0)、マンガン酸
化物(MnO)、シリコン酸化物(SiO2)、アルミナ(Al2O3
を主成分とする組成の介在物とすれば、融点が比較的低
く、冷却時に高融点で固い晶出相が生成せず、圧延等に
よって微細に破砕されることを知見した。
【0011】このようなアルミナ含有量および組成の異
なる介在物を分散させた鋼を実験室的に溶製、鋳造し、
通常の方法で熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧
延、めっきを行って鋼板とし、製缶を行ったが一部の鋼
板で割れ等の欠陥が発生した。この欠陥の部分の調査を
行った結果、欠陥部には伸延した介在物が検出された。
介在物サイズを測定した結果、その大きさは鋳片での大
きさに換算するといずれも平均粒径50μm より大きか
ったことが判った。欠陥が発生しなかった部分を切断し
鋼中の介在物の大きさを測定すると、これには平均粒径
150μm 以下の介在物が検出された。平均粒径が50
〜150μm で欠陥が発生しなかった部分の介在物の組
成を調査すると、チタン酸化物(TiOx 、X=1.5 〜2.0)
とアルミナ(Al2O3)との和が40%以下の介在物組成で
あった。介在物の組成がチタン酸化物(TiOx 、X=1.5
〜2.0)とアルミナ(Al2O3)との和が40%超で、平均粒
径が50〜150μm になると、硬質の介在物で比較的
粒径が大きいため、圧延等による圧下で伸展・変形を受
けても、破砕されずに連続したまま残ったり、破砕され
てもその粒が大きく連続して存在するために製缶時に欠
陥となると考えられる。さらに、詳細な調査をしたとこ
ろ、介在物の平均粒径が150μm 以下で、チタン酸化
物(TiOx 、X=1.5 〜2.0)とアルミナ(Al2O3)との和が
40%以下でも、チタン酸化物(TiOx 、X=1.5 〜2.0)
とアルミナ(Al2O3)がそれぞれ、30%超と15%超で
は欠陥が発生することが判明した。
【0012】以上のことより、平均粒径が150μm 以
下で、組成がチタン酸化物(TiOx 、X=1.5 〜2.0)とア
ルミナ(Al2O3)がそれぞれ30%以下と15%以下でか
つ両者の和が40%以下であれば欠陥とならないことが
推測されたため、150μm以下のチタン酸化物(Ti
Ox 、X=1.5 〜2.0)が5〜30%とアルミナ(Al2O3
が2〜15%で両者の和が40%以下含有したチタン酸
化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、アルミナを主
成分とする組成の介在物のみを分散させた鋼を実験室的
に溶製、鋳造し、通常の方法で熱間圧延、酸洗、冷間圧
延、焼鈍、2次冷間圧延、めっきを行って、製缶を行っ
たところ時効性が良好で欠陥の発生がないことが確認で
きた。
【0013】さらに添加するTi濃度を変化させて実験
を行った結果、チタン酸化物、マンガン酸化物、シリコ
ン酸化物、アルミナを主成分とする組成の介在物とする
には、Ti濃度を0.020%以下にすることが必要であ
る。これはTiが高すぎるとTiの脱酸力がMnやSi
に比べて高いのでこれらの酸化物と複合せず、アルミナ
と同様な高融点のチタン酸化物含有量の高い介在物が生
成するためである。一方、Tiの下限を0.002%とし
たのは連続鋳造時に脱酸不足による気泡の発生を防止す
るためであり、Ti量はNを固定するのに必要最低量で
ある鋼中N量の3.43倍以上添加すればよい。Tiを添
加した後にAlを添加することで、Al添加時の酸素濃
度が下がっており、Alの添加量が少なくてすみ、生成
する介在物中のアルミナ含有量も少なく、介在物中にア
ルミナが含有していても製缶時の欠陥発生はほとんどな
い。また、Ti添加時に生成したチタン酸化物、マンガ
ン酸化物、シリコン酸化物を主成分とする組成の介在物
はAlによって還元されてしまわずにチタン酸化物、マ
ンガン酸化物、シリコン酸化物、アルミナを主成分とす
る組成の介在物となる。これらの介在物はアルミナ単体
に比べると溶鋼中で浮上しやすく、清浄性も向上する。
さらに、Alの添加によって操業範囲も緩和される。
【0014】一方、Alのr値、Δrへの影響は、Al
濃度が高くなると焼鈍後のr値が低くなり加工性を低下
させるとともに、鋼板内でのバラツキを生じるようにな
る。これは、熱間圧延中に析出するAlNに起因するた
め、Al濃度はこの影響が小さくなる0.008%を上限
とする。特に、Δrの鋼板内での均一性と製缶時の欠陥
を防止して、製缶歩留まりを向上させるには、Al濃度
は0.005%以下が望ましい。
【0015】次に本発明の鋼板を得るのに好適な製造法
について詳述しながら説明する。まず、転炉で目標とす
る0.01〜0.10%のCを含む溶鋼を溶製する。この
際、溶鋼中のCが目標とするC濃度より高い場合には出
鋼後に真空脱ガス装置等による脱炭処理を行い所定のC
濃度まで低減し、目標とするC濃度より低い場合には出
鋼後にCを添加して所定のC濃度とする。
【0016】次に、出鋼した溶鋼をMn、Siの1種ま
たは2種を添加するか、真空脱ガス処理による予備脱酸
を行って溶鋼中の酸素を250ppm以下とすることが
望ましい。単体のアルミナを生成させないためにはTi
を添加させる前にAlを添加しないことが必要であり、
Fe−MnやFe−Siを添加してMn、Siにより脱
酸を行う。Mn、Siの添加量は脱酸時に添加するTi
合金中に含まれるSiやMnによって増加する量を考慮
して添加する。また、MnやSiは脱酸力が弱いので製
品によっては目標範囲内では溶鋼中の酸素を300pp
m以下にすることが困難な場合があるので、その際には
真空脱ガス処理により真空脱酸を行い酸素を下げる。溶
鋼中の酸素が250ppmより高くなると、Ti合金を
多量に添加することが必要になり、後述するように脱酸
時の過飽和度が大きくなり、Ti添加時にアルミナと同
様の高融点のチタン酸化物が多数生成し、複合介在物が
安定して生成しない。また、これらが凝集して大きな介
在物となる。このようにして溶鋼中の酸素を250pp
m以下に調整した溶鋼に、化学組成がTi:10〜70
重量%の成分と残部はFe、Mn、Siのうち1種から
3種および不可避的不純物とからなる合金を添加して、
Tiを溶鋼成分として0.002〜0.020%含有させ
る。溶鋼中のTi濃度を0.020%以下とすることでチ
タン酸化物、マンガン酸化物、シリカを主成分とする組
成の複合介在物とすることが可能となる。溶鋼中のTi
濃度が高すぎるとTiの脱酸力がMnやSiに比べて高
いのでこれらの酸化物と複合せず、アルミナと同様な高
融点のチタン酸化物が主成分の介在物となるので好まし
くない。
【0017】更に、脱酸時の過飽和度を小さくすれば核
生成速度が遅くなり、生成する介在物の個数及び介在物
径が小さくなる。過飽和度はTiと酸素の積で決まるの
で、過飽和度を小さくする方法として脱酸合金中のTi
含有量を低くすることと脱酸時の溶鋼中の酸素を低くす
ることが有効である。脱酸合金中のTi含有量が高い場
合には溶鋼中に添加した脱酸合金の周囲にTi濃度の高
い部分が生成して過飽和度が高くなるので、Ti含有量
の低い脱酸合金を使用する。酸素濃度および合金中Ti
含有量が低くなるにしたがって介在物径は小さくなり、
酸素を250ppm以下とし、かつ、Ti含有量が70
%以下の合金で脱酸することで、最大でも50μm 以下
の介在物となる。Ti含有量が高くなると介在物径が大
きくなるとともに、脱酸時にチタン酸化物の割合の高い
介在物が生成し、それが溶鋼中に残存し混在する。Ti
濃度が低すぎると脱酸合金の投入量が多くなりすぎ、溶
鋼温度の低下が起こって溶鋼の凝固や鋳造が困難になっ
たり、添加に時間がかかり生産性に障害を与える。ま
た、Ti含有量が高い場合には少量ずつ添加すると部分
的に過飽和度の高い部分が少なくなり有効である。
【0018】また、TiをFeやSi、Mnとの合金と
することで、Tiの活量を下げるとともに部分的に濃度
の高い領域を減少させるために、過飽和度が一層減少
し、チタン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物の
複合介在物の生成を促進する。
【0019】最終的に鋼中に含有されるMnの含有量
は、0.05%未満に下げるのは精錬時間が長くなり経
済性を大きく損ねるので、0.05%を下限とし、1.
0%を越えると鋼板の加工性が大きく劣化し缶としての
加工ができなくなるので、1.0%を上限とする。
【0020】Si量は、0.001%未満に下げるのは
十分な予備処理等が必要で精錬に大幅なコスト負担をか
け経済性を損ねるので0.001%を下限とし、0.1
%を越えるとめっきの際にめっき不良が発生し、表面性
状、耐食性を損ねるので0.1%を上限とする。
【0021】Pは、0.001%未満に下げることは溶
銑予備処理に時間とコストがかかり、経済性を大きく損
ねるので、0.001%を下限とし、0.050%を越
えると加工性が劣化し、缶としての加工に支障をきたす
ので0.050%を上限とする。
【0022】Sは、0.001%未満に下げることは溶
銑予備処理に時間とコストがかかり、経済性を大きく損
ねるので、0.001%を下限とし、0.030%を越
えると加工性・耐食性が劣化し、缶としての加工・性能
に支障をきたすので0.030%を上限とする。
【0023】Nは、0.0005%未満に下げることは
精錬の段階での大幅なコスト上昇を伴い経済性を大きく
損ねるので、0.0005%を下限とし、0.0060
%を越えると、固溶NをなくすためのTi添加量が多く
必要で、本願の目的である介在物の形態制御が不可能に
なるので、0.0060%を上限とする。
【0024】このようにして溶製した溶鋼を通常と同じ
方法でタンディッシュを通して、連続鋳造機で鋳造す
る。さらに、適宜、熱間圧延に先立って加熱を施し、こ
の鋳片を通常と同じ方法で熱間圧延した後、600 ℃〜75
0 ℃の温度範囲で巻取りを行う。巻取温度600 ℃未満で
は、TiによるNの析出固定が不十分で時効性が劣化す
るので600 ℃を下限とし、750 ℃を越えると粗大粒とな
り製缶後肌荒れを起こして外観を損ねるので750 ℃を上
限とする。ついで、脱スケール処理を行う。一般には酸
洗を施すが、機械的にスケール除去を行っても良い。そ
の後、冷間圧延を行い、連続焼鈍を行う。連続焼鈍の温
度は、650 ℃〜750 ℃とする。650 ℃未満では再結晶が
完全ではなく加工性が劣化するので650 ℃を下限とし、
750 ℃を越えると鋼板の高温強度が弱まり、連続焼鈍炉
内で絞りと呼ばれる現象を起こし、破断するなどの問題
が生じやすくなるので750 ℃を上限とする。その後、ス
キンパス圧延あるいは5〜40%程度のDR圧延を施
し、クロムめっきあるいは錫めっきなどの表面処理(例
えば、クロムめっきおよび又は錫めっき層があれば、地
鉄との界面にNi等の極薄層があってもかまわないし、
錫めっきが錫−鉄合金めっきであってもかまわない。)
を施し、缶用の鋼板とする。また、表面に樹脂フィルム
を貼り付けたラミネート鋼板又は、溶融した樹脂を少な
くとも片面に被覆せしめた樹脂積層鋼板とすることも可
能である。これらの鋼板は特に2ピース缶用の鋼板とし
て好適である。
【0025】
【実施例】270トン転炉で表1に示す合金組成の脱酸
用合金を用いて、各成分の鋼を溶製し連続鋳造した。製
造した鋼の成分及び鋼中の介在物組成を合わせて表1に
示す。ついで、加熱−熱間圧延を行った。その際の仕上
圧延及び巻取は、表2に示す温度で行った。ついで、酸
洗、冷間圧延を行った後、表2に示す温度で焼鈍を行っ
た。焼鈍の後、一部のものについてはDR圧延(ダブル
レデュース圧延)を施した。ついでクロムめっきまたは
錫めっきを施し、さらに一部の鋼板については表裏面に
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを貼り付け
て、缶用鋼板となした。
【0026】その鋳片の一部および冷延鋼板の一部を採
取して断面を調査し、介在物の組成、大きさ、形状を調
査した。その結果を表1に示す。介在物の組成は、走査
型電子顕微鏡でエネルギー分散分析装置によって測定し
た。本発明鋼では鋳片内にはチタン酸化物、マンガン酸
化物、シリコン酸化物を主成分とする組成で、ほぼ球形
の介在物が検出されており、アルミナを含む介在物やチ
タン酸化物の濃度の高い介在物は検出されなかった。ま
た、冷延鋼板ではこれらの介在物が破砕され微細分散化
していた。
【0027】また、得られた缶用鋼板のΔrの変化状況
を調査した。その結果を表2に示す。Δrは、簡易測定
法である”モジュールr”(Stolle Corp.社製、Modul-
r Drawability Testerを使用)によって測定した。表2
の結果から、本発明鋼では、比較鋼に比べてΔr値が小
さくなっており、面内異方性が改善されたことがわか
る。
【0028】さらに、得られた缶用鋼板を用いて、3段
絞りにより成形した絞り缶と絞りとしごきを加えたDI
缶を製造し、このときの割れが発生した欠陥率を調査し
た。この結果を表2に示す、本発明鋼では、比較鋼に比
べて欠陥率が少なくなっていることが確認された。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【発明の効果】本発明によって、製缶時の欠陥発生が少
なく面内異方性の小さい缶用鋼板の製造が可能となっ
た。
フロントページの続き (72)発明者 岡本 竜司 愛知県東海市東海町5−3 新日本製鐵 株式会社名古屋製鐵所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.01〜0.10%、 Si:0.001〜0.10%、 Mn:0.05〜1.0%、 P :0.001〜0.050%、 S :0.001〜0.030%、 N :0.0005〜0.0060%、 Sol.Al:0.002〜0.008%、 Ti:0.002〜0.020%、かつTi(%)>
    3.43×N(%) を含有し、残部鉄および不可避的不純物よりなる鋼で、
    その平均粒径が150μm以下であり、かつ鋼中の介在
    物をチタン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、
    アルミナが主成分である酸化物系複合介在物であって、
    チタン酸化物が5〜30%、アルミナが2〜15%でか
    つチタン酸化物とアルミナの和が40%以下である酸化
    物系介在物としたことを特徴とする欠陥が少なく面内異
    方性の小さい缶用鋼板。
  2. 【請求項2】 精錬後の溶鋼の鋼中酸素量を250pp
    m以下に脱酸し、ついでTiを添加し、その後Alを添
    加してC:0.01〜0.10%、Si:0.001〜
    0.10%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.00
    1〜0.050%、S:0.001〜0.030%、
    N:0.0005〜0.0060%、Sol.Al:
    0.002〜0.008%、Ti:0.002〜0.0
    20%、かつTi(%)>3.43×N(%)を含有
    し、残部鉄および不可避的不純物よりなる溶鋼中に、チ
    タン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、アルミ
    ナが主成分である酸化物系複合介在物であって、チタン
    酸化物が5〜30%、アルミナが2〜15%でかつチタ
    ン酸化物とアルミナの和が40%以下である酸化物系介
    在物を介在せしめた溶鋼とし、この溶鋼を連続鋳造−熱
    間圧延の後、600℃〜750℃で巻取って、ついで脱
    スケール処理、冷間圧延後、650℃〜750℃の温度
    域に加熱し、さらに必要に応じて過時効処理を行う連続
    焼鈍を施し、調質圧延あるいは2次冷間圧延の後、めっ
    き工程を経て缶用鋼板とする欠陥が少なく面内異方性の
    小さい缶用鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 Alを添加する際に、化学組成がAl:
    10〜80重量%、残りFe、Mn、Siの1種〜3種
    及び不可避的不純物からなる合金を添加して行うことを
    特徴とする請求項2に記載の欠陥が少なく面内異方性の
    小さい缶用鋼板の製造方法。
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